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選択は今もなお明白:80周年迎えた国連憲章を再確認する

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。またこの記事は、2025年6月26日にジョーダン・ライアンが国連憲章調印80周年に寄せて語ったものである。

【Global Outlook=ジョーダン・ライアン

今から80年前、サンフランシスコに世界中の国から代表者が集まった。ある文書に調印するだけではなく、ある約束をするためだった。(原文へ 

Jordan Ryan. Photo Credit: Toda Peace Institute

人類の歴史上最も破壊的な戦争の灰燼の中から生まれた国際連合憲章は、後世の人々を戦争の惨禍から守り、全ての人間の尊厳と価値を守り、征服ではなく協調によって平和を築くという誓いを具現化した。

その冒頭の言葉「われら人民」は、各国政府だけでなく全ての人類を指している。それは、より壮大で永続的なものへの転換を示していた。

トルーマン大統領が米国上院で国連憲章を提示した際、「この憲章か、より良い憲章かではなかった。この憲章か、全く憲章なしかの選択だった」と述べたが、今日、われわれは同様の選択を迫られている。

トルーマンによるサンフランシスコ会議閉会の辞は、厳しい真実を突き付けるものだった。「数年前われわれにこの憲章があったなら、そして何よりこれを用いる意志があったなら、死亡した何百万人もの人は現在も生きていただろう。将来、これを用いるというわれわれの意志が揺らぐことがあれば、今生きている何百万人もの人が必ずや死ぬだろう」。そして彼は世界に対し、「ファシズムはムッソリーニとともに完全に死んだわけではない。ヒトラーは破滅した。しかし、彼の無秩序な精神によってばら撒かれた種子は、あまりにも多くの狂信的頭脳の中に深く根を下ろしている」と釘を刺した。

それは1945年のことだ。しかし、その警告は今なお響き渡っている。今日、これらの種子は新たな形を取るようになった。それらは制服を着ているとも限らず、戦場にいるとも限らない。異論を封じ込めるデジタルシステム、遺恨を生む経済的排除、真実よりも権力を重視するイデオロギーといった形である。外面は変わったが、その危険は同じままである。

親しい友人の義父ジョン・ドライアーは、サンフランシスコのその場にいた。代表団としてではなく、会議を実現させるために舞台裏で尽力した若いプロフェッショナルたちの一人としてである。彼は38歳という若さで事務局の次長を務め、本会議の計画、演説の順序管理、会議を円滑に運営するロジスティクス機能などを監督し支援した。

彼は妻への手紙の中で、最終投票について、「議長を務めたハリファックスが起立投票を呼び掛けた。議長が起立し、私が数え、投票結果をアルジャー[・ヒス]に伝えた。国連憲章が全会一致で承認されたことをハリファックスが宣言すると、誰もが立ち上がって拍手し、歓声をあげた。本当に自然発生的で熱狂的な瞬間だった」と描写した。

彼は、会議全体の中で最高の瞬間だったと述べている。それは、この憲章が単に交渉によって取り決められたテキストなどではなく、信じるという賭けであったことをわれわれに思い起こさせる。それは、響き渡る希望だった。

今日、ウクライナ、ガザ地区、スーダン、サヘル地域で戦争が勃発し、イラン空爆が中東における危険で新たなエスカレーションの様相を呈するなか、国際法は組織的に無視され、民間人を標的にしても罰せられることなく、住民全体が保護も発言の場も与えられないままになっている。病院を標的にすることからクラスター爆弾の使用にいたるまで、戦争法への違反が起こっているだけでなく、戦争法そのものが崩れつつある。その一方で大国間の対立が安全保障理事会を麻痺状態に陥らせ、国連憲章の最も基本的な約束は危うい状況にある。

Photo: Thousands of Ukrainians seek safety in neighbouring Poland. © WFP/Marco Frattini
Photo: Thousands of Ukrainians seek safety in neighbouring Poland. © WFP/Marco Frattini

われわれが直面する状況を明確にしてみよう。ロシアによるウクライナ侵攻は、国連憲章に対する直接的な攻撃であり、国連が守るべく設立されたあらゆる原則を侵害する領土侵略戦争である。米国は多国間制度や協定から離脱し、国際協調の基盤そのものを弱体化させている。世界中の権威主義政権がこれらの亀裂に乗じ、権利よりも支配を、自由よりも監視を、真実よりも権力を優先させるという対照的なもう一つの体制を構築しつつある。

このような空白を権威主義的な意図が埋めるに任せてはならない。われわれは、国連憲章のビジョン、完璧な調和のビジョンではなく原則に基づく協調のビジョンを取り戻さなければならない。画一性ではなく、多様性、主権、法の支配の尊重による平和のビジョンである。

それには、武力行使や侵略に対し、明白かつ普遍的に抗議することが含まれる。領土の保全が侵害されるとき、力によって体制が変更されるとき、戦争犯罪が罰せられないとき、構造全体が弱体化する。国連憲章のガードレールは、任意のものではない。それは、われわれと暗い絶望との間に立つ防壁なのだ。

そして、覚えておこう。平和に必要なのは停戦だけではない。トルーマンが同じサンフランシスコ演説で述べた通り、「公正かつ永続的な平和は、外交協定や軍事協力だけでは達成できない」。彼は、経済的な対立と社会的不公正が「戦争の種」をまくことを理解し、「人為的かつ不経済な貿易障壁」を取り除くことを呼び掛けた。平和には、全ての人の公正、尊厳、公平な未来が必要である。それは、事実、透明性、真実を重視する世界の姿勢にかかっている。「諸国家は、自由でありたければ真実を知らなければならない」と、トルーマンは言った。

しかし、私が希望を見いだせるものがある。

The 2nd meeting of state parties to TPNW will take place at the United Nations Headquarters in New York between 27 November and 1 December this year.
The 2nd meeting of state parties to TPNW will take place at the United Nations Headquarters in New York between 27 November and 1 December this year.

