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炭化水素から炭水化物へ

中東での戦争による燃料価格高騰と肥料不足で、ネパールは食料危機に直面している

【カトマンズNepali Times=ソニア・アワレ】

ネパール経済を動かすには石油が必要であり、ネパールの人々が生きるには食料が必要である。この二つは切っても切り離せない関係にある。|ENGLISH

ホルムズ海峡の封鎖が長期化したことで燃料価格が急騰し、食料と農業のコストを押し上げている。さらに、深刻な肥料不足と価格上昇により、今年の作物収量は減少する見通しだ。

差し迫る危機に追い打ちをかけるように、気象モデルは今年のモンスーンが平年を下回る可能性を示している。ネパールの農業は大半が雨水に依存しているだけに、その影響は大きい。化石燃料の燃焼が気候変動を引き起こし、異常気象を招き、それが食料供給を脅かす―悪循環である。

バレンドラ・シャー首相が政令や不法占拠地区の撤去に気を取られるなか、ネパールは食料危機へと陥りつつある。

Rural farmer watches approaching storm Image: INPS Japan

農業はネパールのGDPの4分の1を占め、国民の60%が農業に従事している。しかし、灌漑が整備されている農地は全体の35%にすぎない。若者の多くは農村から流出し、農地は耕作放棄地となり、残った農民も換金作物に見合う価格を得られていない。

Nepali Times

「ネパールが自国民を養うには、毎年1200万トンの穀物が必要で、そのうち200万トンを輸入している。しかし今年は生産量が少なくとも20%減る見込みで、輸入量を増やさざるを得ないだろう。」と、世界食糧計画(WFP)の各国代表を務めたビショウ・パラジュリ氏は警告する。「この10年ほど、ネパールの農業生産性は停滞している。農業部門が軽視されてきたためだ。」

例年でさえ、管理の不備や汚職により、田植えの時期には慢性的な肥料不足が起きてきた。だが、世界の肥料価格は2026年に31%上昇すると予測されている。尿素に含まれる窒素の原料となるのは天然ガスで、その尿素価格はすでに60%も上昇している。

ネパールはコメ生産だけで年間45万トンの肥料を必要としている。しかしインドが供給に同意したのは、尿素6万トンとリン酸二アンモニウム(DAP)2万トンにとどまる。インドは尿素需要の87%を国内で賄っているが、その製造には湾岸地域からの天然ガスが必要だ。また、他の肥料の原料となるアンモニア、リン、カリウムも輸入している。

こうしたなか、インド外務省のランディール・ジャイスワル報道官は、インドがネパールへの石油および化学肥料の供給を継続すると述べた。

「スーパー・デューパー・エルニーニョ」

状況をさらに悪化させているのが、今年、太平洋で発生している「スーパー・デューパー・エルニーニョ」である。これにより、世界各地で激しい嵐、熱波、干ばつが引き起こされるとみられている。南アジア気候見通しフォーラムは、今年のモンスーン期にネパールの降雨量が平年を下回ると予測している。

「平年を上回る雨が降った年でさえ、降雨は均等には分布していなかった。乾燥した期間の合間に、局地的な豪雨が起きたのだ」と、気候科学者のンガミンドラ・ダハル氏は語る。「昨年はタライ地方の農業が干ばつに見舞われ、穀物収穫に深刻な影響が出た。」

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灌漑は、とりわけ乾燥地域において影響を和らげる手段となり得る。しかし、シクタ、ベリ・ババイ、スンコシ・マリンといった流域間導水事業の多くは遅延または停滞している。さらに現在、ディーゼルやアスファルトの不足により、他のインフラ事業も脅かされている。

「時代遅れの用水路灌漑から脱却し、太陽光ポンプへ移行すべきだ。余剰電力を活用するため電気料金を引き下げ、農民が利用できるようにしなければならない」と、エネルギー起業家のクシャル・グルン氏は述べる。

当面の急務はインドから化学肥料をさらに購入することだが、ネパールは輸入負担を減らすため、ナワルプルで計画されている尿素工場の建設を急ぐとともに、有機肥料の利用を復活させるべきである。

ナワルプル事業の予備調査報告書の作成に携わったグルン氏はこう語る。「エネルギー省と農業省は、尿素工場の早期実現に向けて主体的に取り組むべきだ。生産される肥料の価格を定め、全量を買い取ると約束する必要がある。」

ネパールは現在、肉と卵の生産では自給を達成しており、乳製品でも前進している。これは農地に使える家畜ふん尿が十分にあることを意味する。都市部では、都市廃棄物の最大70%が生分解性であり、有機肥料やバイオガスに転換できる。

Nepali Times

「都市廃棄物のわずか20%を利用するだけでも、350万トンの肥料を生産できる。ただし、そのためには税制優遇や電気料金の割引といった投資家向けのインセンティブが必要だ。」とグルン氏は言う。

ネパールの農民が化学肥料を使い始める以前は、土壌の栄養分を補うため、主に家畜ふんを農地にまいていた。土壌有機物(SOM)は本来5%程度が望ましいが、ネパールでは現在2%を下回っている。タライ地方では、農薬や化学肥料の過剰使用により1%にまで低下している。

土壌の肥沃度が落ちたため、農民は即効性の栄養分を作物に与える化学肥料をさらに必要とするようになった。しかし、農薬や化学肥料は長期的には土壌を劣化させ、その結果、さらに多くの肥料が必要になる。

ンガミンドラ・ダハル氏は、バイオ炭と呼ばれる炭の一種を使えば、この問題を解決できると述べる。バイオ炭はスポンジのように水を吸収し、土壌を再生する働きがあるからだ。肥料の必要量が少なく、干ばつにも強いキビやソバなどの在来穀物を復活させることも、選択肢の一つである。

燃料、食料、肥料をめぐる差し迫った危機に対する解決策は存在する。輸入炭化水素の不足は、炭水化物の生産に影響を及ぼしている。だが、余剰の水力発電を活用して肥料を生産すれば、輸入を減らし、収穫量を増やすことができる。

ソニア・アワレはNepali Timesの編集者であり、同紙で保健、科学、環境分野の記者も務めている。気候危機、防災、開発、公衆衛生を幅広く取材し、それらの政治的・経済的な相互関係に焦点を当ててきた。公衆衛生を専攻し、香港大学でジャーナリズムの修士号を取得している。

This article is brought to you by Nepali Times, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

INPS Japan

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WHO:移民・難民の健康リスク深刻化 世界の保健体制はなお不十分

【国連IPS=オリトロ・カリム】

世界で人の移動が過去最高水準に達するなか、移民や難民の健康リスクが一段と深刻化している。世界保健機関(WHO)によれば、現在、世界では約8人に1人に当たる約10億人が移動の途上にある。多くは貧困や不安定な生活、基礎的サービスへのアクセス不足など、厳しい環境に置かれている。国際移民の数が1990年以降で倍増するなか、WHOは、拡大する需要に対応するため保健システムの抜本的強化が必要だと訴えている。

Tedros Adhanom Ghebreyesus/ WHO
Tedros Adhanom Ghebreyesus/ WHO

WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は、「難民や移民は、支援を受ける対象であるだけでなく、医療従事者であり、ケアの担い手であり、地域社会のリーダーでもある」と指摘した。そのうえで、「保健システムが真に普遍的であると言えるのは、すべての人に行き届くときだけだ。難民や移民もまた、他の誰と同じように、どこにいても、途切れることなく、手頃な費用で、公平に保健医療サービスを受けられなければならない」と強調した。

WHOによると、世界の国際移民は約3億400万人に上り、このうち1億7000万人が移民労働者である。さらに約1億1700万人が強制移動を余儀なくされた人々で、4900万人は子ども、230万人は難民として生まれた人々だという。

こうした国際移民の71%以上は低・中所得国で暮らしている。しかし、これらの国々の多くは、深刻な資源不足と脆弱な保護体制を抱えている。なかでも、周縁化された人々への影響は深刻だ。女性や少女はジェンダーに基づく暴力にさらされやすく、必要な支援にもアクセスしにくい。保護者のいない子どもは搾取や虐待、ネグレクトの危険に直面しやすく、障害のある人々は利用面での障壁や差別にいっそうさらされている。

難民や移民は、移動の制限や医療へのアクセスの阻害、根強い差別、言語・文化の壁などによって、健康リスクにさらされやすいことが明らかになっている。こうした脆弱性は、紛争や気候関連災害によってさらに深刻化し、感染症や慢性疾患、メンタルヘルス上の問題に加え、危険な生活環境や労働環境にさらされる人々を世界各地で増やしている。

WHO緊急事態対応部門のチクウェ・イヘクウェアズ事務局長は、「難民と移民の健康を語るなら、緊急事態にも目を向けなければならない」と述べたうえで、「紛争であれ、気候危機であれ、あるいは人の移動を引き起こす感染症の流行であれ、こうした危機は保健システムの脆弱さを露呈させ、もともと危険にさらされていた人々の脆弱性をさらに拡大させる」と警鐘を鳴らした。

