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「危険シーズン」を乗り切るための「セーフティー・チェーン」―偽情報から身を守るには

【ミラノINPS Japan/CitiPlat(気候変動と持続可能な世界のための市民プラットフォーム)編集部】

北北米では今、気候変動の影響が最も深刻になる5月から10月までの「危険シーズン(Danger Season)」が、2026年も本格的に始まっている。この時期には、ソーシャルメディアをはじめとするさまざまなプラットフォームで、偽情報が一段と増えることが予想される。|英語版|

CitiPlat
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だからこそ、私が「セーフティー・チェーン」と呼ぶ一連のつながりを維持することが、これまで以上に重要になる。この連鎖がしっかり機能していれば、気候変動によって深刻化し、私たちの身に迫る可能性のある異常気象や災害を正しく理解し、それに備え、被害を受けた場合にも、できるだけ迅速かつ人道的に復旧するために必要な情報を得ることができる。

しかし残念ながら、トランプ政権、とりわけ行政管理予算局(OMB)のラッセル・ヴォート局長は、予算削減、科学者の解雇、監督の拒否、説明責任の回避、さらには露骨な偽情報の拡散を通じて、このセーフティー・チェーンのほぼすべての環を弱体化させてきた。

気候変動の影響が、反科学的な政権、そして私たちに経済的な打撃を与えるその政策と重なり合うことで、「危険シーズン」は三重に危険な時期となっている。

「セーフティー・チェーン」とは何か

「セーフティー・チェーン」とは、危険シーズンや気候変動によって深刻化する災害から私たちを守る、一連のつながりを指す私の呼び方である。

その出発点となるのは正確なデータである。それによって、明確で理解しやすい気象予報が可能になる。そして、その予報が信頼できる発信者を通じて伝えられることで、人々の理解が深まり、個人や地域社会が適切な備えを行い、必要な場合には効果的に対応し、復旧することができる。

誰がセーフティー・チェーンを壊しているのか

トランプ政権は、気候システムを理解するうえで不可欠なデータ収集や研究支援を停止してきた。こうした連邦政府による気候研究への打撃は、結果として気象予報の精度や基盤をも損なう。

さらに事態を悪化させているのが、政権自らが気候科学に関する偽情報を積極的に広め、化石燃料業界が長年用いてきた主張を繰り返していることである。

トランプ大統領自身も、前政権時代にハリケーンの進路予測をめぐる自らの誤りを訂正することを拒み、いわゆる「シャーピーゲート(SharpieGate)」では、政権側に自らの主張を擁護させた。ハリケーンの進路について誤った情報を発信することは、気象予報士を含む科学コミュニケーターが市民に正確な情報を伝える力を損なう。

一方、連邦緊急事態管理庁(FEMA)は、トランプ政権下のこの15カ月間、激しい混乱に見舞われてきた。経験と専門性を備えた指導部が失われ、その後を十分な資質を欠く指導部が担ったことで、人材流出が進み、FEMAの災害対応能力に疑問が投げかけられている。

トランプ大統領は、民主党支持の強い「ブルー・ステート」に対する災害支援を遅らせたり拒否したりしてきたほか、地域社会の防災・減災を支えるFEMAの取り組みを廃止しようともしてきた。その一つが、「強靱なインフラと地域社会の構築(Building Resilient Infrastructure and Communities=BRIC)」プログラムである。

しかし、連邦裁判所が二度にわたり命令を出した結果、国土安全保障省(DHS)はようやく、インフラ投資・雇用法とFEMAの災害救援基金(DRF)の留保分から確保された46億ドルのうち、10億ドルについて資金提供の通知を出した。

FEMAの災害対応資金は、危険シーズンが始まる前から危険なほど低い水準にあったが、議会がDHSの政府機関閉鎖を終結させたことで、切実に必要とされていた追加資金がようやく確保された。

今年の大西洋ハリケーンシーズンは平年よりやや穏やかになると予想されているものの、DRFについては、シーズン途中で議会による追加予算措置が必要になる可能性が高い。

その一方で、FEMA長官代行を務めたキャメロン・ハミルトン氏が、現在、同庁長官候補として再び指名されている。ハミルトン氏は、法律で求められる資格を満たしておらず、ソーシャルメディア上でFEMAに関する誤情報を共有したことも自ら認めている。

トランプ政権による数千人規模の人員削減、不安定な指導体制、資源の削減によって、連邦政府の緊急事態管理能力は弱体化してきた。その結果、FEMAは、頻度と強度を増す異常気象や、気候変動によって深刻化する災害に対応する態勢を十分に整えにくくなっている。

