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SDGsGoal10(人や国の不平等をなくそう)大学は特権ではなく、誰もが行ける場所であるべき

大学は特権ではなく、誰もが行ける場所であるべき

【シドニーIDN=カリンガ・セネビラトネ】

コロナ禍後の世界をより良いものにしたければ、高等教育システムをより柔軟で利用しやすいものにする必要がある。また政府が、より平等で安定した社会を作りたければ、公立大学への資金拠出が不可欠であることを理解しなくてはならない―これが「世界高等教育アクセスデー」(WAHED)からの明白なメッセージである。11月17日、「2030年の大学はどこに行くのか」と題したオンライン会議がロンドンをホストに開催された。

高等教育部門はコロナ禍により大きな被害を受け、その構造はオンライン学習の登場によって大きく変わってしまった。しかし、このことは高等教育へのアクセスと平等にとって極めて大きな問題を残した。平等な教育へのアクセスは持続可能な開発目標(SDGs)第4目標に盛り込まれているが、主として念頭にあるのは、高等教育よりも初等・中等教育である。

「全国教育機会ネットワーク」(NEON)のグレーム・アサートン教授は会議の開会挨拶で、「WAHEDのアイディアは、高等教育システムのアクセスと平等の必要性を認識し、個々の大学や組織にこの問題に取り組ませようとしている人々が集うことにある」と述べた。NEONは英国の非営利組織でWAHED2021を主催している。

SDGs Goal No. 4

5つの分科会からなるこのイベントでは、欧州・北米・南米・アフリカ・アジアからのパネリストが並び、その多数は女性でもある。多くの発言者が、高等教育は先進国でも途上国でも依然として特権であり、既に学位を持っている人々の子が大学に行く割合が高いという。公立大学に対する政府の資金投入が活発でない中、社会経済状況が厳しい世帯にとっては、子を大学に進学させるなど及びもつかない。

エスタドゥアル・デカンピナス大学のマルセロ・ノーベル教授によれば、ブラジルでは現在の政権が公立大学への予算を削減し、若い人々は私立大学に行かざるを得なくなっているという。「平等の面から考えて大きな問題だ。学生の75%が営利的な私立大学に通っている。高等教育での成功を保証するには、(公立大学は)大幅に強化されねばならない。」

「高等教育はそのコストの面から批判に晒されており、不平等を加速している」と米「ルミナ財団戦略的インパクト」の副代表であるコートニー・ブラウン博士は語った。教育アナリストで「ユーリーダイス」(Eurydice)のデイビッド・コシエー氏は、「欧州のデータを見ると、大学生の68%の親は大学の学位を持っている。」と指摘したうえで、「不平等は欧州においても顕著な社会の特徴になっており、不平等は幼児期と学校制度において対処しなくてはならない。」と語った。

アジア欧州会合(ASEM)による第4回WEHED会合に先立って出された報告書は、コロナ禍によって不利に立たされている集団に関して高等教育へのアクセスと平等度は悪化しており、それに対応するための、焦点を絞った一貫性のある政策が必要だと警告している。

同報告書は、ASEM47カ国の政策の調査を基礎として、3分の1以下(30%)の国しか高等教育における平等政策を持たず、わずか34%しか高等教育への進学と卒業に関した特定の目標を設けていないという。

アジア欧州財団(ASEF、シンガポール)のアサートン教授が執筆したこの報告書によれば、「84%の国々では、コロナ禍によって平等な進学・卒業に関連した政策が大きな影響を被っている」という。

報告書が焦点を当てているのは、民族的・宗教的マイノリティを基礎にした伝統的な議論からの変容である。問題になっているのは、多数派の民族的・宗教的コミュニティの中にいるかもしれない、社会経済的に不利な世帯や経済的に周縁化されたコミュニティのことである。従ってこの問題は、社会における「不平等の是正」を謳ったSDGs第10目標に関連したものである。

SDGs No. 10

WAHEDで多くの発言者が強調したのは、高学年の高校生と大学生との間に連携を生み出すことで、入手できるはずの機会や入学の要件について知ることができる、ということだ。これは、教育関係省庁がその他の開発機関とともに戦略を策定しなくてはならない開発問題として見る必要がある。

「開発における高等教育の役割は、まだ決着を見ていない問題だ。」と指摘する英連邦大学連合のジョアンナ・ニューマン事務局長は、「高等教育への入学は依然として特権だ。大学に通った人々は稼ぎがいいだけではなく、自らが住む社会に貢献もできると信じるしかない。」と語った。

ニューマン事務局長は、「今日の大学はランキングや競争ばかりを気にしており、『象牙の塔』としての大学のイメージを強めてしまっている。一つの部門として大学がなぜ開発問題で意義を持つのかということについて、説得力のある議論を展開できていない。」と語った。

