【国連IPS=ネルグイ・マナルスレン】
モヒニ・ギリさんは、数年前、「未亡人の街」として知られるインドのブリンダバン(Vrindavan)の道を歩いていて、ある女性が道端で息絶えているのに気がついた。すでに動物たちが死体を食い荒らしていたが、誰も死体を動かしたり火葬にしようとはしなかった。
ギリさんは近くにいた男性数名に死体を動かすよう頼んだが、彼らは、運が尽きると言って協力することを拒んだ。ギリさんは、他の未亡人たちの助けを借りてようやく死体を火葬に付すことができた。
自らも未亡人であるギリさんは、その後、未亡人支援のための団体「奉仕ギルド」(the Guild of Service)を立ち上げる。少なくとも6000人の未亡人が各地から流れ込んできているであろうとみられるブリンダバンの町で、120人の未亡人のために住まいを提供している。
「奉仕ギルド」でカウンセラーを務めるスラビ・チャトゥルベディさんは、「かつて女性たちは、死んだ夫を火葬にする火の中に飛び込んで自殺することを強要されていたが、偉大なる社会改革家ラジャ・ラモハン・ロイのおかげで、そうした邪悪な慣行はなくなった」と語る。
「奉仕ギルド」は、女性たちに法律面の教育を施したり、銀行口座の開設や年金の取得を支援したりする活動も行っている。
他方、国際的舞台でも、未亡人支援に向けて活動する人々がいる。イギリスのトニー・ブレア元首相の妻シェリーが代表を務める「ルーンバ・トラスト」はそのひとつだ。シェリー・ブレアは、国際人権宣言にしたがって、未亡人を人権侵害と搾取から救うことが必要だと訴えている。
「ルーンバ・トラスト」が最近出した報告書によると、女性の中には、死別した夫の兄弟との結婚や重婚を強要されるケースが少なくないという。彼女たちは、親戚縁者による性的搾取の対象になり、用なしになると、子供ともども突然家を追い出されることになる。もちろん彼女たちは無一文であり、ひとたび街頭に出れば、売春などで生計を立てねばならず、また別の人権侵害が待っている。
シェリー・ブレアは、国連のミレニアム開発目標(MDGs)を達成するためにも、未亡人の存在に焦点を当てることが必要だと主張している。
未亡人への人権侵害を止めるための世界の取り組みについて報告する。 (原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan