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NPT再検討会議、合意に至らず閉幕――核の「取引」は一段と脆弱に

【国連本部INPS Japan/ATN=アハメド・ファティ

核兵器不拡散条約(NPT)の第11回再検討会議は、最終文書に関する合意に至らないまま国連本部で閉幕した。4週間にわたる外交交渉は、世界の核秩序を支える主要条約がなお存続している一方で、かつてないほど大きな圧力にさらされている現実を改めて浮き彫りにした。|英語版

4月27日から5月22日までニューヨークで開かれた同会議は、NPTの履行状況を検証する場であった。NPTは、核兵器を持たない国々が核兵器を開発しないことを約束し、核兵器国が核軍縮に取り組み、すべての国が保障措置の下で原子力の平和利用にアクセスできるという、基本的な取引の上に成り立っている。理論上、この条約は現代の国際安全保障において、今なお最も重要な合意の一つである。しかし2026年の再検討会議は、相互不信が深まり、戦争が続き、一部の国々が核兵器を廃絶すべき危険ではなく安全保障上の「保険」とみなす中で、この取引を維持することがいかに困難になっているかを示した。

結果は明白だった。合意には至らなかった。ベトナムのドー・フン・ビエット国連大使が議長を務めた会議では、内容を抑えた草案でさえ各国の一致を得られなかった。同大使はAP通信に対し、合意を阻んだ特定の一国があったわけではないと述べたが、主要な争点の一つとなったのは、イランが「核兵器の保有を目指し、開発し、取得することは決してできない」とする文言だった。この一文は単なる技術的な表現の問題にとどまらず、会議全体を貫く政治的亀裂を象徴する焦点となった。

Map of Iran
Map of Iran

イランは、自国だけが名指しされることに強く反発した。一方、米国などは、イランの核関連義務、透明性、ウラン濃縮、国際原子力機関(IAEA)との協力をめぐり、より強い文言を盛り込むよう求めた。これに対しイランは、自国の核施設への攻撃を指摘し、米国とイスラエルが国際法に違反し、自ら支持すると主張する合意そのものを損なっていると非難した。予想された展開だったとはいえ、会議にとって打撃は大きかった。すべての当事者に説明責任を求めることと、その説明責任が選択的に適用されているとの不信との間にある溝を、会議は埋めることができなかった。

問題はイランだけではなかった。イランは火元のすべてではなく、火花にすぎなかった。より根本的な問題は、NPTが現在、あまりにも多くの未解決の危機を同時に抱えていることにある。ウクライナ戦争と、ザポリージャ原子力発電所をはじめとする核関連施設周辺の危険は、2022年の再検討会議を決裂させる一因となった。

一方、中東における核兵器およびその他の大量破壊兵器のない地帯の設置に関する1995年の合意は、いまだ履行されておらず、重大な争点であり続けている。AUKUSは、海軍用原子力推進技術と保障措置をめぐる懸念をなお引き起こしている。北朝鮮は核兵器を保有したまま、依然として条約の枠外にある。中国の核戦力拡大、米ロ軍備管理体制の崩壊、そしてすべての核武装国による核戦力の近代化は、軍縮が意味ある方向へ進んでいるとの信頼を損なってきた。

今回の不調が重い意味を持つのはそのためである。NPT再検討会議が合意文書を採択できなかったのは、2015年、2022年に続き、これで3回連続となった。最終的なコンセンサス文書が採択されたのは2010年が最後である。会議の失敗は、ただちに条約の崩壊を意味するものではない。しかし、再検討プロセスそのものの信頼性が損なわれつつあることを示している。外交官たちは、NPTはいまなお世界の核秩序の土台であると言うことができるし、実際その通りでもある。だが、建物が崩れる前に、その土台にひびが入ることはある。

今回の会議から浮かび上がった最大の示唆は、非核兵器国の不満が高まっていることである。多くの国々は、明らかな二重基準が存在すると受け止めている。すなわち、非核兵器国はルールを守り、査察を受け入れ、核兵器を持たないことを求められる一方で、核兵器国は核戦力を近代化し、抑止戦略を拡大し、軍縮を先送りしているという認識である。核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のような団体は、現実的な計画が欠如していることを批判し、核兵器国がより踏み込んだ約束に抵抗していると指摘している。こうした批判は、条約が今や核の特権を守る方向に大きく傾いていると考える非核兵器国の政府、とりわけそのような問題意識を持つ国々の間で、強い共感を呼ぶ可能性が高い。

ICAN
ICAN

アラブ諸国グループにとっても、今回の結果は中東問題を未解決のまま残すものとなった。1995年の中東決議は、周辺的な問題ではなかった。それは、NPTの無期限延長を可能にした政治的パッケージの一部だったのである。それから約30年が過ぎても、この地域にはなお、非核兵器地帯も、大量破壊兵器のない地帯も、イスラエルを含む合意された地域安全保障の枠組みも存在しない。中東における核兵器およびその他の大量破壊兵器のない地帯の設置をめぐる、国連決議に基づく年次会議プロセスは続いている。しかし2026年のNPT再検討会議は、アラブ諸国が期待していたような全会一致の支持を示すことはできなかった。この状況は、NPTがこの地域に対し、約束された政治的成果をもたらすことなく、忍耐だけを求めているとの認識をさらに強めるだろう。

今回の会議はまた、核施設への攻撃という問題にも改めて注目を向けさせた。これはもはや単なる技術的な安全上の問題ではない。今や、根本的な不拡散上の問題である。ウクライナやイランの核施設周辺での軍事活動は、NPT体制が容易には対処できない懸念を引き起こしている。核施設が戦闘における通常の攻撃対象となるなら、原子力の平和利用を保障するという約束を守ることは、はるかに困難になる。

一方、AUKUSが今回の会議を決裂させたわけではない。しかし、それはインド太平洋の将来にとって、引き続き重要な争点である。非核兵器国への原子力潜水艦技術の移転は、保障措置、先例、信頼をめぐる複雑な問題を提起している。オーストラリアは、NPTを完全に順守し続けると述べている。だが中国などは、そこに懸念すべき抜け穴を見ている。この問題は消えない。次の再検討サイクルでは、さらに重要性を増す可能性がある。

第三の教訓は厳しいが重要である。NPTは、ほぼすべての国がその枠内にとどまっているため、なお意義を持っている。しかし、その根底にある政治的取引は、ますます大きな圧力にさらされている。条約が存続しているのは、代替案がより悪いからである。だが、存続していることと健全であることは同じではない。

2026年再検討会議は、NPTを終わらせたわけではない。むしろ、外交上の言葉と戦略的現実との間に横たわる深い溝を浮き彫りにしたのである。各国は演説ではなお、この基本的な取引を称賛している。しかし、多くの国の行動は、核兵器の価値が以前にも増して高まっているかのように見える。そこに、この危機の核心的な矛盾がある。

結論を最も簡潔に言えば、NPTはなお存続しているが、それを支える信頼は失われつつある、ということだ。世界はニューヨークを後にするにあたり、より強固な核秩序を手にしたわけではない。残されたのは、もう一つの警告である。すなわち、軍縮、不拡散、地域安全保障が、選択的に取り上げられる論点ではなく、相互に結びついた義務として扱われなければ、次回の再検討会議はさらに厳しい問いに直面することになるだろう。それは、各国が文書に合意できるかどうかではない。そもそも各国が、NPTの根底にある取引をなお信じているのか、という問いである。

This article is brought to you with permission from American Television Network.

Original URL: https://www.amerinews.tv/posts/npt-review-ends-without-consensus-leaving-nuclear-bargain-more-exposed

Toward a Nuclear Free World Banner
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INPS Japan

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札束外交、見返り、豪華クルーズ――かつて国連選挙を汚した舞台裏

国連IPS=タリフ・ディーン】

2026年は、国連にとって節目の多い年になりそうだ。9月中旬に第81回国連総会を正式に主宰する新たな国連総会議長(PGA)が選出されるほか、現職のアントニオ・グテーレス事務総長(SG)が10年に及ぶ任期を終えて2027年1月に退任するのに伴い、新たな事務総長の選出と任命も行われる。|英語版

Thalif Deen
Thalif Deen

国連加盟国が安全保障理事会や各種国連機関の理事国入りを目指して選挙戦を繰り広げたり、票の獲得を図ったりしていた1960年代から70年代にかけて、投票はしばしば「札束外交」によって大きく汚された。世界の貧しい国々への援助拡大を約束する一方で、その多くには厳しい条件が付けられていたのである。

1950年代から60年代には、特に委員会室では挙手による投票が行われていた。しかしその後は、総会議場の高い位置に設置された、より高度な電子掲示板によって票数が集計されるようになった。安全保障理事会や国際司法裁判所の選挙では、秘密投票が行われた。

はるか昔、激しい選挙戦となったある投票では、石油に潤う中東のある国が、票の見返りとして、国連外交官らに高級なスイス製腕時計や、当時世界最大級の石油会社だった旧アラビアン・アメリカン石油会社の株式を配っているとの噂が流れた。

そして委員会室で投票の時間になると、右利きの代表も左利きの代表も手を挙げたが、石油に恵まれた候補への賛成票として最も多く掲げられた手には、スイス製腕時計が光っていたという。

逸話として語られるこの話は、国連を含む政府間機関の投票にかつてはびこっていた腐敗を象徴している。おそらくそれは、世界各国の多くの国政選挙と大差なかったのかもしれない。

重要な選挙を目前に控え、ある西欧の国は票の見返りに地中海の豪華クルーズを無料で提供した。また別の国は、総会議場で堂々と、高価なスイス製チョコレートのギフトボックスを配った。

モルディブの元国連大使で、後に同国外相を務めたファトゥラ・ジャミール氏は、国連によって小島嶼開発途上国(SID)に分類される資源の乏しい島国が、インフラ事業の資金支援を豊かな国々に求めていた当時のことを、IPSの取材に応じて語った。

A small island nation’s search for development aid becomes entangled with the quiet politics of vote-trading at the United Nations.