WHOは3月26日、「難民と移民の健康促進に関する世界報告書―WHOグローバル・アクション・プランの進捗モニタリング」を公表した。93を超える加盟国のデータに基づくこの報告書は、包摂的で移民に配慮した保健システムの進展を測る初の世界的な指標であり、各国の対応に前進が見られる一方、公平な医療アクセスを阻む構造的な欠陥が依然として残っている実態を示した。

報告書によると、移民・難民コミュニティ向けに緊急時の備えや災害リスク軽減、対応プログラムを整備している加盟国は42%にとどまった。文化的背景に配慮したケアについて医療従事者への研修を実施している国は40%、移民関連の健康データを収集・監視・分析する仕組みを備えている国は37%にすぎなかった。こうした情報基盤はなお脆弱で、より協調的な国際対応を支えるには不十分だという。

また、難民や移民を多数受け入れている低・中所得国では差別が依然として広がっており、誤情報や偽情報が否定的な認識を助長している。そうした誤解や差別的言説に対抗するための広報キャンペーンを実施している国は、調査対象国の30%にとどまった。

反移民感情もなお根強い。国内避難民や移民労働者、留学生、不法滞在状態にある移民は、保健サービスにアクセスできる可能性が著しく低い。加えて、多くの国では、難民や移民自身が、自らの健康に関わる制度設計や意思決定の過程からほとんど排除されている。

WHOの「保健と移民に関する特別イニシアティブ」責任者で、同報告書の主執筆者でもあるサンティーノ・セヴェローニ氏は、「人の強制移動は残念ながら、制度も経済も脆弱で、国内資源も限られている国々で、より頻繁に起きている」と指摘した。そのうえで、「非正規移民については、緊急対応計画や疾病リスク軽減策のなかでほとんど触れられておらず、制度が実際にどのように機能しているのか、その効率性や有効性を体系的に検証する仕組みも欠けている」と述べ、「緊急事態への対応責任を分かち合うという約束を果たすための行動が求められている」と訴えた。

この1年で、難民の健康支援に対する国際的支援は大きく後退している。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2025年の対応計画は、目標額106億ドルのうち23%しか資金を確保できていない。このため、今年だけで1280万人を超える避難民が、命を守る医療支援を受けられなくなるおそれがあるという。

各国の対応は二極化している。たとえばチリでは、移民や難民の地域代表を自治体の保健評議会に参加させるなど、包摂的政策を進めている。一方、米国やカナダでは、非正規滞在移民に対する医療保険の適用が削減され、命に関わる治療であっても自己負担を強いられるケースが増え、保護上のリスクを高めている。

WHOは報告書のなかで、難民や移民の声を意思決定により広く反映させることと、各国政府間の連携強化を求めた。加盟国間でデータ共有が円滑になれば、保健、雇用、住宅、保護などの分野で、より効果的な政策立案と実施が可能になるとしている。

Credit: Office of the UN High Commissioner for Refugees (UNOHCR)
Credit: Office of the UN High Commissioner for Refugees (UNOHCR)

WHOはまた、対応策は移民の多様な立場や実情に応じて具体的に設計されるべきだと強調した。そのうえで、「根拠に基づく行動」によって誤情報と差別に対抗し続ける必要があると訴えている。難民・移民の健康への投資は、社会的・経済的結束を高めるだけでなく、脆弱な保健システムの立て直しや世界全体の安全保障の強化にもつながる。さらに、移民や難民が社会に貢献できる環境を整えることで、長期的なコスト削減にも資するという。

セヴェローニ氏は、「難民と移民の健康は周縁的な問題ではない。現代を象徴する課題である」と述べた。そのうえで、「今こそ行動を起こすことで、各国は難民や移民を取り残すことなく対応でき、保健システムをより強靱で、より公正で、将来に備えたものにすることができる」と呼びかけた。(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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米・イスラエルの対イラン戦争、阻止を掲げる核拡散を逆に助長する恐れ(H・M・G・S・パリハッカラ元スリランカ駐国連大使・元国連事務総長軍縮諮問委員会議長)

【コロンボIPS=H・M・G・S・パリハッカラ】

国連安全保障理事会の常任理事国5カ国を含む191カ国の代表が4月下旬、核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議に出席するため、1カ月にわたる外交協議の場となるニューヨークの国連本部に集まった。そこで問われているものは、これ以上ないほど重大である。

HMGS Palihakkara
HMGS Palihakkara

各国代表は、米国とイスラエルがイランに対して仕掛けた「自ら選んだ戦争」の影の下で会合に臨んでいる。その名目は核拡散の阻止である。しかしこの戦争は、悲劇に満ち、同時に痛烈な皮肉を帯びている。人的被害と世界経済への代償の大きさは、もはや多言を要しない。|英語版

その皮肉は、いっそう鮮明である。

NPTの寄託国の一つである米国は、イランが非核兵器国であることを検証するため、自ら主導して成立させた国連承認の合意、すなわち包括的共同行動計画(JCPOA)を一方的に崩壊させた。そのうえで米国は、NPTに加盟していないイスラエルとともに、それまでNPTを遵守していたイランを爆撃し、同じ目的、すなわち「非核のイラン」を実現しようとしている。

この矛盾に満ちた皮肉こそ、米国による「自ら選んだ戦争」の核心にある。核不拡散の名の下に遂行されるこの戦争は、阻止しようとしているはずの結果を、むしろ加速させかねない。核兵器を保有していない国でさえ、国連の承認を得ない一方的な武力行使の対象になり得ることを示すことで、ワシントンは極めて厳しいメッセージを発している。すなわち、生存を左右するのは自制や外交ではなく、核兵器を持つことなのかもしれない、という冷厳なメッセージである。

The 2026 NPT Review Conference opens at the United Nations in New York, bringing renewed attention to nuclear disarmament, non-proliferation and the future of global nuclear restraint.
The 2026 NPT Review Conference opens at the United Nations in New York, bringing renewed attention to nuclear disarmament, non-proliferation and the future of global nuclear restraint.

この逆説は、世界の核秩序が長年抱えてきた脆弱性を露呈している。NPTと国際原子力機関(IAEA)の保障措置体制を中心に築かれたこの秩序は、基本的な取引の上に成り立っている。すなわち、非核兵器国は核兵器を放棄する。その見返りとして、安全保障上の保証、平和的核技術へのアクセス、そして軍縮に向けた誠実な努力が約束される、という取引である。

この体制は差別的でありながらも、機能してきた。ただし、それが信頼に足るものと見なされている限りにおいてである。条約を遵守している非核兵器国が、核開発への疑念を理由に軍事行動の標的となるなら、その信頼性は根底から揺らぐ。

この信頼の揺らぎの中心にあるのが、核抑止論である。今回の紛争以前、イランの姿勢は広く「ヘッジング」と理解されていた。すなわち、兵器化の一線を越えることなく、核関連の技術的能力を高める戦略である。

この姿勢により、テヘランは兵器化に伴う全面的なコストを避けながら、交渉上の影響力を維持することができた。しかしヘッジングは、ある共通理解に依存している。しかしヘッジングは、曖昧さは許容され、少なくとも違法な武力行使によって罰せられることはない、という共通理解に支えられている。

Photo credit: journal-neo.org
Photo credit: journal-neo.org

戦争は、その前提を打ち砕いた。そこから導かれる教訓は明白である。核潜在能力は攻撃を抑止しないが、核兵器の保有は抑止し得る。北朝鮮との比較は示唆的である。北朝鮮の公然たる核戦力は、ワシントンとの数十年にわたる敵対関係にもかかわらず、同国を大規模な介入からおおむね守ってきた。

テヘラン、そして他国の政策決定者にとって、この含意を無視することは難しい。曖昧さが脆弱性を招くのであれば、抑止力という形で明確さを持つことが合理的に映る可能性がある。核兵器は、政治的負債から戦略的必需品へ再定義される危険がある。

その影響はイランにとどまらない。核不拡散体制は長らく、条約を遵守しても罰せられることはないという信頼に支えられてきた。しかし近年の歴史は、すでにその前提を揺るがしている。ウクライナは1990年代、安全保障上の保証と引き換えに、当時世界第3位の核兵器を放棄した。しかし数十年後、ロシアの侵攻に直面した。

The Russo-Ukrainian war, which began in February 2014, shows no signs of ending. Credit: UNOCHA/Dmytro Filipskyy
The Russo-Ukrainian war, which began in February 2014, shows no signs of ending. Credit: UNOCHA/Dmytro Filipskyy
Photo Col Muammar el-Qaddafi of Libya addressing the UN General Assembly sessions in September 2009. Credit: United Nations
Photo Col Muammar el-Qaddafi of Libya addressing the UN General Assembly sessions in September 2009. Credit: United Nations

リビアも自国の核計画を放棄したが、その後まもなく、米国主導の外部介入を経て体制崩壊を経験した。こうした前例は、核不拡散体制への信頼を少しずつ損なってきた。

こうした背景の下、イランとの戦争は憂慮すべき構図をいっそう強めている。核兵器を持たない国は脆弱に見え、核兵器を持つ国は安全に見える。これは、核不拡散体制が本来支えるべき理念とは正反対である。

IAEA当局者は、こうした力学が「ドミノ効果」を引き起こし、複数の国が自国の選択肢を再検討する事態につながりかねないと警告してきた。中東全域、そしてその外側でも、各国政府は自国の前提を静かに見直している。

