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欧州と多国間主義

【バルセロナ IPS=マニュエル・マノネレス

「欧州はもはや、失われ、二度と戻らない旧来の世界秩序の管理人であってはならない。(中略)より現実的で、国益に根ざした外交政策が必要である。」

European Commission President Ursula von der Leyen
European Commission President Ursula von der Leyen

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が1週間前、ブリュッセルでのEU大使会議で語ったこの発言は、大きな波紋を呼んだ。欧州理事会のアントニオ・コスタ議長はほぼ即座に反論し、欧州議会では不信任動議のうわさまで飛び交った。複数の欧州首脳からも、公然・非公然の批判が相次ぎ、委員長自身もほどなく全面的に発言を撤回した。

だが、問題はなお残る。これは、常に時流に乗ろうとすることで知られる委員長の一時的な判断ミスだったのか。それとも、トランプ流の混沌や、中国、ロシアなどから発せられる権威主義的衝動が形づくる新たな「無秩序」に、より深く同調していることの表れなのか。

前者であるなら、深刻ではあっても、なお過誤として処理できる。だが後者であるなら、はるかに重大で、しかも危険な問題に直面していることになる。

EUでは、これをフォン・デア・ライエン氏による明らかに失敗した試み、すなわち、当時ドイツのメルツ首相―同国出身で同じ政治的系譜に属する人物―が唱えていた、トランプ路線により近い政策へとEUを誘導しようとしたものだと受け止める向きもある。

もっとも、そのメルツ氏自身もここ数年で立場を変えてきた。就任から1年足らずで支持率が26%に落ち込むという、自らの極めて脆弱な政治基盤を踏まえての変化であり、その数字はトランプ氏と並ぶほど低い。

しかし欧州委員長の発言をめぐって本当に憂慮すべきなのは、現代の主要な地政学的課題―イランと中東全域での戦争、ウクライナ戦争、ベネズエラ情勢―をめぐってすでに深く分断されている欧州において、EUの「顔」として世界的に認識されている人物が、欧州統合の創設理念とここまで鋭く食い違う演説を行ったことである。

欧州プロジェクトは、その強みと同時に限界を抱えながらも、第二次世界大戦の灰燼の中から築かれた。1920年代から30年代の全体主義体制がもたらした破局の記憶と、「鉄のカーテン」の向こう側に広がったスターリン主義的全体主義への対抗という歴史的経験の上に成り立っている。

European Union Flag
European Union Flag

その基盤にあるのは、ヒューマニズム、人権の尊重と擁護、そして共有された社会的権利と価値である。同時にそれは、多くの欠陥を抱えつつも、なお混沌と弱肉強食の世界から私たちを遠ざけ得る唯一の現実的な仕組みである「ルールに基づく国際秩序」の必要性に立脚している。いま世界の主要大国の一部は、まさにその反対方向へと私たちを引きずり込もうとしている。

国連は危機にあるのか。疑いようもなく、そうである。多国間主義は後退し、国際法の尊重は歴史的な低水準にあるのか。これもまた否定できない現実である。だが、その暗い状況への対応として、この劣化を招いた当事者たちの思考様式そのものを取り込むべきだということになるのだろうか。率直に言えば、それは理性の放棄にほかならない。

私たちは激動の時代を生きている。欧州はたしかに、より大きな戦略的自律性を追求しなければならない。しかし、その自律性は防衛分野に限られるべきではない。とりわけ急務なのは、技術財やサービスの分野における真の自立である。この領域で米国への依存が続く限り、欧州は隷属に近い立場に置かれ続けるからだ。

さらに、伝統的な大西洋横断関係がかつてないほど緊張している現在―その主因は、現ホワイトハウスの主とその周辺による、ほとんど強迫的ともいえる姿勢にある―欧州は、通商を含むあらゆる分野で戦略的連携を築き、あるいは強化する必要がある。これはすでにインドとの間で進みつつあり、メルコスールとも可及的速やかに実現されるべきである。

Manuel Manonelles
Manuel Manonelles

しかし、欧州の将来―言い換えれば、本当に重要な意味での欧州の将来―が、国際秩序と国際機関システムをさらに弱体化させる方向にあるかのように語ることは、はっきり言って無責任である。

多国間主義は、単なる理念の問題ではない。それは責任の問題であり、同時に効率性と実効性の問題でもある。気候変動、移民の流れ、世界的公衆衛生、AIの影響といった、欧州が直面する主要課題に、欧州は本当に単独で対処できると考えているのだろうか。

欧州が欧州であり続けるためにも、多国間主義は不可欠である。だからこそ欧州は、いまこそこれまで以上に多国間主義にコミットしなければならない。無邪気な理想主義ではなく、現実主義をもって。しかし同時に、欧州プロジェクトの将来と、大国を含む諸国の間に最低限の秩序と協力が維持されることとの間に、深い相互依存関係があることを十分に認識しながらである。

そのために必要なのは、混沌という選択肢に抗し、協力を可能にする空間と制度を擁護し、強化することである。無視し、脇に追いやることではない。(原文へ

マニュエル・マノネレス氏は、スペインのブランケルナ=ラモン・リュイ大学准教授(国際関係論)。

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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地政学リスクの高まりで存在感増すカザフスタン

貿易・エネルギー・航空網に広がる再編の動き

【IPS Japan/The Astana Times】

貿易ルート、エネルギー供給、航空ネットワークが地政学的緊張の高まりに対応して変化する中、カザフスタンは急速に変動する国際情勢の中で、その役割を一段と強めている。|ENGLISH

今週、オルジャス・ベクテノフ首相は、テュルク諸国機構首脳会議で、貿易、インフラ、そしてアジアと欧州を結ぶ「ミドル・コリドー(中央回廊)」の重要性の高まりを中心に、経済協力のさらなる深化を呼びかけた。

Flag of Kazakhstan and Japan. Photo: The Astana Times
Flag of Kazakhstan and Japan. Photo: The Astana Times

同時に、日本は中東情勢のリスクが高まる中、カザフスタンやアゼルバイジャンからの石油供給を模索している。日本は原油輸入の90%以上を中東に依存しており、物流面での課題は残るものの、代替ルートの検討を進めている。

一方、エア・アスタナは、地域情勢の不安定化を受け、ドバイ便の運航停止を4月まで延長した。従来の一部路線の予測可能性が低下する中、同社は夏季シーズンに向け、アジアと欧州を結ぶ路線網の拡充を進めており、新規就航や増便を予定している。

これらの動きは、エネルギー、貿易、航空といった国際システムが、変化する地政学的環境に適応しつつあることを示している。

INPS Japan

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中東戦争が北朝鮮の核戦力増強に拍車

国連IPS=タリフ・ディーン

米国、イスラエル、パレスチナ、イラン、レバノンを巻き込む中東の軍事衝突が、間接的に北朝鮮の核戦力増強を後押ししている。北朝鮮の金正恩総書記は、米国によるイラン攻撃が自国の軍事力強化を正当化するものだと主張し、トランプ大統領の外交政策によって形づくられる世界の中で、それが最終的に自国の安全確保につながるとの認識を示したと伝えられている。

先週のニューヨーク・タイムズ紙は、「中東戦争から教訓、北朝鮮が新兵器を実験」との見出しで報じた。記事によれば、実験された兵器には、クラスター弾や黒鉛爆弾の弾頭を搭載したミサイルも含まれていた。いずれも中東で使用が確認されている兵器に類似しているという。こうした動きは、北朝鮮が中東戦争から軍事的教訓を引き出そうとしていることをうかがわせる。

Photo: North Korean leader Kim Jong Un and President Donald Trump at the Singapore Summit on June 12, 2018. Source: @Scavino45 of Dan Scavino Jr., the White House Director of Social Media and Assistant to the President.
Photo: North Korean leader Kim Jong Un and President Donald Trump at the Singapore Summit on June 12, 2018. Source: @Scavino45 of Dan Scavino Jr., the White House Director of Social Media and Assistant to the President.

