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武力紛争、資金削減、サプライチェーンの混乱が世界の飢餓リスクを一段と深刻化

【国連本部IPS=マクシミリアン・マラウィスタ

武力紛争、経済的混乱、そして気候変動による圧力が、世界で最も脆弱な地域における食料不安を一層深刻化させている―。国連世界食糧計画(WFP)と国連食糧農業機関(FAO)が共同で公表した最新の「飢餓ホットスポット報告書(2026年6~11月見通し)」は、このように警告している。|英語版

報告書は、2026年6月から11月にかけて深刻な食料不安の悪化が予測される13の「飢餓ホットスポット」を分析した。その中でも、イエメン、パレスチナ自治区、スーダン、南スーダン、ソマリア、ナイジェリア、ハイチが、特に深刻な懸念地域として挙げられている。

報告書によれば、13地域のうち12地域で、食料不安を引き起こす最大の要因は武力紛争である。

さらに、過去5年間で世界の紛争件数は約2倍に増加し、2025年には世界人口の6人に1人が武力紛争や暴力の影響を受けたとしている。

また、2025年時点で約1億1,730万人が強制的な避難を余儀なくされており、受け入れ地域の負担を著しく増大させるとともに、食料不安をさらに深刻化させているという。

複数地域で飢饉の危険性

報告書は、複数の地域で飢饉(Famine)の危険性が依然として続いていることにも警鐘を鳴らしている。

中でもスーダンは世界で最も深刻な食料危機の一つに直面していると指摘された。

さらに、イエメン、ガザ地区、南スーダン、ソマリアでも飢饉発生の危険性が続いている。

また、ナイジェリアとソマリアについては、食料安全保障の見通しが一段と悪化したことから、警戒レベルが最高水準へ引き上げられた。

今後の見通し期間中、両国では人口の大部分が壊滅的なレベルの食料不安に直面する可能性があるとしている。

特にナイジェリアでは、約3,480万人が深刻な急性食料不安に直面すると予測されており、すべてのホットスポットの中で最大規模となる見込みである。

サプライチェーンの混乱が危機を増幅

食料不安の最大要因は依然として武力紛争だが、経済的圧力やサプライチェーン(供給網)の混乱も新たな脆弱性を生み出している。

6月18日に行われた報告書発表会で、WFPとFAOの担当者は、世界の物流網の混乱が食料危機をさらに悪化させる恐れがあると警告した。

London Post
ホルムズ海峡  資料:ロンドンポスト

FAOによれば、世界の石油供給量の約4分の1と、世界の肥料貿易の約3分の1がホルムズ海峡を通過している。

そのため、海峡で輸送が妨げられれば、燃料価格や輸送費、保険料、さらには肥料価格までもが上昇する可能性がある。

FAOは、こうした影響が連鎖的に広がることで、人道支援活動のコストが増加し、食料価格が上昇するとともに、すでに深刻な食料不安に直面している人々への支援物資の到着が遅れる恐れがあると指摘している。

もともと購買力が極めて低い世帯や、慢性的な資金不足に苦しむ人道支援機関にとって、こうしたコスト増加は極めて深刻な影響を及ぼす。

気候変動リスクも拡大

WFPとFAOは、気候変動によるリスクも高まっていると警告する。

特にエルニーニョ現象によって降雨パターンが不規則となり、多くの脆弱地域で農業生産が混乱する可能性があるという。

半減した支援資金、倍増した飢餓人口

一方で、人道支援機関は、対応に必要な資金そのものを失いつつある。

WFPとFAOによれば、人道支援機関への資金提供は2022年から2025年の間に約59%減少した。

これは2016~2017年当時と同程度の低水準である。

しかし同じ期間に、深刻な急性食料不安に直面する人口は約2倍に増加した。

つまり、人道支援機関は2016~2017年当時の半分以下の資金で、2倍の支援対象者に対応しなければならない状況に置かれている。

支援ニーズが増え続ける一方で資金は減少しており、多くの機関は支援規模の縮小を余儀なくされている。

「地域で食料を生産することが解決策の一つ」

インタープレスサービス(IPS)は記者会見で、サプライチェーンの混乱への対応策について質問した。

これに対し、FAO緊急・レジリエンス局長のライン・ポールセン氏は、地域での食料生産能力を強化することが解決策の一つだと語った。

同氏は、スーダンでは1,770万ドルの投資によって約5億1,500万ドル相当の食料生産が実現したと説明した。

また、一部地域では、紛争や物流混乱が続く中でも、雑穀(ミレット)栽培によって数十万世帯の生活を支えることができたという。

「地域での生産を重視することが答えの一部です。」

ポールセン氏はそう強調した。

FAOによれば、このミレット生産プログラムでは、1ドルの投資につき約29ドル相当の食料生産が実現した計算になる。

飢饉は防ぐことができる

A local farmer harvests sorghum produced from seeds donated by the Food and Agriculture Organization (FAO) through the “Improving Seeds” project. Credit: FAO/Fred Noy

WFPとFAOは、現代の飢饉の多くは予測可能であり、防ぐことも可能だと強調している。

そのためには、

  • 継続的な資金提供
  • 人道支援への安全なアクセス
  • 危機が深刻化する前の早期対応

が不可欠である。

両機関は、こうした取り組みこそが、深刻な食料不安が破局的な飢饉へと発展するのを防ぐ鍵になると訴えている。

INPS Japan/ IPS UN Bureau Report

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核時代からAI時代へ―人類は新たな平和の枠組みを築けるか

【バチカンシティINPS Japan=浅霧勝浩

広島と長崎への原子爆弾投下によって人類が核時代に突入してから、すでに80年以上が過ぎた。いま世界は、科学や産業の領域をはるかに超える影響をもたらす、もう一つの技術革命に直面している。核兵器は今なお、わずか数時間のうちに文明を破壊し得る力を持つ。その一方で人工知能(AI)は、軍事計画、情報収集、サイバー作戦、戦略的意思決定のあり方を急速に変えつつある。こうした変化は、第2次世界大戦後に築かれた国際制度が、そもそも想定していなかったものである。|英語版中国語

Global Nobel Laureates Assembly on AI and Nuclear War

このような状況を背景に、ノーベル賞受賞者約30人とノーベル賞受賞団体の代表、元国家元首・政府首脳、AI研究の第一人者、科学者、カトリック関係者、市民社会の代表らを含む200人以上が、7月14日から16日まで、カステル・ガンドルフォの教皇庁庭園内にあるボルゴ・ラウダート・シに集う。

「人工知能と核戦争に関する世界ノーベル賞受賞者会議」には、科学、技術、平和構築、倫理の分野で世界を代表する人々が参加し、21世紀を特徴づける重要な問いに向き合う。

人工知能は平和を築く力となり得るのか。それとも、すでに不安定化している核時代において、戦争の危険をさらに深刻化させるのか。

3日間にわたる会議は7月16日にローマで閉幕し、「非武装かつ軍縮を促す平和のためのローマ宣言」が発表される予定である。同宣言は、人工知能(AI)、核兵器、自律型兵器、デジタル・ガバナンス、新たな技術開発モデルに対応するための原則と提言を示すことを目的としている。

戦略的岐路に立つ世界

この会議が今、開催されるのは偶然ではない。

国際安全保障環境は、かつてなく不安定になっている。ロシアによるウクライナ侵攻は、冷戦後の欧州安全保障秩序を揺るがしている。中東で続く紛争は、さらに広範な地域的エスカレーションへの懸念を高めた。主要国間の関係が悪化するなか、核兵器をめぐる威嚇的な言説も、ここ数十年見られなかったほどの激しさで国際政治に戻ってきた。

同時に、9つの核保有国すべてが核戦力の近代化、あるいは拡張を進めている。かつて戦略的競争を管理する役割を担っていた軍備管理の枠組みの多くは弱体化し、失効し、あるいは政治的に機能不全に陥っている。対立国間の意思疎通の経路も狭まり、誤解や誤算が重大な危機を招く危険性が高まっている。

AIは、こうした不安定な環境のなかへ、驚異的な速度で入り込みつつある。

AIシステムはすでに、膨大な情報の処理、パターンの特定、軍事計画の支援、サイバー能力の強化、従来は人間が数時間から数日をかけて行っていた判断の迅速化を可能にしている。将来的には、危機予防、軍縮検証、早期警戒を支援する新たな手段となる可能性もある。

しかし、同じ能力が危機を一層危険なものにする恐れもある。

AIは、緊急時に政治指導者や軍指導者が判断を下すまでの時間を短縮させる可能性がある。不正確あるいは誤解を招く分析を生成し、偽情報を増幅し、指揮統制システムをサイバー攻撃に対して脆弱にし、国家が自動化技術により多くの権限を委ねることを促しかねない。

中心的な懸念は、機械が独自の判断で核兵器の発射を決定することだけではない。より差し迫った危険は、情報が不完全で、一度の誤りが取り返しのつかない結果をもたらす極度の緊張状態において、AIが生成した情報、予測、提言が人間の意思決定に影響を及ぼすことである。

人類はしたがって、これまで経験したことのない課題に直面している。

問われているのは、核兵器をどのように管理するかだけではない。技術革新が政治的判断力を追い越してしまう前に、人工知能、軍事力、核使用をめぐる意思決定の関係をいかに統治するかという問題である。

なぜバチカンなのか

Presidente da República, Luiz Inácio Lula da Silva, durante audiência com Sua Santidade o Papa Leão XIV. Biblioteca do Palácio Apostólico, Vaticano.

Foto: Ricardo Stuckert / PR

開催地にバチカンが選ばれたことには、深い象徴的意味がある。

教皇庁は核兵器を保有せず、通常の意味での軍事力もほとんど持たない。しかし、世界の大多数の国々と外交関係を結び、戦争と平和をめぐる議論において、人間の尊厳、道義的責任、民間人の保護を中心に据えるよう、長年にわたり訴えてきた。

会議が開かれるボルゴ・ラウダート・シは、カステル・ガンドルフォの教皇別荘庭園内に設けられた教育・環境施設である。主催者によれば、今回の会議は、AI時代における人間の保護を主題とする教皇レオ14世の回勅『マグニフィカ・フマニタス』の理念に触発されている。

会議が掲げる「非武装かつ軍縮を促す平和」という理念は、単に戦争が存在しない状態を超えた平和観を示している。

「非武装の平和」とは、軍事力を際限なく増強することによって安全を恒久的に維持できるという考えを否定するものである。「軍縮を促す平和」とは、兵器を削減するだけでなく、軍事化を持続させる政治的不安、国家間の対立、経済構造そのものを変革しようとする考え方である。

この視点によって、議論は単なる技術的安全性の問題を超えていく。

ますます強力になる技術が政治、経済、情報、戦争のあり方を変えるなかで、人類はどのような社会を築こうとしているのか。それはまた、技術革新が人間の尊厳に従属し続けるのか、それとも人間が自ら生み出した技術に徐々に従属していくのかという、より根源的な倫理的問いを突きつけている。

政府だけでは解決できない時代

今回の会議の最も重要な特徴の一つは、未来を形づくるあらゆる技術を、もはや政府だけで統治することはできないという現実を認識している点にある。

冷戦時代、核外交の中心的主体は国家だった。核兵器不拡散条約(NPT)や包括的核実験禁止条約(CTBT)などの取り決めは、核兵器、運搬手段、核兵器製造に必要な物質を国家が管理していたからこそ、政府間交渉によって形成された。