As climate change intensifies wildfires, heat waves, hurricanes, floods, and other disasters, a strong “safety chain” linking accurate data, trusted information, preparedness, and effective response is essential. Disinformation and the weakening of public institutions can break that chain and make disasters even more dangerous.
気候変動で激しさを増す山火事、熱波、ハリケーン、洪水などの災害に備えるには、正確なデータ、信頼できる情報、適切な防災・対応をつなぐ「セーフティー・チェーン」が欠かせない。偽情報や公的機関の弱体化は、その連鎖を断ち切り、被害をさらに深刻化させる恐れがある。イメージ:INPS Japan
偽情報はどのようにセーフティー・チェーンを壊すのか

気候変動によって深刻化した異常気象や災害が発生する際、化石燃料企業、それと連携する政治勢力、関連するメディアや擁護団体のネットワークは、市民の理解や公的機関への信頼、気候対策や災害対応への支持を損なう偽情報を繰り返し拡散、増幅してきた。

こうした偽情報は、大きく五つの類型に分けることができる。

1.原因の歪曲

例えば、山火事の原因を事実に反して放火だとするソーシャルメディア上の投稿は、正確なデータ、予報、そして状況の理解を結ぶ連鎖を断ち切る。

その結果、人々が危険を過小評価したり、逆に過剰反応したりする可能性がある。

2.責任の所在の歪曲

異常気象や災害を深刻化させる気候変動の役割が認識されなければ、化石燃料業界など、気候変動を主に引き起こしてきた企業に十分な責任を問うことができなくなる。

その結果、責任を負うべき相手を取り違え、問題の根本原因に十分対処できなくなる。

3.信頼への攻撃
「政府機関や当局者は何も分かっていない」「政府は私たちのことなど気にかけていない」といった主張は、信頼を築き、人々の適切な備えにつなげる情報伝達を損なう。
その結果、人々が警告を無視したり、行動を遅らせたりする恐れがある。例えば、ハリケーンの接近を前に避難を拒むといった事態につながりかねない。
その一方で、トランプ政権の下では、政府が実際に何をしているのか、あるいはどのような意図で行動しているのかを見極めること自体が、ますます難しくなっている。

4.誤った安心感を与える情報
一方、人々に「危険はない」と思わせるような誤った安心感は、状況の理解と、備えや対応とのつながりを断ち切る。
当局やメディアから「緊急事態ではない」と受け取れる情報が発信されれば、人々は避難を遅らせたり、必要な予防措置を取る機会を逃したりする可能性がある。
重要なのは、こうした誤った安心感が、必ずしも偽情報やプロパガンダによって生み出されるとは限らないという点である。例えば、危険な熱波のさなかに、人々が浜辺で楽しんでいる映像を流すだけでも、「安全だ」という誤った印象を与えかねない。

5.論点のすり替え
「論点のすり替え」とは、悪意ある主体が、災害警報や防災、災害対応を、選挙や移民といった社会的に対立の激しい問題と意図的に結び付け、有害なメッセージを持ち込むことである。その標的となった人々は、避難所や支援サービスの利用を避けたり、公的機関による公式の情報提供を敬遠したりする恐れがある。

私たちに何ができるのか

第一に、ヒポクラテスの誓いにならい、「まず害を与えない」ことを心がけてほしい。特にソーシャルメディアで情報を共有する前には、情報源を確認することが重要である。検索や投稿日時の確認、情報の出所をたどるために利用できるさまざまなツールがある。

「気候偽情報に対抗する行動(Climate Action Against Disinformation=CAAD)」連合は、気候や異常気象をめぐる偽情報キャンペーンの動向を示すブリーフやデータモニターを公表している。

第二に、米国立気象局(NWS)や地域の緊急対応機関など、信頼できる情報源をすぐに確認できるようにしておくことである。気候変動と異常気象との科学的な関係を理解するためには、憂慮する科学者同盟(UCS)の「Danger Season」に関する情報や、提携団体Climate Centralの活動にも目を向けてほしい。

信頼できる情報は、できるだけ周囲と共有することも大切である。正確な情報が不足すれば、その空白を偽情報が埋めることになるからだ。

第三に、異常気象や災害が、選挙や移民など社会的に対立の激しい問題と結び付けられていないか注意する必要がある。情報の歪曲や信頼を損なう攻撃が持ち込まれていないかを見極め、そうした動きが見られた場合には、偽情報に効果的に対抗する方法をまとめたUCSの各種資料を活用してほしい。

最後に、セーフティー・チェーンの重要な環を立て直すため、必要な資金と議会による監督を確保するよう、私たちとともに議会に働きかけてほしい。それには、連邦政府の気候科学研究や災害への備え・対応に十分な資金を確保し、適切な監督を行うことが含まれる。

INPS Japan

ORIGINAL URL: https://www.citiplat.org/post/your-anti-disinformation-safety-chain-for-danger-season

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イスラエルのスタートアップ、革新技術で世界の水危機に挑む

【エルサレムINPS Japan=ロマン・ヤヌシェフスキー】

気候変動、急激な人口増加、都市化、産業の拡大、淡水資源への負荷の増大により、世界では数十億人が水不足に直面している。国連によると、今なお20億人以上が安全に管理された飲料水を安定して利用できず、長期化する干ばつと地下水資源の減少が世界各地の地域社会を脅かし続けている。|英語版|ロシア語|ノルウェー語|