軍事的侵略はまた、核不拡散をいっそう困難にする形で国内政治を変化させる。外部からの圧力は強硬派を勢いづかせ、対話を重視する勢力を周縁に追いやる。これは意図せざる結果ではなく、予測可能な帰結である。強硬派は妥協に応じにくく、核兵器を生存に不可欠なものと見なしやすい。

核武装への誘惑が強まるにつれ、外交の余地は狭まる。言い換えれば、戦争は能力だけでなく、国家の選好そのものを変えてしまうのである。

軍事的解決には、現実的な限界もある。空爆によって施設を損傷させ、あるいは「壊滅」させることはできるかもしれない。しかし、知識そのものを消し去ることはできない。科学的専門性を爆撃で消滅させることは不可能である。実際、介入は、止めようとしているプロセスを地下に押し込み、むしろ加速させる可能性がある。かつて査察官の目に見えていた計画が、より秘密化し、監視はいっそう困難になるかもしれない。

地域への影響も同様に深刻である。中東はすでに、対立と脆弱な安全保障体制に特徴づけられている。イランが核兵器取得へと傾けば、とりわけそれが紛争によって加速される場合、周辺国の対抗措置を誘発する可能性が高い。

Map of Middle East
Map of Middle East

サウジアラビアとトルコはいずれも、静観することはないと示唆してきた。その結果、連鎖的な軍拡競争が起こり、すでに不安定な地域が、多極的な核環境へと変わる恐れがある。

これは典型的な安全保障のジレンマである。ある国が自国の安全を高めようとする行動は、他国に不安を抱かせ、相互の対抗措置を招き、結果としてすべての国をより悪い状況に置く。国連の承認を得ない一方的な武力行使によって潜在的脅威を排除しようとすることで、米国はむしろそうした脅威を増やす可能性がある。その結果、この地域は、イラン一国だけでなく、複数の国が核兵器開発の一歩手前に立つ事態に直面しかねない。

こうした力学は、より深い欠陥を浮き彫りにしている。すなわち、軍事力によって核拡散を解決できるという思い込みである。核開発への志向は、単なる技術的問題ではない。それは不安に対する政治的反応である。爆撃は症状に対処するだけで、原因には向き合わない。

国家を核能力の獲得へと向かわせる安全保障上の懸念に取り組まない限り、強制だけで持続的な成果を生むことはできない。NPTからJCPOAに至るまで、核不拡散上の成果はいずれも、軍事的手段ではなく、緻密な外交交渉によって達成されてきた。

過去の経験もそれを裏づけている。不完全ではあっても、外交合意は核計画を制約してきた。JCPOAの崩壊は、イランの活動を制限していた仕組みを取り除いた。信頼に足る外交的代替策がない中で、軍事行動は遅延策にすぎない。短期的な時間を稼ぐ代わりに、長期的には核兵器追求への誘因を強めるのである。

この戦争はまた、国際法が権力政治に従属しているとの認識を強める危険がある。強大な国々がルールを迂回できるのであれば、弱い国々は国際法に信頼を置かなくなるだろう。代わりに、容易には無力化されない軍事能力に頼ろうとする可能性がある。核兵器は抑止の道具であるだけでなく、主権と生存の象徴にもなる。

おそらく最も長く残る影響は、心理的なものだろう。国家は前例から学ぶ。イラク、リビア、ウクライナ、そして今やイランに至るまで、一つのパターンが浮かび上がっている。脆弱性は介入を招き、核能力はそれを抑止する。この結論は不快かもしれないが、国際政治の冷徹な論理を反映している。いったんこうした認識が定着すれば、それを覆すことは難しい。

その意味で、この戦争はイランだけでなく、世界の核不拡散体制にとっても分水嶺となる可能性がある。戦争はリスクと安全保障に関する認識を変え、抑制よりも拡散を促す方向に作用する。現時点で核兵器を追求する意図を持たない国々でさえ、国際的な保証の信頼性が揺らぐ将来に備え、ヘッジングに踏み出すかもしれない。

悲劇は、拡散を防ぐはずの政策が、むしろ拡散を加速させかねない点にある。信頼を損ない、強硬派を勢いづかせ、抑止の論理を強化することで、米国は自ら掲げる目的とは逆の結果を招く危険を冒している。たとえ軍事行動が短期的にイランの計画を後退させたとしても、長期的な帰結ははるかに深刻なものになり得る。

より秘密裏に進められ、より強固な決意を伴い、より広く模倣される核兵器追求は、核不拡散の勝利ではない。それは、核不拡散体制が徐々にほどけていくことを意味する。地政学的に言えば、「オウンゴール」である。

核不拡散の目的が核兵器の役割を低減することにあるなら、この紛争はその反対方向を示している。条約や規範だけでは安全を確実に保証できず、不確実な世界における究極の保険は依然として核兵器である、というメッセージを発している。

そのメッセージは、イランをはるかに越えて響くだろう。その帰結は、今後数十年にわたり、各国の核をめぐる選択を形づくる可能性がある。

イラン戦争が世界に突きつけている問いは、論争的なものではなく、極めて明白である。すなわち、NPTの寄託国である米国と、同条約に加盟していない事実上の核保有国であるイスラエルが、外交を退け、爆撃によって核不拡散を実現しようとすることが、新たな常態となるのか、という問いである。

ニューヨークで開かれている今回のNPT再検討会議が、過去の会議と同様に、条約の三本柱――核不拡散、主権平等に基づく平和的核協力、そして軍縮――の今後の道筋について合意に至ることができなければ、それはこの問いに肯定で答えるに等しい。その場合、NPTが最終的な衰退局面に入る兆候となるかもしれない。

A view of the Headquarters of the United Nations in New York as seen from the north of the UN site. Photo credit: UN
A view of the Headquarters of the United Nations in New York as seen from the north of the UN site. Photo credit: UN
H・M・G・S・パリハッカラ氏は、スリランカの元外務次官、元駐国連大使・国連常駐代表。国連事務総長の軍縮諮問委員会の議長・委員を務めたほか、国連軍縮会議、NPT再検討・延長会議、核兵器に関する国連政府間パネルなど、軍縮・不拡散分野で長年にわたり活動してきた。
Toward a Nuclear Free World Banner
Toward a Nuclear Free World Banner

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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欧州兵器生産のグリーンウォッシング

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ハルバート・ウルフ】

欧欧州の兵器産業の株価が高騰している。かつて産業界の「厄介者」として公然と敬遠されていた兵器メーカーは、ロシアによるウクライナ侵攻を機に、投資家が最も注目する業種の一つとなった。いまや ESG(環境・社会・ガバナンス)投資までもが軍需産業へと流れ込んでいる。|ENGLISH

SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)が4月下旬、2025年の世界の軍事支出が2兆8870億ドルに達し、過去最高を記録したと発表すると、世界各地のメディアがこれを報じた。軍事支出は過去11年にわたり、毎年増加している。注目すべきは、昨年最大の伸びを示したのが欧州で、その増加率が14%に達したことである。

2022年2月に始まったロシアによるウクライナへの全面侵攻は、ロシアとウクライナだけでなく、欧州全域で前例のない再軍備の波を引き起こした。

一方、防衛産業の受注は積み上がっている。上場している兵器企業の株価は、かつてない高値に達した。金融メディアは株価の大幅な上昇を報じ、主要兵器メーカーを「トップパフォーマー」と評している。欧州の防衛企業大手10社のうち9社が上場企業であり、その株価動向はこの評価を裏付ける。イランでの戦争勃発後、株価は最近やや下落したものの、ロールス・ロイス(英国)とラインメタル(ドイツ)は、2022年以降、株価上昇率が1000%を超え、他社を大きく引き離している。これら10社のうち8社は、ユーロ圏の主要株価指数である EURO STOXX 50 を大幅に上回って推移している。

グリーンウォッシング

近年、兵器産業に対するいわゆる「持続可能な投資」は大幅に増加している。Voxeurop の調査によれば、ジョルジョ・ミカロプロスとステファノ・ヴァレンティーノの両氏は、2025年にはその規模が500億ユーロを超えると推計している。

金融商品にも用いられる「持続可能」という言葉は、財務指標だけでなく、環境責任、社会的公正、良好な企業統治に関わる要素も含む概念である。そのため、これまで持続可能な投資とされる金融商品では、兵器や石炭などへの投資は除外されてきた。

しかし、欧州の兵器産業をめぐっては、こうした投資基準がいま緩められつつある。この動きを主導しているのは、防衛産業とその業界団体、欧州委員会、そして金融部門の3者である。

兵器産業は、ロシアによる侵攻以前から ESG 基準を批判していた。欧州航空宇宙・安全保障・防衛産業協会は2021年10月に発表した声明で、自社製品の「持続可能性」を強調し、次のように述べた。「持続可能性と防衛の間には切り離せない結びつきがある。防衛は安全保障の重要な構成要素であり、安全保障は平和、繁栄、国際協力、そして経済的・社会的発展の前提条件である」。同協会はその根拠として、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標16「平和と公正をすべての人に」を挙げている。

