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米国、国連の核実験禁止条約決議に反対し孤立

【国連IPS=タリフ・ディーン】

米国は包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効を求める国連決議案に反対票を投じ、国際的な合意から一線を画した。この行動は、トランプ大統領が先月、33年ぶりに核実験を再開する意向を表明した直後のものである。国連総会第1委員会での採決では、ほぼすべての加盟国が賛成し、米国はただ一国で反対した。

決議は賛成168票、反対1票(米国)、棄権3票(インド、モーリシャス、シリア)という圧倒的多数で採択された。トランプ政権の第1期には米国は棄権し、それ以前は賛成票を投じていた。

Jacqueline Cabasso, Executive Director, Western States Legal Foundation. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, INPS Japan.
Jacqueline Cabasso, Executive Director, Western States Legal Foundation. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, INPS Japan.

米国の核兵器政策を監視・分析する団体「ウエスタン・ステーツ・リーガル・ファウンデーション(Western States Legal Foundation)」のジャッキー・カバッソ事務局長はIPSの取材に対し、混乱の発端はトランプ氏の事実誤認に基づくSNS投稿だったと語った。

トランプ氏は「他国の実験計画に対抗し、国防省(戦争省)に対し核兵器実験を同等の水準で開始するよう指示した。」と書き込んだという。

カバッソ氏は「米国がCTBT支持の年次決議で初めて反対票を投じたことは、米国の今後の意図に深刻な疑念を投げかける」と警告した。

トランプ氏は「核爆発実験」を意味するのか、「ミサイル試験」なのか、あるいは別のものを指すのか明言していない。ロシアと中国は爆発的な核実験を行っておらず、米国が対抗措置を取る根拠はない。両国ともミサイル試験は実施しているが、それは米国も同様である、とカバッソ氏は指摘した。

実際、米国は11月5日に非核弾頭の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の定例試験を実施した。ミサイル試験を管轄するのは国防省(現・戦争省)であるが、核爆発実験の準備を担当するのはエネルギー省である。

An unarmed Minuteman III intercontinental ballistic missile launches during an operational test on February 20, 2016, Vandenberg Air Force Base, Calif. /Air Force Nuclear Weapons Center Public Affairs.
An unarmed Minuteman III intercontinental ballistic missile launches during an operational test on February 20, 2016, Vandenberg Air Force Base, Calif. /Air Force Nuclear Weapons Center Public Affairs.

カバッソ氏によれば、トランプ氏が10月31日に収録され11月2日に放映された『60ミニッツ』のインタビューで、ロシアと中国が「地下深くで秘密裏に爆発的核実験を行っている」と根拠のない主張をしたことで、状況はいっそう混乱したという。

国連総会で唯一「反対票」を投じた米国は、投票理由を説明する文書の中で次のように述べた。「本決議の複数の段落が米国の政策と整合しておらず、あるいは政策見直しの途上にあるため反対した。米国は現在、CTBTの批准を追求しておらず、したがって批准や発効を求める呼びかけを支持することはできない。」

他の核保有国では、ロシア連邦、中国、フランス、英国、イスラエル、パキスタンが賛成票を投じた。インドは棄権し、北朝鮮は投票を行わなかった。こうして米国は、“ならず者(rogue)”核保有国として際立つ結果となった。

Jonathan Granoff
Jonathan Granoff

「グローバル・セキュリティ・インスティテュート(Global Security Institute)」のジョナサン・グラノフ会長はIPSの取材に対し、「この声明を『愚かだ』と批判するだけでは十分ではない」と前置きし、次のように指摘した。「核実験の再開は、NPT(核不拡散条約)の無期限延長を実現するために交わされた約束に反し、誠実に軍縮を追求する義務を踏みにじるものである。さらに、より高度な核兵器開発を正当化し、過去の実験によって得た米国の優位性を自ら手放し、核兵器の使用と威嚇を国際社会における“正当な意思表示の手段”として再び位置づけ、使用すれば敵国のみならず使用者自身をも破壊しかねない兵器開発への支出を増大させ、結果として国際的な恐怖と不安定を一層煽ることになる。」と述べた。

そしてグラノフ氏は、次のように強調した。「私たちは、信頼と協力を構築しなければならない。海洋や気候を守り、世界経済から年間2兆~4兆ドルを奪っている腐敗を根絶し、より危険な新兵器の開発を止め、次なるパンデミックへの備えを怠らず、貧困をなくし、人間の安全保障という理性を取り戻す必要がある。狂気や誤算、あるいは機械や人間の過ちによって、私たちは文明を自ら破壊する危険を招いてはならない。」

カバッソ氏はさらに説明を加え、1980年ウィーン条約法条約では、条約に署名した国はその「目的と趣旨を損なう行為を行わない義務」を負うと指摘した。

米国、ロシア、中国はいずれもCTBTに署名しているが、批准していない。ロシアは2023年、米国との均衡を保つため批准を撤回した。3か国はこれまで爆発的核実験のモラトリアムを維持してきたが、トランプ氏の発言と米国の投票行動は、この約束を揺るがせるものとなっている。

この危険な状況を受け、ロシアのプーチン大統領は核実験の実施を検討するよう政府に指示した。クレムリン報道官ドミトリー・ペスコフ氏はタス通信に対し、「そのような実験準備を始める是非を判断するには、米国の真意を完全に理解するのに必要なだけの時間がかかる。」と述べた。

カバッソ氏は「私たちは核リスクの低減と核兵器の廃絶を訴え続ける中で、爆発的核実験という選択肢が再び議題に上らないよう、警戒を怠ってはならない」と警告した。

そして「米国は方針を転換し、爆発的核実験の永久停止を確約し、包括的核実験禁止条約を批准し、他の核保有国にも同様の行動を促すべきだ。これは国際平和と安全保障の長期的展望に対する大きな貢献となる。」と強調した。

ワシントンの「アームズ・コントロール・アソシエーション(Arms Control Association:ACA)」によれば、もし米国が核実験を再開すれば、ロシア、北朝鮮、さらには中国も追随する可能性が高く、核軍拡競争が再燃し、世界的な緊張が一層高まる恐れがあるという。

トランプ氏の発言を受け、米ネバダ州選出のディナ・タイタス下院議員(民主党)は、核実験再開を阻止するための法案「RESTRAIN法(H.R.5894)」を提出した。この法案は、爆発的核実験を禁止し、トランプ政権による核実験実施への資金投入を禁止する内容である。

Senator Edward Markey/ Wikimedia Commons
Senator Edward Markey/ Wikimedia Commons

また、マサチューセッツ州選出のエド・マーキー上院議員(民主党)は、上院に同趣旨の「核実験禁止法案(S.3090)」を提出し、CTBTの批准を上院に求めている。

ACAは声明で、「今週中に議員へ働きかけ、爆発的核実験の再開を阻止するよう求めてください。『RESTRAIN法』および『核実験禁止法案』への共同提案を要請します」と呼びかけた。

ACAは長年にわたり核実験停止運動の最前線に立ってきた団体である。
「トランプ氏が核実験再開を訴えて以来、私たちは直ちに行動を起こし、メッセージを発信し、議会内の反対勢力を結集し、他の市民社会組織と連携して、いかなる国による核実験再開にも反対する国際的な世論を喚起してきた。」(原文へ

This article is brought to you by IPS NORAM in collabolation with INPS Japan amd Soka Gakkai International, in consultative status with the UN’s Economic and Social Council (ECOSOC).

