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日本における「ソフトパワー」の台頭

【ワシントンIPS=ティム・ショロック】

90年代に「バブル経済」が崩壊し、日本の工業製品の生産・輸出国としての相対的な地位が低下していく中で、それまで圧倒的に男性が支配してきた日本社会に変化が生じ、新たに女性たちが活躍する道筋が開けてきた。

「バブル崩壊後15年が経過し、日本社会はそれまでの経済的な価値観をベースにおいたものから、民主的な価値観が支配するものへと変化した。その結果、女性たちは自らの権利をより積極的に主張するようになった。…」「つまり日本はハードパワーを失ったが、それに代わってソフトパワーを育んできた」と昭和女子大学副理事長の坂東眞理子は語った。

先週ワシントンで開催されたセミナー(日本大使館、笹川平和財団共催)に参加した3人の日本人女性講演者の発言を通じて、日本で台頭しつつある「ソフトパワー」の今を報告する。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

|エジプト|グローバルの影響にさらされるローカル

【カイロIPS=アダム・モロー、カレッド・ムーサ・アルオムラニ】

エジプトでは、この数週間、国の助成により一般小売価格の5分の1でパンを配給するパン屋に並ぶ長い列が日常風景となった。インフレの急騰で、基本食料品の国内価格がこの数カ月で3倍に高騰した。

低所得層に低価格のパンを確保しようと、政府は3月、カイロ市内および周辺においてパンの製造と配給の手助けに軍隊と警察を投入すると発表した。その直後にはナジフ首相が国家公務員の15%賃上げを発表した。

 しかし世界的な小麦価格の急騰を考えると、こうした措置も一時しのぎに過ぎないと地元評論家は見る。

かつては地中海の「穀倉地帯」であったエジプトも、今では小麦の国内消費量の約55%を輸入している。エジプトが小麦の純輸入国であるかぎり、国際価格の変動の影響を免れない、と評論家は指摘する。

ナジフ首相は、最近の政策声明で、国内の食料品価格の急騰は、原油および小麦を中心とする国際価格の上昇に原因があると述べた。

また一部専門家からは、小麦さび病Ug99の拡大が世界の小麦供給をさらに阻害するだろうとの懸念が指摘されている。

国連後援の「開発のための農業科学技術国際評価」(IAASTD)は今月発表した報告書で、食糧価格の高騰の原因のひとつは、伝統的な食用作物を犠牲に増大しているバイオ燃料の生産にあるとしている。IAASTDはまた、収穫量の減少、エネルギー価格の上昇、穀物先物市場の投機をもたらしている気候変動も原因のひとつと指摘する。

地元評論家は、食品価格の社会的影響を緩和するためには、農業の自給自足にその答があると言う。カイロのサダト・アカデミーの元経済学教授ハムディ・アブデル・アジム氏は「小麦の国内生産の増加なしには危機は解決しない。政府が国際市場から調達するという政策を止め、国内の農家に実入りがいい農作物に代わって小麦を栽培するよう説得することが必要だ」と、IPSの取材に応えて述べた。

エジプト農務省の砂漠研究センター農業経済助教授のモハメド・サミ氏は、自給自足の見通しは、政府が大企業に肩入れして海外からの小麦調達の政策に固執していることが障害だと指摘する。

エジプトの小麦価格高騰の問題について諸議論を報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

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|アフリカ|ミレニアム目標はそう遠くにある訳ではない

【ベルリンIPS】

「先進国の人々は『サブサハラ・アフリカの風刺画(が示すステレオタイプ)』を捨て去り、代わってミレニアム開発目標に向けた実質的な成果を認め、支援する必要がある。」と、ミレニアムキャンペーンのエヴェリン・ハーフケンズは先週ベルリンのIPS地域センターで開催された会合で発言した。