力を持つ者が弱体化すると、他の者たちが力をつける。安全保障理事会で国境の防衛を訴えたケニアの勇気ある演説。人道的アクセスをめぐるアイルランドの外交努力。地域の平和構築を推進するガーナとブラジル。これらは、周縁的活動ではない。これらが中心を支えているのである。

世界は、少数の国によるコンセンサスを待っていられない。中堅国家、地域のリーダー国、そして多くの場合サイレント・マジョリティーである国々は、特別な責任を負っている。彼らのリーダーシップ、静かで、忍耐強く、原則に根差したリーダーシップこそ、声高な国々が免責を選ぶような時代に、国際規範がいかに存続するかを示している。

また、そのようなリーダーシップが力を発揮できるようなスペースを守ることも必要である。拒否権による機能麻痺や官僚主義といった欠点があるとはいえ、国連は今なお不可欠である。国連は日々、何百万人もの人々に食糧を提供し、子どもたちにワクチン接種をし、人権を監視し、脆弱な地域で平和を再構築している。

しかし、国連憲章は戦争を終わらせることばかりを意図しているのではなく、それを防止することを意図している。それは、外交に再注力し、市民社会スペースを守り、偽情報に対抗し、国際法が権力者をかばうのではなく弱者を保護するようにするということである。そこがハルトゥームであれ、キーウであれ、ガザであれ、ポルトープランスであれ、「われら人民」との言葉が依然として意味を持つ未来を築くということである。

トルーマンは、国連憲章を合衆国憲法になぞらえ、「最終的あるいは完璧な文書ではない。しかし、時が経つにつれて拡大し、より良くなるものだ」と述べた。それこそが、今日のわれわれの仕事なのである。憲章を拡大し、より良くすること。憲章がわれわれの記憶の中だけでなく、われわれの行動の中に生きるようにすることである。

United Nations

国連憲章が生き続けられるものとなったのは、その起草者たちが失敗の代償を目の当たりにしたからである。彼らは、死者を葬った。彼らは、協力なくして平和がないことを知っていた。そして、平和なくして未来がないことも。

当時、選択肢は明白だったとトルーマンは言った。それは今もなお変わらず明白である。

平和を選ぼう。国連憲章を選ぼう。憲章に、再び命を吹き込もう。(原文へ

* * * * *

国連憲章80周年を記念して、元国連職員らのネットワーク “Peace Reflection Group”は、国連憲章の創設原理を大切にする姿勢を再確認するよう促す世界的呼びかけを開始した。

呼びかけは、全ての国の人々に対し、平和、尊厳、国際協力という共通の価値を再確認することを求めている。

署名は人類の全ての構成員に開かれており、こちらのリンクから追加することができる: 呼びかけに署名する
呼びかけの原文を「フィナンシャル・タイムズ」で読む
10以上の言語による全文と署名者リストはこちらから閲覧できる: 呼びかけを読む

ジョーダン・ライアンは戸田記念国際平和研究所の国際研究諮問委員会(TIRAC)メンバーおよびフォルケ・ベルナドッテ・アカデミー(Folke Bernadotte Academy)のシニア・コンサルタント。過去には国連事務次長補を務め、国際的な平和構築、人権、開発政策分野で幅広い経験を持つ。専門分野は平和と安全に寄与する民主的機関と国際協力の強化である。これまでに、アフリカ、アジアおよび中東で市民社会団体を支援し、持続可能な開発を推進する数多くのプログラムを率いてきた。国際機関や各国政府に危機予防や民主的統治に関する助言を定期的に行っている。

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オーバーツーリズム:市民社会の動き出し

【ロンドンIPS=アンドリュー・ファーミン】

ヨーロッパや北米は休暇シーズンの真っただ中で、人々はビーチに押し寄せ、都市中心部を埋め尽くしている。旅行・観光産業は巨大なビジネスであり、昨年は世界経済に占める割合が10.9兆米ドル、世界GDPの約10%に達した。

Andrew Firmin
Andrew Firmin

しかし観光地の住民は、その負の側面を肌で感じている。観光客の過剰な集中、地域社会の恒常的な変化、迷惑行為、逼迫する公共サービス、ごみや汚染といった環境負荷、そして高騰する住宅費用である。オーバーツーリズムは、観光産業が住民の生活の質を体系的に損なう状況を指す。各国で住民の抗議が相次ぎ、市民社会の草の根団体が持続可能な観光のあり方を求める動きが広がっている。

住民の抗議

6月、ヨーロッパ各地で連携した抗議行動が行われた。人口160万人のバルセロナには年間3200万人の観光客が訪れる。観光縮小を求める「ネイバーフッド・アセンブリー」は、ホテルの入り口を封鎖し、発煙筒を焚き、水鉄砲を放つ抗議を実施した。ジェノバでは、活動家が大型クルーズ船の模型を旧市街の路地に引き込み、観光船の影響を訴えた。これらの行動は、フランス、イタリア、ポルトガル、スペインの団体が4月に結成した「南欧反観光化ネットワーク」の協議で調整されたものである。

Crowds at the Trevi Fountain in Rome/ Public Domain.
Crowds at the Trevi Fountain in Rome/ Public Domain.

これが初めての抗議ではない。5月にはカナリア諸島で数千人がデモを行い、昨年も複数の都市で抗議が行われた。直近では、パリのモンマルトル地区の住民が、自宅に横断幕を掲げ、地域が観光で変容していることを訴えた。

抗議は街頭にとどまらない。オランダでは「アムステルダム・ハズ・ア・チョイス」という住民団体が市を相手取り法的措置を検討している。2021年、市は住民の請願を受け、宿泊数を年間2000万泊に制限することを決定したが、調査ではこの上限を恒常的に超えていることが示されている。団体は規制の履行を求めて訴訟に踏み切る構えだ。

複数の国で住民が声を上げるのは、同じ問題に直面しているからだ。オーバーツーリズムは地域社会を変貌させ、住民を追いやりつつある。

オーバーツーリズムの影響

観光業は雇用を生むが、多くは低賃金かつ季節労働で、労働権や昇進の機会は限られる。観光の集中する地域では、住民が日常的に利用する店が観光客向けのビジネスに置き換わり、家賃高騰で老舗も淘汰される。

Map of Spain
Map of Spain

環境への負荷も住民を直撃する。イビサ島の活動家は、水不足で住民に制限が課される一方、ホテルは対象外だと訴える。ビーチや公園といった公共空間は過密化・劣化し、地域社会は舞台セットのように扱われ、帰属意識や地域のアイデンティティが脅かされる。「観光よりも生活を」というスペインの運動がその象徴である。

住宅費高騰は最大の懸念のひとつだ。賃金を上回る勢いで住宅価格や家賃が上昇し、若者は収入の大半を家賃に費やさざるを得ない。観光需要は短期滞在用賃貸を増加させ、恒常的な住宅供給を圧迫している。観光地に住む人々は、自分たちの住居が投資用物件や短期レンタルに変わり、住宅不足と価格高騰を招いているのを目の当たりにしている。

マンションの住人は、短期賃貸化により近隣住民が消え、代わりに観光客の迷惑行為に悩まされる。規制は甘く、大家が法を無視しても摘発は少なく、税の回避も容易だ。スペインには推計6万6000件の違法観光アパートが存在する。

対策の必要性

昨年、バルセロナで観光客に水を浴びせた抗議行動が注目を集めたが、住民の多くは観光客を直接狙っているわけではない。彼らは外国人嫌悪ではなく、観光客と住民の間に公平なバランスを求めているのだ。観光で利益を得る者に、問題解決のための負担を求めているのである。

抗議の成果も出始めている。昨年、スペインの裁判所は規制違反を理由にAIRBNBの物件約5000件の削除を命じた。バルセロナ市長は、短期レンタル物件のライセンス更新を打ち切り、5年以内に全面廃止する計画を発表。ポルトガル政府は新規ライセンス発行を停止し、ギリシャ政府は新規登録を1年間禁止した。それでも多くの国で規制の隙間が残り、政府は市民団体と協力して改善する必要がある。