しかし、人工知能をめぐる現実は根本的に異なる。

現在、世界で最も高度なAIシステムの多くを開発しているのは、政府だけでなく、民間企業、大学、研究機関である。テクノロジー企業のなかには、多くの政府に匹敵し、場合によってはそれを上回る計算資源、データ、専門知識を保有するところもある。企業の研究部門内部で下される決定が、世界規模の政治的、社会的、安全保障上の影響をもたらし得る時代なのである。

したがって、効果的な統治には、従来型の外交を超えた仕組みが必要となる。

国家、テクノロジー企業、科学者、大学、国際機関、宗教界、市民社会による持続的な協力が不可欠である。

だからこそ今回の会議では、ノーベル賞受賞者、AI企業、世界有数の大学・研究機関、核軍縮団体、バチカンを中心とするカトリック関係者、そして仏教を基盤とする創価学会などの市民社会組織が一堂に会する。

参加者や協力機関には、OpenAI、Google DeepMind、Anthropic、AARUの関係者をはじめ、ノーベル女性イニシアチブ、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)、パグウォッシュ会議、ユヌス・センター、『原子力科学者会報』などが含まれている。

Global Nobel Laureates Assembly on Artificial Intelligence and Nuclear War
Global Nobel Laureates Assembly on Artificial Intelligence and Nuclear War

また、欧州、アジア、北米、オーストラリアを代表する大学・研究機関も参加する予定である。

この会議の意義は、参加者の知名度だけにあるのではない。そこに代表されている分野と共同体の多様性にこそある。

政府だけに依存するのではなく、科学、技術、倫理、宗教、市民社会が共通の存亡的リスクに向き合い、接点を見いだそうとする、新たな国際ガバナンスの姿をこの会議は映し出している。

核弾頭からアルゴリズムへ

核時代の大部分において、軍備管理交渉が対象としてきたのは物理的な物体だった。核弾頭、ミサイル、爆撃機、潜水艦、核物質、核実験施設などである。

AI時代は、これまでとは異なる課題をもたらす。

アルゴリズムはミサイルのように目に見えるものではない。ソフトウェアは短期間で変更でき、データはほぼ瞬時に国境を越える。平和目的で開発された民間システムが、軍事目的に転用されることもある。重要な技術がコードやネットワーク、民間企業が管理する計算基盤の内部に組み込まれている場合、検証、説明責任、透明性の確保は格段に難しくなる。

将来の軍備管理や安全保障の枠組みは、兵器そのものだけでなく、その使用に関する情報を提供し、運用を誘導し、意思決定を加速させるデジタルシステムまで統治しなければならない可能性がある。

かつては理論上の問題とみなされていた問いが、急速に現実味を帯びている。

人工知能を核兵器の指揮統制システムに組み込むことを、果たして認めるべきなのか。自律型兵器に対して、どの程度の人間による監督を維持しなければならないのか。危機の最中に複数のAIシステムが相反する警告を発した場合、国家はどう対応すべきなのか。民間のAI企業が開発した製品が軍事目的に転用された場合、企業にどのような責任を求めるべきなのか。そして、信頼できる安全措置を構築できる国際機関は存在するのか。

今回の会議が、これらすべての問いに3日間で答えを出すことはできない。

しかし、核問題の専門家、ノーベル賞受賞者、AI開発者、研究者、宗教関係者、平和活動家を同じ場に集めることで、これまで互いに切り離されたまま進められてきた議論に、共通の言語をもたらす可能性がある。

国際ガバナンスの新たな章となるか

歴史を振り返れば、人類は存亡に関わる脅威に直面するたびに、新たな理念、制度、規範をつくり出してきた。

1955年のラッセル=アインシュタイン宣言は、核兵器が人類の生存そのものを危険にさらしていると警告した。1957年に始まったパグウォッシュ会議は、冷戦によって分断された科学者たちの間に意思疎通の経路を開いた。その後、NPTが国際的な核秩序の中心的枠組みとなった。

The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras
The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras

2017年に採択された核兵器禁止条約は、核兵器が国際人道上の原則と相いれないことを明確にし、核抑止に対する人道的、道義的な異議をさらに強めた。

世界ノーベル賞受賞者会議が将来、こうした歴史の系譜に連なるものと評価されるかどうかは、まだ分からない。

国際会議で採択される宣言が、一夜にして政策を変えることはほとんどない。法的拘束力も、履行を強制する仕組みも、当面の政治的支持も欠く場合がある。文言は理念的なものにとどまり、その影響が目に見えるようになるまでに何年もかかることもある。

しかし宣言は、国際的な議論の前提そのものを変えることがある。

ラッセル=アインシュタイン宣言は核兵器を廃絶しなかったが、国際的な運動を生み出すきっかけとなった。第1回パグウォッシュ会議は冷戦を終わらせなかったが、のちの軍備管理外交に貢献する人間関係を築いた。世界人権宣言は当初、法的拘束力を持たなかったが、やがて国際法と政治的正統性の基礎的な規範となった。

したがってローマ宣言の重要性は、直ちに具体的な合意を生み出すかどうかよりも、政府、テクノロジー企業、大学、国際機関、市民社会を巻き込む持続的なプロセスを開始できるかどうかにかかっているのかもしれない。

より大きな問いは、危険な慣行が固定化されてしまう前に、新たな規範を築くことができるかどうかである。

ローマ宣言に向けて

Palazzo Senatorio Credit: Di Tournasol7 - Opera propria, CC BY-SA 4.0
Palazzo Senatorio Credit: Di Tournasol7 – Opera propria, CC BY-SA 4.0

会議は7月16日、ローマのカピトリーノの丘で開かれる公式会合をもって最高潮を迎え、そこで「非武装かつ軍縮を促す平和のためのローマ宣言」が発表される予定である。

同文書は、人工知能、核兵器、自律型兵器、新たなデジタル・プロトコル、新興のデジタル開発モデルの時代に対応することを目的としている。主催者によれば、協力、人間の尊厳、全人的発展、諸国民間の平和に基づく国際安全保障のあり方を促進する内容となる。

重要なのは、宣言が幅広い倫理的訴えを超えて、どこまで踏み込むかである。

核兵器や自律型兵器のシステムに対する「意味のある人間の統制」を求めるのか。核使用をめぐる意思決定にAIが果たす役割を制限する提案を示すのか。民間AI企業の責任を明確にするのか。新たな国際的監視、対話、検証の仕組みを提案するのか。そして、理念を政策へと転換するための継続的なプロセスを確立するのか。

その答えによって、この会議が主として象徴的な出来事にとどまるのか、それとも人工知能、核リスク、人間の安全保障をめぐる、より広範な「ローマ・プロセス」の出発点となるのかが決まるだろう。

広島、長崎から80年以上を経たいま、人類は再び、文明の未来を根底から変え得る技術に直面している。

核兵器は今なお、人間が自らの社会を破壊し得る最も直接的な手段である。その一方で人工知能は、核兵器が実際に使用されるか否かを左右する判断の速度、複雑性、性格に影響を及ぼし始めている。

したがって、決定的な課題は、人類が核兵器を管理できるかどうかだけではない。

人工知能が人間の判断を置き換えるのではなく、それを支えるようにすること。壊滅的な誤りの危険を増幅するのではなく、それを減らすようにすること。そして戦争ではなく、平和に貢献するようにすること。そのための制度を、人類は構築できるのかが問われている。

その答えが、カステル・ガンドルフォでの3日間の協議だけから生まれることはないだろう。

しかし、そこで始まる対話は、技術、安全保障、人間の責任をめぐる今後の国際的議論に、長期にわたって影響を与える可能性がある。

UN Photo
UN Photo

INPS Japanは会議期間中、カステル・ガンドルフォおよびローマから現地取材を行い、7月16日のローマ宣言発表後に続報となる分析記事を配信する予定である。This article is brought to you by INPS Japan in collaboration with Soka Gakkai International in consultative status with UN ECOSOC.

INPS Japan

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米国に異を唱え、その代償を払った国連事務総長 ― ブトロス・ブトロス=ガリの軌跡

【国連IPS=タリフ・ディーン

エジプトの元外相ブトロス・ブトロス=ガリが1991年末、国連事務総長選に立候補した際、最大のライバルはジンバブエの外相だったバーナード・チゼロ氏だった。当時、事務総長ポストは地域持ち回りの慣例に基づきアフリカに割り当てられており、選挙戦が本格化する中、ブトロス=ガリは長年の友人でもあったチゼロ氏との印象深い出来事を後に振り返っている。|ENGLISH

アフリカで開かれたある国際会議で二人が英語で会話を交わしていると、チゼロ氏は突然フランス語へ切り替えた。

その意図を察したブトロス=ガーリは、チゼロ氏の肩を抱きながら冗談交じりにこう言ったという。

「バーナード、フランスの支持を得たいのなら、フランス語を話すだけでは足りない。英語もフランス語なまりで話さなければならないよ。

安全保障理事会の常任理事国で拒否権を持つフランスは、自国語へのこだわりが非常に強いことで知られており、フランス語を話せない候補者には拒否権を行使した可能性さえあった。

実際、国連事務総長を目指す者は、フランス語を実務レベルで使えなければ、あるいは少なくとも習得する意思を示さなければ選出は極めて困難だとされてきた。フランスはフランス語を「国際外交の言語」と位置付けているからである。

そこで一つの疑問が浮かぶ。

現在、次期国連事務総長選に立候補している候補者のうち、英語とフランス語の双方を流暢に話せる人は何人いるのだろうか。

国連創設以来81年間、その実務言語の中心は英語とフランス語である。中国語、アラビア語、スペイン語、ロシア語も公用語ではあるが、日常業務では英語とフランス語が主に使用されてきた。

英語、アラビア語、フランス語を自在に操ったブトロス=ガーリは、1992年1月から1996年12月まで「世界で最も困難な仕事」と称される国連事務総長を務めた。

記者会見で3か国語を話せることについて尋ねられた際、彼は笑いながらこう答えた。

「私の第一言語はアラビア語です。妻とけんかをするときはアラビア語でけんかをしますから。

「事務総長の独立」は神話なのか

Photo: UNON – United Nations Office at Nairobi
Photo: UNON – United Nations Office at Nairobi

ブトロス=ガリは、「国連事務総長の独立性」は、国連の外部で語られる神話にすぎないと指摘していた。

国際公務員である事務総長は就任と同時に自国への政治的忠誠を捨て、いかなる政府からも指示を求めたり受けたりしてはならない―これは国連憲章第100条に明記されている。

しかし実際には、歴代9人の事務総長のほぼ全員が、大国との政治的妥協を重ねてきた。

その内幕を最も率直に明かしたのがブトロス=ガリだった。

彼は、米国の拒否権によって唯一再選を阻まれた国連事務総長である。

1996年、安全保障理事会では15か国中14か国がブトロス=ガリ支持に回った。

英国、フランス、ロシア、中国という他の常任理事国4か国もすべて支持していた。

それでも米国は単独で拒否権を発動した。

本来ならば、慣例として反対する国は棄権し、多数意思を尊重するのが外交上の作法だった。

しかし米国は、圧倒的多数の支持を無視した。

民主主義を世界に説く米国が、多数決の原則を国連では受け入れなかったのである。

「Yes Manではなく、Yes Sir Man」

ブトロス=ガリは歴代事務総長の中でも比較的米国に従わなかった人物として知られる。

もちろん、ワシントンの圧力に屈した場面もあった。

しかし、米国の国益を守るためだけに国連を動かすことには最後まで抵抗した。

元国連事務次長のサミール・サンバル氏は先週IPSに対し、事務総長退任後の興味深いエピソードを明かした。

ある日、かつてのライバルだったチゼロ氏がブトロス=ガーリに尋ねた。

「あなたは『アメリカのイエスマン』と言われていた。それなのになぜアメリカは再選を阻止したのか。」

ブトロス=ガーリは、持ち前のユーモアを交えて答えた。

「アメリカが求めていたのは『Yes Man』ではない。『Yes Sir Man』だったのだ。」

米国に配慮しても再選できなかった

1999年に出版した回顧録『Unvanquished: A US-UN Saga(敗れざる者―米国と国連の物語)』の中で、ブトロス=ガーリは、米国がいかに国連と事務総長を自国の利益のために利用してきたかを詳細に描いている。