Roman Yanushevsky
Roman Yanushevsky

イスラエルほど、この課題を切実に理解している国は少ない。世界有数の乾燥地域に位置する同国は、安定した水供給を確保する方法を数十年にわたり模索してきた。国としての必要性から始まった取り組みは、やがてイスラエル最大の技術的成功の一つへと発展した。科学研究、工学、起業家精神への継続的な投資を通じ、イスラエルは水資源に乏しい国から、世界をリードする水技術イノベーションの拠点の一つへと変貌した。

今日、イスラエルのスタートアップ企業は、政府、自治体、産業界、農家が水をより効率的に管理するための技術を開発している。そのソリューションはイスラエル国外でも採用が広がり、世界各地の持続可能な水管理に貢献している。

先進的な膜技術で海水淡水化を刷新

世界の水安全保障に対するイスラエルの大きな貢献の一つが、海水淡水化と水浄化に用いる膜技術の高度化である。この分野では、VP Membrane Technologiesが技術開発を進めている。

新世代のろ過膜は、従来型のろ過システムより少ないエネルギーで、塩分、細菌、ウイルス、重金属、微細な汚染物質を除去できる。海水淡水化の効率化と低コスト化が進めば、慢性的な水不足に悩む国々は、安全な飲料水の新たな供給源を確保できる。

イスラエルの技術者は、膜の寿命を延ばし、ろ過能力を高め、運用コストを削減するため、性能の向上を続けている。こうした技術革新により、大規模な海水淡水化の採算性は高まりつつある。とりわけ、気候変動による深刻な淡水不足に直面する地域にとって、その意義は大きい。

水道網をスマート化

清潔な水をつくることは、課題の一部にすぎない。世界では、配水網からの漏水によって、処理済みの水が毎日大量に失われている。多くの都市ではインフラの老朽化により、飲料水の20~40%が利用者に届く前に失われている。

イスラエルのスタートアップは、人工知能(AI)、衛星画像、クラウドコンピューティング、高性能センサーを組み合わせ、スマートな水管理システムを構築している。これらの技術は水道網を常時監視し、見えない漏水箇所を特定するとともに、配管の破損を予測し、配水システム全体の水圧を最適化する。

これにより、水道事業者は配管が破裂してから対応するのではなく、問題を早期に発見できるようになった。水の損失と維持管理費を抑えながら、公共水道の安定性を高めることが可能となっている。

より少ない水で農業生産を拡大

農業は今なお世界最大の淡水利用部門であり、世界の水使用量の約70%を占める。気候変動が農業生産への圧力を強めるなか、灌漑効率の向上は不可欠となっている。

イスラエルの技術革新は、近代的な点滴灌漑の発明に始まり、今日のデジタル農業技術に至るまで、長年にわたり精密灌漑と深く結びついてきた。現在、スタートアップ各社は土壌センサー、気象予報、衛星画像、AI、モノのインターネット(IoT)機器を組み合わせ、作物がいつ水を必要とし、どれだけの量を与えるべきかを正確に判断している。

こうしたスマートシステムは、あらかじめ決められた灌漑日程に従うのではなく、変化する環境条件に応じて動的に対応する。その結果、農家は水の使用量、肥料の投入量、エネルギーコストを大幅に削減しながら、収穫量を増やすことができる。

排水を貴重な資源に変える

イスラエルのスタートアップが大きく貢献しているもう一つの分野が、排水の再利用である。

イスラエルの技術者は、排水を単なる廃棄物ではなく、新たな水資源と捉えている。新たな処理技術により、自治体や産業施設から出る排水を安全かつ効率的に再生し、農業、製造業、その他の非飲用用途に利用できるようになった。高度な処理システムの中には、間接的な飲用再利用を可能にし、利用可能な淡水資源をさらに広げるものもある。

この手法は、河川、湖沼、帯水層への負担を軽減するだけではない。水を環境に戻すまでに繰り返し利用する「水の循環型経済」への移行も後押しする。

空気から飲料水をつくる

イスラエルが生み出した最も革新的な技術の一つが、大気中の湿気から飲料水を直接取り出す大気水生成システムである。

高度な凝縮技術と高効率の冷却システムを用い、大気中の水分を清潔で安全な飲料水に変える。従来型の給水インフラを必要としない点が特徴だ。こうしたシステムは、遠隔地の地域社会、被災地、人道危機の現場、軍事活動、既存の水供給が不安定または利用できない地域で、とりわけ大きな価値を持つ。

