【IPSコラム=エーリク・ソールハイム】
ハマスとの接触を断て!イスラエルと話をするな!ビルマから距離をとれ!過去の長きにわたって、望ましくない体制とは接触するなとのこうした叫びが繰り返されてきた。
しかし、タカ派というべきイスラエルのダヤン元外相の次の発言を思い出してみるべきだ。「もし平和を作り出したければ、友人と話をするな。敵と話をすべきである」。
私は、20年以上にわたって、ビルマの人権と民主主義の問題にかかわり続けてきた。事態が大きく展開しそうだと思ったことが何度もあったが、そのたびに期待は裏切られてきた。1月の末にビルマに行ったが、自分の目で確かめてみて、ビルマがこの数十年全く変わっていないことを思い知らされた。
1988年にビルマに軍政が誕生して以来、西側諸国はビルマ孤立策を採ってきた。しかし、軍政は政治的・経済的改革を行うことを拒否してきた。いまこそ、別のアプローチを考えるべきだ。
孤立策が事態の改善に結びつくことはほとんどない。民主化が中産階級の登場と深い関係にあることは経験上明らかだ。表現の自由などの社会の進歩を求める力は、そうした動きを起こす資源を持つ中産階級から出てくる。ある国が世界から孤立していれば、そのような中産階級は出てきようがない。
ノルウェーは、誰とでも分け隔てなく協議を行う外交政策で評判を博してきた。ノルウェーは、ハマスと協議を行ったがゆえに、中東和平プロセスにおいて独自の地位を占めることができる。スリランカでは、「タミル・イーラム解放の虎」と接触をとれる数少ない関与者のひとつである。ネパールの毛派とも協議してきたが、その毛派からは、いまや、首相を出すまでに到っている。我々は、フィリピンの共産主義者とも会うし、ブルンジやスーダンの反体制派とも話をする。
ビルマもまた、金融危機のために難題に直面している。軍政は総選挙を予定しているが、自由でも公正なものでもないだろう。アウン・サン・スー・チー氏はいまだに軟禁状態にある。残念ながら、近い将来に民主化するとの希望はない。しかし、私たちは、より長期的で歴史的な視点を持つべきである。すなわち、孤立よりも、開放と対話こそがより効果的なのだということを。 (原文)
翻訳/サマリー=IPS Japan
*エーリク・ソールハイム氏は、ノルウェー環境・国際開発大臣。