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「『ディープフェイクによる虐待は虐待だ』―生成AIが広げる新たな児童搾取危機にユニセフが警鐘」

【国連IPS=オリトロ・カリム】

国連児童基金(ユニセフ)の新たな調査で、生成型人工知能(AI)を用いて、何百万人もの子どもの画像が性的に加工・改変される被害が広がっている実態が明らかになった。ユニセフは、強固な規制枠組みと、各国政府とテック・プラットフォームの実効的な協力がなければ、この拡大する脅威は次世代に壊滅的な影響を及ぼしかねないと警告している。

独立機関で、児童の性的搾取・虐待を追跡する「チャイルドライト(Childlight)・グローバル子ども安全研究所」の2025年報告書は、近年、テクノロジーを介した児童虐待が急増していることを示した。米国では、2023年に4700件だった関連事案が、2024年には6万7000件超へと跳ね上がった。これらの相当部分に、ディープフェイク(現実に見えるよう精巧に生成されたAI画像・動画・音声)が関与していたという。なかでも「ヌーディフィケーション(nudification)」と呼ばれる、AIツールで写真の衣服を剥いだように見せたり改変したりして、捏造の裸体画像を作り出す行為が広く拡散している。

UNICEF
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ユニセフ、国際刑事警察機構(インターポール)、そしてECPATインターナショナル(End Child Prostitution in Asian Tourism=子どもの性的搾取に反対する国際組織)による共同研究は、11か国におけるオンライン上の児童性的虐待コンテンツ(CSAM)の流通状況を調査し、過去1年だけで少なくとも120万人の子どもが、性的に露骨なディープフェイクに画像を加工される被害に遭ったと推計した。これは、およそ「子ども25人に1人」―「教室に1人」―が、すでにこの新たなデジタル虐待の犠牲になっていることを意味する。

「子どもの画像や身元が使われた場合、その子どもは直接、被害者である」とユニセフの担当者は述べた。「たとえ特定可能な被害者がいない場合でも、AI生成の児童性的虐待コンテンツは、子どもの性的搾取を『当たり前』のものとして正当化し、虐待コンテンツへの需要をあおり、支援が必要な子どもを特定し保護するという点で、法執行機関に重大な困難を突き付ける。ディープフェイクによる虐待は虐待であり、そこにもたらされる害は、決して『偽物』ではない」

英国の全国警察本部長協議会(NPCC)による2025年の世論調査は、2019年から2024年の間にディープフェイク虐待が1780%増加したと報告した。クレスト・アドバイザリーが実施した英国全土の代表性を備えた調査では、回答者の約59%(3人に2人近く)が、自分がディープフェイク虐待の被害者になることを懸念していると答えた。

さらに34%は、知人の性的または親密なディープフェイクを作成した経験があると認め、14%は、面識のない相手のディープフェイクを作成したと答えた。調査はまた、女性と少女が不均衡に標的にされていること、そして拡散の場として最も多いのがソーシャルメディアであることも示した。

研究では、ある人物が恋人の「親密な」ディープフェイクを作成し、本人にそれを明かしたうえで、口論の後に第三者へ拡散する、という想定事例も提示した。驚くべきことに、回答者の13%がこの行為を「道徳的にも法的にも容認できる」とし、さらに9%が「どちらでもない」と答えた。NPCCは、この行為を容認する傾向が、ポルノを積極的に消費し、「一般に女性蔑視とみなされ得る」信条に同意する若年男性ほど強い、とも報告した。

受賞歴のある活動家でインターネット著名人のキャリー=ジェーン・ビーチ氏はNPCCに対し、次のように語った。「私たちは極めて憂慮すべき時代に生きている。デジタル空間で早急に決定的な行動を取らなければ、娘たち(そして息子たち)の未来が危機にさらされる。安全策も、法律も、ルールもないまま育った子どもたちの世代があり、その『自由』が生んだ暗い波及効果を、いま目の当たりにしている」

ディープフェイク虐待は、子どもに深刻で長期的な心理的・社会的影響をもたらし得る。強い羞恥、不安、抑うつ、恐怖を引き起こすことが多く、ユニセフは新たな報告書で、ディープフェイク虐待によって子どもの「身体、アイデンティティ、評判」が、遠隔から、見えない形で、しかも恒久的に侵害され得ると指摘した。加害者による脅迫、恐喝、金銭要求につながるリスクもある。侵害の感覚に、デジタル内容の恒久性と拡散性が重なることで、被害者は長期的トラウマや不信感、社会的発達の阻害に直面しかねない。

「自分の画像が性的に加工されたコンテンツに改変されたと知ったとき、多くの子どもが急性の苦痛と恐怖を経験する」と、ユニセフの子ども保護専門官アフルーズ・カヴィアニ・ジョンソン氏はIPSに語った。「子どもたちは羞恥心や烙印(スティグマ)を訴え、それは自分のアイデンティティをコントロールできないという喪失感によっていっそう深まる。被害は現実で、長く続く。性的に加工されたディープフェイクとして描かれることは、子どものウェルビーイングに深刻な打撃を与え、デジタル空間への信頼を損ない、日常の『オフライン』の生活においてすら安全でないと感じさせる」

国際電気通信連合(ITU)電気通信開発局のコスマス・ザヴァザヴァ局長は、オンライン虐待が身体的被害へと転化し得る点も付け加えた。

「人工知能と子どもの権利」に関する共同声明で、ユニセフ、ITU、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、国連子どもの権利委員会(CRC)など主要な国連機関は、子ども、親、養育者、教師の間で、AIリテラシーが広く不足していると警告した。AIリテラシーとは、AIシステムの仕組みを理解し、批判的かつ効果的に関わるための基礎的能力を指す。この知識ギャップは若年層をとりわけ脆弱にし、被害者や周囲の支援者が、標的化の兆候を見抜き、通報し、十分な保護や支援サービスにつながることを難しくする。

国連はまた、責任の相当部分がテック・プラットフォーム側にあると強調し、多くの生成AIツールが、デジタル上の児童搾取を防ぐ実効的な安全策を欠いていると指摘した。

「ユニセフの見立てでは、ディープフェイク虐待が広がる一因は、法・規制の枠組みが技術の進展に追いついていないことにある。多くの国では、AI生成の性的に加工された子どもの画像が、児童性的虐待コンテンツ(CSAM)として明確に認識されていない」とジョンソン氏は述べた。

ユニセフは各国政府に対し、CSAMの定義をAI生成コンテンツまで更新し、「その作成と流通の双方を明確に犯罪化」するよう求めている。ジョンソン氏によれば、テクノロジー企業には、同氏が「セーフティ・バイ・デザイン(安全性の組み込み)」と呼ぶ措置や、「子どもの権利への影響評価」を導入することを義務付ける必要がある。

ただし同氏は、法律や規制は不可欠である一方、それだけでは十分ではないとも強調した。「性的虐待や搾取を容認したり軽視したりする社会規範も変わらなければならない。子どもを効果的に守るには、より良い法律だけでなく、意識、執行、そして被害を受けた人への支援をめぐる実質的な変化が必要だ」

問題は、商業的インセンティブによってさらに複雑化している。AI画像ツールが生む利用者の関与、購読、話題性からプラットフォームが利益を得ることで、より厳格な保護策を導入する動機が弱まるためだ。