トランプ大統領が金総書記との会談に意欲を示す中、金総書記は、米国が北朝鮮を正式な核保有国として認めるのであれば会談に応じる考えを示した。また、イラクやリビアの指導者たちは、もし核抑止力を持っていれば米国の攻撃を受けずに済んだはずだとも主張した。昨年2月の演説では、「米国が対朝鮮敵視政策を撤回し、われわれの現在の(核)地位を尊重するなら、米国とうまくやっていけない理由はない」と述べている。

トランプ氏は第1次政権期の2017年から2021年にかけて金総書記と3度会談した。2018年6月のシンガポール、2019年2月のハノイでの首脳会談に続き、同年6月には非武装地帯(DMZ)で短時間の会談も行った。この際、トランプ氏は現職の米大統領として初めて北朝鮮に足を踏み入れた。

一方、ワシントンのスティムソン・センターは、主として国連安全保障理事会を通じて課された厳しい国際経済制裁にもかかわらず、北朝鮮の核・ミサイル開発や核ドクトリンの整備は著しく進展してきたと指摘している。特に、トランプ政権との交渉が2018~2019年に停滞して以降、その傾向が際立っているという。非核化は交渉の対象ではないとの北朝鮮の立場は、2026年2月に開かれた最近の党大会でも改めて強調された。

カナダのブリティッシュコロンビア大学で公共政策・グローバル問題大学院の暫定院長を務めるM・V・ラマナ博士はIPSの取材に対し、米国とイスラエルによるイラン攻撃は挑発を受けていない一方的なものであり、各国が核兵器の取得に向かう誘因をさらに強めていると語った。

M.V.-Ramana
M.V.-Ramana

ラマナ博士は、「そうした核兵器の取得が、常に国家を守る保証になるわけではない。とりわけ、米国のような軍事大国がこれほど好戦的に振る舞う状況では、なおさらだ。」と指摘した。そのうえで、「進むべき道はそこではない。各国が軍事的暴力や他国への攻撃に訴えるのではなく、相違を平和的かつ外交的手段で解決することにこそ、努力を集中すべきである。」と述べた。さらに、各国指導部の多くは必ずしもそうした方向を向いていないかもしれないが、政府をより平和な方向へ導くうえで、市民社会や社会運動の役割は重要だと強調した。

英紙ガーディアンによれば、国連の原子力監視機関トップは、北朝鮮がさらなる核兵器製造能力の面で「極めて深刻な」進展を遂げていると述べた。これは、体制維持のために核戦力を活用しようとする北朝鮮の姿勢を示す新たな兆候だという。

北朝鮮は約50発の核弾頭を保有しているとみられているが、それらを長距離弾道ミサイルに搭載できるほど小型化しているとの主張には懐疑的な専門家もいる。国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長はソウル訪問中、北朝鮮の主要核施設である寧辺で活動が急速に活発化しているとの報告を確認した。グロッシ事務局長によれば、寧辺の5メガワット原子炉、再処理施設、軽水炉などで作業が強化されており、北朝鮮は数十発規模の核弾頭を保有しているとみられる。

一方、「World Beyond War」および「宇宙における兵器と原子力に反対するグローバル・ネットワーク」の理事を務め、「核時代平和財団」の国連NGO代表でもあるアリス・スレーター氏はIPSの取材に対し、イラクやリビアを破壊した米国の行動を踏まえれば、北朝鮮が軍事力強化を正当化するのは理解できるにもかかわらず、今回もまた北朝鮮だけが「ならず者国家」として扱われていると語った。

スレーター氏によれば、北朝鮮は2016年、国連総会第1委員会で核兵器禁止条約の交渉開始を支持した唯一の核保有国だった。だが、その事実はほとんど報じられていない。この交渉を経て、2017年に核兵器禁止条約が採択された。これに対し、すべての核保有国と米国の「核の傘」の下にある国々は交渉会議をボイコットし、例外は議会の採決で出席を義務づけられたオランダだけだったという。スレーター氏は、「本当のならず者国家はどちらなのか。」と問いかけた。

Alice Slater
Alice Slater

スレーター氏はまた、退役軍人情報専門家協会(Veteran Intelligence Professionals for Sanity)の創設者レイ・マクガヴァン氏が、軍・産業・議会・情報機関・メディア・学界・シンクタンクの複合体(MICIMATT)の一角とみなす報道が、核兵器のさらなる拡散の危険性ばかりを喧伝していると批判する。その一方で、加速する核軍拡競争や、米国による宇宙兵器化の動きに歯止めをかける機会には、ほとんど目が向けられていないという。そうした動きの象徴として挙げられるのが、今後数年間で1500億ドル規模に達すると見積もられる米国の「ゴールデン・ドーム」構想である。

スレーター氏はさらに、「宇宙を平和の場として維持することと、ロシアと中国が核軍縮交渉に応じる意思との間には、明確なつながりがある」と指摘する。それは、ゴルバチョフがレーガン大統領に対し、米国が『ビジョン2020』に示した宇宙支配構想を放棄するのであれば、米ソ両国の核兵器廃絶に応じると提案した時代にまでさかのぼる。だがレーガン大統領は、核廃絶の考え自体には好意的だったものの、「スター・ウォーズ」構想を断念しようとはしなかった。

ロシアと中国は2014年と2018年、ジュネーブの国連軍縮会議で、宇宙空間への兵器配備と武力行使の防止に関する条約案を提出した。だが、米国はこれを阻み、協議そのものにも応じなかった。さらに両国は、2025年5月の第2次世界大戦終結80年に際して、世界的な協力を呼びかける提案を公表し、「国連の中心的な調整役割」を支持するとともに、「戦略的安定性」を高めるための複数の措置を打ち出した。とりわけ、米国の「ゴールデン・ドーム」計画を批判し、自ら提案してきた条約案に基づく法的拘束力のある多国間文書の締結に向けた交渉を早期に開始する必要があると訴えた。さらに、「宇宙空間に最初に兵器を配備しない」との国際的な誓約を推進していく姿勢も示した。

スレーター氏は、世界の平和運動と軍備管理運動がこの呼びかけを真剣に受け止め、宇宙を兵器や戦争のない空間として維持するための条約交渉に各国政府が参加するよう促せば、核兵器廃絶に向けた新たな道が開かれる可能性があると述べ、「いまこそ平和に機会を与える時だ。」と訴えた。

一方、核不拡散条約(NPT)の締約国は、2026年4月27日から5月22日まで国連本部で開かれる2026年NPT運用検討会議に臨む。今回の運用検討会議は、核兵器保有国が関与する武力紛争、とりわけロシアによるウクライナ侵攻と米国・イスラエルによるイラン侵攻によって核の脅威が高まる中で開かれる。

United Nations Headquarters in New York City, view from Roosevelt Island. Credit: Neptuul | Wikimedia Commons.
United Nations Headquarters in New York City, view from Roosevelt Island. Credit: Neptuul | Wikimedia Commons.

核不拡散・軍縮のための国会議員連盟(PNND)は、「このため、ニューヨークでの審議と交渉はきわめて困難になるだろう。しかし同時に、きわめて重要でもある」と指摘している。PNNDは、核リスクの低減、核軍備管理、共通の安全保障、そして核兵器の世界的廃絶の前進を通じてNPTを支えるため、各国議会での活動とも連携しながら、今回の運用検討会議に積極的に関与していく方針だ。(原文へ

INPS Japan

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国連本部INPS Japan/ATN=アハメド・ファティ】

核兵器不拡散条約(NPT)の2026年再検討会議が4月27日(月)、ニューヨークの国連本部で開幕した。世界が再び核の危険に向かいつつあるとの警告が相次ぐ中、開幕早々、イランの副議長職をめぐる対立が表面化し、NPTのコンセンサス重視の枠組みの下に潜む政治的脆弱性を露呈した。|ENGLISH

Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain
Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain

アントニオ・グテーレス国連事務総長は各国代表に対し、核時代をめぐる記憶が危険なほど風化しつつあると警鐘を鳴らした。かつて子どもたちは机の下に身を隠す訓練を受け、核攻撃に備えたシェルターが建設され、核実験は地域社会と環境に甚大な被害をもたらした。核の脅威や軍拡競争、不信が再び強まる中で、そうした記憶は薄れつつある、とグテーレス氏は指摘した。

グテーレス氏は各国に対し、NPT上の義務を履行し、保障措置を強化し、核戦争を防止するとともに、人工知能(AI)や量子コンピューティングを含む新たなリスクに対応できるよう条約を適応させることを求めた。その訴えは明快だった。世界は、知らぬ間に再び核の危険へと向かう余裕などない、というものである。

第11回再検討会議の議長を務めるベトナムのドー・フン・ヴィエト大使も、冒頭から強い危機感を示した。世界の軍事支出は過去最高水準に達し、核兵器は近代化・増強され、軍備管理の枠組みは弱体化している。核兵器使用の可能性は、もはや外交官や軍事計画担当者が想定する最悪のシナリオの中だけにとどまらない、と同氏は述べた。さらに、NPT締約国がコンセンサスに基づく最終文書に合意できたのは2010年が最後であることも指摘した。

「これは単なる会議ではない」とヴィエト氏は各国代表に語り、その成否は国連の壁の内側にとどまらず、今後5年間を超えて影響を及ぼすと警告した。

しかし、最初の本格的な試練は、軍縮に関する文言や最終文書をめぐるものではなかった。焦点となったのはイランだった。

The 2026 NPT Review Conference opens at the United Nations in New York, bringing renewed attention to nuclear disarmament, non-proliferation and the future of global nuclear restraint.
The 2026 NPT Review Conference opens at the United Nations in New York, bringing renewed attention to nuclear disarmament, non-proliferation and the future of global nuclear restraint.