兵器メーカーはかなり以前から、自らをクリーンで、環境的・社会的・倫理的に責任ある産業として印象づける必要があることを認識していた。ドイツ最大の兵器企業ラインメタルは、自社ウェブサイトで「持続可能性への注力はラインメタルの戦略に不可欠な要素である」と述べ、2035年までのカーボンニュートラル達成を目標に掲げている。

欧州最大のミサイル・ドローンメーカーである MBDA は、「責任ある事業活動を通じて、私たちは人々と地球を支えている。最高水準の倫理的・専門的基準を常に順守することは、私たちの使命の一部である」としている。同社は ESG 委員会まで設置した。ロールス・ロイスも「2021年初め、遅くとも2050年までにネットゼロを達成するため、短期的な取り組みを示した『ネットゼロへの道筋』を発表した」と述べている。

防衛産業をグリーン投資や持続可能な投資の対象に組み込む流れを後押ししている第2の主要な主体は、欧州委員会である。欧州委員会は2023年10月、EU 官報で、欧州市民の安全保障に貢献する防衛産業をはじめ、すべての戦略的部門について、民間部門を含む資金調達と投資へのアクセスを確保する必要があるとの見解を示した。

金融部門もまた、防衛産業を高い収益が見込める投資先とみなし、大きな関心を寄せている。2024年、ドイツ投資・資産運用協会(BVI)は、持続可能な金融商品に関する規制枠組みを改定した。Manager Magazin によれば、その理由は地政学的環境の変化だった。

「それまでは、防衛装備品の製造または販売から売上高の10%超を得ている企業への投資は禁止されていた。しかし2024年12月以降、BVI によれば、国際法で禁止された兵器の製造業者に対する投資のみが禁止対象となった」

言い換えれば、対人地雷、クラスター弾、化学兵器、生物兵器の製造業者は投資禁止の対象となるが、それ以外の兵器――核兵器、大砲、軍艦、戦闘機、ドローン、ミサイル、戦車、小銃――は、持続可能なものと認定されることになる。いまや、欧州の小口投資家の貯蓄さえ、「グリーンな良心」の名の下に兵器産業へ流れ込む可能性がある。

Voxeurop の調査によれば、兵器産業に向かうグリーン資本の大部分は大企業に集中しており、2025年にはサフラン、ロールス・ロイス、ラインメタル、エアバスにそれぞれ40億ユーロ超が流入する見通しである。防衛部門への投資はきわめて収益性が高いとみられ、資金は既存の大企業だけでなく、スタートアップにも流れている。

さらに、近年の市場の混乱に不安を抱く自動車メーカーなど、防衛産業とは無縁だった既存産業までもが、兵器生産に乗り出している。フォルクスワーゲンは、ドイツ・オスナブリュックの工場でイスラエルの防空システム「アイアンドーム」を生産するかどうかをなお検討している段階だが、フランスの自動車メーカー、ルノーはすでに軍用ドローンの生産を始めている。

過去とは対照的に、いまでは防衛産業の雇用は労働者の間で極めて人気が高い。給与水準は高く、雇用の安定も見込まれる。かつて民生品生産への転換を訴え、独自の転換計画まで提出していた労働組合や事業所委員会も、今日では兵器生産に全面的に軸足を移している。

防衛産業は突如として、環境的にも社会的にも倫理的にも問題のない産業と見なされるようになった。このグリーンウォッシングを見過ごしてはならない。

ハルバート・ウルフは国際関係論の教授であり、ボン国際紛争研究センター(BICC)の元所長である。現在は同センターのシニアフェローを務めるほか、ドイツのデュイスブルク/エッセン大学・開発と平和研究所の上級客員研究員、ニュージーランドのオタゴ大学・平和紛争研究国立センターの研究アフィリエイトも務めている。また、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の科学評議会メンバーでもある。

Original URL: https://toda.org/global-outlooks/greenwashing-european-weapons-production/

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【London Post=シャブナム・デルファニ博士]

イラン・ミナブで子どもたちの虐殺が報じられた事案(2026年ミナブ学校空爆)に対して、世界的な憤りが起こらないのであれば、私たちは不都合な真実に向き合わなければならない。

アムネスティ・インターナショナルが示した調査結果や懸念に加え、ロイターを含む国際メディアの報道によれば、イラン・ミナブの学校が空爆を受け、児童168人と教員14人が死亡したとされる。これは単なる数字ではない。教室が集団墓地と化したのである。

ジュネーブ諸条約の下で、これは曖昧な問題ではない。法は明確である。民間人は保護される。学校は保護される。子どもたちは保護される。戦時下においても、越えてはならない一線がある。

このような事案は、明らかに戦争犯罪に該当し得る。いま問われるべきは、なぜ責任追及を求める即時かつ一致した国際的対応が見られないのか、という点である。

国連の明確な道義的姿勢はどこにあるのか。まさにこうした状況において子どもの命を守ることを使命とするユニセフの緊急対応はどこにあるのか。

このような疑惑を前にした沈黙は、中立ではない。それは加担である。

さらに、ミナブへの攻撃に使用された兵器をめぐる疑問にも、厳しい視線が向けられている。

バイライン・タイムズによれば、現場で発見された破片はトマホーク巡航ミサイル・システムとの関連が指摘されており、公式説明に疑問を投げかけるとともに、こうした兵器をめぐる複雑な供給網を浮き彫りにしている。

複数の報道で引用された映像、衛星画像、残骸の独立分析は、使用された兵器がこの種のミサイルと一致する可能性を示している。同システムは、主に米国および一部の同盟国軍によって運用されている。しかし、これらの分析は、その兵器が英国スコットランドに由来する可能性を指摘している。

Grave yards for children victmized by the US attackes. Source: London Post
Grave yards for children victmized by the US attackes. Source: London Post

仮にこれが確認されれば、その意味は極めて重大である。直接的な責任の所在をめぐる追及が一段と強まるだけでなく、現代戦を支える防衛産業と国際的パートナーシップの広範なネットワークにも光が当たることになる。英国に大きな拠点を持つ企業との関連が報じられていることは、事態をさらに複雑にし、責任の問題が戦場の外にまで及ぶことを示している。

Tomahawk Block IV cruise missile
Tomahawk Block IV cruise missile

ただし、進行中の紛争地域における帰属の特定は、しばしば激しく争われ、技術的にも複雑である。この件についても、透明性のある独立調査が行われて初めて、確定的な結論を導くことができる。しかし、そうした調査はまだ実施されていない。

そして、問題は西側諸国にも及ぶ。

西側諸国は何十年にもわたり、自らを「ルールに基づく国際秩序」の守護者と位置づけてきた。他の紛争における民間人への攻撃については、国際法を力強く、確信をもって訴え、正当に非難してきた。だが、疑惑が政治的に不都合な方向を指し示すと、その道義的な明快さは失われる。

これは外交ではない。偽善である。

国際法が敵対者に対してのみ持ち出され、同盟国が関与している場合には弱められたり無視されたりするのであれば、それはもはや法ではない。権力の道具となり、選択的に適用され、戦略的に運用され、根本的に不公正なものとなる。

イランでの軍事作戦の過程で、数十の病院、赤十字関連施設、住宅、学校が攻撃されたとの報道は、この危機をさらに深刻にしている。国際人道法の下で、医療・教育インフラへの攻撃は最も重大な違反の一つである。それは単なる付随的被害ではない。厳格かつ限定的な条件が満たされない限り、禁じられている行為である。こうした事案が繰り返されていることが確認されれば、それは過失ではなく、一貫した傾向を示していることになる。

そして、そうした傾向には責任追及が不可欠である。

国際刑事裁判所は、まさにこのような時のために存在している。その任務は明確である。国籍や政治的立場にかかわらず、国際法上最も重大な犯罪に責任を負う者を捜査し、訴追することである。しかし、同裁判所の実効性は常に政治的意思に左右されてきた。そして、その政治的意思は、最も必要とされる局面であまりにも頻繁に欠如してきた。

ミナブは、事実の検証にとどまる問題ではない。これは誠実さの試金石である。

国際社会は法を一貫して適用するのか。それとも、制度はすでに壊れており、守られる命と、切り捨てられる命があることを認めるのか。

The International Criminal Court (ICC) in The Hague, Netherlands
The International Criminal Court (ICC) in The Hague, Netherlands

ミナブの犠牲者に必要なのは、慎重な声明や手続き上の遅延ではない。必要なのは、何が起きたのかを明らかにする独立調査と透明性、そして責任を負うべき者の責任追及である。その人物や組織がどれほど強大であっても、例外であってはならない。

なぜなら、学校で子どもたちが殺害されたことが、そうした対応を引き起こさないのであれば、いわゆる戦時のルールは、もはやルールではないからである。(原文へ

Dr.Shabnam Delfani
Dr.Shabnam Delfani
シャブナム・デルファニ博士は、気候変動モデリング、地球規模の持続可能性、女性のリーダーシップを専門とする、国際的に認知された研究者、環境科学者、外交官である。2026年現在、複数の主要な国際諮問機関で要職を務めており、環境管理と平和提唱に関する研究で広く引用されている。同氏は、英国プリマス大学で環境管理・気候変動モデリングの博士号を取得している。