Grok logo 

その結果、テック企業がガードレール(安全策)を導入するのは、重大な社会的批判が噴出した後―子どもがすでに被害を受けた後―になりがちだ。例として挙げられるのが、X(旧ツイッター)のAIチャットボット「Grok」である。ユーザーのプロンプトに応じて、同意のない性的ディープフェイク画像を大量に生成していたことが判明した。国際的な反発が広がるなか、Xは1月、Grokの画像生成ツールをXの有料購読者に限定すると発表した。

ただしGrokをめぐる捜査は継続している。英国と欧州連合(EU)は1月以降、調査を開始し、フランスでは2月3日、検察が、CSAMとディープフェイクの流通にプラットフォームが関与した疑いに関する捜査の一環として、Xのオフィスを捜索した。Xのオーナーであるイーロン・マスク氏も事情聴取のため召喚された。

国連関係者は、AIシステムの成長や収益創出を認めつつも、子どもをオンラインで守る規制枠組みが不可欠だと強調する。「当初、彼らはイノベーションを阻害することを懸念しているように感じられた。しかし私たちのメッセージは極めて明確だ。AIを責任ある形で展開すれば、利益も出せるし、事業もできるし、市場シェアも取れる」と、国連の高官は語った。「民間セクターはパートナーである。だが望ましくない結果につながる動きが見えたときには、危険信号を出さなければならない」(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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シリアの移動文化バス―文化的公正を掲げ、戦禍の子どもたちに芸術と文学を届ける

【シリア・アル・アズラクIPS=ソニア・アル=アリ

シリア北部アル・アズラクのキャンプで、10歳のアビール・アル=カッドゥールは、色鮮やかな本に見入っていた。すぐそばには、「文化バス」と記されたバスが停まっている。その周りには、初めて集団で絵を描く活動に参加した子どもたちが目を輝かせながら集まっていた。少し離れた場所では、高齢の住民たちが静かに腰を下ろし、農業や政治、文学に関する本を手に取っている。そうした本を手にするのは、何年ぶりか、あるいは初めてという人も少なくない。

アビールは笑顔でこう語った。

「私は物語や科学の本を読むのが大好きです。この地域には公共図書館がなく、本を買うお金もありません。だから、この取り残されたキャンプに移動図書館が来てくれて、本当にうれしかったのです。私は家族とともに、ここで5年以上暮らしています。」

さらに、こう続けた。

「以前は、テントが私たちの孤立の象徴のように思えていました。でも文化バスが来てから、ようやく自分たちも祖国の一部なのだと感じられるようになりました。文化が、ほかの町や地域と同じように、私たちのもとにも届いていると感じたのです。」

シリア各地の都市やその周辺の村々を巡る色鮮やかなバスは、行く先々で人々の目を引いている。これはスクールバスでも、ありふれた交通手段でもない。いま人々に親しまれている「文化バス」である。シリア文化省が立ち上げたこの取り組みは、子どもから大人までを対象に、多様な書籍や小説、短編作品を備え、都市中心部から遠く離れた農村地帯や避難民キャンプを巡回している。そうした地域では、資源不足により図書館サービスが著しく不足している。

Displaced children choose their favourite stories inside the cultural bus in the Al-Azraq camp in northern Syria. Credit: Sonia Al Ali/IPS
忘れられた地域に読書文化を広げる

文化バスは今年初め、移動図書館として運行を開始した。停車するたびに、その場は小さな文化の祭典のような空間となり、子どもたちに喜びを広げている。だが、この取り組みの狙いは、一時的な高揚感にとどまらない。読書を一過性の体験ではなく持続的な習慣として根づかせ、地域社会の文化的な営みに再び活気を取り戻すことを目指している。

文化バスのプロジェクト・マネジャー、モハンマド・ムラド氏は、この事業の意義をこう語る。

「シリアで14年にわたって続いた戦争のなかで、多くの学校が破壊され、一世代まるごとの子どもたちが教育を受ける権利を奪われました。だからこそ文化バスは、子どもたちを再び本に親しませ、読書への関心を育み、シリアの豊かな文化遺産に触れてもらうことに力を注いでいます。また、自国の歴史的遺跡や、ガラス工芸、石けん作りといった伝統技術を知る機会にもなっています。私たちの指針は『文化、意識、再建』です。」

Map of Syria
Map of Syria

ムラド氏によれば、文化省がこの移動型プロジェクトを立ち上げた背景には、質の高い文化活動を求める社会の強い声がある。シリア初の試みとなるこの事業では、2台のバスが運行されており、1台は子ども向け、もう1台は大人向けである。これまでにダマスカス農村県、デリゾール、ラタキア、タルトゥース、バニヤスのほか、クネイトラ、アレッポ、イドリブに至るまで、39地域を巡回し、多彩な文化活動を展開してきた。

各バスには、あらゆる年齢層に向けて選ばれた数千冊の本や小説、物語を備えた移動図書館が設けられている。車内には作家や詩人のボランティア・チームも加わり、娯楽性と教育性を兼ね備えた多彩な活動を展開している。

ムラド氏はこう説明する。

「子どもたち向けには、共同読書、作文や絵画のワークショップ、伝統的な『ハカワティ(語り部)』による語り、さまざまな文化コンテストなど、双方向型の催しを行っています。地元のNGOや学校、ボランティア団体と連携し、できるだけ多くの村や町に足を運べるよう工夫しています。」

さらに同氏は、この取り組みは一時的な催しではなく、持続可能な文化政策の柱だと強調する。その目的は、文化を誰もが享受すべき権利として位置づけ、知識を個人とシリア社会の再建を支える基盤として取り戻すことにある。

文化的公正の実現へ

文化バスは、文化を特権ではなく公共の権利として位置づけ、シリアの隅々にまで届けようとしている。

プロジェクト監督者のサルワ・アル=アサアド氏(33)は、この活動を支える原動力についてこう語る。

「私たちの目標は、シリアのあらゆる地域で、人々に文化を届けることです。子どもたちが遠くの図書館や文化センターに足を運ぶのを待つのではなく、私たちのほうから子どもたちのもとへ向かいます。何年もの間、一度も文化活動が行われていない遠隔地の村々からも、訪問の要請が寄せられています。」

アル=アサアド氏は、このプロジェクトの強みは地域社会を中心に据えたアプローチにあると強調する。訪問先は、それぞれの地域住民が抱える具体的なニーズに基づいて選ばれる。戦争の傷跡が深い地域では、子どもたちが感情を表現できるよう、美術療法的な活動を行う。一方、文化に触れる機会の乏しい都市では、詩の夕べや音楽公演を開き、地域に活気を取り戻そうとしている。

厳しい地形による移動上の困難や、資金確保をめぐる継続的な課題にもかかわらず、サルワ・アル=アサアド氏はひるまない。市民から寄せられる大きな反響こそが、彼女たちを前へ進ませる力となっている。より多くの地域に活動を広げるため、新たなバスの導入計画もすでに進んでいる。

「こうした取り組みは、単に読書や学びを促すだけではありません。子どもや若者たちの中に希望の種をまき、創造力に火をともすのです」とアル=アサアド氏は語る。

「同時に私たちは、それぞれの地域の社会的・教育的背景に即したプログラムを通じて、損傷を受けた文化センターを再び地域の文化拠点としてよみがえらせることも目指しています。」

SDGs Goal No. 4
SDGs Goal No. 4

文化バスの重要性は、シリアの深刻な教育危機を背景に、いっそう際立っている。UNICEFの政治移行前の推計によれば、7000校を超える学校が損傷または破壊された。さらに多くの学校が避難所として転用され、残された学校では深刻な過密が生じている。

