ニュース視点・論点国連事務総長、2030年グローバル目標の重要性を説明

国連事務総長、2030年グローバル目標の重要性を説明

【ニューヨークIDN=ファビオラ・オルティス】

国連の潘基文事務総長は、各国連加盟国が持続可能な開発目標(SDGs)を国家政策の不可欠な部分とし、2030年までの達成を目指すことを強く望んでいる。潘事務総長はIDNとのインタビューの中で、この新たなグローバル開発目標を前進させるうえで市民社会が重要な役割を果たす必要性を強調した。

17の新たな開発目標と169のターゲットは、潘事務総長が2012年に立ち上げた「グローバル・エデュケーション・ファースト・イニシアチブ(GEFI)」に沿って、持続可能な開発を促進するうえで世界市民に重要な役割を割り当てている。

UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri

潘事務総長はIDNの取材に対して、「私は、二国間や多国間協議の機会を通じて、全ての指導者に対し各加盟国がSDGsを自らのものとして認識し、各々の国内経済・社会・環境政策に反映させるよう、強く求めてきました。」と語った。

潘事務総長は、10月9日から11日にペルーのリマで開催された世界銀行グループ・国際通貨基金(IMF)の年次総会から帰った後、ニューヨークの国連本部ビルの38階でIDNのインタビューに応じた。

世界188か国の財務相と中央銀行総裁が出席する年次会合は、国連が17の持続可能な開発目標(SDGs)を採択した歴史的な投票から2週間後に開催された。

潘事務総長は10日、世銀・IMF合同開発委員の議論に参加した。いわゆる「開発委員会」は1974年に創設されたもので、開発問題に関する政府間のコンセンサスを形成すべく閣僚レベルの委員が出席して通常春・秋の年2回開催される。

2030アジェンダ」は「人間を中心にした」ものである。開発委員会会合で登壇した潘事務総長は、「今後15年の開発の道筋は、貧困削減や包摂的な成長、持続可能な開発をこれまで妨げてきた『構造的な要因』に対処するものです。」と強調した。SDGsのモットーは「誰も置き去りにしない(no one will be left behind)」である。

潘事務総長は、「新アジェンダの成功は、政府、議会、地方自治体、国際機関、市民社会、学界、民間部門を含めた、すべてのセクターの間で、開発に向けた新たなパートナーシップを組めるかどうかにかかっています。」と指摘したうえで、「世界銀行は、豊富な専門能力を活かして、持続可能な開発のための能力構築と資源動員を強化することができます。」と強調した。

また潘事務総長はIDNとのインタビューの中で、17の新たな開発目標と169のターゲットは、健全な地球において、場所を問わず、全てに人々の繁栄と健康で幸福な生活を促進することを目標としたものだと繰り返し述べた。

「これらのSDGsは、政府のみならず、市民社会や慈善家など、全ての人々が参加して履行されることが重要です。」と潘事務総長は語った。

ポストミレニアム開発目標(MDGs)であるSDGsのモットー「誰も置き去りにしない」は、社会が持つべき「オーナーシップ感覚」を強化することを目指すものだ。

潘事務総長は、「性的多様性やLGBTI(レスビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、インターセックス)の権利が特定の目標として含まれなかったことを残念に思うか」という問いに対して、「この問題は、新たな開発アジェンダのすべての項目を「分野横断的に」貫いている問題であり、『誰も置き去りにしない』というSDGsのモットーに既に含まれています。誰もが参加すべきであり、民族や性的指向、性別、出生、貧しいか金持ちかは関係ないのです。新しいアジェンダには差別などなく、人間を中心においたビジョンなのです。」と潘事務総長はIDNの取材に対して語った。

国連事務総長にとっては、(SDGsが期限を迎える2030年までの)次の15年は、とりわけアフリカの人々にとって「希望の時期」になるであろう。アフリカでは、今年1月31日にエチオピアのアジスアベバで開催された第24回アフリカ連合(AU)通常総会で採択された「アジェンダ2063」とあわせる形で、SDGsが履行されていくことになっている。

SDGsとアジェンダ2063

アフリカ諸国は、今後50年間で達成したい8つの目標を挙げた。これが、アフリカ経済発展のための柱として機能することになる。「アジェンダ2063」は、実際の運用のために、25年、10年、5年単位で、短期間の行動計画を伴った実行計画を持っている。

Agenda 2063. The Africa We Want/ UN photo
Agenda 2063. The Africa We Want/ UN photo

我々の望むアフリカ」への希望は、過去の不正義をただす枠組みと、一世代で貧困を根絶し、アフリカの社会的、経済的変革を通じて広く繁栄を実現することで、アフリカ大陸の21世紀を実現する枠組みを提供している。

「我々は、2063年までに、アフリカが、(その資源を持続可能な形で、かつ長期的に管理することで)自らの開発を促進する手段と資源を持ち、繁栄した大陸になることを望んでいる」と宣言は再確認している。

