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厳冬を前に攻撃激化、ウクライナ各地で生活インフラが麻痺

【国連IPS=オリトロ・カリム】

ここ数週間、ロシアによるウクライナ侵攻は一段と深刻化し、戦闘は頻度・強度ともに増している。民生インフラへの被害は広範に及び、ウクライナ全土で死傷者も増加している。国連人権高等弁務官フォルカー・トゥルク氏は、エネルギー関連インフラへの攻撃とそれに伴う停電により、最も脆弱な人々が冬の間、「冷たく、恐ろしい試練」を強いられていると警告した。

Volker Türk, United Nations High Commissioner for Human Rights, in Helsinki © Lauri Heikkinen, valtioneuvoston kanslia - FinnishGovernment, CC BY 2.0
Volker Türk, United Nations High Commissioner for Human Rights, in Helsinki © Lauri Heikkinen, valtioneuvoston kanslia – FinnishGovernment, CC BY 2.0

「ロシアによる全面侵攻からまもなく4年になるいま、市民の苦境はいっそう耐え難いものになっている。」とトゥルク氏は述べた。「和平交渉が続く一方で、私たちの監視と報告は、戦争が激化し、死者と被害、破壊が増えていることを示している……ウクライナのどこにも安全な場所はない。」

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によれば、2025年1月から11月の間に、戦争の直接の影響で死亡したウクライナ人は2311人に上る。これは2024年の同時期に比べて26%増、2023年からは70%増である。トゥルク氏はまた、2024年12月から2025年11月にかけて、ロシアが使用した長距離ドローンの1日当たり平均数が大幅に増加したと指摘した。特に人口の多い前線地域や都市部で顕著だという。

11月はとりわけ情勢が不安定で、少なくとも226人の民間人が死亡し、952人が負傷した。そのうち51%は、ロシア軍による長距離ミサイル攻撃や徘徊型弾薬(遊弋弾薬)によるものだった。民間人の死傷者の大半はウクライナ側が統治する地域で発生し、約60%は前線近くで起きている。11月18日には、ミサイルとドローンによる大規模な複合攻撃がテルノーピリで発生し、少なくとも38人が死亡した。これは2022年2月の全面侵攻開始以降、西部ウクライナで最も死者の多い攻撃となった。

前線地域では、短距離ドローン、空爆、その他の弾薬により住宅地が大きく損壊し、居住不能となった地区が相次ぎ、新たな避難も顕著に増えている。前線地域の病院や診療所も深刻な被害を受け、一部施設は完全閉鎖に追い込まれ、残る医療機関も運営が逼迫している。治安の悪化が続くため、救急車が負傷者に到達できない状況があり、支援要員も命の危険を冒して活動している。

さらに、ウクライナ全土で水道・エネルギーインフラへの攻撃が続き、数百万人が、水・暖房・電力へのアクセスを失っている。しかも、停止が長期化するケースも少なくない。国連人道問題調整事務所(OCHA)は、週末だけでも新たな攻撃により100万人以上が水・暖房・電力を利用できなくなり、とりわけ南部で影響が大きいと報告した。

A shopping center in the city of Kremenchuk in the Poltava region of Ukraine after a Russian rocket strike on June 27, 2022 at 15:50./ By Dsns.gov.ua, CC BY 4.0
A shopping center in the city of Kremenchuk in the Poltava region of Ukraine after a Russian rocket strike on June 27, 2022 at 15:50./ By Dsns.gov.ua, CC BY 4.0

オデーサ州、ヘルソン州、チェルニーヒウ州では、地区単位で電力・水道・暖房サービスが停止し、人命に直結する活動に深刻な負荷がかかっている。一方、前線地域の食料品店や薬局の多く、特にドネツク州、ハルキウ州、スムイ州では閉鎖が相次いでいる。これらの地域の一部コミュニティでは、2年以上にわたり電力にアクセスできていないとの報告もある。

ドネツク州の一部住民は、数日に1回、質の低い流水しか供給されないと訴えている。多数の放棄鉱山や化学工場が近接していることから、人道支援団体は安全面への警戒を強めており、厳冬期の到来がすでに深刻な生活環境をさらに悪化させると懸念している。

ワールド・ビジョン(WV)によれば、ウクライナの子どもと家族は、2022年の戦闘開始以降で最も厳しい冬に直面する見通しだ。今季は気温が−10℃を下回ることが予測されるうえ、重要なエネルギーインフラへの反復攻撃により、子どもたちは1日平均16〜17時間の停電にさらされているという。こうした長時間の停電は、最も寒い時期に、暖房・電力・水・不可欠なサービスを奪う。まさに最も必要な時期に起きている。

「地域によっては、暖房、電力、水が最大36時間にわたって途絶えることがあります。基礎サービスが長時間失われることで、子どもの健康リスクが深刻化し、教育も中断され、全体的な福祉が脅かされます」と、ワールド・ビジョンのウクライナ危機対応ディレクター、アルマン・グリゴリヤン氏は述べた。「子どもを守るため、冬季物資、安全な居場所、心理社会的支援を含む人道支援が緊急に必要です。」

ワールド・ビジョンは、最も過酷な生活条件が確認されている地域として、北部・東部のチェルニーヒウ、ドニプロ、ドネツク、ハルキウ、スムイなどを挙げた。教育面の影響も深刻で、停電により学校や幼稚園を安全に運営することが難しくなり、子どもの約40%が遠隔または対面と遠隔を組み合わせた学習を余儀なくされている。

Image source: Los Angeles Times
Image source: Los Angeles Times

高齢者や障害のある人々にとっても、生活はとりわけ困難である。多くが自宅から離れられないうえ、適切な移動手段や住環境へのアクセスを欠いている。前線地域で死亡した民間人の約60%は60歳以上だった。

国連とパートナー団体は前線で冬季支援(ウィンターライゼーション)を進め、緊急シェルターや保護サービスを提供している。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)も、燃料や断熱など冬季特有のニーズに充てるための現金給付を、脆弱なコミュニティに配布している。

UNHCRは、2025年にウクライナ国内で人道支援と保護を緊急に必要とする人々を約1270万人と推計する。しかし、資金拠出の削減が相次ぎ、2025年のウクライナ人道ニーズ・対応計画(HNRP)は当初の対象800万人から大幅に縮小し、480万人への支援を優先せざるを得なくなった。状況が悪化するなか、国連は拡大する人道ニーズに対応するため、拠出国の追加拠出と国際社会のより広範な支援を求めている。(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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新たな植民地主義の時代

Rudyard Kipling 
Credit:Public Domain

「白人の重荷を担え――
お前たちが生み出した最良の者を送り出せ。
叫びであれ、囁きであれ、
去ることであれ、行うことであれ、
黙して不満げな人々は、
お前たちの神々を量り――
そして、お前たち自身を量るだろう……」

―ラドヤード・キプリング
「白人の重荷:米国とフィリピン諸島」(1899年)

【ニューヨークIPS=アッザ・カラム】

いま私たちは、世界が「帝国の終焉」を声高に宣言しながら、その構造を別の形で再生産している時代に生きている。これは、植民地時代の絵葉書を懐かしむ話ではない。外交政策、国際統治(国際社会の意思決定の仕組み)、そして世界経済の力学が、真の協力というより、植民地的な論理に近い形で組み替えられつつある、ということだ。

「新しい植民地主義(New Colonialism)」という言葉は、修辞的な誇張ではない。軍事介入やジェノサイド(集団殺害)、外交の場からの撤退、そして「中立」を装いながら不平等や人権侵害を温存する制度。そうした権力の振る舞いは、いまも現実として進行している。

Ⅰ いま、どこにいるのか

「帝国主義とは本質的に地理的暴力の実践であり、世界のほぼすべての空間を探索し、地図化し、最終的には支配下に置く過程にほかならない。」
エドワード・サイード『文化と帝国主義』(1993年)

An image circulating online shows Venezuela’s president handcuffed and giving a thumbs-up, flanked by individuals in DEA jackets, amid unverified claims of a U.S. law-enforcement operation.
An image circulating online shows Venezuela’s president handcuffed and giving a thumbs-up, flanked by individuals in DEA jackets, amid unverified claims of a U.S. law-enforcement operation.