気候の変動が激しくなるなか、大気水生成は、脆弱な立場に置かれた人々に飲料水を供給する補完的な手段として、今後さらに重要になる可能性がある。

デジタル技術が水管理を変革

Photo credit: UNESCO
Photo credit: UNESCO

AIは、水循環のあらゆる段階を変えつつある。イスラエルのスタートアップは、貯水池、ポンプ場、処理施設、パイプライン、産業施設に設置された数千のセンサーからデータを集約できるクラウド型デジタルプラットフォームを開発している。これらのプラットフォームは、水質を常時監視し、需要を予測するとともに、ポンプの運転を最適化し、エネルギー消費を抑え、業務効率を高める。

膨大な運用データを実務に生かせる知見へと変えることで、デジタル水管理は、水道事業者による迅速で的確な意思決定を可能にし、重要インフラの強靱性も高めている。

世界に変革をもたらすイスラエルのスタートアップ

イスラエルの水技術産業には、水管理のほぼあらゆる分野で事業を展開する数百社の革新的企業が集まっている。

国際的に知られる代表的企業の一つがIDE Technologiesである。同社の海水淡水化・水処理施設は、世界の数百万人に清潔な飲料水を供給している。近代的な点滴灌漑の先駆者であるNetafimは、100カ国を超える国々で、水を節約しながら農業生産性を高める取り組みを支援し続けている。

新興のテクノロジー企業は、デジタル技術によってこうした成果をさらに発展させている。WINT Water IntelligenceはAIを用い、商業ビルや産業施設内の漏水を検知して水使用量を監視する。Utilisは衛星技術を活用し、通常は見つけることができない地下の漏水を特定する。Watergenは、大気中の湿気から飲料水をつくる装置を開発した。Aquarius Spectrumは自治体の水道システムを対象とした音響式漏水検知を手がけ、KandoはAIを排水監視と下水道網の管理に応用している。BlueGreen Water Technologiesは、有害な藻類の異常発生を抑え、淡水の水質を改善する環境配慮型の生物学的ソリューションを開発している。

これらの企業は、イスラエルの起業家精神が工学、環境科学、ロボット工学、AI、デジタル技術を結集し、人類が直面する最も切迫した課題の一つに挑んでいることを示している。

国連の持続可能な開発目標への貢献

SDGs
SDGs

イスラエルの水関連スタートアップの取り組みは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の複数の目標と密接に結びついており、技術革新が世界の持続可能な開発にいかに貢献できるかを示している。

最も直接的に貢献するのが、SDG 6「安全な水とトイレを世界中に」である。この目標は、安全な飲料水への普遍的なアクセスの確保、水質の改善、排水再利用の拡大、水資源の効率的な利用を掲げている。海水淡水化技術、高度なろ過システム、排水の再利用、スマートな漏水検知はいずれも、こうした目標の達成に直接寄与する。

精密灌漑やスマート農業技術によって、より少ない水で多くの食料を生産できるようにすることは、SDG 2「飢餓をゼロに」の推進にもつながる。

水管理のための高度な工学的ソリューション、デジタルインフラ、AIを開発するイスラエル企業は、強靱なインフラの整備と持続可能な産業発展を促すSDG 9「産業と技術革新の基盤をつくろう」にも貢献している。

都市の水道網のスマート化はSDG 11「住み続けられるまちづくりを」に寄与し、廃棄物を減らして資源効率を高める技術はSDG 12「つくる責任 つかう責任」の達成を後押しする。

気候変動によって干ばつが深刻化し、降雨パターンが乱れるなか、効率的な水技術はSDG 13「気候変動に具体的な対策を」でも重要な役割を果たす。ますます厳しさを増す環境条件に、地域社会が適応するのを支えるためである。

さらに、イスラエル企業は世界各地の政府、国際機関、研究機関、水道事業者、民間企業と積極的に連携している。知識、技術、専門性の移転を通じ、SDG 17「パートナーシップで目標を達成しよう」**の推進にも寄与している。

今後の展望

世界の水危機は、今後数十年でさらに深刻化するとみられる。人口増加、気候変動、都市の拡大、産業用水需要の増大により、淡水資源にはかつてない圧力がかかる。こうした課題に対応するには、新たなインフラだけでなく、絶え間ない技術革新も欠かせない。

イスラエルの経験は、天然の水資源に乏しい国でも、科学、起業家精神、工学に投資することで、世界のリーダーになり得ることを示している。海水淡水化、膜技術、精密灌漑、排水再利用、AI、大気水生成の進歩を通じ、イスラエルのスタートアップは世界の水管理の未来を変えつつある。

これらの技術革新は、水の安全保障を向上させ、気候変動への強靱性を高め、持続可能な農業を支え、世界で最も不可欠な資源の一つである水を数百万人が利用できるよう後押ししている。イスラエルのスタートアップは、今日の水問題に取り組むだけでなく、国連のSDGsに沿った、より持続可能で強靱な未来の構築にも貢献している。

UN Photo
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This article is brought to you by INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

INPS Japan

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一つの海、五つの国、二つの未来―カスピ海が迎える次なる試練


【アルマトイINPS Japan/The Astana Times=アヤナ・ビルバエワ】

8月12日、「カスピ海の日」が迎えられた。今年は、カスピ海の海洋環境保護に関する地域の主要な協定である「テヘラン条約」が発効してから20周年にあたる。世界最大の閉鎖性水域であるカスピ海では、水位低下とその将来をめぐる環境上の懸念が高まり続けている。|英語版|

この節目は、国際イベント「カスピ海アクション・ウィーク2026」の閉幕とも重なった。アクタウで開かれた同イベントには、アゼルバイジャン、イラン、ロシア、トルクメニスタンの代表団に加え、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタンの関係者、ボランティア、環境活動家、科学者、若者らが参加した。

環境文化の発展を目指す「Taza Kazakhstan(タザ・カザフスタン)」構想のもとで開催された1週間のイベントでは、科学的な議論、環境キャンペーン、ボランティア活動、イノベーション事業などを通じ、カスピ海が直面する共通の課題への関心を喚起した。

地域協定から環境保全の実践へ

「カスピ海海洋環境保護枠組条約」、通称「テヘラン条約」は2006年に発効した。カスピ海沿岸5カ国が、汚染防止と生態系保護で協力するための地域的枠組みを構築したものである。

それから20年を経て、カスピ海をめぐる課題は一段と複雑になっている。

The anniversary coincided with the conclusion of the international Caspian Sea Action Week 2026. Photo credit: Ministry of Ecology and Natural Resources.
テヘラン条約発効20周年は、「カスピ海アクション・ウィーク2026」の閉幕と重なった。写真:カザフスタン生態・天然資源省

当初の環境協力では、汚染対策と海洋生物多様性の保全が大きな焦点となっていた。しかし現在では、カスピ海の長期的な水位低下という新たな問題が、地域の環境政策に加わっている。

環境実務家協会のラウラ・マリコワ会長は最近、カスピ海北部で急速に浅瀬化が進んでいると警告した。マリコワ氏は、一部の懸念について、船舶の航行や貨物輸送を確保するため、ノース・カスピアン・オペレーティング・カンパニー(NCOC)とその請負業者が実施している浚渫作業との関連を指摘した。

Laura Malikova, chair of the Association of Practicing Environmentalists. Photo credit: Kazinform

https://astanatimes.com/2026/08/one-sea-five-countries-two-futures-caspian-seas-next-test/
環境実務家協会のラウラ・マリコワ会長。写真:Kazinform

「写真や映像を見れば、水がどれほど遠くまで後退したかは明らかだ。カスピ海北部では、驚くほどの速さで浅瀬化が進んでいる」とマリコワ氏は、Kazinformの報道で語った。

カザフスタン生態・天然資源省によると、長期的な水位低下の最大の要因は依然として気候変動である。カスピ海地域では降水量が減少する一方、蒸発量が増えており、気温上昇に対して特に脆弱な状況にある。

気候による圧力と人間活動が重なり合うことで、政策上の課題はいっそう複雑になる。水位が低下すれば、沿岸インフラ、航路、港湾、産業プロジェクトの適応が必要になる一方、経済活動を維持するための取り組みそのものが、すでに変化の途上にある生態系にさらなる負荷をかける可能性もある。

対応の鍵を握る科学

こうした問題の複雑化を背景に、「カスピ海アクション・ウィーク」では科学協力が重視された。

8月6、7両日には国際セミナーと円卓会議が開かれ、カスピ海沿岸諸国の科学者や専門家が、環境モニタリング技術や現在進められている研究について議論した。

これは、地域の環境政策にとって重要な問いを浮き彫りにしている。すなわち、カスピ海流域全体で起きている変化を把握するために、各国が十分に連携したデータと科学的能力を備えているのか、という問題である。

Held under Taza Kazakhstan environmental culture development concept, the week combined scientific discussions and environmental campaigns dedicated to the Caspian Sea. Photo credit: Ministry of Ecology and Natural Resources.
「Taza Kazakhstan」環境文化発展構想のもと、カスピ海をテーマとする科学的議論や環境キャンペーンが行われた。写真:カザフスタン生態・天然資源省

カスピ海は一つにつながった生態系である一方、環境情報やモニタリング制度、政策対応の多くは依然として国ごとに運用されている。

より効果的な協力を実現するには、研究成果を交換するだけでなく、互換性のあるモニタリング制度を構築し、環境リスクについて地域全体でより明確な共通認識を形成することが必要になる可能性がある。

期間中に開催された「One Caspian – One Future(一つのカスピ海、一つの未来)」セッションも、こうした考え方を反映したもので、各国のボランティア団体が集まり、カスピ海を守るための共通の取り組みについて意見を交わした。

環境意識から具体的な解決策へ

今回のイベントでは、政府や専門家レベルの環境議論を、市民参加と結びつけようとする試みもみられた。

8月8日にアクタウで開催された「カスピアン・クリーン・チャレンジ」には、カザフスタンのマンスール・オシュルバエフ生態・天然資源次官も参加し、ボランティアによる大規模な海岸清掃とごみの分別活動が行われた。