少なくとも伝統的な援助国であるアジアの豊かな国の一つが、真っ先に、しかも寛大に応じたという。その事業は全額無償で支援されることになった。文字通り、ただで、無償で、何の負担もなく―ただし条件が一つあった。

「国連で投票が行われ、それが貴国の国益に関わらない場合には、貴国の票をいただきたい。」

その国の外務省は、そう伝えてきたという。

おそらくそれは、半永久的な約束を意味していた。しかも、その「期限」は、海面上昇に脅かされ、地球上から消滅しかねない島国そのものが存続する限り、ということだった。この申し出は、巧妙な政治的見返りを伴うものだった。表向きには、何の条件も付いていないように見える開発援助である。

国連で最高の政策決定機関である総会の議長が、同数票の末にくじ引きで選ばれた例も少なくとも一度ある。

アジア・グループが単一候補の擁立に失敗したため、政治的に記憶されるこの争いは、1981年の第36回国連総会を前に行われた。議長職を争ったのは、イラクのイスマット・キッターニ、シンガポールのトミー・コー、バングラデシュのカワジャ・モハメド・カイザーの3人である。この選挙は、キッターニ、コー、カイザーの頭文字にちなみ、「3人のKの戦い」と呼ばれた。

第1回投票では、キッターニが64票、カイザーが46票、コーが40票を獲得した。しかしキッターニは、投票した加盟国総数に基づく必要多数には届かなかった。第2回投票では、キッターニとカイザーがそれぞれ73票を獲得し、同数となった。当時、出席し投票した加盟国は146カ国だった。

A view of the Headquarters of the United Nations in New York as seen from the north of the UN site. Photo credit: UN
A view of the Headquarters of the United Nations in New York as seen from the north of the UN site. Photo credit: UN

この同数を解消するため、退任する総会議長は、議長選出手続に関する第21条に基づき、くじを引いた。この手続は『国連総会実行集』にも記録されている。

そして、まったくの偶然に左右された前例のない総会議長選挙で、くじ運はキッターニに味方した。ただし当時出回っていた冗談によれば、勝者はコイン投げで決まったという噂もあった。もっとも、その投げられたコインは、どうやら表が二つで裏がなかったらしい。

しかし近年では、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ・カリブ、そして西欧その他グループ(WEOG)を含む地域グループの間で、事実上の「停戦」が成立している。各グループは地理的ローテーションに従って順番に候補を立て、対立候補なしで選出されるようになった。

とはいえ、国連が担う広範で重大な使命の重みは、時折、イースト川沿いの「ガラスの館」を笑いに包む軽妙な瞬間によって和らげられてきた。国連は逸話の宝庫である。その中には実話もあれば作り話めいたものもあり、国連総会(UNGA)が主役を務め、安全保障理事会(UNSC)が政治的な脇役を演じる。

国連大使や各国代表が、投票の時間に広大な総会議場に集まるとき、選択肢は三つある。賛成、反対、棄権である。

しかし、最も興味深いのは第4の選択肢である。突然、トイレに駆け込みたくなることだ。席を空け、結果として「欠席」とみなされようとする慌ただしい動きは、問題が政治的に敏感である場合に起こる。

代表たちが自らの良心に従って投票できないとき、主に西側の援助国の怒りを買いたくないとき、あるいは本国から具体的な指示を受けていないまま不意の投票に直面したとき、彼らは席を離れ、トイレへ向かうのである。

マンハッタンのパーク・アベニューに隣接するタウンハウスで開かれた記者向け昼食会で、鋭いユーモア感覚を持つイタリアのフランチェスコ・パオロ・フルチ大使は、この第4の選択肢を、国連投票における「トイレ要因」と表現した。

During politically sensitive UN votes, some delegates were said to choose a “fourth option” — leaving the chamber to be counted absent rather than voting yes, no or abstaining. Image: INPS Japan
During politically sensitive UN votes, some delegates were said to choose a “fourth option” — leaving the chamber to be counted absent rather than voting yes, no or abstaining. Image: INPS Japan

この邸宅について、同大使は「ここはかつてグッチの所有だったが、今はフルチのものだ」と冗談を飛ばした。

さらに同大使は、この問題を解決する唯一の方法は、総会議場の後方に仮設トイレを設置することだと冗談めかして提案した。そうすれば代表たちは、便座に座って考え込みながらでも投票できるというわけである。だが当然ながら、この案に賛同する者はいなかった。

多くの場合、77カ国グループ、ラテンアメリカ・カリブ諸国、アフリカ連合(AU)、西欧その他グループ(WEOG)など、さまざまな地域グループや連合体は、投票に先立って非公開の場で方針を決め、合意に基づいて投票した。

1970年代から80年代にかけて、116カ国が加盟する非同盟運動(NAM)は、国連で最大かつ最も強力な政治連合の一つだった。NAMは1961年にベオグラードで創設され、ユーゴスラビア、インド、エジプト、ガーナ、インドネシア、ザンビア、キューバ、スリランカなどの国々が主導した。

原則として、116カ国は国連総会決議において足並みをそろえて投票し、隊列を乱すことはめったになかった。あるスリランカ大使は、コロンボの外務省から送られてきた、新任代表向けのある指示を振り返った。その文面はこうだった。

「予定外の突然の投票に直面し、外務省からの指示がない場合は、右を見てユーゴスラビアがどう投票しているかを確認し、左を見てインドがどう投票しているかを確認せよ。もし両国の大使が席を立って走り出したのが見えたら、そのまま彼らの後についてトイレへ向かえ。」

Voting by secret ballot. Credit: United Nations
Voting by secret ballot. Credit: United Nations
本稿には、IPS通信のシニアエディターであるタリフ・ディーン氏の著書『No Comment – and Don’t Quote Me on That』からの抜粋が含まれている。同氏は、かつて国連総会会期に参加したスリランカ代表団の一員であり、ニューヨークのコロンビア大学でジャーナリズム修士号を取得したフルブライト奨学生でもある。また、国連記者協会(UNCA)が毎年授与する国連報道優秀賞の金メダルを、2012年と2013年の2度にわたって共同受賞している。同書はAmazonで入手可能である。著者のウェブサイト経由のAmazonリンクは以下の通りである。

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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大迂回路:サウジアラビアの紅海構想がホルムズ海峡の優位性に挑む

イスラマバードINPS Japan/London Post=モハマド・ラーシド】

世世界の目がホルムズ海峡に注がれるなか、サウジアラビアは紅海経由の代替ルートを静かに整備し、MSCとの提携を進めるとともに、巨大な東西パイプラインを最大限に活用していた。イランにとって最強の切り札は、いまや大きく弱体化している。|英語版

ホルムズ海峡をめぐる緊張が高まるなか、イランは長年、世界の石油・LNGのおよそ5分の1が通常通過するこの重要なチョークポイントの支配を、決定的な戦略カードとみなしてきた。テヘランは、封鎖や通航妨害を行えば、世界はイランの優位を認めざるを得ず、譲歩を迫られると考えていた。

しかし、国際社会の関心が同海峡に集中する一方で、サウジアラビアは代替ルートの整備を静かに進め、ホルムズ海峡を威圧の手段として使う有効性を大きく低下させていた。危機下において主流メディアの報道ではほとんど見過ごされてきたこれらの動きは、エネルギーと貿易の流れに重要な迂回手段を提供している。サウジアラビアは、世界のサプライチェーンの冗長性と強靭性を高める3つの主要施策を実行した。

紅海海運ネットワークの拡充

サウジアラビアは、ヤンブー、ジッダ、キング・アブドラ港など、紅海沿岸のインフラ整備と活用を加速させてきた。NEOMのような野心的なプロジェクトも、その一環である。これにより、輸出入のための実用的な西側回廊が形成され、貨物は紅海を経由し、可能な場合にはスエズ運河、あるいは南方ルートへと振り向けられる。

紅海ルートにも、バブ・エル・マンデブ海峡周辺におけるフーシ派の脅威など、固有のリスクはある。それでも、一定量の貨物についてはペルシャ湾を完全に迂回できる戦略的な代替手段となっている。

世界最大のコンテナ船会社MSCとの提携

世界最大のコンテナ船会社であるMediterranean Shipping Company(MSC)は、2026年5月、欧州・紅海・中東を結ぶ新たなエクスプレスサービスを開始した。この海陸複合輸送による「ランドブリッジ」ルートでは、船舶がスエズ運河を通過し、サウジアラビアの紅海側の港湾であるジッダ港とキング・アブドラ港に寄港する。その後、貨物はサウジ国内をトラックで輸送され、湾岸側のダンマームへ運ばれ、そこから他の湾岸拠点へフィーダー輸送される。

