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信仰指導者ら、COP30で化石燃料不拡散条約への支持を表明

COP30 IPS
COP30 IPS
気候変動の原因の86%を化石燃料が占めているにもかかわらず、COP文書に“化石燃料”という言葉が盛り込まれるまでに、実に28年を要した。その不条理さは、アルコホーリクス・アノニマス(AA)が28年間も会議を続けながら、“アルコール”という言葉を最終文書に書き込む勇気を持てなかったようなものだ。

ブラジル・ベレンIPS=ジョイス・チンビ

数十年前、アメリカ合衆国の中心にあるオハイオ州クリーブランドで、一人の少女が生まれた。公民権運動の象徴マーティン・ルーサー・キング牧師の故郷でもあるアメリカ南部の“祖先の土地”を後にして、母親はよりよい経済的機会を求め北へと向かった。

Rev. Dr Angelique Walker-Smith, regional president of the World Council of Churches, speaks at an event titled ‘Faith for Fossil Free Future.’ Credit: IPS
Rev. Dr Angelique Walker-Smith, regional president of the World Council of Churches, speaks at an event titled ‘Faith for Fossil Free Future.’ Credit: IPS

「母はクリーブランドの東側にたどり着きました。そこは、今も昔も、私のような人々が暮らし、そして人種やジェンダーに基づく不公正な政策にさらされ続けている地域です」と、世界教会協議会(WCC)の地域会長の一人であるエンジェリク・ウォーカー=スミス牧師は語った。|フランス語英語版

そこで母娘が直面したのは、さらに深刻な現実だった。
「母も私も、息ができなかったのです。」

化石燃料に支えられた都市化の波は、母が移り住んだクリーブランドにも押し寄せ、その影響は今も続いている。これは、アフリカ系住民600万人以上が南部を離れた“グレート・マイグレーション”の最中のことだった。

「北部に来て初めてわかったことは、“息ができない”という現実だったのです。」

WCCは、105か国以上にまたがる350超の国内教会と、3億5000万人を超える信徒を代表する組織である。地域会長の一人であるウォーカー=スミス氏は、化石燃料不拡散条約への支持は「不正義に抗し、人々の生命と豊かな未来を守る取り組みだ」と強調する。「私たちは、化石燃料から生命を育む再生可能エネルギーへの転換を支持しています。」

Kumi Naidoo
Kumi Naidoo

南アフリカ出身の人権・環境正義活動家で、化石燃料不拡散条約のプレジデントを務めるクミ・ナイドゥ氏は、世界が再生可能エネルギーに移行すると言いながら、この30年はむしろ逆方向に進んできたと指摘する。

「家に帰って浴室の水漏れに気づいたら、まず床を拭くでしょう。でも、蛇口が開いたままで、排水口に栓がしてあると分かったら、どうしますか? 当然、蛇口を閉め、栓を抜きます。

この30年、科学が“エネルギーシステムを変えなければならない”と警告してからも、私たちがやってきたのは床を拭くことだけだったのです。」

「化石燃料―石油・石炭・ガスが気候変動の原因の86%を占めているのなら、まずは蛇口を閉める必要がある。」

The Golden Rule
The Golden Rule

ナイドゥ氏は、創価学会インタナショナル(SGI)、ラウダート・シ運動、宗教環境団体グリーンフェイス(国際団体)、英国内のユダヤ教環境団体エコジュダイズムなどが共催したサイドイベント「Faith for Fossil Free Future」で訴えた。

アマゾンの目の前で開催されるCOPでありながら、同地域では依然として化石燃料の掘削免許が発給され続けているという矛盾も指摘した。

「COPで最大の代表団は開催国でもブラジルでもありません。参加者25人に1人が化石燃料業界の関係者なのです。これは、アルコホーリクス・アノニマス(AA)(=アルコール依存症者の自助グループ)の年次大会に、アルコール業界が最大の代表団として参加しているようなものです。」

さまざまな信仰・思想のコミュニティが、化石燃料の迅速な段階的廃止、再生可能エネルギーの大幅かつ公平な拡大、そしてそのための資源確保を求めて声を上げている。鍵となるのが化石燃料不拡散条約である。

「救いを必要としているのは地球ではありません。今の道を進み続ければ、土壌は荒廃し、水も失われ、暑熱で作物さえ育たなくなる。消えてしまうのは私たち人類のほうです。地球はその後も存続し、もし私たちが絶滅すれば、森は再び生い茂り、海も回復するのです。」

提案されている条約は、新たな化石燃料の探査や開発拡大を止め、既存の石炭・石油・ガスの生産も、公正かつ公平な形で段階的に廃止するための国際的な合意を目指すものだ。パリ協定を補完し、供給側に直接踏み込む法的枠組みの構築を狙っている。

支援の輪は各国や都市、さまざまな機関、科学者、活動家へと広がり、宗教界の支持も強い。

日蓮仏法を実践する世界192か国・地域のコミュニティからなる創価学会インタナショナルの横山正博氏は、信仰とエネルギー移行の交差点について語った。

「公正な移行は、信仰を持つ若者たちが変革の原動力となり得ることを示しています。」
「化石燃料不拡散条約は、化石燃料の段階的廃止だけでなく、倫理的枠組みそのものです。」
「人々の生計と尊厳を守りつつ、環境や地域経済との調和を図りながら前進する道筋です。公正な移行は技術論ではなく、倫理・包摂・連帯の問題なのです。」

Masahiro Yokoyama was speaking at an event titled Faith for a Fossil-Free Future co-sponsored by Soka Gakkai International. Credit: Joyce Chimbi/IPS
Masahiro Yokoyama was speaking at an event titled Faith for a Fossil-Free Future co-sponsored by Soka Gakkai International. Credit: Joyce Chimbi/IPS

最大の課題は、現在の環境状況の中で、この条約をどう実施していくかだ。

「この道筋には先例があります。私たちはCOPでも国連システムの中でも交渉しませんでした。地雷禁止条約がその例です」とナイドゥ氏は語る。

地雷禁止条約は、44か国が国連の枠外で交渉し、その後に国連総会で採択された。

「“強力な化石燃料輸出国は署名しないのではないか”という疑問も当然あります。しかし、この問いにも地雷禁止条約が答えています。今日に至るまで、米国、ロシア、中国は同条約に署名していません。それでも、条約が発効した瞬間、“ビジネス・アズ・ユージュアル”の社会的正当性は失われ、状況は大きく変わったのです。」(原文へ

This article is brought to you by IPS Noram in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International in consultative status with ECOSOC.

