【ダッカIDN=ナイムル・ハク】
非政府組織(NGO)オービス・インターナショナルの最高経営責任者・会長であり、「ボブ」の呼称でも知られるジョン・ボブ・ランク氏が、最近特別な任務を引き受けてバングラデシュを訪れた。「オービス」がパートナーとして支援している、「避けられる失明」(世界の視覚障害者2億5300万人中、9割が途上国在住、8割が治療が可能な状態にある:INPS)の問題に取り組んでいるいくつかの病院を訪問するためだ。
米空軍の退役准将でもあるボブによるバングラデシュ訪問は、MD-10航空機を改装した「空飛ぶ眼科病院(FEH)訓練プログラム」として知られる世界で唯一の移動教育病院が同国に就航した数週間後のことであった。
オービス・インターナショナルに2016年2月29日に加わったボブは、IDN-INPSバングラデシュ特派員のナイムル・ハクの取材に対し、バングラデシュにおける眼科治療のニーズと支援について、そして、「避けられる失明」とりわけ児童の失明の問題に取り組んできた自身の経験について語った。
ボブは、「視力回復に1ドルを投じるごとに、4ドルの見返りがあります。」と語った。物を見る際に焦点が合わなくなったことを理由に退職した特定の業界の人々に関する最近の研究によると、彼らに適切な眼鏡を与えたところ、あと10~15年は働き続けることができるということが明らかになった。
「いったいどれだけの企業が、最も熟練した労働者にもう10年は会社にいてほしいと願っていることでしょう。しかし、報道で大きく取り上げられないこのような問題に、私たちは普段注目していません。こうやって成人の生産性を延ばすことができれば、事業の機会は拡大し、人々を貧困から救い出すことができるようになります。加えて、成人を職場にとどめ置くことは政府の利益にもなります。」と、ボブは付け加えた。
「ここで私が出来る最大のことは、オービスのバングラデシュ支部を支援して新しいパートナー関係を築き、オービス・インターナショナルがその取り組みの背後にいて、彼らがやりたいことを応援していることを示すことです。」「人口1億6千万人のバングラデシュでは、小児眼科医はわずか34人しかいません。一方、米国では、40万人毎に1人の小児眼科医がいます。つまり、100万人毎に2.5人です。私たちの新しい取り組みは、(バングラデシュで)これを目指すものです。」とボブは語った。
「子どもたちには目の治療受ける機会が与えられなくてはなりません。治療がなされないかぎり彼らにチャンスはないのです。そのため、小児眼科医と麻酔医のニーズは驚くほどたくさんあり、オービスでは、こうした医師の訓練に取り組んでいます。率直に言えば、視力に問題にある子どもをもつ親ならば、子どもたちが、学校で黒板に書かれていることをなんとか読もうとしたり、うまく遊べなかったりぎこちなかったりするのを見て、彼らの苦境のほどを理解しています。オービス・バングラデシュの取り組みの支援を始めることで、私たちは、これまで支援がまったく足りていない領域に手を付けることができるのです。」
「私がオービス・インターナショナルのトップとしてできることは、世界18カ国で展開しているオービスの事業(計56事業)を外から見て回ることです。そうすることで、例えば、類似のプログラムで大きな効果をあげている他国の事例を参考に、ここバングラデシュのニーズに沿って異なった展開をしていくことが可能になるのです。」
「他の国の諸事例から学ぶことによって、バングラデシュの関係者のスキルを高めることにつながる協力を促進することもできます。例えば、中国の眼科病院で実施されている新しい取り組みを、バングラデシュに紹介すれば、ここの眼科医師や他の医療関係者にとって大いに助けとなるでしょう。」とボブは語った。
戦略家やチームリーダーとして30年以上のパイロット経験をもつボブは、いかにして善をなし、善を達成するかについても語った。ボブは、「人々は、施しをすることをよしとしますが、果たしてその結果はとうなっているのでしょう?」と問いかけたうえで、「(オービスに施しをする場合)眼科の専門家を育てる組織を支援することになりので、その結果、より多くの人々が眼科治療を受けられるようになり、それは、社会や家族、地域を変えていくことにつながります。つまり、(あなたのオービスへの支援は)永続的な変革をおこすことにつながるのです。」と語った。
ボブは、「1ドル1ドルに価値がある」をモットーとする「慈善の時代」に言及した。「『慈善の時代』は(イスラム地域で信じられている)ザカートの哲学から生まれた。この団体は、施しをすることだけではなく、基金をいかに効果的に活用するかを考えている。『慈善の時代』はオービスと協力して3年間の訓練事業を行っている。また、眼科医が実際に患者に触れることなく基本的なスキルを習得できる訓練を行うシミュレーションセンターを作ろうとしている。この施設は例えれば、パイトットが、実際に誰も傷つけることなく、試行錯誤を通じて飛行機の操縦技術を習得できるフライトシュミレーター施設のようなものだ。」
ボブさらに、「私は、バングラデシュの眼科医が、実際に患者の子供の眼を使って外科手術の経験を積むのではなく、シミュレーション技術へのアクセスを可能にして、外科シュミレーションを繰り返しながら必要な技術を習得できる環境を整えたいと思っています。どの眼科医も、初めて子どもの眼を手術するときは、完ぺきでありたいと願っているものです。従って、シュミレーションで訓練が可能になれば、実際の手術で素晴らしい成果をあげることができるのです。」と語った。
「(今回バングラデシュに就航した)『空飛ぶ眼科病院(FEH)』には、最新の機器をはじめ病院の空調システムも、外部からの訪問者がドアを通過する際に殺菌して感染を予防するなど最新の技術がつまっています。私たちは、こうして地元の医師たちを『空飛ぶ眼科病院』に迎えることで、次の段階の最新技術に導くことができるのです。」
「時として、今のやり方から最新技術への移行は、あまりにも変化が大きすぎで、うまくいかないこともあります。しかし私たちは、(FEHで医師たちに訓練を実施することで)医師たちが無理なく最新技術を習得し、さらに有益な次の段階のものへと移行するための支援を行うことができます。また、次に目を向けるべき新技術は何かについて、医師たちに助言も行えます。こうして彼らを支援することは、単に『ここに最新技術がある』と言って示すよりも、ずっと価値のあることです。」
「なぜこんなことを言うかというと、最新技術には時として、とても支払いが出来ないような消費財やサポート(メンテナンス費用)がくっついてくるからです。だから、現地の医師が必要としている技術は、最新かつできるだけ長く使えるものでなくてはなりません。そこでオービスでは、ハード面の支援だけではなく、生物医学の技術者と、機械修理に長けたスタッフを派遣しています。」
「私たちは、支援先の国が、機械が壊れたらそれを誰も修理できないような状態に戻ってほしくはありません。現地の人々が自らの能力で機械をメンテナンスし、最適な利用をできるようにしたいと考えています。その意味で、現地で長続きする能力を育み、長期的に人々を助けることができる持続可能な開発の考え方に賛同しています。」とボブは語った。(原文へ)PDF
翻訳=INPS Japan
This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.
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