この海上輸送と陸上輸送を組み合わせたモデルは、コンテナ貿易においてホルムズ海峡を事実上迂回するものであり、欧州と中東地域全体の物流網の接続性を高めている。

東西原油パイプライン(ペトロライン)の最大活用

サウジアラビアが講じた最も有力な手段は、全長1200キロに及ぶ東西パイプライン、通称ペトロラインの稼働を拡大したことである。同パイプラインは、東部の湾岸油田地帯にあるアブカイク周辺を起点に、アラビア半島を横断し、紅海側の輸出拠点ヤンブーまで原油を輸送する。

このパイプラインは、もともと1980年代のイラン・イラク戦争時に同様の目的で建設されたものだが、現在の危機下で輸送能力は日量700万バレルまで引き上げられている。これにより、サウジ産原油、さらには将来的には他の湾岸諸国の原油も、ホルムズ海峡を通過せずに紅海経由で国際市場へ届けることが可能になった。

同パイプラインの持続的に運用可能と確認された輸送能力は大きいものの、危機以前にホルムズ海峡を通過していた地域全体の原油輸送量、歴史的には日量2000万バレル超と比べれば限界がある。また、攻撃や物流上の制約にも直面しており、イラン、イラク、クウェートなど、同海峡への依存度がはるかに高い湾岸輸出国にとって、完全な代替手段とはなり得ない。紅海ルートにも、フーシ派の脅威といった新たな脆弱性が伴う。

それでも、ホルムズ海峡が大きく混乱するなかで、サウジアラビアのこれらの取り組みが相当量の原油輸送を継続させてきたことは明らかである。

サウジアラビアの動きから利益を得る国と関係者

サウジアラビア自身は、信頼できるエネルギー供給国としての地位を強化するとともに、Vision 2030および国家交通戦略に沿って物流ハブ化を進め、イランからの圧力に対する脆弱性を低下させている。

欧州、インド、中国、日本、韓国などの主要石油輸入国にとっては、サウジ産原油、さらには迂回ルートで輸送される湾岸産原油へのアクセスが維持されることで、国際的な価格と供給の安定につながる。これにより、エネルギー価格の世界的な急騰を招きかねない供給不足を緩和できる。例えばインドは、代替輸送ルートという選択肢を得ている。

エジプトは、スエズ運河、SUMEDパイプラインとの接続、関連する紅海回廊を通じた通航量の増加によって恩恵を受け、物流ハブとしての役割を高めている。

UAE、バーレーン、カタール、クウェート、オマーンなど他の湾岸諸国も、MSCのランドブリッジ、共通インフラの強靭化、代替的な輸出入経路への潜在的なアクセスを通じて、間接的な利益を得ている。UAEもまた、フジャイラを活用した独自の迂回ルートを有している。

世界の海運・貿易においては、MSCをはじめとする事業者が新たな実用的ルートを確保し、サプライチェーンの安定化を通じて各国の産業を支えている。

欧州にとっても、バルト海沿岸などの港湾と中東地域をサウジアラビアの拠点経由でより迅速に結ぶ新たなMSCサービスから、直接的な恩恵を受けることができる。

これらのサウジアラビアの取り組みは、より大きな構造変化を示している。ホルムズ海峡はいまなお極めて重要であるものの、代替性を備えたインフラを構築するという戦略的先見性が、その「武器化」の効果を鈍らせている。情勢が変化するなか、パイプライン、港湾、複合輸送回廊へのさらなる投資は、中東におけるエネルギーと貿易の地図を恒久的に塗り替える可能性がある。

戦略的・地政学的影響

イランの影響力低下:
イランはもはや、ホルムズ海峡の封鎖によってサウジアラビアを麻痺させ、国際社会から即時の譲歩を引き出せると前提にすることはできない。サウジアラビアの動きは代替手段の存在を示し、イランの「優位性」というナラティブを切り崩している。

世界市場の強靭化:
代替ルートは供給の全面的崩壊を防いできた。ただし、価格はなお急騰し、在庫も大幅に取り崩されている。

長期的な変化:
これらの取り組みは、サウジアラビアのVision 2030に掲げられた物流分野の目標を前倒しで進めるとともに、パイプライン、鉄道、将来的なランドブリッジ、紅海インフラへの追加投資を促している。その結果、ホルムズ海峡の優位性は恒久的に低下する可能性がある。

INPS Japan

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イランの核開発:中東が「核武装したテヘラン」を恐れる理由

エルサレムINPS Japan=ロマン・ヤヌシェフスキー

イラン、米国、イスラエルの対立が激化する中、多くの分析家は、イランが新たな政治段階に入ったとみている。強硬派の治安関係者、軍と結びついたテクノクラート、革命防衛隊の司令官らが、1980年代以降で最も大きな実権を握る局面である。|RUSSIANENGLISH

Roman Yanushevsky
Roman Yanushevsky

イランの公式な国家機構はなお維持されている。しかし、欧米やイスラエルの複数の情報評価は、現在の指導部をめぐる環境について、実質的には治安機構を中心とする「戦時下の権力集中」と表現している。

この変化は重要である。なぜなら、現在イランの戦略政策を形づくっている多くの人物は、過去のイラン交渉担当者の世代に比べ、西側との妥協に明らかに関心が薄いように見えるからだ。

長年にわたる外交の崩壊、制裁の再発動、イラン核施設に対する破壊工作、そして軍事行動の威嚇が繰り返された結果、テヘラン内部では「イスラム共和国の存続を保証できるのは核抑止力だけだ」とする主張が力を増している。

数十年にわたり、イラン当局者は自国の核計画について、発電、科学研究、医療用同位体の生産といった民生目的のためのものだと公に主張してきた。しかし同時に、イランは通常の民生用原子力発電に必要な水準をはるかに超えてウラン濃縮を拡大してきた。

国際原子力機関(IAEA)によれば、イランは現在、兵器級に近い純度まで濃縮されたウランを保有しており、さらに濃縮すれば、理論上は複数の核装置を支え得る量の核分裂性物質を有している。

イラン側の見方

テヘランを突き動かしている論理は、イラン側の視点に立てば理解しにくいものではない。イランの戦略家たちはしばしば、核兵器を保有したことで外国主導の体制転換を免れた国々を引き合いに出す。

地域の議論で最も頻繁に挙げられるのは北朝鮮である。極度の国際的孤立と制裁にもかかわらず、平壌の核戦力は、米国による直接的な軍事侵攻の可能性を事実上排除した。

Photo Col Muammar el-Qaddafi of Libya addressing the UN General Assembly sessions in September 2009. Credit: United Nations
Photo Col Muammar el-Qaddafi of Libya addressing the UN General Assembly sessions in September 2009. Credit: United Nations

これに対し、サダム・フセイン政権下のイラクやムアンマル・カダフィ政権下のリビアのように、核抑止力を持たなかった体制は、兵器計画を放棄した、あるいは完成させられなかった後に、最終的に打倒された。

テヘランから見れば、こうした先例は明確なメッセージを発している。すなわち、核能力こそが外部からの介入に対する唯一の信頼できる「保険」なのかもしれない、ということである。

イラン当局者はまた、自国が極めて敵対的な安全保障環境に置かれているとも主張している。イランは米軍基地、敵対する湾岸君主国、そして核武装しているとみられるイスラエルに囲まれている。イランの強硬派は、核能力を単なる兵器ではなく、戦略的対等性と国家存続の象徴として位置づける傾向を強めている。

米国側の見方
The western front of the United States Capitol. The Neoclassical style building is located in Washington, D.C., on top of Capitol Hill at the east end of the National Mall. The Capitol was designated a National Historic Landmark in 1960.
The western front of the United States Capitol. The Neoclassical style building is located in Washington, D.C., on top of Capitol Hill at the east end of the National Mall. The Capitol was designated a National Historic Landmark in 1960.