統計が示す現実は厳しい。現在、240万人を超える子どもたちが学校に通えておらず、さらに100万人が中途退学の危機にさらされている。こうした状況の中で、移動図書館のような文化・教育の取り組みは、もはや補助的な存在ではない。失われかねない世代にとって、極めて重要な命綱なのである。

文化バスは今日も旅を続け、シリアの文化地図を描き直している。

それは絶えず動き続ける地図であり、扉が開くたびに一筋の希望を運んでくる。このバスが運んでいるのは、単に人をある場所から別の場所へ移すことではない。知識そのものを、静まり返った図書館からにぎわう広場へ、都市の中心から最も辺境の村へと届けているのである。

その歩みを通じて、文化バスは、シリアの人々と本の世界との間で断ち切られてしまった絆を、少しずつ、しかし確かに結び直している。(原文へ

INPS Japan/ IPS UN Bureau Report

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才能の浪費:タリバンの制約下で「適応」を迫られるアフガンの高学歴女性たち

※筆者はアフガニスタン在住の女性ジャーナリスト。タリバン復権前にフィンランドの支援を受けて研修を受けた。安全上の理由から身元は非公表。

【カブールIPS=匿名女性記者】

アフガニスタンの首都カブールでは、若い女性たちが市場の屋台で刺繍や仕立て、ビーズ細工の制作・デザインなどに従事している。コンピューター・ソフトの開発や報道など、学んだ専門分野で働くはずだった女性も多い。だが、そうした分野での就労機会が閉ざされたためだ。

タリバンが2021年に権力を奪還して以降、高学歴の女性は公的職から排除され、正式な雇用の多くから締め出されてきた。生活を維持し、失業による精神的負担を避けるため、専門とは無関係の仕事に就く女性が増えている。

女性の就労は厳しく制限され、ほとんどの女性がオフィス勤務やメディアなど、教育や職歴に直結する分野で働くことを禁じられている。

「専門の仕事が見つからない」——IT卒業生のリダ

リダ(仮名)はコンピューターサイエンスの学位を持ち、以前は経済省でIT担当として6年以上勤務し、安定した収入を得ていた。だが現在は、カブール南東部で仕立て仕事をしながら小さな店を営んでいる。

Map of Afghanistan
Map of Afghanistan

夫は地方開発省に勤務していたが、10年前にカブールで起きた爆発事件で死亡した。リダは5人の子どもを抱え、兄の家族と同居している。生活は厳しく、家計を支えるため、息子の1人は路上でビニール袋を売っている。下の息子は学校に通っているが、娘の教育はタリバンの布告によって中断されたままだという。

「タリバンが戻ってきたとき、私は職場を追われました」とリダは語る。「この4年間、専門の仕事は見つからず、店で働くしかありませんでした。」

仕事を求め、多くの女性がカブールの非公式経済(インフォーマル部門)に流入しているが、機会は限られ競争も激しい。女性が働ける場は、女性向け衣料や化粧品を扱い、女性客を対象とする店舗にほぼ限られている。

さらに、女性が店を運営するためには、男性の家族や代理人が先に営業許可を取得しなければならない。そのうえで女性が販売員や助手として働く形となり、給与は固定給か歩合制で支払われるのが一般的だ。

「仕立ての工房で働くのは非常につらいです」とリダは言う。「せめて、自分の専門に近いコンピューター関連の仕事ができればと思います。」

「記者ではなく店番に」——報道を学んだムルサル
Press freedom watchdogs say the arrest of Wall Street Journal reporter Evan Gershkovich is a sign of the Kremlin’s greater intolerance of independent voices.
Press freedom watchdogs say the arrest of Wall Street Journal reporter Evan Gershkovich is a sign of the Kremlin’s greater intolerance of independent voices.

ムルサル(仮名、27歳)も同じような境遇にある。ジャーナリズムを学び、8年間、複数のメディアで記者として働いた。タリバン復権前は、ジャーナリスト支援の団体に勤め、収入や福利厚生にも恵まれていた。

だが今、ムルサルは店を営む側に回った。民間メディアには多くの女性を吸収する余力がなく、ニュースを伝える代わりに、女性向けの伝統衣装や関連商品を売って生計を立てている。

「最初は、自分がとても安く見られているように感じました。」とムルサルは言う。「周囲の視線も気になりましたし、家族も、私がこの仕事をしていることをあまり快く思っていませんでした。」

アフガニスタンでは、女性が店を切り盛りするのは一般的ではない。ムルサルはカブール南西部で女性用衣料を売り、両親と暮らしている。両親は元政府職員だが、現在は失業している。

「姉妹が6人、弟が1人います」とムルサルは話す。「姉妹たちが自立するまで、私は結婚できません。家族を支える責任が私にあるからです。」弟はまだ10歳だという。

ムルサルの月収は約1万アフガニ(約127ユーロ)ほど。家族が何とか暮らすにも十分とは言いがたい。それでも、就労環境はさらに厳しさを増している。

ムルサルによれば、「勧善懲悪省」の職員が週に3回、店を訪れ、一日中マスクの着用を徹底させる。息苦しいだけでなく、女性用の寝間着に印刷された写真や図柄を隠す、あるいは撤去するよう命じられることもある。

「商品を隠したら、お客さんは何を選べばいいのか分かりません。」とムルサルは訴える。

逆境のなかの「抵抗」

彼女たちは、積み重ねてきた学びが生かされない現実に苦しみながらも、店を続けることで、権利侵害に屈しない姿勢を示している。家族を支える収入は必要だが、痛みの核心は、技能と夢が専門の場で封じられている点にある。

それでも、厳しい制約下で働き続けることは、生計のためだけではない。社会から姿を消すことを拒み、できる形で関わり、貢献し続ける—その営み自体が、静かな意思表示になっている。

タリバンの制約は機会を狭めても、志や変化への意欲まで奪うことはできない。アフガンの女性たちは沈黙せず、公共空間にとどまり続ける。自分たちは「見えない存在」ではないと示している。(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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「誰も被爆者であってはならない」 若き日本人活動家、被爆証言を伝える移動式ミュージアム構想

日本の若い平和活動家が、被爆者の証言を語り継ぐ移動式ミュージアムの設立を通じて、世界の核軍縮を後押ししようとしている。

【INPS Japan/ 国連ニュース】

広島とともに第二次世界大戦末期に原子爆弾が投下された長崎出身の中村涼香さんは、被爆者の体験を広島と長崎の外にも伝えることを目指している。

被爆者である祖母を持つ中村さんは、2025~2026年の「SDGsヤング・リーダーズ」17人の一人に選ばれた。毎年3月5日に記念される「軍縮・不拡散に関する意識向上のための国際デー」を前に、UN Newsの取材に応じた。

UN Photo

中村さんは、「世界には1万2000発を超える核兵器が存在しており、誰もが原爆の被害者となり得る」と危機感を示した。

また、高校時代に平和活動を始め、地元・長崎で署名活動や被爆者との交流に取り組んできたと振り返った。

中村さんは、原爆の残酷さと恐ろしさを自らの体験に基づいて伝え続けてきた被爆者に深い敬意を示し、「人は歴史を忘れがちだからこそ、この街の悲劇と、人々が経験したことを記憶し続けなければならない」と語った。

その一方で、こうした活動の多くがボランティアによって支えられている現状に触れ、「どのように継続していくかが課題だ」と指摘した。その上で、若い世代が関心を持ち、参加したくなるような新しい形の活動が必要だとの考えを示した。