新たに開設された「カスピ海地域ボランティア友好並木」では80本を超える樹木が植えられ、参加者は未来の世代に向けたメッセージを収めたタイムカプセルも設置した。

8月9日には、マンギスタウ州のボズジュラ地域でも清掃活動が実施された。

国際ハッカソンでは、カスピ海の生態系保護を目的とするプロジェクトの開発が参加者に呼びかけられたほか、TED形式の公開討論会では、環境ボランティアと専門家がアイデアを交換した。

イベントは8月12日の国際ボランティア・サミット「Caspian Talks」で締めくくられ、参加者は現在の環境課題について議論し、それぞれの経験を共有した。

一つの海を待つ二つの未来

カスピ海を保護するうえで最大の難しさは、環境への影響が国境で止まらないことにある。一地域で生じた変化が、やがて漁業、生物多様性、沿岸地域の住民、港湾、そして地域全体の経済インフラに影響を及ぼす可能性がある。

当局者によると、2006年から2025年にかけて、一部の地域では海岸線が30~35キロ後退した。

2025年には、カザフスタン領内のカスピ海の平均水位は、バルト海基準高程系でマイナス29.35メートルとなった。

長期的な見通しとしては、二つのシナリオが示されている。

カザフスタン国営気象機関「Kazhydromet(カズハイドロメット)」の予測によると、楽観的なシナリオでも、2050年までに水位がマイナス32.4メートルまで低下する可能性がある。より悲観的な気候シナリオでは、マイナス34メートルまで低下する恐れがある。

いずれのシナリオも、かつての水準への回復を想定してはいない。両者の違いが示しているのは、カスピ海沿岸諸国が今後備えなければならない「適応の規模」の違いである。

水位がマイナス32.4メートルまで低下すれば、沿岸インフラや経済活動には大幅な調整が必要となる。マイナス34メートルまで下がった場合には、さらに深刻な変化が生じ、海岸線が既存の港湾や沿岸集落から一段と遠ざかるとともに、かつて海底だった場所の一部が陸地へと変わる可能性がある。

これは、政策課題そのものの性格が変わりつつあることを意味する。

カスピ海沿岸諸国が直面しているのは、もはや既存の生態系を汚染や過剰利用から守るという課題だけではない。今後は、海そのものの地理的形状が変化していくなかで、その経済的・環境的影響を管理することが、ますます重要になるとみられる。

テヘラン条約の発効から20年。この問題は、カスピ海をめぐる地域協力の次なる大きな試練となる可能性がある。

地域にはいま、大きく分けて二つの未来が待ち受けている。しかし、そのどちらも「カスピ海が今のまま変わらない」という前提には立っていない。

決定的な問いは、アゼルバイジャン、イラン、カザフスタン、ロシア、トルクメニスタンの5カ国が、科学的モニタリングとデータ共有を活用し、環境変化が経済・インフラ危機へと発展する前に、いずれのシナリオがもたらす影響についても予測し、備えることができるかどうかである。

Original URL: https://astanatimes.com/2026/08/one-sea-five-countries-two-futures-caspian-seas-next-test/

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ネパールは食料安全保障を「国家安全保障」の問題として直ちに位置づけよ

【カトマンズNepali Times=シュリスティ・カルキ】

気候危機がもたらす異常気象、世界的なサプライチェーンの混乱、そして国内の不適切な行政運営が重なり、ネパールの食料安全保障を脅かす「パーフェクトストーム」が生じている。水・エネルギー・食料の密接な結びつきが、今年ほど鮮明に表れたことはない。ネパールの農地の60%以上が雨水に依存しているうえ、毎年繰り返される肥料不足は西アジアでの戦争によってさらに深刻化している。一方、農村からの人口流出により、耕作放棄地も増えている。|英語版|

先週6月29日の「田植えの日」は、例年に比べて静かなものとなった。泥の中でふざけ合う恒例の光景はほとんど見られず、田植え自体もあまり進まなかった。平年より雨の多いプレモンスーン期に多くの農家が早めに田植えを始めたものの、肝心の本格的なモンスーンの到来は2週間遅れた。

不規則なモンスーンは、ネパール各地で毎年のように繰り返される問題となっている。雨を待ち続けることを諦め、仕事を求めて移住した農家も少なくない。

降雨不足により、コメの収穫量は2023/24年度の600万トンから、2024/25年度には570万トンへ減少した。スーパー・エルニーニョを追跡する気象モデルは深刻な干ばつを予測しており、肥料不足も重なることで、穀物の収穫量はさらに落ち込むとみられている。