ハーフケンズは、ミレニアム開発目標(MDGs)の殆どが達成されていないとの批判に対して、サブサハラ・アフリカ諸国における同目標に向けた具体的な自助努力の成功例(ウガンダのHIV/AIDS抑制の成功、10カ国が全員就学目標達成コースにあること等)を挙げながら、先進諸国の一層の開発支援の重要性を訴えた。ハーフケンズは言う、「私達は、貧困に終止符を打つことが出来る最初の世代なのです。従って、私達はこの機会を捉えることを拒否すべきではない。」(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|人権|カメルーンのピグミー族にとって踏込めない森はない

【ヤウンデINPS=シルベスタ・テチアダ】

バカ・ピグミー族はカメルーン南部・東部の森林地帯に暮らしているが、常に移動を伴う狩猟・採集生活をしているため、彼らの集落は地図上記録されることはなく、また、カメルーン政府による人口統計にも記載されいないのが実情である。

そのため、ピグミー族には先祖代々暮す森林に対する権利をはじめ、選挙権などカメルーン国民としての権利が認められておらず、さらに現代教育から隔絶された環境に暮すピグミー族に対する都市住民や官憲の偏見、差別が、ピグミー族に森林生活での孤立を余儀なくしている側面もある。さらに、カメルーンのGDPの10%を占める木材輸出需要を背景に、森林伐採業者が、ますますピグミー族の生活圏を侵食している。

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|健康|若干の改善は見られるもののマラリアは依然としてアフリカの主な死因である

【ジュネーブIPS=グスタボ・カプデヴィラ】

世界保健機構(WHO)と国連児童基金(UNICEF)が5月3日に発表した「2005年世界マラリア報告書」によれば、世界でマラリアの予防・治療対策に進展がみられるものの、アフリカにおいてはマラリアが依然として死因の大半を占め大きな脅威となっている(国境なき医師団によって纏められた統計によると、毎年マラリアで死亡する200万人の内、9割がアフリカの5歳以下の子供達である)。

アフリカでは、従来マラリア対策に使用していた薬や農薬に対して耐性を持つものが現れたのと、同時期に政府による保健サービスが悪化した事情を背景に、1980年代、90年代をとおしてマラリア患者は増加していった。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|報道の自由デー|スリランカ|勇気の象徴:タミール人ジャーナリストの殺害

【バンコクIPS=マルワーン・マカン・マルカール】

スリランカ人記者たちにとって、今年の「国際報道の自由デー」は、スリランカでタミール問題を扱わせたら右に出るものがいなかった故Dharmeratnam Sivaram記者(享年46歳:4月28日夜、何者かに拉致され殺害)を追悼する痛ましい記憶を分かち合う機会となった。

Sivaram記者は、ペンネーム「Taraki」の名でスリランカ内戦の内幕を報道し続け、国内のみならず世界各地からもタミール紛争に関する最も優れた解説者として多くの読者を獲得していた。同内戦問題を取材する記者たちの相次ぐ死やスリランカ政府当局による家宅捜索や逮捕・拘留にも関らず、敢えて国外亡命せず家族と共にスリランカに留まり、ペンの力で内戦の実情を報道し続けた故人は多くの人々にとって「勇気の象徴」となった。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

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【フリータウンIPS=ランサナ・フォファナ】

シエラレオーネのジャーナリスト達は、今年の「国際報道の自由デー」を祝賀するというよりも、自国内における報道の自由を巡って法的闘争を繰り広げている。

シエラレオーネには1965年成立の公共秩序法(Public Order Act)の中に、大統領或はその他の役人に対する一般民衆の不満を扇動するような出版物を出版、配布、所有したものは最高7年の禁固刑(出版社の場合は発禁処分)が適用されるとする「名誉毀損条項」があり、歴代政権により、国内反対勢力の声を封じるために活用されてきた。2007年に次期大統領選挙を控えて言論の自由を求めるプレスと政府両者間の緊張関係は高まっていくと見られている。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