ワシントンからは「米国に対して独立しすぎている」と批判された。

しかし実際には、彼自身、米国の支持を得るために可能な限りの配慮を行っていた。

それでも米国だけが再任に反対した。

回顧録の中で彼は、当時のウォーレン・クリストファー国務長官との会談を紹介している。

「私は、ワシントンの要請で、多くのアメリカ人を国連職員に任命した。他の加盟国が反対していたにもかかわらずだ。」

「私はそうしたのは、事務総長として職務を遂行するために米国の支持が必要だったからだ、と説明した。」

しかしクリストファー長官は何も答えなかった。

1992年に就任した時点で、国連管理部門職員の約半数がアメリカ人だった。

しかし米国が負担していた通常予算は全体の25%にすぎなかった。

「この2人は解任してほしい」

1993年にクリントン政権が誕生すると、新政権はブッシュ政権時代に任命された2人のアメリカ人国連事務次長―リチャード・ソーンバーグ氏とジョセフ・バーナー・リード氏――を解任するよう求めた。

彼らは本来、加盟国ではなく国連だけに責任を負う国際公務員だった。

それにもかかわらず、クリントン政権が支持する別のアメリカ人に交代させられた。

ブトロス=ガリは選挙前、ジョン・ボルトン米国務次官補(国際機関担当)が前任のハビエル・ペレス・デクエヤル事務総長について、「米国の利益への配慮が足りなかった」と不満を抱いていると聞かされた。

そこで彼はボルトンにこう語った。

「私は米国の政策を真剣に尊重しています。」

さらに、

「米国の支持がなければ、国連は機能停止に陥るでしょう。」

とも述べている。

「米国だけで事務総長を解任できるのか」

ブトロス=ガリは、クリストファー長官から「再選に立候補しない」と自ら公表するよう求められたことも明かしている。

しかし彼は拒否した。

「米国の一方的な命令だけで国連事務総長を辞めさせることなどできるのでしょうか。」

「他の14か国の安全保障理事会理事国の権利はどうなるのですか。」

そう問い返したという。

クリストファー長官は何か聞き取れない言葉をつぶやいた後、不機嫌そうに電話を切った。

「友人のふりをして足を折る」

1996年には、当時のマデレーン・オルブライト米国連大使が、国務省の指示を受けてブトロス=ガリ排除に執着していたという。

アメリカ人事務次長ジョセフ・バーナー・リード氏によれば、オルブライト大使はこう語っていた。

「私はブトロスに、自分が友人だと思わせる。そして最後に彼の足を折る。」

ブトロス=ガリは後にこう書いている。

「彼女は終始穏やかな表情と友好的な笑顔を崩さず、友情や敬意を語り続けながら、私の権威を失墜させ、私の評判を傷つける機会を一つも逃さなかった。」

さらに彼は、あるインド人学者の言葉を思い出したという。

「外交と欺瞞の間には何の違いもない。」

ユニセフ人事でも米国の影響力

ブトロス=ガリは、ビル・クリントン大統領から、米疾病対策センター(CDC)元所長ウィリアム・フォーギー氏をユニセフ事務局長に任命するよう求められたことも明かしている。

しかし当時はベルギーとフィンランドが優秀な女性候補を擁立していた。

A view of the Headquarters of the United Nations in New York as seen from the north of the UN site. Photo credit: UN
A view of the Headquarters of the United Nations in New York as seen from the north of the UN site. Photo credit: UN

さらに米国は国連分担金を滞納し、国連への批判も繰り返していた。

そのため加盟国の間では、

「ユニセフ事務局長は必ずアメリカ人でなければならない」

という暗黙の了解は崩れ始めていた。

ブトロス=ガリはオルブライト大使にこう伝えた。

「米国が女性候補を推薦するのであれば、その後のことは私も考えます。」

するとオルブライトは目をむき、不満そうな表情を浮かべたという。

最終的に米国は、元米国平和部隊(Peace Corp)総裁のキャロル・ベラミー氏を新たな候補として推薦した。

非公式投票では、フィンランドのエリザベス・レーン氏が15票、ベラミー氏が12票を獲得した。

しかしブトロス=ガーリ氏は、米国が1947年のユニセフ創設以来維持してきた同ポストを引き続き確保できるよう、ベラミー氏を軸に合意形成を図るよう理事会議長に求めたという。

この記事は、タリフ・ディーン氏(国際通信社インタープレスサービス北米理事・国連総局顧問)が2021年に出版した国連に関する著書「コメントはありません、それについては引用しないでください」の内容をもとに構成されている。ディーン氏は、かつてスリランカ政府代表団の一員として国連総会に参加し、コロンビア大学大学院でジャーナリズム修士号を取得したフルブライト奨学生である。また、国連記者協会(UNCA)が授与する国連報道賞金賞を2度(2012年、2013年)受賞している。

INPS Japan/ IPS UN Bureau Report

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二国間関係から四カ国協調へ―中東・南アジアで進む新たな安全保障パラダイム

イスラマバードINPS Japan/London Post=モハマド・ラーシド】

世界の勢力均衡が大きく変化し、大国が地域への関与を見直す一方、米国・イスラエル・イラン間の対立の余波や、イスラエルの積極的な軍事行動、イランの地域的影響力への懸念などを背景に、中東・南アジアの4つのイスラム教徒多数派国家が、新たな安全保障の枠組みを静かに構築しつつある。|英語版

サウジアラビア、トルコ、エジプト、パキスタンは、「R-4(アール・フォー)」あるいは「中東四カ国協力」とも呼ばれ、従来の二国間協力を超えて、より緊密な連携へと歩みを進めている。

これは、集団防衛義務を伴うNATO(北大西洋条約機構)のような正式な軍事同盟ではない。しかし、軍事協力、防衛産業の連携、外交的仲介、そして共通の戦略的利益を組み合わせた、現実的かつ多層的な新たな安全保障パラダイムである。

新たな安全保障構想を後押しする要因

この動きの背景には、湾岸地域への攻撃や地域紛争が激化した際に米国の対応が限定的だったことなどを受け、「米国はもはや信頼できる安全保障の担い手ではない」との共通認識がある。また、イランへの対抗や紛争後の地域安定化を図る必要性も各国に共有されている。

かつて存在したトルコとエジプトの対立や、サウジアラビアとトルコの競争関係も、共通の脅威を前に実利的な協調へと変わりつつある。

それぞれの国は異なる強みを持つ。

サウジアラビアは豊富な資金力とエネルギー大国としての地位を背景に、西側諸国への過度な依存から脱却し、安全保障の多角化を目指している。国家改革構想「ビジョン2030」では、自前の防衛能力強化と戦略的自立が重要課題として掲げられている。

トルコは、無人機(ドローン)、ミサイル、海軍装備など先進的な防衛技術を有し、NATO加盟国として培った経験と積極的な地域戦略を持つ。

エジプトはアラブ世界最大規模の通常戦力を擁し、スエズ運河という世界有数の戦略的要衝を抱えるほか、シナイ半島での対反乱作戦など豊富な治安維持の経験を有している。

パキスタンは核抑止力を備え、実戦経験豊富な軍隊と、長年にわたる軍事訓練・防衛装備輸出の実績を持つ。

すなわち、

「サウジアラビアの資金力」「トルコの技術革新」「エジプトの人的戦力」「パキスタンの戦略的抑止力」

という補完関係が、この枠組みの大きな特徴となっている。

新たな枠組み形成への主な動き

その基盤となったのは、2025年9月に締結された**「サウジ・パキスタン戦略的相互防衛協定(SMDA)」**である。

この協定は、一方への攻撃を双方への攻撃とみなす内容となっており、長年続いてきたパキスタン軍によるサウジ軍への訓練支援などの軍事協力を制度化したものである。一部では、パキスタンによる「核の傘」の可能性についても議論されている。

その後、2026年初頭から協力はさらに加速した。

3月19日にはリヤドで、3月下旬にはイスラマバードで、さらに4月にはアンタルヤで外相会合が開かれ、イラン情勢の緊張緩和、湾岸地域の安全保障、防衛協力の強化などについて協議が行われた。

また、トルコはサウジ・パキスタン協定への参加、あるいは並行する新たな枠組みの構築を模索しており、三カ国・四カ国による防衛産業協力(共同軍事演習、兵器共同開発、技術移転など)が検討されている。

一方、エジプトもトルコとの二国間軍事協定や、サウジアラビア・パキスタンとの関係強化を通じてこの枠組みに組み込まれ、スーダンやアフリカの角地域などにおける地域協力でも連携を深めている。

この枠組みを支える主要な柱

この協力体制は、厳格な条約義務よりも実務的な協力を重視している。

主な柱は以下のとおりである。

防衛産業と装備調達の連携

ドローン、ミサイル、装甲車両、海軍装備などの共同開発・共同生産を推進する。パキスタンのJF-17戦闘機計画やトルコのバイラクタル無人機は、サウジ資本とエジプト市場を得ることでさらなる発展が期待される。

情報共有とテロ対策

非国家武装勢力やイラン系武装組織への対応について、情報共有と協調行動を強化する。

外交・仲介機能

4カ国は米国とイランの対話の仲介役としての役割を模索するとともに、パレスチナ国家樹立を支持する立場を共有し、外交的影響力の拡大を目指している。

地域を越えた安全保障協力

ソマリア、スーダンなどで協力を進め、海上交通路の安全確保や域外国の影響力拡大への対応を図る。

経済と安全保障の一体化

エネルギー協力、インフラ整備、貿易拡大を通じて地域の安定を促進する。

新しい安全保障パラダイムの特徴

この新たな枠組みは、冷戦期のような固定的な軍事ブロックとは異なる。

むしろ、「協調する地域大国による協議体(Concert of Powers)」あるいは柔軟な協議メカニズムとして発展する可能性が高い。

具体的には、

  • 定期的な政策調整を行う「4カ国首都協議会(Four-Capitals Council)」の設置
  • 共通の早期警戒システム
  • 共同訓練施設
  • 相互運用性(インターオペラビリティ)の標準化

などが想定されている。

また、通常戦力に加え、パキスタンの核抑止力やトルコの非対称戦力を組み合わせた**「ハイブリッド抑止」**も重要な特徴となる。

同時に、加盟国は米国、中国などとの関係を維持しながら、自立的な安全保障能力を強化するという「ヘッジ戦略」を採用するとみられる。

残る課題

もっとも、この構想には課題も少なくない。

トルコがクルド問題を最重要課題とする一方で、サウジアラビアはイランを最大の脅威とみるなど、安全保障上の優先順位には違いがある。

経済力の格差や、米国・イスラエル、さらにはアラブ首長国連邦(UAE)など地域の競合国からの圧力も予想される。

また、過去の対立が再燃する可能性もあり、正式な制度として定着するまでにはなお時間を要すると考えられる。

地域秩序への戦略的意味

この四カ国協力は、中東から南アジアにかけての安全保障地図を塗り替える可能性を秘めている。

イランや域外国による影響力に依存した従来の秩序に代わる、スンニ派諸国を中心とした新たな安全保障モデルとなる可能性がある。

また、共同防衛能力の向上、防衛産業の自立、イスラム協力機構(OIC)など国際舞台での発言力強化にもつながるだろう。

パキスタンにとっては地域を結ぶ戦略的ハブとしての役割が高まり、サウジアラビアにとっては石油依存から脱却し、より多角的な国家戦略を進める契機となる。

多極化が進む国際社会において、この新たな安全保障パラダイムは、地域諸国が自ら秩序形成の主体となろうとしていることを示している。

今後、この枠組みがより拘束力を持つ正式な同盟へと発展するのか、それとも柔軟な協議体として存続するのかは、加盟国の政治的意思と、今後の危機管理能力にかかっている。

しかし一つ確かなことがある。

サウジアラビア、トルコ、エジプト、そしてパキスタンは、もはや受動的な地域プレーヤーではない。21世紀の安全保障環境に適した新たな地域秩序を、自ら設計しようとしているのである。

