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二人のアフリカ人作家に対する不名誉な非難と『人間の最奥に秘められた記憶』

【ストックホルム(スウェーデン)IPSジャ-ンディウス】

2021年、セネガルの小説家モハメド・ムブガル・サールは、サハラ以南のアフリカ出身の作家として初めて、フランス最古で最も権威ある文学賞であるゴンクール賞を受賞した。

文学

彼の小説『La plus secrète mémoire des hommes(人間の最奥に秘められた記憶)』は、パリに住む若きセネガル人作家が主人公だ。彼は偶然、1938年に出版された幻のセネガル人作家T.C.エリマーヌの小説に出会う。この作家はかつてパリのメディアから絶賛されていたが、その後忽然と姿を消した。

エリマーヌは失踪する前に盗作の疑いをかけられ、その結果として訴訟に敗北。彼の出版社は、小説『非人道の迷宮』のすべての在庫を回収・破棄することを余儀なくされた。しかし、いくつかの極めて希少なコピーが残され、それを読んだ者に深い影響を与えた。

小説の主な主人公(他にも数人の登場人物がいる)は、最終的にフランス、セネガル、アルゼンチンにわずかな足跡を残した幻のエリマーヌを追い求め、絶望的な旅に巻き込まれていく。

多声的で精緻なサールの小説、アフリカ文学に横たわる疑問

サールの多面的で巧みに書かれた小説を読むと、多様な声が入り混じり、調和したり、矛盾し合ったりする「合唱」に出会う。この物語は迷宮のように変化し、フィクションと現実の境界が曖昧になり、未解決の謎が残される。サールは世界文学の大海原を自由に航海しているかのようで、あらゆる重要な作品を読んでいるように思える。作品中の暗示は明白なものもあれば、見えないままのものもある。最終的にこの小説は、神話と現実、記憶と現在の境界、そして最も重要な問い―「物語とは何か?」「文学とは何か?」―を探求する。それは「真実」に関わるものなのか、それとも現実のパラレルなバージョンを構築するものなのか?

この魅惑的な物語の表面下には、不穏な問題が浮かび上がる。なぜサール以前の二人の優れた西アフリカの作家が、盗作の疑いで厳しく批判され、非難されたのか?なぜ彼らは「アフリカ的でない」とされたのか?アフリカの作家たちは、文学界の偏見に満ちた評価により、異国的な珍品として扱われる運命にあるのだろうか?ノーベル賞を受賞したナディン・ゴーディマーJ.M.クッツェーのような白人作家を除き、アフリカの作家たちはヨーロッパ文学の模倣者と見なされ続けるのだろうか?

人間の最奥に秘められた記憶』と、実際の作家たちの苦難

『人間の最奥に秘められた記憶』は不穏な前史を持ち、ギニアの作家カマラ・ライエや、同じく不幸な境遇にあったマリのヤンボ・ウオロゲムの実体験を反映している。

15歳の時、カマラ・ライエはフランス植民地ギニアの首都コナクリに移り、機械工学の職業教育を受けた。1947年、彼はパリに渡り、さらに機械工学を学んだ。1956年、カマラ・ライエはアフリカに戻り、ダホメ(現ベナン)、ゴールドコースト(現ガーナ)、そして独立したばかりのギニアで政府の職務を歴任した。しかし1965年、政治的迫害を受けてセネガルに亡命し、故郷に戻ることはなかった。

1954年にカマラ・ライエの小説『王の視線(Le regard de Roi)』がパリで出版され、当時「アフリカから生まれた最高のフィクション作品の一つ」と評された。この小説は非常に奇妙で、現在もその特異性を保っている。特に、主人公が白人であり、物語が彼の視点で展開される点が注目さる。

主人公のクラレンスは、故国でほとんどのことに失敗した後、アフリカで一攫千金を目指して到着する。しかし、ギャンブルで全財産を失い、ホテルを追い出された彼は、アフリカの奥地に裕福な王がいるという伝説を追う決心をする。その王が彼を支援し、仕事や人生の目的を与えてくれると信じていたのだ。

ライエの小説は、人間が神を求める寓話となっている。クラレンスの旅は自己実現への道へと発展し、一連の夢のような屈辱的な経験を通じて知恵を得る。その経験はしばしば厳しく、時には悪夢のようだが、物語には時折、滑稽で魅力的なユーモアが差し込まれている。

しかし、一部の批評家はこれが本当にアフリカ文学なのかと疑問を投げかけた。その言語は魅力的にシンプルだったが、寓話的な語り口はキリスト教的であるとされ、アフリカの伝承は「表面的」であり、語り口は「カフカ的」だとされた。アフリカの作家の中にも、ライエがヨーロッパの文学的手本を「模倣している」と考える者がいた。ナイジェリアの作家ウォーレ・ショインカは、『王の視線』をカフカの小説『城』の弱い模倣であり、それをアフリカに移植したものだと特徴づけた。さらに、フランスでは、若いアフリカ人の自動車整備士が『王の視線』のような奇妙で多面的な小説を書けるはずがないという疑念が広がったのだ。

アフリカ文学への辛辣な非難―ライエとウオロゲムの不遇な運命がサールに与えた影響

カマラ・ライエの『王の視線』は、その興味深い天才的な作品であるにもかかわらず、容赦ない非難の対象となった。この非難は次第に激化し、最終的には米国の教授アデル・キングによる決定的な研究により、彼の名声に致命的な打撃が与えられた。1981年、キングは『The Writing of Camara Laye』で、『王の視線』が実際にはフランシス・スーレという反逆的なベルギーの知識人によって書かれたものであると「証明」した。スーレはブリュッセルでナチスや反ユダヤ主義のプロパガンダに関与し、第二次世界大戦後にフランスへ逃れざるを得なくなった人物である。

キングによると、スーレは出版社プロンの編集者ロベール・プーレと共謀し、自身の小説を若いアフリカ人作家が書いたものとして発表することで、その成功を確実にしたとされている。彼女はライエのフランスでの生活を詳細に追跡し、彼がプロン社から『王の視線』の著者として行動するために報酬を受け取ったと結論付けた。

キングは、ライエの小説が「アフリカ的ではなく、ヨーロッパ的な文学形式を持っている」と述べ、これがスーレの作品であることを示唆した。しかし、スーレの文学的成果は非常に乏しく、ライエが他にも優れた小説を執筆している事実を無視している。キングはまた、ライエがスーフィズムの伝統に由来するメシア的なテーマを持つことを無視し、「カフカ的な」要素もライエ自身がフランツ・カフカに影響を受けた可能性を排除した。

これらの疑わしい仮定にもかかわらず、キングの結論は広く受け入れられ、2018年にはクリストファー・ミラーの著書『Impostors: Literary Hoaxes and Cultural Authenticity』にも目立つ形で引用された。

ヤンボ・ウオロゲムの『暴力の義務』への激しい非難

1968年には、西アフリカのもう一人の優れた作家ヤンボ・ウオロゲムが、画期的な小説『暴力の義務(Le devoir de violence)』で同様の運命をたどった。この作品は、アフリカの架空の王国(現在のマリに類似)における700年にわたる暴力の歴史を扱い、流れるような一級の筆致で極端な暴力、王室の圧政、宗教的迷信、腐敗、奴隷制度、女性器切除、レイプ、女性嫌悪、権力の乱用を描写した。また、真の愛や調和のエピソードも交えながら、強力で腐敗したアフリカのエリートが植民地勢力と共謀して富を築いた様子を容赦なく描いている。

この小説は、一部の批評家や作家、特に「ネグリチュード」の支持者から激しい反発を招いた。ネグリチュードはフランス語圏の知識人たちによって発展した文学理論で、アフリカの独自文化を強調したが、ウオロゲムはこれを「ネグライユ」と揶揄し、アフリカの人々に従属的で劣等感を植え付けると非難した。

最終的には、尊敬される作家グレアム・グリーンがウオロゲムの『暴力の義務』に対して訴訟を起こし、作品が彼の小説『It’s a Battlefield』の一部を盗用していると主張した。グリーンは訴訟で勝訴し、フランスで『暴力の義務』は出版禁止となり、全ての在庫が破棄された。この結果、ウオロゲムは小説を書くことをやめ、故郷マリに戻り、最終的には隠遁生活を送った。

サールの小説に影響を与えた二人の作家の運命

モハメド・ムブガル・サールの『人間の最奥に秘められた記憶』は、こうした二人の西アフリカ作家の運命を想起させている。サールの小説では、セネガルとフランスという二つの異なる世界の間で揺れる若い作家が描かれている。彼は文学の世界で慰めを見出し、エリマーヌの小説という「宝石」に出会う。しかし、エリマーヌの正体を追い求める彼の旅は虚しく終わり、その過程で彼自身のアイデンティティ探しもまた無駄に終わってしまう。この物語は、私たちが生きる世界という迷宮の中で、自分自身を見つけることの難しさを象徴している。

サールの作品は、前例の作家たちが「本物ではない」とされ、「盗作」と非難された運命を反映しつつ、グローバル化した世界の中で何が「本物」なのかを問いかけている。(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau

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タジキスタン探訪:未踏の自然美と文化遺産を解き明かす旅

【ロンドン/ドゥシャンベLondon Post】

サイドフ・ウメッドジョン氏(34歳)は、タジキスタン国立大学で外交を専攻し卒業した人物だ。これまでに、タジキスタン外務省傘下の国営企業「タジク外交サービス」の責任者や、内務省観光政策部門での役職などを歴任してきた。彼は「キングツアー」および「ディヨールトラベル」の創設者であり、現在は「ソマンエア」の子会社である「ソマントラベル」の総支配人を務めている。
ウメッドジョン氏は英語、ロシア語、ウルドゥー語、アラビア語に堪能で、40カ国以上を訪れた経験があり、国際観光展示会にも積極的に参加している。また、「情報セキュリティと国際協力」に関する博士号取得を目指して研究を進めている。趣味は読書、旅行、スポーツ。

ロンドン・ポスト: タジキスタンの観光客が見落としがちな隠れた名所を教えてください。

サイドフ・ウメッドジョン: タジキスタンには、素晴らしい自然の景観と豊かな文化遺産があり、多くの知られざる名所があります。

  1. カロン高原: 独特な岩の形状、洞窟、ペトログリフがあり、ハイキングに最適。
  2. チルドゥフタロン渓谷: スレンダーな少女を思わせるピラミッド型の岩が特徴。
  3. イスカンダルクル湖: ファン山地の美しい氷河湖。
  4. ヤグノブ渓谷: ヤグノブ人の独自の文化遺産を保存。
  5. ホジャ・オビ・ガルム: ソ連時代から続くミネラル豊富な治癒効果のある天然温泉保養地。
  6. ガルムチャシュマ: パミール山地のもう一つの療養温泉。
  7. ムルガブ高原: 冒険旅行者向けの壮大な高地の景観。
  8. ペンジケント: ソグド時代の遺跡と近隣のセブン・レイクス。
  9. カラクル湖: 深い青色の水と人里離れた美しさで知られる高地湖。
  10. ヌレクダム: 世界第2位の高さを誇るダムで、ボートや釣りに最適。
  11. サラズム: 初期人類文明を示すユネスコ世界遺産。

これらのスポットは、タジキスタンの自然美と文化遺産を存分に楽しむための本物の体験を提供します。

London Post

LP: あなたのツアーでは、持続可能で地元のコミュニティ支援という側面ではどのような配慮がなされていますか?

SU: 私たちは地元のビジネス、ガイド、サービスプロバイダーと提携し、観光収益を地域社会に還元して地元経済を活性化させています。ツアーは文化遺産の尊重と保存を重視し、責任ある観光を促進し、環境への影響を最小限に抑えるエコフレンドリーな方法を採用しています。また、地域開発プロジェクトを支援し、旅行者に持続可能な観光の教育を行い、倫理的な野生動物活動を保証しています。これらの原則を統合することで、旅行者にとって充実した体験を提供すると同時に、タジキスタンの地域社会や環境にプラスの影響を与えています。

LP: 御社のツアーを予約すると、観光客はどのようなユニークな体験が期待できますか?

SU: 私たちのツアーでは、タジキスタンの自然美、文化遺産、温かいおもてなしを最大限に楽しむことができます。ユニークな体験としては、地元の家族が作る伝統料理の味わい、料理教室でのレシピ学習、地元市場での特産品探索、文化的な祝祭での食事などがあります。壮大な景色から豊かな文化的伝統まで、タジキスタンの魅力を満喫できる包括的な体験を提供します。

London Post

LP: タジキスタンの観光産業は近年どのように進化しましたか?また、今後どのようなトレンドが予測されますか?

SU: タジキスタンはその素晴らしい自然の景観、豊かな文化遺産、歴史的重要性により、ユニークな体験を求める国際的な旅行者にとって人気の目的地となっています。険しい地形、特に壮大なパミール山脈は、トレッキング、登山、ホワイトウォーターラフティング、マウンテンバイクに興味のある冒険家を引きつけています。観光インフラの強化、文化祭の推進、環境に配慮した取り組みの強調が、タジキスタンの魅力を高めています。環境問題への関心が高まる中、エコツーリズムの需要が増え、国立公園や保護地域がさらに注目されるでしょう。コミュニティベースの観光、インタラクティブな文化体験、個別対応の旅行サービスが、タジキスタンをますます魅力的な目的地として位置づけています。

LP: 旅行中にお客様の安全と満足をどのように確保していますか?

SU: お客様の安全と満足は最優先事項です。経験豊富で認定を受けた現地ガイドが、応急処置や緊急対応のトレーニングを受けており、天候、道路状況、潜在的な危険を考慮してツアーを綿密に計画します。衛生管理にも重点を置き、消毒済みの交通手段や宿泊施設、健康ガイドラインの遵守を徹底しています。メンテナンスの行き届いた車両を使用し、観光警察(MIA RT)のユニットと協力して24時間体制のサポートを提供します。安全ブリーフィングや包括的な旅行保険の推奨も標準です。お客様の好みに合わせたツアー設計、安全で快適な宿泊施設の選択、そして没入型の文化体験を提供します。明確なコミュニケーション、顧客からのフィードバック、衛生的な地元料理により、満足のいく旅行体験を保証しています。私たちの専任チームは、旅行が良い思い出で満たされるよう努めています。

LP: お客様がツアーで楽しめるユニークな食の体験を教えてください。

SU: タジキスタンの本格的な味を体験できるのは、家族が作るプロフ、クルトブ、シャシリクなどの地元料理を楽しむことから始まります。また、伝統的なレシピを学べる料理教室にも参加できます。新鮮な農産物や乾燥果物が並ぶ活気ある市場を探索し、地元の美味しいものを味わうこともできます。お祝いの際には、タジク文化に浸ることのできる豪華な食事を楽しむことができ、同国の豊かな食文化に没頭できます。

LP: 提供する宿泊施設について教えてください。また、それがどのように旅行体験を向上させるか説明してください。

SU: タジキスタンでは、都会の中心地にある快適さと地元の魅力を兼ね備えた豪華な5つ星ホテルから、地方の家庭的で居心地の良い宿泊施設まで、多様な選択肢を提供しています。それぞれの宿泊施設は、地元の家族との交流を通じて文化的な体験を深めることができ、自然豊かな風景の中に位置しています。また、持続可能性を優先しており、活気ある都市部や静かな田園地帯のどちらでも、文化的なつながりを育み、地元の生活や環境への貴重な洞察を提供することで、旅行体験を豊かにします。

LP: 家族旅行、個人旅行、冒険好きの旅行者など、異なるタイプの旅行者にどのように対応していますか?

SU: 私たちは旅行者のニーズに応じてツアーを柔軟に調整しています。例えば、家族連れには子供向けの安全で教育的な体験を提供し、冒険を求める旅行者には険しいトレッキングや刺激的なアウトドア活動を提案します。個人旅行者には、自由な時間を確保しつつ、地元の文化に触れる機会を提供します。多様な宿泊施設や活動の選択肢を通じて、旅行者それぞれの希望に応じた体験をデザインします。

LP: 特に思い出に残るツアーと、その特別な理由について教えてください。

Map of Tajikistan

SU: 特に印象的だったのは、ファン山地でのトレッキングツアーです。経験豊富な現地ガイドとともに、美しい谷、透き通った湖、険しい山道を旅しました。遊牧民の羊飼いと出会い、言葉の壁を越えておもてなしを共有したり、星空の下でキャンプをしたりすることが、特別な思い出となりました。この冒険は、冒険心、発見、文化や自然を通じたつながりという、旅行の本質を象徴するものでした。

LP: タジキスタンを訪れるのに最適な時期とその理由を教えてください。

SU: タジキスタンは美しい風景と豊かな文化遺産を持つ国で、旅行者にとって最適な季節が2つあります。春(4月から6月)は、穏やかな気候、花咲く風景、ナウルズ(ペルシャ起源の新年)などの活気ある祭りが特徴です。秋(9月から10月)は、快適な気候、澄んだ空、美しい紅葉が楽しめ、トレッキングやアウトドア活動に最適です。これらの季節は、タジキスタンの自然美を探索し、その伝統に浸るのに最も適した時期です。

LP: 過去のお客様からのフィードバックについて教えてください。また、それをどのようにサービス改善に活かしていますか?

SU: お客様からのフィードバックを非常に重視しており、それをもとにサービスを継続的に改善しています。知識豊富なガイドに対する称賛、文化に没入する体験への感謝、ツアーのスムーズな運営に対するポジティブな意見など、多くのフィードバックをいただいています。これらを活かして、さらに満足度の高い体験を提供できるよう努めています。

ロンドン・ポスト: サイドフ・ウメッドジョン氏、このオンラインインタビューへのご参加、ありがとうございました。原文へ

INPS Japan/London Post

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核軍縮の現状維持は許されない、人類は大きなリスクにさらされている

【ウィーンINPS Japan=オーロラ・ワイス】

核兵器は、ウラジーミル・プーチンがそれを脅迫の手段として利用し始める以前から、またイスラエルの将軍がガザのパレスチナ人を壊滅させるために使用する可能性を示唆する以前から、さらにはイランがウラン濃縮を進め、それが米国の制裁を招き、そのイスラム国家をさらに孤立させることになる以前から、世界的な脅威であった。

核兵器によるあらゆる脅しは、極めて深刻に受け止めなければならないだけでなく、完全に容認できない無責任な行為である。

その壊滅的な人道的影響と甚大なリスクを考えれば、私たちは核兵器に関するパラダイム・シフトを必要としている。核兵器や核抑止力が安全保障を保証するものではないことは明らかである。

核の脅威はここ数十年で最も高まっている。欧州は、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、かつてないほど核の危険にさらされてきた。近年、ロシアからの核の脅しに恐怖を抱くだけでなく、ウクライナのザポリージャ原子力発電所が損傷することによる核災害の可能性にも不安を感じてきた。

2022年には、ロシア軍が欧州最大の原発であるザポリージャ原発の管理棟や主変圧器に火を放ち、消防士の立ち入りを禁止した。この危機的状況の後、幸いにも国際原子力機関(IAEA)の専門家による監視のもとに置かれているが、ロシアとウクライナは互いにその原発へのテロ攻撃を計画していると非難し合った。この状況に警鐘を鳴らし、「核戦争防止のための物理学者(IPPNW)」は、原発に対する軍事攻撃の禁止を求めた。戦時下で適切な災害対応を行うことは不可能であることを、私たちは認識しなければならない。

核兵器が使用される場合、それが意図的な使用、エスカレーション、あるいは人的・技術的ミスによる誤作動であれ、その結果は壊滅的なものとなることは明白だ。それは、単に即時の破壊や無実の人々の命が失われることにとどまらない。経済への影響や、パニックによる大量の難民発生など、長期的な影響も考慮しなければならない。限定的な核戦争であっても、地球規模の食糧供給が崩壊し、大規模な「核の冬」を引き起こす可能性がある。その結果は想像を絶するものであり、唯一の解決策は予防である。しかし、予防が成功するためには、核兵器の全面禁止が不可欠である。

新たな技術、例えば人工知能やサイバー攻撃の脆弱性も、核のリスクを増大させている。だからこそ、150を超える非核保有国は、核リスクの削減を求めている。その「ゴールド・スタンダード」は、核保有国が核兵器を完全に禁止することである。しかし、核兵器を保有する9か国(アメリカ、ロシア、フランス、中国、イギリス、パキスタン、インド、イスラエル、北朝鮮)は、それを全く望んでいない。それどころか、彼らは大量破壊兵器の改良と核兵器の増強を進めている。現在、世界の核兵器の総数はおよそ13,000発と推定されている。

この現実を変えなければならない。核軍縮の現状維持はもはや許されず、人類全体が取り返しのつかないリスクにさらされている。

私はウィーンでイラン核合意(JCPOA)に関する交渉を取材してきた。その中で注目したのは、米国の代表団はイラン代表団とは直接交渉せず、他の関係国が仲介する関節交渉を行った点である。日をまたぐ交渉の終盤になると、ロシアの代表が中国とイランを代表して向かいのホテルへ行き、そこに待機していた米国の代表団と制裁解除について交渉したのだった。

この合意の支持者たちは、JCPOAがイランの核兵器計画の再開を防ぐことに寄与し、それによってイランとイスラエルやサウジアラビアといった地域のライバル国との対立の可能性を低減させると主張している。しかし、2023年初頭に国連の査察官が、イランが兵器級に近いウランを濃縮している痕跡を確認し、国際社会に衝撃を与えた。イランが正式に核兵器保有国となれば、安全保障上の理由からサウジアラビアやイスラエルも核開発を進めることになり、中東における核戦争の可能性を高めることになるだろう。

そのリスクにもかかわらず、核保有国はますます核兵器を強化し、核を持たない国々も厳しい制裁の下で開発を進めている。そして、核兵器を持たない国々は、核保有国の軍縮を求めている。では、核を保有しない北大西洋条約機構(NATO)加盟国はどのような立場をとっているのだろうか?

NATO加盟国の中で、近い将来に核兵器禁止条約(TPNW)に署名する国が現れる可能性は低い。NATOはこれまで、TPNWは核不拡散条約(NPT)と両立しない」という理由で、この条約に関する会合への建設的な関与を拒んできた。しかし、これは事実ではない。

NATOは依然として核兵器を安全保障の要と見なしている。しかし、軍縮の専門家たちは、「人為的なミス(意図的か非意図的かを問わず)、技術的なエラー、サイバー攻撃などによって、いつか必ず何かが起こる」と警告している。核兵器を保有し、貯蔵すること自体が、あまりにも大きな安全保障上のリスクなのだ。

2025年1月20日に米国大統領に再就任したドナルド・トランプは、既にいくつかの過激な行動に出ている。国際人道支援団体への援助を打ち切っただけでなく、グリーンランドやカナダを米国に併合しようとするという衝撃的な野望まで抱いている。国際社会は、トランプの野心がどこまで広がるのか、そして彼がそれを実現するためにどのような手段を用いるのか、極めて危機感を持って見守っている。このような世界的に不安定な時代において、ほんのわずかな誤った判断が核戦争につながる可能性がある。

米国の歴史を振り返れば、核兵器の使用をためらわない姿勢がうかがえる。映画「オッペンハイマー」を観た人なら、核爆弾の開発者がホワイトハウスを訪れた際、ハリー・トルーマン大統領が「自分こそが原爆を投下した大統領として歴史に名を刻む」と誇らしげに語るシーンを思い出すだろう。トルーマンは、その結果がどうであれ、歴史に名を残すことを誇りにしていた。

UN
Credt: UN

しかし、核兵器の使用を命じた米国大統領はトルーマンだけではない。それ以降も、多くの大統領が核の使用を検討していた。

ダニエル・エルズバーグの著書『終末兵器』を参考にすれば、米国の核戦略が70年にわたってどのように維持されてきたかがわかる。エルズバーグはかつて大統領顧問を務め、ベトナム戦争時の「ペンタゴン・ペーパーズ」を暴露した伝説的な内部告発者である。彼が明かしたところによると、1960年代、酔った状態のリチャード・ニクソン大統領は北朝鮮への核攻撃を命じたことがあった。米国の偵察機が撃墜されたことに激怒したニクソンは、軍司令官に電話をかけ、戦術核攻撃の標的を指定した。だが、当時の国家安全保障担当補佐官であるヘンリー・キッシンジャーが軍と交渉し、ニクソンが酔いから覚めるまで待つように説得したという。

その後のニクソンは、ソ連に向けて核爆弾を搭載した爆撃機を飛ばし、「自分は本当に第三次世界大戦を始めるかもしれない狂人だ」という噂を流すことで、敵国を威嚇しようとしたとされる。

現在の米国の政策では、大統領が核攻撃を命じることにほぼ制限がない。軍は戦争法に違反すると判断した命令を拒否することができるが、一般的な理解として、大統領はいつでも、どんな理由でも核兵器を発射できる権限を持っている。

この現状を変えるためには、「先制不使用(NFU)」政策の採用が急務である。この政策は、米国が核兵器を「先に使わない」と明確に定めるものであり、同時に議会の戦争宣言権限を再確認するものでもある。米国の憲法には「大統領が単独で戦争を始めることはできない」と明記されている。それにもかかわらず、大統領が単独で核戦争を始めることができる現状は、矛盾していると言わざるを得ない。したがって、NFU政策の導入は不可欠であり、核戦争の危険を未然に防ぐための最も基本的な一歩である。(原文へ

INPS Japan

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成功を調理する:アンゴラでクリーンエネルギーの利用拡大を目指すソーラーキッチン・イニシアチブ

【ルアンダ(アンゴラ)IPS= ジュディテ・トロコ・ダ・シルバ、ヘイラ・モンテイロ】

持続可能な発展にとってエネルギーへのアクセスは欠かせないが、多くの農村地域では依然としてその実現が遠いのが現実である。2019~20年の農業センサスによると、アンゴラの農村部の多くの村では電気へのアクセスがまかった。

83%以上の村では全く電気が利用できず、11%が民間の発電機に頼っている。このような現状は、農村地域の発展を支えるためにより良いエネルギーソリューションが急務であることを示している。

Map of Angola
Map of Angola

こうした背景の中、今年初め、UNDP(国連開発計画)アンゴラの3つのチームが、アフリカにおける自然、気候、エネルギー関連プロジェクトを支援する「クラウドファンディング・アカデミー」に参加した。このアカデミーは、UNDP外部関係・アドボカシー局とIRH(イノベーション・アクセラレータ)- オルタナティブファイナンスラボの支援を受けている。

この取り組みを通じて、UNDPアンゴラは初のクラウドファンディングキャンペーン「ソーラーキッチン:正しいエネルギーで料理を!」を開始した。

このキャンペーンは地域的な取り組みの一環であり、同じテーマの下で地域内でさらに多くのキャンペーンが展開される予定だ。他国とともに、「ソーラーキッチン」キャンペーンはUNDPアフリカの新たな#SwitchItクラウドファンディングイニシアチブの一部となる。

これは、2025年までに持続可能で手頃な価格で信頼性の高いエネルギーをさらに5億人に提供し、公正なエネルギー移行を促進することを目指したUNDPの「エネルギー・ムーンショット」の一環である。このイニシアチブは、経済的エンパワーメント、ジェンダー平等、生活の質の向上への道筋としても機能している。

ソーラーキッチンはどのように変化をもたらすのか?


アンゴラでは、多くの女性が農業に従事し、作物の生産を通じて家族を支える生活を送っている。しかし、電気が利用できないことから、重大な課題に直面している。例えば、アンゴラ南部のフイラ州カクラ自治体では、女性たちがカボチャやサツマイモなどの収穫物を効果的に生産・保存することに困難を感じており、その結果、収穫物が定期的に損失してしまう状況にある。

ソーラーキッチンを通じた農業生産の向上と持続可能な生計の創出

ソーラーキッチン・イニシアチブは、太陽光発電を利用したキッチンや水、加工設備などの資源へのアクセスを改善することで、農業生産を向上させ、持続可能な生計を創出することを目指しています。

地元の協同組合を率いるイザベルさんやマリアさんのような女性たちは、直接的な恩恵を受けることが期待されている。エネルギーへのアクセスを得ることで、生産性を高め、耕作面積を拡大し、経済成長に投資することが可能になる。

カクラ自治体でのパイロットプロジェクトでは、直接的に47人の女性により良い生活・労働環境を提供し、78世帯が食料安全保障の向上や収入創出の恩恵を受けると見込まれている。また、地元の学生を含む約468人がクリーンエネルギーにアクセスできるようになる。

さらに、より良いツールやトレーニングへのアクセスを通じて、協同組合は耕作面積と農業生産が250%増加する可能性がある。このような成果は、フイラ州の他の地域でも確認されている。

これらの女性たちはソーラーキッチン・イニシアチブの成功の鍵を握っている。

アンゴラの農村部では、女性たちが農業の多くを担い、農場を管理し、家庭や協同組合を運営している。しかし、エネルギーへのアクセスがないことで、無給の時間がかかる労働に縛られ、成長の機会が限られているのが現状である。

ソーラーキッチン・キャンペーンは、女性たちが困難な作業に費やす時間と労力を軽減し、ビジネスを改善したり個人の成長に集中する自由を提供する。このイニシアチブは、インフラと資源アクセスのギャップに対処することで、農村地域が繁栄できるエコシステムを構築する。

あなたにできること

SDGs Goal No. 7
SDGs Goal No. 7

「ソーラーキッチン:正しいエネルギーで料理を!」キャンペーンの成功は、共同の行動にかかっている。寄付を通じて、またはこのキャンペーンをネットワーク内で共有することで、あなたの支援が持続的な変化を生み出す。共に、イザベルさんやマリアさんのような女性をエンパワーし、農村経済を強化し、持続可能な発展をアンゴラにもたらしましょう。」

正しいエネルギーで料理をし、より持続可能なアンゴラへの道を、一つのソーラーキッチンから切り拓いていきましょう。

ソーラーキッチン・イニシアチブは、UNDPアンゴラのより大規模なイニシアチブ「クリマ – 農村経済の変革を受け入れる」 の一部である。この取り組みは、クリーンエネルギーへのアクセスの改善、農業生産性の向上、包括的な金融およびデジタルサービスの促進に焦点を当てている。この包括的な努力は、特に女性主導の協同組合が直面する体系的な課題に取り組むことで、農村地域のコミュニティをエンパワーすることを目指している。(原文へ

ジュディテ・トロコ・ダ・シルバ(UNDPアンゴラ 探索部門長),ヘイラ・モンテイロ(UNDPアンゴラ コミュニケーション&アドボカシー専門官)

INPS Japan/ IPS UNBUREAU

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世界第5位の経済大国が直面する課題

【ニュージャージーIPS=ジブ・トーマス】

インドは世界第5位の経済大国として台頭し、中国を抜いて世界で最も人口の多い国となった。しかし、この急速な成長には課題も伴っている。失業率の上昇とインフレが深刻化し、人口ボーナスや7~8%のGDP成長率を維持するという野心的な目標に影を落としている。

2050年までに推定17億人に達すると予測される人口増加は、雇用の弾力性、貧困率の上昇、都市の混雑、環境汚染、天然資源の枯渇といった問題をさらに深刻化させる。これらの課題は、生態系の不可逆的な破壊を引き起こし、種や生息地の微妙なバランスを脅かし、公衆衛生や持続可能性に深刻な影響を及ぼすリスクがある。

Map of India
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こうした状況で、特に活気ある若者層の増加を抱える中、持続可能な開発を追求することは急務かつ困難な課題だ。一つの効果的で費用対効果の高い解決策は、人間の環境負荷を意識的に減らすことである。人口計画を気候変動対策や持続可能な開発目標(SDGs)に統合し、長期的な政策を策定して地球を守ることが急務である。

これには、人口に関する議論を広範な環境戦略に組み込むこと、女性を教育と生殖医療へのアクセスを通じてエンパワーメントすること、高出生率地域にターゲットを絞ったイニシアチブを立ち上げ、政府、NGO、地域社会間の協力ネットワークを構築することが求められる。

現在のインドの人口構造は重要な岐路に立っており、急速に増加する人口を管理することが大きな課題となっている。過去50年間でインドの人口はほぼ3倍に増加し、未来に対する深刻な懸念を引き起こしている。世界人口の18%が地球のわずか2.4%の土地面積に集中しているため、さらなる人口増加を受け入れることは急務であり避けられない課題である。

この問題は国内で対立する見解を引き起こしており、増加する労働年齢人口を人口ボーナスとみなす意見もあれば、潜在的な危機として直ちに対応が必要だとする意見もある。

現在の人口動向は緊急性を帯びており、雇用創出に向けた即時の行動が求められている。失業率は8.5%に達し、多次元的貧困指数(MPI)によると14.9%が貧困状態にある。また、総資産の60%以上を上位10%が保有し、下位50%の資産は減少しているという深刻な富の格差がある。

教育システムは人口増加に対応しきれず、2022~23年には120万人以上の子どもが学校に通えない状況である。都市化が進む中、インフラや基本サービスへの負担が増大している。公的医療費はGDPの2.1%にとどまり、普遍的な医療保障の必要性が浮き彫りになっている。増加する人口は耕作可能な土地に大きな圧力をかけ、土地の劣化を悪化させ、資源基盤に影響を及ぼしている。

さらに、人口増加と富の増大によりエネルギー生産と消費が急増し、大気汚染や地球温暖化が進行している。これらの環境問題は公衆衛生に大きな影響を与え、持続可能な開発を妨げている。

緑の革命による農業生産性の向上にもかかわらず、多くの人々が適切な栄養を十分に得られない状況に直面しており、食料持続性への対処が急務である。増加する人口は、損傷を受けた生態系にさらなる負担をかけ、その回復力を低下させ、疫病、土壌の砂漠化、生物多様性の喪失のリスクを高めている。

現在のインドの人口構造は、約5億人の労働年齢人口を抱え、中国の人口減少に対して大きな発展の可能性を示している。しかし、インドの人口増加は、比較的狭い国土面積と中国より低いGDPという課題を伴う可能性がある。

中国の一人っ子政策が急速な経済成長をもたらした一方で、インドの出生率に関してはさまざまな見解が存在している。報告によれば、インドの出生率は人口置換水準の2.1を下回っているとのことだ。一部では人口政策を支持する声がある一方で、1980年代にインドで行われた強制的な人口政策への歴史的な反発を引き合いに出し、その必要性を疑問視する声もある。

2022~23年の7.2%という成長率は600万人分の雇用を生み出したが、労働人口は1000万人増加しており、「雇用なき成長」が課題となっている。出生率が低下しているにもかかわらず、「人口モメンタム」の影響により、インドの人口は必ずしも減少しないと科学モデルは予測している。

1970~80年代には、多様なメディアや公的なアウトリーチを通じて家族計画を推進する取り組みが一定の成果を上げた。しかし、これらのイニシアチブの効果は時間の経過とともに薄れ、制御されていない人口増加の問題は依然として重要な課題として残っている。

この問題に取り組むことへの消極姿勢は、政治的、宗教的、文化的な懸念に深く根ざしている。急速な経済成長と科学技術の進歩が人間活動を活発化させ、人口管理を困難にしている。持続可能な開発のためには人間の人口増加を規制することが重要であり、1960年代の歴史的な証拠は、人口増加が制御されない場合、資源の枯渇を招くことを示している。

人間の人口管理に失敗すれば、植林やインフラ開発の努力が損なわれる可能性がある。また、特に教育を受けた若者が限られた機会に直面している状況では、失業が増えると政治的暴力の増加につながることが指摘されている。

インドは2070年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという野心的な目標を掲げているが、人口が20億人に達するという予測がある中で、この目標を達成することは容易ではない。2024年のUNDP(国連開発計画)の調査によれば、インド国民の77%が、より強力な政府の気候変動対策を求めている。

I=PATフレームワークは、環境への影響(I)が人口規模(P)、富裕度(A)、および技術(T)によって影響を受けることを強調している。現在、インドの中間層は人口の31%を占めており、2031年には38%、2047年には60%に成長し、一人当たりの消費が増加すると予測されている。このフレームワークの中で、直接管理できる唯一の変数は人間の環境負荷(P)であることに注意が必要だ。

しかし、この問題の複雑な性質や社会的枠組みを考慮すると、個人に環境への悪影響が少ない行動を取るよう説得するだけでは効果が薄く、場合によっては逆効果になる可能性がある。したがって、人口増加の議論を環境問題の対話に統合し、その汚名を取り除くことが急務である。

政府、地域社会、個人が協力して積極的な対策を取る責任を共有する必要がある。 私たちの焦点は、システムや構造を変更し、地域社会が自主的に1年間の出産を控えるよう奨励することに移行すべきだ。これにより、大規模な行動変容を促進することができる。

特に、人口過密の州、特に北インドの高出生率地域に焦点を当て、これらの地域での避妊具や家族計画サービスへのアクセスを緊急に改善する必要がある。

SDGs Goal No. 5
SDGs Goal No. 5

ケララ州の事例は、女性が教育、医療、子供の数をコントロールする力を持つ場合、出生率が低いことを示している。 教育を受けた女性は一般的に子供の数が少なく、これはジェンダー平等が進展していることも示唆している。女性のエンパワーメントと意思決定への積極的な参加は、人口増加を大幅に抑制する可能性があり、より持続可能な未来への希望を提供している。

結論として、インドの人口増加、環境持続性、公衆衛生の相互作用は、即時かつ戦略的な対応を必要とする複雑な課題を提示している。 この問題に効果的に対処するために、次のような措置を提案する。

  1. 人口議論の統合: 政策立案者、環境活動家、地域リーダーを結びつけるフォーラムやパートナーシップを確立し、人口増加を広範な環境戦略に組み込む。
  2. 女性のエンパワーメント: 教育プログラムに投資し、高出生率地域での生殖医療サービスへのアクセスを拡充して、女性が家族に関する意思決定を行えるよう支援する。
  3. ターゲットを絞ったイニシアチブの実施: 人口過密地域での出生率削減に焦点を当てた政府の取り組みを開発・支援し、地域レベルで持続可能な実践を促進する。
  4. 協力の促進: 政府、NGO、地域社会間のパートナーシップを奨励し、意識的な生活とエコフレンドリーな実践を推進する。
UN Photo
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今こそ、目的を持って行動する時だ。 今日の集団的な決断が、将来世代の生活の質を決定する。これらの提言を採用することで、国は繁栄だけでなく、すべての市民の幸福も保証する遺産を築くことができる。

シブ・トーマス博士。M.D.S、M.S。ニュージャージー州在住の独立系グローバルヘルスおよび国際安全保障アナリスト。シートン・ホール大学外交・国際関係学部卒業生、アジュマーン大学元准教授(アラブ首長国連邦)。

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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アフマド*の自由への旅
【ロンドンLondon Times=ラザ・サイード】

ロンドンの片隅、小さな薄暗い部屋で静かに座る一人の35歳の男性。彼の目には、故郷を追われた過去の記憶が映っている。彼の名前はアフマド。アフガニスタンから英国へと至る彼の旅は、生存と喪失、そして家族と再会することへの揺るぎない希望に満ちている。

アフマドがアフガニスタンを脱出したのは、タリバンが政権を掌握するわずか2週間前の2021年。「恐怖でいっぱいでした」と彼は振り返る。「もし彼らが来たら、私は殺されていたでしょう」。その理由は、彼がアフガニスタンの子どもたちのための教科書を出版する開発・教育団体で働いていたことだった。タリバンは彼を民主主義を推進する者とみなし、これらの教科書を「西側の陰謀」だと非難した。そして警告の手紙を送られてきたとき、彼は自分の命が危険にさらされていることを確信した。

「自分の村にすら戻ることはできなかった」と彼は言う。「そこに行けば、間違いなく殺されていた」。彼の妻は彼の命を案じ、苦渋の決断を下した。「せめてあなたが生きていてくれれば」と、彼女は彼に逃亡を促した。アフマドの旅立ちは、苦い別れでもあった。妻と2人の子ども、そして生まれたばかりの娘を残しての逃避行だった。

英国への道のりは命がけだった。「100%危険な旅でした」と彼は語る。危険なルートを辿る中、何日も食事を取れないこともあり、木の葉を食べて飢えをしのいだ。密航業者たちに支配され、行動のすべてを決められた。「彼らの言いなりでした。暴力を振るわれ、罵られ、人間として扱われませんでした」。道中、多くの家族が再会を願いながらも恐ろしい目に遭うのを目の当たりにした。女性や少年が暴力の犠牲になり、国境警備隊に捕まれば命の危険もあった。

数か月に及ぶ過酷な旅の末、アフマドはようやく英国に辿り着いた。彼は人で溢れかえった小さなボートで英仏海峡を渡った。「定員8人のボートに30人以上が乗っていました」と、彼は重い口調で語る。「英国の沿岸警備隊には感謝しています。もし助けてもらえなかったら、今ここにはいなかったでしょう」。

彼が英国に到着した同じ日、妻は緊急帝王切開で出産していた。「電話をしたけれど、妻は衰弱していて話すこともできなかった」。離ればなれの生活は苦痛だった。長女は父がなぜいなくなったのか理解できず、「どこにいるの?早く帰ってきて!」と訴え続けた。

英国に到着したアフマドは、すぐに亡命を申請し、拘留センターへと収容された。そこでは5ポンドと家族と連絡を取るための携帯電話が支給された。その後の生活は苦難の連続だった。彼はホテルや共同宿泊施設を転々とし、食事を取るのがやっとの状態で、他のことにお金を使う余裕などなかった。「仕事をして自立したかったし、政府の負担を減らしたかった。でも就労許可がなく、何もできませんでした」と彼は嘆く。

到着から2年後、アフマドは難民認定を受けた。「ショッピングセンターにいるときに電話を受けました。人生が変わる瞬間でした」と彼は振り返る。しかし、その喜びは長くは続かなかった。政府の提供する住居を14日以内に退去せねばならず、彼は2晩ダイニングルームで寝ることを余儀なくされた。その後、親切な友人が彼を受け入れてくれたものの、「友人の家に来客があるときは、車の中で寝ることもあります」とアフマドは打ち明ける。

それでも彼は希望を捨てていない。今では仕事を持ち、未来を築く夢を抱いている。しかし、彼の最大の願いはまだ叶っていない——妻と娘たちを安全な場所に呼び寄せることだ。法的手続きは遅々として進まず、子どもたちのアフガニスタンのパスポートを取得するのに6か月もかかった。妻は毎日、当局から夫の不在について問い詰められ、大きなストレスを抱えている。「もう3年です。夫婦が離れて生きていくことはできません」と彼は嘆く。

アフマドの家族はいまだタリバン支配下のアフガニスタンで暮らしている。妻は一人で外出することすら許されず、子どもたちのための牛乳を買いに行くこともできない。ストレスは限界に達している。「妻は、ちょっとした用事でも誰かに頼まなければなりません。耐え難い状況です」とアフマドは言う。

それでも、アフマドは決して諦めない。彼は英国に貢献し、難民が求めているのは施しではなく、機会であることを証明したいと考えている。「人々は、私たちが福祉目当てで来ていると思っています」と彼は言う。「でも、誰も好き好んで故郷を捨てたりしません。本当に選択の余地がないからこそ、私たちはここにいるのです」。

Map of Afghanistan
Map of Afghanistan

彼は、難民のための法的な移動ルートの必要性を訴える。それは難民のためだけではなく、英国の安全保障のためでもあると考えている。「安全な合法的ルートがあれば、人々は命を危険にさらして密航しなくて済みます。英国も、誰が来るのかを事前に確認できます。ほとんどが女性や子どもで、彼らは極めて危険な状況に置かれています」と彼は説明する。

アフマドの物語は、人間の精神の強さを示している。彼は、いつの日か家族と再会し、英国社会に貢献できる未来を夢見ている。「いつか、この国のために何か良いことをしたい。そしていつか、子どもたちを再び抱きしめたい」と彼は語る。

彼のメッセージは、希望と理解に満ちている。「私は、世界がアフガニスタンの人々、そして危険にさらされているすべての人々を支えてくれることを願っています。難民の間に差があってはなりません。どの国の人々であっても平等であるべきです。ウクライナ、アフガニスタン、どこから来たとしても、すべての人が同じ権利を持つべきです」。

私は取材を終え、席を立った。彼の目には、故郷と家族から引き裂かれた悲しみがにじんでいた。私は静かに祈った——いつの日か、平和が世界に訪れ、誰もが抑圧や不正義、安全のために家族と引き裂かれることのない世界が実現することを。(原文へ

注:この記事に登場する「アフマド」という名前や地名は、関係者の安全を守るために仮名を使用しています。

This article is produced to you by London Post, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

INPS Japan

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2024年、記者が拘束された国:中国、イスラエル、ミャンマーが最悪の加害者に

【国連IPS=タリフ・ディーン】

2024年は、世界中の紛争を取材する記者にとって最も厳しい年の1つとなり、361人が拘束された。これは、2023年に記録された370人に次ぐ歴史上番目に高い数字である。

The first-edition front cover of the book Freedom of Expression. Public Domain.
The first-edition front cover of the book Freedom of Expression. Public Domain.

ニューヨークに拠点を置くジャーナリスト保護委員会(CPJ)が1月16日に発表した新しい報告書によると、2024年において記者拘束が多い国は、中国、イスラエル、ミャンマーであり、続いてベラルーシとロシアが挙げられている、

2024年にジャーナリストが拘束された主な要因は、権威主義的な弾圧、戦争、政治的または経済的不安定さだった。中国、イスラエル、チュニジア、アゼルバイジャンなどの多くの国が、記者の拘束数において新記録を樹立した。

「これらの数字は、私たち全員にとって警鐘であるべきです」 と、CPJのCEOであるジョディ・ギンズバーグ氏は語った。

「ジャーナリストへの攻撃の増加は、ほぼ例外なく、他の自由に対する攻撃の増加に先行します。情報を伝え、受け取る自由、集会や移動の自由、抗議する自由が脅かされるのです。」

「これらのジャーナリストは、政治腐敗、環境破壊、金融不正といった、私たちの日常生活に関わる問題を暴露したことで逮捕され、罰せられているのです。」

アジアは、2014年において拘束されたジャーナリストの数が最も多い地域となり、全体の30%以上にあたる111人が拘束されました。
主な拘束国は中国、ミャンマー、ベトナムであり、アフガニスタン、バングラデシュ、インド、フィリピンでも記者が拘束されています。

中東および北アフリカ地域では合計108人のジャーナリストが拘束され、そのほぼ半数がイスラエルによるものでした。

昨年、国連の法的専門家は、3人のパレスチナ人ジャーナリストの拘束について、イスラエルが国際法に違反していると判断した。

CPJはこれに関連して、イスラエルに対し、長期間の拘束に対する調査と、権利侵害に責任を持つ者の処罰、さらに不当に拘束されたジャーナリストへの補償を求めている。

専門家の見解

作家でありコラムニスト、さらにパレスチナ・クロニクル編集者であり、イスラムとグローバルアフェアセンター(CIGA)の上級研究員であるラミー・バルード博士は、CPJの報告書が世界的な報道の自由の厳しい状況を浮き彫りにしていると述べた。しかし、彼は報告書が状況の規模を完全には把握できていないとも指摘している。

パレスチナ人ジャーナリストに対するイスラエルの扱いは、特に深刻だ。これまでに200人以上のジャーナリストが殺害され、さらに数百人が負傷し、多くの人が投獄され拷問を受けている。このことにより、イスラエルは世界で最も報道の自由を侵害している国の一つであると指摘されている。

「ジャーナリストを標的にすることは、表現の自由に対する広範な弾圧の一環であることを認識することが重要だ。これらの行為は、基本的な人権と市民権の体系的な否定を反映しています。」 と述べられている。

特に懸念されるのは、イスラエルにおける責任追及の欠如だ。他国では報道の自由が侵害された場合に批判や制裁が行われることが多いが、イスラエルの場合は、記者の殺害や拘束、拷問に対してほとんど追及や結果が伴わない。それにもかかわらず、多くの西側諸国の政治指導者は、こうした深刻な違反を無視し、イスラエルを自由と民主主義の模範として称賛し続けている。

「このような報告は、単なる記録にとどまらず、真の責任追及を求めるべきだ。報道の自由を侵害した責任者に対して、関係者全てに圧力をかけるべきです。これが単なるプレスリリースの話題に終わるのではなく、具体的な行動につながるようにしなければなりません。」 とラミー・バルード博士は強調した。

コンシャス・インターナショナルの会長であるジェームズ・ジェニングス博士は、独裁者や専制的な政府は、情報操作(ディスインフォメーション)を生存の手段として利用していると述べた。

「新聞、テレビ、インターネットを支配することが、彼らの生存に不可欠であると理解しています。そのため、こうした国々で真実を伝える記者であることは危険を伴います」 と博士は述べている。

CPJ

博士は、ロシアでの真実の報道は逮捕につながり、イスラエルでは国外追放、中国、エジプト、ベラルーシ、その他多くの国々では投獄される可能性があると指摘した。特に、過去15か月間にガザで頻繁に記者が命を落としている事例は、真実を伝えることのリスクを物語っている。

「今は専制政治家にとって好都合な時代です。巧妙な政治家たちは、人々の心と頭に直接アクセスできる携帯端末を利用する方法を心得ています。『嘘で溢れさせる』のは簡単ですが、混乱した状況の中で真実を見つけ出すのは非常に難しい。しかし、それが記者の仕事だ。」 と博士は述べた。

ジャーナリズムが「歴史の最初の草稿」と言われる中で、全ての国がジャーナリストを尊重し保護することは有益だとされている。しかし現実には、多くのジャーナリストが長期間の刑罰に直面している。

  • 中国: 長年にわたり世界で最も多くのジャーナリストを投獄している国の一つであり、厳しい検閲により正確な拘束者数を把握するのが難しい状況です。
  • 香港: イギリス国籍の起業家であり、民主派新聞「アップルデイリー」の創設者であるジミー・ライ氏は、2020年以来、香港での孤独拘禁中であり、外国勢力との共謀という報復的な罪状で裁判にかけられている。

他の地域では以下のような状況が報告されている:

  • ベラルーシ(31人)、ロシア(30人)、アゼルバイジャン(13人): 独立系メディアへの弾圧が続いています。
  • トルコ(11人): 上位の拘束国からは外れましたが、独立メディアへの圧力は依然として高い。
  • アフリカとラテンアメリカ: 拘束者数は他の地域に比べて少ないものの、報道への脅威は依然として存在する。メキシコは投獄された記者がいないものの、戦争地帯以外で最も危険な国の一つです。
Press freedom watchdogs say the arrest of Wall Street Journal reporter Evan Gershkovich is a sign of the Kremlin’s greater intolerance of independent voices.
Press freedom watchdogs say the arrest of Wall Street Journal reporter Evan Gershkovich is a sign of the Kremlin’s greater intolerance of independent voices.

2024年のデータによると、拘束されたジャーナリストの60%以上(228人)は、ミャンマー、ロシア、ベラルーシ、タジキスタン、エチオピア、エジプト、ベネズエラ、トルコ、インド、バーレーンを含む国々で、テロや過激主義といった曖昧な反国家的な罪状で起訴されている。特に、これらの罪状は周縁化された民族グループの記者に対してよく適用されている。

CPJは以下のような支援を行っている:

  • 弁護士費用の補助を含む財政支援。
  • 法的嫌がらせや行動に備えるためのリソース提供。
  • 記者の解放を求める活動を通じて、報道の自由への犯罪化を食い止める努力。

CPJはこれらの取り組みを通じて、拘束された記者への支援と報道の自由の擁護を推進している。(原文へ

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海外のネパール人は国の社会経済的未来に貢献したいと望んでいるが、ネパールは彼らに多くの面倒な手続きを課している。

【カトマンズ Nepali Times=編集部】

過去1年間に約75万人のネパール人が就業のために海外へ渡った。また、11万2,000人が学生ビザで出国しており、その多くが働いたり移住したりする目的も含まれている。この数字にはインドへ行った人や非公式な手段で出国した人は含まれていない。概算すると、昨年だけで少なくとも100万人のネパール人が国外に出たことになる。

さらに、北米、欧州、オーストラリア、東アジアなどに定住しているネパール人もいる。米国にはネパール系住民が29万人おり、世帯収入の平均は年間10万ドルを超える。

Map of Nepal
Map of Nepal

ネパール人は世界中のほぼあらゆる場所で同胞に出会うことができる。また、彼らが本国に送金する金額は公式ルートだけでも年間110億ドルに上り、実際の額はさらに高いとされている。

1990年代にパスポート発行が地方に分散化されたことで、ネパール人の国際移動が初めて容易になった。2003年には非居住ネパール人協会(NRNA)が設立され、現在では97,000人の会員を持ち、87か国に支部がある。

2008年、ネパール政府は「非居住ネパール人法」を導入し、外国市民権を取得したネパール系個人または2年以上国外に居住しているネパール市民を「非居住ネパール人」(NRN)と分類した。ただし、南アジア地域協力連合(SAARC)加盟国に居住・就業しているネパール人は対象外とされた。

2015年憲法では、海外のネパール人が「連邦法に基づき経済的、社会的、文化的権利を享受できる」と規定された。しかし、議会がネパール市民権(第一次改正)法案を可決し、南アジアを除く海外のネパール人が選挙権や公職就任の権利を除き、ネパール市民と同等の権利を有するようになるまで、さらに8年を要した。

これらの規定は二重国籍ではなく、第二市民権を与えるものとされている。しかし、NRN市民権を取得した人々はその手続きが不要に複雑であると述べている。米国拠点のNRNは、社会保障番号(SSN)がなければネパールの地方行政事務所が第二市民権を発行しないとされているが、米国法ではSSNを国外に開示することを禁じている。NRN市民権を取得した人々は、政府の指示で免除されるはずのビザ料金を支払わされるケースもある。

この制度の目的は、多くの人々がネパールに投資したり、母国で引退生活を送ったりするのを容易にし、それが経済を活性化させることだった。世界中の第1世代、第2世代のネパール移民の多くは、自分たちの子孫が故郷の文化や伝統を知ることを望んでいる。

非居住ネパール人は購入、相続、または投資を通じてネパールで不動産を取得できる。外国市民権を持つ人は10年間有効なビザを取得可能であり、産業や事業を運営したり、銀行口座を開設したり、外国直接投資(FDI)やネパール市民と同様に投資を行ったりできる。また、投資に関しては税金が免除され、投資額や利益を母国に送金することも可能だ。

それにもかかわらず、ネパールの投資環境はネパール系の人々にとっても魅力的とは言えない。官僚的な煩雑さ、制約、賄賂やリベートが随所で発生し、障害となっている。

相続権は紙の上の存在にすぎず、NRN市民が不動産を購入する際には多くの手続きが求められ、多くの人が断念している。2022年の法案にもかかわらず、ネパールは「心の弱い者には向かない(=忍耐力や決意のある人でなければ難しい)国」とNRNコミュニティで評されるようになった。(原文へ

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ロシアの「チャイルドフリー・プロパガンダ」禁止が人権に与える影響

【ブラチスラバIPS=エド・ホルト】

「多くの人々が非常に恐れている」とザリーナ・マルシェンクロワ氏は語った。「これは明らかに抑圧の新たな手段です。国家は、ロシアに残る自由な思考を持つ人々に対して戦争を仕掛け、すべての異議や自由を抑え込もうとしています。」と、ロシアのフェミニスト活動家である彼女はIPSの取材に対して語った。

2022年のウクライナへの全面侵攻直後にロシアを離れ、現在はドイツに住むマルシェンクロワ氏のこの警告は、ロシアで新しい法律が施行された数日後に出された。この法律では、「チャイルドフリー・プロパガンダ」を禁止している。

Map of Russian Federtion.

この法律の下では、対面やオンラインを問わず「子どもを持たないライフスタイル」を促進したり、人々に子どもを持たないことを勧めたりすると見なされた人物、組織、または政府関係者は、多額の罰金を科される可能性があり、場合によっては国外追放されることもある。

議員たちは、この法律が子どもを持たない権利を侵害するものではないと強調しているが、批判者たちは、この法律が、クレムリンによる「伝統的価値観」を中心とした極めて保守的なイデオロギーを推進するための継続的な「十字軍」に利用されるのではないかと懸念している。このイデオロギーは、西洋の堕落したライフスタイルを拒絶し、女性の生殖権を犠牲にすることさえ辞さないものであると言われている。

「女性たちはすでに、将来手に入らなくなることを恐れて、あらゆる種類の避妊薬を買いだめしています。妊娠中絶はすでに難しくなっており、これからさらに困難になるでしょう」とマルシェンクロワ氏は語った。

この法律は12月4日に施行され、「チャイルドフリー・プロパガンダ」を放送メディアやオンラインで広めた個人に対して最大40万ルーブル(約3840ユーロ)の罰金を科し、企業には最大500万ルーブル(約4万8000ユーロ)の罰金を科す内容となっている。また、この法律に違反した外国人は国外追放される可能性がある。

支持者たちは、この法律が、ロシアを深刻な負の人口動態に苦しむ中、有害な西洋のイデオロギーから守るために不可欠だと主張している。

「我々が話しているのは、主に若い世代の市民を対象に、人格形成に悪影響を与えるメディア空間の情報から保護することです。」と下院議長のヴャチェスラフ・ヴォロディン氏は、採決前に語った。「新しい世代の国民が伝統的な家族の価値観を中心に育つようにするために、あらゆることを行う必要があります。」

しかし、人権団体や活動家たちは、この法律について重大な懸念を示している。この法律は、近年ロシアで可決された他の抑圧的な法律と同様に曖昧な言葉で記されており、LGBT+の人々などの少数派や、ウクライナ侵攻への反対者を含む市民社会団体や政府批判者を迫害するために利用されてきたと指摘している。

この法律は比較的新しいため、どの程度厳格に実施されるのか、当局が「チャイルドフリー・プロパガンダ」と見なすものが具体的に何なのかを判断するのは難しい。

しかし、すでに一定の影響が出ている。

「この法律は曖昧で広範に書かれているため、何が罰せられる対象となるのか予測できません。誰にも分からないのです」と、人権擁護センター「メモリアル」の弁護士アナスタシア・ザハロワ氏はIPSに語った。

「例えば、女性が母親であることの大変さや子育ての困難さを公に語ることが、チャイルドフリー・プロパガンダと見なされるのかどうか。すでに、ソーシャルメディア上で女性たちが子育てや母親であることの大変さについて話し合うグループが、罰金を避けるために閉鎖されています。この法律は、人々が何を言うかに対して萎縮効果をもたらすでしょう。」と彼女は付け加えた。

過去10年間に導入された「LGBT+プロパガンダ」を禁止するロシアの法律の経験が、この新しい法律が女性の生活にどのような影響を与えるかを示す手がかりになると主張する人々もいる。

「これは、プーチン政権が推進する有害な『伝統的価値観』の十字軍の一環です。この法律は女性の自由、彼女たちの生殖の自由を制限し、自由全般を抑圧するものです」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)のヨーロッパ・中央アジア担当副局長ターニャ・ロクシナ氏はIPSに語った。

「この法律の影響を予測することは可能です。なぜなら、ロシアでの反LGBT+プロパガンダ法と似ており、その影響を私たちはすでに目の当たりにしているからです。この種の法律が個人を直接的に標的にするのではなく、文化的な領域からプロパガンダと解釈される可能性があるものを排除することを目的としているのです」と彼女は付け加えた。

彼女によれば、この法律の影響で映画、テレビ番組、本が大量に店頭やテレビ番組表、オンラインストリーミングサービスから姿を消す可能性があるという。「例えば、30代の子どもを持たないキャリアウーマンが登場するロマンチックコメディの映画など、そういったものがすべて禁止されることになります。どれだけ多くの映画、テレビ番組、本などが禁止されることになるのかを想像してください。それは非常に衝撃的です。」と述べた。

さらに、この法律は生殖医療にも重大な影響を与える可能性があると指摘した。

「子どもたちが妊娠中絶や避妊についての情報を得ることができるのか疑問です。反LGBT+法が施行された際、教師や支援を提供するべき人々が、(LGBT+に関連する性の健康問題について)話すことができない、あるいは話そうとしなかった結果を目の当たりにしました。助けを必要としている子どもたちが、それを得られなかったのです。」と彼女は述べた。

他の人権活動家も同意見だ。

「妊娠中絶、避妊、その他の生殖医療に関する情報を得ることが、女性たちにとって困難になるでしょう。すでに情報を得るのに苦労している若い世代にとっては、今後、全く情報にアクセスできなくなる可能性がある。」と、国際人権連盟(FIDH)の東ヨーロッパ・中央アジア部門責任者ナタリア・モロゾワ氏はIPSに語った。

これは、女性の妊娠中絶へのアクセスがすでに制限されつつある時期に起きている。

ロシアでは、選択的中絶は妊娠12週目まで合法であり、レイプなどの特別な場合には妊娠22週目まで可能だ。しかし、近年、中絶へのアクセスを制限する動きが進んでいる。

一部の地域では、中絶を「強要」することを禁止する法律が導入された。この法律では、女性に中絶を説得したり、賄賂を渡したり、欺いたりすることを「強要」と定義している。また、国内の数百の民間クリニックが、保健省の支援を受けた「自主的な取り組み」として中絶の提供を停止した。

さらに、国家は医師に対して、女性患者に子どもを持つよう勧める一方で、中絶を思いとどまるよう促すガイドラインを導入している。

「ロシアの公立クリニックではすでに、医師が女性に子どもを持つよう圧力をかけています。ある女性がクリニックに行った際に、なぜ子どもがいないのか、なぜまだ持つつもりがないのかを医師に尋ねられたという事例もあります」とロクシナ氏は述べた。

健康専門家たちは、中絶を制限する危険性をすでに指摘しており、世界保健機関(WHO)の関係者は以前、民間クリニックが中絶を行うことを禁止すれば、ロシアの女性たちがより多く外科的中絶を受けることを余儀なくされる可能性があると警告している。民間クリニックは主に薬による中絶を提供しているが、公立病院では外科的中絶を行うため、副作用や合併症、負傷のリスクが高まる。