INPS Japan

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アマゾンの心臓部で―COP30と地球の運命

米国、高官派遣を見送りCOP30に不在

AIが変えるモンスーン予測―インド発の成功が30か国の農業を動かす

【ニューデリーSciDev.Net=ランジット・デブラジ】

インドで人工知能(AI)を活用したモンスーン予測が成功したことにより、他地域での気象予測モデル開発が加速している。米国の科学者によれば、この成果を基盤に今後30か国が恩恵を受ける見通しである。

シカゴ大学「人間中心型気象予測イニシアチブ(Human-Centred Weather Forecasts)」共同ディレクターのペドラム・ハッサンザデ氏は次のように語る。「インドでのモンスーン予測の成功に触発され、シカゴ大学はゲイツ財団の支援を受け、東西アフリカで既存モデルの比較検証(ベンチマーク)を開始しました。焦点は雨季と熱波の予測にあります。」

ベンチマークとは、従来型モデルとAIモデルの双方が、季節的なモンスーンの開始や進行といった重要な大気現象をどの程度正確に予測できるかを検証する手法である。

ハッサンザデ氏は「インドや他地域でも、予測精度を検証できれば、さらに多くの応用が可能になる。」と語った。「ただし、比較検証には時間と資金が必要です。既存手法の力を最大限に引き出し、リアルタイムの予測生成と大規模な情報発信を実現するには、十分なリソースが欠かせません。」

Map of India
Map of India

今夏、AIを活用したニューラル大循環モデル(NeuralGCM)による予測が、モンスーン雨期の到来4週間前から運用され、3,800万人のインド農民がその恩恵を受けた。

NeuralGCMは、従来の物理法則に基づく予測と機械学習を組み合わせて地球大気をシミュレーションするハイブリッド型モデルである。

グーグルが開発した同モデルは、他のAI気象モデルや物理モデルとの比較試験でも優れた計算効率と精度を示し、複数の気象・気候指標で高い性能を証明した。このモデルは今後2年以内に世界30か国で導入される予定である。

インドでは、同モデルがモンスーンの進行が約3週間停滞することを正確に予測した。モンスーンは例年6月初旬にインド南端で始まり、徐々に北上する。AIによる予測により、農民たちは作付け時期など重要な判断をより的確に下すことができた。研究はインド政府と協力するシカゴ大学「気候・持続可能成長研究所」の研究者によって実施された。

このAIモデルは、ラップトップ上でも動作するソフトウェアで構築されており、高精度の予測を科学者や農民が直接活用できる。一方、従来型の気象モデルは膨大なコストを要し、スーパーコンピューターによる解析が不可欠である。

インド農業省のプラモド・クマール・メヘルダ上級官は、「このプログラムは、AIによる気象予測の革新を活用し、安定した降雨の開始を予測することで、農民が自信をもって営農計画を立て、リスクを管理できるようにするものです。」と語った。

シカゴ大学の経済学者で同イニシアチブ共同ディレクターのマイケル・クレーマー氏は、AI気象予測の普及は極めて高い投資効果をもたらすとし、「政府の1ドルの投資で、農民に100ドル以上の利益を生む可能性がある」と語った。クレーマー氏は、気候変動の影響を最も受けやすい小規模農家にとって、この取り組みが特に有用だと強調する。

一方、インドの農業科学者らは、このAIモデルがすべての関係者に有用なデータを提供できるよう、さらなる改良が必要だと指摘する。
ハイデラバードの乾燥地農業中央研究所の主任科学者で植物生理学者のアルン・シャンカー氏は次のように語った。
「3,800万人の農民に情報を届けるのは見事ですが、内容には降雨シグナルだけでなく、土壌水分、蒸気圧不足、熱ストレス予報、作物生育段階への感受性データを組み合わせるべきです。」さらに「播種時期を誤れば、早期降雨の誤報によって苗が枯死し、再播種の費用やシーズンの損失につながる恐れがあります」と警鐘を鳴らした。

Ranjit Debraj
Ranjit Debraj Credit: Katsuhiro Asagiri

「人間中心型気象予測イニシアチブ」の研究者たちは、他の中低所得国でも同様のプログラムを展開し、AIモデルの効果的な活用法を気象学者に指導している。

同プログラムは今年始動し、現在はバングラデシュ、チリ、エチオピア、ケニア、ナイジェリアの5か国と提携している。シカゴ大学によれば、2026年にはさらに10か国、2027年には15か国を追加し、数百万人の農民に恩恵を広げる計画である。

ハッサンザデ氏は次のように結んだ。
「現在のAI気象モデルは、科学分野におけるAIの最大の成果の一つですが、私たちは今、AI主導による“第2の気象予測革命”の幕開けに立ち会っていると感じています。」(原文へ

INPS Japan

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トカエフ大統領とトランプ大統領、170億ドル規模の協定で関係を深化

【アスタナThe Astana Times=ダナ・オミルガジ】

カシム=ジョマルト・トカエフ大統領は11月6日、米ワシントンDCでドナルド・トランプ米大統領と会談し、両国関係の一層の強化を確認した。会談では170億ドル(約2兆7千億円)規模の商業契約が締結され、カザフスタンが中東の平和と安定を支援するためアブラハム合意への正式参加を表明した。

歴史的意義を強調

ホワイトハウスでの会談で、トカエフ大統領はトランプ政権の歴史的意義に言及し、「トランプ大統領の指導の下、米国は経済・政治・技術の各分野で世界のリーダーとしての地位を一層強化している」と述べた。
また、「米国大統領は、より安全で安定し、繁栄する世界の実現に向けて決定的な貢献をしている」と強調したと、アコルダ(大統領府)が伝えた。

TRIPP構想と戦略的パートナーシップ

トカエフ大統領は、カスピ海横断国際輸送ルート(いわゆるミドル・コリドー)のさらなる発展につながる可能性のある「国際平和と繁栄のためのトランプ・ルート(TRIPP)」など、米国の平和イニシアチブへの支持を改めて表明した。

一方、トランプ大統領は、カザフスタンとの強化された戦略的パートナーシップ(ESP)を引き続き発展させるという米国のコミットメントを再確認した。

両首脳は、170億ドルを超えるカザフスタンと米国の商業契約の締結を歓迎した。

The Astana Times
The Astana Times

カザフスタン、アブラハム合意に参加

オーバルオフィスでの会談中、カザフスタンと米国の両大統領、そしてイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相による3者の電話会談が行われた。主な議題は、カザフスタンのアブラハム合意への参加の意向であった。