INPS Japan

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キャロリン・ロドリゲス=バーケット氏、国連事務総長選で「現実的改革」を提唱―小国の視点から実務重視の国連像を提示

【ニューヨークATN=アハメド・ファティ】

次期国連事務総長選挙に立候補しているガイアナのキャロリン・ロドリゲス=バーケット氏は、加盟国との対話会合で、戦争、財政難、そして国連への信頼低下という試練に直面する国連に対し、「実務的な改革」「国連憲章の原則への回帰」「より信頼される国連」の実現を柱とする、慎重かつ現実的なビジョンを示した。|英語版

ロドリゲス=バーケット氏は、自らを既存秩序を覆す改革派候補として売り込むことはしなかった。

むしろ、「国連は依然として不可欠な存在である。しかし、その役割を果たすためには、より効果的で、より現場に根ざし、自らが何を実現でき、何を実現できないのかについて率直でなければならない」と訴えた。

同氏の主張は三つの柱に集約される。

第一に、国連憲章の原則を改めて重視すること

第二に、国連の制度改革を進めること

そして第三に、平和と安全保障、開発、人権という国連の三本柱において加盟国の協力を結集し、成果を上げることである。

これは、小国ならではの現実感覚に裏打ちされたメッセージだった。

ガイアナの国連常駐代表であり、元外相でもある同氏は、多国間主義のルールは「飾り」ではなく「国家の生存条件」であると考える小国の経験を、自らの立候補の土台に据えた。

同氏が繰り返し強調したのは、次の一節だった。

「事務総長が持つべき唯一の偏りは、国連憲章と国際法に対するものである。」

この考え方は、ウクライナ、ガザ、人権問題、安全保障理事会の機能不全など、加盟国から厳しい質問が相次ぐ中で、一貫した回答の軸となった。

今回の対話では、次期事務総長が直面する最大の課題も浮き彫りとなった。

すなわち、国連に求められる役割は拡大し続ける一方で、加盟国の政治的結束、財政、人々の忍耐はいずれも縮小しているという現実である。

「平和は命令できないが、そのための政治的空間はつくれる」

平和と安全保障についてロドリゲス=バーケット氏は、事務総長はより積極的に行動し、「善意の仲介(good offices)」を活用し、紛争当事者と直接対話するとともに、地域・準地域機関との連携を強化すべきだと述べた。

「国連が常に対応が遅い、あるいは存在感がないと思われないためにはどうすべきか」と問われると、同氏は「進展の可能性を常に探り続け、拒絶や失敗を恐れてはならない。」と答えた。

これは、この日の対話でも最も印象的な場面の一つだった。

その発言からは、「事務総長は平和を命じることはできないが、和平への政治的な空間を生み出すことはできる。」という現実を理解している候補者像が浮かび上がった。

第99条には慎重姿勢

一方、国連憲章第99条については慎重な姿勢を示した。

第99条は、事務総長は、国際の平和及び安全の維持を脅威すると認める事項について、安全保障理事会の注意を促すことができる権限を定めている。

ロドリゲス=バーケット氏は、この権限を行使する前には、現地から十分な情報を収集し、人道上の影響を評価し、当事者と対話し、利用可能なあらゆる外交手段を尽くすべきだと述べた。

法的には慎重で政治的にも安全な回答だったが、安全保障理事会が機能不全に陥った際には、より積極的に第99条を行使すべきだと考える人々には物足りなく映る可能性がある。

ウクライナ問題では原則論に終始

ウクライナ代表団は、リトアニア、ポーランドとともに、戦争犯罪、民間人への攻撃、子どもの強制移送、性的暴力、さらには常任理事国による拒否権行使について質問した。

ロドリゲス=バーケット氏は、「国連憲章や国際法へのあらゆる違反について、事務総長にはそれを指摘する責任がある。」と述べた。

しかし同時に、「こうした原則はすべての紛争に等しく適用されなければならない。」と付け加えた。

ロシアを直接名指しすることは避けた。

選挙戦としては賢明な対応かもしれない。

しかし同時に、慎重路線の限界も示した。

ガザ問題でも均衡を維持

アラブ・グループは、国際法における二重基準、パレスチナ問題、人道支援アクセス、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)への支援について質問した。

ロドリゲス=バーケット氏は、国際人道法の遵守、人道支援の確保、関係者との協力、そして長期的解決を支持すると述べ、安全保障理事会および総会で採択された数多くの決議にも言及した。

ここでも回答は慎重かつ均衡の取れたものだった。

問題の核心は認識していたものの、新たな政治的メカニズムや譲れない一線(レッドライン)は提示しなかった。

その姿勢は終始一貫していた。

国連憲章を軸とし、大げさな約束は避け、外交の余地を残すというものである。

人権は「開発」と不可分

欧州連合(EU)は、人権分野への予算配分が国連の三本柱の中で依然として少ない点について質問した。

これに対し同氏は、「開発や平和・安全保障への投資は、人権への投資でもある」と答えた。

また、自身がガイアナで取り組んできた先住民族教育や先住民族の権利向上の経験を紹介し、人権を基盤とする政策は実際に開発成果を生み出せると説明した。

これは彼女の持ち味が最も発揮された分野だった。

人権を「尊厳」「包摂」「開発」という観点から語ることには説得力があり、グローバル・サウスの多くの国々には共感を呼ぶだろう。

一方、市民社会や一部の欧米諸国は、各国政府による人権侵害に対して、より強い発信力を期待するかもしれない。

最大の強みは開発と気候変動

ロドリゲス=バーケット氏が最も力を発揮したのは、開発資金、気候変動への脆弱性、小島嶼国の課題について語る場面だった。

G77・中国グループは、「2030アジェンダ」、開発資金、地域的代表性、そして国連改革が開発分野を弱体化させる危険性について質問した。

これに対し同氏は、「世界が直面しているのは約束不足ではなく、実施不足である」と指摘し、国際金融機関との連携強化と国際金融システム改革の必要性を訴えた。

また、小島嶼開発途上国(SIDS)、カリブ共同体(CARICOM)、太平洋諸島フォーラム、モルディブなどからは、気候変動への脆弱性、「アンティグア・バーブーダ行動計画」、多次元脆弱性指数(MVI)、気候変動と安全保障の関係について質問が寄せられた。

同氏は、小島嶼国支援は各国が合意した優先課題に沿って進めるべきであり、多次元脆弱性指数などの指標についても国際金融機関への働きかけを強化すべきだと述べた。

さらに、「私は満潮が抽象的な気候変動の話ではなく、現実の脅威である国から来ています」と語り、自身の経験と政策を自然に結び付けた。

「改革」は必要だが、開発機能は削るべきではない

国連改革について同氏は、「UN80」改革プロセスを支持する一方で、「効率化」が最も脆弱な人々への支援を削減する口実になってはならないと警告した。

事務総長は、改革によってどのような影響が生じるか、とりわけ開発成果が後退する危険について加盟国へ明確な情報を提供すべきだと述べた。

これは彼女の最も強力な政治的メッセージの一つだった。

主要拠出国は「よりスリムな国連」を求めている。

一方、途上国は、「近代化」という名の下で開発予算が削減されることを懸念している。

ロドリゲス=バーケット氏は、その中間を目指した。

「組織は改革する。しかし、その原動力まで静かに取り除いてはならない。」

安保理改革では加盟国主導を強調

アフリカ・グループは、安全保障理事会におけるアフリカの常任理事国入りをどう支援するか質問した。

同氏は、安全保障理事会改革の必要性については広範な合意が存在し、アフリカの特別な事情も認識されていると述べた。

しかし、交渉は加盟国の役割であり、事務局はそのプロセスを支援する立場にあると強調した。

「安全な候補」以上になれるか

対話終了後、ロドリゲス=バーケット氏は記者団に対し、自らを「出馬が遅れた候補」とは考えていないと述べた。

選挙戦はまだ続いており、新たな候補者が加わる可能性もあるという。

出馬にあたっては家族とも十分相談したことを明かし、今後は各国首都を訪問して支持を求める考えを示した。

また、「候補者の中に欠けているものがあったから立候補したのか」と問われると、その見方を否定した。

安全保障理事会と加盟国全体にとって、多様な候補がいることは望ましく、ラテンアメリカ・カリブ地域にも優れた人材は数多く存在すると述べた。

今回の対話を通じて、彼女の立候補の特徴は明確になった。

ロドリゲス=バーケット氏は、最も声高な候補としてではなく、小規模な開発途上国出身の現実的な多国間外交官として選挙戦に臨んでいる。

政府での経験、国連外交の経験、そして開発を最優先に据える世界観が、その強みである。

国連外交の現場を熟知し、加盟国の立場を理解し、改革を語っても無謀さを感じさせないことは大きな長所と言える。

一方で、最も政治的に対立の激しい問題については、原則論や手続論にとどまる場面も少なくなかった。

今回、ロドリゲス=バーケット氏は、自らが現在の国連とその置かれた状況を十分理解していることを説得力をもって示した。

今後の焦点は、各国首都が彼女を単なる「安心して任せられる候補」と見るのか、それとも財政は減り、加盟国の結束も弱まり、世界の期待だけが高まり続ける国連を率いるだけの胆力を備えた指導者と評価するのかにかかっている。

INPS Japan/ATN

Original URL:https://www.amerinews.tv/posts/carolyn-rodrigues-birkett-pitches-practical-reform-as-u-n-race-turns-to-small-state-realism

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|視点|人間性を忘れるな(カレン・ホールバーグ教授パグウォッシュ会議事務総長)

【INPS Japan=カレン・ホールバーグ

米国ニューメキシコ州で実施された世界初の核実験、そして広島・長崎への悲劇的な原子爆弾投下によって幕を開けた「核時代」から80年が経ちました。今日、人類は深刻な存亡の危機に直面しています。その危機は、冷戦期における最も緊迫した対立をも上回るほど、不安定で予測困難なものとなっています。

1955年、核兵器保有国がわずか3か国であり、水素爆弾の開発が始まったばかりの時代に、「ラッセル=アインシュタイン宣言」は人類に対して次のような根源的な問いを投げかけました。|英語版

「私たちは人類を滅亡させるのか。それとも、人類は戦争を放棄するのか。」

現在では9か国が核兵器を保有し、数千発もの熱核兵器が配備されています。この問いは、いまや人類が直面する究極の選択となっています。

パグウォッシュ会議は、国際秩序が著しく悪化し、外交よりも武力による威嚇や行使が優先されるようになっている現状を深く憂慮しています。核兵器保有国が関与する現在の軍事的対立は、人類文明そのものの存続を脅かす危険を孕んでおり、新たな核拡散の波が起これば、その危険性は飛躍的に高まるでしょう。

