SDGsGoal10(人や国の不平等をなくそう)今年は数十億人が投票する - LGBTIQ+の人々を排除してはならない

今年は数十億人が投票する – LGBTIQ+の人々を排除してはならない

【国連IPS=ウルリカ・モデール、クリストフ・シルツ】

今年は「スーパー選挙」の年と呼ばれ、実に37億人もの有権者が投票に行く可能性がある。この歴史的な瞬間は、何十億人もの有権者がどのような経験をするのか、つまり、誰が投票するのか、誰が立候補できるのか、そして誰が政治プロセスから排除されるのか等を考える良い機会でもある。

誰もが自国の政治プロセスに参加する権利を有するべきであることは、言うまでもないことであり、世界人権宣言にも明記されている。近年、LGBTIQ+の権利を認め、擁護するために大きな前進がなされてきた。しかし、LGBTIQ+の人々をとりまく現実はしばしば大きく異なっている。

様々な進歩が見られてきた一方で、世界の3分の1の国が同性間の関係を違法とする法律を維持している。このような国に住むLGBTIQ+の人々は、有権者として、あるいは候補者として、選挙でどのような経験をするのだろうか。

家を出るたびに嫌がらせに直面し、最終的にはコミュニティから排除されるトランスジェンダーのことを考えてみよう。あるいは、ソーシャルメディアの偽情報によりネット上で絶え間ない憎悪に晒されているLGBTIQ+グループ、差別やヘイトスピーチ、あるいは身体的暴力を恐れることなく、政治的見解を表明する自由はどこまであるのだろうか。

このような経験は一過性のものではない。反LGBTIQ+の法律や政策が国によっては勢いを増し続けており、多くのLGBTIQ+の人々が日常生活で直面する偏見や差別が蔓延している。

そしてこれらの法律は、人々を沈黙させ、こうしたマイノリティーが社会に対して発言できる範囲を制限し、構造的な差別を定着させることで政治プロセスに直接的な影響を及ぼしている。

UNDPは数十年にわたり、こうした障壁を取り除き、すべての個人の人権を尊重する法律、 政策、プログラムを強化するための支援に取り組んできた。これは、LGBTIQ+の人々が多様なグループであり、様々な形態の差別に直面していることを認識し、幅広いグローバル・パートナーや擁護者と協力することを求めている。

しかし、世界人口の約半数が今年投票を行う可能性があると推定される中、自国のリーダーシップと政治的方向性を決定する人々が、私たちの住む世界の多様性を真に反映したものであることを確認する必要性に焦点が当てられている。

私たちには、彼らがそうなることを期待する理由がある。なぜなら、ルクセンブルクのようなパートナーの揺るぎない支援を受けて、UNDPはLGBTIQ+の権利を変革するために、LGBTIQ+の団体や活動家を含む世界的な取り組みを支援してきたからだ。

例えば、UNDPは昨年10月、欧州議会のLGBTIインターグループとの共同開催イベント』において「Inclusive Democracies(包摂的民主主義): 政治・選挙プロセスにおけるLGBTI+の参加を強化するための手引書」を発表した。

その目的は、政策立案者、選挙管理機関、立法者、市民社会、その他の利害関係者に、市民的・政治的権利、表現と結社の自由、公共サービスへのアクセスのより平等な行使に向けて取り組むための明確な一連のツールを提供することである。この出版物は、UNDPの世界的な活動から情報を得ており、主に南半球の80カ国以上からのベスト・プラクティスを収録している。

同時にUNDPは、世界の72カ国と全地域で、LGBTIQ+の人々や問題を開発努力に統合するために活動している。

これには、南部アフリカの若いキー・ポピュレーション(ゲイをはじめとする男性と性交渉を持つ若い男性、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックスの人々が含まれる)と協力して、主流メディアに登場する否定的なステレオタイプに異議を唱え、否定的なナラティブ(物語)を変えるための支援も含まれる。

支援は、若者のメディア・スキル・トレーニングを開催し、記者としてのスキルを身につけさせるとともに、自分たちに影響を与える問題についてアドボカシーを行うためのデジタル・プラットフォームの利用を強化することに重点を置いてきた。

しかし、デジタル・プラットフォームには大きな害を及ぼす力もあり、LGBTIQ+の人々は、しばしば不釣り合いなオンライン・ハラスメントに直面し、平等な政治参加への脅威となっている。ルクセンブルクの支援により、UNDPはジェンダー、性的指向、民族に基づいて個人を標的にする危険なオンライン言論との闘いを優先してきた。

例えば、UNDPの取り組みの一環であ る「カーボ・ベルデ自由で平等なキャンペーン」は、ジェ ンダーに対する固定観念と闘い、法的手段やコミュニ ケーション手段を通じて偏見をなくすことに重点を置いている。

LGBTIQ+の権利に取り組む世界的な取り組みは、影響を与えつつある。ジョージタウン大学のオニール研究所、UNDP、「HIVとともに生きる人々の世界ネットワーク(GNP+)」が共同で作成した最近のHIVポリシーラボ報告書では、世界中で合意による同性間の性交渉が非犯罪化される傾向が続いていることが明確に示されており、2022年には過去25年間のどの年よりも多くの国が刑罰法規を撤廃している。

これらの進歩は、共同の努力の一環である。なぜなら、包摂的で公平な社会の構築は、パートナーとの連携を築くことを意味するからである。UNDPでは、ルクセンブルクのようなパートナーがこの重要な活動に資金を提供し、LGBTIQ+の人々が直面する不公正に光を当てることを支援しており、その重要性は決して過小評価されていない。

人権への投資は私たちの社会への投資でもあることからこの点は重要である。UNDPは、ルクセンブルクと主要なドナーの支援を得て、誰であろうと、どこであろうと、人々が自分たちの社会を形成する上で声を上げることができるよう支援する活動に取り組んでいる。

今年は、かつてないほど注目度が高い。選挙での決定が、社会の発展や人権の尊重に大きな影響を与えるだろう。だからこそ私たちは、この機会にパートナーシップを認識し、LGBTIQ+コミュニティへのコミットメントを新たにしなければならない。

世界の関心は、選挙の勝者と敗者に集まるだろう。しかし、結果はパズルの1ピースに過ぎない。行われる政治プロセスが包括的で、信頼でき、平和的であることを確実にすることが、最終的に、誰もが投票でき、誰もが立候補でき、そして最も重要なことは、誰も沈黙を強いられることのない世界を構築する方法である。(原文へ)

ウリカ・モデールは国連事務次長補兼UNDP対外関係・アドボカシー局長、クリストフ・シルツはルクセンブルク外務・欧州問題・国防・開発協力・対外貿易省開発協力・人道問題局長。

INPS Japan/IPS UN Bureau

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