トカエフ大統領は、トランプ大統領が中東和平において「かつて不可能と思われた成果を挙げ、持続的な平和のための現実的な基盤を築いた」と評価した。

カザフスタンはアブラハム合意への参加を通じて、対立の克服、対話の促進、そして国連憲章に基づく国際法の支持に貢献することを目指していると述べた。

またトカエフ大統領は、この決定がいかなる国との二国間関係にも影響を及ぼすものではなく、カザフスタンの全方位外交(マルチ・ベクトル外交)の原則に基づくものであり、平和と安全を推進する立場の表れだと強調した。

トランプ大統領はトカエフ大統領の決断を高く評価し、「この決定は他の国々にもこの取り組みを支持する動きを促すだろう。」と述べた。

「これは、世界に架け橋を築く上で大きな前進だ。今日、より多くの国々が、私のアブラハム合意を通じて平和と繁栄を受け入れようとしている。」と、トランプ大統領は電話会談後に語った。

トカエフ大統領のワシントン訪問の公式日程は、マルコ・ルビオ国務長官、ハワード・ルトニック商務長官、そして米国南・中央アジア問題特別代表セルジオ・ゴールとの会談から始まった。この会談では、重要鉱物分野における協力に関する画期的な覚書(MOU)が締結された。(原文へ)

INPS Japan/The Astana Times

Original URL: Tokayev, Trump Deepen Ties With $17 Billion Agreements – The Astana Times

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アマゾンの心臓部で―COP30と地球の運命

【ワシントンDC=アショカ・バンダラゲ】

筆者が最近ブラジルを訪れたのは、第30回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)がベレンで開催された時期と重なっていた。私は会議そのものには参加しなかったが、幸運にもアマゾンを訪れる機会を得た。

それは、自然の神秘と静寂、そして生命の循環――世界最大の熱帯雨林であり、地球最大の流域を誇るアマゾン川によって支えられる生命のうねり――を体感する、畏敬と謙虚さに満ちた体験だった。

壮大な森と川、その支流である黒い水をたたえたリオ・ネグロなどには、無数の相互依存する生物が生息している。巨大なサマウマの木――“生命の木”と呼ばれるセイバノキ――は、他の木々やツタ、植物の上にそびえ立つ。

多くの木々は鳥や動物のすみかとなり、枝や根元に巣が作られる。ナマケモノは巣を作らず、一生を森林の樹冠で過ごし、枝にぶら下がって眠る。
一方、フサオマキザルやリスザルは食べ物を求めて枝から枝へと飛び移り、鳥たちは――最小のショウビタキから、鮮やかな赤冠や緑、黒のアマゾンカワセミまで――それぞれの獲物を狙いながら枝々を飛び回る。夜が訪れると、白い羽をもつフクロウに似た美しいグレート・ポトゥが現れ、獲物をじっと待つ。

川では、銀色のトビウオが群れをなして水面を飛び、虫を捕まえる。灰色やピンクのイルカは魚を追いながら、あるいは遊びながら水面に浮かび上がる。岸辺では、白鷺が誇らしげに立ち、クロカイマンやメガネカイマンが獲物を待ち伏せる。上空では、インコを含む鳥の群れが空を歌で満たし、ハゲワシが地上の死骸を求めて舞い降りる。

アマゾンと人間

人間もまた、数万年前から他の生物と密接な共生関係を保ちながらこの地に暮らしてきた。森で狩りをし、川で魚をとり、生き延びてきたのだ。アマゾン川沿いの岩に刻まれたペトログリフ(岩刻画)は、人間と動物の姿や抽象的な模様を描き、自然への深い敬意と、人々の間の精神的な交流を伝えている。

今日でも、アマゾンに暮らす多くの先住民コミュニティは、母なる地球を守ることに献身的であり、自然中心の価値観と伝統的な生活様式を守り続けている。

また、アマゾン川沿いには「ヒベリーニョス(川の民)」と呼ばれる人々も暮らす。彼らは先住民とポルトガル人の混血が多く、川の上に浮かぶ家や高床式の家で生活している。その生業と文化は川と森に密接に結びついており、アマゾンの保護は彼らの生存に直結している。

森林喪失の現実

アマゾンは2001年から2020年の間に約5420万ヘクタール(総面積の9%以上)を失った。これはフランスに匹敵する広さである。中でもアマゾンの62%を占めるブラジル領が最も被害を受け、次いでボリビア、ペルー、コロンビアが続く。森林伐採に加え、アマゾンでは年間4,000~6,000種の動植物が失われていると推定されている。

IPS Team at COP30
IPS Team at COP30

COP30

先週ベレンで開かれたCOP30の開会式で、ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領は、「アマゾンでの森林伐採は過去2年間で半減しており、気候変動への具体的な行動は可能だ」と述べた。そして「美辞麗句や善意の時代は終わった。ブラジルのCOP30は“真実と行動のCOP”である」と強調した。

「COPは優れた理念を披露する場や交渉者の年次集会であってはならない。現実と向き合い、気候変動に実効的に取り組む場でなければならない」とも述べた。

また、ダ・シルバ大統領は、ブラジルが植物や藻類、廃棄物などから得られる再生可能エネルギー――すなわちバイオ燃料――の生産で世界をリードしていると指摘し、「化石燃料に依存する成長モデルは持続できない」と警告した。実際、COP30では世界の熱帯雨林と生命維持に不可欠な生態系、そして人類と他の生物が共有する気候の未来が問われている。

「真実と行動」

しかし、ベレンでの楽観的な発言にもかかわらず、ブラジルや世界では依然として懸念すべき動きが続いている。

COP30に先立ち、2025年10月にブラジル政府はインド、イタリア、日本とともに、2035年までに世界の持続可能燃料使用量を4倍にすることを目指す「ベレン4×(フォーバイ)」誓約を打ち出した。この目標は現在のバイオ燃料消費量を2倍以上にするものだ。

しかし環境保護団体は、十分な環境保全措置を伴わない大規模なバイオ燃料拡大は、森林伐採の加速、土地や水資源の劣化、生態系の破壊、さらには食料安全保障への脅威をもたらすと警鐘を鳴らしている。大豆、サトウキビ、パーム油などの作物が「食料か燃料か」の土地争奪を引き起こすおそれがあるからだ。