米国とロシア連邦の間で締結されていた新戦略兵器削減条約(New START)の失効により、国際社会は、世界最大の二つの核兵器保有国の核戦力を拘束し、検証可能な法的枠組みを持たない時代へと正式に入りました。

1972年の第一次戦略兵器制限交渉(SALT I)以来、50年以上にわたり続いてきた軍備管理の枠組みが初めて失われたことになります。これらの枠組みは、国際社会に管理・安定・予測可能性・透明性をもたらす重要な安全装置として機能し、1980年代半ばに約7万発あった世界の核弾頭数を、現在のおよそ1万2,200発(広島型原爆約14万6,000発分以上の爆発力に相当)まで削減する上で重要な役割を果たしてきました。

しかし、核軍縮において歴史的な前進があったにもかかわらず、現在の動向は、その長年にわたる成果が逆行しかねないことを示しています。核軍拡競争の再燃、国際的緊張の高まり、そして核保有国同士の軍事対立が、その流れを加速させています。

さらに、多くの核保有国が核戦力の近代化と増強を進めており、軍備管理に関する対話が停滞する中で、世界の戦略的安定性に新たな圧力を加えています。こうした動向は、国際安全保障における核兵器の重要性が再び高まっていることを示しており、核不拡散・核軍縮の努力、とりわけ半世紀以上にわたり核兵器の拡散を抑制してきた核兵器不拡散条約(NPT)第6条の履行を著しく困難なものとしています。

The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras
The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras

その一方で、「核兵器禁止条約(TPNW)」への支持が広がっていることは、多くの国々と市民社会が核兵器の完全廃絶という目標の実現に向けて強い決意を持っていることを示しています。軍縮への具体的な道筋については見解の違いがあるものの、この条約は核兵器廃絶の人道的必要性を改めて国際社会に訴え、「核兵器のない世界」という理念を国際政治の重要課題として維持する上で大きな役割を果たしています。

また、欧州において核抑止の適用対象を新たな非核兵器国へ拡大しようとする議論や、東アジアをはじめとする地域で核武装を支持する政治的主張が台頭していることは、自国の安全保障を理由とした制御不能な新たな核拡散の連鎖を引き起こしかねません。

同様に深刻なのは、一部の核兵器保有国による核実験再開を示唆する無責任な発言です。こうした言説は危険な緊張の激化を招くだけでなく、「包括的核実験禁止条約(CTBT)」の発効を見据えて長年維持されてきた核実験モラトリアムを損なう恐れがあります。同条約は、依然として主要国による批准を待っている状況です。

現在の状況は極めて重大な課題を突き付けています。しかし、それらはいずれも直ちに取り組むべき課題です。

  • 核兵器保有国は、2022年1月に発表した「核戦争の防止及び軍拡競争の回避に関する共同声明」を改めて確認し、国際安全保障における核兵器の役割を縮小する政治的意思を明確に示すべきです。それは同時に、核軍拡競争の終結と核軍縮に向けた誠実な交渉を義務づけるNPT第6条の履行を改めて確認することにもなります。
  • 核兵器保有国は、共通の利益を見いだす責任を自覚し、多国間軍備管理交渉の再活性化に向けて真摯な外交努力を行わなければなりません。
  • すべての核兵器保有国は、核爆発実験のモラトリアムを維持するとの自主的な約束を改めて表明するとともに、CTBTの早期発効に向けて必要な措置を講じるべきです。核実験の再開は、新たな軍拡競争と戦略的不安定化への危険な一歩となります。
  • 核兵器保有国は、非核兵器国に対して核兵器を使用せず、その使用を威嚇しないことを改めて確認するとともに、「先制不使用(No First Use)」政策を採用し、これらの安全保障上の保証を法的拘束力のあるものへと発展させる努力を進めるべきです。
  • 国際原子力機関(IAEA)の検証・監視機能を一層強化し、非核兵器国を含む国際的な核不拡散体制において、透明性・信頼性・遵守を確保していくことが不可欠です。
  • 核兵器のない地域(非核兵器地帯)をさらに拡充するとともに、1995年および2010年のNPT運用検討会議で合意された中東非核兵器地帯の設立を実現すべきです。
Nuclear Weapon Free Zones
Nuclear Weapon Free Zones

これらの措置は、信頼醸成と核リスク低減のための現実的な一歩となり、世界の安定を高めるとともに、制御不能な「核拡散の連鎖(nuclear breakout)」を防ぐことにつながります。

さらに、それらは、人工知能、量子技術、極超音速兵器、ミサイル防衛、宇宙空間の軍事利用、自律型兵器システムなど、新たな安全保障上の課題に対応できる、より協調的で包括的かつ現代的な国際安全保障体制への橋渡しともなり得るでしょう。

核兵器が人類の存続に及ぼす危険について、市民と政治指導者双方の理解を深めることは極めて重要です。ノーベル賞受賞者会議による最近の宣言でも、次のように呼びかけています。

「私たちは、科学者、研究者、市民社会、そして宗教共同体に対し、世界の指導者が核リスク低減のための措置を実行するよう促すために必要な世論を築くことを呼びかける。」

その責任は、私たち一人ひとりにあります。

最後に、ラッセル=アインシュタイン宣言の結びの言葉を、改めて胸に刻みたいと思います。

「私たちは、人間として、同じ人間である皆さんに訴えます。人間性を心に刻み、それ以外のことは忘れてください。」

この文章は、INPS Japanが創価学会インタナショナルと推進している核廃絶メディアプロジェクトの報告書(2025年4月~26年3月までに配信されたプロジェクト記事をまとめたもの)の序文として寄稿されたものである。
Toward a World free from Nuclear Weapons
Toward a World free from Nuclear Weapons

INPS Japan

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|視点|核兵器の先制不使用政策:リスク低減への道(相島智彦創価学会インタナショナル平和運動局長)

地政学的対立を背景に行き詰まる核不拡散の取り組み

腐ったトマトからAIへ―ウガンダのコモンウェルス青年賞受賞者がアフリカの飢餓に挑む

【ロンドン/ダルエスサラームIPS=キジト・マコエ

ウガンダのシフラ・アイノムギシャ氏が、2026年の「コモンウェルス・ヤング・パーソン・オブ・ザ・イヤー(Commonwealth Young Person of the Year)」に選ばれた。受賞はロンドンで開かれた2026年コモンウェルス青年賞授賞式で発表され、同氏はアフリカ地域最優秀賞もあわせて受賞した。|英語版

しかし、彼女が「イノベーター」と呼ばれるようになるずっと前から、その原点はすでに形づくられていた。

人工知能(AI)が農業の文脈で語られるようになる前、太陽光発電を利用した低温貯蔵施設や「持続可能な開発」という言葉に出会う前から、シフラ・アイノムギシャ氏は、「食料が失われていく」という現実を身をもって知っていた。

夜明けになると、彼女はバケツを手に、西ウガンダにある家族のトマト畑へ向かった。

Map of Uganda
Map of Uganda

そこには、市場に届く前に失われていく収穫物があった。

遠目には健康そうに見えるトマトも、市場へ運ばれる前に柔らかくなり、割れ、腐ってしまうものが少なくなかった。

それが、彼女にとっての「食品ロス」の現実だった。

「毎朝、腐ったトマトを拾い集めて捨てながら、少しでも売れるものを救おうとしていました。」

彼女はそう振り返る。

こうして、家族の収穫のほぼ半分が失われていた。

それでも農作業は終わらない。

両親は懸命に働き続けた。

季節は巡り、畑には作物が実る。

しかし、収入はなかなか安定しなかった。

「それなのに、私たちは学費を払うことにも苦労していました。」

「学校の休暇中は家族総出で畑仕事をしていたにもかかわらず、学校を辞めざるを得なかった子どももいました。私たちは食料を生産していたのに、教育を受け続けるためのお金さえ十分に得られなかったのです。」

「なぜ食べ物を作る人が飢えるのか」

豊かな収穫が無駄になり、どれほど働いても暮らしが良くならない――。

そんな幼少期の体験が、後に彼女の人生を決定づける使命となった。

その取り組みは、2026年コモンウェルス青年賞において、SDG2「飢餓をゼロに」部門のアフリカ地域最優秀賞として高く評価された。

同賞には、コモンウェルス加盟56か国から約1,000人が応募した。57人の審査員による二段階審査を経て、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に革新的な取り組みで貢献した19人のファイナリストが選出された。

そしてアイノムギシャ氏は、その中から最高賞である「2026年コモンウェルス年間最優秀青年」にも選ばれた。

Shifra Ainomugisha poses beside a solar-powered irrigation system in Uganda. She was named the 2026 Commonwealth Young Person of the Year. Her contribution includes combining renewable energy and AI-enabled agricultural support to help smallholder farmers increase productivity and reduce post-harvest losses. Credit: Solafam, Uganda
ウガンダで、太陽光発電を利用した灌漑システムのそばに立つシフラ・アイノムギシャ氏。彼女は2026年の「コモンウェルス・ヤング・パーソン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。再生可能エネルギーとAIを活用した農業支援を組み合わせ、小規模農家の生産性向上と収穫後損失の削減に貢献している。写真提供:Solafam, Uganda

授賞式では、コモンウェルス事務総長のシャーリー・ボッチウェイ氏が賞を授与した。

ボッチウェイ事務総長は、ファイナリスト全員を称え、次のように語った。

「皆さんはすでに勝者です。56か国の中から選ばれたこと自体が、皆さんの勇気と創造性を物語っています。皆さんはコモンウェルスの誇りであり、困難に直面しても粘り強く挑戦し、制約の中でも革新を生み出してきました。」

さらに、

「今日は単なる表彰の日ではありません。新たな前進の出発点です。個人の卓越性を称えるだけではなく、共に前進する日でもあります。私たちは今後も、コモンウェルス青年プログラムを若者育成の中核事業としてさらに発展させていきます。」

