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地域アフリカ〈特別インタビュー〉 アフリカ・ルワンダ共和国 アーネスト・ルワムキョ駐日大使

〈特別インタビュー〉 アフリカ・ルワンダ共和国 アーネスト・ルワムキョ駐日大使

この記事は、聖教新聞電子版が配信したもので、同社の許可を得て転載しています。

悲劇の歴史を越え“奇跡の発展”

差異の受容と尊重から平和な社会は築かれる

東アフリカの内陸国ルワンダが、ICT(情報通信技術)立国として注目を浴びている。同国では1994年、多数派民族であるフツ出身の大統領暗殺を契機に、フツの過激派や民兵集団が、約3カ月間で100万人以上といわれる少数派ツチの人々を殺害するジェノサイド(大量虐殺)が起きた。それから28年。同国は悲劇の歴史を乗り越えて復興を果たし、「アフリカの奇跡」と呼ばれるほどの経済成長を成し遂げた。きょう4月7日は、国連が定める「1994年のルワンダにおけるジェノサイドを考える国際デー」。同国のアーネスト・ルワムキョ駐日大使にインタビューし、同国の発展の原動力や、平和構築の方途などを聞いた。(聞き手=木村輝明、福田英俊)

――近年、ルワンダはICTの発展に力を注いできました。その結果、インターネットの国内サービス可能エリアは95%まで拡大し、ネットワーク普及率は東アフリカで第1位です。
  
2000年にポール・カガメ大統領が策定した国家開発計画「ビジョン2020」において、ICT政策は、その中核の施策でした。ICTの発達によって、教育、医療、農業、金融などの分野で成果を挙げることができると考え、その整備に3億米ドル以上をかけて投資しました。
 
その結果、多様な変革が生まれました。例えば、農業分野での革新です。農業従事者が銀行のある都市に移動することなく、電子決済で支払いを行えるようになったり、彼らが市場価格を知ることで、適正な商品価格で売買を行えるようになりました。
 
ICTは、わが国の経済成長の重要な原動力となっています。

――ICTの発展を軸に、ルワンダは大きな経済成長を続けてきました。世界銀行が発表した「投資環境ランキング2020」では、「不動産登記」「会社設立」の容易さなどが評価され、アフリカ第2位という、高い順位を得ていますね。
  
カガメ大統領は「ビジョン2020」を引き継ぐ「ビジョン2050」において、ルワンダが35年までに高中所得国に、そして50年までに高所得国になることを目標に掲げています。
 
ビジョンの全体像としては、福祉の向上とともに、国際社会と連携を取りながら公共投資、民間投資を生かしてルワンダを「技術革新の中心地」にすることを目指します。
 
また、日本からも国際協力機構(JICA)を通じて、補助金や技術支援など多くの協力を受けています。日本を含む各国と協力していけば「ビジョン2050」も達成できると考えています。

――ルワンダは、国連のSDGs(持続可能な開発目標)達成への取り組みにも力を入れてきました。特に気候変動の分野では、各国が取り組む温室効果ガスの排出削減目標を、アフリカで最も早く決定しています(2020年5月)。
  
わが国は気候変動問題に対し、非常に熱心に取り組んできました。その理由の一つは、人口の大半が「天水農業(かんがいを行わない農業)」に従事していることです。自然降水を利用するため、雨水の酸性化を防ぐ必要があるのです。
  
ルワンダの世界に占める二酸化炭素(CO2)排出量は約0・001%にすぎません。しかし、地球温暖化や酸性雨の原因となる、CO2の排出量削減に向けた行動を起こすことが非常に重要だと考えてきました。
  
中でも、「eモビリティー戦略」は、最も力を注いでいるプロジェクトの一つです。ルワンダではCO2排出の要因として、自動車などの排ガスが全体の約13%を占めています。
  
首都キガリでは、約3万台のバイクタクシーが市民の足として利用されています。現在、これらに代わる電動バイクの導入を推進しています。さらには、普段の料理で使用する燃料を、生物由来のバイオマス燃料に転換することを推奨するなど、国民一人一人が気候変動対策に関与できる体制を構築しています。

環境投資を推進

――ルワンダでは、豊かな自然遺産を生かした「エコツーリズム」の推進など、環境保護のための先進的な取り組みも行われていると伺いました。
  
私たちは、自然を尊重しなければなりません。なぜなら自然は私たちの生活の一部だからです。丘陵地帯であるルワンダは、森林伐採が原因の地滑りや土砂崩れがたびたび発生し、農場や住宅が被害を受けています。自然破壊は即、自分たちの生活の破壊につながるのです。
  
こうした中、自然資源をそのまま観光に生かす「エコツーリズム」は、環境保護の観点からも、経済を支える上でも、重要な要素になっています。
  
「アカゲラ国立公園」では、1994年のジェノサイドの後、密猟などによって多くの動物が姿を消してしまいました。しかし環境保全活動に取り組んだ結果、ライオンやサイなどが戻ってきたのです。活気を取り戻した同公園は今、エコツーリズムで人気の場所の一つとなっています。
  