INPS Japan

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米国大統領は「抗弁しすぎ」、とでも言うべきか

【ポートランドIPS=ジョセフ・チャミー】

米国史上最長となった政府機関の閉鎖が終わり、ホワイトハウス、議会、メディア、そして国民の関心は、ジェフリー・エプスタイン関連文書の公開という、極めて政治色の濃い問題へと移った。文書公開に抵抗するホワイトハウスの姿勢は、シェイクスピア『ハムレット』の一節――「抗弁すればするほど怪しい(doth protest too much, methinks)」――を思わせる。多くの国民にとって、大統領が強く否定すればするほど、かえって疑念が深まっている。

10月に実施されたマリスト大学の調査では、米国民の77%が文書の全面公開を支持し、13%が一部公開を支持、「公開すべきでない」は9%にとどまった(図1)。

Source: Marist poll.


別の調査でも、67%が政府の隠蔽を疑い、61%が文書には大統領にとって不都合な情報が含まれていると考えている(図2)。

Source: Polls of The Economist/YouGov, the Washington Post, and University of Amherst.

さらに、

  • 63%が「大統領は重要情報を隠している」と回答
  • 61%が大統領の対応を不支持
  • 53%が「文書が封印されているのは大統領の名前が含まれるため」と認識

国民の不信感は強まる一方である。

民主党議員に加え、共和党の一部も公開法案を支持し、下院での採決に向けた動きが加速している。超党派議員グループは、文書公開は政治的都合ではなく真実を優先する道義的責務であり、千人を超える被害者への正義の回復につながると主張する。さらに、エプスタイン事件の被害者たちも文書公開を求める広告に出演し、議会への直接的な働きかけを強めている。

大統領が軟化の姿勢を見せ始めた背景には、国民の圧倒的支持に加え、下院ではすでに可決に必要な票が確保されているとの政治的判断もある。しかし、大統領は本来、議会の承認なしに自ら文書を公開する権限を持っていた。

最新の報道では、ホワイトハウスは現在「パニック状態」にあるとされる。大統領は民主党の賛成派議員だけでなく、共和党内で公開支持に回った議員にも激しく反発している。

事態をさらに複雑にしているのは、エプスタイン遺産から新たに公開された文書に大統領への言及が多数含まれている点である。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の分析では、2324件のメールスレッドのうち1600件以上で大統領の名前が確認された。

それでも大統領は公開に反対し続け、「これは民主党がでっち上げた偽りの物語だ」と主張する。支持者は「中傷目的の捏造にすぎない」と反論している。

エプスタイン関連文書とは、性犯罪で有罪となったジェフリー・エプスタインおよび、数百人の子どもを犠牲にした児童性虐待組織に関する大量の文書を指す。

2019年8月10日、エプスタインは性的人身売買容疑で拘留中に自殺したと発表された。司法長官は当初、この自殺に疑念を示し、「前代未聞の一連の失態」と述べた。これを受け、エプスタインが他者を巻き込む証言を阻止するために殺害されたという陰謀論が急速に広まった。

2011年、エプスタインはギレーヌ・マクスウェルに宛てた書簡で「吠えなかった犬、それがトランプだ。(被害者)は彼と私の家で何時間も過ごした」と記し、2018年には「彼(トランプ)を倒せるのは私だ。ドナルドがどれほど汚れているか私は知っている」
と書き残していた。

エプスタインの通信文には大統領の名が度々登場し、大統領がエプスタインの活動を把握していた可能性が示唆される。かつて大統領はエプスタインを「素晴らしい男」と称賛していたが、現在は「ほとんど接点はなかった」と主張する。

2025年半ばの全国調査では、46%が「大統領はエプスタインの犯罪に関与していた」と考えていた。

文書公開への支持は高まり続け、事実解明と正義実現を求める声は強さを増している。

数カ月にわたる大統領側の妨害と、民主党議員(共和党4名を含む)の強制上程請求を経て、下院は必要数の218署名を達成し、11月18日、下院は法案を427対1で可決した。続く上院も全会一致で可決し、法案は大統領の判断に委ねられた。

その後、大統領は、これまで反対してきた立場から突然かつ明確に転換し、エプスタイン関連文書の公開を支持する姿勢を示した。大統領は共和党議員に対し法案を支持するよう呼びかけ、「隠すものは何もない。民主党のデマから前へ進む時だ」と述べた。

The western front of the United States Capitol. The Neoclassical style building is located in Washington, D.C., on top of Capitol Hill at the east end of the National Mall. The Capitol was designated a National Historic Landmark in 1960.
The western front of the United States Capitol. The Neoclassical style building is located in Washington, D.C., on top of Capitol Hill at the east end of the National Mall. The Capitol was designated a National Historic Landmark in 1960.

また、この転換には、政権が今後の文書公開の時期や範囲を管理する余地を残す狙いもあるとみられる。事態をさらに複雑にしているのは、大統領が司法長官に対し複数の民主党議員の捜査を求めており、これらの捜査が文書公開を差し止める、あるいは遅らせるための正当化材料として利用されている点である。

その後、法案は大統領の署名か拒否権の行使を待つ段階にある。署名したとしても、文書がいつ公開されるか、また完全版が公開されるかは依然として不透明だ。

大統領は「議会が通すなら署名する」と述べているが、これまでの翻意を踏まえれば、署名前に拒否権を行使する可能性も否定できない。しかし、議会は上下両院の3分の2で拒否権を覆すことができるため、拒否の選択肢は現実的ではないとみられている。

もしエプスタイン関連文書が全面的に公開されれば、その内容は米国大統領制史上最大級のスキャンダルとなる可能性がある。そうなれば、大統領は『ハムレット』の一節―「さらば、さらば、さらば。私を忘れるな」
―とでも言わざるを得ない状況に追い込まれるかもしれない。(原文へ