© Suzuka Nakamura As a high school student in Nagasaki, Suzuka Nakamura (centre) collects signatures for the eradication of nuclear weapons. (file)
移動式原爆ミュージアム

中村さんは大学進学後、若者が核兵器廃絶に向けて取り組むことのできるコミュニティーづくりを始めたという。

現在は、核兵器廃絶の重要性を伝えるため、移動式原爆ミュージアムの構想を進めている。

中村さんは、被爆者が設立した反核団体日本被団協が2024年にノーベル平和賞を受賞して以降、広島や長崎を訪れて学ぼうとする人が増えたと述べた。

その一方で、「広島と長崎以外には、この問題について学べる場がほとんどない。」と指摘。日本各地、さらには世界へと巡回できる移動式ミュージアムが実現すれば、平和や人権など、社会にとって不可欠な課題について対話を広げる機会になるとの見方を示した。

被爆者から受け継ぐ教訓

中村さんはまた、国連について「世界中の人々が集い、今後どのように生きていくべきかを話し合い、決定するための不可欠な場だ。」と評価した。

SDGsヤング・リーダーとして活動することで、各国の若者や関係者とのネットワークを築き、多様な考え方に触れることができるとしている。

さらに、核軍縮を直接掲げる特定のSDGs目標は存在しないものの、この問題はすべての目標に関わる横断的課題だと強調し、「核兵器が存在する限り、持続可能な世界は実現できない。」と訴えた。

被爆者から学んだ最も大きな教訓の一つは「忍耐」だという。

中村さんは、「この問題は非常に大きく、自分の生きている間に解決できないかもしれない。それでも活動を止めないためには忍耐が必要だ。私たちは続けなければならない。前に進み続けなければならない」と語った。(原文へ

Origiinal URL: https://news.un.org/en/story/2026/03/1167101

INPS Japan

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高市首相訪米へ イラン戦争の余波の中で問われる日米同盟の代償

【ニューヨークATN=アハメド・ファティ】

高市早苗首相は来週、イラン戦争をめぐりドナルド・トランプ米大統領と「率直な協議」を行う構えでワシントンを訪れる。しかし、中東にエネルギーを依存し、安全保障では米国に依拠する日本にとって、「率直さ」は掲げるほど容易なものではない。日本の主要メディアは、3月19日の首脳会談を、戦争の経済的代償が日本に及ぶなかで、日本政府がどこまで本音を語れるのかを測る試金石と位置づけている。(毎日新聞

Ahmed Fathi.
Ahmed Fathi.

日本政府の立場は、意図的に慎重に整えられている。高市首相は、この紛争は日本の安全保障関連法制上の「存立危機事態」には、なお該当しないとの認識を示している。この線引きは、国内政治の文脈で重い意味を持つ。経済的打撃が生じていても、それが直ちに、より正式な安全保障上の関与へと転化する事態を避けるためである。言い換えれば、日本政府は、戦争が日本の法的枠組みの内部に入り込むことを防ごうとしているのであり、現時点で顕在化しているのは、あくまで経済的衝撃である。(ジャパンタイムズ

しかも、その経済的衝撃は抽象論ではない。ル・モンドは、ホルムズ海峡の航行がほぼ停止状態に陥ったことで、アジア向けの石油輸入が直接圧迫されていると報じ、高市首相が安定的なエネルギー供給の確保に向けて「あらゆる可能な措置」を講じると述べたと伝えた。フィナンシャル・タイムズによれば、原油輸入の大幅な減少が見込まれるなか、日本政府は備蓄放出によって「先手を打つ」方針だという。日本は8カ月を超える備蓄を保有しているが、それは時間を稼ぐ手段ではあっても、脆弱性そのものを消し去るものではない。(Le Monde.fr

国際市場全体の動揺も、各国に対応を迫る水準に達している。国際エネルギー機関(IEA)は3月11日、加盟32カ国が緊急備蓄から計4億バレルを市場に供給することで合意したと発表した。これは、IEA史上最大の協調放出である。アラブ・ニュースはこの決定を引用し、戦争と湾岸地域からのエネルギー供給混乱によって引き起こされた価格急騰を抑え込むため、各国政府が対応を急いでいると報じた。(IEA

日本にとってこの展開が重い意味を持つのは、主要経済国のなかでも、日本がとりわけ選択肢の限られた国の一つだからである。中国は既存ルートを通じてイラン産原油へのアクセスを維持しており、インドも、すでに航行中の一部ロシア産石油貨物について、米国から一時的な制裁免除を受けている。これに対し日本政府は、ロシア産原油に関する免除措置の活用を検討しつつも、それをG7との協調や外交上の代償と慎重に天秤にかけている。ロイターは金曜日、日本政府がこの選択肢を検討しているものの、それは広範なエネルギー安全保障上の判断の一部にとどまると報じた。(ロイター

もっとも、高市首相が手ぶらでワシントンに向かうわけではない。ロイターによれば、日本は今回の首脳会談で、米国主導のミサイル防衛構想「ゴールデン・ドーム」への参加を表明する見通しである。これは、戦争が日本経済を圧迫するなかでも、日本政府がなお対米戦略協調を深める意思を持っていることを示す。今回の訪米が緊張を帯びるのはこのためである。日本は、エネルギー面での負担軽減を求める局面で、防衛面ではさらに重い責任を引き受けようとしている。忠実な同盟国であることは依然として期待されているが、安価な燃料がその見返りに含まれているわけではない。(ロイター

日本の報道は、この板挟みの構図を比較的率直に伝えている。毎日新聞は共同通信を引用し、高市首相がトランプ大統領に対し、イラン問題を率直に提起する意向だと報じた。ジャパンタイムズは、日本政府の対応ににじむ法的・政治的慎重さに着目し、政府が同盟管理と自動的なエスカレーションとをいかに慎重に切り分けようとしているかを浮かび上がらせている。これは反米的な姿勢ではない。むしろ日本政府は、戦略的連帯には相応の代償が伴うという現実を、ワシントンに伝えようとしているのである。(毎日新聞

この首脳会談の焦点は、高市首相が率直に語るかどうかではない。外交の文法に照らせば、首相はおそらく十分に率直であろう。真に問われているのは、米国の最も緊密なアジアの同盟国の一つである日本が、ワシントンの安全保障戦略を支持しながらも、中東戦争の経済的余波によって深刻な打撃を受け得るという現実に、トランプ氏がどこまで耳を傾けるかである。もし日本が、防衛協力の拡大だけを持ち帰り、エネルギー不安に対する十分な安心材料を得られないまま帰国するなら、その教訓は重い。この同盟では、率直な対話が許容されても、負担を引き受ける覚悟の方が、なお強く求められていることを示すことになる。(毎日新聞

Original URL:https://www.amerinews.tv/posts/japan-pm-sanae-takaichi-candid-test-in-washington

INPS Japan

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豪州の継続的課題―ブッシュファイア

【メルボルンLondon Post=マジッド・カーン

2026年初頭、オーストラリア南東部ビクトリア州は、大規模なブッシュファイア(山火事)に再び見舞われた。気温が45度を超える熱波が続いた後、ロングウッドとウォルワ周辺で発生した火災が急速に拡大し、広い地域に被害が及んだ。ジャシンタ・アラン州首相が「災害状態(state of disaster)」を宣言したことは、危機の深刻さを物語っている。今回の火災は、2019~2020年の「ブラック・サマー」以来、州にとって最大級の災害と位置づけられている。火勢がいったん弱まり、当面の危険が後退するにつれ、焦点は長期にわたる復旧・復興へと移った。