By Steve Swayne - File:O Partenon de Atenas.jpg, originally posted to Flickr as The Parthenon Athens, CC BY 2.0
By Steve Swayne – File:O Partenon de Atenas.jpg, originally posted to Flickr as The Parthenon Athens, CC BY 2.0

観光税を導入する自治体も増えている。ベネチアは非住民にピークシーズンの入場料を課し、アテネではパルテノン神殿の入場者に時間指定を導入した。こうした税や料金は単なる収入源ではなく、被害を受ける地域社会を支援するために使われなければならない。

また、当局は観光誘致のマーケティング戦略にも注意を払い、過度な宣伝を避けるべきだ。観光客に与える影響を認識させ、被害を最小限に抑える行動を促すキャンペーンが必要である。

オーバーツーリズムへの抵抗運動は今後さらに拡大し、環境、住宅、労働などの問題を結びつけながら広がっていくだろう。気候変動が資源を一層圧迫するなか、この問題は深刻さを増している。オーバーツーリズムの懸念は、結局のところ経済が大多数の人々の利益のために機能していないという不満の表れでもある。各国政府と国際社会は、経済をより公正で持続可能かつ搾取的でないものにする方法を真剣に模索し、警鐘を鳴らす市民社会の声に耳を傾けなければならない。(原文へ

アンドリュー・ファーミン氏は、CIVICUS編集長であり、「CIVICUSレンズ」共同ディレクター兼ライター、『世界市民社会報告書』共著者。

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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トランプのコーカサス合意:アゼルバイジャンへの傾斜か、それともアルメニアの生命線か?

【ロンドンINPS Japan/London Post=ラザ・サイード】

2025年8月8日、ドナルド・トランプ米大統領はホワイトハウスでニコル・パシニャン・アルメニア首相とイルハム・アリエフ・アゼルバイジャン大統領を迎え、数十年に及ぶナゴルノ・カラバフ紛争の解決を目指す歴史的な和平宣言を発表した。ナゴルノ・カラバフは国際的にはアゼルバイジャン領と認められているが、歴史的にアルメニア人が多く居住してきた地域である。

この合意は包括的な条約ではないものの、ロシア主導の調停から米国の関与へと大きく転換する意味を持つ。背景には2022年のウクライナ侵攻後におけるモスクワの影響力低下がある。合意の中核は「国際平和と繁栄のためのトランプ・ルート(TRIPP)」であり、アルメニアのスユニク州(歴史的にはザンゲズル)を通り、アゼルバイジャン本土と飛び地ナヒチェバンを結ぶ交通回廊である。米国はこの地域の道路、鉄道、パイプライン、光ファイバーなどのインフラ開発に99年間の独占的権利を得る。

2025年8月18日現在、イランの反発とEUの迅速な批准要求の中、この合意がアルメニアに有利なのか、それともアゼルバイジャンに傾いているのか、その行方が問われている。

紛争の経緯

起源は1921年、ヨシフ・スターリンがアルメニア人多数のナゴルノ・カラバフをソビエト・アゼルバイジャンに編入したことにさかのぼる。ソ連崩壊期の1980年代末、カラバフのアルメニア人はアルメニアとの統合を求め、民族迫害事件や第1次カラバフ戦争(1988~1994年)が勃発した。アルメニア軍はロシアの支援を受けてカラバフと周辺7地区を掌握、60万人以上のアゼルバイジャン人を追放し、約3万人が死亡した。

1994年にOSCEミンスク・グループ(ロシア、米国、フランス共同議長)の仲介で停戦が成立したが、状況は不安定なままだった。2020年、アゼルバイジャンはトルコ製ドローンや軍事支援を得て44日間の攻勢を展開し、多くの領土を奪還。ロシアの仲介で停戦が成立し、ロシア平和維持部隊が展開した。2023年にはアゼルバイジャン軍が残る飛地を電撃的に制圧し、10万人を超えるアルメニア人が脱出した。この人道危機は「民族浄化」とも呼ばれ、アルメニアは孤立し、西側の仲介に道を開いた。

2025年の和平宣言

宣言は相互の領土保全の承認、敵対行為の停止、そしてアルメニアの法律下で進められるものの米国の監督下に置かれるTRIPP回廊の開発を確認した。さらに米国は、これまでアゼルバイジャンへの援助を制限してきた「自由支援法第907条」の適用を解除し、アゼルバイジャン政府との関係強化を示した。支持者はこれをロシア依存からの転換と見なし、シルクロード貿易路の再活性化、イランやロシアを迂回した南コーカサスの世界市場統合を期待している。

アルメニアにとっては、2023年の敗北後に経済的生命線を提供する可能性がある。通路の再開は輸出、観光、投資を拡大し、ロシア依存を軽減できる。パシニャン首相はこれを「安定に向けた重要な節目」と呼んだ。

しかし、アルメニアでは主権を損なう妥協だとして抗議が広がっている。カラバフのアルメニア人の帰還や捕虜の解放、文化遺産保護の規定は含まれていない。イラン大統領は8月11日にアルメニアを訪れ、軍事演習を警告。北大西洋条約機構(NATO)の浸透と見なして強く反発した。欧州連合は批准を促す一方、ロシアも依然として妨害の可能性を残している。

合意は非対称的で、アゼルバイジャンに有利に見える。アゼルバイジャン政府はナヒチェバンへの自由なアクセスを確保し、トルコとの結びつきを強め、欧州のエネルギーハブとしての役割を固める。アルメニアは敗北の結果、形式的な和平と西側との接近を得る一方で、外国のインフラを1世紀にわたり受け入れることになる。経済多角化の可能性はあるが、人道問題の未解決やイランの反対により、安全保障上の脆弱性はむしろ増す恐れがある。

専門家の見解
Dr. Gevorg Melikyan

ゲヴォルグ・メリキャン博士(アルメニア・レジリエンス&ステートクラフト研究所創設者、元大統領顧問)
「ワシントンDCで署名ではなく“仮署”にとどまったこの和平合意は極めて問題が多い。真の和平条約というより、戦略的に重要な32キロの道路を99年間、米国企業に管理させる取り決めに過ぎず、実質的にアルメニアの主権を譲り渡すものだ。アゼルバイジャン側はこれを“回廊”と呼び、バクーとナヒチェバンを結ぶ障害なき連結とみなしている。この取り決めはアゼルバイジャンとトルコの地域的野心を後押しするものであり、戦争犯罪や民族浄化の責任を免責している。

さらに、アゼルバイジャン大統領は和平の前提条件としてアルメニア憲法の改正まで要求しており、これはアルメニアとアゼルバイジャン間の「平和・国家間関係樹立協定」第4条(内政不干渉の義務)に明確に違反している。こうした要求は主権と安全保障を損なう無期限のプロセスを意味する。