一方、米国にとって、イランによる核兵器取得の阻止は、中東安全保障政策の中心的柱の一つとなっている。

ワシントンの懸念は、短期的なものと長期的なものの双方に及ぶ。共和、民主両党の歴代政権は、核武装したイランが地域を根本的に不安定化させ、核軍拡競争を誘発し、イスラエルや米国の同盟国を巻き込む戦争の危険を劇的に高める可能性があると主張してきた。

米情報当局者が懸念しているのは、「核の盾」の可能性でもある。このシナリオでは、イランは核抑止力による保護を背景に、ヒズボラ、イラクの民兵組織、イエメンのフーシ派といった地域の代理勢力を通じて、より攻撃的に行動する。敵対国は、核能力を持つ国家への直接報復をためらうだろうと見込むためである。

地域から見た脅威

イスラエルは、この脅威をさらに実存的なものとして捉えている。イスラエルの指導者たちは、政治的立場を問わず、イランに核兵器能力を持たせることは認めないと繰り返し表明してきた。

その理由は、戦略的なものでもあり、歴史的なものでもある。イラン当局者や革命防衛隊司令官は長年にわたり、イスラエルの破壊を求める言辞を用いる一方、地域全体で反イスラエル武装組織に資金と武器を提供してきた。

多くのイスラエル人にとって、イデオロギー上の敵意、弾道ミサイル開発、そして核能力が組み合わさることは、受け入れがたいリスクである。仮にイランが実際に核兵器を使用しなかったとしても――そもそも現時点でイランは核兵器を保有していない――そのリスクは消えない。イスラエルの防衛計画担当者は、イランの核爆弾が存在するだけで、イスラエルの行動の自由は大きく制約され、恒常的な戦略的脆弱性が生まれると主張している。

湾岸諸国もまた、深い警戒感を抱いている。これらの国のいくつかはテヘランと慎重な外交関係を維持しているものの、その懸念は小さくない。

London Post
London Post

サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などは、イランの「核の傘」が、テヘランによるペルシャ湾での政治的・軍事的優位を可能にすることを恐れている。これらの政府が特に懸念しているのは、イランのミサイル戦力、代理勢力ネットワーク、そして地域各地のシーア派運動に対する影響力である。

そのため、多くの分析家は、核武装したイランが地域的な核拡散の連鎖を引き起こす可能性があるとみている。サウジアラビアは、イランが核の敷居を越えれば自国も核の選択肢を追求すると、繰り返し示唆してきた。トルコやエジプトも、いずれ自国の戦略態勢の見直しを迫られる可能性がある。

脅威は現実なのか

それでも一部の専門家は、差し迫った「イラン発の核の破局」への恐怖は誇張されることがあると指摘している。

仮にイランが核爆弾を製造したとしても、テヘランの指導部は一般に、情報機関からは自殺的というより合理的で体制存続を重視する存在とみなされている。歴史的に見れば、多くの核保有国は核兵器取得後、直接戦争のコストが飛躍的に高まったため、より慎重になったのであって、より無謀になったわけではない。この見方を支持する人々は、イランを敵対的ではあるが抑止可能な他の核保有国になぞらえている。

これに対する批判者は、中東の複雑性、代理戦争の役割、そして誤算の可能性を踏まえれば、イランは異なると反論する。また、リスクは意図的な核攻撃に限られないとも警告している。ミサイル、民兵組織、海上での偶発的衝突をめぐる地域危機が、核兵器の存在によって予測不能な形でエスカレートする可能性があるためである。

技術的に見れば、イランは過去のどの時点よりも核兵器能力に近づいているように見える。

科学国際安全保障研究所(ISIS)やIAEAの複数の評価によれば、イランは高濃縮ウランを十分に保有しており、兵器化されれば、数カ月以内に複数の核装置に必要な物質を生産できる可能性がある。

ただし、核分裂性物質の生産は課題の一部にすぎない。イランはなお、以下の段階を経る必要がある。

機能する核弾頭を製造すること、
それを小型化すること、
ミサイルシステムと統合すること、
そして信頼性のある実験またはシミュレーションを実施すること、である。

西側の情報機関の間では、これがどれほど速く実現し得るかについて見方が分かれている。一部の推計は、イランが政治的決断を下せば、比較的短期間で粗製の核装置を生産できる可能性があるとしている。しかし、信頼性のある実戦配備可能な核戦力を構築するには、相当長い時間を要する可能性が高い。

イランは理論上、何発の核爆弾を製造し得るのか。それは濃縮度、兵器設計の効率性、そしてテヘランがどれだけのウランを備蓄として保持するかによって異なる。最近の一部推計では、イランの現在の濃縮ウラン備蓄は、完全に兵器化された場合、おおむね5発から10発の単純な核装置に必要な物質を支え得るとされている。

Map of Middle East
Map of Middle East

これは、イランが現在核爆弾を保有していることを意味しない。テヘランが作戦運用可能な核兵器を組み立てたことを示す公的証拠は、なお存在しない。しかし、「核爆弾を持っていること」と「短期間で核爆弾を製造できること」との違いは、ますます狭まっている。

まさにこの点こそが、この問題をこれほど危険なものにしている。

イラン指導部にとって、核能力は体制存続を保証する究極の手段に見えつつある。一方、米国、イスラエル、そして複数のアラブ諸国にとって、同じ能力は、はるかに不安定な中東の始まりに見える。そこでは、抑止、代理戦争、核をめぐる瀬戸際政策が、これまで地域が経験したことのない形で併存する可能性がある。

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教育の構造改革は、場当たり的な決定だけでは実現しない

【カトマンズNepali Times=スディクシャ・トゥラダール】

バレンドラ・シャハ首相率いる政府は、学校教育の改善に向けた一連の施策を発表し、発足直後から矢継ぎ早に動き出した。しかし、その1か月後にあたる今週、政府はブルドーザーを投入し、少なくとも4校の地域運営の学校を含む河岸沿いの集落を一帯ごと取り壊した。|ENGLISH

マノハラ川とバグマティ川の河岸沿いの一画は、まるで戦場のような惨状を呈していた。学校の建物は瓦礫と化し、床は異様な角度に傾いていた。ある学校では、地元の区役所が2015年の地震時に国際赤十字委員会(ICRC)から提供されたテントを使い、運び出した机や椅子を並べて授業を続けていた。

1年生から8年生までの児童・生徒たちは深いショックを受け、自分たちの学校がなぜ取り壊されたのか理解できずにいた。教師たちにも答えはなかった。政府は、住まいを失った人々を移住させると説明し、住む場所を追われた子どもたちを受け入れるよう私立学校に求めた。

Nepali schoolchildren stand amid the ruins of a demolished community school as classes continue in a makeshift tent, underscoring the gap between education reform promises and the realities facing public schools. Image: INPS Japan

一方、河岸沿いの集落の取り壊しとは別に、全国の学校現場でも混乱が広がっている。先月就任したサスミット・ポカレル教育相が、就任直後から相次いで新たな方針を打ち出したためだ。

ポカレル教育相は、中等教育修了試験(SEE)後の進学準備講座を禁止した。続いて、5年生以下の児童については、上級学年に進むための年次試験を不要とする方針を示した。さらに、児童・生徒が教室で過ごす時間を減らし、屋外活動により多くの時間を充てるよう指示した。

「教科書を使わない金曜日」

ポカレル教育相は、バレンドラ・シャハ氏がカトマンズ市長だった当時の顧問であり、児童・生徒に実践的な技能や、芸術、音楽、農業などの創造的活動を学ばせる「教科書なしの金曜日」構想を主導した人物である。

もちろん、彼の決定には一定の合理性がある。大学進学のための「橋渡し」講座は過度に商業化され、生徒たちは入試準備のために高額な受講料を支払わざるを得なかった。保護者からは、小学生の子どもたちが年次試験にストレスを感じているとの声も上がっていた。また、屋外活動を義務づけることは、丸暗記中心の学習に代わる選択肢として位置づけられている。

大学における政党系の教職員組合や学生組織をすべて解体する計画も、広く歓迎された。これらの組織は政党の出先機関と見なされ、大学の日程を乱してきたと批判されていたためだ。

教育省がSEEの結果発表を従来の3か月後から1か月以内に短縮したこと、学士課程までの入学に市民権証明を必須とする規定を撤廃したこと、私立学校に10%の奨学枠を義務づけたことも、高く評価されている。

しかし、RSP政権の報道官も務めるポカレル教育相は、その後、一部の決定を撤回、または部分的に取り消した。そのため、教育現場には戸惑いが広がっている。さらに、旧政党が支配する自治体議会は、地元の学校は自分たちの管轄だとして、連邦教育省の新たな指示に従うことを拒んでいる。

「善意に基づくものであっても、決定は場当たり的で、断片的で、実行が難しい」と、ティーチ・フォー・ネパールの元代表キラン・ネパール氏は語る。「試験をなくすのであれば、子どもたちを評価する基準や仕組みは何になるのか。」

新政府の命令はあまりに拙速で、詰めが甘いとの指摘もある。試験なしに子どもを評価したり、教室の外で学ばせたりするには、教師に対するより充実した研修が必要である。

ポカレル教育相による進学準備講座の禁止には、強い反発も起きた。公立学校だけでは、生徒が自力で大学入学に備えるには十分ではないからだ。実際、全国のSEE合格率は2024年の48%から2025年には62%へ改善したが、その進展は全国の学校に均等に行き渡っているわけではない。

Education Minister Sasmit Pokharel in Parliament (centre).
Education Minister Sasmit Pokharel in Parliament (centre).