米国は、イランが会議の副議長の一人に選出されたことに異議を唱えた。米国は、保障措置や国際原子力機関(IAEA)との協力をめぐるイランの実績を踏まえれば、同国はNPT体制を守ることを使命とする会議で指導的役割を担うにふさわしくないと主張した。さらに、イランは条約上の義務を軽視し、IAEAに十分協力せず、正当な民生上の必要性を大きく超える水準までウラン濃縮を進めていると非難した。

オーストラリアも米国の異議を支持し、イランはIAEAに協力せず、保障措置上の義務を尊重していないと述べた。英国も英仏独3カ国を代表して発言し、イランが会議指導部に加わったことへの懸念を公式記録に残した。

アラブ首長国連邦(UAE)は、地域諸国の中でもとりわけ厳しい異議を表明した。UAEは、イランの行動が再検討会議の信頼性を損なっていると述べ、同国が検証を妨害し、地域を不安定化させ、航行の自由を脅かし、ホルムズ海峡を経済的威圧の手段として利用しようとしていると非難した。

イランはこれらの非難を退け、政治的動機に基づくものであり、会議の進行を操作しようとするものだと反論した。テヘランは、2015年の核合意からの米国の離脱、米国による核戦力の近代化、イスラエルへの支援、さらに、保障措置下にあるイランの核施設への攻撃とされる行為を挙げ、ワシントンの二重基準を批判した。またイランは、米国とオーストラリアの副議長選出についても、同意しない立場を示した。

その後、ロシアはイランを公然と標的にする動きに反発し、会議初日から政治問題化すべきではないと警告した。モスクワは、懸念事項は一般討論や主要委員会の場で扱うべきであり、一締約国に対する政治的攻撃として持ち込むべきではないと述べた。

この対立は採決には至らなかった。代わりに、異議を唱えた国々が異議を公式記録に残すことが認められた。これにより、NPTが長年維持してきたコンセンサスの慣行は守られたものの、政治的な傷口は開いたままとなった。

この問題は、ヴィエト氏が記者会見場に移った後も尾を引いた。

同日遅くに開かれた記者会見で、ATNニュースはヴィエト氏に対し、核問題に関わる主要国、地域グループ、締約国との数カ月に及ぶ協議を経ても、なぜイランの立候補を事前に収拾できなかったのかと質問した。とりわけ、2025年にイランが関与した紛争後の緊迫した政治環境を踏まえた問いだった。

ヴィエト氏は、イランは数カ月前、非同盟運動(NAM)によって副議長候補の一団の一部として指名されたと説明した。ただ、その立候補に対する懸念が表面化したのは、会議開幕の約1週間前だったという。同氏は、規則上、各国は無記名投票を含む採決を求めることができると述べる一方、NPT再検討会議では、手続き上または実質的な問題について、これまで採決が行われたことはないと指摘した。

Ambassador Do Hung Viet of Viet Nam, president of the 2026 NPT Review Conference, briefs reporters at U.N. headquarters after an opening-day dispute over Iran tested the treaty’s consensus tradition.| UN Photo/Eskinder Debebe
Ambassador Do Hung Viet of Viet Nam, president of the 2026 NPT Review Conference, briefs reporters at U.N. headquarters after an opening-day dispute over Iran tested the treaty’s consensus tradition.| UN Photo/Eskinder Debebe

ヴィエト氏は、多くの締約国の支援を受けながら、採決の回避に努めたと述べた。採決に踏み切れば、条約のコンセンサスに基づくプロセスに有害な前例を残す可能性があったためである。その結果、各国は決定に同調しない立場を記録に残すことで合意した。

この説明は、会議が抱える中心的なジレンマを端的に示していた。NPTが権威あるメッセージを発するにはコンセンサスが不可欠である。一方で、コンセンサスは外交上の圧力弁にもなり得る。各国が決裂を回避しつつも、根底にある対立を未解決のまま残すことを可能にするからである。

ヴィエト氏は、NPT体制が平穏な状況にあるとは見ていなかった。同氏は記者団に対し、NPT体制はその歴史上、最も困難な局面の一つに直面しており、条約の存在意義と信頼性が問われていると述べた。また、過去2回の再検討会議が成果文書でコンセンサスに達しなかったことを踏まえ、今回の会議では、履行を強化するための実践的かつ具体的な措置を打ち出す必要があると強調した。

合意に基づく成果文書を得られない会議でも成功とみなし得るのかと問われると、ヴィエト氏は、コンセンサスによる成果文書こそが締約国間の合意を最も明確に示すものだと述べた。3回連続で合意に至らなければ、NPT体制の信頼性と強さについて極めて憂慮すべきメッセージを発することになる、と同氏は警告した。

1970年に発効したNPTは、不拡散、核軍縮、原子力の平和利用という三つの柱に基づいている。核兵器の拡散を抑制する中核的な法的枠組みであり続けている。しかし4月27日の開幕は、これら三つの柱すべてが大きな圧力にさらされている現実を示した。

Map of Middle East
Map of Middle East

核兵器国は核戦力の近代化を進めている。軍備管理協定は弱体化している。北朝鮮はNPTの枠外にとどまり、核開発を続けている。イランは、保障措置とウラン濃縮をめぐる深刻な対立の中心にある。ロシアによるウクライナ戦争は、核による威嚇と原子力施設の安全という問題を、国際安全保障の中心課題として再び浮上させた。中東では、1995年NPT再検討・延長会議で採択された「中東に関する決議」が求めた、核兵器およびその他の大量破壊兵器のない地帯の創設がいまだ実現せず、影を落とし続けている。

一般討論では、ウクライナと同国を支持する国々が、ロシアによる戦争、核をめぐる威嚇、ザポリージャ原子力発電所の占拠を非難した。フランスと北欧諸国は、ロシア、中国、イラン、北朝鮮をめぐる懸念を表明した。オーストラリアは、AUKUSに基づく原子力推進潜水艦計画について透明性を強調し、同計画が不拡散体制の強化につながるようIAEAと協力していると述べた。カザフスタンと中央アジア諸国は、非核兵器地帯を実践的なモデルとして示し、途上国は保健、農業、エネルギー、開発のために原子力技術を平和利用する権利を強調した。

今のところ、会議はイランをめぐる手続き上の決裂を回避した。しかし、それを引き起こした政治的亀裂を解消したわけではない。

NPT再検討会議は、コンセンサスという従来の理念の下で幕を開けた。だが初日の終わりまでに、そのコンセンサスは、不信、戦争、二重基準、そして核をめぐる不安によって早くも試されていた。条約は最初の衝突を乗り越えた。抑制よりも抑止へと傾きつつある世界の中で、4週間にわたる外交を乗り切れるかどうかが、今や真の試練である。(原文へ

Original URL: https://www.amerinews.tv/posts/iran-clash-tests-npt-consensus-as-treaty-review-opens-at-u-n

INPS Japan

Toward a Nuclear Free World Banner
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|中東|核の火種となり得る地域:戦略力学と核リスク

NPT再検討会議が国連で開幕―揺らぐ核不拡散体制の信頼性

ニューヨーク国連INPS Japan/ATN=アハメド・ファティ

Ahmed Fathi.
Ahmed Fathi.

