【ニューヨークIDN=サントー・D・バネルジー】
1月23日、『原子力科学者会報』誌は「世界終末時計」の針を「真夜中(=地球と人類の滅亡)まで100秒」にセットすると発表した。13人のノーベル賞受賞者たちによる、核兵器と気候危機の実存的危険についての劇的な警告であった。
4月25日、新型コロナ危機の中、1000人以上の平和活動家、気候変動活動家、社会運動家が集まって、「世界大会:核兵器廃絶、気候危機の阻止と反転、社会的経済的正義のために」を初めてオンラインで開催した。
この会議は元々、4月27日から5月22日にかけニューヨークの国連本部で開催される2020年NPT再検討会議に合わせて対面形式で開催される予定であった。しかし、再検討会議そのものが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)により2021年に延期となった。「にも関わらず、対面会議を準備していた参加者のエネルギーとモチベーションは失われていなかった。」とある識者は語った。
このオンライン会議は、より平和かつ公正で、責任のある世界を希求する様々な活動を糾合する出発点になった。一連の目的に向けて「弛みなく努力し続ける」参加者のコミットメントが示されたことが、その証左である。
そうした目的には、軍備競争の停止と核兵器の廃絶を求めた核不拡散条約(NPT)第6条の即時履行が含まれている。同様に重要なのは、核兵器のない世界への重要かつ補強的措置としての核兵器禁止条約(TPNW)の早期発効である。
会議の参加者らはまた、NPT締約国が合意した中東非核・化学・生物兵器地帯の早期確立を求める動きへのコミットメントを強調した。
また、南アジア、北東アジア、欧州を含む世界のすべての地域で紛争と軍備競争を停止する地域的な緊張緩和のプロセス達成に向けた努力を、参加者らはさらに継続していく。
世界的軍縮と兵器産業労働者の正当な転職、紛争を減らし紛争の平和的解決に役立つ緊張緩和政策もまた、参加者らが自身で設定したもう一つの目標である。
参加者らは、軍事予算を世界的に大幅削減し、資金を人間のニーズを満たし環境を守るために転用するよう呼びかけた。また、「持続可能な開発目標(SDGs)を、資源を軍事中心から平和へと再配分する努力の中心に据えることは、軍縮によってのみ実現できる。」と付け加えた。
今回の世界大会の共催団体である国際平和ビューロー(IPB)は、軍事費が増加する一方、保健関連予算は新型コロナウィルスのパンデミックに対処するのに不十分なレベルにとどまっていると指摘し、こうしたコミットメントの重要性を強調した。
ストックホルム平和研究所(SIPRI)によれば、2019年の世界の軍事費は計1兆9170億ドルで過去最高額を更新した。2018年からの増加率は3.6%で、世界の人口一人あたり252ドルを負担していることになる。
「こうした軍事費の増加は、一部の者にだけ利益を与え、世界が破滅する可能性を高めるグローバルな軍拡競争が起こっていることを示している。とりわけ欧州・北米・アジア・オセアニアにおいて軍事産業のロビー活動が効果を上げていることを浮き彫りにしている。北大西洋条約機構(NATO)の軍事費だけでも1兆350億ドルにおよび、世界全体の軍事費の54%を占めている。」とIPBは指摘した。
世界大会の参加者らはまた、いくつかの根本的な変革も要求した。国連憲章が明らかにした20世紀のビジョンを実現することもその一つだ。
「われわれは、瞬時に地球を破壊する核兵器と核戦争、気候変動により静かに進む破壊、環境の荒廃、パンデミックの脅威など、存続に関わる難題に直面している。軍事増強は欧州でも世界各地でも劇的に強まっている。」と声明は述べている。
さらに声明は以下のように続いている。広島と長崎への原爆投下と、世界に広がった「二度と繰り返すな」の叫びから75年、我々は、被爆者の警告を決して忘れてはならない。
第二次世界大戦の終結と「ファシズムを、戦争を繰り返すな」の誓いから75年、われわれは、確固としてこの決意を守り続けなければならない。
戦争に終止符を打つために国際連合を創立してから75年、国連憲章と誓約を守らなければならない。
核軍備競争の停止と核軍備撤廃の達成を目的とするNPTの発効から50年、その誓約を果たさなければならない。
数百万の人々が新型コロナウィルスに感染し、何十万の人々が亡くなるなかで、この疫病のパンデミックは各々の国の、そして国際的なシステムの脆弱さ、政策的失敗、深刻な国際協力の欠如を浮き彫りにした。
「だが、危機の中には好機も存在する。このパンデミックはまた、将来の避け難い疫病の蔓延にどう備えるか、また、核兵器や気候変動の脅威をどう逆転させるべきかを描き出している。」
われわれは、強権的政府の増加と極右急進主義やファシズムの脅威の伸長に直面している。
非民主的で独裁的な政治が世界中のますます多くの国で影響を強め、政治的風潮を支配し、少数民族や移民の人々の命を危険に陥れている。もっとも基本的な民主的権利さえ脅かされ、民主主義は深刻な危機のただ中にある。
声明はさらに、「政府、企業、-そして個人も- が、あたかも環境悪化が簡単に是正できるかのように、あるいは別の惑星に移住すれば済むかのように、激しく地球を貪っている現実に直面している。人間が創った気候変動は、生命と生存にとって日々の脅威となっており、その他の環境破壊がわれわれの共存や、人間、その他の動物、植物の未来の形を脅かしている。」と述べている。
「これらの変化から恩恵を得られる者はほとんどおらず、他方で、地球に住む圧倒的多数の人々は影響を受け、苦しめられている。戦争と不正義と地球規模の環境災害によって、何百万人もの難民が生み出されている。」(原文へ)
INPS Japan
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