ジョセフ・チャミーは国連人口部の元ディレクターであり、人口問題に関する多数の著作を持つコンサルティング人口学者。近著に『Population Levels, Trends, and Differentials』がある。

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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クルバン・フサイン卿、「ユーラシア政策評議会」を創設 中央アジアへの関心高まる中

【ロンドンLondon Post=ルビー・ハイダー】

世界で戦略的重要性が高まる中央アジアをめぐり、英国の関与を深化させる新たな枠組みとして「ユーラシア政策評議会(Eurasia Policy Council=EPC)」が上院で正式に発足した。EPCは、中央アジアおよび広範なユーラシア地域の地政学、経済、安全保障、気候問題に取り組む独立・非党派のシンクタンクである。

London Post

発足式はクルバン・フサイン卿が主催し、貴族院・庶民院議員、英国の現役・元外交官、オックスフォード大学やSOAS、キングス・カレッジ・ロンドンの研究者、エネルギー・鉱業・インフラ企業の幹部、国際NGO関係者、主要メディアなど幅広い参加者が集まった。

London Post
London Post

さらに、トルコ、アゼルバイジャン、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、イランから政府代表団が出席し、ロンドンと欧州連合(EU)をユーラシア諸国と結ぶ実質的な対話の場としてEPCが機能していく姿勢を明確に示した。

フサイン卿は開会の挨拶で、地政学的緊張、脆弱なサプライチェーン、そして深刻化する気候の影響が重層的に広がる現状を踏まえ、EPC設立の重要性を強調した。

London Post
London Post

「ユーラシアは、大国間競争、経済の不安定化、気候変動という世界が直面する最も重大な課題が交差する地点にあります。」と述べ、「ユーラシア政策評議会は、知的誠実さと尊厳、そして平和への共通の意思を土台に、複雑な問題に取り組む中立で専門的な場となるでしょう。」と語った。

London Post

英国と中央アジアの関係強化を訴えてきたアフザル・カーン下院議員は、EPCを「時宜を得た不可欠な取り組み」と評価した。「多国間主義が揺らぐ現在、EPCはエネルギー安全保障、重要鉱物、国際秩序の将来に不可欠な地域との関係を強化する役割を担うはずです。」と語った。

London Post

ユーラシア・中東政策の専門家であるサルマン・シェイク氏は、地域の経済的潜在力に言及した。「ユーラシアは、再生可能エネルギー、レアアース、新たな輸送回廊のハブとして台頭しています。EPCは、競争ではなく協力を基調とした持続的な成長モデルを後押しするでしょう」と述べた。

乾燥地域の気候安全保障を専門とするロバート・ハミルトン博士は、環境要因が地域の安定を揺るがす中心的課題になりつつあると警鐘を鳴らした。「アムダリヤ川・シルダリヤ川流域の深刻な水不足、乾燥地域の気候安全保障を専門とするロバート・ハミルトン博士は、環境要因が地域の安定を揺るがす中心的課題になりつつあると警鐘を鳴らした。「アムダリヤ川・シルダリヤ川流域の深刻な水不足、天山山脈パミール高原で進む氷河後退、そして急速に進むエネルギー転換――これらの環境ストレスは、すでに地域の不安定化を促す主要因となっています。EPCが気候レジリエンスを議題の中心に据えたことは、先見性に富んだ重要な一歩です。」と語った。

評議会は、次の4つの柱を掲げている。

  • 地政学・経済動向に関する査読付き研究
  • 英国・EUとユーラシア諸国の間の高位外交およびトラック1.5対話
  • 持続可能な投資とグリーン技術移転の促進
  • 越境水管理、再エネ、防災など、気候レジリエンス強化
London Post

イベントの締めくくりとして、共同創設者のラザ・サイード氏とシャブナム・デルファニ教授は次のように語った。「今回の発足は、ユーラシアを『遠い周縁』ではなく、地球規模課題に取り組む不可欠なパートナーとして位置づける、英国と欧州の継続的な関与の始まりを示すものです」。

EPCは2026年春に中央アジアの水安全保障と協調ガバナンスに関する初の旗艦レポートを公表し、来秋にはロンドンで初の年次会議を開催する予定である。

London Post
London Post

黒海から中国西部国境に至る広大な地域で競争が激化し、気候ストレスが経済や社会構造を変えつつある中、ユーラシア政策評議会は英国外交における新たな重要アクターとして姿を現している。独立した分析と信頼構築の対話の場を提供する役割が期待されている。(原文へ

London Post

INPS Japan/ London Post

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ローマ教皇レオ十四世による、ベレン・アマゾン博物館に集うグローバル・サウス諸教会への挨拶

【ヴァチカン/ベレンIPS=レオ十四世】

COP30に参加した兄弟である枢機卿たちの預言者的な声に心を合わせ、ここベレンのアマゾン博物館に集ったグローバル・サウスの各個別教会の皆さんにご挨拶申し上げます。

枢機卿たちは、言葉と行動を通して、アマゾンがなお「創造の生ける象徴」であり、緊急に守られるべき存在であることを世界に示しました。

皆さんは、絶望ではなく希望と行動を選び、協働するグローバルな共同体を築いてこられました。これは確かな前進ですが、まだ十分とは言えません。希望と決意は、言葉や願いだけでなく、具体的な行動によって新たにされなければなりません。

いま創造は、洪水、干ばつ、嵐、そして容赦ない熱波の中で苦しみの声を上げています。気候変動によって、三人に一人が深い脆弱な状況に置かれています。彼らにとって気候変動は遠い脅威ではありません。彼らを顧みないことは、私たちの共通の人間性を損なうことになります。

地球温暖化の上昇を一・五度以下に抑える時間はまだ残されていますが、その「窓」は急速に閉じつつあります。神の創造物の管理者として、私たちは、神から託された賜物を守るため、信仰と責任の精神をもって迅速に行動するよう求められています。

パリ協定は、人々と地球を守るために重要な前進をもたらし、いまも最も有効な枠組みであり続けています。しかし正直に言うなら、失敗しているのは協定ではなく、私たちの対応の方です。不足しているのは、一部の政治的意思にほかなりません。

本当のリーダーシップとは奉仕であり、実際に違いを生み出すだけの規模で支援を提供することです。強い気候行動は、より強固で公正な経済を生み出します。力強い気候政策は、より安定し、公正な世界への投資なのです。

COP30 IPS
COP30 IPS

私たちは、各国の科学者、指導者、そして多様な信仰の牧者たちと共に歩んでいます。私たちは創造の守り手であり、その恵みを奪い合う者ではありません。ともに、世界に明確なメッセージを送りましょう──パリ協定と気候協力を揺るぎなく支持する国家が、連帯して立ち上がっているというメッセージを。