ネパール開発研究所で生計・食料安全保障を担当する専門家、クリシュナ・パハリ氏は、次のように説明する。

「ネパールのコメをはじめとする主食の生産は、気候変動による衝撃に左右されています。今年はエルニーニョ現象の影響で、降雨量が平年を下回ると予想されています」

国際栄養会議に出席するため滞在しているローマから『ネパリ・タイムズ』の取材に応じたパハリ氏は、さらにこう語った。

「気候危機に加え、西アジアでの紛争が燃料と肥料の不足を引き起こしています。こうした問題が続けば、ネパールの食料安全保障は一層悪化するでしょう」

かつてネパールは食料の純輸出国だったが、それは遠い過去の話となった。農業が抱える構造的問題の多くは気候危機以前から存在していたが、不安定なモンスーンと灌漑設備の不足が、状況をさらに深刻なものにしている。昨年、ネパールは600億ルピー相当、100万トン以上の穀物を輸入した。

カトマンズの総合開発研究所で食料安全保障とガバナンスを研究するヤムナ・ガレ氏は、次のように指摘する。

「ネパールは気候危機から深刻な影響を受けています。しかし、気候変動に起因する災害が頻発し、農業資源や森林資源が失われた際の、確固たる復旧計画がありません」

「気候変動に対応し、栄養価にも優れた種子や品種を開発するための資源配分も不十分です。その結果、私たちは輸入や援助に依存せざるを得なくなっています」

ネパールでは国民の60%が農業に従事し、農業は国内総生産(GDP)の4分の1を占めている。しかし、農村部の若者は大量に流出しており、農村に残る人々も換金作物に見合った価格を得られずにいる。

6月中旬、韓国政府は韓国国際協力団(KOICA)を通じ、タライ地域における気候変動に強いコメ生産と食料安全保障を促進する6年間の事業に、1,200万ドルの無償資金協力を行うと表明した。

専門家によると、灌漑を整備すれば、ネパールの農業生産性を最大30%向上させることができる。しかし、大規模な灌漑事業は、汚職や不適切な管理のため数十年にわたって停滞している。

生産性の向上は優先課題だが、まず、生産された農産物を守り、無駄なく利用する必要がある。収穫後の損失率は、穀物では15%、野菜や果物では40~50%にも達する。野生動物による農地への侵入も、収穫前の作物に被害を与え、農村からの人口流出をさらに加速させている。

パハリ氏は、「収穫後の損失を減らすことは、人々が利用できる食料を増やすことを意味します。そのためには、コールドチェーンや貯蔵施設を拡充し、穀物貯蔵用サイロを改良する必要があります」と指摘する。

食料を長期保存できるよう、加工方法を多様化することも重要だ。果物は乾燥させたり、ジャムに加工したりできる。また学校給食では、子どもたちの好みに合わせてレシピや献立を工夫することも可能である。

「飢餓をゼロに」

ネパールはこれまで、子どもの発育阻害や消耗症の削減で一定の成果を上げてきた。しかし近年の開発援助の撤退によって、その成果が損なわれ、持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる「2030年までに飢餓をゼロにする」との約束の実現も難しくなっている。

先月、ヘレン・ケラー・インターナショナルの支援を受け、ネパール全土の5歳未満児100万人を対象に実施された調査の結果が公表された。それによると、米国国際開発庁(USAID)が資金を拠出していた食料・栄養プログラムの打ち切りにより、子どもの栄養不良が増加している。

急性栄養不良の割合は2025年の6.6%から今年は7.8%に上昇し、マデシ州では全国で最も高い12.3%に達した。

パハリ氏は、次のように語る。

「私たちは、2030年までに『飢餓をゼロに』という目標を達成できる軌道には乗っていません。世帯当たりの平均食料消費量が改善しているのは、海外からの送金と社会保障制度のおかげです」

こうした状況を踏まえれば、国民独立党(RSP)政権が、食料生産の拡大と子どもの飢餓の削減に向けて何をしてきたのかが問われる。

スワルニム・ワグレ財務相は5月の予算演説で、農業部門の再生を「最優先課題」と位置づけた。しかし、農業に配分された470億ルピーは国家予算全体の3%にも満たず、過去9年間で最低の水準である。

その半分以上は化学肥料の輸入に充てられる。それでも、コメの作付け時期になると、毎年のように尿素肥料が不足する。

一部の専門家は、商業的農業の促進と中間層の所得向上を重視するワグレ財務相の方針について、農村部に雇用を創出し、バリューチェーン全体の生産性を高める可能性があると評価する。一方、貧しい農家が取り残されるとの批判もある。

パハリ氏は、次のように話す。

「今回の予算は、ネパールの中間所得層を動かすことに重点を置いています。それには一定の合理性がありますが、ネパールの農家の大半は小規模農家です。この層の問題に取り組まない限り、国全体の生産量を増やすことはできません」

ガレ氏は、他の多くの問題と同様、解決の鍵は政治的な優先順位と政策の実行にあると考えている。

「政策は政治そのものです。新たな政策と予算規模が示しているのは、この政権が農業を優先課題としていないということです。その影響を最も強く受けるのは、社会的に疎外され、排除されてきた人々です」