2026年1月、米国は、ラテンアメリカにおいて過去数十年で最も劇的な対外介入と言える行動に踏み切った。ベネズエラに軍事侵攻し、ニコラス・マドゥロ大統領を連れ去ったのである。ドナルド・トランプ大統領は、米国が「安全で適切、かつ慎重な移行が可能になるまで、国を運営する」と公言した。これは暗号ではない。露骨な支配の宣言である。

政権はこれを、麻薬対策(麻薬密輸の摘発)や法執行(犯罪捜査・逮捕など)として位置づける。しかし批判者のみならず同盟国の一部も、限定的な取締りではなく、20世紀の「政権転覆介入(regime change)」を思わせる、古い覇権の手法の復活だと見ている。メキシコからブラジルに至るラテンアメリカ諸国は、主権侵害として非難した。これは、過去の介入の現代版の鏡像である。

米誌『Foreign Policy』の分析も、この介入がより大きな流れの一部であることを示している。リシ・イエンガーとジョン・ハルティワンガーは、「麻薬テロ(narcoterrorism:麻薬取引と武装勢力・政治暴力の結びつきを、テロとして扱う概念)」との戦いを掲げる一方で、米国が軍の役割を拡張し、麻薬密売人とされる勢力への空爆までを「任務のリスト」に加えてきたと指摘した。安全保障と政治的統制の境界が曖昧になっていく構図である。

こうした動きは、対外政策の軍事化が進み、かつ一方的に実行される傾向を示している。

さらに、この介入は単発の出来事ではない。ベネズエラに対するトランプ政権の動きは、麻薬阻止というより、戦略的な布石と資源確保――とりわけ同国の莫大な石油埋蔵量――をめぐる思惑と結びついているのではないか、という見方が強い。

Donald Trump, President of the United States of America, addresses the general debate of the General Assembly’s eightieth session in 2025. Credit: UN Photo/Evan Schneider.
Donald Trump, President of the United States of America, addresses the general debate of the General Assembly’s eightieth session in 2025. Credit: UN Photo/Evan Schneider.

米国の力が中国やロシアに挑戦されるなか、いわば「世界-1(World-Minus-One:米国の影響力が相対的に低下し、米国抜きでも国際秩序が動き得る、という含意の比喩)」の状況が広がっている。そうした秩序の下で、介入への傾斜は、人道を掲げた事業としてではなく、地政学的な賭けとして再燃している。

植民地主義批判の視点から見れば、「独裁者から救う」という言葉は、キプリングが説いた「道徳的責務」を担えという呼びかけと重なる。だが、かつての正当化が暴力と労働搾取を覆い隠したように、いまのレトリックもまた、地政学的な自己利益を覆い隠している。

米国は「権威主義からの解放」を掲げる一方で、統治と経済インフラへの支配を主張している。これは、「他国はワシントンの指導なしには統治できない」と言い換えるに等しい、21世紀版の植民地的態度である。もたらされるのは解放ではなく、依存だ。依存こそ、植民地関係の典型である。

Ⅱ 多国間制度からの米国の撤退

「『白人の重荷』は、新たに支配される側に責任を転嫁しながら、真の重荷――体系的・構造的で、ときに暴力を伴う搾取――を認めない。これは帝国の最古の神話である。」
――クマーリ・ジャヤワルデナ『白人女性のもう一つの重荷:英領植民地期南アジアと西洋女性』(1995年)

ベネズエラの掌握が古典的な帝国建設に見えるのだとすれば、多国間制度からの撤退は、そうした一方主義を抑えるはずの枠組みそのものから離脱する行為である。

2026年初頭、米国は大統領覚書に署名し、「米国の利益に反する」と見なす66の国際機関について、支援と参加を停止する方針を打ち出した。対象には多数の国連機関や条約枠組み(各国が合意し、守るべきルールを定めた国際約束)が含まれており、国際ガバナンスから距離を置く米国の流れをさらに加速させるものだ。

UN Secretary-General António Guterres briefing reporters after a leaders' meeting on climate action. Credit: Naureen Hossain/IPS
UN Secretary-General António Guterres briefing reporters after a leaders’ meeting on climate action. Credit: Naureen Hossain/IPS

撤退対象となった組織には、国連の人口関連機関(UNFPA:国連人口基金。母子保健やリプロダクティブ・ヘルス=性と生殖に関する健康を扱う)や、気候交渉の国際枠組み(UNFCCC:国連気候変動枠組条約。各国が温暖化対策を協議する土台)も含まれる。米国はすでに、パリ協定のような主要な気候合意への関与を縮小しており、WHO(世界保健機関)からも正式に脱退した。深い多国間協力よりも、取引的な二国間主義へ回帰する動きと言える。

国連事務総長アントニオ・グテーレスは、この発表に遺憾の意を示しつつ、国連憲章上の法的義務を改めて強調した。国連憲章の下では、通常予算やPKO(国連平和維持活動)予算への分担金(各国に割り当てられる拠出義務)は、米国を含む加盟国すべてに拘束力を持つ。さらに、米国が撤退しても、国連機関は支援を必要とするコミュニティのために活動を続けると強調した。

ただしこの動きは、国連などがすでに深刻な内部課題に直面しているという背景のもとで起きている。批判者は、こうした問題が組織の正当性を損ない、統治(ガバナンス)の欠陥を示していると主張する。例えば、国連平和維持要員や職員による性的搾取・虐待(SEA:Sexual Exploitation and Abuse)をめぐる通報は繰り返し報告され、数百件の事例が記録されてきた。指導部の対応の信頼性にも懸念が示されている。

Photo: United Nations Peacekeeping helps countries torn by conflict while creating conditions for lasting peace. Credit: United Nations.
Photo: United Nations Peacekeeping helps countries torn by conflict while creating conditions for lasting peace. Credit: United Nations.

2024年だけでも、平和維持活動や政治ミッションで100件を超える通報が報告され、職員調査では、不適切行為に対する甘い認識もうかがえた。こうした虐待は偶発的な不祥事ではない。権力格差が搾取やハラスメントを可能にし、透明性と説明責任が後れがちな組織文化が根強いことを、研究者や人権擁護団体は繰り返し指摘してきた。

だからといって、多国間協力という理念そのものが否定されるわけではない。しかし、現行の制度が「公正で有効なガバナンス(統治)」だと言い切れるのかは、確かに問われている。

国際NGO(INGO:International Non-Governmental Organization。国境を越えて活動する民間支援団体)にも、同様に厳しい目が向けられている。援助関係者による性的搾取・虐待の事例や、組織の優先順位が現地のニーズよりドナー(資金提供者)の意向に引きずられやすい構造などが批判の対象だ。2024年の人道支援分野における性的搾取・ハラスメントに関する研究は、権力格差と、ルールを徹底し是正する実効性の弱さが、過少報告と不十分な対応を生んでいることを明らかにした。

国連や人道支援分野におけるこれらの問題は、「被害者や地域社会よりも、組織の評判を守ることが優先されがちだ」という不満を増幅させる。その不満が、一部の米国政策担当者に、これらを「時代遅れで腐敗した組織」と見なさせる土壌になっている面もある。

しかし、だからといって「去る」ことが解決ではない。説明責任を徹底し、検証と是正の仕組みを強化する代わりに見捨てれば、国際ガバナンスを空洞化させたい勢力を利するだけである。

Ⅲ 二人三脚でなければ踊れない

では、協力が壊れ、植民地的な衝動が蘇るこの状況で、米国だけが悪役なのか。結論は、部分的にはそうだ、である。

近年の米国の対外政策が国際規範を傷つけてきたことは否定できない。主権国家への軍事介入、主要条約や国際機関からの撤退、多国間協力を政治問題化して拒む姿勢は、「共有されたリーダーシップ」からの後退を示している。

しかし、多国間制度が本質的に有効で正しく、批判を免れるという前提もまた誤りである。危機対応の遅さ、説明責任の不透明さ、グローバル・サウス(主にアジア・アフリカ・中南米の新興・途上国を指す)の声の弱さ――国際統治の構造的な弱点は以前から指摘されてきた。こうした欠陥は、国際機関が政治的に利用され、機能不全に陥るリスクを高め、解消すべき不平等を温存しかねない。

国連や国際援助の現場(人道・開発支援分野)で起きてきた失敗は、米国だけの責任ではない。そもそも制度の出発点から、西側の資金拠出国(ドナー)を中心とする権力序列が組み込まれてきた、世界システムの問題でもある。

「新しい植民地主義」は、19世紀の征服のような露骨な形では現れない。「国益」「安全保障」「制度改革」といった語りの中に織り込まれている。強大国が人道や「自衛」を名目に軍事力を誇示する場合であれ、小国を守るための合意から離脱する場合であれ、現れる構図は同じである。力は行使可能な場所で自己主張し、多国間の規範は選択的に扱われる。

いま示されているのは、多国間主義を救うために必要なのは放棄ではなく、説明責任の徹底と制度の刷新だという点である。国際協力を掲げる国々は、統治の中に残る植民地の遺産に向き合い、制度の透明性を高め、不正や弊害を検証し是正する仕組みを強化し、意思決定をより民主的なものへ改めなければならない。

同時に、強大国は、共通の制度から撤退したり、それを自国の限定的利益のために利用したりしても、力の不均衡は是正されないことを認識すべきだ。むしろ固定化される。

結局、意味ある国際協力は、一国の事業でも、強者のネットワークによる事業でもあり得ない。必要なのは、共通善(公共の利益)に向けた連帯であり、妥協だけでなく、ときに負担や犠牲を引き受ける覚悟に支えられた、真の公正である。(原文へ

UN Photo
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アッザ・カラムはLead Integrity(リード・インテグリティ)の代表。オクシデンタル大学カハネUNプログラムのディレクター。