復旧とは、焼け焦げたがれきを片づけ、建物を再建するだけではない。経済、環境、社会の回復を同時に進める、多面的な課題である。気候変動によって災害が激しさを増す中、ビクトリア州が復旧・復興をどのように進めるのかに国際的な関心が集まっている。

Map of Australia
Map of Australia

可燃物の蓄積が進む中、突風を伴う強風が重なり、2026年1月初旬に発生した火災は急速に拡大した。1月10日に「災害状態」が正式に宣言された時点で、焼失面積はすでに30万ヘクタールを超えていた。この宣言により、緊急サービス当局は住民避難や資源配分について特別な権限を得て、対象は18の地方自治体区域に及んだ。ストラスボギーやトウォングなどでは状況が急速に悪化し、数千人が避難を余儀なくされた。住民は炎に追われ、持ち物や生活の基盤を残したまま退避することになった。

赤く染まった空と、森林から立ち上る煙柱の映像は、豪州で自然災害が激化している現実を改めて印象づけた。避難した住民の多くは、衝撃が冷めやらぬ中、救援センターで開かれた復旧に向けた初期会合に参加した。これらの会合は、政府と住民の情報共有や連絡体制を整え、被害状況について公式に説明する場となった。「災害状態」の宣言は、被災地域が復旧や生活再建を進めるための法的・財政的な支援枠組みを確保する意味も持っていた。

現場の安全が確認されると、エマージェンシー・リカバリー・ビクトリア(Emergency Recovery Victoria)と各自治体のチームが被害査定に着手した。衛星画像と地上調査を組み合わせ、900棟を超える建物の被害が確認され、その中には数百棟の住宅も含まれている。復旧の最初の課題は、電力、水道、通信といった基幹インフラの回復だった。火災の最盛期には3万世帯以上が停電し、地域によっては灰や消火薬剤の影響で安全な飲料水の確保が難しくなった。公益事業者は数百人規模の技術者を投入し、防護柵や道路標識、さらに数千キロに及ぶ送電線の修復を進めた。大きく景観が変わった地域でも、住民の日常生活をできるだけ早く取り戻すことが目標とされた。

2026年の火災による経済的打撃を受け、州政府と連邦政府は迅速に財政支援を実施した。共同の災害復旧資金手当制度(Disaster Recovery Funding Arrangements)のもとで、食料や衣類、医薬品など生活必需品の購入を支援する給付が開始された。

農業被害も深刻で、最初の1週間だけで1万5000頭を超える家畜が失われた。ヒュームおよびゴールバーン・バレー地域の農家にとって、これは経済的損失だけでなく精神的にも大きな打撃となった。牧草地やフェンス、飼料保管施設が焼失し、生き残った家畜も厳しい環境に置かれている。被災農地に緊急の飼料や水を届けるため、大規模な支援輸送が行われた。

SDGs Goal No. 15
SDGs Goal No. 15

この危機に対応するため、最大7万5000ドルの一次生産者向け復旧助成金が設けられた。がれき撤去や農業経営の再建に必要な費用を支援するもので、家畜の適切な処理、農場インフラの再構築、牧草地の回復などが対象となる。長期的には、土壌の健全性回復とともに、焼失地で広がりやすい外来雑草の侵入対策も重要な課題となる。

火災は交通網にも大きな混乱をもたらした。危機の最中、多くの地域が事実上孤立し、ヒューム・ハイウェイやマレー・バレー・ハイウェイなど主要道路が火災接近や倒木の危険により閉鎖または通行制限された。復旧チームにとって道路の再開は最優先事項だった。道路は救援物資や復旧資材の輸送、避難者の帰還を支える重要な交通路だからである。

環境被害も甚大だった。ローソン山やウォナンガッタを含む広大な森林や州立公園が深刻な被害を受け、野生生物の犠牲は数百万に達すると推計されている。火の回りが速く強度も高かったため、移動の遅い動物は逃げることができなかった。現在、環境修復が進められており、灰の流出から水源を守る対策や、未焼失地に生き残った動物への給餌・給水支援が進められている。

火災後の水質悪化も懸念されている。植生が失われることで土壌侵食が進み、豪雨時に土砂が河川や貯水池へ流れ込む危険が高まる。これは水生生物の生息環境だけでなく、飲料水の安全性にも影響を与える可能性がある。

一方で、物理的な被害以上に深刻なのが心理的影響である。避難の恐怖や住居の喪失、環境破壊の目撃は、長期にわたり不安や悲しみを残す。被災者の心の回復は、復興の重要な課題の一つとなっている。

復旧が再建段階へ移る中、ビクトリア州民が直面するのは、安全で持続可能な形で地域をどう再建するかという課題である。今回の火災は、極端な気象条件にさらされる地域の都市計画や建築基準をめぐる議論を再び活発化させた。保険料の急騰や新たな火災危険度基準への対応など、土地への帰還を望む住民には大きな負担がのしかかっている。

州政府は、より耐災害性の高い住宅の整備を検討している。賃貸住宅供給を目的とした「ビルド・トゥ・レント」方式や耐火素材を用いた住宅開発、さらに地域単位で電力供給を維持できるマイクログリッドの整備などが進められている。しかし、その費用負担をどう抑えるかが引き続き課題となっている。

一部地域では、長期的に危険度が高い地域から移転する「管理された撤退」という選択も議論されている。災害の頻発は、都市・地域計画の見直しを迫っている。今回の復旧は単なる元通りの再建ではなく、自然環境の中でどのように暮らすのかを改めて考える機会でもある。再建の各段階に回復力を組み込むことで、ビクトリア州は火災多発地域に向けた新たなモデルを示そうとしている。

Dr. Majid Khan, Bureau Chief(London Post for Australia)/Writer and Analyst
Dr. Majid Khan, Bureau Chief(London Post for Australia)/Writer and Analyst

豪州では大規模火災のたびに政策の見直しが行われる。今回も計画的焼き払いの有効性や国立公園での燃料管理をめぐり、さらなる調査を求める声が上がっている。高温と乾燥が常態化する中、従来の手法だけでは不十分だとの認識が広がり、先住民の火入れの知見を現代技術と組み合わせる動きも検討されている。

政策面では、観光業や農業など地方経済の脆弱性も浮き彫りになった。政府は、自然災害の影響を減らす気候対応型の取り組みを通じ、産業の持続性を高める方策を検討している。復旧から得られた教訓を生かし、より柔軟で先を見据えた政策体制の構築を目指している。

ビクトリア州の復旧の取り組みは、豪州を超えて国際的な関心を集めている。気候変動による災害が世界各地で増える中、ここで得られる教訓は多くの地域にとって参考となる。暮らし、経済、環境のバランスをどう取るかという課題に対し、ビクトリア州の経験は重要な示唆を与えるだろう。さらに、豪州が2026年のCOP31気候会議の開催を目指していることも、国内政策への注目を高めている。復旧の行方は、もはや州だけの問題ではなく、世界が共有する課題となっている。(原文へ

INPS Japan

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勝利ではなく持久―イランの消耗戦略が鮮明に

【ニューヨークATN=アハメド・ファティ】

イランは、この戦争に古典的な意味で「勝つ」ことを目指しているのではないのかもしれない。むしろ、生き延び、戦争を長引かせ、その代償を他のすべての当事者にとってより高くすることを狙っている可能性がある。

Ahmed Fathi.
Ahmed Fathi.