世界の核秩序の中核をなすNPT体制が今週、再び国連の舞台に戻ってくる。そこには、過去の約束、新たな戦争、そして一つの避けがたい問いが重くのしかかっている。核兵器不拡散条約(NPT)は今なお、各国に対し、核兵器の保有ではなく自制を選ぶほうが安全だと納得させる力を持っているのか。|英語版

第11回NPT再検討会議は、条約の3本柱―核軍縮、核不拡散、原子力の平和利用―のすべてが圧力にさらされるなか、国連本部で開幕する。かつては国際的な核管理の枠組みとして機能していたNPT体制は、いまやさまざまな圧力が集中する場となっている。軍備管理は弱体化し、核をめぐる威嚇的な言説は高まっている。平和目的で整備された施設が、戦争の文脈で語られることも増えている。さらに、原子力潜水艦の推進技術を含む新技術は、過去の時代を前提につくられた規則を揺さぶっている。

U.N. disarmament chief Izumi Nakamitsu briefs reporters at U.N. headquarters ahead of the 11th Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons, scheduled to open April 27, 2026, in New York.
Izumi Nakamitsu, the U.N. High Representative for Disarmament Affairs,

国連の軍縮担当者にとって、問題はもはや机上のものではない。国連軍縮担当上級代表の中満泉事務次長は、核リスクが高まり、核兵器国と非核兵器国の間の信頼が損なわれ続けるなか、NPTは深刻な信頼性の試練に直面していると警告している。

この懸念は、条約の正式な締約国の枠を超えて共有されている。

ATNニュースの取材に対し、パキスタンの元国連常駐代表ムニール・アクラム大使は、NPT体制は「存立に関わる危機」に直面していると述べた。その理由として、核軍縮の停滞、インドとイスラエルをめぐる二重基準、そして核兵器が外部からの侵略に対する防護を与えるという認識の広がりを挙げた。

Ambassador Munir Akram, Pakistan’s former Permanent Representative to the United Nations
Ambassador Munir Akram, Pakistan’s former Permanent Representative to the United Nations

アクラム氏の警告は、外部からの戦略的評価として重要である。ただし、その発言は文脈の中で理解する必要がある。パキスタンは、インドやイスラエルと同様、NPTの締約国ではない。同氏の批判は、条約体制の外側から見た視点を反映している。すなわち、この体制の信頼性は、締約国の行動だけでなく、その枠組みの外にとどまる国々をめぐる例外や沈黙によっても弱められてきた、という見方である。

同氏の主張は、NPTが抱える最も深刻な政治的問題に突き当たる。各国が、条約上の約束によって自制が守られるよりも、核兵器の保有によって攻撃を抑止するほうが効果的だと結論づけるなら、NPTの論理は崩れ始める。

Ambassador Kairat Umarov, Kazakhstan’s Permanent Representative to the United Nations and a vice president of the 11th NPT Review Conference,
Ambassador Kairat Umarov, Kazakhstan’s Permanent Representative to the United Nations and a vice president of the 11th NPT Review Conference,

しかし、会議は悲観材料だけを抱えて始まるわけではない。カザフスタンは、より均衡の取れた見方を示そうとしている。

カザフスタンの国連常駐代表であり、第11回NPT再検討会議の副議長を務めるカイラト・ウマロフ大使はATNニュースに対し、議論は建設的な要素も反映すべきだと述べた。とりわけ、核不拡散という柱において、その必要があるという。

ウマロフ氏は「非核兵器地帯は、核不拡散の約束が地域レベルでどのように履行されるかを示す、最も実践的かつ効果的な例の一つであり続けている」と述べた。そのうえで、中央アジア非核兵器地帯の創設20周年を、NPTが今なお具体的な成果を生み出していることを示す「明確な実例」だと指摘した。

カザフスタンにとって、この例は抽象的なものではない。中央アジア非核兵器地帯は、旧ソ連の核実験場だったセミパラチンスクと、核実験がもたらした人的被害によって形づくられた同国の歴史に深く結びついている。会議に向けた同国のメッセージは明確である。条約は圧力にさらされているが、その有効性を示す実例も存在する、ということだ。

Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri
Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri

それでも、現在進行中のいくつかの争点は、そうした楽観論がどこまで持ちこたえられるかを試すことになる。

一つは、紛争地域にある原子力施設をめぐる危険の高まりである。保障措置下にある施設を含め、原子力施設やその周辺への攻撃は、戦争が拡大し、軍事的な論理が優先されるなかで、平和目的の原子力インフラを守り続けることができるのかという懸念を強めている。原子力の平和利用を柱とする条約は、原子力施設そのものが標的や圧力手段、あるいは戦場のリスクとなる時、過酷な試練に直面する。

Left to right: Anthony Albanese, Joe Biden and Rishi Sunak during the AUKUS announcement at Naval Base Point Loma in San Diego on March 18. Credit: Alex Ellinghausen
Left to right: Anthony Albanese, Joe Biden and Rishi Sunak during the AUKUS announcement at Naval Base Point Loma in San Diego on March 18. Credit: Alex Ellinghausen

もう一つは、海軍艦艇の原子力推進である。オーストラリアが米国と英国の支援を受けて原子力潜水艦を取得する見通しのAUKUSに基づく潜水艦計画は、保障措置をめぐる大きな論争を引き起こしている。争点は、オーストラリアが核兵器を取得するかどうかではない。オーストラリア政府は、潜水艦は通常兵器で武装されると説明している。問題は、先例と透明性、そして原子力推進が将来、他国に利用され得る形でNPTの枠組みを押し広げる可能性があるかどうかである。中国にとって、AUKUSは核拡散上の懸念を生む。一方、オーストラリアにとっては、保障措置の下に置かれた防衛計画である。これはNPTにとって、長期にわたり火種となり得る、扱いの難しい試金石である。

しかし、中東は依然として、NPTにとって政治的に最も敏感な未解決課題である。

Ambassador Maged Abdelfattah, Permanent Observer of the League of Arab States to the United Nations,
Ambassador Maged Abdelfattah, Permanent Observer of the League of Arab States to the United Nations,

アラブ連盟のマゲド・アブデルファッターフ国連常駐オブザーバーはATNニュースの取材に対し、再検討会議に臨むアラブ側の立場をイラン問題だけに還元すべきではないと述べた。同氏は、アラブ側の立場は、NPTの3本柱である軍縮、不拡散、原子力の平和利用を軸にしていると説明した。

アラブ諸国にとって、中心的な未解決課題であり続けているのは、1995年の中東決議である。この決議は、NPTの無期限延長を可能にした政治的合意の一環として採択され、中東非核兵器地帯の設立を支持することを約束したものだった。30年を経た今も、アラブ外交官らは、その約束は果たされていないと主張している。

アブデルファッターフ氏は、2019年に始まった、核兵器およびその他の大量破壊兵器のない中東地帯の設立に向けた国連の会議プロセスについて、NPTの歴史に根差すものだと説明した。その基礎にあるのが、1995年決議であるという。

Map of Middle East
Map of Middle East

このアラブ側の主張は、1995年決議の当初の共同提案国の一つであるロシアからも支持を得ている。米国と英国も、当時の共同提案国だった。

ATNニュースから、核兵器およびその他の大量破壊兵器のない中東地帯について問われたロシアのワシリー・ネベンジャ国連常駐代表は、ロシア政府は同地帯の設立を「極めて重視」しており、核不拡散に関する外交政策上の優先事項の一つと位置づけていると述べた。

ネベンジャ氏は、地域の安全保障状況の悪化により、この地帯の設立は「かつてないほど重要になっている」と述べ、この問題をNPTの1995年の政治的合意と直接結びつけた。同氏によれば、ロシア、米国、英国が共同提案した中東決議は、NPTを無投票で無期限延長することを可能にする一助となった。ロシアは、この決議が「その目的が達成されるまで有効であり続ける」との認識に立っているという。

ネベンジャ氏はまた、ロシアが、核兵器およびその他の大量破壊兵器のない中東地帯の設立に関する国連会議の全6回の会期にオブザーバーとして参加してきたと述べ、この会議を地域諸国間の対話と信頼醸成の場と位置づけた。同時に、イスラエルと米国が同プロセスに参加していないことに遺憾の意を示し、イスラエル抜きには実質的な進展は不可能だとの認識も示した。

こうして会議は、二つの相反する現実に直面している。NPTは依然として世界の核不拡散体制の基盤であり、各地域の非核兵器地帯を含む実際の成果を生み出してきた。しかし、核軍縮の停滞、地域的な二重基準、原子力施設への攻撃、核戦力の近代化、そして既存の保障措置に負荷をかける新技術は、その正当性を揺さぶっている。

NPTは終わったわけではない。この種の条約は通常、徐々に崩れていく。約束が儀礼化し、例外が恒久化し、各国が条約遵守よりも力のほうが自国を守ると考え始める時、条約は少しずつ侵食されていく。

それこそが、ニューヨークで問われている本当の試練である。危険なのは、またしても成果文書の採択に失敗することだけではない。より大きな危険は、NPTを支える基本的な合意が自制を守るものなのか、それとも特権を温存するだけのものなのかを、より多くの国が問い始めることである。

This article is brought to you with permission from American Television Network.