さらにCOP30直前、ブラジル政府は国営石油会社ペトロブラスに対し、アマゾン川河口付近での石油掘削を許可した。環境相マリーナ・ダ・シルバ氏を含む政府は、この事業がエネルギー転換を支え、経済発展の目標達成に寄与すると主張している。

しかし環境団体はこれを強く批判し、「化石燃料拡大を促進し、地球温暖化を悪化させる」と非難した。世界最大の熱帯雨林という炭素吸収源の沿岸での掘削は、生物多様性やアマゾン地域の先住民共同体に深刻な脅威を及ぼすと警告している。

環境活動家によれば、アマゾンでは「先住民族の土地3,100万ヘクタールがすでに石油・ガス開発区画と重なっており、さらに980万ヘクタールが鉱山採掘の脅威にさらされている」という。

COP30開催都市の矛盾

また、COP30の開催準備の一環として建設されたベレン市内の4車線高速道路「アベニーダ・リベルダージ」も論争を呼んでいる。ブラジル政府は人口増に対応するための必要なインフラだと擁護するが、環境団体や一部住民は、100ヘクタール以上の保護林を伐採して建設を進めることが、森林破壊を加速させ、野生生物を脅かし、COPの気候目標を損なうと批判している。

地球規模の責任

「地球の肺」とも呼ばれるアマゾン熱帯雨林を守る責任は、ブラジルだけに負わせるべきではない。それは人類全体が共有すべき責任である。多くの研究は、化石燃料やバイオ燃料に頼らずとも、太陽光、風力、水力といった代替エネルギー源を活用すれば世界は十分に持続できることを示している。

世界秩序を主導してきた米国や他の先進国は、気候・環境危機、そして世界的不平等の拡大に対して主要な責任を負っている。一方、新興国――特にブラジルを含むBRICS諸国――には、いまこそ言葉を超えて具体的行動に踏み出すことが求められている。ダ・シルバ大統領自身が述べたように、COP30はその方向へと果敢に踏み出す決定的な機会である。

COP30に参加する交渉官と政策立案者たちは、化石燃料業界からの圧力に屈することなく、短期的利益ではなく地球と人類の未来を優先し、倫理的かつ原則的な行動を取らなければならない。(原文へ)

アショカ・バンダラゲ博士は、『Women, Population and Global Crisis』(Zed Books, 1997)、『Sustainability and Well-Being: The Middle Path to Environment, Society and the Economy』(Palgrave Macmillan, 2013)などの著作をはじめ、地球政治経済と環境をテーマに多数の論文を発表している。近著に「The Climate Emergency and Urgency of System Change」(2023)および「Existential Crisis, Mindfulness and the Middle Path to Social Action」(2025)がある。現在、宗教間気候倫理行動ネットワーク(Interfaith Moral Action on Climate)の運営委員を務めている。

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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カザフスタン共和国大統領直属カザフスタン戦略研究所(KazISS)副所長にダウレン・アベン氏が就任

【アスタナINPS Japan/ KazISS】

ダウレン・アベヌリ・アベン氏が、カザフスタン共和国大統領直属カザフスタン戦略研究所(KazISS)の副所長に任命された。新職務では、アベン氏が、グローバル動向、外交、国際安全保障に関する同研究所の分析業務の統括を担う。

アベン氏は1997年にカイナル大学を国際関係専攻で卒業し、1999年には同大学で修士課程を修了した。2003年には米国モントレーにあるミドルベリー国際大学院(Middlebury Institute of International Studies at Monterey)で国際政策研究の修士号を取得。2011年にはアル=ファラビ・カザフ国立大学で博士課程を修了している。

これまでに、中央アジア・プロジェクト研究グループのプロジェクト・マネジャー(1997~2001年)、ジェームズ・マーティン不拡散研究センター地域事務所(アルマトイ)のプログラム・コーディネーター兼事務局長(2003~2009年)、アル=ファラビ・カザフ国立大学の認証・ランキング部門長(2008~2010年)、そして KazISS 外交・国際安全保障部の上級研究員および部長代行(2011~2014年)など、多くの要職を務めてきた。

また、ヌルスルタン(現アスタナ)のナザルバエフ大学教育大学院で上級マネジャー兼研究員、ホジャ・アフメト・ヤサウィ国際カザフ=トルコ大学ユーラシア研究所で上級研究員を歴任。2023年2月からは KazISS の国際安全保障部長を務めてきた。

アベン氏の研究分野には、核不拡散、核セキュリティ、輸出管理に加え、中央アジアおよびコーカサス地域の安全保障と協力の様々な側面が含まれる。これらのテーマについて、多くの学術論文を発表している。

必要であれば常体(原文へ

INPS Japan

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【ローマIPS=カーロス・ズルトゥーサ】

エフムディ・レブシルが命からがら砂漠を50キロ以上歩いたのは、彼が17歳のときだった。半世紀を経た今も、このサハラウィ難民は、かつてスペイン領だった西サハラの故郷に戻れていない。

1975年11月6日、モロッコ軍が同地に侵攻してからわずか6日後、数十万人のモロッコ市民が軍の護衛のもと南へと向かった。「グリーン・マーチ」と呼ばれたこの行進は、実質的には侵略であり、サハラウィの土地に対する軍事占領の始まりだった。

国連は、長年神聖視してきた原則―「人民の自決権」―を事実上棚上げした。それは30年以上にわたり、サハラウィ問題への国連の対応を支えてきた基本的な枠組みである。

「アフリカ最後の植民地」とも呼ばれる西サハラは、英国本土ほどの広さを持ち、いまだ非植民地化を待つ唯一のアフリカの領土である。だが今年10月31日、その目標はさらに遠のいた。

モロッコの侵攻から50周年にあたり、国連安全保障理事会はモロッコ政府の「自治案」を支持する決議を採択し、モロッコの領有権主張に重みを与えた。

砂漠の難民キャンプからの声

レブシルはアルジェリア西部ティンドゥーフの難民キャンプから、ビデオ会議でIPSの取材に応じた。アルジェから南西へ約2,000キロ、夏には気温60度に達する過酷な砂漠地帯―ここが50年間、サハラウィの人々にとって「故郷に最も近い場所」となっている。

「私たちは選択を迫られた。難民としてアルジェリアに留まるか、それとも国家の仕組み―省庁や議会―を築くか」と、現在ポリサリオ戦線の幹部代表となったレブシルは振り返る。1973年に設立されたポリサリオ戦線は、国連により「サハラウィ人民の正統な代表」と認められている。