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私の名はダッカ

【ダッカIPS=モハンマド・ラキブル・ハサン】

「私の名はダッカ」 は、400年を超える歴史を持つダッカを、生きて呼吸する都市として描いた1分間の実験映画である。思索的な語りを通じて、都市の変貌や危機、そしてしなやかな強さを映し出す。汚染と祝祭、苦難と希望が交錯するなか、気候変動、移住、人々の生き抜く営みによって形づくられてきた巨大都市ダッカの実像を浮かび上がらせている。

Location of Bangladesh
Location of Bangladesh

私の名はダッカ。私は400年以上の歴史を生きてきた。ムガル帝国の栄華から植民地支配、独立、そして現在に至るまで、幾多の帝国の興亡を見つめてきた。いま、私はおよそ3600万人を抱える巨大都市となった。

同時に私は、世界有数の気候危機の最前線にある都市でもある。川はたびたび増水し、暑熱は強まり、空気は年々いっそう重くなる。私はしばしば、世界で最も大気汚染が深刻な都市の一つに数えられる。

私は、新型コロナウイルスのパンデミックのなかで、通りから突然人影が消えたあの静寂を覚えている。2013年から2014年にかけての政治不安の中で起きたバス爆破事件の恐怖と混乱も覚えている。そして2024年、ファシズム的な体制が崩壊した瞬間も記憶している。

だが、私は危機だけの都市ではない。私は対照に満ちた都市でもある。児童労働や深刻な社会的不正義の現実を抱え、多くの人々が生き抜くためだけに日々もがいている。その一方で、私は生を祝う都市でもある。ホーリー祭の季節には通りが鮮やかな色彩に包まれ、人々は苦境のただ中にあっても喜びを見いだす。(原文へ

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日本と韓国、台湾・北朝鮮・ホルムズをめぐる視点からトランプ・習近平会談を注視

ニューヨークINPS Japan/ATN=アハメド・ファティ

日本と韓国は、ドナルド・トランプ米大統領が北京で予定している中国の習近平国家主席との首脳会談を注意深く見守ることになる。両国にとって、この会談は中国だけをめぐるものではない。台湾、北朝鮮、エネルギー安全保障、そしてインド太平洋における米国の同盟体制の将来に関わる問題でもある。|ENGLISH

両国はいずれも、米中間の緊張が管理されることを望んでいる。世界の二大大国の間で危機が起きることは、どちらも望んでいない。しかし同時に、中国との安定が、台湾に関する表現の軟化、北朝鮮への圧力の弱まり、あるいは米国の関与をめぐる不確実性と引き換えに得られるものではないかを見極めようとするだろう。

Ahmed Fathi.
Ahmed Fathi.

日本にとって第一の懸念は台湾である。台湾海峡で危機が起きれば、日本の領土、日本国内の米軍基地、海上交通路、そして東シナ海に影響が及ぶ。日本政府は米中関係の安定を公には支持しているが、本当の試金石となるのは、米国政府がが抑止力を明確に保ち、同盟国に十分な説明を行うかどうかだ。

中国の見方は異なる。習近平政権は今回の首脳会談を関係安定化の機会と位置づけているが、台湾については引き続き主権に関わる核心的問題として扱っている。日本にとっては、米中双方が発表する会談後の説明文の一語一句が重要になる。中国で使われる曖昧な表現は、日本では安全保障上の懸念になり得るからだ。

韓国はこの会談を北朝鮮の文脈で読み解く。同国は米国との同盟に依存し、中国とは大規模な貿易関係を持ち、さらに核武装した隣国と向き合っている。その北朝鮮は立場をいっそう硬化させている。北朝鮮は、真剣な非核化交渉の軌道からさらに遠ざかる一方で、日米韓協力を敵対的な軍事ブロックだと位置づけている。

そのため、トランプ氏と習氏が朝鮮半島について協議する場合、その内容は極めて微妙なものになる。トランプ氏が北朝鮮問題で中国の協力を求めるなら、韓国はその代償が何なのかを知りたがるだろう。また、自国の安全保障が、韓国を傍観者のように扱う首脳間チャンネルで左右される事態も避けたいと考えるはずだ。

そして、ホルムズ海峡の問題がある。

日本と韓国は高度に発展した工業国だが、単純かつ重大な脆弱性を抱えている。エネルギーの多くを湾岸地域に依存していることだ。日本は石油供給のおよそ95%を中東に依存しており、通常、石油輸入の約70%がホルムズ海峡を通過している。韓国も同様に影響を受けやすい。AP通信によると、2025年には韓国の原油輸入の60%超、ナフサ輸入の約半分がホルムズ海峡を通過した。

つまり、イランもまた北東アジアの問題の一部なのである。韓国は最近、ホルムズ海峡付近で韓国のHMMが運航する貨物船への攻撃を非難した。一方、トランプ氏は韓国に対し、この地域の海上交通路を守る米国主導の取り組みを支援するよう求めている。日本とアラブ首長国連邦も、供給途絶への脆弱性をどう減らすかを日本政府が検討する中で、石油供給の拡大や共同原油備蓄について協議してきた。

したがって、トランプ氏が習氏とイランについて話し合うとき、日韓両国はその内容に耳を澄ませることになる。中国はイランと関係を持ち、湾岸地域に大きなエネルギー権益を有している。中国が危機の沈静化に貢献するなら、日本と韓国は利益を得る。だが中国がその役割を利用して他の分野で譲歩を引き出そうとするなら、中東問題はインド太平洋の問題へと変わる。

これらすべての問題の上に位置しているのが、同盟の問題である。

日本と韓国は、米国の戦略における脇役ではない。両国は、北東アジアにおける米軍態勢の要である。両国に駐留する米軍は、中国と北朝鮮に対する抑止を支え、米国政府がインド太平洋全域で戦力を展開するための基盤にもなっている。

トランプ氏の取引重視の同盟観は、すでに同盟国をより慎重にさせている。日本と韓国は、防衛費のさらなる増額を求める圧力には対応できる。しかし、ワシントンが同盟を長期的な戦略的コミットメントと見ているのか、それとも交渉可能なコストと見ているのかという不確実性には、容易に対処できない。

だからこそ、日本と韓国にとって最良の結果は、劇的なものではない。むしろ、規律ある結果である。すなわち、台湾に関する米国の明確な表現、北朝鮮に対する抑止力を弱めない姿勢、ホルムズ海峡を開かれた状態に保つための実務的な進展、そして同盟が引き続き米国戦略の中核であるという安心感である。

最悪の結果も明確だ。米国と中国では大きな見出しを生む一方で、米国の同盟国には、密かに何が取引されたのか分からないまま不安だけが残る首脳会談である。

日本と韓国にとって、トランプ・習近平会談は一つの物語ではない。そこには四つの物語がある。台湾、北朝鮮、ホルムズ海峡、そしてインド太平洋における米国の同盟体制の将来である。そのいずれか一つだけでも地域を揺るがし得る。これらが重なるからこそ、米国の同盟国は、トランプ氏が習氏に何を伝えるのかだけでなく、北京を後にしてから自分たちに何を伝えるのかにも、細心の注意を払うことになる。

アハメド・ファティは、国際的に配信されるジャーナリスト、国連担当記者、国際問題アナリスト、人権問題のコメンテーターである。外交、多国間主義、権力、公共の自由、そして世界の未来を形づくる政治について執筆している。

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ブネイ・メナシェの帰還

インドの「失われた部族」とイスラエルの新たなアリヤー作戦

【エルサレムINPS Japan=ロマン・ヤヌシェフスキー】

2026年春、イスラエルは近代ユダヤ史上でも極めて異例の移民事業を開始した。インド北東部に暮らすブネイ・メナシェ共同体の数千人をイスラエルに迎え入れる、政府支援の取り組みである。|ENGLISHRUSSIAN

イスラエル当局にとって、この計画は単なるアリヤー(イスラエルへの移住)事業にとどまらない。聖書に登場する「イスラエルの失われた10部族」の一つの子孫が、古代からの歴史的な帰還を果たすものと位置づけられている。

民を一つに結ぶ取り組み

新構想に基づく最初の大規模便は2026年4月、インドのミゾラム州とマニプール州から約240人の移民を乗せ、ベン・グリオン空港に到着した。「夜明けの翼」と名付けられたこの作戦は、2025年末にイスラエル政府が承認した、より広範な国家予算による計画の幕開けとなった。

イスラエル政府とユダヤ機関によれば、2026年末までにブネイ・メナシェ共同体の約1200人がイスラエルに到着する見通しである。長期計画では、2030年までに、インドに残る共同体のほぼ全員にあたる約5000~6000人を移住させることを目指している。

これは近代史上、「失われた部族」の伝承に結び付けられる共同体を対象とした、最大規模の組織的アリヤー事業の一つとなる。イスラエル当局は、この計画をイデオロギー的、歴史的な意味合いを持つものとして公然と位置づけている。ベンヤミン・ネタニヤフ首相はこの取り組みを「重要でシオニズム的」と評し、アリヤー・統合相のオフィル・ソフェル氏は、離散した民を集めるというイスラエルの国家的使命の一環だと述べている。