と述べた。

「誰も飢えで命を落としてはならない」

SDGs Goal No. 2
SDGs Goal No. 2

しかし、アイノムギシャ氏にとって、この歩みは賞を目指したものではなかった。

すべては、幼い頃から抱き続けてきた一つの疑問から始まった。

「なぜ食べ物を育てる人たちが、なお飢えているのか。」

「誰も飢えで命を落としてはなりません。」

彼女はIPSにそう語る。

「私たちはそのために活動しています。農家が農業を続けられ、食品ロスを減らせれば、飢餓との闘いにつながります。それが私たちが取り組むSDGsなのです。」

現在、アイノムギシャ氏は社会的企業ソラファム・ウガンダ(Solafam Uganda Ltd)の共同創業者兼最高経営責任者(CEO)を務めている。

同社は、太陽光発電と人工知能を活用し、小規模農家の収穫後損失を減らし、生産性と所得の向上を支援している。

事業の柱は三つある。

太陽光発電による低温貯蔵施設、太陽光灌漑システム、そしてLean AIと呼ばれるAI農業アドバイザーである。

Lean AIはWhatsApp上で利用できるチャットボットで、播種時期、灌漑、病害虫対策、収穫後管理、市場情報などについて助言を提供する。

これらの技術は、アフリカ農業が抱える大きな矛盾―「食料は生産しているのに、消費者へ届く前に大量に失われてしまう。」という問題の解決を目指している。

サハラ以南アフリカでは、収穫後損失が依然として農産物の大きな割合を占め、農家の所得や栄養状態、地域経済の回復力を損なっている。

特に、小規模農家は貯蔵施設や灌漑設備、農業指導サービスへのアクセスが限られており、その影響を最も受けやすい。

しかし、アイノムギシャ氏にとって、それは単なる統計ではない。

そこには母の顔がある。

父の顔がある。

近所の人々の顔がある。

そして、自分自身の姿がある。

「私はトマト農家の家庭で育ちました。」

「一生懸命働いても、食品ロスが多く、十分な収入は得られませんでした。」

父から受け継いだ挑戦

最初に問題解決へ挑戦したのは父だった。

父は学校教育を受ける機会に恵まれなかったが、何とか現状を変えようと試行錯誤を続けた。

ディーゼル式灌漑ポンプを購入し、生産量を増やそうとした。

「私たちの地域では本格的な農繁期は年に一度しかありません。その時期に十分な収入を得られなければ、その一年は非常に苦しくなるのです。」

父は簡易な貯蔵施設も作った。

しかし、トマトは腐り続けた。

その後、教育を受け、テクノロジーに触れたアイノムギシャ氏は、父とは異なる解決策を考えるようになった。

「これは私一人の決断ではありません。」

「始まりは父でした。父には教育を受ける機会がありませんでしたが、私は大学へ進学できました。だからこそ、父よりも問題を解決できる可能性があると思ったのです。」

その思いを胸に、大学在学中、仲間とともにソラファムを設立した。

Shifra Ainomugisha (centre, in reflective vest), co-founder and CEO of Solafam, Uganda Ltd, stands with farmers and community members beside a solar panel installation that supports climate-smart agriculture initiatives. Through renewable energy and farmer-centred innovation, the project seeks to reduce food loss and improve rural incomes. Credit: Solafam, Uganda
ウガンダのSolafam Uganda Ltd共同創業者兼CEOであるシフラ・アイノムギシャ氏(中央、反射ベスト着用)が、気候スマート農業の取り組みを支える太陽光パネル設備のそばで、農家や地域住民とともに立っている。再生可能エネルギーと農家中心のイノベーションを通じて、このプロジェクトは食品ロスの削減と農村部の所得向上を目指している。写真提供:Solafam, Uganda

太陽光からAIへ

当初の事業は低温貯蔵施設だけだった。

LEAP Africaなど起業支援プログラムの支援を受け、事業化に成功した。

しかし利用者との対話から、新たな課題が見えてきた。

貯蔵する農産物そのものが十分に収穫できていないのである。

そこで、太陽光灌漑システムを導入した。

高価なディーゼル燃料への依存を減らし、一年を通じて栽培できるようにするためだった。

農家は費用の20%を頭金として支払い、その後は週約1・6ドルずつ分割払いを続けることで設備を所有できる。

「農家が本当に利用できる価格にしたかったのです。」

そして次の革新がAIだった。

多くの農家には農業指導を受ける機会がなく、その知識不足が収穫後損失を生み出していた。

「農業をしていても、必ずしも正しい方法で栽培しているとは限りません。」

「例えばトマトは夕方に灌漑した方がよいのに、朝に水をやっている農家もいます。」

そこで開発されたのがLean AIである。

WhatsAppで質問すると、農法、病害虫対策、灌漑方法、収穫後管理についてリアルタイムで助言が得られる。

さらに現在は、スマートフォンを持たない農家でも利用できるよう、USSD(携帯電話の対話型通信サービス)への対応も進めている。

「私たちはAIを活用し、現場にいなくても農家への研修を続けています。」

「これによって収穫量が増え、所得が向上し、『農業は貧しい人の仕事だ』という考え方を変えたいのです。」

ウガンダで、太陽光発電を利用した灌漑システムのそばに立つシフラ・アイノムギシャ氏。彼女は、再生可能エネルギーとAIを活用した農業支援を組み合わせ、小規模農家の生産性向上と収穫後損失の削減を後押ししている。写真提供:Solafam, Uganda

農業のイメージを変える

その固定観念こそ、彼女が最も変えたいものだった。

「ウガンダでは、『農業は貧しい人の仕事』という考え方があります。」

「それは本当に悲しいことです。」

彼女は少し言葉を止める。

「どれだけ働いても貧困から抜け出せないから、人々はそう信じてしまうのです。」

転機は2023年に訪れた。

地域の市場に最初の低温貯蔵施設を設置することが難しかったため、まず実家に設置した。

最初の利用者は母だった。

続いて近所の農家が利用し始めた。

当初は無料だった。

まず効果を実感してもらう必要があったからだ。

母の友人で野菜や果物を販売する女性は、1か月間利用した。

それまで数日で傷んでいた野菜は約2週間鮮度を保てるようになった。

急いで安値で売る必要がなくなり、価格が上がるまで待てるようになった。

「彼女はその効果を実感しました。」

「今では以前より農業収入が増えています。」

その後、ソラファムは従量課金制へ移行した。

成果は数字にも表れている。

「私たちが最も誇りに思うのは、農家の所得を28%増やしたことです。」

「さらに収穫後損失を約30%削減することができました。」

Commonwealth Deputy Secretary-General (Programmes), Tanmaya Lal, Commonwealth Secretary-General, Shirley Botchwey, and Commonwealth Deputy Secretary-General (Corporate), Tania Baumann, pose with the 2026 Commonwealth Young Person of the Year and Africa Regional Winner, Shifra Ainomugisha, at the Commonwealth Youth Awards ceremony in London. Credit: Commonwealth Secretariat
ロンドンで開催されたコモンウェルス青年賞授賞式で、2026年の「コモンウェルス・ヤング・パーソン・オブ・ザ・イヤー」およびアフリカ地域最優秀賞を受賞したシフラ・アイノムギシャ氏とともに写真に納まる、コモンウェルス副事務総長(プログラム担当)のタンマヤ・ラル氏、コモンウェルス事務総長のシャーリー・ボッチウェイ氏、コモンウェルス副事務総長(法人業務担当)のタニア・バウマン氏。写真提供:コモンウェルス事務局

女性のための技術

こうした成果が評価され、ソラファムはコモンウェルス青年賞へとつながった。

受賞に際し、アイノムギシャ氏は次のように語った。

「2026年コモンウェルス年間最優秀青年に選ばれたことを大変光栄に思います。この賞は私個人だけのものではなく、私たちが支援してきたウガンダの農家や地域社会の皆さんのものでもあります。自らの体験から生まれた解決策が社会を変えられることを証明できました。」

彼女は、受賞につながった理由として三つを挙げる。

持続可能性。

社会へのインパクト。

そして利用しやすさである。

「私たちの事業は2022年から継続しています。」

「実際に社会へ成果を生み出しています。」

「そして、小規模農家でも利用できる価格なのです。」

しかし何より重要なのは、この事業が女性を中心に据えていることだ。

「この問題は私自身の人生そのものだからです。」

「誰かの話を聞いて始めたわけではありません。」

「私は女性です。そして、毎日懸命に働く母の姿を見ながら育ちました。それでも暮らしは良くなりませんでした。」

アフリカでは農業労働力の多くを女性が担っている一方、土地や融資、技術、農業指導へのアクセスでは依然として不利な立場に置かれている。

「女性を中心に据えることは戦略ではありません。」

「私自身の人生経験なのです。」

もちろん男性農家も支援している。

しかし受益者の多くは女性である。

世界でAIへの期待が高まる中、彼女のメッセージは明快だ。

テクノロジーだけでは十分ではない。

誰もが利用できること。

手頃な価格であること。

そして人々の現実に寄り添って設計されていること。

彼女の次なる目標は、スマートフォンを持たない農家にも農業AIを届けることだ。

目指しているのは、単なる農業のデジタル化ではない。

農業に誇りと尊厳を取り戻すことである。

腐ったトマトの記憶は今も残っている。

学費が払えず苦しんだ日々も忘れてはいない。

しかし今、それらの記憶は失敗を意味しない。

新しい収穫の始まりを意味している。

そこでは、イノベーションはアルゴリズムや太陽光パネルの数ではなく、食料を育てる家族が、ようやく十分に食べ、学び、夢を見ることができるようになったかどうかによって測られる。

そしてアイノムギシャ氏にとって、その未来はすでに始まっている。

INPS Japan/ IPS UN Bureau Report

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戦争、熱波、エネルギー危機がクリーンエネルギーへの転換を加速させる

【ロンドン/パキスタン・カラチIPS=ゾフィーン・エブラヒム

過去30回にわたる国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)でもなし得なかったことを、米国とイスラエルによる対イラン戦争の3か月間が成し遂げたのかもしれない。それは、世界が化石燃料にいかに依存し、いかに脆弱であるかを浮き彫りにしたことである。英語版

世界が過去10年で最大規模のエネルギーショックに直面する中、クリーンエネルギーへの投資を加速させる必要性は、これまでになく説得力を増している。

さらに欧州が深刻な熱波に見舞われる中、英国気象庁は「生命に危険が及ぶ恐れがある」と警告を発し、ロンドン気候行動週間(LCAW)の開催期間中にも、店舗やオフィス、学校の閉鎖に加え、交通機関の混乱が生じている。こうした状況を受け、エネルギー転換を求める声は一段と高まっている。

高まる危機感

「政策立案者、投資家、企業経営者の間で、そうした危機感は確実に高まっています。」

そう語るのは、パキスタンの起業家であり、同国を拠点とするテクノロジー、データ分析、アドバイザリー企業「サスティナディリティ(Sustainadility)」の共同創業者兼パートナーを務めるファラズ・カーン氏(MBE)である。同氏は25年以上にわたり、官民連携による投資や、環境・持続可能性・ガバナンス(ESG)に関する枠組みづくりに携わってきた。現在は、気候資金とエネルギー転換の将来を議論するためLCAWに参加している。

6月28日に閉幕するLCAWの傍ら、IPSの電話取材に応じたカーン氏は、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行は喫緊の課題であり、その実現には投資家と企業の関与が不可欠だと強調した。

カーン氏はLCAWの雰囲気について、「慎重さを伴いながらも楽観的だ」と表現した。また、パキスタンへの国際的な注目が高まっていることを歓迎し、「わが国は、米国とイラン・イスラム共和国との和平合意『イスラマバード覚書』の仲介に尽力したことが高く評価されました」と述べた。

ルール作りから投資へ

カーン氏は、6月8日から18日までドイツ・ボンで開催された気候変動会議とLCAWとの違いについて、次のように説明する。

ボン会議は外交交渉や気候政策のルール作りが中心だった。一方、2019年から毎年開催されているLCAWは、持続可能性やESG分野への民間投資を呼び込み、それを商業ベースで拡大することに重点を置いている。

「LCAWは、より企業や民間部門に焦点を当てた場です。」

こう語るカーン氏は、社会的インパクト投資を行うパキスタンの団体「シードベンチャーズ(SeedVentures)」の創設者でもある。

その一方で、同氏は次のようにも指摘した。

「物事には二つの側面があります。米・イラン和平とホルムズ海峡の再開によって、石油が依然として世界経済に不可欠であることが改めて示されました。しかし同時に、多くの国々は化石燃料への依存が自国の利益にならないばかりか、安全保障上のリスクにもなり得ることを認識しています。」

地政学的対立によって、石油の生産、貿易、輸送がいかに脆弱であるかが明らかになった。そのため、代替エネルギーへの投資は今後さらに加速すると見込まれている。

カーン氏が出席したCOP31議長主催の民間セクター会合では、循環型経済、電化(エレクトリフィケーション)、気候資金が主要な議題となった。ブラックロック、世界銀行、国連工業開発機関(UNIDO)、国際金融公社(IFC)、さらには各種業界団体など、世界の気候変動分野を代表する組織が一堂に会した。

「まさに気候変動分野のオールスターが集まった会議でした。」とカーン氏は笑顔で語る。

「私たちもその場に加われたのです。」

しかし一方で、意思決定の場に女性がほとんどいなかったことは残念だったという。ただし、トルコのCOP31チームについては、「知的水準が高く、会議での存在感も圧倒的だった。」と高く評価した。

