【ジュネーブIPS=ガスタボ・カプデヴィラ】
世界経済フォーラム(The World Economic Forum: WEF)は、毎年スイスのリゾート地ダボスで開催される年次総会を主催する世界の巨大企業の代表や政治家らによる私的な組織であり、今年は世界の経済大国として中国やインドの経済成長に重点を置くとしている。
水曜日、ジュネーブで1月25日~29日の集会の計画を公表するために開催された記者会見で、WEF創始者で最高責任者であるクラウス・シュワブ(Klaus Schwab)氏は、今後の重要課題は『西洋から東洋への経済力のシフト』であると述べた。
シュワブ氏によれば、この流れは経済・政治の両分野へと影響を与えることになるだろうと予測し、「結果としてまず、天然資源を巡る激しい競争が生じるだろう」と述べた。
中国とインドの経済発展(特に中国の目覚ましい発展)はここ数十年にわたり経済指標や専門家の分析に影響を与えてきたが、WEFがこれらの地域を注目したことで、多国籍企業は中国とインドを新たな市場開拓のターゲットとして捉えるようになった。
以前とは著しく異なり、今年のWEFの活動はアフリカへの注目度は低かったが、一方でラテンアメリカやカリブ海沿岸地域を中心とした出来事も少なかった。従って、ダボス会議での出席を表明した735名の企業代表のうち、南アフリカは4名、ブラジル2名、メキシコ1名であった。
1971年に創設されて以来、過去数10年間にわたりWEFは、主に各国政府と政治家をネオリベラル(新自由主義)経済を模範として支持する企業家や経済専門家との『橋渡し』をしてきた。
スクワブ氏は「各国政府、企業、市民団体が協調し世界的議題に取り組むことで、WEFは世界で特別な役割を果たすことができる」と主張した。
しかし、スイスのNGO団体(The Berne Declaration: ベルン宣言)のアンドレア・ミスバッハ(Andreas Missbach)氏は、ダボスでの会議を『不当』であると批判。
ミスバッハ氏は「WEFが大企業のトップの集まりであり、限られた人脈との集会であるため『不当な会議』であるとは言えない。問題は、熱心に交渉にあたる大企業のトップだけでなく、政治家や国際的な団体組織の代表者も関与する排他的な集会であるということである」とIPSの取材に応じて語った。
この集まりで議題を決定するのは大企業であるのに対して、政治家は少数民族の仲間の役割を果たしているだけであり、これがダボス会議の問題点であると同氏は指摘した。
今年の集会では記録的な数の企業代表者が参加する予定。シュワブ氏は「参加希望者が多いため、我々は参加の記載を終了させなければならないほどであった」と打ち明けた。
中国とインドの台頭に加えて、WEFは新たな技術革新に重点を置く予定である。これに関して、シュワブ氏は『知識が商品に変わる』ということを強調した。
従来どおり、ダボス会議では大手企業(特に銀行や他の金融機関)の経済アナリストが集まり、国際的な経済発展と今後の危険予知の事前予測を行う。
経済発展に関して、シュワブ氏は「ここ2年の経済は良好であるが、多くの脆弱性も認められる」と述べた。
同氏は最近の日本の株式市場における株価の変動に触れ、「現在一部の株式取引で起こっている事態を見ると、世界中の今後の経済発展に関してある種の緊張感が感じられる」とした。
さらに、彼はこれらの不均衡が我々のシステムの中でどのような形で緩和することができるかは明らかでないと付け加えた。
一方、ミスバッハ氏はこれは大企業の管理下で民営化すべきでなく、国連をはじめとする他の国際機関を巻き込んだ『合法的会議』の場で議論されるべき重要課題であることを強調した。
NGO団体(The Berne Declaration: ベルン宣言)の活動家によれば、WEFの集まりはダボスの高級ホテルの贅沢な部屋で行われる、あくまでも『交渉』の場であり、そこでは企業間や企業と政治家の間で私的なミーティングが開催される。これに関して、彼らは「これこそがダボス会議の実態であり、不当なものと言える」とした。
スイスのNGO団体は、ダボス会議で著名な顔ぶれが集まることに際し、莫大な費用を投じて大規模な警備体制を敷く同政府の行動を厳しく非難した。
WEFの業務担当責任者アンドレ・シュナイダー(Andre Schneider)氏は、スイス当局が今回の警備に約615万ドルを投じることを認めた。
スイス軍は5,500名の兵士のうち、3,300を陸上軍に、2,200を空軍に充てるとされている。しかし、当局は会議反対のデモを阻止する役目は警察が担うことを強調した。
スイスのNGO団体は、今年のダボス会議に対して直接の抗議活動はしないが、代わりに別の場所でデモを実施するとしている。(原文へ)
翻訳= IPS Japan 浅霧勝浩
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