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|視点|AIと自立型兵器ー岐路に立つ世界(サンニャ・ラジパルSGI国連事務所)

この記事は、聖教新聞電子版が配信したもので、同社の許可を得て転載しています。

【ロンドンINPS Japan=サンニャ・ラジパル】

オーストリアのウィーンで本年4月、自律型兵器システムの規制に関する2つの重要な行事が開かれました。

一つは、国際ネットワーク「ストップ・キラーロボット(SKR)」、オランダの平和団体「PAX」,オーストリア赤十字社が、オーストリア連邦欧州・国際問題省の協力を得て開催した、市民社会フォーラム「岐路に立つ行動」(4月28日)。もう一つは、オーストリア政府が主催した国際会議「岐路に立つ人類ー自立型兵器氏システムと規制の課題」(同29日、30日)です。

SGIを代表して両会合に出席した山下勇人氏と私は、自律型兵器が引き起こす倫理的・人道的な懸念の緊急性に光を当てました。

倫理的な断絶性

市民社会フォーラムでは、緊要なテーマが取り上げられ、世界的な武器の脅威に反対するキャンペーンが成功を収めてきたことを指摘する中で、市民社会の行動の必要性が際立つものとなりました。

私は、技術開発と規制のギャップを議論するパネルに登壇しました。長きにわたる「人間性を奪う」傾向は第一に産業革命における機械として、新自由主義的な理想への移行期における資本として、そして大量消費社会の一部としての製品、さらにAI時代におけるデータとして現れていることに言及。共通の「人間の尊厳」を志向したパラダイムシフトが必要ではないかと強く語りました。

実際のところ、「生死を左右する決断を下す瞬間」だけでなく、「重要な技術の開発や知見を提供するためのデータの分析がどのように行われているか」という点においても、人間の自主性を維持することが極めて重要であると指摘したのです。

山下氏は宗教間ワークショップに参加し、「倫理的な断絶性」の概念について議論しました。池田SGI会長が提唱されたように、攻撃をする側とされる側との「断絶性」が人間性を損ない、より非人道的な戦争につながる可能性がある。だからこそ、対話を通じた地域社会に根差した平和の構築、そして人間の尊厳を守るために多国間の関係者と積極的に関わる「信仰を基盤とした団体(FBO)の重要性を訴えたのです。

市民社会と国家間の協力

続いて開催された国際会議「岐路に立つ人類」には、140超の国から1000人以上が集まりました。

Alexander Kmentt, Director for Disarmament, Arms Control, and Non-Proliferation at the Austrian Ministry of Foreign Affairs. PHOTO Credit: Michael Gruber (BMEIA)

オーストリアのシャレンベルク外相は会議の冒頭で、「行動を起こさずにこの瞬間をやり過ごすわけにはいかない。今こそ人による制御を確実にする国際的なルールと規範に合意すべき時である。」と述べました。

Hayato Yamashita, Program Coordinator for Disarmament at SGI ©Seikyo Shimbun
Hayato Yamashita, Program Coordinator for Disarmament at SGI ©Seikyo Shimbun

山下氏はSGIを代表して声明を発表し、人類全体の繁栄に貢献する技術の重要性を改めて訴え、国際的な規制を求めました。

期間中、参加者は自律型兵器システムによって生じる法的、倫理的、人道上、安全保障上の課題を巡って議論しました。そこでは次のテーマに重点が置かれました。

1.人による制御の重視:自律型兵器システムにAIを組み込むことは、意思決定における微妙な差異や倫理的判断を排除するという脅威をもたらす。それにより、人間による制御と説明責任が損なわれ、無差別、かつエスカレートする暴力のリスクが浮き彫りになった。

2.偏りと不安定な技術開発:AI技術の開発と訓練には、多様性の欠如、不正確なシュミレーションシナリオ、行動への傾倒など様々な偏りが存在し、現実世界でのシナリオにおいて予測不可能で不均衡な行動や決定を招くリスクがある。

3.倫理的・法的枠組み:自律型兵器技術の急速な進化と複雑化は既存の法的枠組みの進化を上回っている。一貫した規制の欠如、そして意図・実行・動機の不明確さが、自律型兵器が関与する戦争犯罪に対する説明責任をより複雑にしている。

4.入手可能性と拡散リスク:自律型兵器システムは化学兵器、生物兵器、核兵器と言った従来のグローバルな脅威とは異なり、複雑な材料や機械を必要としない。比較的安価で入手が容易なため、より広範な拡散が可能となる。この広範な入手可能性と品質のばらつきにより、この問題に対処するには、複数の利害関係者が連携した効果的な取り組みが必要となっている。

Soka Gakkai International
Soka Gakkai International

人間の生死の決定を機械に委ねない

法的規制の策定へ 生命の尊厳守る行動の連帯を

会議はオーストリア政府による議長リポートの発表をもって閉幕しました。報告書は新技術に対する人間の制御の重要性を強調し、「武力行使においては人による制御が優先されなければならない。標的の選択や生死に関する決定を機械に委ねることは、私たち全てに関わる問題である。」と記されています。この報告書は、自律型致死兵器に関する2023年の国連総会決議に沿って、自律型兵器システムに関する見解を国連事務総長に提出するよう、全ての国家及び関係者に強く求めるものです。同時に、自律型兵器システムを規制する国際的な法的枠組みを策定するために、全ての関係者と緊急に協力する強い決意を表明しています。

結論として今回の会議では、自律型兵器システムの規制において国際協力と倫理的配慮が急務であることが強調されました。

私たちは絶えず進化するテクノロジーや、ますます現実から離れた制度に直面しています。人類全体を守る上で根本的な原動力となるものは何かー。それは、化学兵器、生物兵器、さらには核兵器という世界的な脅威から人類を守るための過去の取り組みと同様に、人々の意識啓発、市民社会と国家間の協力によって成し遂げうるものなのだと、今回の会議は思い起こさせてくれました。

この「結集した行動の力を信じる」という信念こそが、人間性の否定から脱却し、「人間の尊厳」を守るための最重要の第一歩となるに違いありません。

INPS Japan/『聖教新聞8月18日付を転載」

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中央アジアの水資源問題と解決策

【バクーINPS Japan/London Post=セイムール・ママドフ】

キルギス人には「El bashi bolboy, suu bashi bol」という格言がある。直訳するとこうなる: 「人民の長になるな、水の長になるべし。」

この古い諺は、今日でも大いに当てはまる。水は命であり、この単純な真理は誰もが認めるところであり、証明する必要はない。水源を支配する者はすべてを支配する。豊富な水資源の存在は、人々の社会経済的発展と福祉に寄与する。水は、かつて血なまぐさい戦争の原因となった戦略的資源である。今日、これらの問題は国際法によって規制されているが、問題は依然として存在する。気候変動に伴い、水資源の不足がますます深刻化しているのだ。

前世紀には、新鮮な飲料水の不足が世界的な問題となり、世界人口の40%以上が影響を受けた。

川が流れる国

アゼルバイジャンもまた、天然の水域があるにもかかわらず、水不足の問題に直面している。同国には8,500近い河川があり、そのうち24本は大きな河川で、450の湖がある。これは非常に多いが、専門家によれば、気候変動により、この国の水資源は年々減少しているという。このプロセスは世界中で起こっており、各国は独自の解決策を模索している。アゼルバイジャンの場合、埋蔵量の70%以上が国外で形成されているという事実が状況を複雑にしている。アゼルバイジャンの主要な河川は近隣諸国に源を発している。

これに対してカザフスタンでは、8つの主要河川流域のうち7つが越境流域である。年間再生可能な地表水資源の40%以上が近隣諸国からもたらされている。そのため、カザフスタンの水輸入量はアゼルバイジャンより大幅に少ない。とはいえ、中央アジア全体と同様、カザフスタンの水不足問題は非常に深刻である。

Political Map of the Caucasus and Central Asia/ Public Domain
Political Map of the Caucasus and Central Asia/ Public Domain

アゼルバイジャンについては、第二次カラバフ戦争後、国の水収支は大幅に改善した。カラバフと東ザンゲズールの水源の水資源は、国の総水資源の25%を占めている。最も重要なことは、解放地域のほぼすべての河川がアゼルバイジャン国内に源を発していることであり、これは水の安全保障の観点から非常に重要である。

一方、カザフスタンは「水に依存せざるを得ない」の国であり、国土の2.8%しか水が生きわたっていない。予測によれば、2030年までに国内の淡水量は5分の一に減少する可能性がある。水の輸入依存度を減らすため、カザフスタンは2023年に9つの新しい貯水池の建設を開始した。将来的には、その数を220まで増やす必要がある。

水の浪費

ユーラシア開発銀行(EDB)の最新調査「中央アジアにおける飲料水供給と衛生」によると、中央アジアでは1000万人(人口の14%)が安全な飲料水を利用できていない。世銀の専門家によると、1994年から2020年にかけて、中央アジア諸国における生活用水の取水量は倍増したが、飲料水供給インフラへの投資は消費量の増加に見合わなかった。その結果、給水・処理インフラは80%近くが損耗し、配水網における水の損失は55%に達している。

こうした問題を解決するには資金が必要だ。世界銀行の予測によると、2050年までに中央アジアの人口が9000万人に増加すると予測される中、25〜30%の水不足が予想されている。農業用水の需要は2030年までに30%増加すると予測されている。

これらの気落ちする数字にもかかわらず、多くの専門家は問題の根源は水資源の不足ではなく、効率的な使用の欠如にあると考えている。国連食糧農業機関 (FAO) によれば、中央アジア諸国の水資源は一人当たり十分であり(約2,3000,000立方メートル)、これらの国々は世界のトップ10の水消費国にランクインしている:トルクメニスタン(年間5,319立方メートル)、カザフスタン(年間2,345立方メートル)、ウズベキスタン(年間2,295立方メートル)、キルギスタン(年間1,989立方メートル)、タジキスタン(年間1,895立方メートル)。

これらの国々では、農産物を生産するために先進国の2.5―3倍の水が使用されている。タジキスタンでは、消費される水の92%が灌漑農業とエネルギー生産に使用されており、産業および公共サービスにはわずか4%しか残されていない。人口の約60%が中央水供給にアクセスできず、国の水供給ネットワークの約30%が様々な理由で機能していない。

キルギスでは、古い水路のために水損失が30%〜50%に達している。地域の古い溝灌漑システムは現代の要件を満たしておらず、水の40%しか利用できず、残りの60%は地中に浸透したり蒸発したりしている。これは、2050年までに地域の人口が1億人に達することを考えると、これは重大な問題である。

水の輸入依存の問題は、カザフスタンだけの問題ではない。農業を支える多くの河川は、中央アジアのいくつかの国の領土を流れている。ここで問題が起こるのは、上流国と下流国の利害の対立である。上流で貯水池を満たすと、下流の国々は水不足に陥る。1992年以来、水資源における越境協力に関する交渉が行われているが、この地域の国々のコンセンサスは得られていない。

クシュ・テペ灌漑用水路

今年5月、キルギスの首都で「中央アジアの水資源不足:地域および国際レベルでの水問題の解決策」に関する国際会議が開催された。討議の中で、中央アジア諸国はすでに水不足と水資源の非効率的な使用によって年間最大20億ドルを失っていると指摘された。差し迫った問題に対処するために、地域の国々は統一された戦略を策定し、利益を調整する必要がある。

中央アジア諸国による水とエネルギーのコンソーシアムを作るという提案があった。クシュ・テペ灌漑運河の建設を急ピッチで進めているアフガニスタンも参加すべきだ。この運河はアムダリヤ川の流量の10〜12%を取ると予想されており、下流のウズベキスタンとトルクメニスタンに悪影響を及ぼす。

計画によると、この運河の全長285km、幅は100mになる。専門家の多くは、運河の開通によって川の水深が4分の1になるため、この地域に深刻な問題が生じると考えている。タリバンは時代遅れの技術を使って水路を建設しているため、損失はさらに大きくなる可能性がある。

専門家たちは、環境的、社会的、経済的大災害が差し迫っていると警告している。ホラズム地方とブハラ地方、そしてカラカルパクスタン(ウズベキスタン)が特に影響を受けるだろう。ウズベキスタンのメディアはすでにこの運河を “アムダリアの殺人者 “と呼んでいる。

ウズベキスタンの水力発電資源は約5%に過ぎず、残りは近隣諸国からの水である。利用可能な水資源のほとんどは綿花畑の灌漑に使われている。2030年までにウズベキスタンの人口は4,000万人に増加することを考えると、この状況をどのように管理するかが大きな問題であることに変わりはない。

アフガニスタンの運河は、アラル海復活の希望も打ち砕くだろう。しかし、建設が完了するまでにはまだ6年あり、この地域の国々が解決策を見つけ、悲惨な結果を防ぐ時間は残されている。国連の国際条約に従い、アフガニスタンも参加する形で、地域諸国間で越境水域に関する新たな協定を結べば、状況を救えるかもしれない。タリバン政府の発言から判断すると、国際社会による承認を求めており、この場合、アフガニスタンは国際社会の信頼できる一員であることを証明する良い機会となる。

水による解決

知っての通り、絶望的な状況など存在しない。中央アジアの水問題にも解決策はある。専門家によれば、いくつかの方法がある。国家間の協力、水利用の効率化、地下水源の探査を含む代替水源の開発である。

bne IntelliNewsのインタビューに応じたカザフスタンのアイザン・スカコヴァ議員は、安全な飲料水を入手できない主な原因は、経済成長と人口増加による水消費量の増加にあると指摘した。中央アジアは特に脆弱であり、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)により、気候変動が特に強い影響を及ぼし、利用可能な水資源を著しく減少させる地球上の2つの「ホットスポット」の1つとして公式に認識されている。

「これは潜在的には紛争の問題だが、この地域の国々はパートナーシップと善隣関係の道を歩むことができます。今日、これらは優先的に取り組むべき課題です。水利用問題を含む環境問題の専門家として、私は国家間のあらゆる関係は、これらの国の立法行為を尊重し、国連が採択し規制する条約、宣言、基準などの国際文書に依拠すべきであると考えています。カザフスタン共和国は、近隣諸国の利益を考慮し尊重しながら水利用に関する問題を規制しています。」と、スカコヴァ議員は語った。

「カザフスタンと近隣諸国との水関係は、越境河川の利用と保護に関する政府間協定によって規定されています。国家レベルでは、国際水・エネルギーコンソーシアム(IWEC)の設立の可能性が議論されています。コンソーシアムは、地域のすべての国の利益とニーズ、コストと利益を考慮し、水の分配、水の経済価値、水エネルギー交換の同等性、季節的な河川流量調整のための水力発電所 (HPP) のカスケードによるサービスのコスト、国際水エネルギー複合施設の共同運営など、ほぼすべての問題に対応する構造として機能します。」と、スカコヴァ議員は語った。

UN Photo
UN Photo

協力と相互理解は、中央アジア諸国が直面する現代のほとんどの問題を解決する鍵である。これは特に、気候変動と人口増加の文脈でますます関連性を増す水問題に当てはます。持続可能な水資源管理を実現するためには、この地域の国々がこれらの原則を積極的に取り入れる必要がある。

また、水の損失問題への対処も極めて重要である。現在、時代遅れのインフラや非効率的な管理のために、かなりの量の水が失われている。水のロスを減らすには、給水システムの近代化と、利用可能な資源をより合理的に利用できる先進技術の導入が必要である。また、農業、工業、家庭需要など、さまざまな部門間でバランスの取れた水消費を確立することも重要である。

水の損失の問題に対処することも重要です。現在、旧式のインフラや非効率的な管理のために多くの水が失われています。水の損失を減らすためには、水供給システムの近代化と、利用可能な資源をより合理的に利用できる先進技術の導入が必要です。また、農業、産業、家庭のニーズなど、異なるセクター間でのバランスの取れた水消費の確立も重要です。

気候変動は、すべての人に影響を及ぼす地球規模のプロセスである。気候変動は、洪水や干ばつなどの異常気象によってすでに顕在化しており、その頻度と激しさは増している。最近地球を襲った洪水は、水資源の増加を示すものではない。これらの異常気象は、今年の洪水が昨年の干ばつに取って代わっただけであり、予測不可能で不安定な状況を生み出していることを示している。

来年何が起こるかは誰にもわからない。したがって、水資源管理における国際協力と経験の交換が特に重要である。中央アジア諸国の共同努力は、気候条件の変化に適応し、地域のすべての住民のための水の利用可能性を確保するための、効果的で持続可能な戦略の構築につながる。最終的には、協力と相互理解を通じてのみ、持続可能な開発とすべての人々の幸福が達成されるのである。(原文へ

INPS Japan/London Post

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【アスタナINPS Japan/The Atana Times=サニヤ・サケノヴァ】

カザフスタンの首都アスタナは、第5回ワールド・ノマド・ゲームズ(国際遊牧民競技大会)の開催に向けて、カザフスタン国内外から10万人の観光客を迎える準備を進めていると、準備・開催総局のアブライ・コンディバエフ副局長が語ったと、国際通信社カズインフォルムが7月23日に報じた。

5th World Nomad Games Astana 2024

各競技はアスタナの6つの主要会場(アスタナ・アリーナ・スタジアム、カザナト・ヒポドローム(競馬場)、ジャクシリク・ウシュケンピロフ記念武道館、アラウ・アイス・パレス、カザフスタン・アスレチックスポーツ・コンプレックス、多目的娯楽施設ドゥマン・コンプレックス)で開催される予定である。

開会式は9月8日にアスタナ・アリーナ・スタジアムで行われる。馬術競技、伝統的な弓術、鷹狩りの競技は、カザナト・ヒポドローム(競馬場)と「遊牧民のユニヴァース」と名付けられた民族村で開催される。

カザナト・ヒポドロームの収容人数は10,000人で、最も壮観な馬上スポーツであるコクパル(騎手たちが馬に乗り、ヤギや羊の屠体を奪い合い、特定のゴールに運ぶことで得点を競い合う)とバイゲ(長距離の馬のレースであり、騎手たちが馬の速さと耐久力を競い合う競技)はここで開催されます。」とコンディバエフ副局長は語った。

カザナト・ヒポドロームに隣接する10ヘクタールの民族村が、文化プログラムのメイン会場となる。

ウシュケンピロフ記念武道館とアラウ・アイス・パレスでは、伝統的なレスリング、武道、民俗ゲームの競技会が開催される。伝統的な知的競技は多目的娯楽施設ドゥマン・コンプレックスで開催され、カザフスタン・アスレチックス・スポーツコンプレックスには、認証センターと機材センターが設置される。

競技に関連する科学的イベント(遊牧民文化に関する主に学術的な会議やワークショップ、展示会等を含む)は、カザフスタン国立博物館で開催される。また、文化イベントは、アスタナ市内の広場、公園、劇場、コンサートホール、映画館、博物館、展示パビリオンなど、さまざまな会場で開催される。

Central Downtown Astana with Bayterek tower/ Wikimedia Commons
Central Downtown Astana with Bayterek tower/ Wikimedia Commons

第5回ワールド・ノマド・ゲームスの賞金総額は2億5,300万テンゲ(533,214米ドル)に設定されており、コクパルやコクボルのようなチーム競技を除き、各競技ごとに賞金が配分される。優勝チームには1000万テンゲ(21,075米ドル)、2位チームには600万テンゲ(12,645米ドル)、3位チームには400万テンゲ(8,430米ドル)が贈られる。

最終日には、カザフスタンの歌手ディマシュ・クダイベルゲンの「ストレンジャー」というタイトルのソロコンサートが予定されている。(原文へ

INPS Japan/Astana Times

この記事は、The Astana Timesに初出掲載されたものです。

The Astana Times

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【カトマンズNepali Times=マーティ・ローガン】

卒業後、ダンベー・マデンさんは会計士として働きながら、余暇にはスケッチに情熱を注いでいた。彼はその才能をデジタル・デザインに応用しようと思い、ここバヌ・ジャナ高等学校の新しいコースに参加した。

現在、マデンさんはタプレジュンのITアカデミーで新入生の指導にあたっている。24歳の彼は現在、世界中の企業とオンラインでデザインの仕事を掛け持ちし、会計士時代よりもはるかに多くの収入を得ている。

「YouTubeで3Dデザインやモーショングラフィックス、アニメーションを学んでいます」とマデンさんは、広々としたバヌ・ジャナ高等学校の敷地内にあるITアカデミーで語った。

明るい色の壁、ひときわ高い天井、広い木製の階段が明るい雰囲気を醸し出している。その近くには、ウッドパネル張りのペルニレズ・コーヒー・バーがあり、その前にグループの作業スペースがある。これは、2017年からタプレジュンの学校とそのコミュニティを支援しているデンマークのNGO、ヒューマン・プラクティス・ファンデーション(HPF)の創設者、ペルニレ・マドセン氏にちなんで名付けられた。

2014年に発足したHPFは、デンマークとケニアでもプログラムを実施している。

Photo: MARTY LOGAN
Photo: MARTY LOGAN

寄付者であるヴァルデマー・シュミット氏は、HPFが支援する学校の生徒たちに卒業後の選択肢を提供したかったと語った。

「数年前、私は『子供たちが学校を卒業したらどうなるのか? 私たちは子供たちにより良い未来を与えるための仕事をしたのか?』と自問自答を始めました。答えは『いいや、まだ十分ではない。もっとやるべきことがある。』というものでした。」と、デンマークからのZoomインタビューに応じたシュミット氏は語った。

「アカデミーは2023年11月に開校しました。現在までに661人の生徒が卒業し、14人がオンラインで仕事をしています。シンガポール、デンマ ―ク、韓国の企業で働いている者もいます。」と、バヌ・ジャナ高校のキショール・クマール・ライ教頭は語った。

「彼らは他の仕事をするよりもここで(オンラインで)働く方が収入が多いので、タプレジュンに留まることに満足しているのです。このアカデミーは、移住を阻止し、若者の頭脳流出も防ぐでしょう。」と、ライ教頭は付け加えた。

6月にはグラフィックデザインとデジタル・マーケティングに関する新しいコースが始まった。技術的な要素だけでなく、生徒たちは提案書の書き方や契約交渉など、オンライン・フリーランサーとして成功するために必要なスキルも学ぶ。

シュミット氏は、「HPFは2028年までに、レベル2と3のウェブ開発やサイバーセキュリティのコースで、最大800人のデジタルワーカーを卒業させることを目指しています。レベル1の卒業生は、上級コースの授業料を支払い、すでにフリーランスとして収入を得ていることを証明する必要があります。」と説明した。また、「私たちは何でも少しずつやるアカデミーとして知られたくありません。グラフィックデザインとサイバーセキュリティに強いブランドを築きたいのです」と付け加えた。

Photo: MARTY LOGAN

元CEOであるシュミット氏は、HPFの創設者マドセン氏とビジネス界で知り合い、現在ではITアカデミーの推進力となっている。彼は最新のトレンドや数字を挙げながら、次の10年に向けたビジョンを熱心語ってくれた。

シュミット氏は、レベル1を卒業すれば、地元の人々が銀行やその他のオフィスで働いて得られる平均的な月給が200ドルであるのに対し、500ドルを稼げる可能性があると見積もっている。また、グラフィック・デザインやサイバー・セキュリティのレベル2、3を習得すれば、月収は1,000~2,000ドルになると彼は予測している。

現在、HPFは授業料を補助しており、学生はコース費用の15%、約5,000ルピーを支払うことになっている。シュミット氏は、彼の個人的なネットワークの寄付者が今年の最初の100人の学生に対して残りの金額(1人あたり約500ドル)をカバーしていると語った。次の学期では、スポンサーが1人あたり1,500ドルを提供し、各学生にラップトップPCを購入するのに十分な額を提供してくれることを期待している。

熱心で人脈の広い元CEOである84歳のシュミット氏は、自身のネットワークに卒業生をインターンとして受け入れるよう呼びかけており、ワールドリンク社に光ファイバーインターネットを無償で提供するよう説得した。

シュミット氏は、学生たちがグローバルに競争力を持つようになるには英語力を含めたスキルを徐々に向上させる必要があると語った。アカデミーは初期段階でアジアでの仕事経験に焦点を当て、既にシンガポール、ベトナム、インドネシアの企業でバーチャルインターンシップをアレンジしている。

アカデミーの10項目からなるマニフェストによると、家庭を持ちながらフリーランサーとして働き続けることができる女子学生を訓練することも目指している。学生の60%が女性であり、アカデミーの責任者であるバサンタ・パルンワ氏は、女子学生は忍耐強いこともあり、よりクリエイティブなデザインをすると語った。

アカデミーはまた、ネパール北東部の人里離れたこの一角のコミュニティをデジタル化し、参加させることも目指している。一般市民を対象としたスマートフォンやタブレット端末の使い方講座も計画されており、WorldLink社は間もなく無線LANホットスポットを設置する予定だ。また、ITに関心のない人々のための職業訓練も計画している。

HPFが支援するタプレジュンの中等学校では、年間約1000人の生徒が卒業しているが、ITアカデミーが受け入れることができるのはその半分以下だ。

Photo: MARTY LOGAN

シュミット氏は、「彼らはいい学校に行ったのに、卒業しても将来が見えないことに不満を感じているのかもしれません。ですから、労働市場につながるようにする必要があるのです。」と語った。

卒業後、ダンバー・マデンさんはデンマークの旅行代理店ブックムンディのために毎日4時間のフリーランスの仕事をしてきた。1年間のインターンシップを経て、彼は最近ジュニアグラフィックデザイナーに昇進した。

過去1年間は、カトマンズを拠点とするオンラインビジネス、GenX Pharmacyのソーシャルメディア投稿のデザインも手がけている。また、前回の選挙に立候補した候補者など、地元のクライアントも抱えている。

地元出身の彼は、オンラインで自分の活躍の場を見つけたようだ。10年後の自分をどう見ているかと聞かれ、マデンさんは自信たっぷりに答えた: 「シニアデザイナーかアートディレクターです。」(原文へ

INPS Japan/Nepali Times

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ロシアと北朝鮮の好都合な協力

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ハルバート・ウルフ】

2024年6月中旬、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、北朝鮮を2日間の日程で訪問した。2023年9月中旬、北朝鮮の指導者である金正恩が、コロナパンデミック以降初の外遊としてロシア極東部を訪問した。プーチンと金の間に新たに芽生えた友情の裏にある最優先事項が武器供給であることは疑いもない。ロシア軍は、ウクライナに対する戦争で通常砲弾とミサイルを非常に必要としている。

間違いなく、ロシア自身の兵器製造量は北朝鮮が供給可能な量を大幅に上回る。それでもなお、北朝鮮による武器供給は状況に変化をもたらし得る。戦争が2年を超えて続くなか、供給は不足しており、それはウクライナだけの話ではない。「ニューヨーク・タイムズ」紙によれば、9カ月前に金がロシアを訪問した際に北朝鮮はコンテナ1,000個以上の武器をロシアに出荷したと、米国政府高官が主張した。3月には、北朝鮮がこれまでにコンテナ7,000個近い武器を供与したと、米国が発表した。(

砲弾その他の通常弾薬は、どうやら金王朝の帝国には豊富にあるようだ。野心的な核兵器・ミサイル・衛星計画を掲げる北朝鮮は、見返りとして、ロシアの技術にとりわけ熱い目を向けている。2023年、プーチンは軍事協力の「可能性」を口にした。北朝鮮は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻を非難する国連総会決議に反対票を投じたわずか5カ国のうちの一国である。国際的にほぼ孤立している平壌政府はいまや、ロシアの「主権と安全保障を求める戦い」への献身によって連帯を示している。これは今後、のけ者同士の協定へと発展するのだろうか? いずれにせよ、それは、軍事的に強硬な2カ国に利益をもたらす可能性がある。

2023年9月のロシア訪問における金の日程が多くを物語る。プーチンは、シベリアのボストーチヌイ宇宙基地で金を迎えた。プーチンとの会談の後、北朝鮮の独裁者はウラジオストク近郊の軍飛行場を訪れ、当時のロシア国防相セルゲイ・ショイグが核兵器を運搬できる最新の超音速ジェット戦闘機や、通常弾頭のほか核弾頭も搭載可能なキンジャール型ミサイルを披露した。さらに金は、ショイグとともにウラジオストクを訪れ、原子力潜水艦が配備されているロシア太平洋艦隊を視察した。

プーチンは、北朝鮮への武器供与についていかなる確約もしなかった。彼は、武器や軍事技術の提供の禁止を含む国連の制裁に従う約束さえした。しかし、ウクライナ侵攻を考えれば、誰がモスクワの約束を信じるだろうか。それがプーチンの利益になるなら、彼はたちどころに自分がした約束を忘れるだろう。金の訪問、そして今度はプーチンの訪問は、二重の問題を示唆している。ロシアは、ウクライナに対する戦争での弾薬供給の不足を克服する可能性があり、北朝鮮は、核兵器・ミサイル・衛星計画に対する長期的支援を受ける可能性がある。従って、協力の強化は双方にとってウィンウィンの状況なのだ。

ロシア(そしてかつてのソ連)と北朝鮮の関係は、幾度ものアップダウンが見られる。緊張がないわけではない。だが今日では、明らかに双方にとって協力は軍事戦略上の利益をもたらす。第二次世界大戦後の占領国として、ソ連は北朝鮮の最も密接な同盟国であった。核分野における協力は、1960年代にまでさかのぼる。北朝鮮は、ソ連の支援を受けて核研究センターを設立。研究炉を建設し、1967年に運転を開始した。1973年まで、ソ連は必要な燃料棒を供給した。

1980年代初めに行われた軍備管理交渉の第1段階で、米国とソ連は、核不拡散条約に加盟して国際原子力機関の査察を認めるよう北朝鮮を説得することに成功した。また、ソ連、そして後のロシアは、北朝鮮の核計画を中止するよう繰り返し強く求めてきた。

ゴルバチョフの劇的な政治改革とソ連崩壊に伴い、ロシアと北朝鮮の関係は根本的に変化した。ゴルバチョフは、軍事援助、産業協力、食料援助、エネルギー供給をほぼゼロまで削減した。北朝鮮が貿易債務をモスクワに支払うことができなかったことは、政治的緊張をもたらした。また、同じ時期に、かつての戦争敵国同士だったソ連と韓国の間に予想外の関係改善が見られた。ソ連崩壊後、エリツィン政権は北朝鮮との安全保障条約を停止し、それを更新しようとしなかった。社会主義国間の関係のネットワークが解体すると、北朝鮮はその経済的存続の土台を失ったのである。

1990年代の終わりに、モスクワは南北朝鮮との関係を再検討した。そして、一方では韓国との協力関係に期待したことの全てが実現したわけではなく、他方ではいわゆる米朝枠組み合意においてロシアの利益は考慮されていないと結論付けた。この1994年の合意において、米国は北朝鮮への経済援助を約束していた。国際的圧力により、ほとんど孤立していた政権は、核・ミサイル計画に関して譲歩せざるを得なかった。プーチン大統領は2000年に平壌を訪問して広く称賛され、2001年と2002年には北朝鮮の当時の主席であり現指導者の父親である金正日のモスクワ訪問を受け、両国の関係を深めた。

2003年以降、北朝鮮の非核化に関する協議に最終的にモスクワが加わり、中国、米国、北朝鮮、韓国、日本、ロシアからなるいわゆる6カ国協議となった。この枠組みにおいて、ロシアは米国の譲歩と北朝鮮の核計画中止の両方を強く求めた。しかし、モスクワは、北朝鮮の核計画放棄をロシアによる経済協力の条件とせず、また、韓国の資金援助を受けてロシアのガスを供給することによりエネルギー不足を補うという方法を北朝鮮に提案した。北朝鮮は2006年、ロシア・北朝鮮間の鉄道路線を延長し近代化する共同事業を受け入れることに合意した。

協同事業は、2006年10月に北朝鮮が最初の核兵器実験を実施したのを受けて、突然中断された。その後、中国とロシアも賛同した国連決議により、国連安全保障理事会は北朝鮮に包括的制裁を科し、それが今日も実施されている。

金が最初に訪問したのが、中国ではなくロシアだった点は興味深い。長年にわたり中国は、政治的にも経済援助においても、北朝鮮の唯一の支援者だった。それより密接な関係をロシアと北朝鮮が結ぶことによって、両国政府に対する北京の影響力は弱まる。2023年7月、ロシアの国防相は、地域における米国、韓国、日本の3カ国協力に対抗するため、中国、ロシア、北朝鮮の合同軍事演習を提案した。中国政府の反応は消極的なものだった。そのような政策は、米国の「ブロック政治」に対する中国自身の批判を弱体化させるものだ。中国は、再びバランス外交を行おうとしている。長年にわたり、中国の重点は北朝鮮の非核化にあった。中国が平壌の政府に影響力を行使し、北朝鮮が核計画を中止するよう説得することが期待された。これがもはや最優先事項でないことは間違いない。北京は現在、米国との地政学的競争をあらゆることに優先させている。

モスクワと平壌の関係改善が、予想外の結果をもたらす可能性はある。ロシアがエネルギーと軍事技術を提供し、北朝鮮が通常兵器を供与するという現在の実利的な関係がそれ以上に発展するかどうかは、今のところ不明である。ウクライナに対するロシアの戦争は消耗戦となっており、従って北朝鮮の武器供与は、ロシアが武器の数でウクライナに勝るために役立つ。しかし、国際的に隔離された北朝鮮がロシアの政治的孤立を和らげることはまずできないだろう。

ハルバート・ウルフは、国際関係学教授でボン国際軍民転換センター(BICC)元所長。現在は、BICCのシニアフェロー、ドイツのデュースブルグ・エッセン大学の開発平和研究所(INEF: Institut für Entwicklung und Frieden)非常勤上級研究員、ニュージーランドのオタゴ大学・国立平和紛争研究所(NCPACS)研究員を兼務している。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)の科学評議会メンバーを務める。

INPS Japan

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【ニューヨークIPS=アリス・スレーター】

今年の夏、ロシアと北朝鮮が相互防衛を約束する協定を中国の支持を得て発表したことに続き、韓国では米国の安全保障政策の見直し、有事に韓国のために米軍の核使用を補償する「核の傘」に依存するのをやめるべきとする、衝撃的な提案がなされている。

「核の傘」は、日本、オーストラリア、韓国の太平洋諸国だけでなく、すべての北大西洋条約機構(NATO)諸国にも提供されている。韓国で上がっている疑念は、核不拡散条約(NPT)で法的に義務付けられている「誠実な軍縮努力義務」を米国が果たさないことから、世界が混乱に直面している現状を反映したものである。

「核の傘」は、NATO5カ国(ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、トルコ)への核兵器配備を含むが、それ自体が1968年の核拡散防止条約(NPT)に対する違反である。NPTでは、米国、ロシア、英国、フランス、中国の核保有5カ国が核軍縮のための「誠実な軍縮努力」を約束し、他のすべての国々は核兵器を保有しないことに合意した。

イスラエル、パキスタン、インドを除いて、韓国を含むすべての国がNPTに署名したが、これら3カ国は独自の核兵器を開発した。NPTは、核兵器を放棄する代わりに核エネルギーを「平和的に利用する不可侵の権利」を与えるというファウスト的な取引(ここでは一見すると有利に見えるが、結果的に核拡散のリスクと伴うという意味:INPSJ)を提供した。

すべての「平和的な」原子力発電所が核兵器を作るために必要な物質を生成するため、NPTはそれらの国々に爆弾工場の鍵を与えたことになる。北朝鮮はNPTを脱退し、原発施設を利用して核兵器を製造した。イランは核物質を濃縮しているが、まだ核爆弾を作ってはいない。

ロシアがこの時期に北朝鮮や中国と同盟を結んでいるのは、米国の外交が失敗した結果であり、米国の軍産・議会・メディア・学術・シンクタンク複合体(MICIMATT)が、887カ国にある800の米軍基地を超えて、影響力の拡大を図った結果である。

米国は現在、太平洋に最近設置した新しい基地で中国を取り囲み、オーストラリア、英国との新しい軍事同盟であるAUKUSを形成している。米国はまた、リチャード・ニクソン大統領とヘンリー・キッシンジャー国務長官が1972年に中国の共産党政権を承認し、(国共内戦に敗れて大陸から逃れた国民党政権が樹立した)台湾の将来問題については中立を保つと約束したにもかかわらず、台湾の武装を支援している。

1989年の冷戦終結後、米国は弾道弾迎撃ミサイル制限条約を脱退し、ポーランドとルーマニアにミサイル基地を置いた。また、ドナルド・レーガン大統領とミハイル・ゴルバチョフ書記長が交渉した1987年の中距離核戦力全廃条約からも脱退し、北太平洋条約機構(NATO)の国境をドイツ統一後は東に拡大しないというゴルバチョフとの約束にもかかわらず、ロシア国境に向けて加盟国を東方に拡大させた。

実際、NATOの拡大に危機感を抱いたウラジーミル・プーチン大統領は、ロシアをNATOに招待できないかとビル・クリントン大統領に尋ねたが拒否され、ウクライナ戦争に至るまでの数年間、ウクライナをNATOに加盟させることはロシアにとって「レッドライン」であると、繰り返し強調した。

西側軍事同盟はロシアの懸念を無視して我々が今経験しているこの危険な瞬間に至るまで拡大を続けた。報復として、プーチン政権はロシアの核兵器をベラルーシに配備した。これはロシアが他国と核共有した初めての事例である。

Alice Slater
Alice Slater

皮肉なことに、ニクソンとキッシンジャーが中国と和平を結んだ根本的な理由は、ロシアと中国のより強力な同盟関係を防ぐためだった。

米国が核軍縮義務を遵守し、平和への道を歩まなければ、韓国のように核武装を志向する国が増える可能性がある。サウジアラビアは現在、保障措置のない「平和的な」核エネルギーの使用を求めている。

既に疲弊した地球が核兵器による消滅か、気候変動による激変による苦境に立たされている今こそ、私たちは戦争ではなく他国と協力し、平和を実現する時です。 (原文へ

※アリス・スレイター氏は、「ワールド・ビヨンド・ウォー」「宇宙の兵器利用と原子力に反対するグローバルネットワーク」の理事を務め、核時代平和財団の国連NGO代表を務めている。

INPS Japan/ IPS UN Bureau

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カザフ外務省、年次コンテストで国際ジャーナリストを表彰

【アスタナINPS Japan/Atana Times=浅霧勝浩/アイバルシン・アフメトカリ】

カザフスタンの外務省にて、第9回年次コンテスト「海外メディアの目から見たカザフスタン」の受賞者である8人の外国人ジャーナリストが表彰された。

Award ceremony of the media contest "Kazakhstan through eyes of foreign media" took place at MFA on Sept 7, 2024.
Award ceremony of the media contest “Kazakhstan through eyes of foreign media” took place at MFA on Sept 7, 2024.

2014年に開始されたこのコンテストは、世界中の外国メディアから寄せられた優れた文章や映像資料を称えるものである。今年で9回目を迎えるこのコンテストには、歴史、文化、教育から観光、国の料理、国際関係、カザフスタンの投資の可能性まで、カザフスタンに関する多様なテーマを扱うメディアの代表が集まっている。

カザフスタンのロマン・ヴァシレンコ外務副大臣は、この機会に受賞者たちを祝福した。

2014年に初めて 「海外メディアの目から見たカザフスタン 」コンテストを立ち上げたときの興奮を今でも覚えています。毎年、応募作品を読むたびに、カザフスタンにはまだ多くの発見があることを思い知らされます。受賞者に選ばれた8人のジャーナリストやコンテンツ制作者は、カザフスタンの世界的な関与の拡大や戦略的な二国間関係の発展から、伝統的なスポーツや観光に至るまで、幅広いテーマをカバーし、私たちの国に新鮮な視点をもたらしてくれました」とヴァシレンコ外務副大臣は語った。

外務副大臣によると、今回の年次コンテストでは、30か国から約80人のジャーナリストが応募し、前年に比べて応募数が大幅に増加したという。

「応募総数の増加は、世界のメディアがカザフスタンに対してますます関心を寄せていること、そして私たちが国際舞台での役割を拡大していることを示しています。この注目の高まりは、平和的でバランスの取れた現実的な外交を基本とするカシム・ジョマルト・トカエフ大統領の効果的な外交政策の証です」とヴァシレンコ外務副大臣は付け加えました。

Katsuhiro Asagiri
Katsuhiro Asagiri, President and efitor of INPS Japan.

アジア太平洋地域からの受賞者である日本人ジャーナリストの浅霧勝浩INPS Jpan理事長は、カザフスタンへの関心は、彼の通信社が2009年から創価学会インタナショナル(SGI)と進めてきた2つの重要なテーマ、つまり①国際的な核軍縮においてカザフスタンが果たしている重要な役割と、②宗教間の対話を含む持続可能な開発目標(SDGs)の促進からきていると語った。

「この2つのテーマがきっかけで、2016年8月に初めてカザフスタンを訪れ、29日のセミパラチンスク(核実験場)閉鎖記念関連イベントを取材しました。以来、カザフスタン外務省とSGIは新型コロナ時期を除くほぼ毎年、アスタナ、国連、ウィーンなどで核不拡散条約、核兵器の人道的側面、非核兵器地帯、核兵器禁止条約等核軍縮関連のサイドイベントを共催してきており、その結果、INPS Japanのカザフスタンに関する記事配信数は累計で100本を超えます。」と浅霧理事長は語った。

INPSJ SGI Logo

「これらの二つの重要なイニシアティブに関する私の通信社のレポートを通じて、少なくとも日本人の10%が、カザフスタンが核兵器のない世界を目指して主導している非常に重要なイニシアティブ、そしてアスタナで3年ごとに開催される(次回は2025年)『世界伝統宗教指導者会議』というもう一つの非常に重要なイニシアティブについて、より多くの認識を持つようになっています。」と語った。日本で最大規模の信仰に基づく団体(FBO)である創価学会は2018年以来、世界伝統宗教指導者会議に参加している。

中東・アフリカ地域からの受賞者であるエジプト人ジャーナリスト、ファトマ・バダウィ氏は、上海協力機構に関する記事で表彰され、感謝の意を表した。

「今日、この賞を受賞できてとても嬉しく、誇りに思います。カザフスタンを訪れたのは今回で3回目ですが、私は毎日カザフスタンに関する記事を配信しています。」とバダウィ氏は語った。

バダウィ女史はカザフスタンの豊かな歴史と文化に魅了され、それが記事を書く際のインスピレーションの源となっていると語った。 「私はこの国がとても好きです。歴史ある国ですからね。カザフスタンの観光や、民俗学、芸術、文化について多くの記事を書いています。」と語った。

 『フォコ・ナ・ポリティカ』誌に掲載した一連の記事が最優秀に選ばれたブラジル人ジャーナリスト、ミルトン・アタナジオ氏とって、この日はブラジルの独立記念日と重なる特別な日だった。 「日々強化されている我々の外交関係と二国間貿易において、カザフスタンとブラジルの素晴らしい関係を祝福します。」とアタナジオ氏は語った。

ヨーロッパ地域からは、イタリア人ジャーナリスト、ダニエラ・ブリッカ氏がイタリア放送協会「Rai」で放映したカザフスタンに関するビデオレポートが最優秀と評価された。

独立国家共同体(CIS)・ユーラシア地域からは、アゼリ人ジャーナリスト、エレナ・コソラポヴァ氏がCBC TVアゼルバイジャンで放映したレポート「『中部回廊』(ミドルコリドー):アゼルバイジャンとカザフスタンがシルクロードを復活させる」が最優秀に選ばれた。

*中央回廊とは、ロシアを通過する北部回廊が厳しく制限される中、注目を浴びている、中央アジア、カスピ海、南コーカサス、黒海、地中海、東ヨーロッパを結ぶ複合輸送路。

カザフスタン観光部門のノミネーションでは、スペイン人ジャーナリスト、ヨランダ・ガルシア氏の「La Voz de Galicia」(スペイン・ガリシア州で発行されている日刊紙)連載記事が選ばれた。

The 5th World Nomad Game 2024

CICAのノミネーションでは、「ロシースカヤ・ガゼータ(ロシア新聞)」に掲載されたアレクサンダー・ガシュク氏の作品が選ばれた。

新設の国民スポーツノミネーションでは、キルギス人ジャーナリスト、エルメク・アクタノフ氏が国営ラジオ「ビリンチ・ラジオ」で放送した一連の番組が最優秀に選ばれた。

受賞者は9月7日の授賞式を皮切りに、文化交流を深め、カザフスタンへの理解を深めるため、アスタナアルマトイマンギスタウ地方を含むカザフスタン各地を訪問(7日~13日)したほか、また8日・9日には、世界89カ国から2500人の競技者がアスタナに集って開催された第5回ワールド・ノマド・ゲームズ(国際遊牧民競技大会)を観覧した。INPS Japanでは本人も受賞者である浅霧理事長が他の受賞者に随行して全工程を映像記録を収録したので、随時のそれぞれのプログラムの様子を報告していく予定だ。(原文へ

Awardees on a press tour in Mangistau region, western Kazakhstan.

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教皇フランシスコ、アジア太平洋使徒的訪問で社会の調和のための4原則を強調

【Agenzia Fides/INPS Japanローマ=ヴィクトル・ガエタン】

教皇フランシスコは、9月2日から13日にかけて、インドネシア、パプアニューギニア、東ティモール、シンガポールの4か国を歴訪する。各々の国では数えきれないほど多彩な出会いが予定されており、教皇は、その国々の人々や指導者たちにインスピレーションを与えることを目指している。

 教皇の外交における優先事項と成果は、この旅の全行程を通じて示されることになるだろう。とりわけ、この教皇在任中のテーマである、宗教間対話への教皇フランシスコの献身が示されることになるだろう。

 このミッションをテーマ別に捉える一つの方法は、教皇フランシスコが使徒的勧告「福音の喜び(Evangelii Gaudium)」で概説した4つの魅力的な原則(217-237)を通して見ることである。なぜなら、それぞれの訪問国がこれらの原則(①「一致は対立に勝る」②「全体は部分よりも大きい」③「時間は空間に勝る」④「現実は理念に優る」)の一つを象徴しているからだ。

同じ使徒的勧告(238-258)の中で、教皇フランシスコは共通善を追求する上で重要な3つの対話領域を挙げている。それは、国家、社会、カトリック以外の信者との対話である。今回の教皇の旅程は、これらの優先事項をカレイドスコープのように反映している。

インドネシア: 一致

バチカン通信( Agenzia Fides)とのインタビューで、インドネシアのイグナツィウス・スハリョ・ハルジョアトモジョ枢機卿は、宗教間の調和は1945年のオランダからの独立時に国の基盤に組み込まれた目標であると説明した。

 「イスラム教徒との関係は実に良好です。この調和のとれた関係は、インドネシア独立時にまで遡り、以来維持されてきました。」とスハリョ枢機卿は語った。これは、社会亭一致を分断よりも重視する姿勢の表れである。

 例えば、インドネシアの初代指導者スカルノ大統領は、植民地主義を克服する象徴として、ジャカルタにあったオランダの城跡にモスクを建てることを奨励した。このモスクは、1900年代のカトリック大聖堂の向かいに建てられ、二つの信仰伝統間の友好を示すものでもあった。最近では、この二つの建物をつなぐ地下トンネルが追加されている。

 フランシスコ法王は、ジャカルタ大聖堂と東南アジア最大のイスティクラルモスクの両方を訪問し宗教間会議に参加する。スハリョ枢機卿は、「これは宗教の自由と信仰共同体間の共存と調和を重んじるインドネシアの人々に対する教皇の感謝の意を示すものです。」と説明した。


インドネシア宗教省によると、同国の人口は約2億4,200万人のムスリムと2,900万人のクリスチャン(内850万人がカトリック)を含んでおり、その数は増加傾向にある。

フランシスコは、分裂したイスラム教徒との関係を継承した2013年以来、外交上の優先事項として、スンニ派イスラム教徒との関係を常に強化している。

教皇フランシスコは使徒的勧告「福音の喜び」の中で、「和解のプロセスに絶えず参加できるのであれば、多様性は素晴らしいものです。」(230)と記している。 

パプアニューギニア: 全体

Pope Francisco/ Wikimedia Commons
Pope Francisco/ Wikimedia Commons

パプアニューギニアに住む約1,000万人のうち、95%以上がキリスト教徒である。その大半はさまざまなプロテスタント宗派に属しているが、カトリック教会も国内信者の約30%を占める最大の信仰共同体とみなされている。キリスト教は現地の先住民の慣習と豊かに融合し、文化的に多様な教会を形成している。

1881年に教会を設立したのは、聖心宣教会(MSC)の宣教師たちだった。ジョン・リバット枢機卿はMSCの司祭であり、2016年に教皇フランシスコによって任命された同国初の枢機卿である。

 現地の教会指導者たちは環境問題に非常に懸念を示しており、回勅『ラウダート・シ:共に暮らす家を大切に』が発表されてからは、特に環境保護を優先事項とし、鉱業部門での搾取や企業による森林伐採に反対する活動を展開している。

この擁護活動は、全体を構成する個々の要素よりも全体をより重要視する素晴らしい例です。教皇は使徒的勧告「福音の喜び」の中で、自然の比喩を用いてこの原則を説明している。「私たちは常に視野を広げ、すべての人に利益をもたらすより大きな善を見つける必要があります。しかし、それは回避や根絶を伴わずに行われるべきです。私たちは自分たちのふるさとの肥沃な土壌と歴史により深く根を下ろす必要があります。」(235)


 東ティモール: 時間

東ティモールは2002年に独立を果たし、世界で最もカトリック信者が多い国(98%)として広く知られている。1975年までポルトガルの植民地であった東ティモールは、その後99年までインドネシアに占領されていた。さまざまな研究によると、インドネシアの軍事占領下で恣意的な処刑、失踪、飢餓により17万人以上が命を落としたとされている。

1989年に教皇ヨハネ・パウロ2世が訪問した際(まだ東ティモールはインドネシアの支配下にあった)、国民意識の種が蒔かれたが、教会は常に暴力に反対した。迫害された市民を守り、コミュニティを構築することで、信仰は徐々に成長した。1975年には国民の約20%がカトリック信者であったが、98年には96%まで増加した。これは、教会が国の希望と密接に結びついていたためである。

 東ティモールが独立を達成したプロセスは、時間こそが空間よりも重要であるというフランシスコ法王の原則の優れた事例である。聖霊は時間をかけて生まれた空間に入り込むことができ、時間は信頼を育み、地域の解決策が生まれる余地を与える。

教皇は使徒的勧告「福音の喜び」の中で、「この原則により、私たちは即時の結果にとらわれることなく、ゆっくりとではあるが確実に活動することができる。それは、困難で逆境に満ちた状況や、計画の変更を忍耐強く受け入れる助けとなります」と記している。

21世紀最初の新国家である東ティモールへの教皇の訪問は、2022年に教皇フランシスコによって任命された同国初の枢機卿、ビルジリオ・ド・カルモ・ダ・シルバ枢機卿がディリの大司教を務めており、きっと喜びに満ちたものとなるでしょう。

シンガポール: 現実

シンガポールは経済的繁栄とグローバルな統合が進んでおり、教皇フランシスコが訪問する国の中で最も発展した国である。環境に関する教皇のメッセージは、人工知能の規制を訴えるものと同様に重要なテーマとなるだろう。

 教皇フランシスコ教皇は、2022年にシンガポールで初めて大司教から昇格させたウィリアム・ゴー・セン・シー枢機卿と合流する。同枢機卿は、シンガポールの宗教的調和のための大統領諮問会議に所属し、同国最大の宗教である仏教コミュニティと緊密に連携している。

教皇フランシスコは、シンガポールが宗教の自由を保護し、すべての信仰と協力するという明確な取り組みに感銘を受けている。ゴ枢機卿はEWTNバチカン(米国に本拠を置くカトリック系テレビネットワーク)に対し、「国は私たちをパートナーとして見ています。私たちは国民の共通善のために政府と協力しているのです。私たちは人々の精神的なニーズをケアし、政府が公正に統治できるよう支援し、意見を表明します。そして政府は非常に感謝しています。」[4]と説明した。

 また、ローマ教皇は、世界のどの大国にも依存しない独自の外交政策を追求するシンガポールを称賛している。これは、文化の自治を尊重する多極的世界という教皇のビジョンと一致している。教皇は、このグローバリズムのビジョンを多面体やサッカーボールに例えて説明することがよくある。つまり、どの国家にも支配されることなく、すべての文化が繁栄すべきであるという考えだ。

 原則は、現実は理念に勝るというものである。使徒的勧告「福音の喜び」が説明しているように、「言葉のみ、イメージや修辞のみの世界に留まることは危険である。

今週、教皇フランシスコは使徒的巡礼としてアジアとオセアニアを訪れ、現実の世界に飛び込む。何百万人ものキリスト教徒、イスラム教徒、仏教徒、無宗教の人々が、ペテロの後継者からの祝福を喜びをもって目撃し、無条件に受け入れるだろう。神が教皇フランシスコの世界への奉仕を引き続き祝福されますように。(フィデス通信社 2024年2月9日)

Victor Gaetan
Victor Gaetan

ヴィクトル・ガエタンはナショナル・カトリック・レジスター紙のシニア国際特派員であり、アジア、欧州、ラテンアメリカ、中東で執筆しており、口が堅いことで有名なバチカン外交団との豊富な接触経験を持つ。一般には公開されていないバチカン秘密公文書館で貴重な見識を集めた。外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』誌やカトリック・ニュース・サービス等に寄稿。2023年11月、国連本部で開催された核兵器禁止条約(TPNW)第2回締約国会議を取材中に、SGIとカザフスタン国連政府代表部が共催したサイドイベントに参加。2024年4月、IPS Japanの浅霧理事長と共に長崎を取材訪問。INPS Japanでは同通信社の許可を得て日本語版の配信を担当している。

*Agenzia Fidesは、ローマ教皇庁外国宣教事業部の国際通信社「フィデス」(1927年創立)

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核兵器の遺産は世代を超えてなされてきた不正義の問題である(メリッサ・パークICAN事務局長インタビュー)

【アスタナINPS Japan/アスタナタイムズ=アセル・サトゥバルディナ】

世界は1945年以来、2000回以上の核爆発を目撃してきた。何百万人もの人々が今もその影響に苦しんでいる。この問題に対処することは、世代を超えてなされてきた不正義との戦いであるであると、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のメリッサ・パーク事務局長が、アスタナタイムズの取材に対して語った。

ICANは核兵器の禁止と廃絶を推進する世界的な連合組織である。本部はジュネーブにあり、2017年の核兵器禁止条約(TPNW)採択に重要な役割を果たし、その努力が認められて同年にノーベル平和賞を受賞した。 この連合には650以上のパートナー組織が参加している。

核兵器ほど大きな不正義はない

パーク事務局長は、非核兵器地帯間ワークショップ、核被爆者フォーラム、そして若者フォーラムに出席するため、アスタナを訪問している。

すべてのイベントは、8月29日の「核実験に反対する国際デー」を記念して開催される。この記念日は、2009年にカザフスタンの主導により国連で制定された。今年は、セミパラチンスク核実験場での最初のソ連による核実験が行われてから75年を迎える。

Malissa Parke, executive director of ICN (Extreme left) attending Nuclear Survivors Forum in Astana. Photo: Katsuhiro Asagiri of INPS Japan.