Original URL:https://www.amerinews.tv/posts/npt-credibility-on-the-line-as-nakamitsu-warns-nuclear-treaty-faces-critical-test

Toward a Nuclear Free World
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国連、核不拡散条約再検討会議を前に「重大な圧力」を警告

【国連IPS=ナウリーン・ホセイン】

核兵器不拡散条約(NPT)締約国による第11回再検討会議が、2026年4月27日から5月22日まで、ニューヨークの国連本部で開かれる。締約国は、核不拡散をめぐる共通基盤をいかに見いだすかという喫緊の課題に向き合うことになる。

国連軍縮担当上級代表で事務次長の中満泉氏は、「NPTは、国際的な軍縮・不拡散体制の礎石であり、国際の平和と安全保障を支える極めて重要な柱としてしばしば言及されている」と述べた。

Izumi Nakamitsu, Under-Secretary-General and High Representative for Disarmament Affairs, at a press conference on the 11th Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons (NPT). Credit: Eskinder Debebe/UN Photo
Izumi Nakamitsu, Under-Secretary-General and High Representative for Disarmament Affairs, at a press conference on the 11th Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons (NPT). Credit: Eskinder Debebe/UN Photo

NPTは1970年に発効し、1995年に無期限延長された。この画期的な国際条約は、すべての締約国に対し、核兵器の拡散防止と核軍縮の推進を求めるとともに、原子力の平和利用を奨励している。核兵器国と非核兵器国を含む191カ国が締約国となっており、核兵器国も参加する唯一の法的拘束力を持つ枠組みであり続けている。再検討会議は通常、1970年以降5年ごとに開催されてきた。ただし、2020年に予定されていた会議はCOVID-19の影響で延期され、2022年に開催された。

今回の会議議長は、ベトナムのドー・フン・ベト国連常駐代表が務める。会議は第1週の一般討論で始まり、その後、条約の3本柱に沿ったテーマ別討議が行われる予定である。

会議には、外相を含む閣僚級代表のほか、主要な国際機関の高官も出席する。テーマ別討議と並行して、市民社会の参加者によるサイドイベントも開催される。今回の会議では、最終成果文書について合意に至らないまま閉幕した前回の再検討会議以降、NPTがどのように履行されてきたかが検証される。

会議に先立ち、中満氏は4月24日、国連本部で記者団に対し、締約国は今回の会議を、核不拡散をめぐる共通基盤を見いだす機会とすべきだと述べた。各国が最終的に避けなければならないのは、核拡散の拡大と、核兵器が意図的に使用される事態である。成果文書で合意に至ることは、締約国全体の共同責任だと中満氏は強調した。

NPT再検討会議は、地政学的緊張が深まり、主要な核兵器国が地域紛争に関与する中で開かれる。イランをめぐる現在の軍事衝突、とりわけ2022年以降続くウクライナ戦争は、各国の核拡散をめぐる認識を変化させている。

一部の専門家は、こうした状況が新たな軍拡競争の始まりにつながっていると指摘する。核兵器の「性能向上」をめぐる議論を進める国が増える一方、核兵器を「国家安全保障の究極の保証」とみなし、核兵器の取得に乗り出す可能性すら取り沙汰されている。中満氏は、こうした世論の高まりを、各国政府のNPTに対する公式立場とは別に存在する「拡散の推進要因」と位置づけた。さらに、核兵器の使用を示唆する言説が増えていることに懸念を示し、核兵器を保有する国が増えれば増えるほど、誤用や誤算によって核兵器が使用されるリスクが高まると警告した。

NPT under pressure. Image: INPS Japan

「核兵器の使用を防ぐことも、今回の会議における主要な焦点の一つとしなければならない。核兵器に関しては、繰り返しになるが、一国や二国の安全保障にとどまる問題ではない。国境を越え、私たちすべての安全保障に関わる問題である」と中満氏は述べた。「核兵器を保有する国が増えれば私たちの安全が保証されるという誤った認識に、終止符を打たなければならない」とも語った。

締約国の間で共有される「危機感」は、むしろNPTを「守り、維持する」方向へ各国を促す可能性がある。しかし中満氏は、核兵器に対する容認姿勢が広がりつつあることは、第2次世界大戦後から冷戦期を通じて築かれてきた成果を危うくしかねないと警告した。

Image: da-kuk/istock
Image: da-kuk/istock

現在の戦略的安全保障環境においては、先端技術の急速な進展も議論に影響を及ぼす要素となる。人工知能(AI)の登場は、各分野での活用への期待を高める一方、適切な歯止めがなければ悪用されるリスクもあり、国際社会で大きな議論を呼んでいる。

国連総会が、軍事分野におけるAIの利用と「国際の平和と安全保障への影響」について詳述した決議を採択したのは、2024年12月のことだった。ただし、この決議には、核兵器の文脈におけるAI利用への言及はない。

NPT再検討会議で軍事・核分野におけるAIの問題が議論されるのかと問われた中満氏は、核兵器の指揮統制システムへのAIの統合については「さまざまな場で議論され始めている」と述べ、今年ジュネーブでもさらなる協議が行われる予定だと説明した。NPT再検討会議は、この問題や軍事分野におけるAIガバナンスを本格的に議論する場ではないかもしれない。しかし、軍事分野でのAI利用に一定の歯止めを設ける必要性を含め、この問題について検討を深めるべきだとの認識は、締約国の間で共有されている。

「核兵器の指揮統制に関しては、当然ながら人間による監督が維持されなければならないという認識が高まっている」と中満氏はIPSの取材に対して語った。

中満氏は、欧州や中東で続く紛争をはじめ、国際社会が直面する諸課題がNPTに「重大な圧力」を及ぼしていると指摘した。

A view of United Nations Headquarters complex in New York City as seen from the Visitors’ Entrance. /UN Photo | Yubi Hoffmann.
A view of United Nations Headquarters complex in New York City as seen from the Visitors’ Entrance. /UN Photo | Yubi Hoffmann.

しかし、だからこそNPT再検討会議とその成果は一層重要性を増している。核拡散はさらなる不安定化と安全保障上の不安を招くだけだという共通認識が、今後4週間にわたる重要な対話を後押しすることになる。そしてその対話は、NPTの原則を堅持するという共通の決意につながらなければならない。(原文へ

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Toward a Nuclear Free World Banner 1
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この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています

【Global Outlook=王広濤(ワン・グアンタオ)

高市早苗首相の台湾をめぐる発言を発端とする日中間の外交上の緊張は、短期的には緩和の兆しをほとんど見せていない。両国関係は「新常態」に入りつつあるのかもしれない。

Guangtao Wang
Guangtao Wang

2026年初頭以降、日中双方は対抗措置の応酬を重ねてきた。1月6日、中国商務部は、日本向けのデュアルユース品に対する輸出管理を強化すると発表した。2月24日には、日本の20団体・機関を輸出管理リストに追加し、さらに20団体・機関を監視リストに載せた。3月24日には、自衛隊員が刃物を持って東京の中国大使館に立ち入る事件が発生し、国際的にも大きな注目を集めた。さらに、4月10日に公表された日本の2026年版外交青書では、中国の位置づけが「最も重要な隣国の一つ」から、単に「重要な隣国」へと格下げされた。

こうした一連の否定的な応酬を、どのように理解すべきだろうか。日中両国は当初から関係改善に消極的だったのか。それとも、現在の関係悪化は主として高市氏の台湾をめぐる発言に起因するものなのか。一部には、高市氏が自民党総裁となり、その後首相に就任した時点で緊張は避けられず、北京はもともと二国間関係に高い期待を抱いていなかったと見る向きもある。しかし、この解釈はやや決めつけが過ぎるかもしれない。