加えて、この合意はアルメニアに対する実質的な軍事的保証を伴っていない。大国や地域勢力の経済的・地政学的利益を優先し、アルメニアを一層脆弱にしている。現在の指導部は2026年議会選挙を前に政権維持を優先し、国家安全保障や外交戦略を欠いたまま、主権を外国勢力に貸し出している。」

Anahit Vardanants

アナヒト・ヴァルダナンツ氏(詩人・芸術家)
「今回の和平合意は、アルメニアにとって大きな機会であると同時に深刻な課題も伴う。経済発展の契機、米国の外交支援、新たな地域協力の扉を開く可能性がある一方、国家主権の一部譲歩、内政的な対立、安全保障上の不確実性を抱える。

特に脅威となるのは、回廊をめぐるイランの強い反発であり、緊張や地域的な複雑化を招く可能性がある。従って、この合意がアルメニアにとって安定と発展の道となるには、公平かつ十分に実施されることが不可欠だ。さもなければリスクが利益を上回るだろう。国家と国民の利益を最優先に、慎重かつ統一的な対応が必要である。」

Vahan Babayan

ヴァハン・ババヤン氏(改革党党首、元国会議員)
「8月8日に米国の仲介で初署されたこの合意は、長年のカラバフ紛争解決を目指すものだが、真の和平には程遠い。なぜバクーに拘束されたアルメニア人捕虜はいまだに解放されないのか。米国がアゼルバイジャンへの軍事支援を制限してきた『自由支援法第907条』を撤廃したのは誰のためであり、アゼルバイジャンは誰に対して武装するのか。アルツァフ(ナゴルノ・カラバフ)からの避難民の帰還や、ジェルムクなど占領地からの撤退についても不透明だ。

さらに、OSCEミンスク・グループという長年の調停機関が解体され、戦略的なスユニク回廊が99年間も米国の監督下に置かれることは、イランを刺激し、重要な経済パートナーであるロシアとの関係を損なう危険がある。この“和解”は言葉と約束に過ぎず、実質を欠いている。捕虜解放、避難民帰還、領土問題といった重要課題に答えなければ、真の和平は実現しない。」

結論

この合意はアルメニアに経済的・外交的な機会をもたらす一方、戦略的利得を得るのはアゼルバイジャンであり、力の不均衡を反映している。成功の鍵は実施と地政学的協調にあり、安定をもたらす可能性もあれば、アルメニアの脆弱性を深める可能性もある。(原文へ

INPS Japan/London Times

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日本政府、中央アジアへの関与を強化 岩屋外相が高官級訪問

【アスタナThe Astana Times=アッセル・サトゥバルディナ】

日本の岩屋毅外務大臣は8月24~26日の日程でカザフスタンを公式訪問し、カシム=ジョマルト・トカエフ大統領およびヌルテリュ外相と会談した。訪問の主な目的は、地域との関係を強化し、日・中央アジア高官級会合の準備を進めることにある。

岩屋外相は、23日にカザフスタンスカヤ・プラウダ紙に寄稿した記事で「今日、中央アジアは着実な経済発展を遂げており、欧州とアジアを結ぶ交易ルートとしての重要性も高まっている。同時に、国際情勢の変化が地域諸国に大きな影響を及ぼしている。まさに今、急速に変化する中央アジアにおいて、地域協力は必要不可欠となっている」と強調した。今回の訪問の主要な目的を「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持と、中央アジアとの関係深化」と位置づけた。

首脳・外相会談

トカエフ大統領は、岩屋外相との会談で「日本はアジアにおける信頼できるパートナーだ。」と述べ、二国間関係の前向きな進展を高く評価した。

ヌルテリュ外相との会談では、両国間の高官級対話の継続を歓迎するとともに、二国間の経済協力強化、とりわけ二国間クレジット制度(JCM)、鉱物資源分野、日本企業の投資誘致などについて意見を交わした。

核軍縮・不拡散も協力の柱であり、両外相は経済社会開発計画に関する無償資金協力の交換公文に署名。これには核実験被害者支援や医療機器提供も含まれる。

「中央アジア+日本」枠組み
Kassym-Jomart Tokayev with Takeshi Iwaya. Photo credit: Akorda
Kassym-Jomart Tokayev with Takeshi Iwaya. Photo credit: Akorda

日本は2004年、地域との協力枠組み「中央アジア+日本」を最初に提案し、その後他のパートナーとの協力モデルにもなった。2024年8月にはアスタナで首脳会議が予定されていたが、当時の岸田文雄首相は国内の地震警報を受け、直前に訪問を中止した。日本の首相による中央アジア訪問は2015年以来途絶えている。

Political Map of the Caucasus and Central Asia/ Public Domain
Political Map of the Caucasus and Central Asia/ Public Domain

日本外務省の北村俊宏報道官は「これは日本と他国との競争ではなく、中央アジア諸国が世界の他地域と協力することを望んでいる。私たちの役割は相互連結性と地域間協力の触媒となることだった。」と述べた。その目的は概ね達成されたため、今後はより具体的な協力に重点を移すと説明した。

協力の重点分野

岩屋・ヌルテリュ両外相は、エネルギー、脱炭素、接続性を優先分野として協議した。日本は2050年までにカーボンニュートラルを目指しており、これはカザフスタンの目標より10年早い。震災後に停止していた原子力発電所の再稼働や、再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力)の導入拡大を進めている。日本は2040年までに電源構成の50%を再エネ、20%を原子力とする計画であり、風力・太陽光に大きな潜在力を持つカザフスタンとの協力拡大を模索している。

貿易と投資
Photo: Celebrations on the Day of the Capital City of the Republic of Kazakhstan. Credit: expo2017astana.com
Photo: Celebrations on the Day of the Capital City of the Republic of Kazakhstan. Credit: expo2017astana.com

2024年の二国間貿易額は18億ドル。うちカザフスタンから日本への輸出は5億600万ドル、日本からの輸入は13億ドルだった。カザフスタンの主な輸出品はフェロアロイを中心とする金属製品(全体の5割超)、石油、石炭、化学製品、農産物など。一方、日本からは自動車、トラック、建設機械、医療機器、ゴム製品などが輸入されている。

日本はカザフスタンへの外国投資国の上位10か国に入り、累計投資額は80億ドルを超える。2024年の直接投資額は4億6800万ドルで、現在60社以上の日本企業が石油・ガス、石油化学、冶金、金融、鉱業、通信、医療、農業など多様な分野で活動している。

文化・人道分野

両国は人的交流の深化にも意欲を示している。2026年3月にはアスタナ-東京間の直行便がエア・アスタナと日本航空の提携で就航予定であり、二国間関係を一段と高める動きとして注目される。

また、第二次世界大戦末期に中央アジアへ抑留された日本人の遺骨返還にも大きな努力が払われている。抑留者の一部はタシケントのナヴォイ劇場建設など地域の重要建築に従事した。カザフスタン大使館によれば、約5万8900人の日本兵が同国に抑留され、そのうち約5万人が帰国。これまでに188人の遺骨が日本に返還された。

