ニュース政治的に悪化する核をめぐる国際環境

政治的に悪化する核をめぐる国際環境

【国連IPS=タリフ・ディーン

核をめぐる国際政治環境はますます悪化しつつあり、脅しと非難、国連安保理決議への明白な反抗であふれている。 

長く待ち望まれている、フィンランドが主催予定の中東非核兵器地帯化に関する国際会議の実現は、未だ程遠い状況にある。大量破壊兵器の廃絶を目的とした核兵器禁止条約(NWC)にしても然りである。 

そして2月12日、北朝鮮が国連の警告を公然と無視して3回目の核実験を強行した。一方、イランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師は、イスラエルの核戦力が西側世界の暗黙の承認を得ている中東において、イランは核兵器を保有する権利を留保している、との認識を示した。

ハメネイ師は、「核兵器は廃絶されなければならない。我々は、核爆弾の製造を望んでいない。しかし、もし我々がそう考えず、それを持とうと決めたならば、いかなる勢力も我々を止める事は出来ないだろう。」と警告した。 

「核兵器なき世界」という究極の目標が遠ざかる中、東京に本部を置く在家仏教組織のリーダーが先週、2015年に国連や他の核保有国、非核地帯の代表などが一堂に会する「核サミット」の開催を開催を呼びかけた。 

Photo: SGI president Daisaku Ikeda. Credit: Seikyo Shimbun
Photo: Dr. Daisaku Ikeda. Credit: Seikyo Shimbun.

創価学会インタナショナル(SGI)池田大作会長は、広島・長崎への原爆投下から70周年にあたる2015年に開催予定のG8サミット(主要国首脳会議)に続いて、「核兵器なき世界」に焦点を当てた「拡大首脳会合」を開催するよう提案している。 

「2015年のG8サミットは、こうした核サミット開催に向けて適切な機会となるでしょう。」と池田会長は述べている。 

核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のティム・ライト氏は、IPSの取材に対して、ICANは池田会長らの提案を支持し、核兵器を禁止する条約の締結に向けたプロセスを今年中に開始すると語った。 

「我々は、核同盟の一翼を担う国も含め、すべての国に対して、こうしたプロセスに建設的に関わるよう強く求めます。」とライト氏は語った。 

またライト氏は、このプロセスには市民社会組織の関与が不可欠と指摘したうえで、「核兵器を世界的に禁止することは、可能かつ必要であり、また、緊急の課題なのです。」と語った。 

さらにライト氏は、「このような兵器が存在する限り、偶発的であろうと意図的であろうと使用される可能性は現実に存在します。そしてひとたび使用されれば、それが人間や環境に与える被害は甚大なものになるでしょう。」と主張した。 

池田会長は、1月26日に発表した平和提言「2030年へ 平和と共生の大潮流」の中で、3つの具体的な提案をしている。 

第一に、2015年以後に国連が掲げる「持続可能な開発目標」(SDGs)などのアジェンダの主要テーマの一つに、軍縮を当てることを提案している。 

とくに、世界全体の軍事費を2010年の軍事費を基準として半減させるとともに、核兵器の廃絶と、国際法の下で非人道的とみなされるその他のあらゆる兵器を全廃することを提案している。 

そしてこれらの目標は、2030年までに達成すべき、と池田会長は主張している。 

第二に、核兵器禁止条約(NWC)の交渉プロセスをスタートさせ、2015年を目標に条約案の合意を進めることを提案している。そして、日本は、核による被害を経験した国として、NWC実現に向けて積極的な役割を担うべき、と池田会長は主張している。 

さらに、北東アジアに「非核兵器地帯」を設置するための信頼醸成に努める中で、日本は、グローバルな核廃絶の実現に向けての環境づくりに貢献すべきだとしている。 

「この目的を達成するために、我々は、核兵器の非人道性を柱としつつ、核兵器にまつわる多様な角度からの議論を活発化させながら、国際世論を幅広く喚起していかなければなりません。」 

「例えば、2015年のホスト国であるドイツと交代する形で、2016年の担当国である日本がホスト役を務め、広島や長崎での開催を目指す案もあるのではないか」と池田会長は述べている。 

第3に、2015年のG8サミットに合わせて、国連や他の核保有国、非核兵器地帯の代表などが一堂に会する「『核兵器のない世界』のための拡大首脳会合(核廃絶サミット)」とするよう提案している。 

池田会長は、過去の平和提言においては、核廃絶サミットを実現する手段として、2015年の核不拡散条約(NPT)運用検討会議の広島や長崎での開催を提唱してきた。 

しかし今回の平和提言では、190か国もの代表を集める実務面の問題を考えると、慣例通り、ニューヨークの国連本部でNPT運用検討会議を開くことになるかもしれない、と指摘したうえで、「その場合、NPT運用検討会議の数カ月後に行われるG8サミットの場が、世界の指導者がこの重大な問題に取り組む絶好の機会を提供することになるだろう。」と述べている。 

また池田会長は、SGIが長年に亘って核兵器の問題に取り組んできた理由について、核兵器の存在自体が「生命の尊厳」に対する究極の否定であるという認識に基づいている、と指摘するとともに、その目的について次のように述べている。 

「核兵器の問題というプリズムに、生態系の健全性や、経済開発、人権等さまざまな観点から光を当てることで、『現代の世界で何が蔑にされているのか』を浮き彫りにし、世界の構造をリデザイン(再設計)すること―そして、全ての人々が尊厳ある生を送ることができる『持続可能な地球社会』を創出することにあります。」(原文へ) 

翻訳=IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service(IPS) and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC. 

関連記事: 
非核中東に向けた機会は失われた 
北朝鮮、3回目の核実験で国連に反抗 
核廃絶を求める広島・長崎

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
The Nepali Times
London Post News
ATN

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken