【ウィーンINPS=エマド・キヤエイ】
「カザフスタンにおける核実験の壊滅的な結末-当事者が語る歴史」と題するサイドイベント(在ウィーン国際機関カザフスタン共和国政府代表部と創価学会インタナショナル(SGI)、国際安全保障政策センター)に参加してきました。このイベントは、世界各地で行われてきた核兵器実験がもたらした結果について、犠牲者から直接話を聞くことが主な目的でした。
こうした被爆者自身による証言を聞くことは極めて重要です。 なぜなら核軍縮を巡る各国政府の外交政策や議論は、深刻な生態系破壊や健康被害を抱えながら核実験の生存者や被害者たちが実際にどのように生きてきたかという現実とはかけ離れているのが実態であり、 こうした証言は核兵器を巡る議論の中心に、再びヒューマニティー(人間性の側面)を取り戻すことが可能となるからです。
私たちはこうした被爆者の証言に耳を傾けることで、核兵器がもたらす被爆の実相を知ることができるのです。
第二次世界大戦中に日本が経験した原爆投下の結果、何十万という犠牲者が、世代を超えた健康上の障害や差別に苦しみながら今日に至っている現実を知ることは、核軍縮の問題を考えるうえで重要な視点となります。
すなわち、この大量破壊兵器を廃絶しない限り、被爆者たちは今後も被爆証言を語り継がなければならなくなるのです。しかし被爆者の平均年齢は80歳を超え、直接被爆体験を聞くことができる時間的機会もますます限られたものをなりつつあります。
しかし、ヒューマニティと「同苦の精神」を、核軍縮議論の中心に据えることで、核の時代に終止符を打つことが可能となります。
核廃絶の議論は、本来抽象的な政府や組織の話ではなく、核兵器が使用されればその被害を受けることとなる私たち一般大衆の話なのです。
従って、グローバル被爆者といわれる核実験や核兵器の製造過程で被爆した人々の声なき声に光を当て、核兵器廃絶の必要性についての一般市民の認知度を高めるためのプラットフォームを提供し、政府の意思決定者や政策立案者に対して、有権者が彼らの行動を見ていること、そして正しい決断を下し、核兵器を撤去するよう要求しているというメッセージを届けることは、私たち市民社会の責任です。
これらの大量破壊兵器は、人工的に作られたものである故に、解体することも可能なのです。
必要なのは、政治的な意志と権力者の善意であり、それは私たちの声や経験、そして政府を正しい方向に向かわせる能力なしには得られません。
その方向は、人間の安全保障、ヒューマニティ、同苦の精神が、議論の中心に据えられたものでなければなりません。(原文へ)
*エマド・キアエイ氏(イラン出身)は、シャロン・ドエフ氏(イスラエル出身)と共に中東条約機構を設立して、中東非大量破壊兵器地帯創設を目指す活動を展開している反核活動家。昨年のICAN市民社会フォーラムに続いて、NPT準備会合期間中にSGIと在ウィーン国際機関カザフスタン共和国政府代表部らが主催したサイドイベントに参加したところを取材した。反核議論の中心にヒューマニティ(人間性)を取り戻す必要性とともに、他人の痛みをわが痛みとできる、SGIの「同苦の精神」に深く共感し、核廃絶を推進する原動力としてこの精神の大切さを説いている。
INPS Japan
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