岩屋外相の訪問は、28日までウズベキスタンへと続く。(原文へ

INPS Japan/ The Astana Times

Original URL: https://astanatimes.com/2025/08/tokyo-steps-up-central-asia-engagement-with-high-level-foreign-minister-visit/

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ホワイトハウス首脳会談:欧州は団結、ウクライナは屈服を拒否

【ニューヨークATN=アハメド・ファティ】

ホワイトハウスは数々の緊張した外交の舞台となってきたが、月曜の会談は大陸全体の不安と一国の存亡を背負う重みを持っていた。ドナルド・トランプ大統領は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を迎え、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相、英国のキア・スターマー首相、イタリアのジョルジャ・メローニ首相、フィンランドのアレクサンデル・ストゥッブ大統領に加え、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長、北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長らが出席した。

Ahmed Fathi, ATN
Ahmed Fathi, ATN
欧州の断固たる団結

欧州諸国は連帯を示す決意で臨んだ。スターマー首相は会談を「有意義で建設的」と表現し、マクロン大統領は「安全保障の保証は欧州大陸全体の安全に関わる」と強調した。さらにメルツ首相は、ロシアの領土要求を米国がフロリダを譲渡するのに等しいと例え、その不当さを浮き彫りにした。メッセージは明白だった──ウクライナは孤立していない、そしてモスクワの条件は和平の基礎にはなり得ない。

プーチンの要求:和平か、それとも降伏か

共同声明の背後には、クレムリンの姿勢が重くのしかかっていた。報じられた提案には、クリミアのロシア領としての承認やドネツク、ルハンスクの割譲が含まれる。これは真の和平提案ではなく、最後通牒である。筆者の見解では、外交に見せかけた降伏条件にほかならない。

ゼレンスキー大統領自身も断固として譲らなかった。「領土の問題は私とプーチンの間のことだ」と語った。これは虚勢ではなく、生存のための決意である。譲歩すれば戦争は終わらず、ウクライナの主権そのものが消え去るからだ。

可能性と危険の狭間で

今回の会談では停戦も突破口となる合意も生まれなかった。しかし今後の進路が示された。

  • 一つは、ウクライナが領土を譲らずに、欧州資金で支えられる約900億ドル規模の米国製兵器パッケージに基づくNATO型の安全保障保証を確保する可能性。これは危ういながらも名誉ある勝利だ。
  • もう一つは、ゼレンスキー大統領が妥協を拒み、欧州が断固とした姿勢を崩さず、戦争が長期化し民間人の苦難が続くシナリオ。
  • 第三の道は、まず停戦で信頼を築くというものだが、ロシアが依然としてウクライナ都市を攻撃している状況では、その信頼性は疑わしい。
  • そして常に背景にあるのが、米国の方針転換リスクだ。もしワシントンが支援を縮小すれば、欧州は長年避けてきた規模で負担を単独で担わざるを得なくなるかもしれない。
問題の核心

今回の首脳会談は、勝利や条約の場ではなく、決意を示す場だった。欧州はウクライナと肩を並べ、ワシントンは選択肢を残し、キーウは妥協に見せかけた屈辱を拒絶した。

空襲警報で目覚める日々を送る一般のウクライナ市民にとって重要なのは、それが恥辱なき安全をもたらすかどうかである。彼らは都市を約束と引き換えに差し出すために戦っているのではない。自らの土地で尊厳を持って生きるために戦っているのだ。

ホワイトハウスでの会談は一つのことを明らかにした──平和は可能である。しかしそれは降伏ではなく、正義の上に築かれたものでなければならない。(原文へ

INPS Japan

Original URL: https://www.amerinews.tv/posts/white-house-summit-europe-unites-ukraine-rejects-capitulation

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米国は“ブラックリスト”で国連創設80周年サミットから政治指導者や代表を排除するのか?

【国連IPS=タリフ・ディーン】

193加盟国からなる国連総会が9月中旬、創設80周年を記念するハイレベル会合を開催するにあたり、1947年の米国・国連本部協定が存在するにもかかわらず、どれだけの政治指導者や代表団が米国への入国を拒否されるのだろうか。

米国のドナルド・トランプ大統領は6月、「外国人の入国を制限し、外国テロリストやその他の国家安全保障上の脅威から米国を守る」と題する大統領布告を発表した。ホワイトハウスのこの布告は、実質的な「ブラックリスト」として19か国からの国民に米国ビザを発給しないというものである。

UN Secretariate Building. Photo: Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building. Photo: Katsuhiro Asagiri

このリストには、アフガニスタン、ミャンマー、ブルンジ、チャド、コンゴ共和国、キューバ、赤道ギニア、エリトリア、ハイチ、イラン、ラオス、リビア、シエラレオネ、ソマリア、スーダン、トーゴ、トルクメニスタン、ベネズエラ、イエメンが含まれており、さらにエジプトも審査対象となっている。

だが、この措置は国連代表や政治指導者の入国禁止につながるのだろうか。ビザの発給拒否は、加盟国代表や国連職員らが本部地区に支障なくアクセスできることを保証した本部協定第11~14条の違反となる。協定はまた、国連関連の渡航に必要なビザを米国が円滑に発給することを義務付けている。

この協定および「国連の特権および免除に関する条約」は、米国における国連の存在と運営の法的枠組みを定めており、代表や職員、その家族の特権と免除、紛争処理などの実務的事項を網羅している。

Stéphane Dujarric/ UN Photo/Evan Schneider
Stéphane Dujarric/ UN Photo/Evan Schneider

これまでに米国は、イスラエルに批判的な報告を行ったパレスチナ人権状況担当国連特別報告者フランチェスカ・アルバネーゼ氏に制裁を科している。これについて国連報道官ステファン・ドゥジャリック氏は7月、特別報告者への制裁は「危険な前例」を作ると警告した。

「特別報告者やその他の国連専門家に対する一方的制裁は受け入れられない」と述べ、各国が報告に異議を唱える権利はあるものの「国連の人権制度と建設的に関与すべきだ」と強調した。

フォルカー・テュルク国連人権高等弁務官も、米国に制裁撤回を求め、アルバネーゼ氏や他の人権理事会任命者に対する攻撃と脅迫は「直ちにやめるべきだ」と訴えた。

一方で米国は、イスラエルとの和平努力を妨害したとしてパレスチナ自治政府やPLOの幹部にも制裁を科している。西側諸国の一部がパレスチナ国家承認に動く中での措置である。

こうした経緯から、米国が本部協定を順守するのか、それとも無視するのかが問われている。

ニューヨーク大学グローバル問題センターの元国際関係学教授アロン・ベン=メイル氏はIPSに対し「トランプ氏は話題の中心に居座るためなら制度や法律を操作することをいとわないだろう」と述べた。彼は米国内で権威主義的統治を押し付けるだけでなく、世界の指導者として外国首脳に頭を下げさせようとしている、と指摘する。