専門家は、政府がまず優先すべきだったのは、各地で非営利団体が進めている教員研修の充実や、公立学校の教員の意欲向上を後押しすることだったと指摘する。

「公立学校の教員の多くは正規の研修を受けているが、その技能を時代に即した効果的なものに保つには、定期的な再研修が必要である。」と、トリブバン大学の元副学長ケダル・マテマ氏は語る。

ネパールの子どもの約75%は公立学校に通っている。しかし、公立学校は資金も人員も不足しがちで、教師は暗記中心の教育に頼っている。公立学校の施設や教育の質が十分な水準に達していないため、多くの保護者は、より費用のかかる私立学校を選んでいる。一方、公立学校の質が高い地域では、私立学校への入学者は少ない。

SDGs Goal No. 4
SDGs Goal No. 4

「公立学校は、結束と寛容を備えた社会を築くうえで重要な役割を果たしている」とマテマ氏は付け加える。「公立学校は、経済的背景、民族、カーストの異なる子どもたちを一つの場に集め、共に学ぶ場である」

ネパールの農村部では、多くの生徒が教育を修了することに困難を抱えている。女子生徒の中退率は、児童婚や月経をめぐるタブーのため、依然として高い。娘を公立学校に、息子を私立学校に通わせる家庭も少なくない。

同時に、より良い学校を求めて都市部に子どもを送る家庭が増え、農村部の学校では児童・生徒数が減少している。専門家の推計によれば、ネパールの家庭は月々の支出の6.8%を学費に充てている。先進国ではこの割合は1.3%にとどまる。

「わが国では、多くの家庭が質の高い教育を求め、かなりの経済的負担を抱えながらも子どもを私立学校に通わせざるを得ないと感じている」とマテマ氏は言う。「公立学校の質を高めれば、この負担は軽減される。家庭は授業料を徴収する私立学校への依存を減らし、所得の相当部分を節約できるようになる」

実施を阻むギャップ

ネパールの識字率は80%に上昇し、多くの郡では、ほぼすべての子どもが就学するようになった。しかし、教育の質はそれに追いついていない。過去50年に誕生した歴代政権は、カリキュラムの改善や教員研修を通じて教育の質を高め、平等を確保するため、善意に基づく計画を打ち出してきた。だが、それらは途中で放棄されるか、適切に実施されなかった。

歴代政権は教育分野の問題を把握し、改革のための予算項目まで設けてきたように見える。しかし、どこかの段階で実施が行き詰まってきたのである。

課題は、政治的な不備、計画を最後まで遂行しない体質、何が機能し、何が機能しなかったのかを検証する監視・評価の不足にある。過去には、政治的不安定と頻繁な政権交代が学校教育に影響を及ぼしてきた。

「政府と学校の間にある隔たりが、あらゆる決定の実施にも隔たりを生んでいる」とキラン・ネパール氏は語る。

期待されているのは、RSPが3分の2の多数を占めることで、政策の実行力が高まることだ。ポカレル教育相はまた、学校を週休2日とする方針を発表し、所定の履修内容を終えられるよう、冬休みやその他の祝日を削減することも決めた。これは妥当な判断だったが、教育関係者は、年間の学校暦がすでに公表された後に決定が出されたと指摘している。

先週、シャハ首相の政令により、政府内の政治任用職1,500人が解任された。その中には、大学や教育関連機関の教員、理事会メンバーも含まれている。

今後の大きな課題は、空席を適格な人材で埋めること、そして前政権が任命した役職者を、単にRSP系の人物に置き換えるだけに終わらせないことである。

新政府はデジタル化を強く推進しており、テクノロジーを活用して、教室での授業の質を飛躍的に高めることもできるはずだ。また、教育の質向上に実績を持つ国内外のパートナーとも連携すべきである。

初等教育を無償化した「学校セクター改革計画」と「学校セクター開発計画」は、改革の出発点となり得る。ただし、その際には外国援助への過度な依存を減らす必要がある。

マテマ氏はこう語る。「最優先すべきは、公立学校の質を高めるための投資である。同時に、新政府が地方自治体の能力を強化し、その管轄下にある学校を効果的に管理・監督できるようにすることも、同じく重要である。」

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世界的緊張の高まりで、若い世代の間に再び広がる核への不安

【INPS Japan/UN News=コナー・レノン】

冷戦期の緊張の時代を生きた多くの人々にとって、核戦争による終末的な破局の脅威は、常に頭から離れない不安であった。その脅威がいま、若い世代の間でも再び懸念として広がりつつある。

20世紀を生きた多くの人々にとって、ソ連と米国が文明を終わらせかねない核対決に突入する可能性は、最大の恐怖であった。

そうした破局が現実に起こり得る危険は、決して消え去ったわけではない。しかし、若い世代の意識の中では、気候危機や制御不能なAIツールといった、より差し迫って見える実存的脅威に取って代わられてきた。

しかし、核紛争の影が消えたわけではない。1945年に広島と長崎に原子爆弾が投下されて以来、核兵器が戦争で使用されてこなかった背景には、核不拡散条約(NPT)が56年にわたり果たしてきた役割もある。

核をめぐる言説の復活

近年、核をめぐる言説は再び勢いを増している。こうした中、国連は若い活動家たちに働きかけ、核兵器がなぜ戦場で二度と使用されてはならないのかを伝えようとしている。

「正直に言えば、核戦争は私にとって大きな関心事ではありませんでした」と、30歳のナタリー・チェンさんは語る。「私の周囲の同世代も同じです。ただ、ウクライナ戦争やガザ、イランをめぐる現在の紛争を考えると、軍縮は間違いなく重要な課題になっています」

UNODA/ Camila Perez Members of the second cohort of the Youth Leaders Fund.

香港出身で英国を拠点に活動するアートプロデューサーのチェンさんは、国連が運営する「核兵器のない世界のためのユース・リーダー基金(YLF)」に参加して以来、核軍縮の複雑さや基本原則、そして核兵器がなぜ世界平和にとって重大な脅威であり続けているのかについて学んできた。

チェンさんは4月30日、ニューヨークのポスター・ハウスで開かれたイベントに参加した。この催しは日本政府が主催し、国連軍縮部(UNODA)が支援したもので、YLF第2期生が制作した作品が紹介された。

このプログラムは、若者たちが軍縮や平和・安全保障の分野でより効果的に提言活動を行えるよう、必要な知識を提供することを目的としている。

「若者である私たちがその一部となることで、政治的プロセスは大きな力を発揮し得るのだと学びました」と、YLF参加者のアブドゥル・ムスタファザデさんは語る。ムスタファザデさんは、デジタルメディアを通じて地球規模の課題をより身近に伝えるアーティストである。

「軍縮をめぐる言葉は非常に専門的になりがちですが、私はアートを通じて、その内容を分かりやすく伝える方法を学びました。」

新たな世代が直面する脅威

UNODA/ Camila Perez Izumi Nakamitsu, High Representative for Disarmament Affairs at a Youth Leaders Fund event in New York.
UNODA/ Camila Perez Izumi Nakamitsu, High Representative for Disarmament Affairs at a Youth Leaders Fund event in New York.

国連軍縮部(UNODA)を率いる中満泉・国連事務次長兼軍縮担当上級代表は、若い世代に対し、なぜ核軍縮が重要な課題なのかを説明し、新たな専門家世代を育てることが急務だと指摘する。彼らは、NPTが創設された当時には存在しなかったAIやサイバー空間でのハッキングといった現代の脅威を身近なものとして育ってきた世代だからである。

「冷戦終結後の約30年間、私たちは幸いにも核兵器についてそれほど心配せずに済みました」と中満氏は語る。「しかし、地政学的な緊張は再び高まっています。軍縮コミュニティの問題の一つは、過去にどのように議論されていたかばかりを振り返りがちなことです。」

「しかし、核の指揮統制へのAIの統合など、議論するだけでも恐ろしい新たな課題が存在します。」

このイベントは、国連本部で5月22日まで開催されている2026年NPT再検討会議にあわせて開かれた。

中満氏は、専門用語には分かりにくい面があると認めつつも、半世紀以上の歴史を持つこの条約は、今なお極めて重要であると強調する。

「NPTが存在しない世界は、はるかに不安定なものになっていたでしょう。より多くの国が核兵器の取得を目指し、その結果、核兵器が使用される可能性も高まっていたはずです。条約が合意される前には、核兵器保有国は30から40カ国に増えると予測されていました。しかし、そうはなりませんでした。それはNPTがあったからです」

核兵器使用の常態化

ユース・リーダー基金は、若い核軍縮の提唱者たちが複雑な軍事ドクトリンを理解し、抑止論の立場に立つ人々とも説得力を持って緻密な議論を行えるよう支援する取り組みの一つである。

同時に、それは核兵器使用の常態化に歯止めをかけるための取り組みでもある。日本出身の中満氏は、この点に強い懸念を抱いている。

「小型の『低出力』核兵器なら実際に戦場で使用できるという、極めて危険な言説が生まれています。しかし、それは誤りです。広島と長崎で使用された爆弾は、今日であれば低出力核兵器に分類されるものです。」

「何が起きたのか、その記憶を風化させないことは絶対に不可欠です。日本が今後もその役割を果たし続けることを願っています。」と中満氏は語った。(原文へ

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女性として世界で初めてエベレスト登頂を果たした田部井淳子、映画でよみがえる

カトマンズ国際山岳映画祭で伝記映画『Climbing for Life』上映へ

【カトマンズINPS Japan/Nepali Times=ミキ・ウプレティ】

田部井淳子(1939〜2016)は、1975年に女性として初めてエベレスト登頂を成し遂げた登山家としてだけでなく、生涯を通じてネパールに寄り添い続けた、かけがえのない友人として記憶されている。

1975年は「国際婦人年」であった。そして2026年は、日本とネパールの外交関係樹立70周年に当たる。こうした節目の年に、5月30日、カトマンズ国際山岳映画祭(KIMFF)で田部井の伝記映画『Climbing for Life』が特別上映されることになったのは、まさに絶妙なタイミングと言える。

私はネパールに36年間暮らす日本人であり、田部井と同じ山岳会に所属していた。彼女に刺激を受けた世代の一人でもある。

田部井はエベレスト登頂後、世界的な称賛を浴びた。そして晩年、末期の病を患ってからも活動を制限することはなかった。家族に愛され、人生を全力で楽しみ、登山を続け、さらに2011年の東日本大震災で心に傷を負った若者たちを励まそうと、日本最高峰の富士山登山へと誘った。