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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|視点|植民地主義が世界に及ぼした影響を遅々として認めようとしない欧州諸国(マイケル・マクイクラン ルンド大学客員研究員)

|ウクライナ|ロシアの攻撃と致命的な寒波で「生き延びるだけの生活」 家族を追い詰める

【ジュネーブINPS Japan/UN News=ダニエル・ジョンソン】

ウクライナ各地の家族は、ロシアによるミサイルや無人機(ドローン)の攻撃が相次ぐ中で、「常に生き延びるだけの生活(サバイバル・モード)」に追い込まれている。攻撃によって電力が途絶え、集合住宅の一部では数日間にわたり停電が続く一方、気温は命に関わる寒さまで落ち込んでいる。国連児童基金(ユニセフ)が1月16日に明らかにした。

「家族は凍える寒さを少しでも遮ろうと、窓にぬいぐるみのような柔らかい玩具まで詰め込む状況に戻ってしまっている。」と、ユニセフのウクライナ事務所代表ムニル・ママザデ氏は語った。

Map of Ukraine

今回の警鐘は、南部ザポリッジャ州と東部ハルキウ州で電力インフラが攻撃を受けたと報告された、別の夜の事案を受けたものだ。これらの攻撃により、多くの住宅地で電気と暖房が失われたという。

「エネルギー網への攻撃がもたらす致命的な寒さの脅威は、戦争に上乗せされた『国規模の緊急事態』になりつつある。」と、ママザデ氏はジュネーブでの定例記者会見で語った。

同氏は、金曜日のキーウの気温がマイナス15度(華氏5度)に達したことを挙げ、来週はさらに冷え込む可能性があると警告した。国内の何百万人もの家族が、暖房、電気、水の供給なしに暮らしているという。
「そのため、子どもと家族は常に生き延びるだけの生活を強いられている。」と語った。

支援の重点が変化

これまで人道支援の焦点は前線地域に置かれてきた。しかし、住宅地を含む都市インフラへのロシアの攻撃が絶えないことで、集合住宅で暮らす人々のニーズが、はるかに複雑であることが浮き彫りになっている。

例えばキーウ在住のスヴィトラーナは、10階の部屋で3歳の娘アディナの世話を何とか続けている。「彼女は、暖房も電気も3日以上ない状態が続いたと話してくれた。それは混乱の最初の週のことで、私たちはすでに2週目、あるいは3週目に入ろうとしている。いまも多くの家族が、供給なしの生活を続けている。」と、ママザデ氏は語った。

ウクライナ政府からのこうした懸念に呼応し、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)のハイメ・ワー氏は、これまでハルキウやオデーサへの攻撃後は「数日で」電力が復旧してきた一方、首都の状況はより厳しく見えると語った。ジュネーブの記者たちにビデオで語りながら、寒さで手をこすり合わせていたワー氏は、「キーウでは停電が長期化し、影響を受ける人口も多い状況に直面している。」と語った。

ロシアの全面侵攻開始から間もなく4年となるが、「子どもの生活はいまも、生存のことばかりに支配され、子ども時代ではなくなっている」と、ユニセフのママザデ氏は警告した。2025年に確認された子どもの死傷者は、前年に比べて11%増加したという。

ユニセフは、ウクライナの都市部で脆弱(ぜいじゃく)な人々を支えるため、大型の共同テントを支援している。そこでは体を温められるほか、ゲームや玩具で遊ぶこともできる。

ウクライナ・キーウで冬の停電が起きた際、移動式テントの中で暖を取り、支援を受ける家族。


「スヴィトラーナは、アリナを入浴させることも、温かい食事を用意することもできない。そこで娘に何枚も衣類を重ね着させ、暗い階段を10階分下って、ウクライナ国家非常事態庁が外に設置したテントに向かう」と、ママザデ氏は説明した。「そこでは暖を取り、温かい食事を得て、端末を充電し、心理士と話すこともできる。あるいは、ただ暖かい場所に座っていられる」

ユニセフは、暗闇の中で生活し、凍える寒さに耐えることが、身体面と精神面の双方で子どもにとってとりわけ深刻な影響を及ぼすと警告する。こうした状況は恐怖やストレスを強め、「呼吸器疾患などの健康問題を引き起こしたり、悪化させたりする恐れがある。」という。

「最も幼い子どもたちが最も脆弱だ」と、ママザデ氏は語った。「新生児や乳児は体温を急速に失い、低体温症や呼吸器疾患のリスクが高まる。十分な暖かさと医療ケアがなければ、こうした状態は急速に命に関わるものになり得る。」(原文へ

INPS Japan/UN News

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|タジキスタン|国際水準と低コストを両立 医学教育の新たな留学先

【ドゥシャンベLondon Post=ラザ・サイード】

タタジキスタンは近年、医学教育の進学先として注目が高まっている。教育の質、費用の手頃さ、文化的な親和性に加え、政府の後押しもあり、とりわけ南アジアの学生にとって有力な選択肢になりつつある。同国は、イブン・シーナー(アヴィセンナ)の遺産に連なる医学の伝統を持つ。その土台の上で国際水準に沿った近代化を進めながら、学生本位でコストを抑えた学習環境を維持してきた。

Raza Syed
Raza Syed

南アジア――とりわけインド、パキスタン、バングラデシュでは、限られた医学部定員をめぐる競争が激しいうえ、私立校の学費も高騰している。結果として、多くの学生が海外に活路を求めるようになった。こうした状況の中で、タジキスタンは旧ソ連型の厳格な教育を基盤に改革を進め、世界水準の医学教育を比較的低い費用で提供している点が評価されている。文化的に馴染みやすく、自然景観にも恵まれた環境も、学びの場としての魅力を後押しする。

タジキスタンが医療の高度化に取り組む背景には、独立後に掲げたユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の国家ビジョンがある。世界保健機関(WHO)の指針に沿い、欧州連合(EU)など国際パートナーの支援も得ながら、政府は「国家保健戦略(2030年まで)」と「2024~2026年行動計画」を進めている。重点は、一次医療(プライマリ・ヘルスケア)の強化、非感染性疾患への対応、都市と農村の格差縮小である。

Cropped and flipped portrait of Ibn Sina (Avicenna) from a Tadjik banknote
Cropped and flipped portrait of Ibn Sina (Avicenna) from a Tadjik banknote

具体策として、2025年にはスグド州でパイロット事業が始まり、自己負担の軽減とサービスの質の向上を狙う新たな財源・支払いの仕組みが導入された。こうした改革は国内の医療課題への対応にとどまらず、医学教育機関の対外的な信頼性と存在感を高め、費用面の壁なく高度な訓練を求める南アジアの学生にとっての魅力を強めている。

この体系の中核にあるのが、首都ドゥシャンベのアヴィセンナ・タジク国立医科大学(Avicenna Tajik State Medical University=ATSMU)である。1939年創設で、ペルシャの博学者イブン・シーナー(アヴィセンナ)にちなんで命名された。ATSMUは、規律と臨床重視を特徴とする旧ソ連型の教育モデルを基盤にしつつ、シミュレーション施設、研究センター、家庭医療(総合診療)のカリキュラムなど、現代的な教育要素も取り入れている。

ATSMUでは、一般医学(MD/MBBS)や歯学、公衆衛生などを英語で学べるプログラムを用意し、提携する15の関連教育病院を通じて早期から臨床実習の機会が得られるとしている。留学生は500人を超え、近年はパキスタン出身者が約450人に上るとされるほか、インドやバングラデシュからの学生も多い。

このほか、ダンガラのハトロン州立医科大学やタジキスタン医療社会研究所などが、学際的な教育やシミュレーション実習、卒後研修を提供し、ATSMUを補完している。卒後教育は、卒後教育研究所(Institute of Postgraduate Education)を通じた研修・専門教育として位置づけられている。

学位の扱いについては、各国の関連機関の要件や国際的な枠組みに照らし、卒業後にインドのFMGE/NExT、米国のUSMLE、英国のPLABなど各種ライセンス試験を目指せる点が強調されている。理論と実践の双方で通用する力を育み、国際的な医療制度への接続を視野に入れた教育である、という位置づけである。

南アジアの学生にとって、タジキスタンの大きな魅力は費用負担の軽さにある。英語による5年制MBBSの授業料は年4,000~5,000ドル程度が一般的で、寮費や生活費を含めた総費用は在学期間全体で、インド・ルピー換算で約16~22ラーク(約160万~220万ルピー)、パキスタン・ルピー換算で約140万~150万PKR程度に収まるとされる。インドやパキスタンの私立医大で学費が高額化し、寄付金が上乗せされる例もある現状と比べれば、負担は相対的に小さい。

Ma p of Tajikistan

入学は成績重視で手続きが比較的明確であり、一般に高校相当課程で理科(物理・化学・生物)の成績50~60%が求められる。インド人学生はNEET合格が必要で、いわゆる「キャピテーション・フィー(裏口入学金)」はないとされる。生活費も月150~200ドル程度と比較的抑えられ、学内の学生寮ではハラール食や南アジア向けの食事を提供する学生寮の食堂(メス)が整い、同じ文化圏の仲間と支え合える環境があるという。

教育費の高騰と世界的な医療人材不足が同時に進む中、タジキスタンは「手頃な費用で質の高い教育機会を提供する」という方向性を強めている。文化的背景にも配慮した訓練環境を整えることで、人材流出の圧力を和らげ、卒業生が母国で貢献する道と国際的に活躍する道の双方を開く狙いがある。改革が進み、パイロット事業の成果が全国展開されれば、同国は医師養成にとどまらず、包摂的な医療を担う人材育成の拠点としての存在感を高める可能性がある。南アジアの志願者にとって、タジキスタンは学位取得を超えたキャリア形成の選択肢になりつつある。(原文へ

INPS Japan

London Post
注記:最近、MBBS Abroad Consultancy Pvt LtdのCEOでありAPP特派員でもあるシャムス・アバシ氏が率いるパキスタン人ジャーナリスト団(団長:ムハンマド・アバス・マハール博士)がドゥシャンベを訪問し、タジキスタンの大学で医学教育を受けるための施設・環境を調査した。筆者はこの件に関連し、アバシ氏から訪問の詳細について情報提供を得た。本稿はそれに基づいて執筆した。また、この訪問の成功と各種支援においては、駐パキスタン・タジキスタン大使H.E.ユスフ・シャリフゾダ・ティオル閣下の役割が重要であった。大使は両国関係、ビジネス、投資における新規プロジェクト創出に向け、重要な役割を果たしている。

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ニューデリーの危険な賭け:変動する地域秩序の中でタリバンを迎え入れること

【ニューデリーLondon Times=ヌーラルハク・ナシミ】

歴歴史的な展開として、10月9日、インド政府はタリバン暫定政権のアミール・カーン・ムッタキー外相を受け入れた。2021年8月にタリバンが権力を掌握して以降、初の高官級訪問である。時期の選定は偶然ではない。ロシアがタリバンを正式承認し、中国も関与拡大の姿勢を示す中、地域の力学は変化し、アフガニスタンにおけるインドの伝統的影響力は相対的に弱めつつあった。

Vladimir Putin. Photo: ЕРА
Vladimir Putin. Photo: ЕРА

昨年7月、ロシアは、タリバンが2021年に政権を再掌握して以来、同暫定政権を正式に承認した最初の国となった。あわせて、事実上の政権を「テロ組織」指定リストから外した。これは場当たり的な外交判断ではなく、段階的に進めてきた関与の延長線上にある。ロシアは米軍撤退後もカブールの大使館を閉鎖せず、2022年には石油・ガス・小麦をめぐる合意を結ぶなど、タリバン指導部との関係を着実に深めてきた。

ロシアの決定が「ドミノ効果」を生み、他の地域大国が追随するのではないかとの観測は、以前から強まっていた。その有力候補として浮上したのが中国である。中国はロシアの判断を速やかに歓迎し、外務省の毛寧報道官は「アフガニスタンを国際社会から排除すべきではない」と述べた。この発言は儀礼的な域にとどまらず、明確な戦略的意図を示すシグナルと受け止められた。

Image: President Xi Jinping of China, 10 March 2023. Credit: Xinhua News
Image: President Xi Jinping of China, 10 March 2023. Credit: Xinhua News

中国が重視するのは、アフガニスタンの鉱物資源に加え、戦略的要衝としての地理的位置、そして新疆への過激派脅威を抑える安全保障上の緩衝地帯としての価値である。中国がタリバン暫定政権を正式承認すれば、北京—モスクワ—イスラマバード—カブールの連携が固定化し、地域の新たな経済・安全保障の枠組みの中でインドが周縁化される可能性がある。

こうした構図のもと、インド政府は二重のジレンマに直面する。ロシアの承認と中国の関与拡大は、地域連結性プロジェクトや安全保障調整からインドを排除する方向に働き得る。さらに、ロシアと中国の外交的後ろ盾のもとでタリバン—パキスタン協力が進めば、アフガニスタンに活動拠点(いわゆる安全地帯)を得た反インド武装勢力が勢いづく恐れもある。他方で、タリバンのムッタキー外相を受け入れることは、インドが道義的立場を損ない、人権や民主主義の原則より現実主義(リアルポリティクス)を優先したと受け取られかねない。

Map of India
Map of India

それでも、インドが地域的影響力を守り、過激主義の脅威がさらに根を張ることを防ぐのであれば、傍観者でいる余地はない、という指摘には一理ある。

ただし、その際には、関与が事実上の統治当局(タリバン暫定政権)への正統性付与と受け取られないための具体的な枠組みが欠かせない。たとえば、人道支援を継続しつつ、現地のNGOや信頼できる国際機関と連携して支援を届ける方法がある。国外にいるアフガニスタンの女性や少女に対して大学奨学金を拡充することも可能だ。さらに、タリバンの制限を回避する手段として、オンライン学習プラットフォームやデジタル教室の整備を支援する選択肢もある。世界有数のIT大国であるインドには、こうした分野で独自に貢献できる余地がある。

戦略面では、タリバン暫定政権とのいかなる関与においても人権を中心に据え、同政権に代わり得る政治的選択肢を育てる視点が重要となる。筆者はこの5年ほど、ロンドンの慈善団体「Afghanistan and Central Asian Association(ACAA)」の創設者兼ディレクターとして、タリバンに対抗し得る組織的な政治的反対勢力の必要性を訴えてきた。亡命下であれ国内であれ、民主主義原則と人権に根差す代替ビジョンを提示できる反対勢力は、タリバンが国際社会で「アフガン国民唯一の声」と見なされることを防ぐうえで、重要な対抗軸になり得る。

Photo: The UN has been supporting displaced families in Afghanistan, providing emergency shelter and protection. Credit: IOM/Mohammed Muse
Photo: The UN has been supporting displaced families in Afghanistan, providing emergency shelter and protection. Credit: IOM/Mohammed Muse

その例の一つが、ダリウス・ナシミ(ACAAの資金調達・パートナーシップ責任者)が設立した「Afghanistan Government in Exile(AGiE)」である。AGiEは、人権、民主主義、安定を掲げる包摂的連合であり、タリバンへの対抗軸として機能し得る。

一般のアフガン市民の苦境は、すでに深刻である。パキスタンとイランから数千人規模が強制送還され、タリバンが十分な保護や生計支援を提供できない状況下のアフガニスタンへ戻されている。国内人口の3分の2が支援を必要としている一方、人道支援の財政と体制は逼迫し、医療も崩壊の瀬戸際にある。国際的な「ドナー疲れ」、米国の支援凍結、国際社会の関心の移行を背景に、人道資金は急減している。送還された人々は逮捕や拷問、さらには処刑の危険にさらされている。教育、就労、移動の自由を奪われた女性と少女もまた、権利を剥奪された生活へと送り返されている。

Photo: US troops leaving Afghanistan. Source: Daily News, Sri Lanka.
Photo: US troops leaving Afghanistan. Source: Daily News, Sri Lanka.

状況をさらに悪化させ得る要因として、英国はARAPとACRSの終了を発表した。両制度は、NATOや英軍に協力し、タリバンによる迫害から逃れるアフガン人にとって、英国での再定住に向けた数少ない合法的ルートだった。英国国防省の個人情報流出を受け、情報が流出した対象者は現在も危険にさらされている。ACAAはこの発表を受け、ARAP終了の是非を争う司法審査(judicial review)の申立てに向けた法的手続きの準備に着手した。

世界が一般のアフガン市民の苦しみを忘れ去りかねない今、インドには、人権を軸に国際的対応を主導する余地がある。アフガンの人々の民主的な代表性を確保し、人権を求める取り組みをつなぎとめるためである。

ヌーラルハク・ナシミは(ACAA=Afghanistan and Central Asian Association)の創設者兼CEO。

Original URL: https://londonpost.news/new-delhis-risky-gamble-hosting-the-taliban-amid-a-shifting-regional-order/

INPS Japan

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|スーダン|国連、紛争の激化を警告 ドローン攻撃で民間人犠牲、地域波及リスクも拡大

【国連ATN=ニュースチーム】

国連は月曜日、スーダンの戦争がより危険な段階に入ったと警告した。戦闘の激化に加え、ドローン攻撃による民間人の死者が相次ぎ、周辺国への波及リスクも高まっているという。国連安全保障理事会は、紛争が約1,000日目に近づくなか、情勢評価の会合を開いた。

安保理で報告した国連政治・平和構築局のハレド・ヒアリ事務次長補は、乾季に入って再燃した暴力が、民間人攻撃の激化への懸念を裏付けたと語った。とりわけコルドファン地域では、即応支援部隊(RSF)が支配地域を大きく広げているという。

「日を追うごとに、驚くべき水準の暴力と破壊が続いている」とヒアリ氏は理事国に述べ、民間人の苦難は「甚大」で、終わりは見えないと訴えた。

コルドファンが焦点に 石油インフラも危機

戦闘の中心は、西コルドファン州と南コルドファン州に移りつつある。国連当局によれば、RSFは12月1日にババヌサ、12月8日にヘグリグを制圧した。ヘグリグは南スーダン産原油をポートスーダン経由で輸出するうえで要衝となる油田・処理拠点だ。カドゥグリとディリングは包囲が強まり、封鎖状態が深刻化している。

Map of Sudan
Map of Sudan

また、スーダン―南スーダン国境をまたぐ武装勢力の移動が双方方向で報告されており、石油インフラ保護のために南スーダン部隊がスーダン側へ入った動きも含まれるという。ヒアリ氏は、対応を怠れば両国の不安定化につながり得ると警告した。

ドローン攻撃と平和維持要員の死亡

安保理で特に強い懸念として示されたのは、双方による無差別ドローン攻撃の増加である。ヒアリ氏は、南コルドファン州カロギで12月4日に起きた攻撃に言及した。ドローンが幼稚園を攻撃し、その後、最初の攻撃の負傷者を治療していた病院も攻撃を受け、少なくとも子ども63人を含む100人超が死亡したという。

さらに12月13日には、共同国境検証・監視メカニズム(JBVMM)が使用していたカドゥグリの国連補給拠点がドローン攻撃を受け、アビエイ国連暫定治安部隊(UNISFA)に所属するバングラデシュの平和維持要員6人が死亡、9人が負傷した。UNISFAは調査を開始し、安全上の懸念からカドゥグリから要員を退避させた。

国連平和維持要員を標的とする攻撃は、国際法上の戦争犯罪に当たり得るとヒアリ氏は述べ、要員の安全は「譲れない」と強調した。

人道危機が深刻化

同じく安保理で説明した国連人道問題調整事務所(OCHA)の危機対応担当、エデム・ウォソルヌ氏は、民間人の死亡、避難民の増加、そして人道ニーズが急速に拡大していると警告した。

Refugees in Darfur. Public Domain.

ウォソルヌ氏によれば、南コルドファン州では12月4日から16日までの間だけで、ドローン攻撃により1,000人を超える民間人が死亡した。北コルドファン州でも状況は同様に深刻で、ダルフール一帯では市場が崩壊し、基本サービスが失われているという。
「私たちは安全を感じられない」とウォソルヌ氏は理事国に語り、人道支援従事者に対するより明確な安全保証を求めるとともに、戦闘停止と武器流入を止める取り組みの再強化を訴えた。

安保理では主張が交錯

ロシア代表は、スーダンに対する外部からの圧力を退け、政治的解決策の押し付けだと批判した。
「スーダンの現政権の正統性は疑問視されるべきではない」と述べ、同政権の改革ロードマップを支持するよう理事会に求めた。また、政府の統制を介さずに行われる人道支援は調整を損ない、不安定化を招きかねないと警告した。

一方、暫定首相のカミル・エル=タイエブ・イドリス氏は、安保理暫定手続規則第37条に基づき発言し、「国内発の」和平構想を提示した。危機の深刻さを認めつつ「希望そのものが包囲されている。」と述べ、国連、アフリカ連合(AU)、アラブ連盟が監視する停戦案を示した。さらに、武装解除、反政府戦闘員の生体認証登録、避難民の帰還促進策なども盛り込んだ。

アラブ首長国連邦(UAE)は、紛争との関与を示唆する指摘を否定し、地域波及への警戒を強めた。
「国際社会は、この内戦がスーダン周辺国に不安定化リスクを生み出すのを傍観してはならない」とUAE代表は述べ、米国主導の人道停戦やクアッドの外交プロセスへの支持を表明した。同時に、紛争の根本要因に対処できるのは独立した文民主導の政府だけだと強調した。

Sudan Conflict Correlation Diagram
Credit: INPSJ
Sudan Conflict Correlation Diagram
Credit: INPSJ
外交努力は継続

ヒアリ氏によれば、スーダン担当の事務総長個人特使ラムタン・ラマムラ氏は、交戦当事者双方に加え、地域・国際パートナーとの協議を継続している。協議には、アフリカ連合(AU)、政府間開発機構(IGAD)、アラブ連盟、欧州連合(EU)などが関与し、AU主導の「スーダン国内対話」の推進を図っているという。

紛争が1,000日目に近づくなか、ヒアリ氏は、戦争を助長する者は責任を問われるという明確で一致したメッセージを安保理が発すべきだと訴えた。そのうえで、民間人保護と即時の戦闘停止に向け、あらゆる手段を活用するよう求めた。
「国連は、スーダン国民と地域の安定のため、包摂的な和平への道を支えるべく全面的に尽力している」と述べた。(原文へ

INPS Japan/ANT

Original URL: https://inpsjapan.com/en/sdgs/un-warns-sudan-conflict-escalating-as-drone-strikes-kill-civilians-regional-risks-grow/

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爆撃と投票—ミャンマー、緊張下の総選挙

【ミャンマー・ヤンゴン/バンコクIPS=ガイ・ディンモア】

内戦が数年にわたり続き、民間人の死者は数千人に上る。政治犯もなお2万2000人以上が収監されたままだ。こうした状況下で、ミャンマーが2021年のクーデター後に初めて実施した、しかし厳しく管理された選挙の早期開票結果が、軍の「代理政党」の勝利を示していても、驚く者はいなかった。

Map of Myammar
Map of Myammar

「民間人を爆撃しながら、同時に選挙を行うことなどできるのか。」国外で情勢を監視する人権活動家キン・オーマーは、抵抗勢力と影の政府(国民統一政府=NUG)が「茶番(sham)」として拒否する今回の投票を念頭に、そう問いかけた。

軍政はすでに、自らが掲げる「真に規律ある複数政党制民主主義」へ向けた地ならしを進めていた。選挙を不当として登録を拒んだ約40政党を解散させ、指導者や支持者の多くはいまも獄中にある。

解散対象には、国民民主連盟(NLD)と党首アウン・サン・スー・チーも含まれる。NLDは2020年総選挙で圧勝し、2期目の続投を決めたが、クーデターを主導し、自ら大統領代行を名乗るミン・アウン・フライン上級大将が結果を無効化した。2021年初頭の大規模な街頭抗議は弾圧され、内戦は全土に拡大した。

ヤンゴンのベテラン分析者は「潮目は軍に有利に変わった」と述べ、中国とロシアの影響を指摘した。国境を接する少数民族武装勢力を中国が抑え込み、ミン・アウン・フラインを全面的に受け入れたうえ、ロシアとともに、抵抗勢力を押し返すために必要な武器、技術、訓練を供給したという。

UN News
UN News

軍政は、航空戦力と新たに獲得したドローンを容赦なく投入してきた。攻撃は、抵抗勢力が草の根の支持を持つ比較的遠隔地で行われることが多く、民間人がしばしば標的となっている。選挙が近づくにつれ、空爆は激しさを増した。ヤンゴンのような大都市は比較的落ち着いていたものの、社会全体には重苦しい空気が漂っていた。

AFPによると、12月5日にはサガイン地方タバイン郡区への爆撃で18人が死亡し、混雑する茶屋にいた人々も犠牲となった。12月10日には、ラカイン州の古都ミャウ・ウーで病院が空爆され、入院患者10人を含む23人が死亡した。軍政側は、アラカン軍や人民防衛隊(PDF)が病院を拠点として使用していたと主張している。

Photo: António Guterres, United Nations Secretary-General, at the Security Council meeting on Non-proliferation/Democratic People's Republic of Korea on December 15, 2017. Credit: UN Photo/Manuel Elias.
UN Photo

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、投票を前に地域を訪問した際、「自由で公正な選挙になると信じている者は誰もいない。」と語った。さらに、軍政に対し「嘆かわしい」暴力を終わらせ、市民統治への「信頼できる道筋」を示すよう求めた。

一方、トランプ政権は11月、軍政が進める選挙計画を「自由で公正なもの」と位置づけ、米国内にいるミャンマー難民に対する一時的保護資格(TPS)を終了させた。政権は、ミャンマーに帰還しても安全だと判断した。

「投票しなければ投獄されるかもしれない。」投票前日、ヤンゴンでタクシーを運転するミンは、半ば冗談めかしてそう語った。「どうせ何も変わらない。この国を動かしているのは、ミン・アウン・フラインではなく、中国と習近平だ。」

Campaigners for the pro-military USDP canvas residents and check voters lists in Yangon ahead of the December 28 parliamentary election that excluded major anti-junta parties. Credit: Guy Dinmore/IPS

投票は3段階で実施される。第1回は12月28日に102郡区で行われ、残りは1月11日と1月25日に続く。対象は、二院制の国民議会と、14の管区・州の議会で、計330郡区のうち265郡区で投票が予定されている。

残る65郡区では、選挙管理当局が治安上の理由で投票を実施しない。

第1回投票が行われたヤンゴン(都市部と周辺の半農村地帯が広がり、人口約700万人)では、静かな日曜日、投票は落ち着いた雰囲気のまま、ゆっくりと進んだ。軍政は投票率の引き上げに強い圧力をかけ、脅しがあったとの指摘もあるが、現場は大きな混乱が見られなかった。

2015年と2020年には、ミャンマーは地域で最も開かれ公正な選挙を実施したとも評された。ミャンマー国軍の代理政党である連邦団結発展党(USDP)は大敗し、人々は投票の証しとして、消えないインクで染まった小指の写真をソーシャルメディアに競うように投稿した。数週間にわたる大規模集会と活気ある選挙戦が続いた。

だが今回は違う。ソーシャルメディアには体制への罵倒があふれ、滑稽で下品な投稿も少なくない。抵抗勢力が呼びかけたボイコットを支持したい一方、報復を恐れる人々は、有権者名簿から自分の名前が「誤って」漏れているのを見つけると安堵した。初めて導入された電子投票機では、候補者欄を空欄のまま提出することもできなかった。

Residents in downtown Yangon check their names on the electoral register and then cast their votes in a polling station on December 28. Credit: Guy Dinmore/IPS

それでも、従来の選挙と同様に、軍とその強大な経済利権ネットワークに近い人々からなる「中核層」は、連邦団結発展党(USDP)に投票するため投票所に足を運んだ。

「私たちは自分たちの政府を選んでいる」。ヤンゴン中心部の投票所から家族とともに出てきた男性は、そう宣言した。男性はUSDP支持者とみられ、同行者の1人は、消えないインクに浸した小指を誇らしげに掲げた。

第1回投票の投票率について、軍政当局は52%と発表した。過去2回の選挙での約70%と比べ、低下している。中国は、特使を「公式オブザーバー」として派遣し、ロシア、ベラルーシ、ベトナム、カンボジアなどの代表団とともに選挙を評価した。

1月2日、選挙管理委員会は予告なく部分開票結果を公表した。開票が終わった下院40議席のうち、退役将軍が率いるUSDPが38議席を獲得したという。誰も驚かなかった。

USDPの選挙メッセージは、主に2点に集約されていた。家族そろって投票に行くこと、そして「安定と前進」を取り戻すためUSDP政権を支持すること、である。

その底流にあるのは、過去の「実績」への想起だった。NLDなどが不在だった2010年総選挙で大勝した後、テイン・セイン大統領(当時)が、社会経済・政治改革と、少数民族武装勢力との停戦交渉を導入したことを強調する構図である。

Aung San Suu Kyi
Aung San Suu Kyi Credit: cc-by-2.0 

スー・チーは当時、自宅軟禁下にあったが、2010年選挙直後に解放され、2012年の補欠選挙で当選した。さらに2015年にはNLDが圧勝し、政権を奪取する。だがスー・チーは、その後5年間、軍との難しい権力分有の下で統治を行い、クーデターで再び投獄された。

現時点で、ミャンマー人口の多くは軍政支配地域に暮らす。14の管区・州の首都はすべて軍政の管理下にあり、紛争から逃れた人々の流入で膨張している。軍はまた、主要港湾と空港を押さえ、中国およびタイとの主要な国境検問所も、程度の差はあれ掌握している。

しかし領域で見れば、ミャンマーの半分以上は、分散した少数民族武装勢力や抵抗勢力の手にある。連携は流動的で、交渉可能なものだ。

影の国民統一政府(NUG)は、解放地域で独自の統治権限を確立しようとしている。軍の干渉を排し、民主的で連邦制のミャンマーを築くという理念の下で合意形成を固める狙いだ。だが、それは英国植民地支配から独立した1948年以来、この国が達成できずにきた課題でもある。

前線は揺れ動いている。軍は、かつて自らの牙城とみなしてきた中部のバマー(ビルマ)中核地帯の掌握回復を図る一方、クーデター後に国境地帯の広大な領域を失い、他地域でも戦線を引き伸ばされている。国外へ逃れた人々、あるいは国内避難を余儀なくされた人々は、数百万人に達した。

一方で、今回の選挙が「円滑に」進み、4月に連邦団結発展党(USDP)政権が発足すれば、軍は自信を誇示するかたちで、強制徴兵の停止や一部政治犯の釈放といった措置を打ち出すのではないか、との見方もある。まず力を誇示し、次に正統性を回収する―そうした構図である。

「政治犯は餌として使われている。」

バンコクを拠点とする人権活動家キン・オーマーは、そう語った。軍政が選挙後に政治犯の一部釈放などの“譲歩”を示せば、弾圧の構造が変わらなくても、国際社会はそれを「前進」と受け取り、一定の評価を示さざるを得なくなるという。

「世界は、少なくとも拍手を送らざるを得なくなる」と、彼女は皮肉を込めて付け加えた。(原文へ

INPS Japan/ IPS UN Bureau Report

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世界の「右利き」と「左利き」の拷問者たち

【国連IPS=タリフ・ディーン】

ジーン・カークパトリック元国連米大使はかつて、米国や西側の同盟国である「友好的な」右派の「権威主義」体制と、米国が敵視した「非友好的な」左派の「全体主義」独裁を区別するという、議論を呼ぶ見方を示した。

Collage: Thalif Deen
Collage: Thalif Deen

同じ頃、米国の歴代政権は、中東を中心に多くの権威主義体制と親密な関係を深めていた。非常事態法の導入、反体制派の拘束、報道への弾圧、政治犯への拷問、死刑の厳格な適用などが広く指摘されていた政権である。

こうした「友好的な右派」と「非友好的な左派」という区別に対し、当時(カーター政権で)、国家安全保障担当補佐官ズビグニュー・ブレジンスキーと路線対立を続けていたサイラス・バンス元米国務長官は、皮肉を込めてこう言い返した。

「拷問台の上では、拷問者が右派でも左派でも同じことだ。」

先月、国連の拷問に関する特別報告者アリス・ジル・エドワーズは、禁止対象の、または本質的に虐待的な法執行機器が市場に出回るのを防ぐため、治安・警察関連の見本市に対する厳格な監視が必要だと警鐘を鳴らした。11月18日から21日にパリで開かれた武器・治安関連見本市「Milipol 2025」で、そうした機器の展示が確認されたためである。

エドワーズは、「直接接触型の電気ショック装置、複数弾を同時に放つ運動エネルギー弾、マルチバレル(多連装)発射装置は、不必要な苦痛をもたらし、禁止されるべきだ。」と語った。さらに、「これらの取引や宣伝は、欧州連合(EU)加盟27カ国すべて、そして世界規模で禁じられるべきだ。」と訴えた。

EUの「反拷問規則(Anti-Torture Regulation)」は2006年に導入され、2019年に強化された。同規則の下では、拷問や残虐・非人道的・品位を傷つける取扱いに用いられ得る特定の機器について、企業による宣伝、展示、取引が禁じられている。国連のプレスリリースによれば、EUは2025年、禁止・規制対象となる法執行関連品目のリストをさらに拡大した。

拷問被害者センター(CVT)の社長兼CEOサイモン・アダムズ博士はIPSの取材に対して、CVTは拷問の被害者の回復を支援し、拷問根絶を訴える世界最大規模の団体の一つだと説明した。そのうえで、特別報告者の取り組みと、もっぱら人間の苦痛を与える目的で設計された製品を企業が売り込み、宣伝し、販売・取引することを止めるキャンペーンを支持すると語った。

「拷問は国際法上の犯罪であり、いかなる場所でも、いかなる時でも違法である。治安当局が人権侵害のために常習的に悪用している装備や、拷問以外の用途を持たない装備を、企業が市場に出し続けることは許されない。」と、アダムズ博士は強調した。

「CVTでは、拷問のトラウマを抱えた被害者と日々向き合っている。多くは難民で、出身国では、見本市で売り込まれていた類いの装置が治安部隊によって使われている。EUは、拷問に利用される装備の取引を断つ『拷問のない取引(torture-free trade)』を確立する運動の主要なパートナーだった。」

The United Nations has always condemned torture as one of the most heinous acts perpetrated by man against man.Photo:UN/Staton winter

さらにアダムズ博士は、「EU域内で企業がこうした製品を宣伝できるなど、良心に反する。そもそも、そんな製品が存在すること自体が異様だ。人間の残酷さを商う取引は、全面的に禁止されるべきである。」と断じた。

国連によれば、同見本市では、特別報告者が以前「本質的に虐待的(inherently abusive)」と位置づけた装備が幅広く展示されていた。展示・宣伝されていた問題装備には、直接接触型の電気ショック武器(警棒、グローブ、スタンガン)、突起付きの暴動鎮圧用盾、複数弾を放つ運動エネルギー弾の弾薬、多連装発射装置などが含まれる。

これらの製品は、ブラジル、中国、チェコ、フランス、インド、イスラエル、イタリア、カザフスタン、北マケドニア、韓国、トルコ、米国の企業が売り込んでいた。

EU法で新たに禁止対象とされた品目には、「人体に害を及ぼし得る量の暴動鎮圧剤を散布する航空システム」も含まれる。にもかかわらず、多連装発射装置を搭載し、大量の化学刺激物を散布し得るドローンが宣伝されていたと国連は指摘する。

Milipolの主催者に問題装備の存在が通知されると、主催者は迅速に対応し、企業に対してカタログ掲載ページや展示物の撤去を求めた。エドワーズによれば、ある国有企業が撤去に応じず、その出展ブースは閉鎖された。

Dr. Alice Jill Edwards (Australia) is the seventh – and first woman – UN Special Rapporteur on Torture and Other Cruel, Inhuman or Degrading Treatment or Punishment
Dr. Alice Jill Edwards (Australia) is the seventh – and first woman – UN Special Rapporteur on Torture and Other Cruel, Inhuman or Degrading Treatment or Punishment 

エドワーズは「本質的に虐待的な兵器の宣伝が続く現実は、各国が私の2023年報告書の勧告を採用すべき緊急性を、改めて浮き彫りにしている。」と述べた。

EUが規制強化に踏み出した点を評価しつつも、エドワーズは「地域的な取り組みだけでは不十分だ」と強調する。さらに示唆的なのは、次の指摘である。「Milipolでの発見は、世界的に法的拘束力を持つ『拷問のない貿易条約(Torture-Free Trade Treaty)』が不可欠であることを示している。国際的な規制が連携しなければ、虐待的な装備は新たな市場、新たな流通経路、新たな犠牲者を見いだすだけだ。」

エドワーズは、世界各地の治安・防衛・警察関連展示会の主催者に対し、強固な監視体制の構築、禁止措置の一貫した執行、そして独立した調査機関との全面的な協力を求めた。

さらに「Milipolの対応は迅速で責任あるものだった。しかし、禁止品がそもそも展示されていた事実は、不断の警戒が不可欠であることを示している」とも述べた。

エドワーズは過去にも同様の問題提起を行っており、今後も関連動向を監視し続けるとしている。(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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米国の国際機関離脱、世界に警鐘

【国連IPS=オリトロ・カリム】

ドナルド・トランプ米大統領が、国際機関66組織(うち国連関連31機関)への米国支援停止を命じる大統領令に署名したことを受け、関係機関や国際社会、人道・気候分野の専門家から反発が広がっている。世界的協力や持続可能な開発、国際平和と安全保障への悪影響が懸念されている。

この大統領令は、米国がこれまでに世界保健機関(WHO)、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)、国連人権理事会(UNHRC)、国連教育科学文化機関(UNESCO)から離脱してきた流れを引き継ぐものだ。米国は最近、対外援助関連機関への資金も削減している。|英語版日本語韓国語

対象となった国際機関・団体の多くは、気候変動、労働、平和維持活動(PKO)、移民、市民社会の活動空間(civic space)などに関わる。米国務省は声明で、見直しの結果、これらの組織は「無駄が多く、非効率で、有害」だとした。

また同省は、対象組織を、米国の納税者資金で支えられる「進歩的イデオロギー」の媒体であり、米国の国益と整合しないと位置づけた。

U.S. Secretary of State, Marco Rubio Public Domain.

マルコ・ルビオ国務長官は「これらの機関は任務が重複し、運営も不全で、不要かつ浪費的だ。さらに、管理が不十分で、私たちと相反する議題を進める主体の影響下に置かれている場合もある。わが国の主権、自由、繁栄への脅威となり得る」と述べた。

その上で「成果がほとんど見えないまま、米国民の税金をこうした機関に注ぎ続けることは容認できない。自国民の負担を犠牲にして、外国の利益へ資金が流れ込む時代は終わった。」と強調した。

大統領令は、連邦政府のすべての省庁・機関に対し、離脱の実施に直ちに着手するよう指示している。影響を受ける国連機関については、米国の参加を終了し、拠出を停止することになる。ルビオ国務長官は、追加の国際機関についても見直し作業が継続中だと明らかにした。

人道支援の専門家や、影響を受ける多くの組織の報道官は、この措置に警戒と非難の声を上げている。気候行動、人権、平和構築、多国間ガバナンス、世界的な危機対応体制に深刻な影響を及ぼすとし、国際的不安定が増す局面での打撃を問題視している。

「きょう私たちは、世界的な協力から取引的な関係へと完全に転じていくのを目の当たりにしている。」と、NRDC(天然資源保護協議会)のヤミデ・ダグネット国際担当上級副代表は語った。

「共有された原則や法の支配、連帯よりも、取引主義が優先されつつあり、さらなる世界的不安定を招きかねない。地球規模の主要な環境・経済・保健・安全保障上の脅威に向き合うことを避ければ、米国は多くを失う。将来産業における信認と競争力を損ない、雇用創出や技術革新の機会を取り逃がし、科学技術の主導権を他国に明け渡すことになる。」

グネットは、各国指導者に多国間主義への関与を改めて求めた。「世界は米国より大きい。そして、私たちの問題の解決策も、米国だけでは完結しない。いま必要なのは、国だけでなく州や都市を含む国際的な協力であり、その重要性はかつてなく高い。世界の指導者が多国間の協働に断固として取り組まなければ、これらの地球規模の脅威を乗り越え、すべての人にとって安全で持続可能な未来を確保することはできない」と語った。
一方で、米国が国際的義務の履行を取捨選択し、トランプ大統領の優先事項に合致する事業や機関のみを支援する姿勢にも批判が集まっている。

「いま起きているのは、米国の多国間主義への姿勢が『こちらの言い分をのむか、さもなくば去れ』という形で、より鮮明に表れていることだ。ワシントンの条件でのみ国際協力を求めるという、きわめて明確な構図である。」と、国際危機グループのダニエル・フォーティ国連担当責任者は語った。

生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)は、米国がIPBESからの参加撤回を意図していることについて、「極めて失望させられる知らせ」だとして遺憾の意を表明した。今回の大統領令では、IPBESを含む60を超える国際機関・団体が離脱の対象とされている。

IPBES議長のデービッド・オブラ博士は、米国は創設メンバーであり、「2012年の設立以来、米国の科学者や政策担当者、先住民や地域コミュニティを含む利害関係者は、IPBESの活動に最も積極的に関与してきた貢献者の一部で、科学に基づく客観的な評価に重要な貢献をしてきた」と述べた。

The United Nations Headquarters as seen from First Avenue in New York City. Credit: UN News/Vibhu Mishra
The United Nations Headquarters as seen from First Avenue in New York City. Credit: UN News/Vibhu Mishra

さらにオブラは、IPBESの成果が、米国内のあらゆるレベルと領域の意思決定者に広く活用され、政策や規制、投資、将来の研究をより的確に方向づける一助となってきたとも指摘した。

オブラは米国の貢献に謝意を示しつつ、離脱はIPBESと地球に重大な影響を及ぼすと述べた。「残念ながら、100万種を超える動植物が絶滅の危機にあるという現実から、私たちは目を背けることはできない。環境影響によって世界経済が年に最大25兆ドルを失っているという事実も変えられない。いま行動しないことで、2030年までに10兆ドル超のビジネス機会と3億9500万人の雇用を生み出し得たはずの機会を失う。その損失は取り戻せない。」

Photo: United Nations Peacekeeping helps countries torn by conflict while creating conditions for lasting peace. Credit: United Nations.
Photo: United Nations Peacekeeping helps countries torn by conflict while creating conditions for lasting peace. Credit: United Nations.

歴史的に米国は国連最大の資金拠出国であり、国連の通常予算の約22%、PKO予算全体の約28%を拠出してきた。

米国が国連関連31機関への支援を引き揚げれば、大幅な予算不足に加え、人道支援要員の削減や、米国人職員が担ってきた重要な技術的専門性の喪失が見込まれる。こうした影響は、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた進捗を鈍らせ、長期化する危機下の人々への食料支援や医療サービスを縮小させる恐れがある。さらに、権威主義的な政府が人道的監視や介入への抵抗を強めることにもつながりかねない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の国連担当ディレクター、ルイ・シャルボノーは、「数十の国連計画・機関を含む国際機関から手を引くという米国の決定は、人権保護と国際的な法の支配に対するトランプ大統領の最新の攻撃にほかならない」と語った。

さらに「人権理事会からの離脱であれ、世界中の数百万人の女性と少女を支援する国連人口基金(UNFPA)への資金停止であれ、この政権は、米国が過去80年にわたり築いてきた人権制度そのものを破壊しようとしてきた。国連加盟国は、人権を守るための手段を解体しようとする米国の動きに抗し、重要な国連事業が必要な資金と政治的支えを確保できるようにすべきだ。」と訴えた。

U.N. spokesperson Stephane Dujarric/ UN Photo
U.N. spokesperson Stephane Dujarric/ UN Photo

国連本部での記者会見で、国連事務総長報道官のステファン・デュジャリックは、米国の離脱に対する国連の立場を説明し、米国の参加の有無にかかわらず、困窮する人々への支援を継続すると強調した。

「私たちが一貫して強調してきたように、総会が承認した国連の通常予算およびPKO予算への分担金は、国連憲章に基づくすべての加盟国の法的義務であり、米国も例外ではない。すべての国連機関は、加盟国から付与されたマンデートの実施を継続する。国連には、支援を必要とする人々のために責務を果たす責任がある。私たちは、引き続き断固として任務を遂行する。」と、デュジャリック報道官は語った。(原文へ

INPS Japan/ IPS UN Bureau Report

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YALA:新刊写真集はラリトプル訪問者必携、住民にも新発見の案内書

【カトマンズNepali Times=ソニア・アワレ】

Sonia Aware.
Sonia Aware.

