【国連IPS=沙祖康】
国連持続可能な開発会議、いわゆる「リオ+20」は、数十年に一度という貴重な機会です。
6月20日に開会するこの会議には、135以上の国々から、元首・政府首脳、産業界や市民社会の代表など5万人が参加予定で、潘基文国連事務総長は、「リオ+20」を「国連の歴史の中でもっとも重要な会議のひとつ」と呼んでいます。
「リオ+20」には国際社会の熱い眼差しが注がれています。かつてないほど相互依存が進んだ70億の人類が暮らす今日の世界では、持続可能な開発のみが、複雑に絡み合いながら地球の存続を脅かしている経済・社会・環境問題に取り組む、唯一の方法なのです。
持続可能な開発に関する前進とは、飢えに苦しむ数百万の人々の食卓に食事が並ぶことであり、適切な仕事の機会であり、清潔な水へのアクセスであり、きれいな空気を胸いっぱい吸い込むことであり、生命に満ちた森の中で歩くことができるようになるということです。
さらに、持続可能な開発とは、すべての女性が男性と平等な機会を得ることであり、すべての子どもが学校に行く機会を得ることであり、基本的衛生であり、社会的包摂の環境の中で生きることであり、前途ある将来を見据えることができる、ということなのです。
こうした「持続可能な開発」への基礎については、多くの人々が、当たり前のように感じているかもしれません。しかし、現実はどうでしょうか?そのように感じることができるのは、実は恵まれた一部の人々であって、現実には、負担過剰となった世界は、数多くの難題(世界的な経済不況の影響、エネルギー不安、水不足、食料価格の高騰、気候変動や益々頻繁且つ大規模になる自然災害に対する脆弱性等)に直面しているのです。
こうした深刻な現状から、私たちは互いが密接につながった世界に生きているという重要な真実に気づかされるのです。こうした難題は、特定の国や地域だけの問題ではなく、本質的に全ての人類に影響を及ぼすグローバルな問題なのです。
今日の世界では、ある場所で起こった出来事が容易に他の場所に波及します。人類は、あたかも地球が5つあるかのような勢いで資源を消費し、将来の世代のことを考えない生活を送ってきましたが、もはやこうした旧態依然とした生活スタイルを続けていく余裕はなくなっているのです。
「リオ+20」は、他の国連会議とは異なるものです。この会議は、人々の生活の質を犠牲にして新たな規則や法令を施行しようとしているものではありません。むしろ、個人、地域コミュニティー、産業界、政府が、より良い賢明な選択ができるよう、励まし手助けする機会なのです。
私たちの経済、地球、社会の繁栄は、そうした一つ一つの選択が組み合わさって実行されることで、はじめて確保することができるのです。「リオ+20」は、世界の指導者を持続可能な世界(経済・社会・環境面において)に向けてコミットさせつづけるとともに、彼らに人類や地球の福祉を第一義においた選択をさせる、重要な機会を提供しているのです。
多くの支持を集めつつある提案のひとつに、ミレニアム開発目標(MDGs)を補完・強化するものとして、持続可能な開発目標(SDGs)を策定しようという動きがあります。実施可能で計測可能なSDGsは、持続可能な開発に向けたハイレベルな政治的コミットメントを具体的に表現するものとなるでしょう。
私自身は、「リオ+20」では、持続可能な開発と貧困削減という文脈において、グリーン経済を前進させたいと考えています。今日、実に幅広い分野(まともな仕事―とりわけ毎年労働人口に加わる8000万人近くの若者の就労問題、社会保護政策、〈社会的弱者の〉社会への受入れ、エネルギー確保の問題、効率・持続可能性の問題、適切な水管理の問題、持続可能な都市問題対策、海洋の保護と管理の問題、自然災害への備え等)においてアクションが求められているのです。
各国政府は、この会議で、持続可能な開発という目標をもっとも前進させることができる制度的枠組みについて合意する必要があります。またその際、市民社会と営利部門についても役割を与えることが重要です。
まさに、社会の全ての分野が持続可能な開発に向けた実践をしていくことができますし、そうしなければなりません。例えば、ビジネス・産業界は、世界をより良い方向に変革する手助けとなる技術を開発し、環境に優しい職業を創出し、企業の社会的責任(CSR)を通じて、社会に前向きな影響を及ぼすことができます。
また市民社会は、最も弱い立場にある人々の声が政策に反映されるよう政府の責任を追及することができます。さらに科学者は、持続可能性に関わる難題に対して、革新的な解決策を生み出すことが可能です。そして私たち一人一人が、日々の生活の中で、そうした情報に基づいた選択肢を実践することで、持続可能な開発に参画することができるのです。
まさに「リオ+20」は、地球がみんなのものであるのと同様に、みんなの会議なのです。従って、この会議で掲げられる目標、大望やその結果は、全て私たち一人ひとりが共有すべきものなのです。
最後に、「リオ+20」は、将来世代のための会議でもある点を指摘しておきたい。アメリカ先住民の間には、「私たちの土地は、先祖から相続したものではなく、子孫から借りているものなのです。」という有名な格言が伝えられています。
私たちは、創造的な思考を働かせ、前向きなイニシャチブに参画し、自発的なコミットメントを行うことで、将来の世代が誇りに思うような世界の実現に向けたコンセンサスを形成し、共に努力していくことができるのです。そのような未来を創造するために、共に取り組んでいこうではありませんか。(原文へ)
※沙祖康(Sha Zukang)氏は、国連事務次長(経済社会問題局長)で、持続可能な開発に関する国連会議(Rio+20)の事務局長。
翻訳=IPS Japan
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