パーク事務局長は、紛争地域で国連と協力した経験(国際法務専門家として、コソボ、ガザ、ニューヨーク、レバノンにおいて国連に勤務)から、戦争や兵器が罪のない人々に与える影響を直接的に目の当たりにしてきた。

「私は生涯をかけて人権と正義のために戦ってきました。私は、核兵器ほど人類と地球に対する不正義はないと感じています。それが私を突き動かしているのです。私は、より平和な世界を実現するための運動に貢献できることは何でもしようと決意していました。」と、元オーストラリア国際開発大臣のパーク氏は語った。

主導的な声

Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri
Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri

パーク事務局長は、核軍縮を提唱するカザフスタンの「長く誇り高い歴史」を強調して、「カザフスタンは、450回以上のソ連による核実験が実施された場所であり、また、同時に核実験の終焉をもたらした並外れた活動が展開された場所でもあります。」と語った。

パーク事務局長は、自らの体験を語ることで、世界的な軍縮および核不拡散の取り組みを推進する上で、カザフスタン国民が多大な貢献をしていることを認めた。そして、「カザフスタンは核軍縮を推進する上で主導的な役割を果たしています。キリバスとともに、カザフスタンは核兵器禁止条約(TPNW)の被害者支援と環境修復に関する作業部会をリードしています。」と語った。

カザフスタンはまた、2025年3月にニューヨークで開催予定のTPNW第3回締約国会議の議長も務める。

「カザフスタンの核廃絶におけるリーダーシップは非常に重要であり、ICANとして非常に感謝しています。私たちはカザフスタンと協力して、世界に大きな変化をもたらすことができると信じています。」とパーク氏は語った。

高まる核兵器使用のリスク

核兵器が使用されるシナリオについて考えたくない人はほとんどいないが、リスクは蔓延している。パーク氏によると、核兵器が使用されるリスクは、これまでになく高まっている。

「私たちは、核保有国が関与する2つの大規模な紛争が進行中で、新たな核の脅威が生まれています。その中で、軍備管理協定の崩壊や新たな核軍拡競争が進行中です。」とパーク事務局長は語った。

核問題は、もはや冷戦時代のような2つの核保有国間の二元的な対話ではない。

「現在、核保有国は9カ国あり、その他のアクターも存在します。つまり非国家主体、テロリスト集団です。サイバーハッキングや軍事における人工知能の利用の可能性もあります。 これらすべてが核兵器使用の危険性とリスクを高めているのです。さらに、現在の核兵器は広島と長崎に投下された原爆よりも何倍も強力になっています。」とパーク事務局長は語った。

パーク氏は、これは世代を超えてなされてきた不公平の問題であると強調した。「私たちは、核兵器の放射能の影響が何世代にもわたって続くのを目にしています。 核保有国が毎年910億ドルを核兵器に費やしている一方で、その費用は環境保護や、より良い医療や教育、若者にとって重要な他の事柄に充てられる可能性もあります。 核保有国は、非常に無責任にも、自国が認識する安全保障の必要性を、世界の安全保障よりも優先しているのです。 そして、それは容認できるものではありません。」とパーク事務局長は語った。

核抑止力、つまり、核兵器で攻撃されれば強力かつ破壊的な核兵器による反撃が起こることを明確にすることで攻撃を防ぐという考え方は、「深刻な欠陥理論」であるとパーク事務局長は語った。

「この理論は、敵も含めたすべての行動主体が、常に100%合理的かつ予測可能であるという仮定に基づいている。敵の意図を完全に把握しているという前提だ。「これは大胆な仮定です」と、パーク事務局長は説明した。

多くのことは抑止できません。2023年12月のTPNW第2回締約国会議では、参加者はこのような理論の使用を非難し、「抑止は証明されていない賭けである」と強調した。

「過去数十年間、核兵器に関する多くの事故や誤算がありましたが、幸運にも大災害には至りませんでした。国連事務総長が述べたように、『幸運は戦略ではない』のです。抑止力は機能するかもしれませんが、それが機能しなくなる日が来れば、その時には核の傘の下に避難場所はありません。」と、パーク事務局長は語った。

一方で、市民社会によるアドボカシーも活発化している。パーク事務局長は、「世界には対話、外交、軍縮が必要です。」と強調した。また、「カザフスタンはまさにその声を代表する国です。私たちは、カザフスタンと協力できることを大変嬉しく思います。」と付け加えた。

Political Map of the Caucasus and Central Asia/ Public Domain
Political Map of the Caucasus and Central Asia/ Public Domain

パーク事務局長は、カザフスタンの例が他の中央アジア諸国をTPNWへの参加へと動機づけることを期待している。これまで、中央アジアの5か国はいずれも条約に署名も批准もしていない。

被爆者支援のための国際信託基金

パーク事務局長は、2025年3月にニューヨークで開催されるTPNW第3回締約国会議では、被害者支援や環境修復に関連するプロジェクトに資金を提供する国際信託基金の設立に焦点が当てられると明らかにした。 カザフスタンとキリバスは、TPNWの作業部会の議長を務めており、この構想を提案している。

この2カ国はまた、2023年10月に国連で採択された決議「核兵器の遺産に対処する:核兵器の使用または実験によって影響を受けた加盟国への被害者支援と環境修復の提供」の後ろ盾でもあった。この決議には171カ国が賛成票を投じ、6カ国が棄権したが、フランス、北朝鮮、ロシア、英国の4カ国は反対票を投じた。

「何よりも、カザフスタンは影響を受けたコミュニティーの声を中心に据え、キリバスや他の国々と協力して、これらの人々がヒーローであることを確認しています。彼らは自らの体験を何度も勇敢に語り続けてきました。(核実験に反対する国際デーを控えた)今週、私たちは彼らを称えます。」とパーク事務局長は語った。

被災地域のコミュニティーに正義をもたらすことが最優先事項です。「彼らは、自分たちが被った被害の認定や認知だけでなく、補償についても長い間待ち続けてきました。この国際信託基金は、被害者支援と汚染された環境の修復に大きく貢献するでしょう。」とパーク事務局長は語った。

ICANの主な焦点は、TPNWを「普遍化」し、「できるだけ多くの国を参加させること」である。パーク事務局長は、そのようなシナリオが核保有国に核兵器を放棄するよう圧力をかけることを期待している。

「これは、他の大量破壊兵器や非人道的な兵器、例えば地雷やクラスター弾に対して非常に成功した戦略でした。」とパーク事務局長は付け加えた。

核問題はすべての人に関係する

パーク事務局長は、これらの問題への取り組みには安全保障や軍縮の専門家だけでなく、誰もが声を上げるべきであると考えています。

「ICANでは、この問題がすべての人に関わる問題であり、誰もがこの問題について発言する権利を持っていることを人々に知ってもらうことに非常に力を入れています。誰もが政府に対して核兵器に「ノー」と言う権利を持っています。そして、その運動は広がっています。」とパーク事務局長は語った。

核軍縮は国際的な議論では後回しにされがちだが、パーク事務局長は、核軍縮は最も複雑でない問題だと指摘した。

「なぜなら、核兵器は人間が作ったものだからです。人間がだけがそれを解体することができます。必要なのは、それを実現するための政治的意思とリーダーシップだけです。それが今、必要とされています。」とパーク事務局長は語った。

核兵器のない世界は実現可能かと尋ねられたパーク事務局長は、自信を持って「イエス」と答えた。

「私は心の底から、核兵器のない世界が実現すると信じています。そうしなければなりません。核兵器と人類は共存できないため、核兵器が存在する限り、それが意図的であれ偶発的であれ、使用される可能性があり、その可能性は高まっているのです。」とパーク事務局長は語った。(原文へ

INPS Japan/The Astana Times

この記事は、The Astana Timesに初出掲載されたものです。

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自助努力する農民を支援

ネパールの山岳地帯の農民たちは、すでに気候変動の影響に自力で適応している

【ポカラ、ネパールタイムズ=ベンジャミン・ジマーマン】

ヒマラヤの農民は、気候危機の最前線に立っており、極端な暑さや寒さ、長期間の干ばつや過剰な降雨、地滑りや洪水に対処することを余儀なくされている。

しかし、彼らは最もたくましい農民でもあり、何世代にもわたって、斜面の脆弱な表土に丹精込めて刻み込んだ棚田で十分な食糧を生産するために、自力で奮闘してきた。

「政府は、私たち農民のことは知ろうとも気にかけようともしませんでした。気候変動には、過去に直面した他の問題と同様、自分たちで適応するしかありません。」と、70歳のスーリヤ・アディカリ氏は語った。

実際、ヒマラヤ地域の山岳農業の問題は気候変動よりも前から存在しており、アディカリ氏のような農民にとっては、それは対処すべき最新の危機に過ぎない。

アディカリさんの生涯の中で、彼の村であるポカラ近くのスンダリ・ダンダの上にそびえるアンナプルナ山脈の雪線が後退し、かつて予測可能だった気象パターンが不安定になったのを目の当たりにしてきた。アディカリさんは、作物の多様化、灌漑の確保、そして在来種の種子の保護を行うことで対応してきた。

気候科学者によると、ヒマラヤ山脈は「高度効果」と呼ばれる現象により、世界平均よりも0.7℃以上も温暖化しているとのことだ。2023年には、世界の平均気温は産業革命以前の水準から1.5℃上昇し、この山々では2.2℃上昇したことになる。

その影響の一部として、ポカラ近郊の標高1,500mの村々でも記録的な暑さが続き、乾燥した冬が何年も続いている。今年の春には、全国的に数ヶ月にわたる記録的な山火事が発生し、ベグナス湖やルパ湖周辺の斜面にはまだ火災の傷跡が残っている。