たしかに、高市氏が過去に中国関連の問題をめぐって行った発言を踏まえれば、中国政府が高市氏の台頭を歓迎していなかったことは事実である。それでも北京は当初、慎重に推移を見守る姿勢を取っていた。注目すべきは、高市氏が靖国神社参拝を控え、中国に関わる人権問題でも露骨な強硬姿勢を取らなかったため、中国側もハイレベル接触の可能性を残していたことである。2025年10月31日、両国首脳は韓国で開かれたAPEC首脳会議に合わせて会談しており、当時はなお、一定の外交的安定を維持し得る余地があったことを示している。

11月7日の高市氏の台湾をめぐる発言に対し、北京が強く反発した背景には2つの要因がある。第1はタイミングである。発言は首脳会談の直後になされたもので、意図の有無にかかわらず、外交の雰囲気を損ない、さらに重要なことに、中国指導部の政治的威信を傷つけるものと受け止められた。中国外交部が「奉示」、すなわち上層部の指示を受けて日本大使を呼び出したことは、この問題が最高政治レベルに達していたことを示している。第2は発言の中身である。台湾有事が日本による集団的自衛権の行使を可能にする事態に該当し得るという高市氏の示唆は、北京が明確なレッドラインとみなす一線を越えるものだった。日本側が何らかの有事対応計画を持っているとしても、現職首相が国会の場でその可能性に公然と言及したことは、これまでなかった。

一見すると、現在の状況は、2010年の尖閣諸島(中国名・釣魚島)周辺での衝突事件を機に悪化した日中関係を思い起こさせる。しかし今回は、より深く、長期にわたる影響を及ぼす可能性が高い。その背景には、3つの構造的要因がある。

第1は、台湾問題が占める中心的な位置である。尖閣諸島をめぐる領有権問題について、中国は少なくとも原則として、係争の存在を認めてきた。これに対し、台湾問題はあくまで内政問題として位置づけられている。北京の視点からすれば、外部からの関与は内政干渉にほかならない。この意味で、台湾は日中関係だけでなく、中国の対外関係全般を測る重要な指標となっており、今後もそうあり続ける可能性が高い。台湾をめぐる各国の立場や行動は、その国が中国の核心的利益を尊重しているか、また過去の政治的約束を守っているかを測る試金石として、ますます重視されるようになっている。こうした文脈のなかで、高市氏は発言を撤回していないだけでなく、さまざまな場で日台協力を強調しており、政策上の柔軟性には限界があることをうかがわせる。

第2は、政治的な意思疎通のチャンネルが弱体化していることである。過去には、二国間関係が困難に直面した際、中国との太いパイプを持つ日本の有力政治家がしばしば仲介役を担ってきた。安倍晋三政権や岸田文雄政権の時代には、首相の親書を携えた特使がたびたび中国を訪れ、対話の促進に努めた。自民党の連立パートナーだった公明党の関係者も、意思疎通の維持に寄与してきた。しかし現在、そうした役割を担ってきた政治家の多くは表舞台を去っている。

同時に、日本国内では対中強硬姿勢が政治的正当性を増している。関与や対話を訴える政治家は「親中派」と見なされるリスクを負い、最近の衆議院選挙では、そうした印象が一因となって議席を失った者もいるとされる。その結果、与党連合内でも野党内でも、中国と積極的に向き合おうとする人物、あるいは政治的にそれが可能な人物は少なくなっている。

第3は、関係改善に向けた明確な契機が乏しいことである。短期的には、すぐに外交的打開につながる機会はほとんど見当たらない。今年夏に愛知・名古屋で開催されるアジア競技大会は、人的交流やスポーツ交流の場となり、草の根レベルから徐々に雰囲気を改善する可能性はある。しかし、二国間関係の実質的な進展には、最終的にハイレベルの政治的イニシアチブが不可欠であり、現時点ではその機運を欠いている。

関係改善に向けた一つの機会となり得るのが、11月に深圳で予定されているAPEC首脳会議である。2014年に北京で実現した安倍晋三首相と習近平国家主席の会談を先例に、日本は同様の首脳会談を模索する可能性がある。実現すれば、重要な転機となり得る。しかし、現在の緊張の高まりや日本国内の政治環境の変化を踏まえれば、そうした会談を実現することは、2014年よりも難しくなるかもしれない。

中国は、高市氏に台湾をめぐる発言を撤回するよう繰り返し求めてきた。日本の現在の政治状況を考えれば、撤回は見込みにくい。とはいえ、外交的な打開の余地が完全に失われたわけではない。注目すべきは、中国外交部の報道官が日本に対し、台湾に関する従来の立場を「誠実に、正確に、完全に表明する」よう繰り返し求めていることである。これは、意味のある対話を再開するための一つの前提条件を示唆している可能性がある。

それでも、双方に関係を安定させる意思があるなら、打開の機会はなお残されている。非政府間の交流チャンネルを広げることは、建設的な役割を果たし得る。感情的な言説に支配されるのではなく、国境を越えて、より均衡の取れた理性的な声が届く環境を整える必要がある。

しかし現時点では、相互認識は否定的なフィードバックの連鎖にますます左右されている。中国側では、政府が発出した渡航・留学に関する注意喚起が、日本を訪問したり日本で学んだりしようとする国民の意欲に大きな影響を及ぼしている。これは「政府主導型」の制約と呼べる。一方、日本側では、中国の否定的側面を強調するメディア報道が世論を左右し、中国との関わりをためらわせている。こうした動きは、メディア間競争の商業的論理を反映した「市場主導型」の制約と理解できる。

指導者レベルでは、東京は対話に前向きな姿勢を示し続けているものの、具体的な意思表示はなお限られている。たとえば、エマニュエル・マクロン仏大統領は以前、中国首脳をG7サミットに招待する意向を示していたが、日本はこれに懸念を表明した。最終的に、マクロン氏の訪日時にフランス政府は、中国首脳を招待しない方針を示した。しかし、日本が懸念を示すのではなく、むしろ招待を積極的に支持し、中国側も応じていれば、日中間のハイレベル接触の機会をつくり出せた可能性もある。

同様に、中国大使館で発生した自衛隊員による事件についても、高市首相と小泉進次郎防衛相は、迅速かつ実質的な対応を示さなかった。小泉氏は数日後、この事件について単に「遺憾」と述べるにとどまった。こうした抑制的な反応は、緊張緩和を意図したものだったのかもしれないが、同時に、危機を外交関係の立て直しにつなげる可能性を狭めるものでもある。

UN Photo
UN Photo
王広濤(ワン・グアンタオ)は、中国・復旦大学日本研究センターの准教授。専門は、日本の国内政治と外交政策、日中関係、東アジア国際関係である。近年の主な論文に、International Affairs誌に掲載された「Bridging the Gap between International Relations and Area Studies」(2026年)および、The Journal of Contemporary China誌に掲載された「China’s Political Discourse on the Diaoyu/Senkaku Islands」(2026年)がある。また、日本政治、安全保障問題、日中関係について、国際メディアにも論評を寄稿している。

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Original URL: https://toda.org/global-outlooks/china-japan-relations-in-a-new-normal-insights-from-china/

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|ウズベキスタン|ナウルズに響く文化のモザイクと若者たちの旋律

【タシケントINS Japan/London Post=グルミラ・シュクロワ】

きょう、ウズベキスタン・ジャーナリズム・マスコミュニケーション大学に春が訪れ、私の心もまた春の息吹に包まれた。キャンパスでは、「ナウルズ(=ナウルーズ)の精神とアミール・ティムール帝国の文化」をテーマに、華やかな祝祭が繰り広げられていた。しかし、それは単なる催しではなかった。祖国と伝統、春とそれを育む大地、そして訪れるすべての人々が、ウズベク文化の時を超えた美しさの中で出会う、愛に満ちたひとときであった。

そこにあったのは、誇りに満ち、伝統が息づく文化の祭典であった。教員と学生たちは大学を壮大な文化の祭典へと変え、20を超えるパビリオンがそれぞれ異なる民族の文化を紹介していた。きらめく絹の民族衣装から、伝統料理の滋味豊かな香りに至るまで、キャンパスのあらゆる場所が一つの物語を語っていた。情熱と誇りをまとった学生たちは、古くからの風習、貴重な工芸品、春の空気に響き渡る民俗芸能を来場者に紹介する、いきいきとした語り部となっていた。一本の糸、一粒の香辛料、一つひとつの旋律が故郷をささやくようで、私はこの国への愛おしさで胸がいっぱいになった。