WHOはまた、合法的な中絶へのアクセスを厳しくすることが、危険な違法手術の急増につながる可能性があると懸念を示している。

妊娠中絶へのアクセスがさらに厳しくなる中、「チャイルドフリー・プロパガンダ」法が成立した背景には、ロシアがウクライナでの残酷な戦争を続ける中で死亡率が上昇し、出生率が低下するという人口危機に直面している現状がある。

ロシアの統計局ロススタットのデータによれば、2024年上半期にロシアで出生した子どもの数は59万9600人で、前年同期比で1万6000人減少し、1999年以来の最低記録となった。また、6月の新生児数は9万8600人で、初めて10万人を下回り、前年比で6%減少している。一方、2024年1月から6月に記録された死亡数は32万5100人で、前年同期比で4万9000人増加している。

Image source: Sky News
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クレムリンはこの人口動態の状況を「国家にとっての惨事」と表現しており、この「チャイルドフリー・プロパガンダ」法を支持する議員たちは、人口減少を食い止める手段として法案を推進している。

しかし、モロゾワ氏は、クレムリンの主な動機は、ウクライナでの戦争を継続するために軍隊を強化することだと指摘している。

「彼らは兵士を生み出す人口を望んでおり、女性には兵士を生むことを求めている。この政権の唯一の目標は、できるだけ多くの兵士を生み出すことです」と彼女は語った。

ロクシナ氏も、この法律はクレムリンが権力を維持する上で最大の脅威とみなしているグループに対抗するための追加の手段を提供すると語った。

「ウクライナへの全面侵攻開始以降、最も目立った抗議活動は女性たちによるものでした。クレムリンは女性を問題視しており、彼女たちを沈黙させたいと考えています」と彼女は語った。

この法律が今後どのように実施され、当局によってどのように解釈されるかは不透明なままだが、すでにこの法律を受けて、標的にされることを恐れて国を離れた活動家もいる。

しかし、この法律が出生率に影響を与えるかどうかには疑問の声が上がっている。

法律成立前に西側メディアに語ったロシアの女性たちは、多くの女性が子どもを持つかどうかを決める際の主な理由は、経済の困難な状況下での金銭的な懸念であり、他者が子どもを持つ権利についてどう考えるかではないと述べている。

また、ロシア全土世論調査センター(VTsIOM)が10月に実施した調査では、ロシア人の66%が「チャイルドフリー」思想の普及を罰することが効果的だとは思えないと回答している。

「この法律には出生率に影響を与える可能性はありません」とロクシナ氏は語った。「この法律は、いわゆる伝統的な家族の価値観を拒絶する声を抑圧することを目的としています。」(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau

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トランプ復帰に直面する韓国の三つの選択肢

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=文正仁】

2期目のトランプ政権は、間違いなく韓国に多大な圧力をかけてくるだろう

あのドナルドが戻って来る。2度の有罪判決、暗殺未遂、あらゆるスキャンダルにもかかわらず、ドナルド・トランプは、オーバル・オフィスの主として4年ぶりに返り咲くことになった。

共和党は上院の過半数を確保しており、下院でも勝利を収める見込みだ。政権を完全掌握すれば、まさに「トランプの奇跡」と呼んで良い状況にいっそうの弾みがつくだろう。()

トランプの再選は、世界中に同じくらいの歓喜と悲嘆をもたらしている。ウクライナのゼレンスキー、欧州のNATO加盟国、さらにはパレスチナ、イランとその支持者らは、トランプ2.0が予告する外交政策の転換による深刻な脅威を感じている。

イスラエルのネタニヤフとロシアのプーチンは、トランプ政権再来の見通しに笑いが止まらないだろう。中国は外務省の短い声明以外にほとんど反応を示していないが、北京がトランプ復帰にピリピリしているのは明らかである。

しかし、韓国にはどのような影響があるだろうか?

朝鮮半島に関するトランプの政策については、性急に結論を出すべきではない。閣僚の顔ぶれやアドバイザーの人事を見守らなければならない。2期目のトランプ政権には三つの派閥ができると見込まれる。

第1に、トランプとその忠実な取り巻きたち、そして彼らが信奉する取り引き主義的姿勢である。価値よりも優位性を重視し、全ての外交関係を費用・便益分析に基づいて決め、望みの結果を得るために外交取り引きをいとわない人々である。

第2に、トランプの信条であるMAGA(アメリカを再び偉大に)の熱心な支持者がいる。トランプへの忠誠心に加えて、彼らは米国が他国に介入することに強く反対しており、国益が重大な侵害を受けない限り米国が戦争に参加することを望んでいない。この派閥は、ジャクソン主義的孤立主義の特徴が顕著である。

最後の第3の派閥は、共和党の強硬派「ネオコン」である。ネオコンは、米国の優越性を維持し、米国的価値観を世界中に広めるためであれば、武力行使を支持する。

取り引き主義のアプローチは、次期トランプ政権における外交政策と国家安全保障の主流テーマになると見込まれるが、これら三つの派閥の相互作用も決定的要因になるだろう。

新たなトランプ政権のもとで国家安全保障・外交政策の基調を決定するのが誰であれ、それは韓米同盟の現在と将来に大きな影響を及ぼすと見られる。特に、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が強調してきた「民主主義連合に基づく価値の同盟」の未来に疑問を投げかける。

尹は、拡大抑止と統合抑止を強化する米国との合意を代表的な外交成果として謳っているが、これらの合意が存続していくかどうかは不透明である。

北朝鮮の脅威と中国の脅威に対する米国の認識の落差が広がりつつあることを考えると、韓米の抑止戦略に根本的修正がなされる可能性がある。韓米合同軍事演習の強度と頻度だけでなく、朝鮮半島における米軍の戦略兵器の前方展開にも変化が起こり得る。

そのような活動の費用を負担することを韓国が拒めば、トランプはまたもや、活動の規模を縮小する、または完全に停止すると脅してくる可能性がある。

尹政権とバイデン政権は近頃、防衛費分担協定を更新したが、トランプはこの協定を破り、韓国に対して防衛費の負担を現在の10億米ドルから100億米ドルに増やすよう要求する可能性がある。彼は、在韓米軍の人数削減または完全撤退の可能性を駆け引きの材料として使う可能性もある。

北朝鮮問題もまた、大きな変動要因となるだろう。トランプは、北朝鮮の指導者である金正恩(キム・ジョンウン)と直接取り引きを結ぶ意向を繰り返し表明してきた。トランプがウクライナ問題を解決するためにプーチンと重大な取り引きを結んだ場合、彼はさらに、交渉に応じるよう金を説得するためにプーチンに助力を求めるかもしれない。

米朝関係にこの種の飛躍的な動きがあれば、北朝鮮に対する尹の強硬政策と摩擦が生じることはまず間違いない。

ここでの懸念は、第2次トランプ政権の間に北朝鮮に対する米国の拡大抑止が中断された場合、あるいは交渉によって米国が北朝鮮の核兵器保有を容認する事態になった場合、自前の核兵器を獲得しようという韓国の動きに勢いがつき、トランプ率いるホワイトハウスがそのような動きを認めるような姿勢を示しさえするかもしれないということだ。

韓国が核武装すれば、北東アジアに核のドミノを引き起こす恐れが大いにあり、地域の戦略的安定性を損なう可能性がある。

第2次トランプ政権は、経済にも悪影響を及ぼすと予想される。韓国対外経済政策研究院の最新の報告書によれば、トランプが公約している関税政策により韓国の総輸出額が222億~448億米ドル減少する可能性がある。韓国の輸出業者が代わりの輸出先市場を円滑に開拓できなかった場合、韓国の実質GDPが0.29~0.67ポイント減少する恐れがある。

さらには、CHIPSおよび科学法とインフレ抑制法に基づいて米国への投資を決定した韓国企業に対し、米国が約束した補助金を削減または停止などしたら、経済的影響はいっそう大きくなる。

再就任すればトランプは、韓国に対する慢性的貿易赤字を理由に、韓米自由貿易協定の改正も求めるだろう。

明確なのは、2期目のトランプ政権は、間違いなく韓国に多大な圧力をかけてくるだろうということだ。

こういった見通しを踏まえると、米国の経済学者アルバート・O・ハーシュマンが同じ表題の画期的論文において提唱した「離脱・発言・忠誠」という選択肢を検討する価値がある。

韓国は、米国への揺るぎない忠誠を示す政策を長年堅持してきた。しかし、その政策は本当に最善の選択肢だろうか?

米国に対する韓国側の異論に発言権を与え、さらには現行の体制からの離脱の模索を検討するだけの知恵と勇気を、われわれは持っているだろうか?

それは、間もなく分かることだろう。

文正仁(ムン・ジョンイン)は、韓国・延世大学名誉教授。文在寅前大統領の統一・外交・国家安全保障問題特別顧問を務めた(2017~2021年)。 核不拡散・軍縮のためのアジア太平洋リーダーシップネットワーク(APLN)副会長、英文季刊誌「グローバル・アジア」編集長も務める。戸田記念国際平和研究所の国際研究諮問委員会メンバーでもある。

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