この作戦は、家族再統合とも深く関わっている。過去20年余りの間に、ブネイ・メナシェの数千人がすでにイスラエルへ移住したが、官僚的制約やイスラエルの移民政策の変化により、多くの場合、親族をインドに残さざるを得なかった。新計画は、残された家族の移住を完了させることを目的としている。

イスラエルの団体「シャヴェイ・イスラエル」によれば、現在、約5000人のブネイ・メナシェがイスラエルで暮らしている。同団体は2000年代初頭から、彼らのアリヤーを支援する中心的役割を担ってきた。多くはガリラヤ地方やノフ・ハガリル、キリヤト・ヤム周辺など、イスラエル北部に定住している。

ブネイ・メナシェとは何者か

ブネイ・メナシェ共同体は主に、ミャンマーとバングラデシュに近いインド北東部の辺境地帯に暮らすチン、クキ、ミゾ系の部族集団にルーツを持つ。彼らはチベット・ビルマ語派の言語を話し、歴史的には地域固有の部族宗教を信仰していたが、19世紀から20世紀にかけての大規模なキリスト教宣教活動により、この地域の宗教的景観は大きく変化した。

現代のブネイ・メナシェとしてのアイデンティティは、20世紀を通じて徐々に形成された。共同体には、「シンルン」または「チンルン」と呼ばれる古代の故地に関する伝承や、遠い西方の地から移動してきたとする口承が残されていた。1950年代になると、一部の部族指導者が、これらの伝承を聖書に登場するマナセ族の物語と結び付けるようになった。マナセ族は、2700年以上前、アッシリアによる北イスラエル王国征服後に追放された「失われた10部族」の一つとされる。

やがて、これらの共同体の数千人がユダヤ教の慣習を取り入れるようになった。安息日を守り、聖書に基づく祝祭日を祝い、特定の食物を避け、ヘブライ語の祈りを受け入れた。最終的に共同体の指導者らは、ユダヤ人との正式な再結合とイスラエルへの移住を求め、イスラエルの宗教当局や関連団体に接触した。

転機となったのは2005年である。イスラエルのセファルディ系首席ラビが、ブネイ・メナシェをイスラエルの子孫として正式に認めた。ただし、彼らの正確な系譜には不確実な点があり、主流のユダヤ教から何世紀にもわたって隔絶していたため、共同体の成員は、イスラエルの帰還法に基づく市民権取得に先立ち、正式な改宗手続きを受けることを求められている。

このアリヤー事業の中心的組織が、イスラエル元政府関係者のマイケル・フロイント氏が設立したシャヴェイ・イスラエルである。同団体は長年にわたり、インドでの宗教教育プログラムへの資金提供、改宗手続きの支援、移住便の調整を行ってきた。

「失われた10部族」の謎

ブネイ・メナシェの物語が多くのイスラエル人を引き付けるのは、それがユダヤ教における最古級の歴史的謎、すなわち「失われた10部族」の行方に関わるものだからである。

Mosaic of the 12 Tribes of Israel. From Givat Mordechai Etz Yosef synagogue facade, Ha Rav Gold street, in Jerusalem. Top row, right to left: Reuben, Judah, Dan, Asher Middle: Simeon, Issachar, Naphtali, Joseph Bottom: Levi, Zebulun, Gad, Benjamin
Mosaic of the 12 Tribes of Israel. From Givat Mordechai Etz Yosef synagogue facade, Ha Rav Gold street, in Jerusalem. Top row, right to left: Reuben, Judah, Dan, Asher Middle: Simeon, Issachar, Naphtali, Joseph Bottom: Levi, Zebulun, Gad, Benjamin Public Domain.

聖書と歴史的伝承によれば、古代イスラエル12部族のうち10部族は、紀元前8世紀にアッシリア帝国が北イスラエル王国を征服した後、歴史の表舞台から姿を消した。何世紀にもわたり、ユダヤ世界では、これらの部族の痕跡を残している可能性のある孤立した民族をめぐる伝説が語られてきた。

ブネイ・メナシェの事例が特異なのは、それが単なる象徴的、精神的な主張にとどまらない点にある。「失われた部族」の伝承につながる可能性を自認する数千人が、集団としてイスラエルに移住し、正式な宗教的承認を受け、ユダヤ人としてイスラエル社会に統合されつつある。この規模の移住が、特に「失われた部族」の物語と結び付いて行われる例は、近代ではほとんど前例がない。

一方で、歴史家や遺伝学研究者は慎重な見方を崩していない。

現在のところ、ブネイ・メナシェが古代マナセ族の直系の子孫であることを示す決定的な考古学的、文献的、遺伝的証拠は存在しない。多くの研究者は、その関連性を「あり得るが証明されていない」と見ている。最も有力な根拠は、口承、一部の儀礼上の類似性、そして共同体が長年抱いてきたイスラエル人としての自己認識である。一方、批判的な見方をする人々は、現代のブネイ・メナシェのユダヤ教的実践の一部は、特に20世紀に比較的新しく形成されたものだと指摘している。

Bnei Menashe immigrants from northeastern India arrive in Israel as part of the “Wings of Dawn” aliyah operation, welcomed at Ben Gurion Airport amid renewed efforts to reunite families linked to one of Judaism’s “Lost Tribes.” INPS Japan

イスラエル国内でも見解は分かれている。宗教当局者の中には、ブネイ・メナシェを、何世紀にもわたりアジアで孤立していた古代イスラエル人集団の真正な残存者と見る人々がいる。一方で、彼らを古代イスラエル人の直接の血縁的子孫ではなく、聖書の伝承に触発された誠実な改宗者と見る立場もある。イスラエル政府自体は、歴史的主張を断定することをおおむね避け、共同体のユダヤ教とシオニズムへの献身を強調している。

今回のアリヤー作戦は、インド北東部の不安定化を背景に進んでいる。2023年以降、マニプール州で続く民族間暴力により、共同体の多くが避難を余儀なくされ、移住手続きを完了させようとする動きが加速した。共同体の指導者らは、イスラエルの新たな取り組みを、人道的使命であると同時に、数十年来の夢の実現だと表現している。

多くのイスラエル人にとって、この物語が持つ感情的な力は、科学的な確実性にあるのではない。むしろ、インドの遠隔の山岳地帯に暮らす人々が、自らを「故郷へ帰る者」と信じてユダヤ国家に到着するという、歴史的象徴性にこそある。

ブネイ・メナシェだけではない「失われた部族」説

「失われた部族」と結び付けられてきた集団は、ブネイ・メナシェだけではない。

最も頻繁に論じられる共同体の一つが、エチオピアのベタ・イスラエルである。彼らのユダヤ人としてのアイデンティティはイスラエルによって正式に認められ、「モーセ作戦」や「ソロモン作戦」により、多数がイスラエルへ移住した。多くの伝承では、彼らはダン族と結び付けられるが、その正確な起源については、歴史家の間で今も議論が続いている。

しばしば言及されるもう一つの集団が、アフガニスタンとパキスタンのパシュトゥン人である。一部のパシュトゥン部族には、自らを古代イスラエル人と結び付ける口承があり、部族名の中には聖書の部族名に似たものもある。しかし、主流の歴史家は、その証拠は極めて不確実だと見ている。

南部アフリカのレンバ人も注目すべき事例である。遺伝学研究では、レンバ人の祭司階層の一部に中東系の遺伝的指標が確認されており、ユダヤ世界の外にありながら、古代近東系の祖先を示す一定の証拠を持つ数少ない集団の一つとされる。それでも研究者の間では、それが古代イスラエル人に由来するものなのか、あるいはより広範な歴史的中東移住を反映するものなのか、見解が分かれている。

中央アジアの共同体、クルド人の一部、中国や日本の特定集団も、時に「失われた部族」説と結び付けられてきた。ただし、多くの場合、その証拠は断片的であるか、主として民間伝承の域を出ない。

ブネイ・メナシェを際立たせているのは、その物語が伝説の域を超え、国家政策へと移行した点である。2026年、飛行機が到着し、家族が移住し、古代聖書に由来する物語が、歴史的に証明可能かどうかにかかわらず、現代イスラエルの物語の中に織り込まれつつある。

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この記事に言及されている「ユダヤ人の失われた十部族が日本に渡来した」という「日ユ同祖論」は、アッシリアに滅ぼされた古代イスラエルの人々が日本へ渡り、その文化や血縁が現代の日本人に引き継がれているとする説。主な根拠として、日本の神事や歌とヘブライ語の類似性(北海道の民謡「ソーラン節」の囃子詞「ヤーレンソーラン」は、ヘブライ語で「神に喜び歌う、独りで歌う者(あるいは神が答えてくださった)」という意味を持つと解釈される等)、秦氏の渡来などが挙げられるが、歴史的には実証的な証拠がない空想的な説として扱われている。

この物語には、少なくとも4つの国連持続可能な開発目標(SDGs)が関連している。

SDG 10(人や国の不平等をなくそう):ブネイ・メナシェのアリヤーは、地理的に孤立し、周縁化されてきた少数派をイスラエル社会に統合する取り組みである。共同体の多くは、インド北東部の経済的に開発が遅れた地域の出身であり、移住後には言語、教育、雇用面での障壁に直面する。

SDG 16(平和と公正をすべての人に):ブネイ・メナシェの事例は、法的承認、市民権、宗教的地位、制度的包摂といった問題を含んでいる。また、この作戦は難民危機や紛争に伴う避難ではなく、平和的な人道的移住の取り組みとして語られることが多い。

SDG 4(質の高い教育をみんなに):教育は、ブネイ・メナシェのアリヤーの過程で重要な役割を果たしている。移住の前後に、多くの参加者がヘブライ語教育、ユダヤ教教育、職業訓練、文化的オリエンテーションを受ける。

SDG 11(住み続けられるまちづくりを):多くのブネイ・メナシェ移民は、ガリラヤ地方やイスラエル北部の周辺地域に定住している。これは地域共同体と人口の維持・強化に寄与するとともに、文化的多様性の保全にもつながる。また、この物語は、伝統、アイデンティティ、共同体の継続性といった無形文化遺産の保護にも関わっている。

This article is brought to you by INPS Japan in collaboration with Soka Gakkai International in consultative status with UN ECOSOC.