パタンで生まれ育った私は、この街が芸術や建築、そして無形の文化遺産に富んでいることは知っていた。だが、この本に出会うまで、それがどれほど豊かで、自分がその「隠れた宝」をどれほど知らなかったのか、気づいていなかった。『Yala Mhasika/Exploring Lalitpur/Lalitpurko Chinari』はラリトプル商工会議所(Lalitpur Chamber of Commerce & Industry)が刊行した写真集で、街の魅力を世界に紹介すると同時に、住民自身にも改めてその価値を伝える内容となっている。

ラリトプルは一般にパタンとして知られる。おそらく周辺部に家畜の牧草地が広がっていたことに由来するのだろう。本来の名称はネパール・バサ(Nepal Bhasa)で「ヤラ(Yala)」であり、都市と農村、古さと新しさが溶け合う街である。

写真:パタン・ドカ

スォニガ(Swoniga=カトマンズ盆地)にあった他の王国と同様、家々や寺院、僧院が密集する市街地は高台に築かれ、農地はそこから川へ下る斜面に広がっていた。農業を基盤とする田園的環境の中に都市生活が同居する、この独特の景観が形づくられた。

街路から流れ落ちる有機物が土壌を肥やし続けたこと、そしてカトマンズ盆地がインドとチベットを結ぶ古代交易路の要衝に位置していたことが、盆地の諸王国に繁栄をもたらし、幾世紀にもわたる芸術と文化の開花につながった。

ヤラの住民の多くは、農業を営む人々や商人、金工・木工などの職人だった。6世紀にネパールを訪れた中国の使節(旅行者)は、この街では「農民より商人が多く、家より寺院が多い」と記している。チベットのラサ(Lhasa)と交易していた商人の子孫が集まって暮らす通りも、いまなお残る。さらに、ネパールを代表する仏教美術の名匠アルニコ(Araniko/1245年頃~1306年頃)がヤラに生まれたとする伝承も伝わっている。

写真:クォンティ地区。シヴァ神を祀る五重塔のクンベシュワル寺院と、ダシャ・マハーヴィディヤのシャクティ・ピートに捧げられたバグラムキ寺院がある

ネパールはチベットに物資を輸出し、さらには硬貨を鋳造して供給していた。主要なトランス・ヒマラヤ交易路を事実上独占していた時期もある。この繁栄は、クワ・バハ(Kwa Baha)の黄金寺院(Golden Temple)などの記念碑や祠に映し出されている。

スォニガの他の3王国にも増して、ヤラでは建築が発展し、金属・石・木工芸の中心地となった。「ラリトプル」という名は「美術の都」を意味するが、強い共同体意識を踏まえれば、「よく生きる都」と言ってもよいかもしれない。

伝承では、「ラリトプル」という名は、盆地が長い干ばつに苦しんでいた際、雨神カルナマヤ(Karunamaya)をアッサムから迎えるのを助けた農民ラリト(Lalit)に由来するとされる。ラリトが担い棒に使った梁は、今もジャタポル(Jhatapol)に残る。災害、侵攻、疫病はパタンの歴史で繰り返し登場するテーマでもあった。

写真:ハウガル・トレのアジマ(Ajima)。ネパール最古の石碑文とされ、チャヤサル(Chyasal)にはガジャ・ラクシュミ(Gaja Laxmi)がある

本書は文化遺産の専門家チーム、ロシャ・バジュラチャリヤ(Rosha Bajracharya)、スニル・パンデイ(Sunil Pandey)、アニル・チトラカル(Anil Chitrakar)が編纂した。パタンの社会経済・政治史を跡づけ、持続可能な農業によって近年まで食料余剰の街であり続けたことなどを描く。

Photo Venture Nepalによる地上・ドローン写真は、パタンをこれまでにない視点から捉えている。カルナマヤ(マチンドラナート=Machhindranath)の山車(チャリオット)祭には一章が割かれ、共同体が運営する祭礼の舞台裏が紹介される。バラヒ(Barahi)の大工が木組みを組み立て、ヤンバ(Yamva)の「つるの技術者」が高さ25メートルの山車に使う綱や籐を編み、ガク(Ghaku)の御者が狭い路地を進む巨大構造物の速度と制動を制御する。

写真:テ・バハル(Te Bahal)。カルナマヤが年の半分を過ごす場所
歩く、祈る

本書は、パタン・ドカ、プルチョーク(Pulchok)、シャンカムル(Shankhamul)、マハボウダ(Mahaboudha)、ラガンケル(Lagankhel)を起点とする5つのルートでパタンを歩いて巡る案内となる。地図とともに、バハ(baha)やバヒル(bahil)、祠、池、広場、デョチェン(dhyochenn)、中庭、ファルチャ(phalcha)などが道中の見どころとして紹介されている。

ただし、コーヒーテーブル・ブックとしての大判サイズと重量のため、持ち歩きには向かない。各地点の過去と現在について丁寧な説明がある一方で、読者は「もっと知りたい」という気持ちを残される。これは、パタンの宝があまりに膨大で、本書でさえ表面をかすったにすぎないことの証左でもある。

写真:パトゥコドム(Patukodom)。古代キラント王宮の遺構が残る

あまり知られていない必訪スポットの一つがパトゥコドムだ。ここは、パタンの原住民とされるキラント(Kirat)の王宮の名残である。考古学的発掘が行われれば、ネワ(Newa)以前のパタンの未知の側面が掘り起こされるかもしれない。

やや足を延ばす必要があるが、マハボウダ(Mahabouha)も見逃せない。ボードガヤの寺院を模したもので、3341体のテラコッタ仏と90体の大像を収める。完成までに35年、4世代を要したという。

写真:マハボウダ。ボードガヤの寺院の複製

最近の「パタン・バイ・ナイト(Patan by Night)」遺産ウォークでは、ピム・バハル(Pim Bahal)が、地元の少女に恋をしたラクヘ(lakhe)の悪鬼(現在は仮面舞踊で人気の存在)が情熱を注いだ「愛の労作」だと教わった。少女が遠くの水場まで水を汲みに行かずに済むよう、彼が池を掘ったのだという。近くにはチャルマティ・チャイティヤ(Charumati Chaitya)があり、紀元前3世紀にアショーカ王の娘が盆地を訪れ、ネパールに仏教を広めた際に建立したと伝えられる。

興味深いのは、カトマンズが「寺院の街」と呼ばれるのに対し、パタンは僧院(新仏教の寺院共同体で、礼拝や行事の拠点となる)を中心に発展してきた点である。そこでは仏教とヒンドゥー教の要素が重なり合い、密教的(タントラ的)な信仰や儀礼として独自の形をとってきた。例えば、仏陀の生涯の主要な出来事を象徴する古い仏塔(チャイティヤ)を集めたタダム・チュカ(Tadham Cuka)、ネパール最古級の石碑文とされるハウガル・トレの女神アジマ(Ajima)像、チャヤサル(Chyasal)に残るガジャ・ラクシュミ(象と結びついた吉祥の女神)像、さらにヒンドゥー教のシヴァ神信仰と金剛乗仏教の要素が交錯するビグナンタク・ガネーシャ寺院(Bignantak Ganesa temple)などが、その代表例として挙げられる。

写真:ビグナンタク・ガネーシャ寺院

本書は空間的な説明だけでなく、時間軸も提示する。農耕サイクルと黄道十二宮(zodiac)を織り合わせる形で、ラリトプルのジャトラ(jatra)、儀礼、信仰舞踊、祭礼の日時と場所を整理した詳細な文化カレンダーが編まれている。

写真:パタンのミプワ・ラクヘ(Mipwa Lakhe)。演舞の最中に火を出す。
写真:ダサインの期間、パタン・ダルバール広場で演じられるガン・ピャカン(Gan pyakhan)またはアスタマトリカ舞踊(Astamatrika dance)

最終章は水と自然に捧げられている。人々の暮らしと文明を支える水、そして祖先が残した給水システムが、浸食や汚染にもかかわらず今なお機能し続けているからこそ、ラリトプルはラリトプルであり続ける—という視点だ。

著者たちはこう記す。世界の歴史には、都市が築かれ、しばらく繁栄した後、空気や水、土壌の質を維持できずに衰退し、やがて考古学的遺跡となった例がある。その結果、人口が流出して都市は死に、歴史書の中でのみ言及される存在になった。ラリトプルは同じ過ちを繰り返さない、と。(原文へ

ソニア・アワレはネパーリ・タイムズ編集者で、保健、科学、環境担当の記者。気候危機、防災、開発、公衆衛生を、政治・経済との相互連関に着目しながら幅広く取材してきた。公衆衛生を専攻し、香港大学でジャーナリズム修士号を取得している。

INPS Japan

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