その他、次のような希望が目標として宣言されている。「今後50年間で、アフリカは、(今日、人間の安全保障や平和、開発への大きな脅威になっている)武力紛争やテロ、過激主義、不寛容、ジェンダーを基礎にした暴力をなくすだろう。」「アフリカは、麻薬がなく、人身売買もなく、組織犯罪もなく、武器貿易や海賊行為などその他の犯罪ネットワークもない大陸になるであろう。」「それ以前、2020年までに、植民地主義のすべての残滓を取り去り、占領下にあるすべてのアフリカの領域は完全に解放されなくてはならない。」「アフリカの人々は、恐怖も不正もなく裁きを与える独立した裁判所と司法制度を安価で利用できるようになるだろう。」

潘事務総長の言葉によると、良い法の支配と機構を持った、アフリカの平和と繁栄に国連の「最大の優先順位」が置かれることになる。

「17のSDGsの策定には、人間の生活、そしてこの地球のすべての側面が含まれています。とりわけ、アフリカの開発に関して言えば、SDGsはアフリカの『アジェンダ2063』とともに歩むことになります。」「国連が、開発プロジェクトや平和と安全保障の課題を通じて、アフリカ連合およびアフリカ各国と緊密に関わっているのはこのためです。」と、4人のジャーナリストとの会合に応じた潘事務総長は語った。

潘事務総長は、このアフリカ諸国の開発への渇望を「国連が緊密に協力している『先を見通したアジェンダである』と解説するとともに、「アジェンダ2063とSDGsはともに前進し、その基本的な計画は互いに連携していく必要があります。」と語った。

潘事務総長によれば、SDGs合意は、「数百万人という民衆が参加した」、世界の指導者によって採択された包摂的なプロセスである。

「財政・技術協力が、今後のSDGsの履行にあたって重要な役割を担うことになります。」と潘事務総長は指摘した。しかし、それには多額の資金が必要となる。国家元首や、(財務、外務、開発協力などの)関連閣僚が7月13日から16日にエチオピアに集まり、貧困や飢餓の根絶、食料安全保障の達成などの野心的な目標の達成に必要な資金調達の方法をめぐって協議した。

アジスアベバ行動目標

アジスアベバ行動目標は、開発資金調達メカニズムを協議した「第3回開発資金国際会議」で採択された成果文書である。国連の推計によると、SDGsを履行するためには、世界は毎年11.5兆ドル、15年では172.5兆ドルを要するという。

「3年にも及ぶ交渉の後、国際社会は、途上国に対する財政・技術支援を行う基盤を提示したこの枠組みを採択したのです。」と、潘事務総長は語った。

この成果文書は、グローバル・パートナーシップと連帯の精神で、あらゆるレベルにおいて持続可能な開発のための環境をつくり、そのための資金を調達するという難題に対応していく「強い政治的コミットメント」を確認したものである。

「この行動目標は、等しく野心的で信頼性のある履行方法によって裏打ちされ、持続可能な開発と普遍的なポスト2015年開発アジェンダを履行するための資金調達の枠組みを更に強化するとともに、開発のための資金調達を再活性し強化しなくてはならない。」と成果文書には記されている。

またこの成果文書は、「多くの国々、とりわけ途上国は依然として大きな問題に直面しており、一部の国はきわめて立ち遅れた状態にあること。」さらに「多くの国々の間で不平等が劇的に増大している。」と指摘している。

潘氏が事務総長に就任したのは2007年1月1日であり、任期は2016年12月31日までである。潘事務総長は、1945年に創設され、現在193の加盟国を抱える国連の70周年の記念日を歓迎した。

“Punch Rhodes Colossus” by Edward Linley Sambourne (1844–1910) – Punch and Exploring History 1400-1900: An anthology of primary sources, p. 401 by Rachel C. Gibbons. Licensed under Public Domain via Commons

潘事務総長の意見では、国連の最大の貢献の一つは、アフリカ・アジア諸国の非植民地化プロセスに尽力したことにあるという。1950年代から60年代にかけて、この2つの大陸では40か国以上が独立を果たした。

「人類への大きな貢献は、多くの国々が植民地支配体制から離脱していったプロセスです。急速な脱植民地化プロセスを真に促進したのは、まさに国連でした。これは、途上国におけるアフリカの発展の基礎をなしています。」と潘事務総長は語った。

「多くのアフリカ諸国が独立して数十年が経過しますが、一部の国々は『民主主義への円滑な移行』を果たしたものの、大半の国々は『民主主義に移行するまでに、困難で悲劇的な道』を辿らねばなりませんでした。今日でもこの難題に直面している国々があります。」

潘事務総長は、「国連の70年の歩みを振り返れば、国連の効果と効率性、そして国連がどのような遺産を残してきたのかということについて、一定の懸念があることは認識しています。私は、この70年間にわたる国連の取り組みを誇らしく思っています。人権、良き統治、民主主義に関するすべての主要な合意は、国連においてなされてきたものなのです。」と語った。

持続可能な開発アジェンダは、世界を、より安全で、豊かな、そして、持続可能な道へと導いていくでしょう。」と潘事務総長は付け加えた。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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