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国際連合、世界の報道されないニュースに光をあてる

|開発|アフリカの「新たな希望」、権威ある賞を獲得

【ブリュッセルIPS=ステファイニア・ビアンキ】

今年のボールドウィン国王国際開発賞(南半球で開発分野で著しい貢献のあった、或は、先進工業国と途上国の連帯強化に功績のあった個人/団体に贈られる賞で、隔年で実施:IPSJ)の受賞者Ousmane Syは、彼の故国マリで実施した住民参加型の地方分権プログラムが高く評価された。

(伝統的な長老ネットワークを駆使して1万1000村落における地方自治体構想へのコンセンサスを獲得し、自治体数を1993年の13から2005年の703に拡大)この手法は、Good Governance(健全な統治体制)の問題を抱え開発が停滞している多くの他のアフリカ諸国にとって「新たな希望」として注目を浴びている。

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

国際連合、世界の報道されないニュースに光をあてる

【国際連合IPS=タリフ・ディーン】

故ターヅィー・ヴィタッチ元国連児童基金(UNICEF)事務局次長は、かつてあるアフリカの外交官が彼を事務所に訪ねてきて、アフリカ大陸に重大な影響を及ぼす事柄についてどうやったら欧米のメディアに取り上げてもらえるかアドバイスを求めてきた時のエピソードを詳しく語ったことがある。

「わが国の首相が国連総会で、アフリカの生存にとって極めて重要な経済、社会問題について発言することになっています。どのようにしたら、その内容を、ニューヨークタイムズに載せてもらうことができるでしょうか?」と、ヴィタッチはその役人が尋ねてきたことを回想した。

 「(その首相を)撃ち殺しなさい。そうすれば記事のフロントページに大々的に掲載してもらえますよ。」と、ヴィタッチは返答した。ヴィタッチ自身、かつてニューズウィークへ特約寄稿し本国スリランカでは「伝説的な編集者」と評されていた元ジャーナリストであった。

ヴィタッチは長年に亘って「ほとんどの欧米メディアは、貧困、飢餓、妊産婦死亡、国連加盟国(191ヶ国)の3分の2以上を悩ませている諸疾患などについて、深く洞察した取材記事を配信しようとしない」と嘆き、「これらのテーマは、大半のニュース編集室(報道局のスタジオ)にとって(報道するには)魅力に欠けるものなのだろう」と語っていた。

シャシ・タルール国連広報担当事務次長は、ヴィタッチに近い見解を持っている。 

「今なお、ヘッドラインを飾るテーマは、かなり狭い範囲に限られている傾向があります」と、タルールは、火曜日(5月3日)に「国連が選んだ最も報道されなかった10大事件リスト」を発表した席で語った。

5月3日の「国際報道の自由デー」に合わせて発表されたリストは2004年の出来事から、「世界の人々がもっと耳にすべきであるにもかかわらず、世界の主要テレビネットワークやニュースメディアが無視或いは軽視してきた出来事」を国連が10選択したものである。

タルールは10選には次の出来事が含まれていると語った:「(1)ソマリアにおける和平に向けた進展、(2)女性に対するヘルスケアの盲点となっている悲惨なフィスチュラ(産科瘻孔:長時間の難産の結果、産婦の膣等女性器に穴が開く症状―女性器と膀胱または直腸の間が繋がり漏尿や漏糞となり、社会から差別の対象となることが多い)、(3)ウガンダ北部における人道危機、(4)シエラ・レオーネにおける元兵士たちの武装解除、(5)近年100を超える団体が生まれるなど人権擁護団体の増加。」

「同じく見過ごされている出来事として」とタルールは続ける、「(6)カメルーンや他の貧困国の小規模農家が作った農作物に対して公正な価格を付けられる現実、(7)インド洋津波報道の影で忘れ去られたグレナダのハリケーンアイバンからの復旧に向けた取組み、(8)引き続き行われている女性に対する暴力、(9)不正な麻薬栽培を抑制するための戦闘に代わる代替策として採用されている開発支援、(10)諸疾病を治癒する潜在的な可能性がある薬を保護するための環境保全対策」