Photo: Gulmira Shukurova
Photo: Gulmira Shukurova

祭典には、各国大使、海外からの来賓、ウズベキスタン高等教育・科学・イノベーション相、政府関係者、メディア関係者、そして多くの熱意あふれる学生たちが集った。参加者は、演劇仕立ての寸劇、手仕事による装飾、歴史の一場面から響いてくるような旋律に彩られた、多彩な展示を巡った。なかでも私の心を最も動かしたのは、若者から年配者まで、人々が自らのルーツをこれほど誇らかに受け止めている姿であった。一つひとつのほほ笑み、刺繍を施した衣装の袖、古くから伝わる歌の一節一節に、心を奪われずにはいられなかった。

Photo: Gulmira Shukurova

大学そのものが春への詩となり、私はその空気までも愛おしく感じている自分に気づいた。創造的な活気は人々へと広がり、キャンパスはまさに文化のモザイクとなった。それは多様性の祝祭であると同時に、調和の祝祭でもあった。穏やかなナウルーズの陽光の下で、民族間の結束、寛容、共有された価値は、単なるスローガンではなく、人々が実際に生きる現実としてそこにあった。この大地に生まれた者として、私は涙が込み上げるほどの祖国への誇りを感じた。これこそがウズベキスタンである。多くの心が一つになって鼓動し、あらゆる文化が大切な客人として迎えられ、春が単なる季節ではなく、帰郷のように訪れる国なのである。

この集いは、祝日の楽しいひとときにとどまらず、人々に愛される伝統へと育ってきた。共同体の絆を強め、春がもたらす本当の力は再生と連帯にあることを、すべての人に思い起こさせるものでもある。深紅のベルベットのドレスをまとった若いウズベクの少女が、外国からの来賓に優雅に茶を差し出す姿を見たとき、私の胸は温かな思いで満たされた。学生たちが伝統的な帽子を年配の教授の頭にそっと載せると、教授が涙をぬぐう場面もあった。合唱団が5つの言語でナウルーズの歌を歌うのを聞きながら、私は祖国を愛するとはどういうことかを悟った。それは旗や演説によって示されるものではない。こうして静かに、喜びとともに、自らの文化遺産を分かち合うことなのである。

Photo: Gulmira Shukurova
Photo: Gulmira Shukurova

古代から伝わる旋律の胸に迫る響きから、料理を囲む人々の笑い声まで、この催しは幾世紀にもわたる時を一つにつないでいた。ナウルズの華やぎとアミール・ティムール帝国の不屈の精神は、現代の息吹と見事に溶け合い、すべての来場者の心に忘れがたい記憶を残した。そして、喜びの中で分かち合われる文化こそが、平和を語る最も誠実な言葉であるという静かな理解をもたらした。

Photo: Gulmira Shukurova

しかし私にとって、それはさらに深い意味を持っていた。人々の中に立ちながら、私はこの祝祭を一つの愛の表明として受け止めた。春への愛、伝統への愛、きらめく衣装をまとった少女たちへの愛、ドゥタールを奏でる少年たちへの愛。そして何より、ウズベキスタンへの愛である。この国は、美と愛国心が別々のものではなく、同じ鼓動の中に息づくものだということを、私に教えてくれた。

Photo: Gulmira Shukurova

太陽が屋根の向こうへ沈み、最後のパビリオンが敷物をたたむ頃、私は満ち足りた心でその場を後にした。そして、この愛をいつまでも胸に抱き続けようと、静かに心に誓った。なぜなら、この祭典は単なる一日ではなかったからである。それは、ウズベク人であるということが、春を愛し、人々を愛し、魂を揺さぶるほど豊かな文化とともに生きることなのだと、改めて思い出させてくれる一日であった。(原文へ

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NPTの信頼性が重大な試練に

中満氏、核リスク高まる中で警告

国連本部INPS Japan/ATN=アハメド・ファティ】

世界の核秩序を支えてきた基本的な取引が、強い圧力にさらされる中、再び外交の場で問われようとしている。今回は、NPT体制を維持するだけでは十分ではないかもしれない。国連軍縮担当上級代表の中満泉氏は各国に対し、来る第11回核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議を真剣かつ慎重に受け止めるよう促し、核の危険がいっそう現実味を帯びる中で、NPTは国際安全保障にとって極めて重要であると警告した。|英文版タイ語

Ahmed Fathi.
Ahmed Fathi.

同会議は4月27日から5月22日まで、ニューヨークの国連本部で開かれる予定である。締約国は、半世紀以上にわたり核秩序を形づくってきた同条約の運用状況を検討する。国連事務次長で軍縮担当上級代表の中満氏は、NPTを「国際的な軍縮・不拡散体制の礎」であり、「国際平和と安全の重要な柱」だと述べた。

こうした表現は、国連の軍縮外交の場ではおなじみのものだ。問題は、条約を取り巻く世界が、もはやかつての姿ではないことにある。

前回のNPT運用検討会議では、コンセンサスによる最終文書の採択に失敗した。それ以降、世界の安全保障環境はさらに厳しさを増している。戦争は脅威認識を塗り替え、核をめぐる言説が公の場で再び目立つようになり、軍備管理の枠組みは弱体化しつつある。核兵器国が核戦力の近代化を続ける一方で、多くの非核兵器国は、NPTの基本的取引を成す軍縮の約束が本当に守られているのか、疑問を強めている。

中満氏は締約国に対し、「集団的責任を極めて真剣に受け止める」こと、そして「誠意をもって協議に臨む」ことを求めた。そのうえで、同条約は核兵器国と非核兵器国の双方に「かけがえのない利益」をもたらしていると強調した。

中満氏の訴えは、単なる手続き上の呼びかけにとどまらない。そこには明確な政治的意味が込められていた。

NPTは三つの柱の上に成り立っている。核兵器の拡散を防ぐこと、核軍縮を進めること、そして保障措置の下で、原子力を平和的に利用する権利を守ることである。この均衡は、常に信頼を必要としてきた。非核兵器国は、保有・取得できるものについて制限を受け入れる。核兵器国は、軍縮を追求することを約束する。そしてすべての締約国は、原子力技術の平和利用による恩恵を共有することになっている。

しかし、この均衡はいま、目に見える形で緊張にさらされている。

多くの非核兵器国にとって、不満は明白である。非核兵器国には厳格な不拡散義務の履行が求められる一方、核兵器国は核戦力の近代化計画を正当化し、軍縮については、進展があるとしても極めて慎重で、ほとんど動きが見られない。これに対し、核兵器国とその同盟国は、今日の安全保障環境では急速な軍縮は現実的ではなく、抑止、安定、リスク低減を重視せざるを得ないと主張する。

中満氏は、核兵器国には特別な責任があると認める一方で、非核兵器国の安全保障上の懸念を軽視することはできないとも述べた。「核兵器をめぐって問われているのは、核兵器国の安全保障だけではなく、国際社会全体の安全保障である」と中満氏は語った。

この問題は、2026年の会議における中心的な論点となる。

もはや焦点は、外交官たちが再び各国の立場に配慮した文書をまとめられるかどうかではない。真の試練は、核兵器が再び国際政治の中心に戻りつつあると見る国々の間で、NPTが政治的信頼性を維持できるかどうかである。

United Nations Headquarters in New York City, view from Roosevelt Island. Credit: Neptuul | Wikimedia Commons.
United Nations Headquarters in New York City, view from Roosevelt Island. Credit: Neptuul | Wikimedia Commons.