伝説的女優・吉永小百合が、本作で田部井淳子を演じる。吉永にとって本作は出演124作目となる。長年にわたり第一線のスターであり続け、身体も鍛え続けてきた彼女の歩みは、頂点を極めた田部井の人生とも重なる。

Photo: © “Climbing For Life” Film Partner
Photo: © “Climbing For Life” Film Partner

若き日の田部井を演じるのは俳優・アーティストとして幅広く活躍する「のん」。彼女が田部井特有の何気ない仕草まで見事に再現していることに驚かされた。

さらに、佐藤浩市や天海祐希といった実力派俳優が、田部井の夫と生涯の親友を演じる。木村文乃と若葉竜也は子ども役として出演し、有名人の母を持つ家族が直面する葛藤を丁寧に描いている。

監督の阪本順治は、1989年以来、多くの日本映画の名作を世に送り出してきた人物で、日本アカデミー賞最優秀監督賞など数々の賞を受賞している。阪本監督は、「山に詳しくない人でも楽しめる作品を目指した」と語っている。

Director Junji Sakamoto. Photo: © “Climbing For Life” Film Partner
Director Junji Sakamoto. Photo: © “Climbing For Life” Film Partner

現代のヒマラヤ登山が商業化される以前、1975年の日本女子エベレスト隊は極めて特別な存在だった。本作は、黎明期の遠征登山が持っていた冒険精神を見事に映し出している。田部井家に残されていた登山道具から、若き日の淳子と後の夫が身につけていたシャツや登山靴、さらには家族の車に至るまで、細部が忠実に再現されている。

Junko Tabei at the summit of Mt. Everest in 1975.

私が知る田部井家の姿も、映画では驚くほどリアルに描かれていた。衣服や装備は、まるで本物そのもののようだ。もちろん、田部井がやや理想化されていると感じる人もいるかもしれない。しかしこれはドキュメンタリーではなく劇映画であり、それは自然なことだ。それでも本作は、現実の田部井淳子を誠実にスクリーンへ映し出している。

KIMFFの上映会には、カトマンズ在住の日本人たちも集う予定であり、この上映は、日本・ネパール外交関係樹立70周年記念事業の一つとして正式に認定されている。

田部井淳子はネパールとその人々を深く愛していた。晩年になっても、夫の政伸氏とともに、あるいは息子や娘とともに、何度もネパールを訪れトレッキングを楽しんでいた。幼い頃はアウトドアにほとんど関心を示さなかった子どもたちも、後には彼女を支える最大の理解者となった。

2015年、エベレスト登頂40周年の年、ネパールは大地震に襲われ、全国で約9000人が命を落とした。さらに地震による雪崩で、エベレスト・ベースキャンプでも多数の犠牲者が出た。

混乱が落ち着いた後、田部井と家族はカトマンズで記念イベントを開催した。大規模な集まりを催し、現地で消費活動を行うことで、ネパール経済の回復に少しでも貢献したいという思いからだった。同時に、困難な状況に置かれたネパールの友人たちの心を支えようと、語り合い、笑い合う場を作ろうとしていた。

Tabei family in Kathmandu in 2015.

このネパールへの思いやりは、彼女自身の経験にも根ざしていた。4年前、彼女の故郷もまた、地震と津波によって大きな被害を受けていたのである。私が田部井に最後に会ったのも、この2015年のカトマンズでのイベントだった。

彼女は翌年、亡くなった。病状がそこまで進行していたことを、周囲にはまったく感じさせなかった。今でも私は彼女にこう言いたい。「淳子さん、もう少し周囲に弱音を見せてもよかったのに。最後まで私はあなたに頼りっぱなしだった。でも、ネパールで暮らす今の私を支えてくれた恩返しを、結局何一つできなかった。」と。

この映画をKIMFFに招く企画は、映画祭ディレクターのラミヤタ・リンブーとの何気ない会話から始まった。「ぜひカトマンズで上映したい」という漠然とした願いを、私たちは共有していたのである。田部井家、日本大使館、キノフィルムズ、田部井淳子基金、そして田部井の親友であり私の恩師でもある北村節子氏など、多くの人々の支援に感謝している。

もし田部井が今も生きていたなら、この映画は制作されなかったかもしれない。だからこそ、この作品は彼女の魂からのメッセージなのだろう。今回の上映は、私たちにとっても、大スクリーンで田部井淳子の人生を見つめ直し、彼女との記憶を振り返る特別な機会となる。

INPS Japan

ミキ・ウプレティは、日本人作家、元登山家、トレイルランナー、開発援助活動家。1990年からネパール在住。本上映企画をKIMFFと共同で立ち上げた。

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教育を奪われたアフガン女性の命綱、オンライン大学

カブールIPS=匿名】

カテラさん(仮名)は幼い頃から、大学で医学を学び、医師になることを夢見ていた。

「白衣を着た医師を見るたびに、いつか私も同じような白衣を着て、人びとのために働きたいと思っていました。」と、彼女は振り返る。

年月を重ねるにつれ、その夢に一歩ずつ近づいているように感じていた。少なくとも5年前、タリバンがアフガニスタンで再び権力を掌握し、彼女の生涯の夢を打ち砕くまではそうだった。

Map of Afghanistan
Map of Afghanistan

カテラさんはこう語る。「学校を卒業したら、大学入試を受けるはずでした。そのために、万全を期して準備していました。ところが不幸にも、タリバンがアフガニスタンで権力を握り、すべてがひっくり返ってしまいました。彼らが最初に行ったことは、少女や女性から教育を奪うことでした。」

「その瞬間、子どもの頃から抱いてきた夢がすべて塵になってしまったように感じました。疲れ果て、希望を失い、人生が急停止してしまったようでした。教育を奪われるということは、真っ暗闇の中で生きることを強いられることなのです。」と彼女は言う。

26歳のカテラさんは、バダフシャン州の遠隔地の村で、両親、2人の姉妹、2人の兄弟と暮らしている。教育を続けられないと悟ったとき、彼女は深い失意に陥った。

「日がたつにつれて、心の状態は悪くなる一方でした。憂うつ、疲労感、苦しさは日ごとに深まっていきました。タリバンは女性への制限を次々と強化し、ついには私たちは自由に移動することすら許されなくなりました。私は少しずつ、生きる希望を失っていったのです。」

しかし突然、地平線の先に一筋の光が差した。ある日、かつての同級生から電話がかかってきた。女性向けに設けられたオンライン大学課程で学べる可能性があるという知らせだった。

Image credit: Adventist Review
Image credit: Adventist Review

経済学者のアブドゥル・ファリド・サランギ氏は、2022年にオンライン・ザン大学を創設した。現在は国外から同大学の運営責任者を務めている。このプロジェクトは、教育を奪われた少女たちを支援することを目的としている。サランギ氏にとって、教育を提供することは責務である。教育を受けた女性なしに、アフガニスタンの発展はあり得ないからだ。

カテラさんはすぐにオンライン大学の心理学課程に出願し、入学を認められた。

しかし、彼女の村ではインターネット接続が悪く、学業を続けるためには都市部に住む姉のもとへ移らなければならなかった。

カテラさんは現在、第4学期で学んでいる。教員はアフガニスタン国内のほか、国外からも参加しており、授業の質は専門的だと彼女は語る。

Asian businessman standing and using the laptop showing Wireless communication connecting of smart city Internet of Things Technology over the cityscape background, technology and innovation concept
Asian businessman standing and using the laptop showing Wireless communication connecting of smart city Internet of Things Technology over the cityscape background, technology and innovation concept

カテラさんにとって、オンライン大学は単なる学びの場ではない。彼女はそれを「暗闇の中の光」だと表現する。

とはいえ、オンラインで学ぶことに困難がないわけではない。インターネット接続は不安定で、費用も高い。カテラさんの母親は、彼女の費用を賄うため、村で牛乳を売っている。

「オンライン・ザン大学は、私を深い絶望感から救い出し、もう一度、人生に意味を与えてくれました。」とカテラさんは語る。授業は夜に行われ、彼女は家族の多くと離れ、都市部の姉の家で暮らさなければならない。それでも、彼女はそのすべてに価値があると言う。

サランギ氏は、このプロジェクトを始めた動機をこう説明する。

「大学を設立した目的は、教育を奪われた少女たちを支援することでした。学校や大学が閉鎖されると、何千人もの少女たちから希望と意欲が失われました。この状況が続けば、一世代全体が失われ、社会は深刻な危機に直面すると分かっていました。」

「私にとって、これは人間としての責任でした。」と、モスクワ国際大学で金融経済学を学んだサランギ氏は締めくくる。

オンライン・ザン大学は、小さな一歩から始まった。予算もなく、組織的な支援もなかった。サランギ氏は同僚や教授らに協力を呼びかけ、その多くがボランティアとして参加した。活動は次第に広がっていった。