このアマゾン博物館が、人類が分断や否認ではなく、協力を選んだ場所として記憶されますように。

神の創造物を守ろうと尽くす皆さんの働きのうえに、神の祝福がありますよう祈ります。
父と子と聖霊のみ名によって。アーメン。

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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ヒマラヤを覆う悲劇と無関心―ブラックカーボンと永久凍土融解を黙認するネパール

【カトマンズNepali Times=カナック・ディキシット】

気候学者でなくとも、ネパールが人新世の「大いなる物語」において、その責任を十分に果たしていないことは明らかである。タライ平原からヒマラヤ山脈へと連なるこの「傾斜の国」は、地球温暖化の温度計である。
Credit: United Nations
Credit: United Nations

国民は環境と気候の崩壊を日々目撃しているが、進行する危機の前に沈黙している。科学的知見と生活の実体験をもとに、ネパールこそCOP30(ブラジル・ベレン)で主導的な役割を果たすべき国である。

しかし今週始まったサミットで、ヒマラヤと南アジアの文化、経済、人々の暮らしにとって極めて重要な二つの気候関連課題が議論されるかは疑わしい。

ブラックカーボンと「南アジアのブラウンクラウド」

第一の課題は、空気中に浮遊する微小粒子からなるブラックカーボン、すなわち「南アジアのブラウンクラウド」である。これは越境的な健康被害をもたらすだけでなく、雪氷の反射率を下げる「アルベド効果」により、ヒマラヤの融雪を著しく加速させることが科学的に明らかになっている。

Kanak Dixit.
Kanak Dixit.

それにもかかわらず、ネパール政府は近隣諸国にこの問題の深刻さを訴えきれていない。筆者は2014年、『アウトルック』誌に寄稿し、SAARC首脳会議の際にドゥリケルで北を望んだモディ首相が、わずか30キロ先のジュガル・ヒマール連峰を見られなかった理由を指摘した。

彼の視界は、ラホールやデリー地域から運ばれてきた汚染層に遮られていた。この会議は、ネパールがインドとパキスタンの両首相に対し、ヒマラヤの斜面に降り積もるスモッグや煤の多くが、シンド州、パンジャーブ州、ハリヤナ州、西ウッタル・プラデシュ州、デリー首都圏などで発生し、西風に乗って運ばれてくることを伝える絶好の機会だった。

ネパール国内の森林火災やカトマンズ盆地の汚染も一因だが、秋から春にかけて地域を覆う濃い煙霧の大半は越境的なものである。昨年、人為起源の微粒子はベンガル湾を越えてスリランカやモルディブ上空にまで達した。
煤粒子は氷河の融解を加速させ、インフラや公衆衛生に影響を及ぼしているが、最も目に見える影響は観光業である。ネパールの経済は観光に大きく依存しており、その魅力の多くは雪をいただく山々の眺望にある。アンナプルナが見えないなら、旅行者はなぜポカラを訪れるだろうか。

ナガルコットのホテル業者は「2025年、日の出と日の入り以上のナガルコットを」と題したキャンペーンを始めた。巧妙な標語だが、エベレストからアンナプルナまで見渡せるはずの絶景が、今や一年の大半を茶色い煙霧に覆われている現状への皮肉な応答である。

南アジアの気候危機における「警鐘の国」として、ネパールはパキスタンやインドとの緊張関係を超えて外交的自信を持ち、行動を起こすべきだ。いまこそ「ヘイズ外交(haze diplomacy)」を展開すべき時である。

永久ではない凍土

永久凍土は、一般に北極や南極、シベリア、アラスカの現象として知られてきた。しかし高山地帯でも、標高の高い場所では地中が通年凍結しているのが自然である。ヒマラヤでは雪原や氷河だけでなく、凍結した水分が岩や礫を固め、斜面を安定させている。だが地球温暖化により、山腹を結びつけていた凍土が溶け始めている。これまで高所に封じ込められていた岩屑が、いま次々と崩れ落ちているのだ。

ポカラ盆地とアンナプルナ山麓まで続くセティ川流域は、重力と地質のせめぎ合いを観察する最良の場所である。約700年前、古アンナプルナⅣが崩壊して堆積物を生み出し、その上にポカラの町が築かれた。だが崩落した岩塊の多くはいまもアンナプルナⅣ周辺に残り、温暖化によってその結合が緩みつつある。

国際山岳総合開発センター(ICIMOD)の2024年報告書によれば、高地アジア一帯で永久凍土が融解している。山塊やモレーン(堆石堤)の崩壊、氷河湖決壊洪水、地下水涵養の減少、ガンジス・インダス・ブラマプトラ河の冬季流量低下など、気候崩壊の連鎖的影響が顕著になっている。

ヒマラヤ全域で永久凍土によって封じ込められている岩屑の量は、いまだ正確に把握されていない。危険が高まっているにもかかわらず、高速道路や水力発電、住宅、観光インフラなどの建設が加速している。COP会議では海面上昇や氷河後退が議題に上るが、ヒマラヤの永久凍土融解にはほとんど関心が払われていない。

融ける地中と連鎖する災害

2024年9月、『ネパール・タイムズ』紙に掲載されたウィルフリード・ヘーベルリとアルトン・C・バイヤーズの論考は、近年の山体崩壊やモレーン崩落による土石流災害の多くが、永久凍土の融解によって引き起こされたと指摘した。彼らは、セティ(2012年)、チャモリ(2021年)、ビレンドラ・タル(2023年)、シッキム(2023年)、タメ(2024年)、バルン(2017年)、メラムチ(2021年)などで発生した雪崩や洪水が、凍結地盤の融解に起因すると述べている。

Imja Glacier near Mt Everest has turned into a big lake in the past 20 years. Photo: Kiril Rusev via Nepali Times. Used with permission.
Imja Glacier near Mt Everest has turned into a big lake in the past 20 years. Photo: Kiril Rusev via Nepali Times. Used with permission.