長期的な視点を持ち、環境への投資を推し進めることが有益な結果につながると思います。

――現在の目覚ましい発展は、ジェノサイドの後、ルワンダ国民の血のにじむような努力によって成し遂げられたものであると思います。痛ましい歴史がもたらした憎悪や分断を、人々はどのように乗り越えてきたのでしょうか。
  
ジェノサイドは、人間が起こしうる最悪の悲劇でした。国を再建するためには、真の団結と和解を生み出すための途方もない努力が必要でした。これなくして、ルワンダ社会が永続する方法はなかったのです。
  
困難な状況下で、和解を実現する方途として行ったのが「ガチャチャ裁判」でした。同裁判は、実際に暴行や略奪等に加担した者が近隣住民らの意見に基づいて裁かれる司法手続きです。私たちは、この裁判を罰を与えるためではなく、人々を結び付ける過程として位置付けました。時間はかかりましたが、こうした努力が実り、現在では平和と調和がわが国に戻ってきたと思います。
  
また、フツ、ツチなど出身の民族を示す身分証明書は廃止しました。
  
和解を生み出すために取り組んできた運動の中に、「ウムガンダ」があります。
  
「ウムガンダ」は、毎月最終土曜日の午前中に各地で近隣住民が集まり、地域の清掃や公共施設の建設等を行う社会奉仕活動です。
  
この活動の特徴は、単に社会奉仕に汗を流すだけでなく、作業の終了後に毎回、集会を行う点です。この中で、地域社会の問題について意見交換がなされ、住民同士が自身の思いを話し合うのです。
  
皆で語り合うことで互いへの理解を深め合うウムガンダは、人々が和解の道をたどる原動力になり、ルワンダを語る上で不可欠な文化となっています。

――国家の再建において、女性の存在が大きな役割を果たしていると伺いました。ルワンダは国会議員に占める女性の割合が6割を超え、その比率は世界第1位です。
  
わが国ではジェノサイドの際に、多くの男性が犠牲となり、女性の社会進出がこれまで以上に求められました。このため、経済的、政治的、社会的な側面で、女性が活躍できる仕組みづくりを考えたのです。
  
例えばルワンダの憲法では、「指導的機関の地位のうち少なくとも30%を女性が占めるものとする」と規定されています。また、地方自治体では女性の市長、副市長が就任するようになりました。
  
かつては、教育を受けられる女子は少なかったのですが、女性の社会進出が大きく進む中、就学率も向上しました。
  
女性の視点や経験を大切にしないのは、国民の半分の意見を無視することと同義です。多様な考えを受け入れ、全ての人を尊重することが、地域社会の絆を強くし、平和な社会を築くための力となるのです。

青年こそ「未来」「変革の主体者」

――平和構築において、「教育」は重要な柱の一つです。池田SGI会長は「教育こそ、21世紀の平和社会を建設する源泉」と、その重要性を訴えています。大使ご自身の教育に対する信条をお聞かせいただけますか。
  

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Seikyo Shimbun

世界平和に多大な貢献をされている池田会長と創価学会に対し、心より感謝申し上げたいと思います。また、教育の分野でも、大きな成果を残されてきたと認識しております。ルワンダは、平和や調和の促進など、貴会の活動から多くを学ぶことができます。創価学会に関する書物も幾つか読ませていただき、大変に感動しました。
  
教育は人間の心を開き、他者への理解を深め、多様性や他の考えを尊重する姿勢を育むための、非常に重要な手段です。これこそ、ジェノサイドを経験した私たちが国民に提供したいものであり、貴会が世界で実践されていることの核心にあるものだと思います。
  
私がルワンダ国立大学(現ルワンダ大学)に入学したのは95年。ジェノサイドの直後でした。キャンパスは破壊され、まだ大きな困難を伴う時期でした。
  
実はその時にお世話になった教授の一人が日本人の博士でした。彼は、ルワンダの惨状を知り、「何かできることはないだろうか」と考え、同大学に1年間、無償で教えに来たというのです。とても感動しました。私が大学院への進学を志した時には、彼が推薦人の一人になってくれました。今も良き友人として交流を続けています。
  
これまでルワンダから日本に多くの学生が留学し、素晴らしい知識や技術を学んでいることを本当にうれしく思っています。しかし、私はそれだけでなく、日本の人々が持つ勤勉さ、誠実さなどを吸収してほしい。そうすれば、彼らは見違えるような成長を遂げると思うのです。私自身、今も学び続けています。
   
――平和な世界を築くためには、若い世代の存在が不可欠であると思います。未来を担う青年へのメッセージをお願いします。
  
青年には、世界を変革する力があります。青年こそが「国の未来」であり、「変革の主体者」であることを忘れないでほしいと思います。そして、常に前向きであっていただきたい。また、新しい考えを受け入れていくことも大切でしょう。
  
世界が幾多の困難に直面している今こそ、変革力と創造性を発揮して、道を開いていってほしいと願っています。(原文へ

 
アーネスト・ルワムキョ 1969年、ウガンダ生まれ。ルワンダ国立大学(現ルワンダ大学)を卒業後、米コーネル大学大学院で国際開発修士号を取得。2004年にルワンダ財務・経済計画省に入省し、同省経済開発計画局長等を歴任。駐イギリス大使、駐インド大使を経て20年から現職。

INPS Japan/『聖教新聞4月7日付を転載」

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