ニュース視点・論点|視点|安保法とこれからの責任(石田尊昭尾崎行雄記念財団事務局長)

|視点|安保法とこれからの責任(石田尊昭尾崎行雄記念財団事務局長)

【東京IDN=石田尊昭】

9月19日未明、安全保障関連法が成立した。民主党、共産党など野党5党が猛反対・猛抗議する中での成立であった。連日、国会議事堂前では抗議集会が行われ、反対する野党議員と参加者が声を合わせて「戦争したがる総理はいらない!」「戦争法案、絶対反対!」「憲法を破壊するな!」と叫んでいた。

反対する野党が強調するように、この法律によって、「戦争したがる総理」が「憲法を破壊」し「徴兵制を復活」させ「米国の意のまま、米国の利益のために、米国と共に世界中で戦争する」としたら、それは日本のみならず世界においても「極めて危険で愚かな法律」が誕生したことになる。

ただ、反対する野党の支持率は、同法が成立した19日以前のデータを見る限り、全くと言ってよいほど伸びていない。各社バラツキはあるものの、1位は常に自民党で、2位の民主党に3~4倍以上の差をつけている。同時に、4~6割存在している無党派層(支持なし層)も、野党は全く取り込めていないことがわかる。

同法が本当に「極めて危険で愚かな法律」であれば、自民党支持者や無党派層の中から少なくとも数%は野党支持に回るのが自然ではないだろうか。それが全く動いていないということは、多くの国民がこの法律の危険性に気付かない無知で鈍感な存在なのか、それとも、野党の指摘や対応が根本的に間違っているのか、果たしてどちらであろうか。

「自民党も安倍政権も安保法も積極的に支持するわけではないが、野党が主張する『徴兵制』『戦争したがる総理』『戦争法案』も現実的とは思えない。むしろそうした扇動的なフレーズを使い、建設的な議論や対案を示さずパフォーマンスに走りがちだった野党には共感できない。また、憲法との整合性についても100%納得しているわけではないが、それでも『憲法が掲げる理想』と『現実の世界情勢』の中で、このあたりがギリギリ許される現実的な妥協点かもしれない」―そう考える人が少なからずいるのではないだろうか。

いずれにせよ、同法は成立した。これまで以上に、私たち国民の責任が問われることとなる。かつて「憲政の父」と呼ばれた尾崎行雄は、立憲政治には「批判精神」が不可決だと言った。「批判精神」とは、何でもかでも一方的に反対することではない。「お上任せ」にせず、「誰が正しいかではなく、何が正しいかを考え抜く」ことだ。

「お上が決めたのだから、これで終わり」ではなく、この法律の実質的な運用の過程で、野党が指摘している状態を作り出さない(政府が誤った方向に進まない)ように政治を厳しく監視していく責任が私たちにはある。そして、仮に野党の指摘通りの事態になりそうであれば、その時点で即、選挙を通じて、私たちの手で政権交代させればいい。それが民主主義である。

IPS Japan

石田尊昭氏は、尾崎行雄記念財団事務局長、IPS Japan理事、「一冊の会」理事、国連女性機関「UN Women さくら」理事。

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