SDGs Goal No. 4
SDGs Goal No. 4

現在、同大学には複数の学部があり、アフガニスタン国内外の数百人の教員と事務スタッフがいる。ほぼ無償で、何万人もの女性に教育を提供している。

授業は、多くの教員が日中は別の仕事に従事しているため、夜に行われることが多い。対面形式の授業が難しい場合には、講義を録画し、その動画を配信している。

授業は夜に行われるが、カテラさんは懸命に学び、欠席しないよう努めているという。

「家事と、教授たちから課されるウェビナーの準備を両立させています。正直なところ、昼も夜も、どう過ぎていくのか分からないほどです。でも時間がたつにつれ、かつて抱えていた不安や否定的な考えはすべて薄れていきました。今は、自分の明るい未来を思い描きながら、夢と希望を持って前に進んでいます。」と、カテラさんはうれしそうに語った。(原文へ

INPS Japan/IPS

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鉱物から製造業へ―カザフスタンのレアアース推進策

本稿はThe Astana Timesの許可を得て、日本語翻訳を掲載している。カザフスタンのレアアース開発は看過できない動きである。半導体や電池、電気自動車、再生可能エネルギー機器に不可欠な重要鉱物の安定確保は、日本の経済安全保障に直結しているためだ。供給の中国集中が続くなか、カザフスタンが採掘のみならず加工能力の拡充にも力を入れ始めたことは、日本にとって新たな協力の可能性を示している。(INPS Japan 浅霧勝浩)

アスタナThe Astana Times=ナジマ・アブオワ

世界のレアアース生産量は、デジタル技術とクリーンエネルギー需要の高まりを背景に、この20年でほぼ4倍の37万9900トンに達した。カザフスタンでは、この分野は依然として工業生産全体の中では小規模だが、急速に拡大する世界市場の中で、発展の初期段階にある新興部門として浮上しつつある。

Map of Kazakhstan
Map of Kazakhstan

レアアース元素は、マイクロチップから風力タービンに至るまで幅広い技術に不可欠な17種の金属群であり、世界経済における重要性を一段と高めている。その独特の物理・化学的性質により、高性能磁石、電池、電子機器に欠かせない材料となっている。

一方、世界の供給網は依然として中国への集中が著しく、採掘の70%超、加工の約90%を中国が占めている。こうした偏在はサプライチェーンのあり方を大きく左右しており、供給源の多角化を戦略課題として浮上させている。

こうした中、レアアースは地政学ならぬ「地経学」上の影響力を左右する手段としても認識されつつある。生産と加工を誰が握るかによって、重要技術へのアクセスや産業発展そのものが左右され得るからである。

「レアアースの世界的な需要は非常に大きく、今後も着実な拡大が見込まれる。主な需要分野は、電気自動車、再生可能エネルギー、電子機器、コンピューター、スマートフォンである。デジタル経済への移行は、レアアース市場の拡大と密接に結びついている。」こう語るのは、Solidcore Resourcesで操業地質部門を統括する工学地質学者、セリク・コナクバエフ氏である。

同氏によれば、中国の優位性は、比較的低い労働コスト、発達した産業基盤、そして技術の蓄積が組み合わさっていることによる。このことが同国に、この分野の発展で大きな優位を与えている。その一方で、世界市場では供給先の多角化を求める動きが強まりつつあり、カザフスタンを含む新たな生産国にとっては好機となっている。

資源基盤と産業面での下地

カザフスタンは、世界有数の鉱物資源基盤を有する。産業・建設省によると、国家バランスシートには9000を超える鉱床が登録されており、そのうち100超が希少金属およびレアアース元素を含んでいる。

同国では、タングステン、モリブデン、チタン、ジルコニウム、レニウムといった主要金属の生産・加工が行われている。さらに、セレン、テルル、ゲルマニウム、ガリウム、インジウム、スカンジウムといった副産元素も回収されている。これらの多くは、ウラン、非鉄金属、貴金属の採掘に伴う副産物として得られるものであり、効率的な回収には高度で複雑な処理技術が求められる。

現時点で、希少金属部門が工業生産に占める割合は約0.3%にとどまる。ただ、その小さな基盤とは対照的に、希少金属・レアアースに対する世界需要は拡大を続けている。

地域的な生産能力と技術的なギャップ

産業能力は、既存の冶金拠点に集中している。ウスチ・カメノゴルスクのチタン・マグネシウム工場は、航空宇宙産業や冶金向けにチタンとマグネシウムを供給している。ウルバ冶金工場は、原子力や電子機器に用いられるベリリウム、ニオブ、タンタルを処理している。ジェズカズガンでは、Zhezkazganredmetが高温合金や化学用途向けにレニウムとオスミウムを生産している。

このほか、クズロルダ州でのバナジウム精鉱生産や、アルマトイ州で進むタングステン関連事業も、この分野を支えている。

もっとも、こうした個別の加工施設が存在する一方で、カザフスタンにおける希少金属・レアアースの高度加工の水準は依然として限定的である。コナクバエフ氏は、技術不足と相対的に弱い技術基盤のため、同国はなお主として原料の採掘と輸出に依存していると指摘する。同氏は、国内技術の育成、加工能力の拡充、そして国内で完結するフル生産体制の構築が優先課題だと述べた。

「実際、わが国には相当な埋蔵資源があり、その多くはソ連時代に探査されたものである。だが、資源を最大限に活用し、国内で完結する生産体制を築くには、加工インフラを積極的に整備し、投資を呼び込み、最新技術を導入する必要がある。」と、コナクバエフ氏は語った。

さらに同氏は、モリブデンやタングステンの鉱床について、2000年代以前には開発が進められていたものの、需要構造の変化に伴い、現在では開発があまり進んでいないと指摘した。リチウム、タンタル、ベリリウムについても状況は同様で、埋蔵資源はあるものの、国内需要はなお限られているという。

投資と加工重視への転換

国家政策は近年、産業能力の拡大と、より高度な加工の発展に重点を移しつつある。政府が承認した2024~2028年の包括計画では、少なくとも5つの新規生産施設の立ち上げ、既存企業の近代化、高度抽出技術の導入が盛り込まれている。

すでにいくつかの事業が始動している。アルマトイ州のボグティ鉱床ではタングステン生産施設が稼働を開始し、硫酸マンガン一水和物の生産も確立された。さらに今後の事業は、新たな技術連鎖の構築を目指している。2026年には、ルクセンブルクに本拠を置き、カザフスタンで大規模事業を展開する鉱業・金属企業ユーラシアン・リソーシズ・グループ(ERG)の参加を得て、年産15トン規模のガリウム生産ラインが計画されている。このほか、リチウムイオン電池のリサイクル、金属レニウムの生産、電池材料の開発といった取り組みも進んでいる。

事業はバリューチェーンの新たな領域にも広がっている。カザフスタン中部では、電池材料の生産を支える黒鉛プロジェクトが前進している。同時に、パブロダール州では、蓄電技術に用いられる電解マンガンと二酸化マンガンを生産するマンガン加工クラスターの整備が進められている。

特にカラガンダ州を中心とするカザフスタン中部は、有望な探査地域として浮上している。2025年には、同地域で新たなレアアース鉱区が確認され、現在、その資源ポテンシャルを確定するための地質調査と試験分析が続けられている。

「クイレクティコル鉱区のレアアース資源の推定埋蔵量は、約93万5400トンに上る。現在、Tau-Ken Samrukが固体鉱物の探査ライセンスを取得しており、埋蔵量の確認に向けて詳細な地質調査と室内分析が進められている」と、産業・建設省のイラン・シャルハン副大臣は語った。

政府はまた、この分野を支える投資枠組みの拡充も進めている。具体的には、16の特別経済区、アスタナ国際金融センター(AIFC)、デジタル・プラットフォーム「Minerals.e-Qazyna.kz」、そしてカザフスタン開発銀行を通じた10億ドルの資金供給などが含まれる。最大の目的は、国内で完結するフル生産サイクルを確立することにある。

「新たな投資サイクルを形成するため、2029年までの投資政策構想が実施されている。投資契約の締結により、優先分野の企業は税制・関税上の優遇措置に加え、現物による支援も受けられるようになる」と、シャルハン副大臣は語った。

2月に開かれた政府拡大会合では、カシムジョマルト・トカエフ大統領も、重要鉱物に対する世界的需要の高まりと、カザフスタンの資源基盤に対する投資家の関心の強まりを強調した。

「西側諸国をはじめとする先進国の投資家は、カザフスタンでこうした事業に強い関心を示している。これはわが国の国際競争上の強みであり、国益のために有効に活用しなければならない」と、トカエフ大統領は語った。

探査・開発事業にはすでに、米国、ドイツ、オーストラリア、中国の海外パートナーが関与している。産業・建設省によれば、米国のCove Capitalはタングステン、リチウム、レアアース関連事業に参画しており、オーストラリアのSarytogan Graphite Limitedは黒鉛開発を進めている。また、ドイツのBergbau AGとの共同事業はリチウム鉱床に焦点を当てており、探査への投資額は約800万ドル、埋蔵量が確認されれば総投資額は5億ドルに達する可能性がある。

市場との接続拡大

カザフスタンの現在の輸出構造は、主として中国とロシアに結びついている。だが将来的には、欧州連合やアジア市場を含む、より広範なサプライチェーンへの統合を目指している。重要鉱物に対する世界需要が拡大を続ける中、カザフスタンは希少金属・レアアース市場における自国の地位を強化するため、産業基盤と投資基盤の整備を着実に進めている。