ビショップ・スチュアート大学のモード・カマテネシ・ムギシャ副学長によれば、ウガンダでの問題は、オンライン学習のための適切なカリキュラムと施設を確保することであるという。ムギシャ副学長は、「コロナ禍の中でオンライン学習を提供できたのは僅か3、4大学にしか過ぎない。ICTを使った教育のために新たな構造を模索する必要がある。資金に余裕がない人でも e-ラーニングを使えるようにならなくてはならない。」と語った。

またムギシャ副学長は、「(コロナ禍の中で)時として15人の学生が高等教育を受けるためにノートパソコンのある家に集まってクラスを受講するケースもあった。一方で、多くの学生が2年間も高等教育にアクセスできないでいる。」と述べ、ウガンダにはICTネットワークだけではなくシステムを動かす電力、とりわけ太陽光発電が必要と指摘した。

国際大学協会のヒリジェ・バントランド事務局長は、大学への平等なアクセスは開発の主要な要件であると考えている。同氏は、適切な公共教育に投資することは高等教育システム成功に不可欠だと指摘した。「よく教育を受けた市民は、社会的平等の基礎を作る要件の一つだ」と語り、2030年に大学に行けるかどうかは「(子どもの時から)どういう質の教育を利用できるか」にかかっているという。

ブルネイ・ブルガリア・マレーシアは、この問題の解決へのヒントを提供している。産油国でありスルタン国である東南アジアのブルネイでは高等教育熱が高いが、同様に退学率も高い。

退学の問題に対処するために、高等教育をめざす生徒を中等教育段階から準備させる新法を導入することで「啓蒙された選択」をさせようとしている。また、職業訓練を伴う高等教育のコースもより多く提供した。ブルネイ高等教育省のアニス・ファウズラニ・ジキフリー氏は「高校段階で対処できるように15歳で学生に選択をさせたい」と語った。

ブルガリアでは、教育科学省のイワナ・ラドノワ博士によると、学生と雇用者との間で契約を結ぶ仕組みがあるという。「企業は、企業の条件を分かっている卒業生を雇い、他方で大学は企業が何を求めているかを分かっている」とラドノワ博士は説明する。国家はまた、必要な学生に学資を提供し、卒業後に利子支払いが困難な場合は免除するという。

「我々の高等教育政策は、社会的責任を果たすべく行動するよう大学に求める」とラドノワ博士は述べ、大学の設置箇所に関する全国計画について説明した。「というのも、地域開発を支援するように大学を設置する必要があるからだ。」

マレーシアでは、高い割合の若年層が何らかの形で高等教育に進むが、政府の2030ビジョンでは大学部門に対する人的資源の開発を目指している。「我々は、非伝統的な(=25歳以上の)学習者に対する生涯学習と共に、学習の柔軟な道筋を導入しようとしている」と説明するのは、高等教育省研究強化局のワン・ズハイニス・ビンテサード局長である。

ビンテサード局長はまた、「オープンで遠隔学習を通じたこれらの戦略は一時的な措置ではなく、柔軟な学習のための『コースモデル』を提供する戦略の一部であり、『エクセル』と呼ばれるこのシステムは、『情熱を基盤とした学習における柔軟性』を提供するものだ。」と語った。

UN Photoブラウン博士は、コロナ禍で大学は変容し、学生に奉仕するために新たな機会と資金提供モデルを構築してきたと話す。「もし2019年当時の状況に戻ろうというのなら、楽観的ではいられません。(高等教育へのアクセスと平等を強化する)これらの新しいモデルに取り組まねばならない。」

北米においてすら、大学への資金提供は開発問題とみなされる必要があるかもしれない。ブラウン博士は、米国の大学では毎年3600万人の退学者を出していると指摘したうえで、「学生のニーズを把握し、学生に適合するコースを作らねばならない」と指摘する。たとえば、夜間コース、学資支援、成人学生への保育サービス、生涯教育といったものが形を取り始めている。ブラウン博士は、米国では約9000万人の労働世代が、高い学費が理由で高等教育に進むことなど考えたことがないと答えている事実を指摘した。

米国であれ、あるいは欧州、アフリカ、アジアであれ、パンデミックを乗り越えるために作られてきたオンライン学習のもたらす機会を、高等教育へのアクセスと平等を強化するために利用することができよう。同様に、生涯学習プロセスは、個々の国の開発上のニーズと統合することもできる。

高等教育のアクセスと平等の政策を強めるネットワークを確立することを目指して、WAHEDに関する30のイベントが同時並行して行われた。「これらの問題を前進させようとするならば、それをどのような枠組みで理解するかを考える必要がある」とアサートン教授は語った。(原文へ

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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