2023年10月4日、シッキム州サウス・ロナク氷河湖の側堤が崩壊し、100人以上が死亡、10億ドル規模のチュンタン・ダムをはじめ住宅や道路、農地が流失した。この災害も、永久凍土を失った側堤を襲った雲の破裂(クラウドバースト)が原因だった。

永久凍土に懐疑的な声は今後もあろうが、気候変動否定論と同様に、もはや現実を直視しなければならない。ヒマラヤの峰々は、もはや太古の昔からの「不動の番人」ではない。

人類が放出した膨大な温室効果ガスによって、山々でさえも崩れ落ち始めている。そして、永久凍土に封じ込められていた未知の細菌やウイルスの問題にも、まだ私たちは向き合っていない。

政治の沈黙が招く地球的危機

永久凍土の消失は、異常気象、干ばつ、集中豪雨、平野部の熱波などを含む気候崩壊の累積的影響を強め、人々の生活と生計を脅かし、集団移住や社会不安、さらには政治と地政学の混乱を引き起こしている。

The Nepali Times
The Nepali Times

ネパール政府と政治社会は、自国と人類全体のために、この現実に目を覚まさねばならない。政府が5月に開催した「サガルマータ・サンバード会議」は、地球温暖化とその弊害を訴える舞台となることに失敗した。政治家、官僚、学界は、これまでの機会損失を取り戻し、今こそ行動の先頭に立つべきである。(原文へ

カナック・マニ・ディクシット(作家・評論家、『ヒマール・サウスアジアン』編集長) 

INPS Japan

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「今必要なのは政治的勇気だ」とグテーレス国連事務総長、COP30で訴え

『この気候マーチは、息子の未来のため』

【ブラジル・ベレンIPS=タンカ・ダカル】

灼熱の暑さと湿気のなか、カンル・パタショは生後1年の息子をしっかり抱きかかえながら行進していた。パタショは、土曜日にベレンで怒りを示し、世界の指導者たちに圧力をかけるために集まった何千人もの先住民族と活動家のひとりである。国連気候変動会議(COP30)の開催都市で行われた抗議行動に息子とともに参加したのは、まさに子どもの未来のために闘っているからだ。

COP30 IPS
COP30 IPS

「息子をここに連れてきたのは、未来を守る必要があることを示すためだ」とパタショは語り、照りつける日差しから息子の顔を覆いながら続けた。「彼は私の未来であり、先住民の人々の未来でもある。」

パタショは、世界最大の炭素吸収源であるアマゾン森林地帯の先住民族である。COP30の交渉会場で世界の指導者や交渉官が気候行動の行方を決める一方、気候変動の最前線に暮らす人びとと活動家たちは、今すぐ行動を起こすよう求めて行進した。

「やるべきことはもっとあると思う。会議だけでは息子の未来を保証するには十分ではない。」とパタショは言う。「息子の未来は、各国が環境のために何をするかにかかっている。」

気候交渉は最終週へと向かっている。先住民族や気候活動家たちは、企業ではなく“人びとのための”気候正義を求めている。グラスゴーで開催されたCOP26後、同市でも最大規模の市民デモが起きた。プラカードや燃えゆく地球を模した象徴物を掲げ、化石燃料産業、政府の無作為、企業ロビー活動を厳しく批判した。

「今回のCOPで素晴らしいと思うのは、市民的不服従が認められていることです」と南アフリカの気候活動家ティミ・モロトは語った。「先住民族が解放を勝ち取るための手段に制限を設けるべきではないのです。」

国連環境計画(UNEP)が最近発表した「排出ギャップ報告書」は、世界が今後10年以内に**1.5℃**の気温上昇を超える軌道に乗っていることを警告し、緊急行動を呼びかけている。

・COP30開催都市ベレンで行われた「ピープルズ・マーチ・フォー・クライメイト(気候のための市民行進)」で、伝統衣装を身にまとった先住民族。撮影:タンカ・ダカル/IPS

・COP30開催都市ベレンで行われた気候マーチで、何千人もの人びとが気候行動を求めて行進した。撮影:タンカ・ダカル/IPS

・化石燃料による汚染を象徴する衣装を着たデモ参加者たち(COP30開催都市ベレン)。
撮影:タンカ・ダカル/IPS

・COP30開催都市ベレンで行われた気候マーチで声を上げる若い活動家。撮影:タンカ・ダカル/IPS

・精巧な羽飾りをつけた先住民族の参加者(COP30開催都市ベレン)。撮影:タンカ・ダカル/IPS

・強烈な暑さにもかかわらず、数キロにわたり歩き続ける参加者たち(COP30開催都市ベレン)。
撮影:タンカ・ダカル/IPS

・気候マーチの主要な要求は化石燃料の段階的廃止。しかしCOPには1600人以上の化石燃料ロビイストが参加している。撮影:タンカ・ダカル/IPS

・COP30開催都市ベレンで行われた気候マーチに参加した先住民族のグループ。撮影:タンカ・ダカル/IPS

・COP30開催都市ベレンで行われた気候マーチで、マスクを着けて行進する参加者。撮影:タンカ・ダカル/IPS

このフォトエッセイは、オープン・ソサエティ財団の支援を受けて掲載された。

INPS Japan/Inter Press Service

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信仰指導者ら、COP30で化石燃料不拡散条約への支持を表明

COP30 IPS
COP30 IPS
気候変動の原因の86%を化石燃料が占めているにもかかわらず、COP文書に“化石燃料”という言葉が盛り込まれるまでに、実に28年を要した。その不条理さは、アルコホーリクス・アノニマス(AA)が28年間も会議を続けながら、“アルコール”という言葉を最終文書に書き込む勇気を持てなかったようなものだ。

ブラジル・ベレンIPS=ジョイス・チンビ

数十年前、アメリカ合衆国の中心にあるオハイオ州クリーブランドで、一人の少女が生まれた。公民権運動の象徴マーティン・ルーサー・キング牧師の故郷でもあるアメリカ南部の“祖先の土地”を後にして、母親はよりよい経済的機会を求め北へと向かった。

Rev. Dr Angelique Walker-Smith, regional president of the World Council of Churches, speaks at an event titled ‘Faith for Fossil Free Future.’ Credit: IPS
Rev. Dr Angelique Walker-Smith, regional president of the World Council of Churches, speaks at an event titled ‘Faith for Fossil Free Future.’ Credit: IPS

「母はクリーブランドの東側にたどり着きました。そこは、今も昔も、私のような人々が暮らし、そして人種やジェンダーに基づく不公正な政策にさらされ続けている地域です」と、世界教会協議会(WCC)の地域会長の一人であるエンジェリク・ウォーカー=スミス牧師は語った。

そこで母娘が直面したのは、さらに深刻な現実だった。
「母も私も、息ができなかったのです。」

化石燃料に支えられた都市化の波は、母が移り住んだクリーブランドにも押し寄せ、その影響は今も続いている。これは、アフリカ系住民600万人以上が南部を離れた“グレート・マイグレーション”の最中のことだった。

「北部に来て初めてわかったことは、“息ができない”という現実だったのです。」

WCCは、105か国以上にまたがる350超の国内教会と、3億5000万人を超える信徒を代表する組織である。地域会長の一人であるウォーカー=スミス氏は、化石燃料不拡散条約への支持は「不正義に抗し、人々の生命と豊かな未来を守る取り組みだ」と強調する。「私たちは、化石燃料から生命を育む再生可能エネルギーへの転換を支持しています。」