中東は、この議論の中で最も敏感な争点の一つとなる。イランの核計画をめぐる緊張は未解決のままであり、中東に核兵器その他の大量破壊兵器のない地帯を設置するという長年停滞してきた目標は、地域安全保障、不拡散、そして二重基準への批判が絡み合う問題であり続けている。

中満氏は、イランは引き続き運用検討会議に参加する意向を示していると述べた。イラン政府の高官が代表団の一員として登録されていることにも言及した。「イラン政府から、これに反する連絡は受けていない」と中満氏は述べ、週末には、最終的に誰がニューヨークでテヘランを代表するのかが明らかになるとの見通しを示した。

イランの出席は重要である。同時に、他の国々が中東をめぐるより広範な問題をどのように位置づけるかも重要となる。長年にわたり、アラブ諸国や非同盟運動の加盟国は、中東に核兵器その他の大量破壊兵器のない地帯を設置するという目標の前進を求めてきた。この問題は、イランだけでなく、イスラエルの未申告の核保有状況や地域全体の安全保障上の不均衡とも関わっており、NPT外交を繰り返し複雑にしてきた。

したがって、2026年の運用検討会議は、複数の面で信頼性を問われながら幕を開けることになる。NPTは今なお不可欠な枠組みとして広く擁護されている。しかし、それを支えてきた政治的条件は揺らぎつつある。

中満氏は記者会見で、NPTが「空洞化」することを許してはならないと警告した。そのうえで、同条約の権威は、条約上の義務と政治的信頼性の双方を維持できるかどうかにかかっていると述べた。運用検討会議は、ウクライナでの戦争、イラン核計画をめぐる緊張、米ロ間に残る最後の主要な核軍備管理枠組みである新戦略兵器削減条約(新START)の将来をめぐる不確実性を背景に始まる。中満氏は、再び成果文書を採択できない事態を避けるには、各国が柔軟性と真摯さを示す必要があると指摘した。

これが、27日の開幕に影を落としている現実である。

国連にとって、NPT運用検討会議は単なる外交会合ではない。不信が国際政治の常態となった時代に、各国がなお共通の核秩序を守ることができるのかを問う試金石である。

核兵器国には、軍縮義務がなお信頼に足るものであると示せるかどうかが問われる。非核兵器国には、自らが受け入れた取り決めが、なお公平性、安全保障、抑制をもたらすものなのかが問われる。中東には、長年の約束が新たな危機を乗り越えられるかどうかが問われる。

NPTは崩壊しているわけではない。しかし、いま厳しい試練にさらされている。

27日にはじまるニューヨークで成功の尺度となるのは、代表団が体面を保てるかどうかではない。問われるのは、核リスクが再び国際政治の現実として語られる世界において、同条約が核の危険を低減するに足る政治的重みをなお備えていると証明できるかどうかである。

This article is brought to you with permission from American Television Network.

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Original URL:https://www.amerinews.tv/posts/npt-credibility-on-the-line-as-nakamitsu-warns-nuclear-treaty-faces-critical-test

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骨折も出血もなければ犯罪ではない

タリバン新刑法が女性への暴力をどう扱うか

筆者は、タリバン復権前にフィンランドの支援を受けて研修を受けた、アフガニスタン在住の女性ジャーナリストである。安全上の理由から氏名は伏せられている。

【カブール IPS=匿名】

タリバンは、女性と子どもに対する家庭内暴力を事実上合法化する新たな法律を発表した。アフガニスタンの最高指導者ムッラー・ヒバトゥラー・アクンザダは1月、新たな刑法を導入する布告に署名した。この刑法は3部、10章、119条で構成され、暴力を合法化し、社会的不平等を制度化するとともに、奴隷制への回帰として広く非難される懲罰的措置を盛り込んでいる。

「これらの法律は、女性に対するさらなる攻撃であり、人権を露骨に侵害するものです」と、アフガニスタン国内で活動する女性の権利活動家ミトラさん(プライバシー保護のため仮名)は語る。

この法律は、複数の団体やメディアによって外部に漏れ、公にされた。人びと、とりわけ女性たちは衝撃を受けている。しかし、行動を起こすことも、声を上げることもできない。新刑法の下では、タリバン支配に反対したり、否定的に語ったりすること自体が犯罪とみなされ、刑事罰の対象となり得るからだ。

Educated Afghan women in Kabul’s informal economy, working in retail as Taliban rules curb professional opportunities. Credit: Learning Together.
Educated Afghan women in Kabul’s informal economy, working in retail as Taliban rules curb professional opportunities. Credit: Learning Together.

タリバン刑法第32条によれば、夫には妻や子どもを身体的に「しつける」権利が認められている。骨折がなく、目に見える出血もなければ、男性の行為は犯罪とはみなされず、刑事罰も科されない。

たとえ女性への暴力によって目に見える傷や骨折が生じたことが法廷で証明されたとしても、男性に科される刑罰は最長15日の禁錮にとどまる。

このタリバンの法律は、家庭内暴力を事実上合法化し、女性が司法に訴える道を閉ざすものとなっている。

また、同刑法第34条によれば、女性が夫の許可なく繰り返し父親の家や親族を訪ね、夫の家に戻らない場合、その女性と家族の双方が犯罪を犯したとみなされる。刑罰は最長3カ月の禁錮である。

新法の下では、妻が夫に従わない場合、夫には暴力によって妻を罰する権利が認められている。

このタリバンの布告は、脅迫や家庭内暴力に直面している場合であっても、女性にあらゆる状況で家にとどまることを強いるものだ。女性はもはや、自分の実家に身を寄せ、保護や避難を求めることさえできない。

人権団体ラワダリの文書によれば、タリバン刑法は2026年1月7日、ムッラー・ヒバトゥラー・アクンザダによって署名され、その後、施行のため各州の司法機関に配布された。

タリバンが出す布告は通常、司法機関の内部で秘密裏に保持され、一般市民にはモスクや地域の長老を通じて伝えられる。市民がその内容を知るのは、メディアや人権団体が文書を入手し、公表した場合に限られる。

タリバン支配の下で、アフガニスタン社会は事実上4つの階層に分けられている。犯罪に対する処罰は、犯罪そのものの性質ではなく、加害者の社会的地位によって左右される。

最上位に置かれるのは宗教学者であり、彼らには刑事罰ではなく、助言や注意が与えられるにとどまる。

次に位置づけられるのは、支配層に属する有力者たちである。村の長老や裕福な商人などがこれに含まれる。彼らには軽い処罰基準が適用され、通常は禁錮刑を免れる。

Map of Afghanistan
Map of Afghanistan

中間層にはより厳しい処罰が科される。そして最下層に置かれる人びとには、公開むち打ちや過酷な禁錮刑が科される可能性がある。

新法はまた、「自由人」と区別する形で、奴隷を指す用語も用いている。アフガニスタンでは1923年に奴隷制が公式に廃止された。しかし新刑法の下では、人を奴隷のように扱う考え方が再び通常の慣行として位置づけられている。

たとえば、主人には従属する者をしつける法的権利があり、夫には妻をしつける権利があるとされる。これは、法の下の平等という原則を事実上解体するものだ。

ミトラさんは、これらのタリバン法は女性に対する明白な攻撃であり、あらゆる人権を侵害していると指摘する。こうした規則の施行によって、タリバンは女性を家の中に閉じ込め、どのような虐待にも沈黙して耐えることを強いているという。

「タリバンが第32条と第34条に記した内容は、身の毛がよだつものです。タリバンは女性を性的対象としてしか見ていません。これらの法律は、女性に対するあらゆる形の暴力を正当化するものです。女性は正義を求めることも、父親や兄弟の家に避難することもできません。実質的には、家庭内暴力の重圧の下で、女性を公式に監禁するものです」と、ミトラさんは語る。

これらの規定は、十分な議論もなく起草され、社会的な議論も国民の関与もほとんどないまま施行された。その存在が明らかになったのは、人権団体ラワダリが法律文書を入手し、パシュトー語のウェブサイトで公表したためである。署名後まもなく、同法はタリバンが運営する裁判所で処理されるよう、各州に送付された。

A woman sits in a public space in Kabul. Under new Taliban laws, a wife who visits her relatives without her husband’s permission faces up to three months in prison. Credit: Learning Together.

バダフシャン州ラーグ地区の住民マリヤムさんは、タリバンの法律が地元のムッラーによってモスクで告知されると、直ちに地区や村で施行され、すべての事件がその規則に基づいて裁かれると指摘する。

「私たちの村では、ほとんどの人が読み書きできません。教育を受けている人や女性の権利について知っている人でさえ、恐ろしくて何も言えません。たった一言でも口にすれば、地元の人びとがその人に敵対し、問題が起きます。女性たちはほかに選択肢がないため、夫の言うことを何でも受け入れざるを得ません」と、マリヤムさんは語る。

タリバンがアフガニスタンを掌握して以来、同勢力は人権を一貫して侵害する布告や法律を出し続け、女性を家の中に閉じ込めてきた。だが今回はさらに踏み込み、女性に対するあらゆる暴力に法的正当性を与えたのである。

ミトラさんは、すべての人権団体と国際社会に対し、タリバンのこうした行為に立ち向かい、女性たちが前時代的な奴隷制同然の制度に引き戻されることを許してはならないと訴えている。そして、世界がアフガニスタンの女性たちと連帯しなければ、彼女たちは取り返しのつかない状況に追い込まれ、深刻な人道危機に直面することになると警告している。(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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