「交渉」から「実行」へ

カーン氏によれば、会議の構成だけでなく議論そのものにも変化が見られた。

会場では、交渉中心の議論から、実施・投資・具体的行動へと重点を移す新たな流れをつくろうという強い意志が共有されていた。

「政府は制度や環境を整えることができ、国連はルールを示すことができます。しかし最終的に変化を実現するのは、投資家、投資可能な事業、そして大企業なのです。」

COP31 Logo

ボン会議が制度設計を議論する場だったのに対し、LCAWは気候資金や実際の投資案件を議論する場だったと同氏は説明する。

さらに、「今年11月にトルコ・アンタルヤで開催されるCOP31では、『言葉だけではなく資金を投入する』ことが最大のテーマになります。実現可能なプロジェクトへ資本を投じ、協調的な投資スキームを構築して気候変動対策を本格的に拡大していくことになるでしょう。」と語った。

民間部門が主役に

またカーン氏は、中国がクリーンエネルギー投資の世界的リーダーとして頻繁に言及されていたことにも触れた。

「さまざまな会議を通じて、再生可能エネルギーへの投資意欲が非常に強まっていることを実感しました。この流れは今後さらに加速すると確信しています。」

公正なエネルギー移行を実現するには、大企業や大規模な組織の役割が決定的に重要だという。事業規模が大きく、地域社会とのつながりも深いため、社会全体へ大きな変化をもたらす力を持っているからだ。

こうした電化と脱化石燃料への取り組みは、COP31議長国トルコも重視している。

今月、ボン会議の会場で英紙『ガーディアン』の取材に応じたトルコのムラト・クルム環境相は、「35%目標」はCOP31議長国として最も重要な課題の一つになると語った。

「交通、建築物、産業など日常生活のあらゆる分野を電化することで、家庭や企業をエネルギー価格の乱高下から守ることができる。」と同相は述べている。

パキスタンに訪れた好機

カーン氏は、パキスタンにはこのエネルギー転換の最前線に立つチャンスがあると考えている。

Map of Pakistan/ Wikimwdia Commons.
Map of Pakistan/ Wikimwdia Commons.

同国は気候災害の被害国として取り上げられることが多い。世界の温室効果ガス排出量に占める割合は1%未満であるにもかかわらず、大きな被害を受け続けている。

しかし同氏は、世界が太陽光発電に注目する中、パキスタンで静かに進行している「ソーラー革命」にも目を向けるべきだと訴える。

「パキスタンは、太陽光発電の普及がいかに急速に進み得るかを示す世界的な成功例となっています。それに伴い、太陽光パネル製造や蓄電池産業にも大きな投資機会が生まれています。」

一方で、送電網の近代化や大規模蓄電システムの整備は、ますます重要な課題となっている。

自然への投資

カーン氏は、再生可能エネルギーだけでなく、「自然への投資」にも大きな可能性を見いだしている。

マングローブ林、森林、湿地、草原、山岳生態系など、パキスタンの豊かな生物多様性には莫大な投資余地があるという。民間資本は、こうした自然資産の保全と再生の両方に貢献できる。

パキスタン経済において農業は大きな割合を占める一方、生物多様性の喪失を招く要因にもなっている。

そのため、企業は再生型農業、アグロフォレストリー(森林農業)、持続可能なコメや綿花の生産などへ投資することで、自らの持続可能性目標を達成すると同時に、新たな「生物多様性クレジット市場」にも参入できる。

「カーボンクレジットがあるように、生物多様性クレジットもあります。これは食料安全保障や農業と密接に結びついています。」

農業が国の基幹産業であるパキスタンは、生物多様性クレジット分野でも大きな潜在力を秘めているという。

「これは本当に画期的な分野になるでしょう。莫大な投資機会が広がっています。」

投資拡大への課題

しかし現実には、投資家はまだ十分に集まっていない。

(L-R) Horacio (Luis) Carvalho, CEO of Climate Change Ventures, and Faraz Khan, MBE, at London Climate Action Week. Carvalho's firm advises on carbon mitigation and green investment projects. They signed an MOU to develop markets with Brazilian CPR Verde (green rural product certificate), a Brazilian financial credit instrument used to fund environmental preservation, forestry conservation, and carbon sequestration. The markets they are eyeing will be Saudi Arabia, Africa and Pakistan. Credit: Faraz Khan
写真左から、クライメート・チェンジ・ベンチャーズ(Climate Change Ventures)のホラシオ(ルイス)・カルバーリョCEOと、ファラズ・カーン氏(MBE)。ロンドン気候行動週間にて。カルバーリョ氏の企業は、炭素排出削減とグリーン投資事業に関する助言を行っている。両者は、環境保全、森林保護、炭素隔離に資金を供給するブラジルの金融信用手段である「CPR Verde(グリーン農村生産証明書)」を活用した市場開発に向け、覚書(MOU)に署名した。対象市場として、サウジアラビア、アフリカ、パキスタンを視野に入れている。写真提供:ファラズ・カーン

カーン氏は、海外から大規模な気候投資を呼び込む最大の障害は、依然としてパキスタンの高いカントリーリスク(国家リスク)だと指摘する。

一方で、「パキスタン・グリーン・タクソノミー」、グリーンバンキング指針、ESG基準など近年の政策改革は、投資家の信頼向上につながっているという。

また、投資に適した「バンカブル・プロジェクト(採算性や信用力があり、資金調達が可能な事業案件)」が不足していることも課題だ。本来は堅実な事業基盤を持つにもかかわらず、国際投資家を十分に惹きつけられていない案件も少なくない。

それでも、投資の潜在力は極めて大きいとカーン氏は強調する。

ただし、時間的猶予は限られているかもしれない。

最近の中東情勢の混乱が、世界の化石燃料依存の脆弱性を露呈したのであれば、それは同時に、クリーンエネルギーへの転換を加速させる必要性を浮き彫りにしたことにもなる。

パキスタンにとって、その機会は極めて大きい。

しかし、その潜在力を現実のものにできるかどうかは、必要な民間投資を呼び込める環境を整えられるかにかかっている。

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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「雨が降ると、心臓の鼓動が速くなる」

AIは、今すぐ対策を講じなければ、雇用・中間層・福祉国家を揺るがす

【ニューヨークIPS=イザベル・オルティス、ビル・ショルダー

人工知能(AI)は、生産性や科学、医療、教育に飛躍的な進歩をもたらす可能性を秘めている。しかしその一方で、数百万もの雇用を失わせ、中間層を空洞化させ、病院や学校、年金制度を支える税収を減少させる危険性も抱えている。その変化はすでに始まっており、対策を講じるために残された時間は多くない。|英語版

国際通貨基金(IMF)は、AIが世界全体の約40%の雇用に影響を及ぼすと予測している。先進国では約60%の職種がAIの影響を受け、そのうち最大で3分の1(33%)がAIに代替されるリスクが高い。新興国では約40%の職種が影響を受け、その約4分の1(24%)が代替される危険性がある。低所得国では約26%の職種がAIの影響を受け、そのうち約5分の1(18%)はAIによって代替される可能性がある。

雇用喪失が中間層を縮小させる

AIの影響を最も受けやすいのは、これまで中間層の安定を支えてきた職種である。事務職、カスタマーサービス、翻訳、ジャーナリズム、法務補助、金融分析、マーケティング・コンテンツ制作、さらにはソフトウェア開発やデータ関連業務の一部も含まれる。これらの仕事は中間層の所得を支え、消費を生み出し、税収の基盤となってきた。しかしIMFは、こうした職種こそAIの影響を最も受けやすいと指摘している。

Isabel Ortiz

AIによって新たな仕事も生まれるだろう。しかしIMFによれば、それ以上に多くの仕事が消滅する可能性が高い。

その影響は職を失う人々だけにとどまらない。賃金は低下し、不安定な雇用が増え、企業が「AIに置き換えることができる」と労働者に示せるようになることで、労働者の交渉力は大きく低下する。所得はAI技術を保有する企業や一握りの巨大企業へ集中し、一般の労働者に配分される所得の割合は縮小していく。

中間層の家計は経済を支える最大の消費者である。その所得が減少すれば、小売店や中小企業の売り上げは落ち込み、投資は停滞し、廃業が相次ぐようになる。その結果、経済は需要不足、低賃金、慢性的な不完全雇用に苦しむ低成長の悪循環へと陥る恐れがある。

税収の減少が福祉国家を弱体化させる

その圧力はやがて財政にも及ぶ。

多くの政府歳入は中間層に依存している。所得税、消費税、社会保険料はいずれも安定した雇用と賃金によって支えられている。賃金所得が減少し、安定した雇用が縮小すれば、政府の税収も減少する。

一方で、失業給付、職業訓練、医療、所得支援を必要とする人々は増加する。政府は「税収は減る一方で支出は増える」という財政的な板挟みに直面することになる。IMFは2026年のAI・労働市場・公共政策に関する分析で、このリスクを警告している。

公的年金制度は、現役世代が納める保険料によって高齢者を支える賦課方式に依存している。医療制度もまた、健康な人々の拠出によって病気の人々を支えている。こうした制度では、負担する人の数が減れば持続可能性は失われる。その結果、政府は給付の削減や利用者負担の引き上げ、家計への負担転嫁を余儀なくされる可能性がある。これは国連社会開発研究所(UNRISD)の報告書『AIと社会契約の未来』でも指摘されている。

公共サービスと民主主義への圧力

歴史が示しているように、その次に訪れるのは緊縮財政政策である場合が少なくない。

Bill Shoulder

財政圧力を受けた政府は、消費税を引き上げ、公共サービスの利用料を値上げし、給付の対象を厳格化し、公共支出を削減する傾向がある。

財政が悪化すると、教育、医療、介護、社会保障は「合理化すべき予算項目」として扱われがちになる。しかし、これらは本来、人権であり、社会を支える不可欠な公共サービスである。

その結果、富裕層だけが質の高い民間サービスを利用でき、多くの人々は質の低下した公共サービスに頼らざるを得ない「二層社会」が生まれる。

経済的不安は民主主義への信頼も損なう。

働いても生活が安定せず、公的機関も自分たちを守ってくれず、技術革新の恩恵が一部の富裕層や巨大企業だけに集中していると人々が感じれば、不満は蓄積し、社会の分断は深まる。

その結果、特定の集団をスケープゴートに仕立てる動きが強まり、監視や情報操作、より権威主義的な統治への支持も広がりやすくなる。とりわけAIそのものが情報空間や世論形成を操作する手段として利用されれば、その危険性はさらに増す。

AIによる雇用の減少は税収基盤を弱体化させ、年金や医療、教育など福祉国家を支える社会保障制度の持続可能性に深刻な影響を及ぼす恐れがある。画像:INPS japan
AIによる雇用の減少は税収基盤を弱体化させ、年金や医療、教育など福祉国家を支える社会保障制度の持続可能性に深刻な影響を及ぼす恐れがある。画像:INPS japan

未来は私たちの選択にかかっている

しかし、こうした未来は決して避けられない運命ではない。

ノーベル経済学賞受賞者のダロン・アセモグル氏とサイモン・ジョンソン氏が指摘するように、AIが社会にもたらす影響は、技術そのものよりも、それをどのような政治的・経済的選択のもとで活用するかによって決まる。

政府はAIによって生み出される巨額の超過利益や市場支配力に課税することができる。その財源を活用して、需要を維持し、人々の所得を保障しながら社会の移行を支えることも可能である。