Kumi Naidoo
Kumi Naidoo

南アフリカ出身の人権・環境正義活動家で、化石燃料不拡散条約のプレジデントを務めるクミ・ナイドゥ氏は、世界が再生可能エネルギーに移行すると言いながら、この30年はむしろ逆方向に進んできたと指摘する。

「家に帰って浴室の水漏れに気づいたら、まず床を拭くでしょう。でも、蛇口が開いたままで、排水口に栓がしてあると分かったら、どうしますか? 当然、蛇口を閉め、栓を抜きます。

この30年、科学が“エネルギーシステムを変えなければならない”と警告してからも、私たちがやってきたのは床を拭くことだけだったのです。」

「化石燃料―石油・石炭・ガスが気候変動の原因の86%を占めているのなら、まずは蛇口を閉める必要がある。」

The Golden Rule
The Golden Rule

ナイドゥ氏は、創価学会インタナショナル(SGI)、ラウダート・シ運動、宗教環境団体グリーンフェイス(国際団体)、英国内のユダヤ教環境団体エコジュダイズムなどが共催したサイドイベント「Faith for Fossil Free Future」で訴えた。

アマゾンの目の前で開催されるCOPでありながら、同地域では依然として化石燃料の掘削免許が発給され続けているという矛盾も指摘した。

「COPで最大の代表団は開催国でもブラジルでもありません。参加者25人に1人が化石燃料業界の関係者なのです。これは、アルコホーリクス・アノニマス(AA)(=アルコール依存症者の自助グループ)の年次大会に、アルコール業界が最大の代表団として参加しているようなものです。」

さまざまな信仰・思想のコミュニティが、化石燃料の迅速な段階的廃止、再生可能エネルギーの大幅かつ公平な拡大、そしてそのための資源確保を求めて声を上げている。鍵となるのが化石燃料不拡散条約である。

「救いを必要としているのは地球ではありません。今の道を進み続ければ、土壌は荒廃し、水も失われ、暑熱で作物さえ育たなくなる。消えてしまうのは私たち人類のほうです。地球はその後も存続し、もし私たちが絶滅すれば、森は再び生い茂り、海も回復するのです。」

提案されている条約は、新たな化石燃料の探査や開発拡大を止め、既存の石炭・石油・ガスの生産も、公正かつ公平な形で段階的に廃止するための国際的な合意を目指すものだ。パリ協定を補完し、供給側に直接踏み込む法的枠組みの構築を狙っている。

支援の輪は各国や都市、さまざまな機関、科学者、活動家へと広がり、宗教界の支持も強い。

日蓮仏法を実践する世界192か国・地域のコミュニティからなる創価学会インタナショナルの横山正博氏は、信仰とエネルギー移行の交差点について語った。

「公正な移行は、信仰を持つ若者たちが変革の原動力となり得ることを示しています。」
「化石燃料不拡散条約は、化石燃料の段階的廃止だけでなく、倫理的枠組みそのものです。」
「人々の生計と尊厳を守りつつ、環境や地域経済との調和を図りながら前進する道筋です。公正な移行は技術論ではなく、倫理・包摂・連帯の問題なのです。」

Masahiro Yokoyama was speaking at an event titled Faith for a Fossil-Free Future co-sponsored by Soka Gakkai International. Credit: Joyce Chimbi/IPS
Masahiro Yokoyama was speaking at an event titled Faith for a Fossil-Free Future co-sponsored by Soka Gakkai International. Credit: Joyce Chimbi/IPS

最大の課題は、現在の環境状況の中で、この条約をどう実施していくかだ。

「この道筋には先例があります。私たちはCOPでも国連システムの中でも交渉しませんでした。地雷禁止条約がその例です」とナイドゥ氏は語る。

地雷禁止条約は、44か国が国連の枠外で交渉し、その後に国連総会で採択された。

「“強力な化石燃料輸出国は署名しないのではないか”という疑問も当然あります。しかし、この問いにも地雷禁止条約が答えています。今日に至るまで、米国、ロシア、中国は同条約に署名していません。それでも、条約が発効した瞬間、“ビジネス・アズ・ユージュアル”の社会的正当性は失われ、状況は大きく変わったのです。」(原文へ

This article is brought to you by IPS Noram in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International in consultative status with ECOSOC.

INPS Japan

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AIが変えるモンスーン予測―インド発の成功が30か国の農業を動かす

【ニューデリーSciDev.Net=ランジット・デブラジ】

インドで人工知能(AI)を活用したモンスーン予測が成功したことにより、他地域での気象予測モデル開発が加速している。米国の科学者によれば、この成果を基盤に今後30か国が恩恵を受ける見通しである。

シカゴ大学「人間中心型気象予測イニシアチブ(Human-Centred Weather Forecasts)」共同ディレクターのペドラム・ハッサンザデ氏は次のように語る。「インドでのモンスーン予測の成功に触発され、シカゴ大学はゲイツ財団の支援を受け、東西アフリカで既存モデルの比較検証(ベンチマーク)を開始しました。焦点は雨季と熱波の予測にあります。」

ベンチマークとは、従来型モデルとAIモデルの双方が、季節的なモンスーンの開始や進行といった重要な大気現象をどの程度正確に予測できるかを検証する手法である。

ハッサンザデ氏は「インドや他地域でも、予測精度を検証できれば、さらに多くの応用が可能になる。」と語った。「ただし、比較検証には時間と資金が必要です。既存手法の力を最大限に引き出し、リアルタイムの予測生成と大規模な情報発信を実現するには、十分なリソースが欠かせません。」

Map of India
Map of India

今夏、AIを活用したニューラル大循環モデル(NeuralGCM)による予測が、モンスーン雨期の到来4週間前から運用され、3,800万人のインド農民がその恩恵を受けた。

NeuralGCMは、従来の物理法則に基づく予測と機械学習を組み合わせて地球大気をシミュレーションするハイブリッド型モデルである。

グーグルが開発した同モデルは、他のAI気象モデルや物理モデルとの比較試験でも優れた計算効率と精度を示し、複数の気象・気候指標で高い性能を証明した。このモデルは今後2年以内に世界30か国で導入される予定である。

インドでは、同モデルがモンスーンの進行が約3週間停滞することを正確に予測した。モンスーンは例年6月初旬にインド南端で始まり、徐々に北上する。AIによる予測により、農民たちは作付け時期など重要な判断をより的確に下すことができた。研究はインド政府と協力するシカゴ大学「気候・持続可能成長研究所」の研究者によって実施された。

