SDGsGoal4(質の高い教育をみんなに)|視点|少女らにとって教育は進歩への扉を開ける鍵(ネンナ・アグバ:ファッションモデル)

|視点|少女らにとって教育は進歩への扉を開ける鍵(ネンナ・アグバ:ファッションモデル)

【国連IPS=ネンナ・アグバ】

私は、女性は男児を産んで初めて自身と家族が社会から認められるという、本質的に男性優位のナイジェリア文化の中で育ちました。11歳の時、一番下の妹となる5番目の子どもを出産する母に付き添いましたが、奇しくも藪医者の不手際で母が命を落とす瞬間を目の当たりにすることになりました。

母はナイジェリアのこうした社会規範の犠牲者です。当時母には既に4人の健康な娘たちがいたにもかかわらず、伝統的な規範に従おうとして、自分の命を犠牲にしてでも男の子を生む決心をしたのです。母をあのような苦境に追い込んだ根本的な要因に気付いた時、私は少女である自分の立場がナイジェリア社会でどのような位置を占めているのかをはっきり理解しました。

また母の死は、教育の重要性が私や4人の妹たちの人生にとって、それまでとは異なる意味合いを持つことを悟った瞬間でもありました。私はその後高等教育を受け、大学では化学を、そして大学院では都市学を専攻しました。

そして今、これまで習得した教育のお陰で、私はナイジェリアにいる妹たちの就学を支援できています。妹たちも私と同じように、教育機会を得ることができれば、社会が規定した伝統的な制限に縛られない進歩的な未来を手にする可能性が開けてくると信じています。

妹や私のようなナイジェリア人の少女にとって、教育とは、慣習的な期待を超えて成功する機会に遭遇した時に、そのようなチャンスの扉を開く「鍵」となるものなのです。

教育は私たち女性も(男性同様に)生まれながらに持つべき基本的な権利だと確信しています。またほとんどのナイジェリア人少女らにとって、教育こそが、女性を経済的、政治的、社会的に男性より劣った存在とみなし続ける、文化的、伝統的な階層化のシステムから抜け出す唯一の手段なのです。

そのような服従から逃れることができた女性は、大抵教育によって社会的な力を身につけ、それを成し遂げてきました。優れた教育は、ナイジェリア人の少女らに社会の貴重な一員となる機会を提供してくれます。このことから、私は、妹たちが勉強を続けられるように、全力で支えていかなければならないと決意しています。

ナイジェリアや世界の少女たちにとって、教育は経済的な自立を可能にし、政治参加への道を切り開き、女性に対する様々な形態の暴力を永続化する抑圧的な規範に積極的かつ効果的に反対するために必要な知識を授けて、男女をエンパワーすることができるものなのです。

ナイジェリアに根強く残っている女性軽視の文化とは対照的に、教育は異なるもう一つの文化的な選択肢に触れさせる役割を果たします。ナイジェリアでも一部の少女らはこうした教育の恩恵を受けれるようになったため、ボコ・ハラムのような過激派グループは、彼女達が新しい価値観に啓発されるのではないかと危機感を募らせているのです。

私は一方で、奇跡でも起きてこの(女性蔑視の文化の)問題が一刻も早く解決できないものかと熱望しますが、現実には魔法で事態が急変したり一夜で問題が解決するものではなく、むしろ問題解決には総力を挙げて地道に絶え間なく努力を重ねていくことが必要だということを理解しています。母の死は女性軽視を助長する邪悪で不当な社会規範の産物に他なりません。社会の慣習は過去の世代が作り出したものですから、それと同じように、未来の市民が教育を通じて新たな規範を育むことによって自らを規定することとなる文化を再定義することができるはずです。

私は楽観主義者で、世界を変えたり、世界中の女性とりわけナイジェリアのような国の女性の地位を向上させることが可能だと信じています。そう考えるのは、私が世間知らずで考えが甘いとか、これまでに変革をもたらそうとした努力の欠点に気づいていないというわけではありません。

私の楽観主義は、かつて絶望的な状況にいた自分が、世界中の指導者や市民に、なんとしても女性に加えられている不正義を終わらせる緊急の必要性に気づいてほしいと願った経験に根ざしているのです。女性軽視がもたらす社会の歪みを目の当たりにし、変化の必要性を痛感していた私の中では、「必要性」と「可能性」という言葉はいつの間にか同義語になりました。

今年4月にナイジェリア北部の学校で発生した、女子学生らがボコ・ハラムに拉致された事件には胸が押しつぶされそうな衝撃を受け、少女らの開放を求める「Bring Back Our Girls(私たちの少女を返して)」キャンペーには心から賛同しています。しかしそれと同時に、この事件に対する関心の高まりが、ナイジェリア社会をして、女性や少女の苦痛を無視し続けるのを止めさせる契機とならないかと、期待してしまうのです。残念ながら、ある国の国民が熱心に変革を希求し、政府に行動するよう要求するほどの強い意思が形成されるには、痛ましい事件や事故の存在が必要な場合が少なくないのが現実です。

ボコ・ハラムは、進歩に反対する勢力とみられていますが、ナイジェリア社会が抱えるより深刻な障害は、教育を受けたいと純粋に願う少女たちを保護する行動をとることに、社会の幅広い層が依然として躊躇している現実に見出すことができます。

妹たちや私のようなナイジェリアの少女は、社会の価値ある一員になりたいという希望が叶ってほしいと願っていますし、私たちにはその価値があると考えています。そして教育はこの夢を実現するための手段なのです。(原文へ

*ナイジェリアで育ったンネナ・アグバは、米国の人気テレビ番組「アメリカン・ネクスト・トップモデル」に出演して人気を博した。彼女は苦労して得た奨学金でテキサスA&M大学から化学の学士号を、さらに大学院で都市学の修士号を取得している。ンネナはナイジェリアにいる4人の妹達の就学を支援しているほか、ナイジェリアの学校に通う少女たちに奨学金を提供しているキーチーズ・プロジェクトというNGOのイメージキャラクターを務めている。

翻訳=IPS Japan

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