この記事はもともとKazinformに掲載されたものである。

INPS Japan

Origtinal URL:https://astanatimes.com/2026/04/from-minerals-to-manufacturing-kazakhstans-rare-earth-push/

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トランプ氏の終末論的言辞は核による殲滅を想起させる

ニューヨークIPS=アロン・ベンメイアー

トランプ氏が4月7日、トゥルース・ソーシャルに投稿した内容の深刻な含意は、いくら強調してもしすぎることはない。彼は、イランとの合意が成立しなければ「今夜、一つの文明が滅び、二度と戻ることはない」と述べた。こうした断罪されるべき発言は、脅しを実行するために「大量破壊兵器」、すなわち核兵器の使用も辞さない姿勢を示唆している。|英語版

言うまでもなく、通常兵器だけでイランのような広大な国を破壊し、人口9500万人を殲滅することはできない。トランプ氏が実際にその脅しを実行する可能性は低かったとしても、この発言はイラン国内でも国際社会の多くでも、深刻に受け止められた。

トランプ氏の脅迫に対する国際的な怒り

Pope Leo XIV during a meeting with the media on May 12, 2025 By Edgar Beltrán, The Pillar, CC BY-SA 4.0,
Pope Leo XIV during a meeting with the media on May 12, 2025 By Edgar Beltrán, The Pillar, CC BY-SA 4.0,

トランプ氏の常軌を逸した発言は、テヘランからバチカン、さらには国際人権団体に至るまで、異例の非難の波を引き起こした。

アムネスティ・インターナショナルの事務総長は、トランプ氏の投稿を「終末論的な脅迫」と非難し、「一つの文明全体」を終わらせるという発言は、「人命に対する驚くべき残虐性と軽視」を露呈するものであり、残虐犯罪を防ぐため、国際社会は緊急に行動すべきだと警告した。

教皇レオ14世は、この言葉を「到底容認できない」と述べた。英国のスターマー首相もトランプ氏の脅迫を非難し、「私なら決して使わない言葉だ。英国の価値観と原則に基づいてこの問題に向き合っているからだ」と述べた。

こうした数々の反応は、トランプ氏の言辞が単なる大言壮語としてではなく、国際法の基本規範を踏みにじるジェノサイド的脅迫として受け止められていることを示している。

トランプ氏の発言に対するイラン当局者の反応

在パキスタン・イラン大使館は、アレクサンドロス大王やモンゴルの侵攻を生き延びた文化をトランプ氏が消し去れるという考えを嘲笑し、文明は「一夜にして生まれるものではなく、一夜にして死に絶えるものでもない」と強調した。

トランプ氏がイラン人を「石器時代に戻す」と誓い、「一つの文明全体が死に絶える」と述べたことは、テヘランでは単なる暴言として受け止められていない。イラン指導部は、この言葉を戦争犯罪を実行する意図を公然と認めたものと見なし、すでにワシントンとの存亡をかけた対立の物語の中に位置づけている。

革命防衛隊にとって、「石器時代」という脅しは格好の宣伝材料となる。それは、米国が単にイラン体制に反対しているだけでなく、イラン国民全体を消し去ることを望んでいる証拠だと主張できるからである。

Map of Iran
Map of Iran

イスラム革命防衛隊の反応は、怯えるどころか挑戦的だった。同隊は「より強力で、より広範で、より破壊的な」報復を約束し、米国がいかなる形で緊張を高めても、それに相応する対応を取ると示唆した。

確かに、イラン指導者の多くは、トランプ氏の投稿を、実行できもしない核による殲滅をちらつかせる、追い詰められた瀬戸際戦術―校庭のいじめっ子の虚勢―と見ている。この解釈は国内の不安を和らげるかもしれないが、同時にテヘランに対し、彼のはったりを試してみようという誘惑を与え、誤算の危険を高める可能性もある。

いずれにせよ、トランプ氏はイランの支配者たちに、こうした終末論的圧力のもとでワシントンから引き出したいかなる譲歩も、降伏ではないと主張する機会を与えてしまった。それでも、千年を超えるイランの歴史は、豊かな文明を誇るこの誇り高き人々が、いかなる脅迫にも屈しないことを物語っている。

イラン国民の反応

トランプ氏が「イランを極めて激しく攻撃する」と約束したことは、すでに疲弊した社会に対する心理戦としても機能している。それは、長年にわたる制裁、経済崩壊、抑圧の上に、物理的破壊の恐怖を重ねるものだ。

多くのイラン人、とりわけ親世代や高齢者にとって、米国大統領が「一つの文明全体が今夜、死に絶える」と平然と警告するのを耳にすることは、抽象的な地政学を、自分たちが具体的に想像し、実感できる身近な恐怖へと変えてしまう。電力を失った病院、食料も水もない子どもたち、飢え死にする人々、廃墟と化した都市――そうした光景である。

このことは、彼らの不安と懸念を深め、ジェノサイド的な口調を強める狂気の権威主義者の決定によって、自分たちが集団的に罰せられているという感覚を強める。体制を嫌悪するイラン人でさえ、この脅迫を3000年の歴史をもつ文化への攻撃と見なす。彼らは国旗のもとに結集するだろう。なぜなら、トランプ氏自身が示した代替案は、文明の消滅であり、その闘いの中で自分たちの命が消耗品として扱われていると受け止めるからだ。

イラン国内の街頭でも、ディアスポラの間でも、トランプ氏の言辞が、恐怖、怒り、軽蔑が入り混じった不安定な反応を引き起こしていることがうかがえる。そして、その感情は体制によって容易に武器化され得る。一部のイラン人にとって、「文明」が死に絶えるという言葉は、苛烈な制裁と戦争によって刻まれた心の傷を再び開き、米国の脅迫を比喩ではなく、恐ろしく現実的なものに感じさせる。

また別の人々にとって、それは米国より数千年も古い文化に対する耐えがたい侮辱であり、国民的誇りを強め、聖職者支配に批判的な人々の間にさえ支持を生み出すものとなる。

米国の権力を指揮する適格性

Nuclear weapon test Bravo (yield 15 Mt) on Bikini Atoll. The test was part of the Operation Castle. The Bravo event was an experimental thermonuclear device surface event. Credit: Wikimedia Commons.
Nuclear weapon test Bravo (yield 15 Mt) on Bikini Atoll. The test was part of the Operation Castle. The Bravo event was an experimental thermonuclear device surface event. Credit: Wikimedia Commons.

こうしたイラン側の反応は、米国内政治にも跳ね返る。海外でジェノサイド的、常軌を逸した、あるいは明らかに正気を欠いたものと解釈される脅しを発する大統領は、決意を示しているのではなく、不安定さと戦略的一貫性の欠如を世界にさらしているにすぎないからである。

それは必然的に抑止力を損ない、イランに対して、動員のための材料と、必要とあれば緊張を高める口実の双方を与えることになる。

国内では、制御不能な人物という印象が、米国の権力を指揮するトランプ氏の精神的適格性をめぐる、すでに激しい議論に直結している。彼の終末論的言辞は道徳的に忌まわしいだけでなく、実務上も考えられないものだと主張する批判者たちに、格好の材料を与えている。

その結果、一部の共和党員や国家安全保障を重視する保守派でさえ、「文明」を破壊すると気軽に口にし、核のボタンに指を置く最高司令官に、米国が最終的に依拠する判断力、規律、国家安全保障を委ねることができるのかと問い始めた。

米国大統領が、一つの文明全体が死に絶えると脅すとき、世界は耳を傾けなければならない。その脅しが必ずしも現実味をもつからではない。抑制のない言葉が国際社会の現実を形づくることの危険を露呈しているからである。

トランプ氏の言葉は、権力の座を離れた人物の癇癪ではない。それは、絶滅を外交手段として用い、劇場型の支配とむき出しの権力誇示のために文明そのものを賭ける世界観を反映している。

数百万人が命を落とすかもしれないというトランプ氏の宣言は、単に均衡を失った精神の妄言ではない。それは、世界最強の軍事力を指揮する人物の口から発せられたとき、言葉がいかに容易に平和を危険にさらし得るかを示す、身も凍るような証左である。

文明の死に言及する彼の姿勢は、政治的無謀さの域を超えている。それは道徳的崩壊を露呈するものであり、米国の権力と国際秩序に影響を及ぼす立場にある者として、彼が不気味なほど不適格であることを示している。

トランプ氏が受け入れない恥辱の水準など、もはや存在しないように見える。ある日には一つの文明全体を消し去り、9500万人のイラン人を殲滅すると脅す。その翌日には、AI生成画像の中で、自らを病人を癒やすイエス・キリストのような救世主として描く。これはトランプ氏にしかなし得ない冒涜であり、キリスト教の高貴で崇高な価値を貶め、自らの病んだ魂を満たそうとする行為にほかならない。

かつては虚勢として片づけられていたものを、いまこそ本質に即して認識しなければならない。すなわち、危険な虚偽と底なしの自尊心が結びつくとき、人類そのものが巻き添えとなるという警告である。世界は、狂人の物語が国家運営の言葉となることを許してはならない。

アロン・ベンメイアー博士は、国際関係論の名誉教授。直近ではニューヨーク大学グローバル・アフェアーズ・センターに所属し、国際交渉および中東研究に関する講義を担当した。

INPS Japan / IPS UN Bureau

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