米国とイスラエルとの紛争が、大規模攻撃による初動の衝撃を越え、より消耗的な段階へと移るなかで、イランから浮かび上がってくる論理は、どうやらそこにあるようだ。ロイター通信は火曜日、イランが決定的な戦場での勝利ではなく、持久力、ミサイルによる圧力、地域のエネルギーの流れへの攪乱を通じて、米国とイスラエルの双方を疲弊させようとする消耗戦を追求していると報じた。(Reuters

これは、強さというより計算に基づく戦略である。イランは軍事的に大きな損失を被り、核関連施設や指揮インフラの一部にも深刻な損害を受けた。それでもなお、戦争を継続させ、そのコストを高く保つのに十分なミサイル能力、国内の結束力、そして地域的な影響力を保持しているように見える。ロイター通信によれば、革命防衛隊は戦場での意思決定に対する統制を強め、イランはさらに戦時体制へと移行しており、少なくとも現時点で国内に大規模な不安定化の兆候は見られない。(Reuters

それは、イランが安心していることを意味しない。危険のかたちが変わったということである。

消耗戦とは、自国が敵を圧倒できないことを理解しながらも、それでも相手を疲弊させることはできると信じる国家の戦略である。イランの現在の計算は、攻撃を耐え抜き、攻撃を続けるのに十分な能力を維持しつつ、戦争の代償を拡大させることで、他方でさらなるエスカレーションを支持する政治的意思を揺るがせることにあるようだ。その構図においては、生き延びること自体が戦略的成果となる。

エネルギー戦線は、その発想の中核にある。AP通信は、この戦争によって、湾岸地域の主要なパイプライン、製油所、輸出ターミナル、海上輸送路が危険にさらされており、世界の原油のおよそ5分の1と液化天然ガスの大きな割合が通過するホルムズ海峡が深刻に混乱していると報じた。地域の供給インフラに長期的な不安定化や損害が及ぶ可能性が市場に織り込まれるなか、ブレント原油は急騰している。(AP News

このことは、弱体化した立場にあっても、イランに一定のてこを与える。イランは、空軍力や精密打撃能力において米国やイスラエルに対抗できないかもしれない。だが、それでもなお、この紛争を世界にとって不快なものにすることはできる。石油市場、海上保険、ガス供給、そして遠く離れた各国の首都におけるインフレ計算を揺さぶる戦争は、もはや単なる軍事的対決ではない。国際的な帰結を伴う圧力戦へと変わるのである。

これは、戦場だけでは、より大きな戦略的争点に決着がつかない可能性があるからこそ重要である。攻撃後であっても、イランの核計画に何がどれだけ残っているのかという重要な問いは残ったままだ。ロイター通信によれば、国際原子力機関(IAEA)は、60%まで濃縮されたイランのウランのかなりの部分がおそらくイスファハンに残っているとみており、査察官はいまだ被害を受けた施設の状況を完全に検証できるだけの立ち入り権限を得ていない。核計画は大きな打撃を受けたが、なお重要な不確実性が残っている。(Reuters

その不確実性は、政治的にはテヘランに有利に働く。イランが残存的な核能力を保持し、ミサイルによる圧力を維持し、さらに広範な経済的コストを課し続けることができれば、敵対国は損害を与えはしたが、決定的な最終結果には至らなかったと主張できる。この地域特有の冷厳な戦略言語においては、それは国内的・政治的には、敗北ではなく「包囲下での持久」として売り込むことが可能になる。

またそれは、イラン国内の体制崩壊が間近に迫っているという外部の期待が見当違いである可能性を説明するものでもある。米国をはじめ外部には、十分な軍事的圧力をかければイラン体制は内側から崩れるはずだという、繰り返し現れる見方がある。だが、外部からの攻撃は、逆に国内規律を強化し、指揮系統をより引き締め、戦時下で異議申し立てをさらに困難にすることもある。ロイターの報道は、革命防衛隊が支配力を強め、爆撃下で国民的連帯が高まるなど、現在の局面がまさにその方向へ進んでいることを示唆している。(Reuters

もちろん、これはイランが勝っているという意味ではない。そうではない。イラン経済は、この戦争段階に入る前からすでに圧迫されていた。軍事的損失も現実のものである。核インフラも損なわれた。だが、消耗戦は、すべての戦線での優位を必要としない。必要なのは、痛みを与え続けるだけの能力と、立ち続けるだけの政治的意思である。

だからこそ、この局面は初動の段階よりも危険になりうる。最初の段階が衝撃の段階だったとすれば、今は持久の段階である。もしイランの戦略の中心がいまや持久にあるのだとすれば、真の勝負を決めるのは、どちらがより強く打つかではなく、どちらが先に疲れるかかもしれない。そして、そうした戦争こそが、しばしば誰もが当初語っていたよりも長引き、より大きな代償を伴い、そしてより不完全なかたちで終わるのである。(Reuters

INPS Japan

Original URL:https://www.amerinews.tv/posts/not-victory-but-endurance-iran-s-attrition-strategy-comes-into-focus

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|2026年国際女性デー|今年の国際女性デーは、次期国連事務総長に女性を選出するよう訴えている

2026年国際女性デー―今年の国際女性デーは、次期国連事務総長に女性を選出するよう訴えている

ニューヨークIPS=アンワルル・K・チョウドリー】

今年の国際女性デー(IWD)を迎えるにあたり、国際社会はなお続く混乱、紛争、そして地球の未来に対する不確実性のただ中にある。こうした時代だからこそ、女性の平等とエンパワーメントは、女性だけに関わる課題ではなく、人類全体、すなわち私たちすべてに関わる問題であることを、改めて思い起こさせられる。この極めて重要な点は、私たち一人ひとりが深く胸に刻まなければならない。

Ambassador Anwarul K. Chowdhury
Ambassador Anwarul K. Chowdhury

・今年の国際女性デー(3月8日)は、国連が次期事務総長として女性を選出することが期待され、またそうあるべき年であるという意味で、特別なものとなった。

・ここで強調しておきたい受け入れがたい現実がある。国連は創設から80年を経たいまなお、一度も女性の事務総長を選出していないのである。80年、9人の男性、そして女性は一人もいない。何という恥ずべきことか、何という情けない現実か。

平等をあらゆる演壇で語る機関が、その頂点において不平等を体現し続けてよいのだろうか。国連の唱える平等の信頼性は、自らを鏡に映したときの姿にかかっている。

・今日の世界における厳然たる否定しがたい現実は、家父長制と女性蔑視がいまなお、平等と平和と正義の世界を目指す人類の願いを遠ざける災厄としてはびこっていることである。世界のどの国も、女性と少女の完全な法的平等を達成していない。

・世界の多くの地域で、女性の権利とジェンダー平等のために何十年にもわたる運動の末に勝ち取られてきた成果を切り崩そうとする新たな動きが見られている。

・女性団体、フェミニスト活動家、そして女性の人権擁護者たちは、差別と不正義に立ち向かう勇気ある声であり続けている。人間の尊厳と人類の進歩を前に進めるうえで、彼女たちの役割は不可欠である。

・私はこれまでの仕事を通じて世界各地を訪れてきたが、そのたびに、平和で包摂的かつ強靱な社会を形づくるうえで、女性のリーダーシップと参加がもたらす変革の力を目の当たりにしてきた。

