【ニューヨークIPS=ウィリアム・フィッシャー】
米国土安全保障省(DHS)監査総監室は、マイアミの「クローム・サービス処理センター」(Krome Service Processing Center)、民間契約企業「アメリカ矯正社」(Corrections Corporation of America=CCA)のサンディエゴ施設を始めとする国内各地の刑務所、留置所を対象として行われた調査の結果を発表した。
不法移民の待遇について同報告書は、拘留中の不法移民容疑者に対する医療や食事は不十分で、性的嫌がらせも多く、弁護士や家族、移民担当官との面会も不法に制限されていると述べている。
移民拘留センターの多くは民営化され、CCAやワッケンハット(現在は「GEOグループ」に改称)といった民間企業により運営されている。民営化によりコストが大幅に削減されるというのがその理由だが、米議会検査院は1996年に、企業側のその主張には明確な証拠が見出せないとする報告書を提出している。
2001年9月11日のテロ攻撃で、数千のイスラム教徒とおぼしき移民が収監されてから、刑務所の民間経営ブームが始まった。DHS 監査総監室は2003年に、彼等の扱いを強く批判する報告書を提出。囚人の基本的権利侵害、精神的・肉体的な嫌がらせ、ヘルスケアや医療の欠如、過密、シャワーやトイレの使用拒否などを指摘したが、その後の不法移民取締り強化で、拘留施設経営契約も民間に流れたのである(CCAの2005年第2四半期収入は約3億ドル)。
DHSを批判するグループは、今回の報告書について、これまでの提案が全く活かされていないと落胆している。移民留置所の実態を暴露した本「アメリカン・グーラグ」(グーラグとは強制収用所の意味)の著者であるマーク・ダウ氏は、「DHSが移民の拘留、移民関税執行局、警察の役割を同時に担っている限り、不当な扱いはなくならない。強制権のない監査は無意味だ」と言う。アムネスティ・インターナショナルUSAのメアリー・ショウ氏は、「米国の移民システムは、9/11からさらに悪化した。保護を求めて来る者と攻撃のため入国する者を一緒にしてはならない」と述べている。
同報告書を受けて、国内10数の団体はDHSに対し、強制力のある留置関連規則の制定を求める請願書を提出した。DHS監査総監室の刑務所・留置所実態調査について報告する。
翻訳/サマリー=IPS Japan
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