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|バチカン会議|世界の諸宗教がSDGサミットに備える

【バチカンIDN=ラメシュ・ジャウラ】

持続可能な開発のための2030アジェンダ」の履行状況を各国首脳レベルでレビューする9月の「SDGサミット(4年に1度で今回初となる国連総会主催でのハイレベル政治フォーラム)」まであと半年、世界の諸宗教は、「SDGsの履行に対して宗教が成しえる貢献を繋げるようなロードマップや行動計画」を策定するという課題を自らに課している。

ガーナ出身でローマ教皇庁人間開発のための部署の長官を務めるピーター・タークソン枢機卿は、IDNの取材に対して、「これは、(SDGs達成に向けた)気運を高め、新たにグローバルな結束を図っていくために、この共同の『旅』に協力し合って踏み出そうという考え方に基づいています。」と語った。

ローマ教皇庁の人間開発のための部署と諸宗教対話評議会は、「宗教と持続可能な開発目標(SDGs)に関する国際会議:地球と貧者の叫びに耳を傾ける」を3日間にわたって開催した。

3月9日まで開催されたこの会議の参加者は、SDGsの履行に関わっているさまざまな宗教を代表する人々、外交官、国際組織の幹部、国際開発分野の学者や研究者らであった。

3月8日、フランシスコ教皇は会議参加者らにこう語りかけた。「持続可能な開発目標が採択されてから3年半が経過しました。私たちは、地球の叫びと貧者の叫びの両方に適切に応えられるような取り組みを行い、それを加速する重要性について、これまで以上にもっと敏感であらねばなりません。―これらの叫びは相互に繋がっているのです。」

「これらの難題は複雑であり、さまざまな原因があります。従って、その解決策もまた、複雑かつよく練られ民衆の多様な文化的豊かさを尊重したものでなくてはなりません。」とフランシスコ教皇は語った。

「人類がもたらしてきた損傷を修復する能力を持つ生態系の発展に私たちが本当に関心を持とうとするのなら、科学のいかなる分野も、あるいは、いかなる形態の知恵も無視されてはならないし、その中には宗教やそれに特有な言語も含まれます。…宗教は、平和の新たな名称ともいうべき『真の統合的な発展』を導くものになるでしょう。…」

「なぜなら、2015年9月に190カ国以上が承認した2030アジェンダと持続可能な開発目標は、グローバルな対話に向けた偉大なる一歩であり、活力に満ちた『新しく、普遍的な連帯』を示すものだからです。」と、フランシスコ教皇は説明した。

SDGs logo

フランシスコ教皇はまた、「カトリック教会をはじめ、旧来からのさまざまな宗教が、持続可能な開発目標(SDGs)を支持してきました。なぜならSDGsは、一方で民衆の多様な価値観を反映し、他方で開発の統合的なビジョンによって支えられてきたグローバルな参加プロセスの結果だからです。」と付け加えた。

タークソン枢機卿は、3月7日の開会あいさつで、「持続可能な未来に必要なエネルギーを提供してくれる3つのグループがあります。1つ目のグループは、変革を求め世代間の公正を訴える若者達。2つ目のグループは、地球上に残された生物多様性のうち推定80%の保護に寄与し、私たちの福祉と土地のつながりの重要性について常に思い起こさせてくれる先住民の人々。そして3つ目のグループは、私たちの意識を支配や破壊をもたらすものから、愛と尊重に満ちたものへと変換するインスピレーションを与えてくれる信仰心を持った人々です。」と語った。

タークソン枢機卿はさらに、「(今回の会議に代表を送った)これら3つのグループは、人類社会に対して、これまでの不平等と環境破壊を助長してきた構造を、包摂と環境への配慮を促進する構造へと変革するよう働きかけていくことができるのです。」と指摘したうえで、「これら3つのグループに耳を傾ければ、地球と貧者の叫びに適切に応えられる方法を見出すことができます。」と語った。

宗教が開発とどのような関係があるのかというIDNの問いに対してタークソン枢機卿は、「『国連環境開発世界委員会』(UNWCED)が定義するように、持続可能な開発とは、『将来の世代の経済発展の基盤を損なうことなく、現在の世代のニーズを満たすような開発』のことです。はたして、宗教ほど、こうした社会的目標を追求できるものが他にあるでしょうか。」と語った。

International Conference on Religions and Sustainable Development Goals (SDGs) Credit: Katsuhiro Asagiri, IDN | INPS

さらに、世界の人口の約8割が信仰心を告白しているという状況があり、宗教は「国際開発における不可避の現実」となっている。タークソン枢機卿は、「宗教は人類発展の主要なプレーヤーである。」と指摘したうえで、「宗教は、世界各地の民衆の教育や医療ニーズに多大なる投資をしてきました。また、災害に際してしばしば真っ先に対応し、援助活動を組織してきたのも、宗教組織でした(カリタス・ネットワーク、諸宗教による救援機関、台湾の仏教慈済基金会など)。」と語った。

国連児童基金(ユニセフ)の報告書によると、宗教組織はサブサハラ地域で教育の64%を提供し、世界全体の医療機関の3分の1を運営しているという。

最後に、宗教は変化に向けた目的を設定し、それを鼓舞する。「私たちが持続可能な開発を着実に生み出そうとするならば、これまでのライフスタイルをはじめ、モノの生産や流通、消費、廃棄のやり方を、緊急かつ根本的に変革する必要があるかもしれません。そうした変化を引き起こすには深い動機付けが必要ですが、開発を技術的な用語に絡めて語るだけでは、それを生み出せません。」

「人生を変えるような力強いストーリーの中で、宗教に関する物語は抜きんでています。そうした物語は、世代から世代へと語り継がれ、世界中で数多くの民衆やコミュニティーの心を捉えてきました。宗教は、私たちが今日必要とする変革に向けたインセンティブを実際に与えることができるのです。」

タークソン枢機卿は、「『気候変動に関する政府間パネル』(IPCC)が2018年、地球温暖化による気温上昇を(産業革命前と比べて)1.5度の範囲内に収めるには、人類は今後10年以内にこれまでの生産・消費のあり方を抜本的に変えなくてはならないと警告しました。」と指摘したうえで、「だからこそ、地球の未来を形作る方法に関する議論を続けながらも、変化が緊急に求められているという感覚を決して失わないようにしようではありませんか。」と訴えた。(原文へ

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