「誤った関税政策を含む多くの行動は、他の指導者より優位に立つことを示すための権力行使の一環だ。9月の国連総会でも問題を引き起こす可能性がある。」とベン=メイル氏は警鐘を鳴らした。

トランプ氏はイスラエルを批判する安保理決議やパレスチナ国家承認に関する決議を阻止するだろうとも付け加えた。

ただし同氏は、大統領令には外交ビザ保持者を対象外とする例外規定がある点を指摘。「特段の介入がない限り、19か国の外交官が国連総会などのために米国を訪れる際、この入国禁止措置の影響を受けることはない。」と述べた。

世界市民社会連合(CIVICUS)のマンディープ・S・ティワナ事務総長も「米国は国連本部をニューヨークに置くことで莫大な経済的・政治的利益を享受している。政府代表や市民社会代表の入国を制限すれば極めて不合理だ」と警告した。

インスティテュート・フォー・パブリック・アキュラシー事務局長でルーツアクション・ドットオーグ全国代表のノーマン・ソロモン氏は「国連に対する米国の軽視は目新しいものではない」と指摘。歴代政権も国連を自国の意向に従わせようとしてきたが、一定の誠意を持って関与した大統領もいたと述べた。

「現政権は国連原則への軽蔑を隠そうとせず、国連を弱体化させることしかしていない。外交官を国連会議から締め出すことは傲慢の極みであり、国連の基本理念を踏みにじる行為だ」とソロモン氏は強調した。

ATN
ATN

同氏はさらに、リストから外れているイスラエルについて「パレスチナ人民に対するジェノサイド的戦争を展開しており、その背景には米国からの絶え間ない武器供与がある」と指摘した。

米国は安保理で拒否権を行使できる一方、総会では各国の不信と反発が高まるだろうと同氏は述べている。

過去にも米国は国連外交官に不当な渡航制限を課してきた。2000年8月にはロシア、イラク、キューバが「差別的扱い」に抗議。いわゆる「テロ支援国家」とされた国の外交官には、ニューヨーク市から25マイル圏外への移動に国務省の許可が必要とされた。

2013年9月、戦争犯罪で起訴されていたスーダンのオマル・アル=バシール大統領が国連総会出席のための米国ビザを拒否された際、スーダン政府は国連法務委員会に強く抗議した。

1988年にはPLOのヤセル・アラファト議長が米国ビザを拒否され、総会は異例にもジュネーブで開催された。アラファト議長は演説冒頭で「1974年以来2度目の総会演説が、友好的なジュネーブで行われるとは思わなかった」と皮肉った。(原文へ)

本記事は、国連を題材にした著書『No Comment - and Don’t Quote on That』からの抜粋を含む。同書はIPS国連局シニアエディターで元国連職員、スリランカ代表団元メンバーであるタリフ・ディーン氏の著作で、Amazonで入手可能(著者サイト経由:https://www.rodericgrigson.com/no-comment-by-thalif-deen/)。

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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「スタートアップ・ネーション・フォー・グッド」:イスラエルのテクノロジー革新がSDGsに沿って世界的課題に挑む

イスラエルは「スタートアップ・ネーション」と呼ばれ、特に水不足や再生可能エネルギーの必要性といった喫緊の地球規模課題に対して、革新的な技術的解決策を見出す世界的リーダーのひとつであり、国連持続可能な開発目標(SDGs)の複数分野に大きく貢献している。

【テルアビブINPS Japan=ロマン・ヤヌシェフスキー】

Roman Yanushevsky
Roman Yanushevsky

イスラエルが「スタートアップ・ネーション」と称されるのは、その活気あるイノベーション・エコシステムのためである。しかし近年、多くのイスラエル発ベンチャーは世界の最重要課題の解決に軸足を移している。単なる利益追求型技術にとどまらず、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に照準を合わせ、水不足、食料安全保障、再生可能エネルギーといった地球規模課題に取り組むスタートアップが増えている。これは、イスラエルの起業精神が国境を超えて世界に影響を拡大していることを示している。

Watergen

水技術は注目分野のひとつである。Watergenのように、大気から安全な飲料水を生成する装置を開発した企業は、SDGs 6「安全な水とトイレを世界中に」に直接貢献している。

SDGs Goal No. 6
SDGs Goal No. 6

2009年、起業家アリエ・コハビ氏により設立されたWatergenは、1リットルあたり250ワット時の電力で空気から飲用水を生成できる「大気水生成機(AWG)」を開発した。当初は軍隊への供給を想定していたが、現在では災害地域やアメリカ大陸、アジア、アフリカの遠隔地など、水不足に苦しむ民間地域にも広がっている。

こうしたソリューションは、安全な水へのアクセスが限られている地域で即効性のある救済策を提供し、長期的な強靭性の構築にも貢献している。2020年には、Watergenがガザ地区の小児病院に現地の水道事業者と協力して機器を設置し、人道危機下での有効性を示した。

NETAFIM

1965年にネゲブ砂漠で設立されたNetafimは、近代的な点滴灌漑技術のパイオニアとして世界的に知られている。水不足に直面した農業者と技術者が、最小限の資源で効率的に作物を栽培する方法を探す中で誕生した。

根元に必要な水と養分を直接届ける点滴灌漑は、従来の方法と比べて最大60%の節水を実現しながら収量を大幅に増やした。蒸発や流出による水の損失を抑え、一滴の水も無駄にしない農法は、干ばつや気候変動に直面する地域で特に重要である。

SDGs Goal No. 2
SDGs Goal No. 2

現在Netafimは110か国以上で事業を展開。インドでは政府と協力して数百万人の小規模農家に安価な点滴灌漑システムを普及させ、食料増産に寄与。アフリカではケニアや南アフリカで食料安全保障プロジェクトに技術を提供し、半乾燥地でも栽培を可能にしている。

ラテンアメリカではブラジルやメキシコでコーヒーやサトウキビ、野菜生産に導入され、オーストラリアや米国ではブドウ園や果樹園に活用されている。こうした取り組みにより、作物の品質向上と水資源の保全を両立させている。

同社はSDG2「飢餓をゼロに」とSDG6「安全な水とトイレを世界中に」に直結する取り組みを推進し、農業の未来を形づくる世界的リーダーとなっている。

Tethys Solar Desalination(TSD)

TSDは太陽エネルギーを利用して海水を低コストかつ持続可能に淡水化する画期的技術を開発した。従来の化石燃料依存型の淡水化施設に比べ、維持費が低く、温室効果ガス排出を削減できる。

同社の技術は、太陽熱で海水を蒸発させ、凝縮して真水を得る自然の蒸発・凝縮プロセスを模倣したもの。完全に再生可能エネルギーで稼働するため、送電網が未整備の沿岸部や乾燥地でも利用できる。

TSDのソリューションは、従来型の施設を持つ余裕がない途上国に特に有効であり、小規模な漁村から大都市まで規模を柔軟に調整できる。アフリカやアジアでの試験導入では、家庭や農業に不可欠な水供給を実現した。