「メインストリームメディアは次のような理由で特定のニュースを無視或いは控えめに扱うのです。1つ目の理由:編集者の意見として『売れそうにない』から、2つ目の理由:政策責任者、読者、視聴者の関心からかけ離れていそうだから、3つ目の理由:例えば『人間が犬に噛みついた』『血が流れればヘッドラインになる』といったニュースの枠組方程式に当てはまらないから」とタルールはIPSの取材に応えて語った。

タルールはこれに対する反論として、「読者が関心がないのではなくで、読者はむしろ、これらの(メインストリームメディアが取り上げない)ニュースが如何に私達と関連しているか説得力のある取材・執筆を行うことで、むしろ関心を持つのです」と語った。

「どのような記事が売れるのかというメインストリームメディアの基準も、暴力とスキャンダル関連のもののみがニュースになる現状を考えれば、かなりの議論の余地があります」とタルールは主張した。

「なぜ、インド洋津波がグレナダのハリケーンアイバンの被害者よりニュース価値があるということになるのか?なぜ出産によって引き起こされるフィスチュラ(産科瘻孔)の恐怖について、全ての女性たち-そして全ての人々は出産によってこの世に生を受けたという意味では男性たちも-は関心がないということになるのか?」とタルールは問いかけた。

「メディアが取り上げてくれなければ、数多くの『より静かな』緊急事態は、開発援助予算の配分を決定する援助供与国(=先進国)の人々にとって、単純に「存在しない」ということになってしまうのです」とタルールは語った。

「確かに今年の国連の10選はいずれも人々の注目を引くべき説得力のあるテーマです。しかし、イラクやインド洋津波のような戦争と大災害に関する報道が、どうしても限られた1日のニュース報道のスペースの中で、長らく沸々と蓄積してきた問題(放置しておけば暴発する危険性のある問題)を押しのけてしまうでしょう。その意味で、今年は報道にとって大変厳しい年となっています」とタルールは語った。

「確かに私達も十分理解していることですが、ニュース編集者にとって(このようなニュースを取り上げることは)大変厳しい要求だと思います。しかし今年私達が光を当てたニュース(=実は国際社会と密接に繋がっている)が問題解決に向けた動きへと繋げていくためには、世界の一般視聴者/読者や政策責任者の注目を引く必要があります。つまり私達は、なんとかこれらのニュースを世界の世論の注目を得られる紙面の表紙に持ってくる方策を見つけなければならないのです」とタルールは付加えた。

「私達が毎年発表する国連の10選は、このような方向に向かうために努力している様々な試みの中の小さな一歩なのです」

かつてロンドンの新聞社が実施した途上国における諸問題に焦点を当てた「第3世界ページ」のようなものを作ることは効果的な試みかというIPS記者の質問に、「第3世界ページを設けることはある種の差別的な囲い込み(ニュースのゲットー化)であり、これらの記事が持つ本来的なメリットを考えると公平なやり方ではない」とタルールは答えた。

「それどころかさらに悪いことに、第3世界に関心あるという自己イメージを持っていない人達は(私達がどんなにそれらのニュースが全ての人々に関心あるものと思っていたとしても)単純にそのページ(=第3世界ページ)を飛ばして読んでしまうこになってしまうだろう」とタルールは付加えた。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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【リマIPS=ラミロ・エスコバール】

CMAN(平和政策、集団補償、国家的和解に関する政策立案・モニタリングのためのマルチセクター委員会)は金曜日(4月29日)、ペルー政府に対して内戦で被害を蒙ったコミュニティーに対して補償するためとして4800万ソル(約1500万ドル)の予算増加を要求した。

この要求は閣僚評議会の認可を経て、国会で了承される見通しである。ペルーでは、約20年(1980年~2000年)の長期に亘った、毛沢東派ゲリラセンデル・ルミノソ (輝く道)と政府軍の内戦の結果、7万人近い犠牲者を出している。

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