ニュース不当な扱いを受けるHIV陽性の女性移民労働者

不当な扱いを受けるHIV陽性の女性移民労働者

【バンコクIPS=マルワーン・マカン・マルカール】

裕福なアラブ首長国連邦には家庭内労働者の職を求め、年間何千という女性がアジアからやってくる。しかし、HIV陽性の告知を受けると、彼女達の生計を立てるための旅は屈辱的な結末を迎える。 

移民に取組むNGOネットワークの一員で、マニラに拠点を置く「達成(Achieve)」とも呼ばれる「健康イニシアチブ活動(Action for Health Initiative)」の責任者マル・マリン氏はIPSの電話によるインタビューに次のように述べている。

 「家庭内労働者達は2年毎の契約更新の際、HIV抗体テストを受けねばならないが、結果に対するカウンセリングはない。労働者がHIV陽性とわかると雇用主に連絡がいき、労働者であり弱い立場の女性たちは帰国日まで病院の収容センターで行動を制限される。そして、自分の荷物もそのままで、支払い予定の給与も受取ることを許されず強制送還させられる。その後は2度とアラブ首長国連邦で働くことが出来ない。」 

国連開発計画(UNDP) と国連エイズ合同計画(UNAIDS)により3月第2週に発表された「アジアからアラブ諸国への移民女性のHIV感染脆弱性」の中で、女性達が直面する問題の規模が明らかになった。 

女性達は安全性が保障されていない所で仕事に就き、困難な環境に居住し、滞在中や母国との移動中に性的搾取や暴力を受けることも多い。医療サービスや社会的保護を受けられないことが相まってHIV感染脆弱性が高い。また、調査をしたバーレンやアラブ首長国連邦等の湾岸諸国では特に司法や補償制度を受けられないか、受けられても限られていることが多い。母国へ帰ると、差別、社会的孤立が待っており、生計を立てる代わりの手段も見付けにくい。 

インドネシア、フィリピン、スリランカ等移民労働者の母国で家庭内労働者のHIV感染者が報告されており、バングラデシュ、パキスタン、フィリピン、スリランカなど、HIV患者数が少ない国ではHIV患者数の大半を移民労働者が占めている。 

2007年ジュネーブで開催された世界保健機構 (WHO) 加盟国の年次総会で、パキスタンが南アジア諸国のこうした現状に憂慮を表明したことを受けこの国連報告は作成された。その時パキスタンは、この問題に関して他のアジア諸国と話し合う機会を設けたが、アラブ諸国にとってはデリケートな問題だとUNDP-UNAIDS報告書の編集者マルタ・ファレホ氏は言う。 

報告書によれば、移民労働者が本国に送金する額はかなりの額の外国為替となり、母国と働き先の国にかなりの経済的恩恵をもたらしているのでアジア諸国は心配なのだという。 

2007年、アラブ諸国で働くフィリピン人が母国へ送金した額は21億7,000万ドル、報告書発行時点でスリランカの移民労働者の送金額は30億ドルだ。バングラデシュ中央銀行によると、貧しいバングラデシュでは去年の6月までの会計年度中、アラブ首長国連邦からのみで8億480万ドルが送金され、それは全送金額約60億ドル中の7.4%にあたる。 

 国際労働機関(ILO)によると、湾岸協力会議(GCC)(アラブ首長国連邦・バーレーン・クウェート・オマーン・カタール・サウジアラビア)内の外国人労働者数は約950万人にのぼり、内750万人がアジアからだった。 ILOアジア・太平洋総局専門委員長マノロ・アベーラ氏は、「インドネシアの移民労働者のほとんどがサウジアラビア行きの女性で、スリランカは75%が女性、フィリピンは85%が女性だ」と言う。 

「家庭内労働は中東では労働法下にないので労働者は弱者になる。給料の未払いにも労働法違反にも法的手段は一切取れない。」 

「雇用契約で保護がうたわれていても、屋内に閉じ込められている労働者達はめったに権利を訴えられない。家庭内労働者は100%雇用主の支配下にいる。」 

家庭内労働者として海外へ働きに出掛け、過酷な労働条件のなか性的虐待によりHIV陽性となり、将来が閉ざされるアジアの女性達について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩 

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