このAIモデルは、ラップトップ上でも動作するソフトウェアで構築されており、高精度の予測を科学者や農民が直接活用できる。一方、従来型の気象モデルは膨大なコストを要し、スーパーコンピューターによる解析が不可欠である。

インド農業省のプラモド・クマール・メヘルダ上級官は、「このプログラムは、AIによる気象予測の革新を活用し、安定した降雨の開始を予測することで、農民が自信をもって営農計画を立て、リスクを管理できるようにするものです。」と語った。

シカゴ大学の経済学者で同イニシアチブ共同ディレクターのマイケル・クレーマー氏は、AI気象予測の普及は極めて高い投資効果をもたらすとし、「政府の1ドルの投資で、農民に100ドル以上の利益を生む可能性がある」と語った。クレーマー氏は、気候変動の影響を最も受けやすい小規模農家にとって、この取り組みが特に有用だと強調する。

一方、インドの農業科学者らは、このAIモデルがすべての関係者に有用なデータを提供できるよう、さらなる改良が必要だと指摘する。
ハイデラバードの乾燥地農業中央研究所の主任科学者で植物生理学者のアルン・シャンカー氏は次のように語った。
「3,800万人の農民に情報を届けるのは見事ですが、内容には降雨シグナルだけでなく、土壌水分、蒸気圧不足、熱ストレス予報、作物生育段階への感受性データを組み合わせるべきです。」さらに「播種時期を誤れば、早期降雨の誤報によって苗が枯死し、再播種の費用やシーズンの損失につながる恐れがあります」と警鐘を鳴らした。

Ranjit Debraj
Ranjit Debraj Credit: Katsuhiro Asagiri

「人間中心型気象予測イニシアチブ」の研究者たちは、他の中低所得国でも同様のプログラムを展開し、AIモデルの効果的な活用法を気象学者に指導している。

同プログラムは今年始動し、現在はバングラデシュ、チリ、エチオピア、ケニア、ナイジェリアの5か国と提携している。シカゴ大学によれば、2026年にはさらに10か国、2027年には15か国を追加し、数百万人の農民に恩恵を広げる計画である。

ハッサンザデ氏は次のように結んだ。
「現在のAI気象モデルは、科学分野におけるAIの最大の成果の一つですが、私たちは今、AI主導による“第2の気象予測革命”の幕開けに立ち会っていると感じています。」(原文へ

INPS Japan

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トカエフ大統領とトランプ大統領、170億ドル規模の協定で関係を深化

【アスタナThe Astana Times=ダナ・オミルガジ】

カシム=ジョマルト・トカエフ大統領は11月6日、米ワシントンDCでドナルド・トランプ米大統領と会談し、両国関係の一層の強化を確認した。会談では170億ドル(約2兆7千億円)規模の商業契約が締結され、カザフスタンが中東の平和と安定を支援するためアブラハム合意への正式参加を表明した。

歴史的意義を強調

ホワイトハウスでの会談で、トカエフ大統領はトランプ政権の歴史的意義に言及し、「トランプ大統領の指導の下、米国は経済・政治・技術の各分野で世界のリーダーとしての地位を一層強化している」と述べた。
また、「米国大統領は、より安全で安定し、繁栄する世界の実現に向けて決定的な貢献をしている」と強調したと、アコルダ(大統領府)が伝えた。

TRIPP構想と戦略的パートナーシップ

トカエフ大統領は、カスピ海横断国際輸送ルート(いわゆるミドル・コリドー)のさらなる発展につながる可能性のある「国際平和と繁栄のためのトランプ・ルート(TRIPP)」など、米国の平和イニシアチブへの支持を改めて表明した。

一方、トランプ大統領は、カザフスタンとの強化された戦略的パートナーシップ(ESP)を引き続き発展させるという米国のコミットメントを再確認した。

両首脳は、170億ドルを超えるカザフスタンと米国の商業契約の締結を歓迎した。

The Astana Times
The Astana Times

カザフスタン、アブラハム合意に参加

オーバルオフィスでの会談中、カザフスタンと米国の両大統領、そしてイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相による3者の電話会談が行われた。主な議題は、カザフスタンのアブラハム合意への参加の意向であった。

トカエフ大統領は、トランプ大統領が中東和平において「かつて不可能と思われた成果を挙げ、持続的な平和のための現実的な基盤を築いた」と評価した。

カザフスタンはアブラハム合意への参加を通じて、対立の克服、対話の促進、そして国連憲章に基づく国際法の支持に貢献することを目指していると述べた。

またトカエフ大統領は、この決定がいかなる国との二国間関係にも影響を及ぼすものではなく、カザフスタンの全方位外交(マルチ・ベクトル外交)の原則に基づくものであり、平和と安全を推進する立場の表れだと強調した。

トランプ大統領はトカエフ大統領の決断を高く評価し、「この決定は他の国々にもこの取り組みを支持する動きを促すだろう。」と述べた。

「これは、世界に架け橋を築く上で大きな前進だ。今日、より多くの国々が、私のアブラハム合意を通じて平和と繁栄を受け入れようとしている。」と、トランプ大統領は電話会談後に語った。

トカエフ大統領のワシントン訪問の公式日程は、マルコ・ルビオ国務長官、ハワード・ルトニック商務長官、そして米国南・中央アジア問題特別代表セルジオ・ゴールとの会談から始まった。この会談では、重要鉱物分野における協力に関する画期的な覚書(MOU)が締結された。(原文へ)

INPS Japan/The Astana Times

Original URL: Tokayev, Trump Deepen Ties With $17 Billion Agreements – The Astana Times

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アマゾンの心臓部で―COP30と地球の運命

【ワシントンDC=アショカ・バンダラゲ】

筆者が最近ブラジルを訪れたのは、第30回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)がベレンで開催された時期と重なっていた。私は会議そのものには参加しなかったが、幸運にもアマゾンを訪れる機会を得た。

それは、自然の神秘と静寂、そして生命の循環――世界最大の熱帯雨林であり、地球最大の流域を誇るアマゾン川によって支えられる生命のうねり――を体感する、畏敬と謙虚さに満ちた体験だった。

壮大な森と川、その支流である黒い水をたたえたリオ・ネグロなどには、無数の相互依存する生物が生息している。巨大なサマウマの木――“生命の木”と呼ばれるセイバノキ――は、他の木々やツタ、植物の上にそびえ立つ。

