SDGsGoal17(パートナーシップで目標を達成しよう)|視点|新国連事務総長を待ち受ける困難な課題(クル・C・ガウタム元国連事務次長、元ユニセフ副事務局長)

|視点|新国連事務総長を待ち受ける困難な課題(クル・C・ガウタム元国連事務次長、元ユニセフ副事務局長)

【カトマンズIPS=クル・C・ガウタム】

次期国連事務総長の選出は、国連が各国から迂回され、多国間主義――その中核にある国連そのもの――が、世界の最も強大な国家や指導者の一部から強い挑戦を受ける中で、2026年という極めて不利なタイミングで行われる。

2027年に就任する新事務総長は、前例のない財政危機と、国連を存続させるためだけでも大規模な制度改革を迫られるという重い遺産を引き継ぐことになる。一見すると、これは新事務総長が大胆な構想を打ち出すには最悪の状況に映る。とりわけ、真の多国間主義の強化には消極的で、むしろ自らの勢力圏を守るための多極的秩序を好む強国の指導者たちの支持を得ることは容易ではない。

しかし歴史を振り返れば、最も大胆な理念は、戦争や革命、世界的危機といった激動の時代にこそ生まれてきた。先見性ある新たな国連指導者が、これまでにない発想を打ち出し、規範に基づく国際秩序を再生するための種をまく可能性は、決して否定できない。

今日の最も強大な指導者たちの多くが多国間主義に対して消極的である一方、世界の一般市民――とりわけデジタルに精通した若い世代――は、グローバルな相互依存を強く実感している。

彼らは自らを「地球市民」と捉え、国境のない世界で生きることを望み、21世紀の現実に即した国連改革という先進的な提案を受け入れる素地を備えている。

有望な出発点の一つは、国連初の女性事務総長の選出であろう。さらに不可欠なのは、国連の財政制度を改革し、少数の富裕で強大な国家の意向に過度に左右されない、より広範で持続可能な資金基盤を築くことである。

資金不足に陥っている国連の巨大で分散した組織構造については、現事務総長が進める「UN80イニシアティブ」の下で、すでに一定の統合が始まっている。新事務総長はこの流れを加速させ、批判者や懐疑論者からの支持をも取り付けることができるかもしれない。

とはいえ、いかに活力と構想力に富んだ事務総長であっても、加盟国の後押しなしに改革を進めることはできない。現状では、拒否権を持つ常任理事国(P5)をはじめとする強国の指導者たちは、国連のトップ外交官を真のグローバル・リーダーとして十分に力づけることに消極的であるように見える。

多くの啓発された世界市民――特にZ世代――が、大胆で人々を鼓舞する指導者を国連のトップに期待しているのに対し、主要国は、戦略的で強い「ジェネラル(総長)」よりも、従順な「セクレタリー(事務官)」を望んでいるのかもしれない。

グローバル・サウスの台頭や、BRICS+、G20といった枠組みの拡大により、特にソフトパワーの面で、国連創設から80年を経た現在、主導的立場にあった国々から力の重心は移りつつある。この変化する国際環境が、国連の強化と多国間主義の再活性化につながることが期待される。

気候変動、戦争と平和、パンデミック、拡大する不平等、そしてAI革命がもたらす深遠な機会とリスク――こうした地球規模の課題に対処する唯一の現実的な手段は、今なお多国間主義である。

The United Nations Headquarters as seen from First Avenue in New York City. Credit: UN News/Vibhu Mishra

いかなる国であれ、どれほど富み、どれほど強大であっても、これらの問題を単独で解決することはできない。世界はいま、より効果的な国連を切実に必要としている。
各国指導者が自国民の願いに耳を傾け、新たな事務総長を選び、その人物に十分な権限を与えて、現在そして未来の世代のために、より平和で繁栄した世界を築くことを期待したい。

クル・ガウタムは、元国連事務次長、ユニセフ副事務局長であり、著書に『Global Citizen from Gulmi: My Journey from the Hills of Nepal to the Halls of the United Nations』がある。

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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