私たちは常に心に留めておくべきである。平和がなければ開発は不可能であり、開発がなければ平和も実現できない。しかし、女性なくしては、そのいずれも考えられないのである。

UN Photo
UN Photo

2026年の国際女性デーのテーマ「すべての女性と少女のために―権利、正義、行動」は、時宜を得た力強いものである。それは、進歩のためには権利の承認だけでは不十分であり、現実の中で正義と平等を実現するための断固たる行動が必要であることを思い起こさせる。

改めて強調したい。フェミニズムとは、包摂的で、あらゆる可能性を生かし、誰一人取り残さない、賢明な政策のことである。

私はフェミニストであることを誇りに思う。私たちは皆、そうあるべきだ。それこそが、私たちの地球を、すべての人にとってより良い場所にしていく道なのである。

また、この3月8日にあたり、2000年のこの日、私が安全保障理事会議長として、安保理全体による画期的な声明の取りまとめを主導したことを想起したい。それは、同年10月31日にナミビア議長国の下でコンセンサス採択された国連安保理決議1325への道を開く、概念的・政治的な突破口となった。

この国際女性デーにあたり、ジェンダー平等の世界を築くという私たちの決意を新たにしよう。私たち一人ひとりの行動、対話、そして意識の持ち方が、より大きな社会を変えていくことができる。(原文へ

共に変化を実現しよう!!!

アンワルル・K・チョウドリー大使は、元国連事務次長・上級代表。2000年3月の国連安全保障理事会議長として、国連安保理決議1325の発端を築いた人物であり、「平和の文化のためのグローバル運動(GMCoP)」創設者でもある。

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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【国連IPS=タリフ・ディーン】

米国が、国連の条約や国際協定を含む66の国連関連組織から一斉に離脱したことを踏まえると、予測不能なトランプ政権が、将来、国連そのものからも脱退し、1947年の国連・米国本部協定にもかかわらず、国連事務局をニューヨークから追い出す決断に踏み切る可能性はあるのだろうか。

Collage: Thalif Deen
Thalif Deen

66組織からの離脱に加え、米国は国連人権理事会、WHO(世界保健機関)、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)、UNESCO(国連教育科学文化機関)からも離脱した。さらに、正式には脱退していない国連機関に対しても、資金拠出の大幅削減を課している。

では、厳しい批判にさらされている国連は、そう遠くない将来、同じ運命をたどるのだろうか。そうした見方を強めているのが、トランプ大統領と米政府高官による国連への強硬な姿勢である。

国連問題の研究と執筆で知られるスティーブン・ズーンズ博士(サンフランシスコ大学政治学教授)はIPSの取材に対し、国連に最も敵対的だった米大統領でさえ、ロナルド・レーガンやジョージ・W・ブッシュの時代を含め、米国の利益を前進させるうえで国連が果たす重要性を認識していたと語った。特定の事例で法原則に反する行動を取ることがあっても、国連システム全体を維持する意義は理解されていた、という。

同様に米国は、いくつかの政策や、場合によっては組織の使命そのものに同意できない場合であっても、影響力を行使するために、さまざまな国連機関に参加してきたと、ズーンズ氏は指摘する。

しかし同氏は、「トランプ政権は、第二次世界大戦後に築かれた国際法秩序そのものを拒否しているように見える。とりわけベネズエラ攻撃以降の発言は、19世紀の帝国的特権への回帰であり、現代国際法の否定に映る。」と語った。

United Nations Headquarters Photo:Katsuhiro Asagiri
United Nations Headquarters Photo:Katsuhiro Asagiri

その結果として、「トランプ氏が実際に米国を国連から脱退させ、国連をニューヨークから追い出す可能性はあり得る。」とズーンズ氏は語った。

トランプ氏は昨年9月の国連総会演説で、「国連の目的は何なのか。潜在力にまったく見合っていない」と発言した。さらに、国連を時代遅れで非効率な組織だと切り捨て、「私は7つの戦争を終わらせ、各国の指導者と直接対処してきた。合意の最終化を手伝うと、国連から電話がかかってきたことは一度もない。」と誇示した。

シートン・ホール大学外交・国際関係大学院のマーティン・S・エドワーズ准学部長(学務・学生担当)はIPSの取材に対し、こうした発言は「非効率の削減」や「多様性との闘い」を掲げながら、トランプ支持層に訴える刺激的な言葉で包まれた「疑わしい言説」だと述べた。

またエドワーズ氏は、外交問題を利用して、なお成果を示せていない国内政策から有権者の関心をそらす狙いもあると指摘した。実際、具体的なフォローアップ文書が国連事務総長のもとに届いていないことが、それを裏づけているという。大統領が最大限の要求を掲げる一方、最終的に得られる成果は限られる――そうしたパターンの繰り返しに当てはまる、と述べた。

ただし問題はそれにとどまらない。エドワーズ氏は、次の二点で深刻だと語る。
① この方針は、米国の国連における影響力を高めるどころか、むしろ削り続ける。安定した外交関係は信頼性に基づくが、米国はその蓄えを浪費しており、空白には他国が入り込む。
② これは有権者向けのSNS投稿としては響くかもしれないが、実務上は理にかなわない。ホワイトハウスが求めているのは、国連運営のあらゆる項目に対する「項目別拒否権(line-item veto:予算の個別項目ごとに拒否できる権限)」だ。しかし分担金はアラカルト・メニューではない、と同氏は述べた。

さらに、市民社会組織の世界連合CIVICUSの事務局長マンディープ・S・ティワナ氏はIPSの取材に対し、トランプ政権による国際機関からの離脱・後退は、第二次世界大戦の惨禍を乗り越えるため国連創設の枠組みを構想し、米国にニューディール政策をもたらしたフランクリン・D・ルーズベルト大統領の遺産への攻撃だと語った。

「影響を受けた国際機関の多くは、米国人の血と汗と涙によって築かれてきた。そこからの撤退は、彼らの犠牲への侮辱であり、平和、人権、気候変動、持続可能な開発をめぐる数十年の多国間協力を後退させる。」とティワナ氏は述べた。

一方、国連への攻撃は止む気配がない。

米国の国連大使マイク・ウォルツ氏は、ブライトバート・ニュースのインタビューで「国連の支出の約4分の1は米国が負担している。」と述べた。「資金は有効に使われているのか。いまはノーだ。本来の目的ではなく、いわゆる“woke”(進歩派的と批判される多様性・社会正義の政策を指す俗語)的なプロジェクトに使われている。国連が本来やるべきこと、トランプ大統領が求めること、私が求めること――平和に焦点を当てることだ」

歴史的に米国は国連最大の資金拠出国であり、通常予算の約22%、PKO(国連平和維持活動)予算では最大約28%を負担してきた。

それでも皮肉なことに、米国は最大の滞納国でもある。国連総会の第5委員会(行政・予算)によれば、加盟国が未払いとしている義務的分担金は、現行予算期間の総額35億ドルのうち18億7000万ドルに上る。

Marco Rubio Credit: State Department.
Marco Rubio Credit: State Department.