多くの木々は鳥や動物のすみかとなり、枝や根元に巣が作られる。ナマケモノは巣を作らず、一生を森林の樹冠で過ごし、枝にぶら下がって眠る。
一方、フサオマキザルやリスザルは食べ物を求めて枝から枝へと飛び移り、鳥たちは――最小のショウビタキから、鮮やかな赤冠や緑、黒のアマゾンカワセミまで――それぞれの獲物を狙いながら枝々を飛び回る。夜が訪れると、白い羽をもつフクロウに似た美しいグレート・ポトゥが現れ、獲物をじっと待つ。

川では、銀色のトビウオが群れをなして水面を飛び、虫を捕まえる。灰色やピンクのイルカは魚を追いながら、あるいは遊びながら水面に浮かび上がる。岸辺では、白鷺が誇らしげに立ち、クロカイマンやメガネカイマンが獲物を待ち伏せる。上空では、インコを含む鳥の群れが空を歌で満たし、ハゲワシが地上の死骸を求めて舞い降りる。

アマゾンと人間

人間もまた、数万年前から他の生物と密接な共生関係を保ちながらこの地に暮らしてきた。森で狩りをし、川で魚をとり、生き延びてきたのだ。アマゾン川沿いの岩に刻まれたペトログリフ(岩刻画)は、人間と動物の姿や抽象的な模様を描き、自然への深い敬意と、人々の間の精神的な交流を伝えている。

今日でも、アマゾンに暮らす多くの先住民コミュニティは、母なる地球を守ることに献身的であり、自然中心の価値観と伝統的な生活様式を守り続けている。

また、アマゾン川沿いには「ヒベリーニョス(川の民)」と呼ばれる人々も暮らす。彼らは先住民とポルトガル人の混血が多く、川の上に浮かぶ家や高床式の家で生活している。その生業と文化は川と森に密接に結びついており、アマゾンの保護は彼らの生存に直結している。

森林喪失の現実

アマゾンは2001年から2020年の間に約5420万ヘクタール(総面積の9%以上)を失った。これはフランスに匹敵する広さである。中でもアマゾンの62%を占めるブラジル領が最も被害を受け、次いでボリビア、ペルー、コロンビアが続く。森林伐採に加え、アマゾンでは年間4,000~6,000種の動植物が失われていると推定されている。

IPS Team at COP30
IPS Team at COP30

COP30

先週ベレンで開かれたCOP30の開会式で、ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領は、「アマゾンでの森林伐採は過去2年間で半減しており、気候変動への具体的な行動は可能だ」と述べた。そして「美辞麗句や善意の時代は終わった。ブラジルのCOP30は“真実と行動のCOP”である」と強調した。

「COPは優れた理念を披露する場や交渉者の年次集会であってはならない。現実と向き合い、気候変動に実効的に取り組む場でなければならない」とも述べた。

また、ダ・シルバ大統領は、ブラジルが植物や藻類、廃棄物などから得られる再生可能エネルギー――すなわちバイオ燃料――の生産で世界をリードしていると指摘し、「化石燃料に依存する成長モデルは持続できない」と警告した。実際、COP30では世界の熱帯雨林と生命維持に不可欠な生態系、そして人類と他の生物が共有する気候の未来が問われている。

「真実と行動」

しかし、ベレンでの楽観的な発言にもかかわらず、ブラジルや世界では依然として懸念すべき動きが続いている。

COP30に先立ち、2025年10月にブラジル政府はインド、イタリア、日本とともに、2035年までに世界の持続可能燃料使用量を4倍にすることを目指す「ベレン4×(フォーバイ)」誓約を打ち出した。この目標は現在のバイオ燃料消費量を2倍以上にするものだ。

しかし環境保護団体は、十分な環境保全措置を伴わない大規模なバイオ燃料拡大は、森林伐採の加速、土地や水資源の劣化、生態系の破壊、さらには食料安全保障への脅威をもたらすと警鐘を鳴らしている。大豆、サトウキビ、パーム油などの作物が「食料か燃料か」の土地争奪を引き起こすおそれがあるからだ。

さらにCOP30直前、ブラジル政府は国営石油会社ペトロブラスに対し、アマゾン川河口付近での石油掘削を許可した。環境相マリーナ・ダ・シルバ氏を含む政府は、この事業がエネルギー転換を支え、経済発展の目標達成に寄与すると主張している。

しかし環境団体はこれを強く批判し、「化石燃料拡大を促進し、地球温暖化を悪化させる」と非難した。世界最大の熱帯雨林という炭素吸収源の沿岸での掘削は、生物多様性やアマゾン地域の先住民共同体に深刻な脅威を及ぼすと警告している。

環境活動家によれば、アマゾンでは「先住民族の土地3,100万ヘクタールがすでに石油・ガス開発区画と重なっており、さらに980万ヘクタールが鉱山採掘の脅威にさらされている」という。

COP30開催都市の矛盾

また、COP30の開催準備の一環として建設されたベレン市内の4車線高速道路「アベニーダ・リベルダージ」も論争を呼んでいる。ブラジル政府は人口増に対応するための必要なインフラだと擁護するが、環境団体や一部住民は、100ヘクタール以上の保護林を伐採して建設を進めることが、森林破壊を加速させ、野生生物を脅かし、COPの気候目標を損なうと批判している。

地球規模の責任

「地球の肺」とも呼ばれるアマゾン熱帯雨林を守る責任は、ブラジルだけに負わせるべきではない。それは人類全体が共有すべき責任である。多くの研究は、化石燃料やバイオ燃料に頼らずとも、太陽光、風力、水力といった代替エネルギー源を活用すれば世界は十分に持続できることを示している。

世界秩序を主導してきた米国や他の先進国は、気候・環境危機、そして世界的不平等の拡大に対して主要な責任を負っている。一方、新興国――特にブラジルを含むBRICS諸国――には、いまこそ言葉を超えて具体的行動に踏み出すことが求められている。ダ・シルバ大統領自身が述べたように、COP30はその方向へと果敢に踏み出す決定的な機会である。

COP30に参加する交渉官と政策立案者たちは、化石燃料業界からの圧力に屈することなく、短期的利益ではなく地球と人類の未来を優先し、倫理的かつ原則的な行動を取らなければならない。(原文へ)

アショカ・バンダラゲ博士は、『Women, Population and Global Crisis』(Zed Books, 1997)、『Sustainability and Well-Being: The Middle Path to Environment, Society and the Economy』(Palgrave Macmillan, 2013)などの著作をはじめ、地球政治経済と環境をテーマに多数の論文を発表している。近著に「The Climate Emergency and Urgency of System Change」(2023)および「Existential Crisis, Mindfulness and the Middle Path to Social Action」(2025)がある。現在、宗教間気候倫理行動ネットワーク(Interfaith Moral Action on Climate)の運営委員を務めている。

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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