SDG

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ロシアが集めるアフリカの「捨て駒」

ロンドンIPS=アンドリュー・ファーミン

4月7日、カメルーン政府は、ウクライナでロシア軍として戦い、死亡が確認された自国民16人の名簿を公表した。これにより、この遠い戦争で命を落としたカメルーン国民は、おそらく100人を超えたとみられる。ロシアが近年、アフリカを重点対象として進めてきた兵員募集の中で、カメルーンは最も多くの犠牲者を出した国となった可能性が高い。

消耗戦

Russian President Vladimir Putin addresses participants of the Russia-Uzbekistan Interregional Cooperation Forum in Moscow, Russia/ By Kremlin.ru, CC BY 4.0
Russian President Vladimir Putin addresses participants of the Russia-Uzbekistan Interregional Cooperation Forum in Moscow, Russia/ By Kremlin.ru, CC BY 4.0

ウラジーミル・プーチン大統領が2022年2月にウクライナへの全面侵攻を開始した際、この戦争は数日で終わると見込んでいた可能性が高い。だが、戦闘は4年目に入ってなお続き、ロシアの戦術は双方に甚大な人的損失をもたらしている。プーチン氏は兵士の命を顧みず、「肉挽き機」とも呼ばれる波状攻撃で、部隊を繰り返しウクライナ軍の前線に投入してきた。偽情報が広く飛び交う中、死傷者数の推計には大きな幅がある。死亡が確認された兵士を集計するあるプロジェクトでは、ロシア軍の死者は20万6000人を超えるとされる一方、130万人に達するとの推計もある。ロシアは補充を上回るペースで兵士を失っているとみられる

プーチン氏は北朝鮮の独裁者、金正恩総書記にも頼った。2024年以降、北朝鮮軍はロシア軍とともに戦っており、2万人超が投入され、6000人の死傷者が出たと報じられている。ロシアはまた、中央アジア諸国や、キューバのような長年の友好国からも人員を募集してきた。ウクライナ側もコロンビア人傭兵を含む数千人の外国人戦闘員を受け入れている。そうした中、ロシアは今、ますますアフリカに目を向けている。

ロシアの対アフリカ戦略

プーチン氏は長年にわたり、アフリカ諸国との関係強化を進めてきた。そうした関係は、ロシアが国際的孤立を和らげ、西側諸国からの圧力に対抗するうえで重要な役割を果たしている。軍事面でも、その関係は一方向ではない。謎の多いワグネル・グループのロシア人傭兵は、現在ではロシア政府の統制をより強く受けながら、ブルキナファソ、中央アフリカ共和国、マリを含む最大18のアフリカ諸国で活動している。ある国では反政府勢力と戦う政府軍を支援し、また別の国では、対立する2つの政権が権力を争うリビアや、残虐な内戦が続くスーダンのように、権力闘争を繰り広げる一方に肩入れしている。ロシア人傭兵は、その活動先の各地で残虐行為への関与を非難されてきた。

mage: Safariman/Flickr
mage: Safariman/Flickr

ロシアの進出は、一部で歓迎をもって受け止められてきた。旧宗主国フランスに代わる存在として、より対等な関係を約束する相手と映ったためである。2022年にワグネル部隊がマリに入った際には、沿道に集まった群衆がロシア国旗を振ってこれを迎えた。こうした歓迎の空気は、多くの場合、ロシアの軍事関与に先立って展開される親ロシア的な偽情報キャンペーンによって下地がつくられている。

しかし、その関係は搾取的である。ロシアは兵力提供の見返りとして、通常、ダイヤモンドや金などの天然資源を得る。そうして得た資源は、アフリカで掲げる反帝国主義の言辞とは裏腹に、本質的には帝国主義的なこの戦争を支える資金源となっている。

中部・西部アフリカの抑圧的な政権―その多くは軍事政権、あるいは軍を出身基盤とする指導者が率いている―にとって、人権状況を問題にしないパートナーは都合がよい。ロシア軍による人権侵害を明るみに出そうとする市民社会組織やメディアは、攻撃の対象にされている。

アフリカからウクライナ前線へ

ロシアは今、多くの若いアフリカ人男性の経済的困窮につけ込み、彼らをウクライナの前線に送り込み、ときに死に追いやっている。市民社会による最近の広範な調査では、ロシアがこれまでに少なくとも1417人のアフリカ国籍者を募集してきたことが確認されている。実際の人数は、ほぼ確実にこれを上回る。募集人数は年々増えており、そこには組織的な計画がうかがえる。確認された募集者数が最も多いのはエジプトで、カメルーン、ガーナがこれに続く。確認された1417人のうち、316人、すなわち22%が死亡したと報告されている。

一部の応募者は、オンライン上でロシア支持を表明している。他方で、ロシア国籍の取得や、母国では到底得られないほど高額の報酬に引きつけられる者もいる。最近のビザ要件緩和が示すようなロシアの「開放性」を、移民への敵意を強める欧州と比較して受け止めているのかもしれない。

だが、脱出に成功した人々の中には、だまされたと証言する者もいる。偽の求人広告によって、配管工や警備員などの民間職、あるいは後方支援業務に就くのだと信じ込まされていたのだ。現地に到着すると、読めもしないロシア語の契約書への署名を強いられ、わずかな訓練だけで前線へ送られる。死亡者の平均従軍期間がわずか6カ月にすぎないことは、ロシアが彼らを使い捨てとして扱っている証拠である。

勧誘を後押しする仲介者たち―募集を宣伝するソーシャルメディアのインフルエンサー、旅行代理店、人身売買ネットワークなど―は、この仕組みから利益を得ている。奇妙な政治的皮肉として、南アフリカの元大統領ジェイコブ・ズマ氏の娘ドゥドゥジレ・ズマ=サンブドラ氏も、アフリカ人勧誘への関与が指摘されている一人である。中には、父親の政党のボディーガードとして訓練を受けるのだと偽って勧誘された人もいる。昨年12月には、南アフリカ警察が、親ロシア的プロパガンダの拡散で知られるジャーナリストを含む5人を、南アフリカ人の勧誘に関する容疑で逮捕した。

説明責任を求める圧力

証拠が積み重なるにつれ、いくつかのアフリカ諸国政府は対応に乗り出した。トーゴ政府は国民に危険性を警告し、複数のトーゴ兵がウクライナで拘束された際には、彼らが仕事や就学の機会を約束されて現地に誘い出されたことを確認した。昨年、ボツワナ政府は、短期の軍事訓練プログラムに参加するつもりだった2人の若者が、実際には戦闘への参加を強いられていた事案について調査すると発表した。2月には、ガーナ外相が少なくとも55人の自国民が死亡したことを認め、ガーナ人捕虜の解放を求めてウクライナを訪れた。ケニアと南アフリカの警察は、人身売買組織を摘発し、募集機関を閉鎖した。ケニア政府は最近、ロシアがケニア国民の募集停止に同意したと明らかにしており、継続的な二国間圧力が成果を生み得ることを示している。

しかし、多くのアフリカ諸国政府はいまなお現状を認めようとしていない。自国民の命よりも、ロシアとの良好な関係を優先しているのである。そうすることで、自国民の命がロシアにとってそうであるのと同様に、自分たちにとっても消耗品同然であることを自ら示している。

Image source: Sky News
Image source: Sky News

ロシアによるこの搾取的な勧誘を終わらせるため、さらに多くの国が圧力を強めなければならない。そして、若いアフリカ人の福祉を本気で案じているとする国際的パートナーにとって、取るべき第一歩は明らかである。すなわち、困窮した若者たちが格好の勧誘対象となってしまう経済状況の改善を支援し、ロシアのような国ですら魅力的な行き先に見えてしまうような敵対的な移民政策を改めることである。

アンドリュー・ファーミンは、CIVICUS編集長、CIVICUS Lens共同ディレクター兼ライター、『State of Civil Society Report』共同執筆者。インタビューまたは詳細については、research@civicus.org まで。

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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トランプ・習首脳会談、台湾、イラン、そして世界の権力政治を議題に

【ニューヨークINPS Japan/ATN=アハメド・ファティ】

ドナルド・トランプ米大統領が今週予定している北京訪問は、貿易、関税、そして何らかの経済的成果をめぐるものとして語られている。だが、それはこの訪問を最も分かりやすく説明した場合にすぎない。より複雑で本質的なのは、世界の2大国が、公然たる対立に陥ることなく競争を管理し続けられるのかを試されている局面で、トランプ氏が中国を訪れるという点である。|ENGLISH

トランプ氏は5月14日から15日にかけて、北京で習近平国家主席と会談する見通しである。専門家らは今回の会談について、世界で最も重要な2国間関係を安定させるための、限定的ながらも意味のある試みとみている。戦略国際問題研究所(CSIS)によると、米国は経済とイラン問題に焦点を当てる一方、中国は米中関係の安定と台湾問題での進展を求める構えだ。

Ahmed Fathi.
Ahmed Fathi.

