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|視点|真実が嘘になるとき:トランプの再選が世界に意味するもの(マンディープ・S・ティワナCIVICUSの暫定共同事務局長)

【ニューヨークIPS=マンディープ・S・ティワナ】

Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain
Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain

米大統領選の翌日、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、米国の人々が民主主義プロセスに積極的に参加したことを称賛する短い声明文を発表した。彼は賢明にも、2021年に暴動を扇動して国民の意思を覆そうとしたドナルド・J・トランプの当選が、国連が世界中で人権と法の支配を推進する取り組みにとって大きな後退であるという指摘を避けた。トランプ氏は、国連が維持しようとしている国際的な規範を軽視するロシアのウラジーミル・プーチンやハンガリーのヴィクトル・オルバンといった権威主義的な強権者たちを自他ともに認める崇拝者である。

そのため、国連事務総長の報道官ステファン・デュジャリックへの11月6日の記者会見での質問は、ウクライナ戦争へのトランプ氏の対応、新政権による国連への資金削減の可能性、さらにはトランプが政権を引き継ぐ際の国連の対応策にまで及んだ。

Donald Trump/ The White House
Donald Trump/ The White House

米国は世界情勢において非常に大きな役割を担っている。そのため、ワシントンでの政策変更は全世界に影響を及ぼす。私のようにグローバルな市民社会連盟を導く責任を担う者にとって、トランプ氏の再選がもたらす影響は憂慮すべきものだ。

トランプが権力の座にいなくても、すでに私たちはルールを無視して行われる戦争、腐敗した大富豪が自らの利益のために公共政策を左右する世界、そして貪欲による環境破壊が気候災害への道を進んでいる現実に直面している。ジェンダー正義で苦労して獲得した進展も後退の危機に瀕している。

トランプ政権第1期では、国連人権理事会への軽視や、気候変動対策のためのパリ協定からの離脱などが見られた。また、世界中の市民社会団体への支援を制限し、女性の性的および生殖の権利を推進する団体を標的にした。民主主義と人権の促進は米国の外交政策の重要な柱だが、トランプ氏の再選によりこれらの価値が脅かされている。

誤情報と偽情報がパンデミックレベルに達している状況で、こうした戦術を駆使して分断を煽り、半分の真実や完全な嘘を基盤とするキャンペーンを展開した候補者に、米国有権者の大半が票を投じたことは非常に憂慮すべきことだ。このような手法は、すでに分極化している米国の亀裂をさらに深める結果となった。

トランプ大統領の無関心とCOVID-19否定論により、全米の家族は打ちひしがれ、何万人ものアメリカ人が回避可能な感染症で命を落とす結果となった。 彼の政権による移民の拘束と強制送還政策は、マイノリティのコミュニティに恐怖を植え付けた。 今回トランプ氏は、数百万人の人々を強制送還すると公言している。

トランプ氏は中絶の権利に関する立場から、中絶を禁止する法律を導入した米国の複数の州で、女性たちに計り知れない苦しみをもたらしてきた。また、有害な化石燃料の採掘を加速させることを公約しており、ジェンダー正義の擁護者、環境保護活動家、移民の権利活動家を間違いなく自らの権力に対する脅威と見なしている。

UN Secretariate Building. Photo: Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building. Photo: Katsuhiro Asagiri

トランプ氏とその側近が示している傾向を考慮すると、汚職や人権侵害を暴露する野党政治家、活動家、ジャーナリストは、新政権によって監視の強化、脅迫、迫害のリスクにさらされる可能性が高い。

国際レベルでは、トランプ氏の当選により、イスラエル、ロシア、アラブ首長国連邦の権威主義的指導者たちを暗黙に支持しているため、占領パレスチナ地域、スーダン、ウクライナにおける戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド行為に対する説明責任を確保する取り組みに暗雲が立ち込めている。これらの指導者たちは、紛争を煽り立て、海外で大混乱を引き起こしている。将来のトランプ政権は、国連の資金源を断ち、ルールに基づく国際秩序を弱体化させ、独裁者を勢いづかせようとするかもしれない。

At an ICAN campaigners meeting in NYC in 2025. Credit: Katsuhiro Asagiri, INPS Japan.

たとえ現状が暗澹たるものに見えたとしても、世界には多様性を称え、正義と平等を推進するという揺るぎない決意を貫く市民社会活動家や組織が何百、何千と存在していることを忘れてはならない。未来を想像するには、時には過去から学ぶ必要がある。

インドの独立運動、南アフリカのアパルトヘイトに対する闘い、米国の公民権運動は、権威主義的な指導者によってではなく、連帯の精神で結ばれ、必要な限り弾圧に抵抗する決意を固めた勇敢な個人によって勝ち取られた。

このことは、米国の市民社会に対しても、高尚なアメリカの理念はどのような大統領よりも長く続く価値があり、守る価値があるという教訓を与えている。(原文へ

マンディープ・S・ティワナ氏は、世界的な市民社会連合であるCIVICUSの暫定共同事務局長。また、国連におけるCIVICUS代表も務めている。表も務めている。

INPS Japan/ IPS UN Bureau

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カザフスタン、ニューヨークで核軍縮の世界的推進を主導

【ニューヨークThe Astana Timesナジマ・アブオヴァ】

3月3日、核兵器禁止条約(TPNW)の第3回締約国会議(3MSP)が国連本部で開幕した(7日まで)。本会議では、カザフスタンが議長を務め、世界的な安全保障の懸念が高まる中、核兵器廃絶への国際的な誓約が改めて強調された。

カザフスタンの緊急行動呼びかけ

From left to right: Izumi Nakamitsu, Akan Rakhmetullin and Christopher King. Photo credit: Nagima Abuova / The Astana Times
From left to right: Izumi Nakamitsu, Akan Rakhmetullin and Christopher King. Photo credit: Nagima Abuova / The Astana Times

カザフスタンのアカン・ラフメトゥリン第一外務次官は、開会の辞で軍縮努力を継続する必要性を強調した。彼は、本会議が国連創設80周年および広島・長崎への原爆投下から80年の節目と重なることの歴史的意義を指摘した。

「核兵器の存在とその使用の可能性は、今や世界の安全保障にこれまで以上の脅威を与えています。我々の使命の緊急性は、『終末時計』がさらに深夜に近づいているという事実によって痛感されます。これは、地政学的緊張の高まりと核の脅威の増大を示す警鐘です」とラフメトゥリン氏は述べた。

彼は、地政学的な不安定化、核兵器の増強、および核兵器使用を巡る挑発的な言動の拡大が、前例のない危機を生んでいると指摘した。TPNW発効以降の進展を振り返りつつ、条約が有効な軍縮メカニズムであることを強調し、その普遍化と実施に向けた取り組みの継続を呼びかけた。

「核兵器の廃絶は単なる願望ではなく、絶対的な必要事項なのです」と述べたラフメトゥリン氏は、カザフスタンが450回以上の核実験に苦しんだ歴史を振り返り、それが同国の軍縮への揺るぎない決意を形作ったと語った。

Semipalatinsk former nuclear weapon test site/ photo by Katsuhiro Asagiri
Semipalatinsk former nuclear weapon test site/ photo by Katsuhiro Asagiri

また、被害者支援と環境修復に向けた具体的な措置について議論を深めるよう促し、「国際信託基金の設立」というアイデアを提案した。

「この会議は、単なる誓約の再確認の場ではなく、核軍縮を不可逆的なプロセスにするための政策を推進する絶好の機会です。我々は決意を再確認するだけでなく、核兵器の完全廃絶へと導く主要な措置を積極的に追求しなければなりません」と締めくくった。

国連、TPNWへの支持を強調

Izumi Nakamitsu/ photo by Katsuhiro Asagiri
Izumi Nakamitsu/ photo by Katsuhiro Asagiri

国連事務次長兼軍縮担当上級代表の中満泉(なかみつ・いずみ)氏は、開会挨拶でTPNWの重要性を強調した。

国連事務総長アントニオ・グテーレス氏を代表し、中満氏は地政学的緊張の高まりと軍縮の進展が見られない現状に警鐘を鳴らした。

「前回の締約国会議で、私は事務総長の言葉を引用し、『我々の世界は制御不能になりつつある』と述べました。地政学的緊張が高まり、世界的課題が増大し、そして皆さんが政治宣言で再確認したように、核兵器の存続と軍縮の停滞が、核の惨禍をもたらすリスクを高め、人類全体にとって存亡の危機をもたらしています」と中満氏は語った。

The Third Meeting of States Parties (3MSP) to the Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons (TPNW) convened at the United Nations headquarters. Photo credit: Nagima Abuova / The Astana Times

「残念ながら、こうした傾向は続き、むしろ悪化しています」と付け加えた。

しかし、彼女はTPNWの締約国が増えていることや、核兵器の壊滅的な影響に対する認識の広がりを前向きな進展として指摘した。

「TPNWへの加盟は、国際社会に向けた重要なメッセージを発信することになります」と述べ、2026年の第1回再検討会議に向けて関与を強化するよう各国に求めた。

ICAN:「核軍縮は政治的選択である」

Melissa Parke took up the role as ICAN’s Executive Director in September 2023. Photo credit: ICAN
Melissa Parke took up the role as ICAN’s Executive Director in September 2023. Photo credit: ICAN

核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の事務局長であるメリッサ・パーク氏は、広島・長崎で25万人以上(うち38,000人が子ども)が犠牲となった悲劇を振り返りながら、緊急行動の必要性を訴えた。

「多くの人々が、核兵器が世界に恒久的に存在するものだと諦めています。しかし、私たちは決してその考えを受け入れてはなりません。核兵器は人間の手で作られたものであり、人間の手で解体することができます。これはユートピア的な夢ではありません」とパーク氏は述べた。

彼女は、カザフスタンや南アフリカを例に挙げ、核軍縮が可能であることを示し、技術的な障壁ではなく、政治的な障壁こそが進展を妨げていると指摘した。

「危機の時代においては、期待を下げたり、要求を和らげたりしがちです。しかし、リスクが高まれば高まるほど、より野心的であるべきです」と語った。

また、パーク氏は核兵器の近代化・増強を進める9つの核保有国と、その同盟国の関与を非難し、核抑止の概念を「自己満足的な幻想」として批判した。

「核抑止は、究極のテロ行為です」と、ノーベル賞受賞者ジョゼフ・ロートブラットの言葉を引用した。

赤十字、法的・人道的責務を強調

The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras
The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras

国際赤十字委員会(ICRC)の常駐代表であるエリーズ・モスキーニ氏は、TPNWが国際法を強化し、核軍縮を促進し、核兵器が引き起こす長期的な被害に対応する上で重要な役割を果たしていると指摘した。

「今日、世界のほぼ半数の国々がTPNWに拘束される意志を表明しました。これは多国間主義の勝利であり、核軍縮の議論と意思決定において人類を中心に据えるべきだという明確なメッセージです」とモスキーニ氏は述べた。

彼女は、TPNWが国際人道法に沿って核兵器を包括的に禁止することで、法的な空白を埋める役割を果たしていると指摘した。

また、被害者支援と環境修復のための「国際信託基金」の設立を進めるよう各国に呼びかけ、「核兵器の壊滅的な人道的影響を再確認し、その使用を示唆するいかなる行為も非難することが不可欠である」と強調した。(原文へ)

INPS Japan/ The Astana Times

Original Link: https://astanatimes.com/2025/03/exclusive-kazakhstan-leads-global-push-for-nuclear-disarmament-in-new-york/

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「娘たちの虐殺」— ネパールの出生性比が示す深刻な男女格差

【カトマンズNepaliatimes=シュリスティ・カルキ】

公衆衛生専門家のアルナ・ウプレティ氏は、数年前、ドルポからネパールガンジへ向かう飛行機内で、妊娠中の女性と会話を交わした。その女性は、「医師の診察を受けるため」に都市部へ向かっていると言い、ウプレティ氏は、地方の女性たちが積極的に産前ケアを受けていることを喜んだ。しかし、その女性が「すでに2人の娘がいるので、超音波検査で胎児が女の子だと分かれば中絶する」と話した瞬間、衝撃を受けた。

ウプレティ氏がネパールガンジの病院で看護師たちにこの話をすると、彼女たちは特に驚くこともなく、「カーナリ地方の妊婦たちは、胎児の性別を確認し、性別選択に基づく中絶を受けるためにやって来る」と語った。

このような事例は毎年数万回も繰り返されており、2021年のネパール国勢調査のデータにも明確に表れている。ネパールでは男性の出生数が女性よりも顕著に多く、アジアでも最も出生性比が高い国の一つとなっている。

出生性比(SRB)とは、100人の女児の出生に対する男児の出生数を示す指標である。生物学的には、男児の出生数が若干多い傾向があり、自然なSRBは105:100とされる。しかし、ネパールの2021年国勢調査ではSRBが112:100と大幅に上昇し、2011年の106:100から急増したことが分かる。

最も出生性比が高いのは、インド国境に接するダヌシャ地区(133:100)で、対照的にムスタン地区では92:100と、女児の出生が男児よりも多い珍しい地域となっている。州別では、マデス州(118:100)が最も高いSRBを記録している。

この傾向の背後には、性別に基づく選別出産(GBSS)と、それを助長するネパールの男性優位な伝統的価値観がある。

Source: 2021 NEPAL CENSUS
Source: 2021 NEPAL CENSUS

GBSSには、産前と産後の2種類がある。

  • 産後の性別選択:乳児期の女児の放棄、栄養や医療ケアの差別、または女児殺害。
  • 産前の性別選択:受精時に特定の性別を選ぶ方法、または超音波検査で性別を確認し、望まない性別(多くの場合、女児)の胎児を中絶する方法。

世界的に見ても、男児を望む傾向が性別選択の主な原因となっている。2021年の国勢調査のデータは、ネパール人が胎児の性別を選択し、中絶を行うケースが増加していることを裏付けている。これは、クリニックが胎児の性別を明かすことを法律で禁じられているにもかかわらず、超音波診断技術を用いた性別選択が横行しているためだ。

ネパール社会では、伝統的に息子が家系を継ぎ、経済的な支えとなり、老後の親の世話をし、葬儀の儀式を行い、財産を相続する存在として重視されてきた。

これはネパールだけの問題ではなく、インド(SRB 108:100)や中国(SRB112:100)でも見られる傾向だ。インドでは文化的要因、中国では一人っ子政策の影響が背景にあった。しかし、両国では出生性比の改善が進んでいるのに対し、ネパールでは2001年の104:100から、2011年には106:100、2021年には112:100と悪化している

Source: 1952/54-2021 NEPAL CENSUSES
Source: 1952/54-2021 NEPAL CENSUSES

また、都市部の方が出生性比が高い(114:100)という結果も示されており、これは「教育水準が高い都市部では、女性差別が少ない」という通説を覆すものだ。都市部では、医療機関へのアクセスのしやすさが、性別選択の機会を増やしている可能性がある。

中央人口学研究所(Tribhuvan University)のヨゲンドラ・B・グルング氏は、「ネパールの出生性比の偏りは、深く根付いた家父長制を反映している」と指摘する。さらに、出生性比の偏りは、以下のような社会問題を引き起こす可能性がある。

  • 女性の減少による人口バランスの崩壊
  • 結婚の機会の減少と、花嫁の人身売買の増加
  • 性的暴力や人身売買、強制結婚のリスク増加
  • 労働力不足と経済への影響

出生届の提出率が低いために、実際の性比がさらに悪化している可能性もある。特に、息子の出生は届け出るが、娘は登録しない家庭が多いという調査結果もある。

国際連合人口基金(UNFPA)のネパール代表、ウォン・ヨン・ホン氏は、「性別選択の実態を把握するためには、病院やクリニックのデータを集め、より詳細な研究を行う必要がある」と述べている。

Sex ratio at birth (2021) in selected Asian countries. Source: OUR WORLD IN DATA
Sex ratio at birth (2021) in selected Asian countries. Source: OUR WORLD IN DATA

また、ネパール政府は、以下の対策を講じる必要がある:

  1. 妊娠中の性別選択技術の監視を強化するための規制強化
  2. 社会保障制度の拡充(老後の親の生活支援を政府が担う)
  3. 女性の教育と雇用機会の向上
  4. 文化的・宗教的なジェンダー規範の見直し
  5. 社会全体での意識改革キャンペーン

インドでは、「ベティ・バチャオ・ベティ・パダオ(娘を救い、娘を教育せよ)」という国家レベルのキャンペーンが出生性比の改善に貢献した。ネパールも同様の取り組みが求められる。

ネパールの出生性比の偏りは、単なる統計上の問題ではなく、社会全体の構造的な課題である。女性の権利向上とジェンダー平等を推進するためには、法律だけでなく、社会的・文化的な意識改革も不可欠だ。

アルナ・ウプレティ氏は、「安全な中絶は女性の権利であり、GBSSの根本的な問題を解決するには、家父長制の文化を批判的に見直す必要がある」と強調する。ネパールが真のジェンダー平等を実現するためには、政府、市民社会、国際機関が連携し、多角的なアプローチを取る必要がある。(原文へ

INPS Japan/Nepali Times

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二人のアフリカ人作家に対する不名誉な非難と『人間の最奥に秘められた記憶』

【ストックホルム(スウェーデン)IPSジャ-ンディウス】

2021年、セネガルの小説家モハメド・ムブガル・サールは、サハラ以南のアフリカ出身の作家として初めて、フランス最古で最も権威ある文学賞であるゴンクール賞を受賞した。

文学

彼の小説『La plus secrète mémoire des hommes(人間の最奥に秘められた記憶)』は、パリに住む若きセネガル人作家が主人公だ。彼は偶然、1938年に出版された幻のセネガル人作家T.C.エリマーヌの小説に出会う。この作家はかつてパリのメディアから絶賛されていたが、その後忽然と姿を消した。

エリマーヌは失踪する前に盗作の疑いをかけられ、その結果として訴訟に敗北。彼の出版社は、小説『非人道の迷宮』のすべての在庫を回収・破棄することを余儀なくされた。しかし、いくつかの極めて希少なコピーが残され、それを読んだ者に深い影響を与えた。

小説の主な主人公(他にも数人の登場人物がいる)は、最終的にフランス、セネガル、アルゼンチンにわずかな足跡を残した幻のエリマーヌを追い求め、絶望的な旅に巻き込まれていく。

多声的で精緻なサールの小説、アフリカ文学に横たわる疑問

サールの多面的で巧みに書かれた小説を読むと、多様な声が入り混じり、調和したり、矛盾し合ったりする「合唱」に出会う。この物語は迷宮のように変化し、フィクションと現実の境界が曖昧になり、未解決の謎が残される。サールは世界文学の大海原を自由に航海しているかのようで、あらゆる重要な作品を読んでいるように思える。作品中の暗示は明白なものもあれば、見えないままのものもある。最終的にこの小説は、神話と現実、記憶と現在の境界、そして最も重要な問い―「物語とは何か?」「文学とは何か?」―を探求する。それは「真実」に関わるものなのか、それとも現実のパラレルなバージョンを構築するものなのか?

この魅惑的な物語の表面下には、不穏な問題が浮かび上がる。なぜサール以前の二人の優れた西アフリカの作家が、盗作の疑いで厳しく批判され、非難されたのか?なぜ彼らは「アフリカ的でない」とされたのか?アフリカの作家たちは、文学界の偏見に満ちた評価により、異国的な珍品として扱われる運命にあるのだろうか?ノーベル賞を受賞したナディン・ゴーディマーJ.M.クッツェーのような白人作家を除き、アフリカの作家たちはヨーロッパ文学の模倣者と見なされ続けるのだろうか?

人間の最奥に秘められた記憶』と、実際の作家たちの苦難

『人間の最奥に秘められた記憶』は不穏な前史を持ち、ギニアの作家カマラ・ライエや、同じく不幸な境遇にあったマリのヤンボ・ウオロゲムの実体験を反映している。

15歳の時、カマラ・ライエはフランス植民地ギニアの首都コナクリに移り、機械工学の職業教育を受けた。1947年、彼はパリに渡り、さらに機械工学を学んだ。1956年、カマラ・ライエはアフリカに戻り、ダホメ(現ベナン)、ゴールドコースト(現ガーナ)、そして独立したばかりのギニアで政府の職務を歴任した。しかし1965年、政治的迫害を受けてセネガルに亡命し、故郷に戻ることはなかった。

1954年にカマラ・ライエの小説『王の視線(Le regard de Roi)』がパリで出版され、当時「アフリカから生まれた最高のフィクション作品の一つ」と評された。この小説は非常に奇妙で、現在もその特異性を保っている。特に、主人公が白人であり、物語が彼の視点で展開される点が注目さる。

主人公のクラレンスは、故国でほとんどのことに失敗した後、アフリカで一攫千金を目指して到着する。しかし、ギャンブルで全財産を失い、ホテルを追い出された彼は、アフリカの奥地に裕福な王がいるという伝説を追う決心をする。その王が彼を支援し、仕事や人生の目的を与えてくれると信じていたのだ。

ライエの小説は、人間が神を求める寓話となっている。クラレンスの旅は自己実現への道へと発展し、一連の夢のような屈辱的な経験を通じて知恵を得る。その経験はしばしば厳しく、時には悪夢のようだが、物語には時折、滑稽で魅力的なユーモアが差し込まれている。

しかし、一部の批評家はこれが本当にアフリカ文学なのかと疑問を投げかけた。その言語は魅力的にシンプルだったが、寓話的な語り口はキリスト教的であるとされ、アフリカの伝承は「表面的」であり、語り口は「カフカ的」だとされた。アフリカの作家の中にも、ライエがヨーロッパの文学的手本を「模倣している」と考える者がいた。ナイジェリアの作家ウォーレ・ショインカは、『王の視線』をカフカの小説『城』の弱い模倣であり、それをアフリカに移植したものだと特徴づけた。さらに、フランスでは、若いアフリカ人の自動車整備士が『王の視線』のような奇妙で多面的な小説を書けるはずがないという疑念が広がったのだ。

アフリカ文学への辛辣な非難―ライエとウオロゲムの不遇な運命がサールに与えた影響

カマラ・ライエの『王の視線』は、その興味深い天才的な作品であるにもかかわらず、容赦ない非難の対象となった。この非難は次第に激化し、最終的には米国の教授アデル・キングによる決定的な研究により、彼の名声に致命的な打撃が与えられた。1981年、キングは『The Writing of Camara Laye』で、『王の視線』が実際にはフランシス・スーレという反逆的なベルギーの知識人によって書かれたものであると「証明」した。スーレはブリュッセルでナチスや反ユダヤ主義のプロパガンダに関与し、第二次世界大戦後にフランスへ逃れざるを得なくなった人物である。

キングによると、スーレは出版社プロンの編集者ロベール・プーレと共謀し、自身の小説を若いアフリカ人作家が書いたものとして発表することで、その成功を確実にしたとされている。彼女はライエのフランスでの生活を詳細に追跡し、彼がプロン社から『王の視線』の著者として行動するために報酬を受け取ったと結論付けた。

キングは、ライエの小説が「アフリカ的ではなく、ヨーロッパ的な文学形式を持っている」と述べ、これがスーレの作品であることを示唆した。しかし、スーレの文学的成果は非常に乏しく、ライエが他にも優れた小説を執筆している事実を無視している。キングはまた、ライエがスーフィズムの伝統に由来するメシア的なテーマを持つことを無視し、「カフカ的な」要素もライエ自身がフランツ・カフカに影響を受けた可能性を排除した。

これらの疑わしい仮定にもかかわらず、キングの結論は広く受け入れられ、2018年にはクリストファー・ミラーの著書『Impostors: Literary Hoaxes and Cultural Authenticity』にも目立つ形で引用された。

ヤンボ・ウオロゲムの『暴力の義務』への激しい非難

1968年には、西アフリカのもう一人の優れた作家ヤンボ・ウオロゲムが、画期的な小説『暴力の義務(Le devoir de violence)』で同様の運命をたどった。この作品は、アフリカの架空の王国(現在のマリに類似)における700年にわたる暴力の歴史を扱い、流れるような一級の筆致で極端な暴力、王室の圧政、宗教的迷信、腐敗、奴隷制度、女性器切除、レイプ、女性嫌悪、権力の乱用を描写した。また、真の愛や調和のエピソードも交えながら、強力で腐敗したアフリカのエリートが植民地勢力と共謀して富を築いた様子を容赦なく描いている。

この小説は、一部の批評家や作家、特に「ネグリチュード」の支持者から激しい反発を招いた。ネグリチュードはフランス語圏の知識人たちによって発展した文学理論で、アフリカの独自文化を強調したが、ウオロゲムはこれを「ネグライユ」と揶揄し、アフリカの人々に従属的で劣等感を植え付けると非難した。

最終的には、尊敬される作家グレアム・グリーンがウオロゲムの『暴力の義務』に対して訴訟を起こし、作品が彼の小説『It’s a Battlefield』の一部を盗用していると主張した。グリーンは訴訟で勝訴し、フランスで『暴力の義務』は出版禁止となり、全ての在庫が破棄された。この結果、ウオロゲムは小説を書くことをやめ、故郷マリに戻り、最終的には隠遁生活を送った。

サールの小説に影響を与えた二人の作家の運命

モハメド・ムブガル・サールの『人間の最奥に秘められた記憶』は、こうした二人の西アフリカ作家の運命を想起させている。サールの小説では、セネガルとフランスという二つの異なる世界の間で揺れる若い作家が描かれている。彼は文学の世界で慰めを見出し、エリマーヌの小説という「宝石」に出会う。しかし、エリマーヌの正体を追い求める彼の旅は虚しく終わり、その過程で彼自身のアイデンティティ探しもまた無駄に終わってしまう。この物語は、私たちが生きる世界という迷宮の中で、自分自身を見つけることの難しさを象徴している。

サールの作品は、前例の作家たちが「本物ではない」とされ、「盗作」と非難された運命を反映しつつ、グローバル化した世界の中で何が「本物」なのかを問いかけている。(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau

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タジキスタン探訪:未踏の自然美と文化遺産を解き明かす旅

【ロンドン/ドゥシャンベLondon Post】

サイドフ・ウメッドジョン氏(34歳)は、タジキスタン国立大学で外交を専攻し卒業した人物だ。これまでに、タジキスタン外務省傘下の国営企業「タジク外交サービス」の責任者や、内務省観光政策部門での役職などを歴任してきた。彼は「キングツアー」および「ディヨールトラベル」の創設者であり、現在は「ソマンエア」の子会社である「ソマントラベル」の総支配人を務めている。
ウメッドジョン氏は英語、ロシア語、ウルドゥー語、アラビア語に堪能で、40カ国以上を訪れた経験があり、国際観光展示会にも積極的に参加している。また、「情報セキュリティと国際協力」に関する博士号取得を目指して研究を進めている。趣味は読書、旅行、スポーツ。

ロンドン・ポスト: タジキスタンの観光客が見落としがちな隠れた名所を教えてください。

サイドフ・ウメッドジョン: タジキスタンには、素晴らしい自然の景観と豊かな文化遺産があり、多くの知られざる名所があります。

  1. カロン高原: 独特な岩の形状、洞窟、ペトログリフがあり、ハイキングに最適。
  2. チルドゥフタロン渓谷: スレンダーな少女を思わせるピラミッド型の岩が特徴。
  3. イスカンダルクル湖: ファン山地の美しい氷河湖。
  4. ヤグノブ渓谷: ヤグノブ人の独自の文化遺産を保存。
  5. ホジャ・オビ・ガルム: ソ連時代から続くミネラル豊富な治癒効果のある天然温泉保養地。
  6. ガルムチャシュマ: パミール山地のもう一つの療養温泉。
  7. ムルガブ高原: 冒険旅行者向けの壮大な高地の景観。
  8. ペンジケント: ソグド時代の遺跡と近隣のセブン・レイクス。
  9. カラクル湖: 深い青色の水と人里離れた美しさで知られる高地湖。
  10. ヌレクダム: 世界第2位の高さを誇るダムで、ボートや釣りに最適。
  11. サラズム: 初期人類文明を示すユネスコ世界遺産。

これらのスポットは、タジキスタンの自然美と文化遺産を存分に楽しむための本物の体験を提供します。

London Post

LP: あなたのツアーでは、持続可能で地元のコミュニティ支援という側面ではどのような配慮がなされていますか?

SU: 私たちは地元のビジネス、ガイド、サービスプロバイダーと提携し、観光収益を地域社会に還元して地元経済を活性化させています。ツアーは文化遺産の尊重と保存を重視し、責任ある観光を促進し、環境への影響を最小限に抑えるエコフレンドリーな方法を採用しています。また、地域開発プロジェクトを支援し、旅行者に持続可能な観光の教育を行い、倫理的な野生動物活動を保証しています。これらの原則を統合することで、旅行者にとって充実した体験を提供すると同時に、タジキスタンの地域社会や環境にプラスの影響を与えています。

LP: 御社のツアーを予約すると、観光客はどのようなユニークな体験が期待できますか?

SU: 私たちのツアーでは、タジキスタンの自然美、文化遺産、温かいおもてなしを最大限に楽しむことができます。ユニークな体験としては、地元の家族が作る伝統料理の味わい、料理教室でのレシピ学習、地元市場での特産品探索、文化的な祝祭での食事などがあります。壮大な景色から豊かな文化的伝統まで、タジキスタンの魅力を満喫できる包括的な体験を提供します。

London Post

LP: タジキスタンの観光産業は近年どのように進化しましたか?また、今後どのようなトレンドが予測されますか?

SU: タジキスタンはその素晴らしい自然の景観、豊かな文化遺産、歴史的重要性により、ユニークな体験を求める国際的な旅行者にとって人気の目的地となっています。険しい地形、特に壮大なパミール山脈は、トレッキング、登山、ホワイトウォーターラフティング、マウンテンバイクに興味のある冒険家を引きつけています。観光インフラの強化、文化祭の推進、環境に配慮した取り組みの強調が、タジキスタンの魅力を高めています。環境問題への関心が高まる中、エコツーリズムの需要が増え、国立公園や保護地域がさらに注目されるでしょう。コミュニティベースの観光、インタラクティブな文化体験、個別対応の旅行サービスが、タジキスタンをますます魅力的な目的地として位置づけています。

LP: 旅行中にお客様の安全と満足をどのように確保していますか?

SU: お客様の安全と満足は最優先事項です。経験豊富で認定を受けた現地ガイドが、応急処置や緊急対応のトレーニングを受けており、天候、道路状況、潜在的な危険を考慮してツアーを綿密に計画します。衛生管理にも重点を置き、消毒済みの交通手段や宿泊施設、健康ガイドラインの遵守を徹底しています。メンテナンスの行き届いた車両を使用し、観光警察(MIA RT)のユニットと協力して24時間体制のサポートを提供します。安全ブリーフィングや包括的な旅行保険の推奨も標準です。お客様の好みに合わせたツアー設計、安全で快適な宿泊施設の選択、そして没入型の文化体験を提供します。明確なコミュニケーション、顧客からのフィードバック、衛生的な地元料理により、満足のいく旅行体験を保証しています。私たちの専任チームは、旅行が良い思い出で満たされるよう努めています。

LP: お客様がツアーで楽しめるユニークな食の体験を教えてください。

SU: タジキスタンの本格的な味を体験できるのは、家族が作るプロフ、クルトブ、シャシリクなどの地元料理を楽しむことから始まります。また、伝統的なレシピを学べる料理教室にも参加できます。新鮮な農産物や乾燥果物が並ぶ活気ある市場を探索し、地元の美味しいものを味わうこともできます。お祝いの際には、タジク文化に浸ることのできる豪華な食事を楽しむことができ、同国の豊かな食文化に没頭できます。

LP: 提供する宿泊施設について教えてください。また、それがどのように旅行体験を向上させるか説明してください。

SU: タジキスタンでは、都会の中心地にある快適さと地元の魅力を兼ね備えた豪華な5つ星ホテルから、地方の家庭的で居心地の良い宿泊施設まで、多様な選択肢を提供しています。それぞれの宿泊施設は、地元の家族との交流を通じて文化的な体験を深めることができ、自然豊かな風景の中に位置しています。また、持続可能性を優先しており、活気ある都市部や静かな田園地帯のどちらでも、文化的なつながりを育み、地元の生活や環境への貴重な洞察を提供することで、旅行体験を豊かにします。

LP: 家族旅行、個人旅行、冒険好きの旅行者など、異なるタイプの旅行者にどのように対応していますか?

SU: 私たちは旅行者のニーズに応じてツアーを柔軟に調整しています。例えば、家族連れには子供向けの安全で教育的な体験を提供し、冒険を求める旅行者には険しいトレッキングや刺激的なアウトドア活動を提案します。個人旅行者には、自由な時間を確保しつつ、地元の文化に触れる機会を提供します。多様な宿泊施設や活動の選択肢を通じて、旅行者それぞれの希望に応じた体験をデザインします。

LP: 特に思い出に残るツアーと、その特別な理由について教えてください。

Map of Tajikistan

SU: 特に印象的だったのは、ファン山地でのトレッキングツアーです。経験豊富な現地ガイドとともに、美しい谷、透き通った湖、険しい山道を旅しました。遊牧民の羊飼いと出会い、言葉の壁を越えておもてなしを共有したり、星空の下でキャンプをしたりすることが、特別な思い出となりました。この冒険は、冒険心、発見、文化や自然を通じたつながりという、旅行の本質を象徴するものでした。

LP: タジキスタンを訪れるのに最適な時期とその理由を教えてください。

SU: タジキスタンは美しい風景と豊かな文化遺産を持つ国で、旅行者にとって最適な季節が2つあります。春(4月から6月)は、穏やかな気候、花咲く風景、ナウルズ(ペルシャ起源の新年)などの活気ある祭りが特徴です。秋(9月から10月)は、快適な気候、澄んだ空、美しい紅葉が楽しめ、トレッキングやアウトドア活動に最適です。これらの季節は、タジキスタンの自然美を探索し、その伝統に浸るのに最も適した時期です。

LP: 過去のお客様からのフィードバックについて教えてください。また、それをどのようにサービス改善に活かしていますか?

SU: お客様からのフィードバックを非常に重視しており、それをもとにサービスを継続的に改善しています。知識豊富なガイドに対する称賛、文化に没入する体験への感謝、ツアーのスムーズな運営に対するポジティブな意見など、多くのフィードバックをいただいています。これらを活かして、さらに満足度の高い体験を提供できるよう努めています。

ロンドン・ポスト: サイドフ・ウメッドジョン氏、このオンラインインタビューへのご参加、ありがとうございました。原文へ

INPS Japan/London Post

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核軍縮の現状維持は許されない、人類は大きなリスクにさらされている

【ウィーンINPS Japan=オーロラ・ワイス】

核兵器は、ウラジーミル・プーチンがそれを脅迫の手段として利用し始める以前から、またイスラエルの将軍がガザのパレスチナ人を壊滅させるために使用する可能性を示唆する以前から、さらにはイランがウラン濃縮を進め、それが米国の制裁を招き、そのイスラム国家をさらに孤立させることになる以前から、世界的な脅威であった。

核兵器によるあらゆる脅しは、極めて深刻に受け止めなければならないだけでなく、完全に容認できない無責任な行為である。

その壊滅的な人道的影響と甚大なリスクを考えれば、私たちは核兵器に関するパラダイム・シフトを必要としている。核兵器や核抑止力が安全保障を保証するものではないことは明らかである。

核の脅威はここ数十年で最も高まっている。欧州は、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、かつてないほど核の危険にさらされてきた。近年、ロシアからの核の脅しに恐怖を抱くだけでなく、ウクライナのザポリージャ原子力発電所が損傷することによる核災害の可能性にも不安を感じてきた。

2022年には、ロシア軍が欧州最大の原発であるザポリージャ原発の管理棟や主変圧器に火を放ち、消防士の立ち入りを禁止した。この危機的状況の後、幸いにも国際原子力機関(IAEA)の専門家による監視のもとに置かれているが、ロシアとウクライナは互いにその原発へのテロ攻撃を計画していると非難し合った。この状況に警鐘を鳴らし、「核戦争防止のための物理学者(IPPNW)」は、原発に対する軍事攻撃の禁止を求めた。戦時下で適切な災害対応を行うことは不可能であることを、私たちは認識しなければならない。

核兵器が使用される場合、それが意図的な使用、エスカレーション、あるいは人的・技術的ミスによる誤作動であれ、その結果は壊滅的なものとなることは明白だ。それは、単に即時の破壊や無実の人々の命が失われることにとどまらない。経済への影響や、パニックによる大量の難民発生など、長期的な影響も考慮しなければならない。限定的な核戦争であっても、地球規模の食糧供給が崩壊し、大規模な「核の冬」を引き起こす可能性がある。その結果は想像を絶するものであり、唯一の解決策は予防である。しかし、予防が成功するためには、核兵器の全面禁止が不可欠である。

新たな技術、例えば人工知能やサイバー攻撃の脆弱性も、核のリスクを増大させている。だからこそ、150を超える非核保有国は、核リスクの削減を求めている。その「ゴールド・スタンダード」は、核保有国が核兵器を完全に禁止することである。しかし、核兵器を保有する9か国(アメリカ、ロシア、フランス、中国、イギリス、パキスタン、インド、イスラエル、北朝鮮)は、それを全く望んでいない。それどころか、彼らは大量破壊兵器の改良と核兵器の増強を進めている。現在、世界の核兵器の総数はおよそ13,000発と推定されている。

この現実を変えなければならない。核軍縮の現状維持はもはや許されず、人類全体が取り返しのつかないリスクにさらされている。

私はウィーンでイラン核合意(JCPOA)に関する交渉を取材してきた。その中で注目したのは、米国の代表団はイラン代表団とは直接交渉せず、他の関係国が仲介する関節交渉を行った点である。日をまたぐ交渉の終盤になると、ロシアの代表が中国とイランを代表して向かいのホテルへ行き、そこに待機していた米国の代表団と制裁解除について交渉したのだった。

この合意の支持者たちは、JCPOAがイランの核兵器計画の再開を防ぐことに寄与し、それによってイランとイスラエルやサウジアラビアといった地域のライバル国との対立の可能性を低減させると主張している。しかし、2023年初頭に国連の査察官が、イランが兵器級に近いウランを濃縮している痕跡を確認し、国際社会に衝撃を与えた。イランが正式に核兵器保有国となれば、安全保障上の理由からサウジアラビアやイスラエルも核開発を進めることになり、中東における核戦争の可能性を高めることになるだろう。

そのリスクにもかかわらず、核保有国はますます核兵器を強化し、核を持たない国々も厳しい制裁の下で開発を進めている。そして、核兵器を持たない国々は、核保有国の軍縮を求めている。では、核を保有しない北大西洋条約機構(NATO)加盟国はどのような立場をとっているのだろうか?

NATO加盟国の中で、近い将来に核兵器禁止条約(TPNW)に署名する国が現れる可能性は低い。NATOはこれまで、TPNWは核不拡散条約(NPT)と両立しない」という理由で、この条約に関する会合への建設的な関与を拒んできた。しかし、これは事実ではない。

NATOは依然として核兵器を安全保障の要と見なしている。しかし、軍縮の専門家たちは、「人為的なミス(意図的か非意図的かを問わず)、技術的なエラー、サイバー攻撃などによって、いつか必ず何かが起こる」と警告している。核兵器を保有し、貯蔵すること自体が、あまりにも大きな安全保障上のリスクなのだ。

2025年1月20日に米国大統領に再就任したドナルド・トランプは、既にいくつかの過激な行動に出ている。国際人道支援団体への援助を打ち切っただけでなく、グリーンランドやカナダを米国に併合しようとするという衝撃的な野望まで抱いている。国際社会は、トランプの野心がどこまで広がるのか、そして彼がそれを実現するためにどのような手段を用いるのか、極めて危機感を持って見守っている。このような世界的に不安定な時代において、ほんのわずかな誤った判断が核戦争につながる可能性がある。

米国の歴史を振り返れば、核兵器の使用をためらわない姿勢がうかがえる。映画「オッペンハイマー」を観た人なら、核爆弾の開発者がホワイトハウスを訪れた際、ハリー・トルーマン大統領が「自分こそが原爆を投下した大統領として歴史に名を刻む」と誇らしげに語るシーンを思い出すだろう。トルーマンは、その結果がどうであれ、歴史に名を残すことを誇りにしていた。

UN
Credt: UN

しかし、核兵器の使用を命じた米国大統領はトルーマンだけではない。それ以降も、多くの大統領が核の使用を検討していた。

ダニエル・エルズバーグの著書『終末兵器』を参考にすれば、米国の核戦略が70年にわたってどのように維持されてきたかがわかる。エルズバーグはかつて大統領顧問を務め、ベトナム戦争時の「ペンタゴン・ペーパーズ」を暴露した伝説的な内部告発者である。彼が明かしたところによると、1960年代、酔った状態のリチャード・ニクソン大統領は北朝鮮への核攻撃を命じたことがあった。米国の偵察機が撃墜されたことに激怒したニクソンは、軍司令官に電話をかけ、戦術核攻撃の標的を指定した。だが、当時の国家安全保障担当補佐官であるヘンリー・キッシンジャーが軍と交渉し、ニクソンが酔いから覚めるまで待つように説得したという。

その後のニクソンは、ソ連に向けて核爆弾を搭載した爆撃機を飛ばし、「自分は本当に第三次世界大戦を始めるかもしれない狂人だ」という噂を流すことで、敵国を威嚇しようとしたとされる。

現在の米国の政策では、大統領が核攻撃を命じることにほぼ制限がない。軍は戦争法に違反すると判断した命令を拒否することができるが、一般的な理解として、大統領はいつでも、どんな理由でも核兵器を発射できる権限を持っている。

この現状を変えるためには、「先制不使用(NFU)」政策の採用が急務である。この政策は、米国が核兵器を「先に使わない」と明確に定めるものであり、同時に議会の戦争宣言権限を再確認するものでもある。米国の憲法には「大統領が単独で戦争を始めることはできない」と明記されている。それにもかかわらず、大統領が単独で核戦争を始めることができる現状は、矛盾していると言わざるを得ない。したがって、NFU政策の導入は不可欠であり、核戦争の危険を未然に防ぐための最も基本的な一歩である。(原文へ

INPS Japan

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成功を調理する:アンゴラでクリーンエネルギーの利用拡大を目指すソーラーキッチン・イニシアチブ

【ルアンダ(アンゴラ)IPS= ジュディテ・トロコ・ダ・シルバ、ヘイラ・モンテイロ】

持続可能な発展にとってエネルギーへのアクセスは欠かせないが、多くの農村地域では依然としてその実現が遠いのが現実である。2019~20年の農業センサスによると、アンゴラの農村部の多くの村では電気へのアクセスがまかった。

83%以上の村では全く電気が利用できず、11%が民間の発電機に頼っている。このような現状は、農村地域の発展を支えるためにより良いエネルギーソリューションが急務であることを示している。

Map of Angola
Map of Angola

こうした背景の中、今年初め、UNDP(国連開発計画)アンゴラの3つのチームが、アフリカにおける自然、気候、エネルギー関連プロジェクトを支援する「クラウドファンディング・アカデミー」に参加した。このアカデミーは、UNDP外部関係・アドボカシー局とIRH(イノベーション・アクセラレータ)- オルタナティブファイナンスラボの支援を受けている。

この取り組みを通じて、UNDPアンゴラは初のクラウドファンディングキャンペーン「ソーラーキッチン:正しいエネルギーで料理を!」を開始した。

このキャンペーンは地域的な取り組みの一環であり、同じテーマの下で地域内でさらに多くのキャンペーンが展開される予定だ。他国とともに、「ソーラーキッチン」キャンペーンはUNDPアフリカの新たな#SwitchItクラウドファンディングイニシアチブの一部となる。

これは、2025年までに持続可能で手頃な価格で信頼性の高いエネルギーをさらに5億人に提供し、公正なエネルギー移行を促進することを目指したUNDPの「エネルギー・ムーンショット」の一環である。このイニシアチブは、経済的エンパワーメント、ジェンダー平等、生活の質の向上への道筋としても機能している。

ソーラーキッチンはどのように変化をもたらすのか?


アンゴラでは、多くの女性が農業に従事し、作物の生産を通じて家族を支える生活を送っている。しかし、電気が利用できないことから、重大な課題に直面している。例えば、アンゴラ南部のフイラ州カクラ自治体では、女性たちがカボチャやサツマイモなどの収穫物を効果的に生産・保存することに困難を感じており、その結果、収穫物が定期的に損失してしまう状況にある。

ソーラーキッチンを通じた農業生産の向上と持続可能な生計の創出

ソーラーキッチン・イニシアチブは、太陽光発電を利用したキッチンや水、加工設備などの資源へのアクセスを改善することで、農業生産を向上させ、持続可能な生計を創出することを目指しています。

地元の協同組合を率いるイザベルさんやマリアさんのような女性たちは、直接的な恩恵を受けることが期待されている。エネルギーへのアクセスを得ることで、生産性を高め、耕作面積を拡大し、経済成長に投資することが可能になる。

カクラ自治体でのパイロットプロジェクトでは、直接的に47人の女性により良い生活・労働環境を提供し、78世帯が食料安全保障の向上や収入創出の恩恵を受けると見込まれている。また、地元の学生を含む約468人がクリーンエネルギーにアクセスできるようになる。

さらに、より良いツールやトレーニングへのアクセスを通じて、協同組合は耕作面積と農業生産が250%増加する可能性がある。このような成果は、フイラ州の他の地域でも確認されている。

これらの女性たちはソーラーキッチン・イニシアチブの成功の鍵を握っている。

アンゴラの農村部では、女性たちが農業の多くを担い、農場を管理し、家庭や協同組合を運営している。しかし、エネルギーへのアクセスがないことで、無給の時間がかかる労働に縛られ、成長の機会が限られているのが現状である。

ソーラーキッチン・キャンペーンは、女性たちが困難な作業に費やす時間と労力を軽減し、ビジネスを改善したり個人の成長に集中する自由を提供する。このイニシアチブは、インフラと資源アクセスのギャップに対処することで、農村地域が繁栄できるエコシステムを構築する。

あなたにできること

SDGs Goal No. 7
SDGs Goal No. 7

「ソーラーキッチン:正しいエネルギーで料理を!」キャンペーンの成功は、共同の行動にかかっている。寄付を通じて、またはこのキャンペーンをネットワーク内で共有することで、あなたの支援が持続的な変化を生み出す。共に、イザベルさんやマリアさんのような女性をエンパワーし、農村経済を強化し、持続可能な発展をアンゴラにもたらしましょう。」

正しいエネルギーで料理をし、より持続可能なアンゴラへの道を、一つのソーラーキッチンから切り拓いていきましょう。

ソーラーキッチン・イニシアチブは、UNDPアンゴラのより大規模なイニシアチブ「クリマ – 農村経済の変革を受け入れる」 の一部である。この取り組みは、クリーンエネルギーへのアクセスの改善、農業生産性の向上、包括的な金融およびデジタルサービスの促進に焦点を当てている。この包括的な努力は、特に女性主導の協同組合が直面する体系的な課題に取り組むことで、農村地域のコミュニティをエンパワーすることを目指している。(原文へ

ジュディテ・トロコ・ダ・シルバ(UNDPアンゴラ 探索部門長),ヘイラ・モンテイロ(UNDPアンゴラ コミュニケーション&アドボカシー専門官)

INPS Japan/ IPS UNBUREAU

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世界第5位の経済大国が直面する課題

【ニュージャージーIPS=ジブ・トーマス】

インドは世界第5位の経済大国として台頭し、中国を抜いて世界で最も人口の多い国となった。しかし、この急速な成長には課題も伴っている。失業率の上昇とインフレが深刻化し、人口ボーナスや7~8%のGDP成長率を維持するという野心的な目標に影を落としている。

2050年までに推定17億人に達すると予測される人口増加は、雇用の弾力性、貧困率の上昇、都市の混雑、環境汚染、天然資源の枯渇といった問題をさらに深刻化させる。これらの課題は、生態系の不可逆的な破壊を引き起こし、種や生息地の微妙なバランスを脅かし、公衆衛生や持続可能性に深刻な影響を及ぼすリスクがある。

Map of India
Map of India

こうした状況で、特に活気ある若者層の増加を抱える中、持続可能な開発を追求することは急務かつ困難な課題だ。一つの効果的で費用対効果の高い解決策は、人間の環境負荷を意識的に減らすことである。人口計画を気候変動対策や持続可能な開発目標(SDGs)に統合し、長期的な政策を策定して地球を守ることが急務である。

これには、人口に関する議論を広範な環境戦略に組み込むこと、女性を教育と生殖医療へのアクセスを通じてエンパワーメントすること、高出生率地域にターゲットを絞ったイニシアチブを立ち上げ、政府、NGO、地域社会間の協力ネットワークを構築することが求められる。

現在のインドの人口構造は重要な岐路に立っており、急速に増加する人口を管理することが大きな課題となっている。過去50年間でインドの人口はほぼ3倍に増加し、未来に対する深刻な懸念を引き起こしている。世界人口の18%が地球のわずか2.4%の土地面積に集中しているため、さらなる人口増加を受け入れることは急務であり避けられない課題である。

この問題は国内で対立する見解を引き起こしており、増加する労働年齢人口を人口ボーナスとみなす意見もあれば、潜在的な危機として直ちに対応が必要だとする意見もある。

現在の人口動向は緊急性を帯びており、雇用創出に向けた即時の行動が求められている。失業率は8.5%に達し、多次元的貧困指数(MPI)によると14.9%が貧困状態にある。また、総資産の60%以上を上位10%が保有し、下位50%の資産は減少しているという深刻な富の格差がある。

教育システムは人口増加に対応しきれず、2022~23年には120万人以上の子どもが学校に通えない状況である。都市化が進む中、インフラや基本サービスへの負担が増大している。公的医療費はGDPの2.1%にとどまり、普遍的な医療保障の必要性が浮き彫りになっている。増加する人口は耕作可能な土地に大きな圧力をかけ、土地の劣化を悪化させ、資源基盤に影響を及ぼしている。

さらに、人口増加と富の増大によりエネルギー生産と消費が急増し、大気汚染や地球温暖化が進行している。これらの環境問題は公衆衛生に大きな影響を与え、持続可能な開発を妨げている。

緑の革命による農業生産性の向上にもかかわらず、多くの人々が適切な栄養を十分に得られない状況に直面しており、食料持続性への対処が急務である。増加する人口は、損傷を受けた生態系にさらなる負担をかけ、その回復力を低下させ、疫病、土壌の砂漠化、生物多様性の喪失のリスクを高めている。

現在のインドの人口構造は、約5億人の労働年齢人口を抱え、中国の人口減少に対して大きな発展の可能性を示している。しかし、インドの人口増加は、比較的狭い国土面積と中国より低いGDPという課題を伴う可能性がある。

中国の一人っ子政策が急速な経済成長をもたらした一方で、インドの出生率に関してはさまざまな見解が存在している。報告によれば、インドの出生率は人口置換水準の2.1を下回っているとのことだ。一部では人口政策を支持する声がある一方で、1980年代にインドで行われた強制的な人口政策への歴史的な反発を引き合いに出し、その必要性を疑問視する声もある。

2022~23年の7.2%という成長率は600万人分の雇用を生み出したが、労働人口は1000万人増加しており、「雇用なき成長」が課題となっている。出生率が低下しているにもかかわらず、「人口モメンタム」の影響により、インドの人口は必ずしも減少しないと科学モデルは予測している。

1970~80年代には、多様なメディアや公的なアウトリーチを通じて家族計画を推進する取り組みが一定の成果を上げた。しかし、これらのイニシアチブの効果は時間の経過とともに薄れ、制御されていない人口増加の問題は依然として重要な課題として残っている。

この問題に取り組むことへの消極姿勢は、政治的、宗教的、文化的な懸念に深く根ざしている。急速な経済成長と科学技術の進歩が人間活動を活発化させ、人口管理を困難にしている。持続可能な開発のためには人間の人口増加を規制することが重要であり、1960年代の歴史的な証拠は、人口増加が制御されない場合、資源の枯渇を招くことを示している。

人間の人口管理に失敗すれば、植林やインフラ開発の努力が損なわれる可能性がある。また、特に教育を受けた若者が限られた機会に直面している状況では、失業が増えると政治的暴力の増加につながることが指摘されている。

インドは2070年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという野心的な目標を掲げているが、人口が20億人に達するという予測がある中で、この目標を達成することは容易ではない。2024年のUNDP(国連開発計画)の調査によれば、インド国民の77%が、より強力な政府の気候変動対策を求めている。

I=PATフレームワークは、環境への影響(I)が人口規模(P)、富裕度(A)、および技術(T)によって影響を受けることを強調している。現在、インドの中間層は人口の31%を占めており、2031年には38%、2047年には60%に成長し、一人当たりの消費が増加すると予測されている。このフレームワークの中で、直接管理できる唯一の変数は人間の環境負荷(P)であることに注意が必要だ。

しかし、この問題の複雑な性質や社会的枠組みを考慮すると、個人に環境への悪影響が少ない行動を取るよう説得するだけでは効果が薄く、場合によっては逆効果になる可能性がある。したがって、人口増加の議論を環境問題の対話に統合し、その汚名を取り除くことが急務である。

政府、地域社会、個人が協力して積極的な対策を取る責任を共有する必要がある。 私たちの焦点は、システムや構造を変更し、地域社会が自主的に1年間の出産を控えるよう奨励することに移行すべきだ。これにより、大規模な行動変容を促進することができる。

特に、人口過密の州、特に北インドの高出生率地域に焦点を当て、これらの地域での避妊具や家族計画サービスへのアクセスを緊急に改善する必要がある。

SDGs Goal No. 5
SDGs Goal No. 5

ケララ州の事例は、女性が教育、医療、子供の数をコントロールする力を持つ場合、出生率が低いことを示している。 教育を受けた女性は一般的に子供の数が少なく、これはジェンダー平等が進展していることも示唆している。女性のエンパワーメントと意思決定への積極的な参加は、人口増加を大幅に抑制する可能性があり、より持続可能な未来への希望を提供している。

結論として、インドの人口増加、環境持続性、公衆衛生の相互作用は、即時かつ戦略的な対応を必要とする複雑な課題を提示している。 この問題に効果的に対処するために、次のような措置を提案する。

  1. 人口議論の統合: 政策立案者、環境活動家、地域リーダーを結びつけるフォーラムやパートナーシップを確立し、人口増加を広範な環境戦略に組み込む。
  2. 女性のエンパワーメント: 教育プログラムに投資し、高出生率地域での生殖医療サービスへのアクセスを拡充して、女性が家族に関する意思決定を行えるよう支援する。
  3. ターゲットを絞ったイニシアチブの実施: 人口過密地域での出生率削減に焦点を当てた政府の取り組みを開発・支援し、地域レベルで持続可能な実践を促進する。
  4. 協力の促進: 政府、NGO、地域社会間のパートナーシップを奨励し、意識的な生活とエコフレンドリーな実践を推進する。
UN Photo
UN Photo

今こそ、目的を持って行動する時だ。 今日の集団的な決断が、将来世代の生活の質を決定する。これらの提言を採用することで、国は繁栄だけでなく、すべての市民の幸福も保証する遺産を築くことができる。

シブ・トーマス博士。M.D.S、M.S。ニュージャージー州在住の独立系グローバルヘルスおよび国際安全保障アナリスト。シートン・ホール大学外交・国際関係学部卒業生、アジュマーン大学元准教授(アラブ首長国連邦)。

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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闇から夜明けへ:タリバンの抑圧からの脱出

アフマド*の自由への旅
【ロンドンLondon Times=ラザ・サイード】

ロンドンの片隅、小さな薄暗い部屋で静かに座る一人の35歳の男性。彼の目には、故郷を追われた過去の記憶が映っている。彼の名前はアフマド。アフガニスタンから英国へと至る彼の旅は、生存と喪失、そして家族と再会することへの揺るぎない希望に満ちている。

アフマドがアフガニスタンを脱出したのは、タリバンが政権を掌握するわずか2週間前の2021年。「恐怖でいっぱいでした」と彼は振り返る。「もし彼らが来たら、私は殺されていたでしょう」。その理由は、彼がアフガニスタンの子どもたちのための教科書を出版する開発・教育団体で働いていたことだった。タリバンは彼を民主主義を推進する者とみなし、これらの教科書を「西側の陰謀」だと非難した。そして警告の手紙を送られてきたとき、彼は自分の命が危険にさらされていることを確信した。

「自分の村にすら戻ることはできなかった」と彼は言う。「そこに行けば、間違いなく殺されていた」。彼の妻は彼の命を案じ、苦渋の決断を下した。「せめてあなたが生きていてくれれば」と、彼女は彼に逃亡を促した。アフマドの旅立ちは、苦い別れでもあった。妻と2人の子ども、そして生まれたばかりの娘を残しての逃避行だった。

英国への道のりは命がけだった。「100%危険な旅でした」と彼は語る。危険なルートを辿る中、何日も食事を取れないこともあり、木の葉を食べて飢えをしのいだ。密航業者たちに支配され、行動のすべてを決められた。「彼らの言いなりでした。暴力を振るわれ、罵られ、人間として扱われませんでした」。道中、多くの家族が再会を願いながらも恐ろしい目に遭うのを目の当たりにした。女性や少年が暴力の犠牲になり、国境警備隊に捕まれば命の危険もあった。

数か月に及ぶ過酷な旅の末、アフマドはようやく英国に辿り着いた。彼は人で溢れかえった小さなボートで英仏海峡を渡った。「定員8人のボートに30人以上が乗っていました」と、彼は重い口調で語る。「英国の沿岸警備隊には感謝しています。もし助けてもらえなかったら、今ここにはいなかったでしょう」。

彼が英国に到着した同じ日、妻は緊急帝王切開で出産していた。「電話をしたけれど、妻は衰弱していて話すこともできなかった」。離ればなれの生活は苦痛だった。長女は父がなぜいなくなったのか理解できず、「どこにいるの?早く帰ってきて!」と訴え続けた。

英国に到着したアフマドは、すぐに亡命を申請し、拘留センターへと収容された。そこでは5ポンドと家族と連絡を取るための携帯電話が支給された。その後の生活は苦難の連続だった。彼はホテルや共同宿泊施設を転々とし、食事を取るのがやっとの状態で、他のことにお金を使う余裕などなかった。「仕事をして自立したかったし、政府の負担を減らしたかった。でも就労許可がなく、何もできませんでした」と彼は嘆く。

到着から2年後、アフマドは難民認定を受けた。「ショッピングセンターにいるときに電話を受けました。人生が変わる瞬間でした」と彼は振り返る。しかし、その喜びは長くは続かなかった。政府の提供する住居を14日以内に退去せねばならず、彼は2晩ダイニングルームで寝ることを余儀なくされた。その後、親切な友人が彼を受け入れてくれたものの、「友人の家に来客があるときは、車の中で寝ることもあります」とアフマドは打ち明ける。

それでも彼は希望を捨てていない。今では仕事を持ち、未来を築く夢を抱いている。しかし、彼の最大の願いはまだ叶っていない——妻と娘たちを安全な場所に呼び寄せることだ。法的手続きは遅々として進まず、子どもたちのアフガニスタンのパスポートを取得するのに6か月もかかった。妻は毎日、当局から夫の不在について問い詰められ、大きなストレスを抱えている。「もう3年です。夫婦が離れて生きていくことはできません」と彼は嘆く。

アフマドの家族はいまだタリバン支配下のアフガニスタンで暮らしている。妻は一人で外出することすら許されず、子どもたちのための牛乳を買いに行くこともできない。ストレスは限界に達している。「妻は、ちょっとした用事でも誰かに頼まなければなりません。耐え難い状況です」とアフマドは言う。

それでも、アフマドは決して諦めない。彼は英国に貢献し、難民が求めているのは施しではなく、機会であることを証明したいと考えている。「人々は、私たちが福祉目当てで来ていると思っています」と彼は言う。「でも、誰も好き好んで故郷を捨てたりしません。本当に選択の余地がないからこそ、私たちはここにいるのです」。

Map of Afghanistan
Map of Afghanistan

彼は、難民のための法的な移動ルートの必要性を訴える。それは難民のためだけではなく、英国の安全保障のためでもあると考えている。「安全な合法的ルートがあれば、人々は命を危険にさらして密航しなくて済みます。英国も、誰が来るのかを事前に確認できます。ほとんどが女性や子どもで、彼らは極めて危険な状況に置かれています」と彼は説明する。

アフマドの物語は、人間の精神の強さを示している。彼は、いつの日か家族と再会し、英国社会に貢献できる未来を夢見ている。「いつか、この国のために何か良いことをしたい。そしていつか、子どもたちを再び抱きしめたい」と彼は語る。

彼のメッセージは、希望と理解に満ちている。「私は、世界がアフガニスタンの人々、そして危険にさらされているすべての人々を支えてくれることを願っています。難民の間に差があってはなりません。どの国の人々であっても平等であるべきです。ウクライナ、アフガニスタン、どこから来たとしても、すべての人が同じ権利を持つべきです」。

私は取材を終え、席を立った。彼の目には、故郷と家族から引き裂かれた悲しみがにじんでいた。私は静かに祈った——いつの日か、平和が世界に訪れ、誰もが抑圧や不正義、安全のために家族と引き裂かれることのない世界が実現することを。(原文へ

注:この記事に登場する「アフマド」という名前や地名は、関係者の安全を守るために仮名を使用しています。

This article is produced to you by London Post, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

INPS Japan

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2024年、記者が拘束された国:中国、イスラエル、ミャンマーが最悪の加害者に

【国連IPS=タリフ・ディーン】

2024年は、世界中の紛争を取材する記者にとって最も厳しい年の1つとなり、361人が拘束された。これは、2023年に記録された370人に次ぐ歴史上番目に高い数字である。

The first-edition front cover of the book Freedom of Expression. Public Domain.
The first-edition front cover of the book Freedom of Expression. Public Domain.

ニューヨークに拠点を置くジャーナリスト保護委員会(CPJ)が1月16日に発表した新しい報告書によると、2024年において記者拘束が多い国は、中国、イスラエル、ミャンマーであり、続いてベラルーシとロシアが挙げられている、

2024年にジャーナリストが拘束された主な要因は、権威主義的な弾圧、戦争、政治的または経済的不安定さだった。中国、イスラエル、チュニジア、アゼルバイジャンなどの多くの国が、記者の拘束数において新記録を樹立した。

「これらの数字は、私たち全員にとって警鐘であるべきです」 と、CPJのCEOであるジョディ・ギンズバーグ氏は語った。

「ジャーナリストへの攻撃の増加は、ほぼ例外なく、他の自由に対する攻撃の増加に先行します。情報を伝え、受け取る自由、集会や移動の自由、抗議する自由が脅かされるのです。」

「これらのジャーナリストは、政治腐敗、環境破壊、金融不正といった、私たちの日常生活に関わる問題を暴露したことで逮捕され、罰せられているのです。」

アジアは、2014年において拘束されたジャーナリストの数が最も多い地域となり、全体の30%以上にあたる111人が拘束されました。
主な拘束国は中国、ミャンマー、ベトナムであり、アフガニスタン、バングラデシュ、インド、フィリピンでも記者が拘束されています。

中東および北アフリカ地域では合計108人のジャーナリストが拘束され、そのほぼ半数がイスラエルによるものでした。

昨年、国連の法的専門家は、3人のパレスチナ人ジャーナリストの拘束について、イスラエルが国際法に違反していると判断した。

CPJはこれに関連して、イスラエルに対し、長期間の拘束に対する調査と、権利侵害に責任を持つ者の処罰、さらに不当に拘束されたジャーナリストへの補償を求めている。

専門家の見解

作家でありコラムニスト、さらにパレスチナ・クロニクル編集者であり、イスラムとグローバルアフェアセンター(CIGA)の上級研究員であるラミー・バルード博士は、CPJの報告書が世界的な報道の自由の厳しい状況を浮き彫りにしていると述べた。しかし、彼は報告書が状況の規模を完全には把握できていないとも指摘している。

パレスチナ人ジャーナリストに対するイスラエルの扱いは、特に深刻だ。これまでに200人以上のジャーナリストが殺害され、さらに数百人が負傷し、多くの人が投獄され拷問を受けている。このことにより、イスラエルは世界で最も報道の自由を侵害している国の一つであると指摘されている。

「ジャーナリストを標的にすることは、表現の自由に対する広範な弾圧の一環であることを認識することが重要だ。これらの行為は、基本的な人権と市民権の体系的な否定を反映しています。」 と述べられている。

特に懸念されるのは、イスラエルにおける責任追及の欠如だ。他国では報道の自由が侵害された場合に批判や制裁が行われることが多いが、イスラエルの場合は、記者の殺害や拘束、拷問に対してほとんど追及や結果が伴わない。それにもかかわらず、多くの西側諸国の政治指導者は、こうした深刻な違反を無視し、イスラエルを自由と民主主義の模範として称賛し続けている。

「このような報告は、単なる記録にとどまらず、真の責任追及を求めるべきだ。報道の自由を侵害した責任者に対して、関係者全てに圧力をかけるべきです。これが単なるプレスリリースの話題に終わるのではなく、具体的な行動につながるようにしなければなりません。」 とラミー・バルード博士は強調した。

コンシャス・インターナショナルの会長であるジェームズ・ジェニングス博士は、独裁者や専制的な政府は、情報操作(ディスインフォメーション)を生存の手段として利用していると述べた。

「新聞、テレビ、インターネットを支配することが、彼らの生存に不可欠であると理解しています。そのため、こうした国々で真実を伝える記者であることは危険を伴います」 と博士は述べている。

CPJ

博士は、ロシアでの真実の報道は逮捕につながり、イスラエルでは国外追放、中国、エジプト、ベラルーシ、その他多くの国々では投獄される可能性があると指摘した。特に、過去15か月間にガザで頻繁に記者が命を落としている事例は、真実を伝えることのリスクを物語っている。

「今は専制政治家にとって好都合な時代です。巧妙な政治家たちは、人々の心と頭に直接アクセスできる携帯端末を利用する方法を心得ています。『嘘で溢れさせる』のは簡単ですが、混乱した状況の中で真実を見つけ出すのは非常に難しい。しかし、それが記者の仕事だ。」 と博士は述べた。

ジャーナリズムが「歴史の最初の草稿」と言われる中で、全ての国がジャーナリストを尊重し保護することは有益だとされている。しかし現実には、多くのジャーナリストが長期間の刑罰に直面している。

  • 中国: 長年にわたり世界で最も多くのジャーナリストを投獄している国の一つであり、厳しい検閲により正確な拘束者数を把握するのが難しい状況です。
  • 香港: イギリス国籍の起業家であり、民主派新聞「アップルデイリー」の創設者であるジミー・ライ氏は、2020年以来、香港での孤独拘禁中であり、外国勢力との共謀という報復的な罪状で裁判にかけられている。

他の地域では以下のような状況が報告されている:

  • ベラルーシ(31人)、ロシア(30人)、アゼルバイジャン(13人): 独立系メディアへの弾圧が続いています。
  • トルコ(11人): 上位の拘束国からは外れましたが、独立メディアへの圧力は依然として高い。
  • アフリカとラテンアメリカ: 拘束者数は他の地域に比べて少ないものの、報道への脅威は依然として存在する。メキシコは投獄された記者がいないものの、戦争地帯以外で最も危険な国の一つです。
Press freedom watchdogs say the arrest of Wall Street Journal reporter Evan Gershkovich is a sign of the Kremlin’s greater intolerance of independent voices.
Press freedom watchdogs say the arrest of Wall Street Journal reporter Evan Gershkovich is a sign of the Kremlin’s greater intolerance of independent voices.

2024年のデータによると、拘束されたジャーナリストの60%以上(228人)は、ミャンマー、ロシア、ベラルーシ、タジキスタン、エチオピア、エジプト、ベネズエラ、トルコ、インド、バーレーンを含む国々で、テロや過激主義といった曖昧な反国家的な罪状で起訴されている。特に、これらの罪状は周縁化された民族グループの記者に対してよく適用されている。

CPJは以下のような支援を行っている:

  • 弁護士費用の補助を含む財政支援。
  • 法的嫌がらせや行動に備えるためのリソース提供。
  • 記者の解放を求める活動を通じて、報道の自由への犯罪化を食い止める努力。

CPJはこれらの取り組みを通じて、拘束された記者への支援と報道の自由の擁護を推進している。(原文へ

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