1975年にティンドゥーフに到着した彼は、キャンプでの学校設立を任され、その後キューバに留学するサハラウィ学生の監督役を務め、10年間サハラウィ議会で活動し、さらにサハラ・アラブ民主共和国(SADR)の司法・文化両省でも要職を担った。

A man walks past a mural in the Tindouf camps in Algeria, where the Polisario Front has managed life in exile while building state institutions. Credit: Karlos Zurutuza / IPS

同共和国は1976年2月、議会において宣言された。
「100年に及ぶスペインの支配の後、スペイン政府が我々を見捨てて去るとは想像もしていなかった。」と彼は語る。「もはや後戻りはない。独立国家を築くか、さもなくば我々の民は滅びるだけだ。」

ポリサリオが1976年に独立を宣言した後、国連はサハラウィの自決権を再確認した。しかし1991年に設立された「西サハラ住民投票監視団(MINURSO)」は、設立目的であった住民投票をいまだ実施していない。

侵攻を目撃した者たち

トマス・バルブロもまた、モロッコ軍の侵攻時に17歳だった。ラバトから南へ1,100キロの西サハラ首都ラユーンに駐留していたスペイン軍兵士の息子で、侵攻の3か月前にマドリードへ帰国していた。

「サハラウィの人々は、ナパーム弾や白リン弾の攻撃、迫害、追放、天然資源の体系的な略奪、そして数十万人の入植者によるアイデンティティの抹消の試みに耐えてきた。」と、ジャーナリストであり『禁じられたサハラ史』(Destino社、2002年)の著者でもある彼は語る。

バルブロは膠着状態の責任を「モロッコの強硬姿勢と、それを黙認してきた安保理主要国」にあると指摘し、「国連はモロッコ政府に屈服した」と批判する。

皮肉なことに、国連自体もモロッコの主権を正式には認めていない。占領地域は1963年以来「非自治地域リスト」に掲載されたままであり、法的には西サハラの非植民地化は「未完」のままである。

Mohamed Dadach in Laayoune, the capital of occupied Western Sahara. Released in 1999 after 24 years in prison, he is known as the “Sahrawi Nelson Mandela.” Credit: Karlos Zurutuza / IPS

「巨大な野外刑務所」

UNHCRによれば、アルジェリアの砂漠キャンプには17万〜20万人のサハラウィが暮らしている。一方で、モロッコ支配下にある地域の実情を把握するのはさらに難しい。モロッコ政府はサハラウィ民族の存在自体を公式に認めていないからだ。

ノーム・チョムスキー氏のような識者は、この地を「巨大な野外刑務所」と呼ぶ。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は7月の報告書で、モロッコが2015年以降、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の訪問を拒否していると指摘した。

「OHCHRは、特に自決権を訴えるサハラウィ個人に対して、脅迫、監視、差別といった人権侵害の訴えを受け続けている」と報告書は述べている。

国際人権団体も、厳しい制限の中で弾圧の実態を記録し続けている。アムネスティ・インターナショナルの2024年報告書は、モロッコ当局が「西サハラでの反対意見や結社・平和的集会の自由を抑圧し、平和的抗議を暴力的に弾圧している。」と非難した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、裁判所が「警察による拷問で得られたとされる自白のみに基づき、活動家に長期刑を言い渡している。」と指摘した。

36歳のアフメド・エタンジは、占領地で最も著名なサハラウィ人権活動家の一人だ。彼はこれまで18回逮捕され、繰り返し拷問を受けてきた。

ラユーンからの電話取材に対し、彼は「国際NGOが与えてくれる注目だけが、私を刑務所やそれ以上の悲劇から守っている。」と語る。

「50年にわたり、軍事封鎖、超法規的殺害、あらゆる形の弾圧が続いている。行方不明者は数千人、逮捕者は数万人に上る。大国の経済的利害は、いつも人権より優先されてきた」と彼は述べた。

それでもエタンジは希望を失っていない。
「占領下で生まれた私たちは、本来なら最もモロッコに同化しやすい世代と見られていた。しかし現実は違う。自決への願いは若者の間で確かに生き続けている。」

Sunset on a beach in occupied Western Sahara. In addition to a coastline rich in fishing resources, Sahrawis watch helplessly as Rabat exploits the rest of their natural wealth with the complicity of powers like the US, France, and Spain. Credit: Karlos Zurutuza / IPS

「サハラ自治地域」構想

国連が事実上支持を与えたモロッコの「自治案」は、この50年間で唯一の政治的提案だ。2007年に初めて提示され、2020年にはトランプ政権が支持を表明した。

「サハラ自治地域」がどのように機能するのかは曖昧なままで、地方行政・司法・経済面での権限に関する言及があるのみだ。

ポリサリオ戦線はこの案を拒否しているが、それによってサハラウィが自らの未来を決める機会が近づいたわけではない。

多くのサハラウィにとって、安保理がこの決定をモロッコ侵攻50周年の記念日に下したことは、偶然ではなく「計算された侮辱」と映った。

植民地支配の続く地で

バスク人の母を持ち、初期の避難民を支えた看護師の娘でもあるガラジ・ハチ・エンバレク氏(47)は、ポリサリオ戦線創設メンバーの一人の子でもある。彼女は半生をかけて、学校や大学、市議会などあらゆる場で、西サハラの声を届けてきた。

スペイン北部ウレチュ(マドリードの北約400キロ)で行われたIPSのインタビューで、彼女は失望を隠さなかった。「積極的な抵抗は極めて困難で、モロッコのロビーは今も強力です。」と彼女は嘆く。

「何でもありの時代に生きていますが、これは正義でも合法でもありません。平和の名のもとに進められているのは、不正を正当化することにすぎないのです」と述べ、「新たな連帯を築く必要がある」と強調した。

「植民地主義は終わっていません。私たちは、アフリカ最後の植民地で続く誤った統治の犠牲者にすぎないのです。」(原文へ

INPS Japan

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国連、スーダンの残虐行為を非難 RSFがエルファシルを制圧、病院攻撃で数百人死亡(アハメド・ファティ)

Ahmed Fathi.
Ahmed Fathi.