TSDはSDG6(安全な水)、SDG7(エネルギーをみんなに)、SDG13(気候変動対策)に寄与し、脆弱地域における気候レジリエンスを高めている。

Solaredge
SDGs Goal No. 13
SDGs Goal No. 13

2006年創業のSolaredgeは、スマートエネルギー技術の世界的リーダーであり、革新的なソーラーインバーターとエネルギーマネジメントシステムで知られる。同社が導入したDC最適化インバーターシステムは、各ソーラーパネルが独立して最大効率で稼働できるようにし、発電損失を大幅に低減した。

その後、エネルギー貯蔵、電気自動車(EV)充電、バックアップ電源、スマートホーム統合へと事業を拡大。世界130か国以上で導入され、欧州や米国の大規模発電所から、アジア・アフリカの住宅屋根、途上国の農村電化プロジェクトまで広がっている。

Solaredgeは電力網の安定化と再生可能エネルギーの統合にも貢献し、SDG7(エネルギーをみんなに)とSDG13(気候変動対策)を支援している。

H2PRO

2019年にテクニオン(イスラエル工科大学)からスピンオフしたH2Proは、グリーン水素の製造効率を飛躍的に高める「E-TAC(電気化学―熱活性化化学分解)」技術を開発した。水を水素と酸素に同時分解する従来の電解法と異なり、段階を分けることで効率を改善し、消費電力とコストを削減、安全性も高めた。

SDGs Goal No. 7
SDGs Goal No. 7

この技術により、化石燃料由来と競合可能なコストで水素を供給でき、輸送・製造・エネルギー貯蔵分野の脱炭素化を促進する。水素はトラックや船舶、航空機の燃料、あるいはグリーンスチールや肥料生産に活用可能である。

H2ProはBILL GATES、HYUNDAI、ARCELORMITTALなどの投資家から支援を受け、欧州、アジア、北米で実証実験を進めている。SDG7(エネルギー)、SDG13(気候変動対策)、SDG9(産業と技術革新)に寄与している。

まとめ

イスラエルには約1300の気候関連企業があり、そのうち946社はクリーンエネルギー、水インフラ、エコ農業、持続可能な移動、革新的素材などに特化したスタートアップである。政府の助成、PLANETechのようなプログラム、1億3000万ドル以上の学術投資が、持続可能なイノベーションをさらに後押ししている。

イスラエルのスタートアップは、空気から水を取り出し、マイクログリッドを稼働させ、グリーン水素や新たな蓄電技術を提供することで、SDG6(安全な水とトイレ)やSDG7(エネルギーをみんなに)に資する実践的かつ拡張可能な技術を生み出している。こうして「スタートアップ・ネーション」は、世界的課題に意味ある解決策を提示し、持続可能な未来への道を切り開いている。(原文へ

This article is brought to you by INPS Japan in partnership with Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

INPS Japan

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カザフスタンと日本、戦略的パートナーシップ深化を誓う

【アスタナThe Astana Times】

カザフスタンのカシム=ジョマルト・トカエフ大統領は8月25日、日本の岩屋毅外相と会談し、両国間の拡大戦略的パートナーシップの強化について協議した。

アコルダの発表によると、両者は貿易、投資、輸送・交通、さらに文化、人道、国際多国間分野における協力について意見を交わした。

トカエフ大統領は、岩屋外相の訪問が二国間関係に新たな弾みを与えるとの期待を表明した。
「日本はアジアにおける我々の信頼できる緊密なパートナーです。日本政府との包括的な協力の深化を重視しています。石破茂首相に私の温かい挨拶をお伝えください。カザフスタンへの公式訪問を楽しみに準備しています。我々の関係は着実に発展していると言えます。」とトカエフ氏は述べた。

岩屋外相は温かい歓迎に謝意を表し、日本が緊密な協力に取り組む姿勢を改めて示した。
「カザフスタンと日本は、国際秩序の強化に関心を寄せる戦略的パートナーです。今回の訪問が二国間関係のさらなる発展への道を開くと確信しています」と述べた。

会談では、国際的および地域的な課題についても議論が行われた。(原文へ

INPS Japan/ The Astana Times

Original URL: https://astanatimes.com/2025/08/kazakhstan-japan-pledge-to-deepen-strategic-partnership/

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ミャンマーにおける「組織的拷問」を国連報告書が暴く

【国連IPS=オリトロ・カリム】

ミャンマーの治安状況は著しく悪化している。昨年3月に発生した大地震の被害からいまだ立ち直れない中、内戦の長期化に伴う軍事攻勢が続いている。2025年には人道危機が重大な転換点に達し、国連は軍と武装勢力による深刻な人権侵害の数々を指摘した。

8月12日、国連のマンデートに基づき設置された「ミャンマー独立調査メカニズム(IIMM)」は年次報告書を発表し、人権侵害の立証と加害者特定において大きな進展があったと明らかにした。報告書は、軍管理下の拘置施設での組織的拷問、学校・病院・住宅に対する空爆、さらにロヒンギャ難民に対する民族浄化の継続を詳述している。

「ミャンマーの拘置施設で組織的な拷問が行われていることを示す目撃証言などの重要な証拠を確認した」と、メカニズム責任者のニコラス・クムジャン氏は述べた。「施設を統括する指揮官を含む加害者の特定が進んでおり、訴追に踏み切れる司法当局を支援する用意がある。報告書は、残虐行為の頻度と深刻さが一層高まっていることを強調している」

報告は2024年7月1日から2025年6月30日までの期間を対象とし、1300件以上の証拠を収集。600件の目撃証言、膨大な写真や映像、法医学的資料を含んでいる。2021年のクーデター以来、軍は市民を大量に拘束し、多くを恣意的に逮捕、拷問にかけてきた。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の2024年の統計によれば、2021年以降の市民の犠牲者は約6000人にのぼり、そのうち約2000人は軍の拘禁下で死亡している。

アムネスティ・インターナショナルのジョー・フリーマン研究員は「数千人のミャンマー人拘束者が、医療も法的支援も食料も不十分なまま、尋問施設や刑務所で苦しんでいる」と警告。「拷問や虐待は常態化しているが、訴えれば報復として暴行、独房監禁、性的暴力を受ける危険がある」と述べた。

目撃者の証言によれば、2歳ほどの子どもまでが「親の代理」として拘束されている事例もある。被拘束者は殴打、電気ショック、絞殺、爪の剥ぎ取りといった拷問を受け、殺害される例もある。さらに、強姦や集団性的暴行、異物挿入、性器の焼灼、強制的な全裸や侵襲的検査、生理用品・産後ケア用品の拒否など、性暴力が広範に行われている。加えて、同性愛嫌悪や女性蔑視の罵声、暴力の脅迫も横行している。

Map of Myammar
Map of Myammar

報告書は、こうした行為の加害者に多数の高位指揮官が含まれると明言。これに対し、ミャンマー軍は「平和と安定の確保」を優先事項と強調し、最近の戦闘を「テロリスト」のせいにした。

