【ムタレIDN=ファライ・ショーン・マティアシェ】
ジンバブエの若い女性たちが家父長制的で男性支配的な政治の世界でのし上がっていこうとする際、オンライン上のいじめ(=ネットいじめ)や性的ハラスメントが問題となる。
若くカリスマ性があるネルソン・チャミサが率いる野党「変革のための市民連合(CCC)」に関する議論として始まったこの問題は、最終的には、CCCのファドザイ・マヘレ広報担当が与党ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線「ザヌPF」支持者からのネットいじめを巡る法廷闘争に打って出るという展開になっている。
国有紙『サンデー・メイル』のエドムンド・クドザイ元編集長が、マヘレとその婚約者とされる男性の裸の写真を掲載すると脅迫した。
マヘレの弁護士は後に、名誉棄損で10万ドルの慰謝料を求めてクドザイ元編集長を首都の高等法院に訴えた。
マヘレの事案はジンバブエ政治で多くの女性が直面する問題を象徴している。女性たちはしばしば、侮蔑的なあだ名を付けられたり、既婚の男性と不倫関係に陥っていると非難されたりすることで、口を封じられてきた。
政治における女性の権利を擁護する団体「リーダーシップと政治の浄化を求める女性アカデミー」のシタビル・デワ代表は、「女性が政治を敬遠する理由の一つに『ネットいじめ』があります。ネットいじめは、これまでも女性に対する武器として用いられてきました。政治の世界で要職を務め主導権を握ろうとする女性のほとんどが、個人情報をネットに流されたり、身体のことで男性からからかわれたりして、市民としてのイメージを汚され、票を失わせて政治の世界から去るように仕向けられてきたのです。」と語った。
デワ代表はまた、「ツイッターのようなマイクロブログ、フェイスブックやワッツアップのようなメッセージアプリなどでのヘイトスピーチも女性を政治の世界から追い出すために使われてきました。」と指摘した。
CCCの「女性の権利向上」臨時担当であるバーバラ・グワングワラ・タニャンイワは、若い女性や既婚女性の多くが政治を敬遠するのは、この国で女性が不当に扱われているためだという。
「驚くべきことに、国会議員を含めたほとんどの男性政治家は、男女平等などというものは労せずして女性に利益を与えるに等しいものだ、程度に考えています。他方で、政治を職業とする人が増えているため、男性が就くべきだと考えているポジションに女性を就かせようとはしません。」と、タニャンイワは指摘した。
人権活動家であり野党「労働・経済・アフリカ民主党」(LEAD)の党首でもあるリンダ・マサリラは、様々なSNSで侮蔑的なあだ名で呼ばれてきた。
「私が気づいたのは、ジンバブエはきわめて家父長制的な社会だということです。ジンバブエの政治や経済の世界で私のような人間が頭角を現すことは、多くの男性にとっては好ましくないことなのでしょう。男性は、いかに女性が力を持っているかを知っていますから、意見を持った女性を黙らせようとしますし、女性を黙らせる唯一の方法はその女性の人格そのものを攻撃することだということに、私自身が政治に関わる中で気づいたわけです。」とマサリラは語った。
議会でのジェンダー平等を促進するために、2013年に制定されたジンバブエ憲法では、上院で男女平等の議席割り当てが規定されており、2020年現在、上院議員80人のうち48%が女性となっている。
2018年の総選挙後、計350議席を持つ上下院の合計で女性議員は34.57%を占めている。
「2023年、女性にとっての政治環境は悪化する」
2023年に予定された統一選挙まであと1年となる中、政治に携わる女性たちは、多くの若い女性政治家にとってはいばらの道が待っているのではないかと懸念している。
ジンバブエ政治における女性は、現実世界でも性的嫌がらせを経験している。
2020年5月、ジンバブエの3人の活動家であるセシリア・チンビリ、ジョアナ・マモンベ、ネツァイ・マロヴァが、新型コロナウィルスから個人を防護する器具を政府が提供できなったことを抗議するデモに参加したことで誘拐され、性的虐待を受け、拷問されたと見られている。
政府はこの事件を捜査し容疑者を逮捕するのではなく、逆に、誘拐を偽装したといういう理由で被害者3人を逮捕した。3人は依然として法廷で争っている。
「政治的な暴力やセクハラは、政治に携わる女性に対して行われてきました。政治的な動機による暴力やセクハラの事案は多く記録されています これは昔も今も女性が政治を恐れる理由になっています。」とデワ代表は語った。
タニャンイワは、女性には非暴力的な環境が必要であり、2023年の統一選挙ではまだ多くの女性が政治に参入してくることはないだろうとして、「2023年の選挙に向かって、ザヌPFが暴力に訴えている中では、女性にとっての環境がよくなるとは思えません。」と語った。
デワ代表は、ジンバブエが来年の選挙に向かう中、各政党が選挙戦を繰り広げ、政治的環境は不安定化してくるだろうと見ている。
「SNS上を含めて女性指導者を狙った政治的動機に基づいた暴力は、命を狙うこともあります。女性の指導者や活動家は、政治的動機を持った加害行為や嫌がらせに直面しています。自分の命や家族が危険にさらされることを恐れて、女性が政治に関わらなくなる」とデワ代表は語った。
あらたなデータ保護法は政治の世界の女性を守るか?
ジンバブエ議会は昨年12月、サイバーセキュリティやサイバー犯罪に関連したデータ保護法を制定した。
政治における女性の権利を擁護する一部の組織は、自らを守るためにデータ保護法を利用し、SNS上で嫌がらせを加えてくる者を裁判に訴えようとしている。
デワ代表によれば、ネットいじめと闘うために、それがいかに問題であるか意識を高めていく必要があるという。
デワ代表は、「政治に参加する女性はサイバーセキュリティに関する訓練を受けて、ネットいじめに対する耐性を身につけ、そうした事案に対処するための知識を持たねばなりません。」と語った。
「もし政治環境が女性にとって有利になり、暴力から解放されるようになれば、より多くの女性が自由かつ積極的に政治の世界に参入してくるようになるだろう。」とデワ代表は語った。
「女性が政治に参入しやすい環境を作るのが政党や市民社会、政府、その他の関係者の義務に他なりません。」
タニャンイワは、ジンバブエのすべての政党の指導者らがネットいじめを非難すべきです。」と語った。(原文へ)
INPS Japan
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