【国連ATN=アハメド・ファティ】

スーダンでの人道危機は、同国の準軍事組織RSF(即応支援部隊)が北ダルフール州の州都エルファシルを制圧した後、集団殺害、病院攻撃、大規模な住民避難が発生し、かつてないほどの惨状に陥っている。

国連は「国際人道法の継続的な違反」に対して強く非難を表明し、民間人を標的とした残虐行為が確認されつつあると警告した。

国連報道官ステファン・ドゥジャリック氏は、「エルファシルのサウジ産科病院で、患者と付き添いを含む460人以上が殺害されたという悲惨な報告に、国連は衝撃を受けている。」と述べた。

UN Spokesperson Stéphane Dujarric
UN Spokesperson Stéphane Dujarric

この攻撃は、医療従事者を狙った襲撃や拉致が相次ぐ中で発生し、2023年4月の紛争勃発以来、最も暗い局面の一つとなった。

世界保健機関(WHO)によると、これまでに医療施設に対する攻撃が185件確認され、医療従事者や患者を含む1,200人以上が死亡、416人が負傷している。今年だけで49件の攻撃により約1,000人が殺害されたという。

避難と絶望

国際移住機関(IOM)は、日曜から火曜の間に3万6,000人以上がエルファシルから逃れ、ケブカビヤ、メリト、タウィラなど近隣地域に避難したと報告した。

多くの人々が屋外で避難生活を送っており、避難所も衛生設備もない状態だ。女性や少女が性的暴力や虐待の危険にさらされているとの報告もある。

高齢者や負傷者、障害者など数千人が依然として市内に取り残されており、不安定な治安と交通手段の欠如により避難できない状況にある。

UN Emergency Relief Coordinator Tom Fletcher
UN Emergency Relief Coordinator Tom Fletcher

国連緊急援助調整官トム・フレッチャー氏は、ダルフールおよびコルドファン地域での人道支援のため、国連中央緊急対応基金(CERF)から新たに2,000万ドルを拠出すると発表した。今年初めにも2,700万ドルが拠出されている。

それでもドゥジャリック氏は、「民間人、人道支援要員、医療従事者は常に保護されなければならない。」と警告した。

WFP職員の国外追放

事態をさらに悪化させているのが、スーダン外務省による世界食糧計画(WFP)幹部2名―カントリーディレクターと緊急対応コーディネーター―の国外追放である。理由は明らかにされていない。

ドゥジャリック氏はこの決定を「深刻に懸念する」と述べ、現在2,400万人以上のスーダン国民が深刻な食糧不安に直面しており、多くの地域が「飢饉の影響を受けている」と指摘した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW):RSFによる「大量虐殺」と民族標的

ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の独自調査によると、10月26日にRSFがエルファシルを掌握した後、「逃げ惑う民間人への無差別虐待」が蔓延しているという。

検証済みの映像には、RSF戦闘員が民間人を処刑し、遺体の上で歓声を上げ、負傷者を嘲笑する様子が映っている。HRWはこれを「RSFによる一連の大量残虐行為の典型的な特徴を示す」と指摘した。

HRWの暫定事務局長フェデリコ・ボレッロ氏は、「エルファシルから届く恐ろしい映像は、RSFによる過去の大量虐殺の記録と酷似している。世界が緊急に行動を起こさなければ、民間人がさらなる残虐行為の犠牲となる」と警告した。

HRWはこれまでにも、西ダルフールでRSFによる大量処刑や民族的標的、人道に対する罪を記録しており、その行為がマサリート族など非アラブ系住民を標的にしたジェノサイドにあたる可能性があると警告している。

行動を求める声の高まり

UN High Commissioner for Human Rights Volker Türk

国連人権高等弁務官フォルカー・トゥルク氏は、「エルファシルでさらなる大規模な民族的動機による人権侵害や残虐行為が発生する危険が日々高まっている」と警告した。

HRWは国連安全保障理事会に対し、RSFの指導者モハメド・ハムダン・ダガロ(通称ヘメティ)および副指導者アブデル・ラヒーム・ハムダン・ダガロに対して標的制裁を課すよう求めた。さらに、RSFの主要支援国とされるアラブ首長国連邦(UAE)に対し、民間人攻撃を停止させるよう圧力をかけるべきだと呼びかけた。

HRWと独立系ジャーナリストによる調査では、UAEが関与する武器供与や、ラテンアメリカ出身のスペイン語を話す外国人傭兵がRSF部隊と共にダルフールで活動している実態も明らかになっている。

終わりの見えない危機

スーダンでの紛争はすでに19か月目に入り、数百万人が避難を余儀なくされ、世界最悪級の人道危機を引き起こしている。全地域が飢饉の瀬戸際にある。

度重なる国際社会の停戦呼びかけにもかかわらず、RSFは安保理決議を無視し続け、ダルフール全域で勢力を拡大する一方、政府軍は後退している。

国連本部でドゥジャリック氏は重苦しい言葉で締めくくった。
「スーダンの人道的ニーズはかつてないほど深刻だ。前例のない飢餓、前例のない治安の崩壊、そして前例のない苦難が続いている。」(原文へ

INPS Japan/ATN

Original URL: https://www.amerinews.tv/posts/un-condemns-atrocities-in-sudan-as-rsf-seizes-el-fasher-hundreds-killed-in-hospital-attack

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「今必要なのは政治的勇気だ」とグテーレス国連事務総長、COP30で訴え

【ブラジル・ベレン/南アフリカ・ヨハネスブルクIPS=セシリア・ラッセル】

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、地球の平均気温上昇を1.5℃以内に抑えるために最も欠けているのは「政治的勇気」であると警告した。「最大の障害は政治的勇気の欠如だ。多くの約束が停滞している。多くの企業が“気候破壊”から記録的な利益を上げている。そして多くの指導者が、国民の利益ではなく、化石燃料利権の虜になっている」と、グテーレス事務総長はブラジル・ベレンで開かれたCOP30首脳会議の開会全体会合で述べた。

彼は、気候破壊によって巨額の利益を得ている勢力を名指しで批判した。
「莫大な資金がロビー活動や世論操作、進展の妨害に使われ、あまりに多くの指導者がこうした既得権益に囚われている」と述べた。

グテーレス氏は、世界気象機関(WMO)のセレステ・サウロ事務局長の発言を引用した。彼女は全体会合でこう述べている。
「例外的な高温の連続という警告すべき傾向が続いています。2025年は観測史上2番目か3番目に暑い年になる見込みです。過去3年間はいずれも記録的な高温でした。これは、私の2歳の孫が生まれた世界です。」