ニューヨーク選出で、かつて国連大使候補にも挙がったエリーズ・ステファニク前下院共和党会議議長は、「国連について米国人が見ているのは、腐敗し、機能不全で、麻痺した組織であり、憲章にうたわれた平和・安全保障・国際協力という創設原則よりも、官僚主義、手続き、外交上の体裁に縛られている」と述べた。

また国連への間接的な批判として、マルコ・ルビオ国務長官はこう述べた。
「私たちが『国際システム』と呼ぶものは、透明性に欠ける国際機関が数百も乱立し、権限が重複し、活動も重複している。成果は乏しく、財務と倫理のガバナンスも不十分だ。」

ルビオ長官は、かつて有用な機能を果たした機関でさえ、非効率な官僚機構となり、政治化した活動の舞台となり、あるいは米国の国益に反する道具になってきたと述べた。さらに、「これらの機関は結果を出さないだけではない。問題に対処しようとする者の行動を妨げている。国際官僚機構に白紙小切手を切り続ける時代は終わった。」と宣言した。(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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【ロンドンIPS=アンドリュー・ファーミン】

衛星画像は、北ダルフール州エル・ファシールで遺体が山のように積み上げられ、集団埋葬や火葬を待っている様子を捉えている。即応支援部隊(RSF)の民兵は、自らの犯罪の規模を隠そうとしているという。RSFが11月にエル・ファシールを制圧して以降、市内では最大15万人の住民が行方不明のままだ。最も控えめな推計でも、6万人が死亡したとされる。アラブ系民兵であるRSFは、非アラブ系住民を都市から排除し、民族浄化を進めたとされる。今回の虐殺は、2023年4月に軍指導者同士の権力闘争をきっかけに始まった、RSFとスーダン国軍(SAF)の戦争における、最新の凄惨な局面である。

Map of Sudan
Map of Sudan

残虐行為は双方が行ってきた。処刑、超法規的殺害、性暴力などが報告されている。正確な数字の把握は難しいが、少なくとも15万人が殺害されたとの推計もある。国内避難民は約900万人に達し、さらに約400万人が国境を越えて逃れた。およそ2500万人が飢饉の危機に直面している。

市民社会や人道支援関係者は可能な限り対応しているが、支援に携わる人々自身も危険にさらされている。殺害や暴力、誘拐、拘束の脅威が常につきまとう。非常命令は、市民社会組織に官僚的な制約を課し、支援活動を妨げるだけでなく、集会・表現・移動の自由も制限している。部隊が支援物資の搬入を阻む例もある。

紛争の報道もまた、困難で危険を伴う。放送局や印刷設備などのメディアインフラの多くが破壊され、多くの新聞が発行停止に追い込まれた。さらに双方が記者を標的にしているため、多くが国外へ逃れざるを得なくなっている。大規模な偽情報キャンペーンも、現地の実態を見えにくくしている。その危険を象徴するのが、ザムザム避難民キャンプの報道官モハメド・ハミス・ドゥーダである。国際メディアに状況を伝えるためエル・ファシールに残っていたが、RSFが侵攻した際に行方を捜され、殺害された。

世界は目を背ける

スーダンは「忘れられた戦争」と呼ばれることがある。だが、より正確には、世界がそれを「無視することを選んでいる」と言うべきだ。そして、その状況は、いくつかの有力国にとって都合がよい。

アラブ首長国連邦(UAE)は、RSFの最大の支援国だと指摘されている。UAEは関与を否定し続けているが、UAEで製造された、あるいは同盟国からUAEに供給されたとみられる武器が、RSF支配から奪還された現場で見つかったと報じられている。こうした支援がなければ、RSFはすでに戦況で不利に追い込まれていた可能性がある。

近年、UAEは複数のアフリカ諸国で影響力の拡大を図ってきた。アフリカ各地で港湾整備を進め、紅海に面するスーダン沿岸にも港を建設する計画があるとされる。スーダンでは大規模な農業投資を行い、同国で採掘される金の多くがUAEに流れているとも報じられている。UAEは、人的犠牲の大きさにかかわらず、RSFが実権を握ることが影響力の確保と利益の維持につながると判断しているように見える。

これに対し、スーダン政府はロシアとの関係強化に動いている。スーダンがロシアに恒久的な紅海海軍基地の整備を認める可能性があるとも伝えられている。

UAEが国際的な圧力をほとんど受けないのは、英国や米国などUAEと緊密な西側諸国が、同国の役割を過小評価しているためだと指摘されている。英国政府は、供与した武器がRSFに移転されていることを認識しながら、UAEへの武器供給を続けているとされる。さらに内部告発者は、UAEを守るために、スーダンでジェノサイドが起きる可能性に関する警告がリスク評価から削除されたと主張している。
欧州連合(EU)と英国は、エル・ファシールでの虐殺を受けてRSF幹部4人に制裁を科した。米国も追加制裁を検討していると報じられているが、措置はUAE政府の関係者には及んでいない。

英国がスーダン案件を主導する常任理事国である国連安全保障理事会も、機能不全が続いている。ロシアは、英国が提出する決議案については拒否権を行使すると示唆している。こうした中、英国は6月、非常任理事国として参加するアフリカ諸国から「主導役を引き継ぐ」との申し出を受けながら、これを拒否した。交渉の余地を広げ得た提案だったとみられる。

地域で影響力を持つ国としては、エジプトがスーダン政府を強く支持し、サウジアラビアも一定の支援姿勢を示している。エジプト、サウジ、UAE、米国は「クアッド」と呼ばれる枠組みで協議を行っている。利害は競合するが、9月には一時、希望が見えた。クアッドが「3カ月の人道停戦」と、その後の「9カ月での文民統治への移行」を含む計画を仲介したためである。双方は計画を受け入れたものの、RSFが戦闘を継続したため、スーダン政府は提案を拒否するに至った。

圧力と責任追及

戦闘停止が実現するかどうかは、米国の外交姿勢に左右される可能性がある。ドナルド・トランプ大統領は最近、紛争への関心を強めたように見える。11月にサウジの実力者ムハンマド・ビン・サルマン皇太子がホワイトハウスを訪問したことが、その背景にあるのかもしれない。

トランプ氏は、ノーベル平和賞を強く意識し、別の紛争を終結させたとアピールしたいのだろう。しかし、米政府がUAEに圧力をかける意思を示さない限り、進展は見込みにくい。圧力の手段としては、トランプ氏が他国との交渉で用いてきた関税がある。実際、現政権はUAEに対し、最も低い税率である10%の関税を適用しており、UAEに対して強い圧力をかけていないことを示している。

活動家たちは、紛争におけるUAEの役割により多くの注目を集めようとしている。分かりやすい焦点の一つがバスケットボールだ。米プロバスケットボール協会(NBA)はUAEと大規模で拡大傾向にあるスポンサー契約を結んでいる。活動家側は、こうした提携がUAEによる「スポーツウォッシング(スポーツを通じたイメージ向上)」の一部になっているとして、NBAに提携終了を求めている。この働きかけが、米国の政策課題の中でスーダンの優先度を引き上げる一助となる可能性がある。

国際社会には殺害を止める力がある。しかし、そのためにはまず、UAEと西側同盟国が結果として暴力を可能にしているという側面を認めなければならない。スーダン国内外の当事者は、狭い自己利益の計算を脇に置く必要がある。UAEとその同盟国、そしてクアッドの他の国々には、実効性のある停戦を仲介するため、より強い圧力をかけることが求められる。停戦を和平への第一歩と位置づけ、交戦当事者に対する影響力を用いて、合意を確実に履行させるべきである。(原文へ

アンドリュー・ファーミンは、CIVICUSの編集主幹であり、CIVICUS Lensの共同ディレクター兼ライター、「State of Civil Society Report」の共同著者である。For interviews or more information, please contact research@civicus.org

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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