こうした変化と経済的要因が相まって、カスキ郡のように2011年以来人口が17%減少した地域もあるなど、ネパールから国外への人口流出が加速している。

農村部の若者たちが都市部へと流出しているとはいえ、ネパールは依然として農業が主な産業であり、人口の3分の2が農業に依存し、GDPの33%が農業から生み出されている。

したがって、モンスーンの時期が遅れて米の植え付けが遅れたり、干ばつで作物が全滅したりすると、農業セクターだけでなく、国の経済全体が打撃を受けることになる。ネパールはすでに食料製品の純輸入国であり、過去10年間で輸入量が著しく増加している。

今年のモンスーンはこれまでのところ平年より多く、水田の作付けはほぼ全国で100%行われる見込みだが、集中豪雨が地滑りや鉄砲水を引き起こしている。今週、グルミとバグルンで新たに12人が土砂崩れにより死亡し、6月以降の死者は少なくとも175人に上った。

過去10年間の傾向として、モンスーン雨が例年より遅れて始まり、乾燥期間が長引き、局地的な豪雨が発生している。地下水位は、十分な補給がなく、過剰な汲み上げにより低下し、湧き水が干上がっている。

灌漑システムの建設と維持管理に十分な政府投資が行われない限り、多くの農村地域の農民は雨の恵みに完全に頼るしかない。

植え付けが遅れると、畑を荒廃させ、栄養価の高い表土の侵食を招き、収穫サイクルも遅れる。雨が降ると、激しい嵐が作物を損傷させたり、破壊したりする。

同様に、タライ地方にしか生息していなかった害虫や、トウモロコシを標的にするアメリカシロヒトリのようなネパールにはまったく生息していなかった害虫が、山を登ってきている。ネパールの農業はもともと自給自足がほとんどであるが、気候危機によって追い打ちをかけられ、多くの農民が畑を放棄して都市部や海外へと移住せざるを得なくなっている。

ポカラを拠点とするLI-BIRD(生物多様性、研究、開発のための地域イニシアチブ)は、生物多様性を保全しながら小規模農家の生活を向上させるために、23の地区で活動している。LI-BIRDは、気候危機の影響に適応するための実証済みの方法を提供しており、政府がこれらの対策を全国的に拡大することを望んでいる。

農場に焦点を当てる

在来の稲、小麦、雑穀、蕎麦の種子は、輸入されたハイブリッド品種よりも耐久性があり、暑さに適応しやすいです。これらの作物は、地元の土壌や微気候に進化しており、遺伝的に変化に対応するのに適している。

Local seeds on display at the Pingdanda Community Seed Bank in Sindhupalchok. Photo: LI-BIRD PHOTO BANK

ポカラを拠点とする行動研究組織LI-BIRDが行っているのは、この在来作物の品種を種子銀行で保存し、農民所有の協同組合を通じて配布することだ。

「農業を改善するためには、農民を最前線に据え、彼らの伝統的な知識を重視しなければなりません。外部の知識を持ち込んでも、ここでは通用しません。」と、LI-BIRDのビシュヌ・ブシャル氏は語った。

LI-BIRDの参加型植物育種イニシアチブでは、農民から地元の作物のさまざまな種子サンプルを集め、それらを並べて植える。収穫量、天候、害虫への耐性などの観点から農民が最も適していると判断したサンプルは、コミュニティ・シード・バンク協会によって全国に配布される。

地域特有の種子を農民に提供する地域シードバンクは、ブサル氏が言うところの「利用を通じた保全」を可能にする。これにより、在来作物が進化するチャンスが確保され、自然災害や気候変動による絶滅を回避できる。

収穫量の多い外国産の種子は魅力的だが、高価な化学肥料や農薬も必要となり、土壌を破壊することにもつながる。 在来種の種子は、はるかに耐久性があり、信頼性が高い。

「最小限の手入れと投入でも、地元の品種は生き残ります。これにより、肥料、農薬、水の必要量が少なくなります。」と、LI-BIRDのジェニー・シュレスタさんは説明した。

「在来種の種子は、地元の環境条件に自然に適応しているため、害虫、干ばつ、その他の災害に対しても耐性があります。」と、シュレスタさんは付け加えた。

A Farmers Field School in Kanchanpur observing a plot with diverse varieties of rice with help from LI-BIRD. Photo: LI-BIRD PHOTO BANK

「気候が変化すると、収穫量の減少は、輸入品種よりも地元の在来品種で大きくなります。」とシュレスタ氏は言い、ドティの在来品種であるセト・ダブディ小麦が、2022年の試験で冬の干ばつにもかかわらず、輸入小麦よりも高い収量を示したことを指摘した。

作物の信頼性は重要だが、持続可能な収入も同様に重要である。ある特定の地域に固有の農産物を高付加価値で販売する「ランドスケープ・ブランディング」は、農家が地元の在来作物に戻ってくるためのインセンティブとなっている。

そのような作物の例として、ポカラに自生し、その香りで称賛される米「ポカレリ・ジェトブド」や、ベグナス湖やルパ湖周辺の畑で栽培される雑穀「セト・カグノ」がある。これらの農産物は、社会的企業「アンナパット」によってブランド化され、販売されている。農民には最低価格が保証されており、地方自治体との協力により、その価格以上で販売できない場合には、農民に補償が支払われる。セト・カグノの場合、その価格は1キログラムあたり120ルピーである。

LI-BIRDの種子に関する成功事例は、現在、政府によって拡大されている。農業省の作物開発・農業生物多様性保全センターは、地元の作物を保存するために、30の地区の農民に資金を提供している。

有機農薬に対する政府の補助金も持続可能な農法を奨励しているが、このイニシアチブを推進しているのが政府なのかNPOなのかについては懐疑的な見方がある。

代替現金作物

気候危機の影響に対するレジリエンス(回復力)は、現金作物への多様化からも得られる。農家はこれにより、家計収入を増やし余裕を持てるようになる。

スルヤ・アディカリさんはベグナスで有名な植物育種家であり、40年以上農業に従事する中で、環境の変化に気づき始めている。

Photo: JANA AŠENBRENNEROVÁ

「ここ5年間は、村に留まるのが難しいほど暑くなり、作物が育たないほど虫や害虫が多くなりました。」とアディカリさんは語った。

そこで、アディカリさんは、以前栽培していた米の代わりに、耐熱性が高いとされるコーヒーや果物の栽培を始めた。コーヒーは最小限のスペースで栽培でき、土壌の質を向上させるだけでなく、他の作物も同時に栽培することができる。

しかし、近年は害虫や不安定な降雨がさらに大きな脅威となっているため、アディカリ氏はさらに多様化を進め、数多くの薬効があることから「ミラクルツリー」の愛称で呼ばれるモリンガに注目している。モリンガの葉は栄養補助食品として使用され、ビタミンが豊富で抗酸化作用があり、高い市場価格で取引されている。

モリンガは成長が早く、乾燥にも強い。アディカリさんはネパールにモリンガを初めて導入した先駆者であるが、政府がこの独自の製品を市場に出すのをもっと積極的に支援してほしいと願っている。

政府の無策は当然のことだとアディカリさんは考えている。つまり、彼のような農家が、気候危機に適応するための革新的な方法を自力で見つけなければならないということだ。

「政府は政策を作りますが、それは往々にして近視眼的であり、現場での実施はほとんど行われません。」とアディカリさんは語った。

種子の保存であれ、気候変動教育であれ、農村部の農民は自力で取り組まざるを得ない。つまり、気候の影響が、雇用機会の欠如とともに、移住を増加させていることを意味する。

「政府は海外在住のネパール人からの送金で十分な収入があるため、農民の苦境を放置しても構わないと思っているのです。私たちは自分たちの力で変化をもたらさなければなりません。」と、アディカリさんは語った。

だからこそ、アディカリさんは農民たちを組織化し、数の力を持たせ、適応策のアイデアをより広く共有できるようにしている。全国農民グループ連盟は、村、地区、中央の各レベルにおけるアドボカシー団体の統括組織として、この役割を担っている。

力強い雑穀

公式な肩書こそないものの、アンビカ・バンダリは村のリーダーです。5年前、彼女はそれまで多くの地元住民と同じようにトウモロコシを栽培していたが、地元のキビの一種であるセト・カグノを自分の農場で試験的に栽培し始めた。

Farmers harvesting Proso Millet in Humla. Photo: LI-BIRD PHOTO BANK

バンダリさんの収穫量の多さと、彼女のキビの市場価値の高さを目の当たりにして、カスキ郡カファルガリ村の近隣農家たちは、彼女に倣った。

気象パターンの変化と熱ストレスにより、農家はトウモロコシからキビへの転作を決断した。それから5年後、カファルガリ村は現在、国内最大のセト・カグノ生産地となり、昨年は2.56トン以上を収穫した。

バンダリさんはLI-BIRDの種子バンクから種子を入手し、その作物をLI-BIRDの種子保存活動に触発された学生たちが運営する非営利団体「メリット・ポカラ」に販売している。

メリット・ポカラは、バンダリさんのような農民に、雨や気温のパターンを追跡する携帯アプリの使用方法を指導し、植え付け、収穫、乾燥を最適な時期に行うことを可能にしている。

メリット・ポカラのモデルに基づき、地方政府は農民が公正な価格で作物を販売できるように補償制度を採用した。「官民の協力体制は本当に助かっています。また、外部からの支援がなくても、私たちは自らの運命を切り開くことができることを証明しています。」と、バンダリさんは語った。(原文へ

INPS Japan/The Nepali Times

This article is brought to you by Nepali Times, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

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