サウロ氏は、この気温上昇に伴う問題を挙げた。
海洋熱の過去最高更新による海洋生態系や経済への打撃、海面上昇、南極・北極の海氷面積の記録的低下などである。
私たちはもはや、破壊的な気象を例外としてではなく、日常の一部として目にしている。わずか数分で数か月分の雨が降り、地上の河川は“天空の川(大気河川)”へと変貌する。極端な高温や火災、そして先週のハリケーン・メリッサのような“異常にエネルギーを帯びた熱帯低気圧”が地球を襲っている。

「不平等を克服せずして、気候変動は抑えられない」― ルラ大統領

ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領は、気候変動を引き起こした根本的な条件を変えなければならないと訴えた。

開会演説でルラ大統領は次のように語った。
「気候変動とは、何世紀にもわたって私たちの社会を分断し、富裕層と貧困層、先進国と途上国とを隔ててきた同じ力学の結果である。
国内外の不平等を克服せずして、気候変動を抑えることは不可能だ。」

「気候正義とは、飢餓や貧困との闘い、人種差別やジェンダー不平等との闘い、そしてより代表性と包摂性のある地球規模のガバナンスを推進するための同盟者である」と強調した。

ルラ氏はまた、今回の気候会議をアマゾンの中心地ベレンで開催するという決定を「大胆な選択だった」と述べた。

「人類は、IPCC最初の報告書が発表されて以来35年以上にわたり気候変動の影響を認識してきた。しかし、化石燃料からの脱却と森林破壊の停止・反転の必要性を初めて公式に認めるまでには28回もの会議を要した(=2023年のドバイ会議)」と回顧した。

さらに、バクーからベレンへと引き継がれた「ロードマップ」に言及し、次のように続けた。
「2035年までに年間少なくとも1兆3000億ドル規模に気候資金を拡大すべきだと認めるまでに、さらに1年を要した。」

「困難や矛盾に直面するだろうが、公正な方法で計画を立て、森林破壊を逆転させ、化石燃料依存を克服し、これらの目標を達成するための資金を動員するために、私たちはこのロードマップを必要としていると確信している」と述べた。

科学は「警告」だけでなく「解決策」も示している

グテーレス氏とサウロ氏は共に、温度上昇を示す科学は同時に解決策も提示していると強調した。

Credit: United Nations
Credit: United Nations

サウロ氏はこう述べた。
「科学は単に警鐘を鳴らしているのではありません。私たちが適応できるよう支援しているのです。再生可能エネルギーの導入はかつてないスピードで進んでいます。気候インテリジェンスを活用すれば、クリーンエネルギーシステムを信頼性・柔軟性・強靱性のあるものにできます。」

グテーレス氏も気候危機への即応の必要性を改めて訴えた。
「多くの国々が適応のための資源を欠き、クリーンエネルギー移行から締め出されている。そして多くの人々が、自国の指導者が行動することへの希望を失いつつある。私たちは、もっと速く、そして共に前進しなければならない。この会議を“加速と実行の10年”の出発点としなければならない。」(原文へ)

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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中央アジア:混乱から恒久平和へ

【London Post=エルドル・アリポフ】

平和は、ときに紛争が地域のアイデンティティに深く刻み込まれた場所にこそ見いだされることがある。中央アジアのフェルガナ盆地は、その最たる例である。かつてはウズベキスタン、キルギス、タジキスタンの間で争いの火種となっていたこの肥沃な地は、現在、世界でも有数の平和構築モデルとして注目されている。

長年にわたり、フェルガナ盆地はポスト・ソ連時代の分断の深い傷跡を象徴してきた。国境封鎖、断続的な緊張、過激思想の台頭、そして国境線によって引き裂かれた共同体――。状況はあまりに深刻で、多くの政治評論家がこの地域を「中央アジアのアキレス腱」と呼んだ。

しかし今日、三国政府の実務的なリーダーシップのもと、かつて対立していた地域社会は国境を越えて交流を深め、貿易を拡大し、十年前には想像もできなかった信頼の雰囲気を共有している。

London Post.

この変化は偶然ではない。競争やゼロサム思考よりも協力と共通の繁栄を優先する「政治的実務主義」が原動力となった。その中心にいるのがウズベキスタンのシャフカト・ミルジヨエフ大統領である。彼の改革志向かつ地域重視の政策は、中央アジアの進路そのものを再定義した。彼は第80回国連総会でこう語っている。
「閉ざされた国境、未解決の紛争、対立の時代は過去のものとなった。今日、私たちは“新たな中央アジア”の形成を始めている。」

その言葉は行動に移された。2025年3月に署名された「永遠の友情に関する宣言」と「国境接点に関する条約」は、長年の不信を終結させる歴史的な合意となった。ミルジヨエフ大統領の指導のもと、ウズベキスタンは開放政策、国境和解、共同開発プロジェクトを推進し、フェルガナを協力の肥沃な地へと変貌させた。その実務的なアプローチ――貿易、交通網、人と人との交流に焦点を当てた政策――は、隣国のキルギスやタジキスタンにも波及し、協調の精神を共有する動きを促している。

かつて紛争の原因であった限られた共有資源、特に水資源は、いまや政治的合意の中核となっている。アムダリヤ川やシルダリヤ川流域の資源共有を保証する協定が近年相次いで締結され、2025年5月には作付期における水分配に関する合意も成立した。これは一方的な利用競争から、ルールに基づく協調への転換を意味する。農民にとっては綿花や果実作物の安定した灌漑を意味し、国境村の住民にとっては紛争の減少と安定の向上を意味している。

フェルガナ盆地の人々にとって、これらの変化は古き良き共生の時代の復活でもある。共同体の記憶は、古代シルクロードの時代まで遡る。当時フェルガナは隊商と商取引の十字路であり、多様な民族が土地と水を分かち合い、寛容と相互依存の精神で共存していた。ウズベクの学者が「調和のコード」と呼ぶその精神は、決して消え去ったわけではなく、ただ長く沈黙していただけだった。

その調和の精神は、今月初めて開催された「フェルガナ平和フォーラム」で再び示された。ミルジヨエフ大統領の提唱により実現したこの会議には、地域の政治指導者や草の根のコミュニティが参加し、「中央アジアの平和は外部勢力によってではなく、自らの指導者と人々の手によって築かれる」という強いメッセージを世界に発信した。女性団体や若者組織などの積極的な参加も、平和構築にはすべての声が反映されるべきであるという重要な理念を体現していた。

