【ニューヨークIDN=J・ナストラニス】
1人当たり年間30ドルに満たない予算をかけるだけでも、若者の健康や教育に驚くほど効果を上げることが可能であると、国連人口基金(UNFPA)が委託した最新の研究が示している。
報告書は、4月21日から23日にかけてワシントンDCで世界銀行春季会合が開催されるのを前にして『ランセット』誌に掲載された。春季会合では188カ国の財務・開発担当閣僚らが若者への投資の重要性について討論する予定だ。
『ランセット』誌は、医療が社会に奉仕して社会を変革し、人々の生活に良い影響を与えるべく、科学の成果を公衆が広く利用できるようにすることを目的とした、国際的な独立系総合医学誌である。
この研究は、米国政府がUNFPAに対する分担拠出金の停止を決定してから数日のうちに発表された。これは、ドナルド・トランプ大統領が発表した国連に対する米国の分担金削減策の第一弾である。1985年の制定以降共和党の歴代大統領が利用してきたケンプ・カステン修正法案を引用した米国務省の覚書は、UNFPAが中国において、「強制 妊娠中絶、不妊手術などのプログラムを支援または協力して行っている。」と主張している。
同修正法案は、強圧的な堕胎や不本意な不妊手術を支援する組織への対外援助を禁じている。ロナルド・レーガン、ジョージ・HW・ブッシュ、ジョージ・W・ブッシュの共和党歴代大統領が、この法案を根拠にUNFPAへの資金提供を拒んできた。
10歳から19歳の若者の身体的・性的・精神的健康を向上させることで、1200万人以上の死と、3000万件以上の若者による望まない妊娠を避けることができる、と報告書は述べている
同様に、1人あたり約3.8ドルで実行可能な、児童婚を減らす政策は、投資額に対する6倍近くのリターンがあり、児童姻を約3分の1減らすことができる。
「若者に投資することは、すべての人にとっての長期的で戦略的な利益にかないます。」と語るのは、UNFPA事務局長のババトゥンデ・オショティメイン博士である。「世界の10億人以上の若者をエンパワーし保護するための小規模の投資でも、10倍以上、いや時にはそれ以上の見返りが可能です。我々の先駆的な研究が政策決定者によって参照され、世界を前進させる導きとして利用されなければなりません。
オーストラリアのビクトリア大学、メルボルン大学、さらにUNFPAがこの研究を主導した。著者らはとりわけ、若者に対する医療サービスの向上とヒトパピローマウィルス(HPV)ワクチンの普及に関する保健当局の介入が経済や社会に及ぼす影響を計算した。また、児童婚姻や近親者による暴力を減らす政策や、登校率や教育の質を向上させる政策の影響も計算した。
主執筆者のピーター・シーハン教授(ビクトリア大学)は、「若者の健康や福祉に対する投資の中で最も成果を上げているものは、児童婚の問題に対する対処、交通事故の抑制、教育の改善など、しばしば保健部門以外の取り組みに見出すことができます。」と指摘したうえで、「私たちの調査で提示した取り組みが、世界各国で大規模に展開でき、少年少女たちの生活を変えることができることは、疑いの余地がありません。青年の保健・福祉に対する投資がもたらす経済的・社会的効果は、あらゆる基準をもってしても高いものであり、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を達成するために国際社会がなしうる最善の投資のひとつです。」と語った。
報告書は、調査の対象となった措置のすべて(教育関連を除く)に関して2030年までに必要となるコストは5240億ドルであり、これは1人当たり年間約6.7ドルに相当する。教育に関しては全体のコストが1兆7700億ドルと(1人当たり年間約22.6ドル)推計される。
これらを合計すると、若者1人あたりに年間で必要なコストは30ドルにも満たない。つまり、すべての政策に対する年間の投資総額は、世界全体の国民総生産合計のわずか0.2%にしかならないのである。(原文へ)
翻訳=INPS Japan
This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.
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