この違いは重要である。2017年のトランプ氏の初訪中は、儀礼や称賛、個人的な相性を強調する言葉に彩られていた。だが今回、北京で行われる2度目のトランプ・習会談を取り巻く環境は、はるかに厳しい。貿易摩擦、台湾をめぐる不安、技術規制、レアアースをめぐる中国の交渉力、イラン戦争、世界のエネルギー市場への圧力、そしてワシントンと北京の間で深まる不信が重くのしかかっている。

この首脳会談で問われているのは、トランプ氏がより有利な取引をまとめられるかどうかだけではない。得るもの以上の譲歩を迫られる事態を避けられるかどうかである。

ワシントン側の当面の狙いは明確だ。トランプ氏は目に見える成果を求めている。経済面での譲歩、中国による米国産品の購入拡大、フェンタニル問題での進展、重要鉱物へのアクセス、そして場合によってはイランをめぐる協力である。ホワイトハウスは今回の訪問を、トランプ氏の個人外交が中国政府を交渉のテーブルに引き戻した証しとして打ち出すだろう。

しかし、習政権も手ぶらで臨むわけではない。中国は、重要鉱物の供給網に対する支配、イランとの経済関係、そして台湾周辺の緊張を沈静化させることも高めることもできる能力を含め、独自の交渉力を持って首脳会談に臨む。米外交問題評議会(CFR)は、中国が会談を前に優位に立っている可能性があると指摘する。その一因は、イラン戦争が世界の不安定化を招く一方で、中国が重要鉱物とエネルギー外交を通じて交渉力を保っていることにある。

習氏の目的はトランプ氏とは異なる。劇的な発表は必要としていない。習氏が必要としているのは、中国が封じ込めるべき問題ではなく、対等な大国として扱われなければならないという認識である。北京はワシントンとの安定を望んでいるが、それは中国が「核心的利益」と呼ぶものを守る条件の下での安定である。

An illustrative map highlighting the intricate political history between the People’s Republic of China and Republic of China (Taiwan)
An illustrative map highlighting the intricate political history between the People’s Republic of China and Republic of China (Taiwan)

その核心的利益の中心にあるのが台湾である。

中国当局者は首脳会談を前に、この点を繰り返し強調してきた。北京は、米国は自らの約束を守り、台湾問題を慎重に扱うべきだと述べている。中国国営メディアもまた、台湾が米中関係の中核に位置し続けていると強調している。

この点に、今回の会談で最も危うい外交上の駆け引きが潜んでいる。懸念されるのは、トランプ氏が台湾を正式に見捨てることではない。むしろ問題は、同氏の取引重視の姿勢が、米国の台湾関連の表現を弱めることや、台湾への武器売却を遅らせること、あるいは他分野での協力と引き換えに対中圧力を下げる暗黙の了解を中国に求めさせる可能性がある点である。

購入合意や関税の一時停止、あるいはイランに関する声明は、ワシントンでは勝利と受け止められるかもしれない。だが、その代償がアジアにおける抑止力の低下や同盟国の信頼低下、台湾問題をめぐる曖昧さであるなら、戦略的損失は経済的利益を上回りかねない。

アジアにおいて、言葉は単なる飾りではない。一つの表現が同盟国を安心させ、市場を動揺させ、あるいは軍事的な試みを誘発することがある。

イランは、さらに別の層を加える。戦争はトランプ氏の立場を複雑にしている。中国はテヘランと重要な関係を維持する一方で、湾岸地域のエネルギー供給の安定にも依存しているからである。北京には紛争の拡大を防ぐ利益がある。しかし、ワシントンの下請けのように振る舞う理由はない。

中国は、ホルムズ海峡の安定を回復する取り決めにトランプ氏が至るよう促す可能性が高い。しかし、米国のためにイランへ圧力をかけているように見えることは避けるだろう。そこに習氏の交渉余地が生まれる。米国がイランの抑制、石油輸送の維持、あるいは外交経路の再開に向けて中国の協力を望むなら、北京は見返りを求めることになる。

London Post
London Post

その答えは、関税、制裁、技術規制、あるいは台湾に関する表現に及ぶ可能性がある。

だからこそ、今回の訪問は2国間関係を超えるリスクを伴う。日本、韓国、台湾、欧州、中東諸国はいずれも、トランプ氏と習氏が大国間の秘密取引を作り出していないかを注視するだろう。小国や中堅国が恐れるのは、ワシントンと北京の対立だけではない。自分たちの知らないところで取り決めがなされることも恐れている。

Photo credit: UNESCO
Photo credit: UNESCO

技術もまた戦場である。半導体、人工知能、輸出規制、レアアースをめぐる争いは、もはや国家安全保障と切り離せない。記者会見では関税が前面に出るかもしれない。しかし、半導体と鉱物こそが将来の権力の構造を形づくる。技術競争の方向性が明確にならないまま貿易休戦が成立しても、市場を一時的に落ち着かせるだけで、対立の核心は手つかずのまま残る。

ブルッキングス研究所は、この首脳会談で注視すべき論点として、会談が緊張緩和につながるのか、どのような実務レベルの協議枠組みが立ち上がるのか、そして双方が台湾、貿易、レアアース、世界的危機管理といったより深い問題にどう向き合うのかを挙げている。

それこそが、最も現実的な成功の尺度である。この首脳会談が米中競争を解決することはない。決めるのは、その競争がより予測可能なものになるかどうかにすぎないかもしれない。

中国にとって、予測可能性は有用である。それは北京に、経済を強化し、世界各地の連携を深め、外交的影響力を拡大し続ける時間を与える。トランプ氏にとって、予測可能性が政治的に有用となるのは、それが目に見える成果を伴う場合に限られる。この不一致は重要である。習氏は雰囲気だけで首脳会談を終えることができる。トランプ氏には成果物が必要である。

危険なのは、その成果物そのものが罠となることである。

購入合意、一時的な関税停止、あるいはイランに関する声明は、ワシントンでは勝利に見えるかもしれない。しかし、その代償がアジアにおける抑止力の低下、同盟国の信頼の弱体化、台湾をめぐる曖昧さであるなら、戦略的な損失は経済的利益を上回りかねない。

北京訪問の核心的な問いはここにある。トランプ氏は対立を安定させようとしているのか。それとも、それを取引材料として換金しようとしているのか。

両者は異なる。

対立を安定させるには、規律、明確なレッドライン、同盟国への安心供与、そして危機管理と核心的な安全保障上の約束を切り離す意思が必要である。対立を換金するとは、あらゆる問題を一つの取引に混ぜ込むことを意味する。台湾と貿易、イランとレアアース、関税と沈黙、安定と服従である。

習氏は、トランプ氏が北京に何を持ち込んだのかを試すだろう。

首脳会談は、丁寧な言葉、限定的な合意、そして世界で最も重要な2国間関係を掌握していると主張する2人の強力な指導者の映像を生み出すかもしれない。しかし、本当の結果は細則の中に、あるいは語られずに残されたことの中にあるのかもしれない。

台湾が曖昧に扱われれば、同盟国はそれに気づくだろう。イランが交渉に組み込まれれば、湾岸諸国はそれに気づくだろう。技術規制が緩めば、市場と安全保障機関はそれに気づくだろう。声明が難題を完全に避けるなら、その沈黙にも意味が宿る。

本稿は、トランプ氏の中国訪問が持つ世界的な意味を検証するATNの連載第1回である。次回以降の記事では、日本と韓国が台湾、北朝鮮、同盟の信頼性という観点からこの首脳会談をどう読んでいるのか、中東・北アフリカがイラン、石油、海洋安全保障、戦略的ヘッジの限界を通じて何を見ているのか、そして欧州がウクライナ、貿易、NATO、中国との不安定な関係におけるリスクをどう評価しているのかを取り上げる。

トランプ氏は取引を求めて北京に到着するかもしれない。習氏が求めるのは、より大きなものである。米国の圧力政策には限界があるという証明である。

そしてその駆け引きにおいて、写真撮影の機会は最も重要でない部分かもしれない。

アハメド・ファティは、国際的に配信されるジャーナリストであり、国連担当記者、国際情勢アナリスト、人権問題のコメンテーターである。外交、多国間主義、権力、公共の自由、そして世界の未来を形づくる政治について執筆している。INPS Japanは提携メディアとしてATN記事の一部を日本語に翻訳して配信している。

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