Map of Central Asia
Map of Central Asia

フォーラムの中心では、フェルガナ平和フォーラムを常設のプラットフォームとし、今後はキルギス、タジキスタン、ウズベキスタンの順に開催地を持ち回りとすることを呼びかける共同声明が採択された。また、フォーラムの枠組みの下で、初の「キルギス・ウィンティマク(団結)の日」が共同開催され、地域の一体感をさらに強めた。

平和は繁栄をもたらす――それはよく知られた真理である。フェルガナ盆地は、今や10年前には想像もできなかった経済変貌の只中にある。国境制限に縛られていた往時とは異なり、現在のフェルガナは繊維産業、農業、越境貿易の活発な中心地となり、地域全体の要として機能している。ウズベキスタン領フェルガナ地域の地域総生産は過去8年間で4倍に増え、現在は約200億ドルに達している。同期間に輸出額は2.4倍の27億ドルに拡大し、キルギスおよびタジキスタンとの越境貿易も3倍の16億ドルに達した。2017年から24年の間に投資総額は312億ドルに上り、約100万人の雇用を創出、貧困率は13.9%から8.6%に低下した。

紛争が世界各地で再燃するなか、フェルガナ盆地の静かな成功はより広く注目されるべきである。中央アジアはもはや世界の周縁ではない。実務的リーダーシップ、地域協力、そして「共に生きる」という人々の意志が、平和構築の新たな教訓を世界に示している。

エルドル・アリポフ博士(政治学博士/ウズベキスタン大統領付属戦略・地域研究所長)

INPS Japan

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ニューヨーク新市長マムダニ氏―多文化の尊厳のために

【ニューヨークIPS=ナウリーン・ホサイン】

ニューヨーク市長選は、まるで米国大統領選挙のような熱気で世界の注目を集めた。そして火曜日夜、ゾーラン・マムダニ氏が圧勝を収め、米国社会が不安と混迷の時代を経て新たな希望を見出した瞬間となった。彼は今後、世界で最も裕福で注目度の高い都市の一つであるニューヨーク市を率いることになる。

水曜朝から、筆者のSNSには、ニューヨークどころか米国外に住む友人や家族までもがマムダニ氏の勝利を自分の街の出来事のように祝う投稿であふれた。これは、彼がソーシャルメディアを通じて展開した効果的な発信によるもので、その「本物であること」を基盤とするブランドと理念は、ニューヨークの枠を超えて多くの人々に響いた。

マムダニ氏の選挙戦と勝利は、まるで現代の寓話のようであった。州内でも知名度の低かった一地方議員から、わずか1年で世界的に知られる人物となったのである。

草の根運動と、既成政治が避けてきた新たな戦術を駆使しながら、彼の陣営は人口構成の多様性を特徴とする広範な連合を形成していった。彼は現政権への挑戦者として、信念と理念を貫き、同じ政党内の旧勢力からの抵抗にも立ち向かった。

その勝利は「誰もがよりよい人生を追求できる自由と機会を持つ」というアメリカン・ドリームの再確認でもある。マムダニ氏は、団結と共感を基盤とした信念を貫きながら、いくつもの歴史的偉業を成し遂げた。市史上初のイスラム教徒の市長、初の南アジア系市長、そして100年以上ぶりに最年少の市長である。

彼の魅力の中核にあるのは、生活費の負担を軽減する政策、インド系ウガンダ移民を父に持つイスラム教徒としての背景は、「より良い生活」を求めて母国を離れた移民たちに深く響いた。アメリカン・ドリームは、本来「繁栄は受け継ぐものではなく、追求するもの」という理念であり、経済的機会と市民的自由を守る国という理想を掲げてきた。

しかし現実には、移民たちは高騰する生活費の中で基本的な生活を維持するために苦闘している。その点において、マムダニ氏は彼らの苦しみを真に理解していると感じさせた。彼の語る希望のメッセージは、人々が自らの姿を彼の中に見出せるような共感を生んだ。

信仰や経験不足を攻撃する中傷的な言説にも、マムダニ氏は一歩も引かず、自らのアイデンティティを損なうこともなかった。多くの移民が同化を選ぶ中で、彼は「本物であること」こそが今の時代に最も重要だと証明してみせたのである。

次期市長となる彼には、都市の生活をより手頃にするという公約を実現する責任がある。同時に、その信念が単なる選挙戦略ではなかったことを証明しなければならない。国連本部を擁する「世界の首都」ニューヨークにとって、これほど国際的視野を持つ市長はふさわしい存在と言える。

彼は国内政治家でありながら、国際的な視野を持つ人物である。その傾向は彼の家庭にも表れている。妻はシリア系アメリカ人移民であり、両親もそれぞれ文化・学術の分野で著名な人物だ。

父マフムード・マムダニ氏は、ウガンダ出身の政治学者で、ウガンダ、南アフリカ、セネガル、そして米国コロンビア大学などでポストコロニアル研究を教えてきた。

母ミーラー・ナイール氏はインドの映画監督で、『モンスーン・ウェディング』『ミシシッピ・マサラ』などの代表作で知られる一方、北東インドのガロ先住民族を描いたドキュメンタリー『Still, the Children Are Here』など社会派作品も手がけている。同作は国連国際農業開発基金(IFAD)と共同制作された。

このように彼の家系は恵まれた文化的背景を持つが、それゆえにこそ社会正義への意識が高く、変革と誠実さを掲げた彼の政治的スタンスにもその影響が見て取れる。

近年、社会の分断と不確実性が深まり、既存の問題解決をより困難にしている。国連も例外ではない。開発と繁栄のために全てのコミュニティを包摂するという理想を掲げながらも、資金不足や政治的意思の欠如、加盟国間の利害対立のために行動が制約されている。

国連は「原則的中立性」を掲げ、世界の多様な課題を取り上げ、平和で包摂的な対話を促進する。しかし加盟国の利害が絡むため、しばしば強い立場を取ることができないという限界を抱えている。

その意味で、国連とニューヨーク市は共通点を持つ。どちらも構成員によって形づくられ、時に一部の影響力が全体の行方を左右する。

だからこそ、マムダニ市長のような人物から国連が学ぶべき点は多い。彼は「国内課題を国際的視野で捉えることが有益である」ことを実証している。希望を原動力とし、「尊厳ある生活を当然の権利として求める」姿勢を持つことが、変化をもたらす力になるということを、彼の当選は私たちに思い起こさせる。(原文へ

INPS JAPAN/IPS UN Bureau Report

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