また、教育、医療、社会保障などの公共サービスを、人権としてさらに充実させるべきである。

さらに政府は、AIの導入方法について、労働者や市民が実質的に意思決定に参加できる仕組みを整えなければならない。同時に、AIが偽情報や監視を通じて民主主義への信頼を損なうことがないよう、適切な規制を整備する必要がある。

AIはすでに社会を大きく変え始めている。

今問われているのは、その莫大な恩恵を社会全体で公平に分かち合い、すべての人々の繁栄につなげることができるかどうかである。そして、安定と尊厳ある社会を支えてきた「社会契約」を維持できるかどうかである。

その選択は、まだ私たちの手に委ねられている。

しかし、その猶予は決して長くはない。

イザベル・オルティスは、「グローバル・ソーシャル・ジャスティス」代表。国際労働機関(ILO)およびユニセフの局長を務めたほか、国連およびアジア開発銀行(ADB)の上級職員を歴任した。ビル・ショルダーはAIソフトウェアエンジニア・研究者。人工知能および国際プロジェクト・マネジメントを専門としている。
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INPS Japan/ IPS UN Bureau Report

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なぜ今、「世界市民」がこれまで以上に重要なのか

―ロベルト・サビオ氏が語る「相互依存する世界」と市民の責任ー

ローマINPS Japan=浅霧勝浩】

国際通信社インタープレスサービス(IPS)の創設者ロベルト・サビオ氏は、ローマで行ったINPS Japanの独占インタビューで、気候変動、戦争、格差、人工知能(AI)など複雑に絡み合う地球規模課題に向き合うためには、「相互につながる世界を理解すること」が、現代の市民に求められる最も重要な責任の一つであると語った。|英語版中国語ノルウェー語インドネシア語

Dr. Roberto Savio
ロベルト・サビオ博士

教育者ジュリアーノ・リッツィ氏との共著『The Global Citizen Handbook』でサビオ氏が問いかけているのは、世界市民とは何かという抽象的な理念ではない。複雑に相互依存する現代世界を理解し、その理解を判断と責任ある行動へと結び付ける、市民の在り方である。

サビオ氏は、新著について語り始める前に、まず今日の若者について語った。

「今日の大学卒業生が直面している不確実性は、その親世代、まして祖父母世代が経験したものとは本質的に異なります。」

第二次世界大戦後の世代は、破壊された都市を受け継いだ。しかし同時に、復興によってより良い世界を築けるという希望も持っていた。国際連合の創設は、その希望を象徴する出来事だった。

1990年代には、工業化、技術革新、経済成長が、安定した雇用、持ち家の取得、将来への安心という現実的な期待を支えていた。

しかし今日の若者が受け継いだ世界は、大きく様変わりしている。気候変動、地政学的対立、拡大する格差、不安定な金融市場、人口減少、武力紛争、そしてAI――。こうした課題が同時に進行することで、過去のどの世代も経験したことのないほど深い不確実性が生まれている。

A new generation faces a world shaped by interconnected crises—from climate change and conflict to inequality and artificial intelligence—raising profound questions about the future of global citizenship. Credit: AI-generated illustration. Image: INPS Japan
気候変動、紛争、格差、人工知能(AI)など、相互に結び付いた地球規模の危機に直面する新しい世代。その現実は、「世界市民」とは何か、そしてその未来を私たちに問いかけている。画像:INPS Japan

しかしサビオ氏によれば、問題は現実の不確実性だけではない。

より深刻なのは、「理解の危機」である。

現代人は、かつてないほど多くの情報に接している。ニュースは瞬時に世界を駆け巡り、AIは膨大な情報を数秒で要約する。だが、気候変動、移民、民主主義、戦争、金融、AIといった出来事は、それぞれ独立した問題として報じられがちであり、その相互のつながりは見えにくくなっている。

An endless stream of disconnected information can make today’s global crises appear overwhelming. The Global Citizen Handbook argues that understanding the connections between them is the first step toward informed citizenship. Image:INPS Japan
地球規模の課題は、もはや個別に切り離して捉えることはできない。気候変動、移民、経済不安、人工知能(AI)、民主的統治がますます相互に結び付く中で、それらの関係性を理解することは、市民としての不可欠な責任となっている。画像:INPS Japan

「一般市民は百科事典ではありません。」

サビオ氏はそう語る。

情報が断片化するほど、人々は世界全体を理解できなくなり、「自分には何も変えられない」という無力感を抱くようになる。サビオ氏は、この「理解の危機」こそが、デジタル時代の民主主義にとって最も大きな課題の一つだと考えている。

市民が社会を動かしている力を理解できなければ、公共の議論に意味ある形で参加することはできない。民主主義は、単に選挙によって維持される制度ではない。市民が世界を理解し、判断し、行動する力によって支えられる営みなのである。

こうした問題意識から生まれたのが、『The Global Citizen Handbook』である。

本書は、統計や専門知識を並べた従来型の参考書ではない。各章では、国際機関の報告書や学術研究に基づいて地球規模課題を解説するとともに、同様の課題に取り組んできた地域社会やコミュニティの事例を紹介する。そして各章の最後には、読者自身が立ち止まり、自ら考えるための問いが用意されている。

目的は、知識を増やすことではない。

情報を理解へと深め、理解を判断へ、そして判断を責任ある社会参加へとつなげることである。

A visual reflection of The Global Citizen Handbook: the promise and perils of artificial intelligence and digital technology, set alongside the authors’ call for active, informed global citizenship grounded in human dignity, shared responsibility and hope. Image: INPS Japan
人工知能(AI)は、教育、医療、知識へのアクセスを前進させるかつてない可能性をもたらしている。しかし、その恩恵が真に生かされるかどうかは、民主的なガバナンス、倫理的な管理、そして十分な知識を備えた世界市民の存在にかかっている。画像:INPS Japan

ジャーナリズムから教育へ――世界市民を育むという共通の理念

サヴィオ氏にとって、『The Global Citizen Handbook』は、それまでの歩みから新たに方向転換した仕事ではない。

むしろ、60年以上にわたるジャーナリスト人生の自然な延長線上にある。

Credit: INPS Japan

1964年、ローマでインタープレスサービス(IPS)を創設したサビオ氏は、単に新しい国際通信社をつくろうとしたのではなかった。

彼が目指したのは、世界のジャーナリズムの「地理」を変えることだった。

当時、国際報道の多くは政治・経済大国の視点から発信されていた。これに対しIPSは、それまで世界の主要メディアではほとんど取り上げられることのなかった人々の声や経験に光を当て、国際社会の対話を広げようとした。

その理念は後に、「声なき人々に声を与える(Giving Voice to the Voiceless)」という言葉で広く知られるようになる。

しかしサビオ氏にとって、この言葉の意味は、単に社会的に弱い立場の人々を報じることではない。

遠く離れた場所で起きている出来事が、自分たちの暮らしとどのようにつながっているのかを、市民一人ひとりが理解できるようにすることこそ、ジャーナリズムの本来の役割だと考えてきたのである。

Katsuhiro Asagiri(Left) and Dr. Roberto Savio (Right)
浅霧勝浩(左)、ロベルト・サビオ博士(右)

今回のインタビューでサビオ氏は、その歩みを振り返りながら、2009年にIPS、INPS Japan、創価学会インタナショナル(SGI)が開始した国際メディア協力について語った。

この協力は、「核兵器のない世界」を担う世界市民を育むことを目的に始まり、以来、INPS Japanは日本の拠点として、多言語による報道とナレッジプラットフォームを通じて、核軍縮、持続可能な開発、人権、気候変動など、相互に結び付いた地球規模課題を伝え続けてきた。

Roberto Savio (far left), then Deputy Director of the World Political Forum (WPF), welcomes a Soka Gakkai International (SGI) delegation led by Hiromasa Ikeda (center) at a 2009 international conference on nuclear abolition organized by the WPF, founded by former Soviet President Mikhail Gorbachev (second from left). The meeting marked the starting point of the long-standing media partnership between Inter Press Service (IPS) and SGI. Photo: Francesca Palozzo/WPF.
ロベルト・サビオ氏(左端、当時世界政治フォーラム〈WPF〉副代表)が、旧ソ連大統領ミハイル・ゴルバチョフ氏(左から2人目)が創設した世界政治フォーラム(WPF)の2009年核兵器廃絶国際会議において、池田博正氏(中央)率いる創価学会インタナショナル(SGI)代表団を迎えた。この会合は、インタープレス・サービス(IPS)とSGIによる長年にわたるメディア・パートナーシップの出発点となった。写真:Francesca Palozzo/WPF.
2009年4月に開始されたIPSとSGIのメディア協力について、ロベルト・サヴィオ博士と池田大作博士がメッセージを寄せた2010年年次報告書より。
2009年4月に開始されたIPSとSGIのメディア協力について、ロベルト・サヴィオ博士と池田大作博士がメッセージを寄せた2010年年次報告書より。資料:INPS Japan

サヴィオ氏は、協力開始翌年の2010年に刊行された最初の年次報告書に寄せられた、創価学会第三代会長・池田大作博士のメッセージを懐かしく振り返った。

「今読み返しても、あのメッセージは少しも色あせていません。」

そう語ったサヴィオ氏は、『The Global Citizen Handbook』で示した問題意識とも深く響き合っているとして、池田博士の言葉にあらためて言及した。

池田博士は、そのメッセージの中で教育の意義について、次のように記している。

「ここに、最も広い意味での教育の重要性があります。人々が正確な知識を身につければ、自ら何をなすべきかを自然に理解するようになります。そして身近な人々と対話を重ねる中で、ともに学び、最善かつ最も効果的な行動の在り方を探求していくことができるのです。」

さらに池田博士は、教育におけるメディアの役割について、次のように述べている。

「この教育のプロセスにおいて、メディアは極めて重要な役割を担っています。客観的な情報を広く提供し、多様な視点から分析を行うことで、課題の本質と、その解決に向けて取るべき行動をより明確に示すことができるのです。」

そして、IPSとSGIの協力については、次のように記している。

「IPSは『声なき人々に声を与える』ことを特別な使命として掲げています。一方、創価学会インタナショナル(SGI)は、市民社会の立場から平和の文化を築くことに力を注いでいます。この極めて重要な課題の解決を探る対話の場を提供する本プロジェクトにおいて、IPSと協力できることを大きな喜びとしています。」

サヴィオ氏は、15年以上を経た今も、この理念が変わることなく受け継がれていることを何よりもうれしく思うと語った。

また、自身も同じ年次報告書に寄せたメッセージの中で、この多言語メディア・プラットフォームが、「希望に満ちた楽観主義(sanguine optimism)」へと登るための「ベースキャンプ」となることを願ったことを振り返った。

「当時描いたビジョンが、今日まで発展を続けていることを、大変うれしく思っています。」

サヴィオ氏にとって、IPS JapanとSGIの協力は単なるメディア事業ではない。

独立したジャーナリズム、教育、そして対話が結び付くことで、人々が世界を理解し、責任ある世界市民へと成長していく―その可能性を示す実践なのである。

ロベルト・サビオ氏はジャーナリスト、コミュニケーション専門家、政治評論家であり、社会正義と気候正義の活動家、そしてグローバル・ガバナンスの提唱者である。1964年、国際通信社インタープレスサービス(IPS)を創設し、長年にわたり同社の事務局長を務めた。現在は、Other Newsの創設者兼会長であり、同メディアの中心的な発信者でもある。ミハイル・ゴルバチョフ氏が創設したニュー・ポリシー・フォーラム(旧ワールド・ポリシー・フォーラム)の科学評議会副議長を務めるほか、世界社会フォーラム国際委員会のメンバーでもある。(WSF). 

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