また、ラカイン州では軍とアラカン軍の衝突により戦闘が激化。アラカン軍による斬首や拷問、即決処刑などの人権侵害も確認された。一方、軍とその関連組織も女性、子ども、高齢者を含む民間人の無差別殺害や空爆を繰り返している。特に州都シットウェでは出入り口を封鎖し、住民の移動や人道支援物資の供給を妨げている。

さらに報告書は、2016年と2017年の「浄化作戦」に関する調査も行った。この作戦で複数のロヒンギャ集落が破壊され、数千人がバングラデシュに逃れ、深刻な治安不安と性暴力が発生した。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2025年の新たな戦闘により15万人以上のロヒンギャ難民がバングラデシュへ流入している。

IIMMは、難民キャンプや被害の大きな村で証言を収集し、生存者の体験を全面的に記録するとともに、具体的な加害者の特定を目指している。現在も市民団体、NGO、メディア、各国政府と連携し、責任追及と不処罰の終結に取り組んでいる。

ただし治安上の障害に加え、国連予算削減が活動を脅かしている。2025年の予算は27%削減され、2026年には正規職員を20%削減せざるを得ない見通しとなった。特に証人保護や性暴力・児童犯罪の調査資金は年内に枯渇する恐れがある。

「加害者が『誰かが見ている、証拠を集めている』と信じることが極めて重要です」とクムジャン氏は強調した。「そうした認識こそが、犯罪の記録と訴追に資する証拠収集を継続するうえで大きな効果を持つのです」(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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4年を経てもなお不明確 WHO報告が浮き彫りにした国際協力の欠如

新型コロナウイルスの起源はいまだ謎に包まれ、秘密主義、停滞した研究、そして国際的な不作為が進展を阻んでいる。

国連IPS=シュレヤ・コマール】

世界を一変させた新型コロナウイルスの発生から4年以上が経過したが、その起源はいまだ解明されていない。SARS-CoV-2は動物から人間へ自然に感染したのか、それとも研究所からの偶発的な流出なのか。世界保健機関(WHO)の最新報告書は新たな明確さを欠き、国際協力と科学的透明性に深刻な疑念を投げかけている。

WHOの「新興病原体起源に関する科学諮問グループ(SAGO)」は2025年6月27日、第2次報告書を公表した。しかし数年にわたる調査にもかかわらず、その成果は大きく批判され、目新しい発見に欠けるとされた。最大の問題は「含まれていないもの」にある。中国から求められていた重要データが提供されず、調査に大きな空白を残したのである。

WHO
WHO

『Viral: The Search for the Origin of Covid-19』の共著者であるリドリー卿は次のように語った。
「この報告書は、数年前に少数の独立研究者が明らかにした内容以上のものをほとんど付け加えていない。5年をかけ、23人もの人員を動員して『ほとんど役に立たない』文献を出すに至ったのは、率直に言って恥ずべきことだ。」

新型コロナの起源解明は単なる学術的関心にとどまらない。ウイルスがどのように人間社会に入り込んだかを理解することは、次なるパンデミックを防ぐ上で不可欠である。科学者たちは、今後も新たなコロナウイルス流行の可能性は高いと見ている。野生動物市場からの自然な感染か、研究所事故かを突き止めることは、将来の備えを大きく左右する。

SAGO報告書は動物由来説と研究所流出説の両方を依然として「可能性あり」としつつ、さらなる証拠が必要だと指摘する。しかし、その証拠はいまだ得られない。

「中国が当初から透明性を保っていれば、すでに原因を特定できていたはずだ」と、2020~2021年にホワイトハウスの新型コロナ対策調整官を務めたデボラ・バークス博士は語った。

大多数のウイルス学者はいまも自然起源説を支持している。2025年7月15日に公開されたドキュメンタリー『Unmasking COVID-19’s True Origins』でも専門家が「ウイルスは自然起源であると理解する研究者が圧倒的多数だ」と述べている。しかし初期サンプルや完全な記録にアクセスできない以上、両説は科学的に排除できず、政治的緊張も調査を曇らせ続けている。

今回の報告書は、世界的保健政策の大きな節目の直後に出された。2025年5月20日、世界保健総会は「WHOパンデミック協定」を採択した。これは将来の感染症流行に備えるための法的拘束力を持つ条約であり、コロナ禍で露呈した深刻な欠陥――協調の遅れ、データ共有の停滞、ワクチンや治療への不平等なアクセス――を是正することを目的としている。

同協定は、病原体情報の迅速な共有、疾病監視における協力強化、ワクチンなど医療ツールの公平な分配を加盟国に義務付ける。ただし国家主権は尊重され、公衆衛生の決定権を譲渡することは求められない。病原体サンプルとその利用利益の共有に関する条項などは、2026年に最終調整される予定である。

WHOが2022年6月9日に出した第1次SAGO報告も、両説を「あり得る」とし、中国当局に追加データ提供を求めていた。その後も透明性が欠如したまま時間が経過し、科学者たちの苛立ちは一層強まっている。協力の呼びかけは、このウイルスだけでなく次なる脅威への備えでもある。

一方で、新型コロナや将来の呼吸器疾患に対抗するための重要研究は停滞している。2024年、オハイオ州立大学はSARS―CoV―2や長期的後遺症に関する新治療法を研究するため、1,500万ドルの助成を受けた。その一環で低酸素性呼吸不全の治療薬を試験する有望な臨床研究が進んでいたが、米国立衛生研究所(NIH)は資金を突然打ち切った。

SDGs Goal No. 3
SDGs Goal No. 3

打ち切りにより50万ドルの節約にはなったが、すでに150万ドルが投入された後であり、研究は中止を余儀なくされた。その結果、毎年約100万人が新型コロナやインフルエンザなどで入院する呼吸不全に対し、有効な治療法が遅れる事態となった。オハイオ州立大学のある研究者は次のように嘆いた。

「これは私たち全員にとって大惨事だ。いつ残りの助成金を失うか分からない状況で、皆、不安と絶望の中にいる。私たちは人々の健康を良くするために懸命に働いてきただけなのに、攻撃されていると感じる。次のインフルエンザ・パンデミックは必ず来る。家畜で起きていることは本当に恐ろしいのに、私たちにあるのは酸素と希望だけだ。」

科学界の指導者たちは、今起きていることとは逆に「研究投資を増やすべきだ」と強調する。停滞や資金不足に陥った研究を復活・拡充し、特に中国のようなホットスポット地域の研究者と国際的な連携を深めなければならない。そうして初めて、次なる脅威に備えられる。

WHO自身も「SARS-CoV-2の起源解明作業は未完である」と認めている。だが透明性、資金、政治的意思が欠ける限り、この状況は長く続くだろう。そのとき世界は、次のパンデミックに対しても再び無防備なままにされる可能性が高い。(原文へ)

INPS Japan

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