州政府の農業予算は、中央政府よりは幾分充実している。世帯の食料不安が最も深刻なカルナリ州は、予算の21%以上を農業に充てた。一方、急性栄養不良率が高いルンビニ州とマデシ州は、予算の4%以上を農業に配分している。

ガレ氏は今月初め、アーメダバードで開催された世界銀行の地域政策対話において、「南アジアの食料の未来を共につくるための地域協力と政策行動」をテーマとするパネル討論の司会を務めた。

この会合には南アジア各国から専門家、イノベーター、民間企業の関係者らが参加したが、他国とは対照的に、ネパール政府の代表者は姿を見せなかった。「国内問題の解決」を優先する新政権にとって、こうした招待を辞退することは既に常態化している。

出席者からは、ネパールの新指導部が参加しなかったことについて、奨励策、生産、市場をバリューチェーン全体で結び付け、農業のパラダイム転換を促す貴重な機会を逃したとの声も上がった。

興味深いことに、クリシュナ・パハリ氏とヤムナ・ガレ氏は、共に同じ言葉で結論を語った。

「食料安全保障は、国家安全保障です」

シュリスティ・カルキ氏は『ネパリ・タイムズ』の特派員。2020年にインターンとして同紙に加わり、カトマンズ大学芸術学部を卒業後、正式に編集部の一員となった。政治、時事問題、芸術、文化などを取材している。

This article is brought to you by Nepali Times, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

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『ザ・グラブ』気候危機への人類の対応、その最も暗い側面を暴く衝撃のドキュメンタリー

【ミラノINPS Japan/CitiPlat=アルベルト・スクラヴェラーノ】

この映画が浮き彫りにするのは、現在進行する気候危機をめぐる最も不穏な側面の一つである。その手法と目的から見れば、英米圏における優れた調査報道の伝統を受け継ぐ作品と位置づけることができる。比較するなら、マイケル・ムーアのドキュメンタリー作品を思い浮かべるとよいだろう。|英語版|

米国の映画監督ガブリエラ・カウパースウェイトは、2022年のドキュメンタリー映画『ザ・グラブ(The Grab)』によって国際的な注目を集めた。同作は同年9月のトロント国際映画祭でプレミア上映された後、2024年春から世界各地の劇場やVOD(ビデオ・オン・デマンド)で本格的に公開された。

物語の中心にあるのは、米国の非営利報道機関「センター・フォー・インベスティゲーティブ・リポーティング(Center for Investigative Reporting)」の記者たちによる調査活動である。

彼らは世界各地を飛び回り、「カネの流れを追う」ことで、民間企業や国家などさまざまな主体が、食料や水をはじめとする生命維持に不可欠な資源の支配権をめぐって競争を繰り広げている実態を丹念に記録していく。その目的は、気候変動によって将来、生態系が崩壊する事態に陥った場合に備え、あらかじめ優位な立場を確保しておくことにある。

こうした国家・非国家主体そのものは、決して目新しい存在ではない。しかし、彼らが実際に何をしているのかについては、大多数の人々がほとんど知らないのではないだろうか。映画はその実態を詳細に描き、軍事機密の壁に阻まれない限り、入手可能な情報をカウパースウェイト監督と制作チームが徹底して掘り起こしていく。

例えば、米国の民間軍事会社ブラックウォーターが、アフリカで土地を取得し、資源供給網における戦略的な足場を築こうとする動きが紹介される。

また、一見すると信じ難いような事例も登場する。プーチン政権下のロシアが、米国からカウボーイを招き、寒冷地で牧畜に従事させているというのである。その背景には、将来、気候危機によって農業が深刻な打撃を受ける一方、現在は乾燥しているロシアの辺境地域の一部が、逆に農業生産に適した土地へと変わる可能性があるとの見通しがある。

中国共産党からサウジアラビアの民間ファンド、米国政府からロシア政権に至るまで、それぞれの主体が利用可能な資源を最大限に確保し、将来の水と食料の供給拠点を支配しようと、それぞれの思惑に基づいて動いている姿が描き出される。

ここに巨大な陰謀や秘密計画があるわけではない。描かれているのは、近い将来に地球の生態系が崩壊する可能性をすでに現実のものとして受け止め、その状況を自らに有利な形で利用し、力を最大化すると同時に潜在的な競争相手を弱体化させようとする国際的な主体の姿である。

真に不気味なのは、こうした構図の中に、気候変動を食い止めるための国際協調という発想がほとんど見当たらないことである。世界の人々の幸福や人権は考慮の外に置かれ、気候危機そのものが、もはや避けられない既定の現実として扱われている。

『ザ・グラブ』は、映画的な体験というより、むしろ生々しい事実とデータを積み重ねた作品である。アル・ゴア元米副大統領が前面に立った『不都合な真実(An Inconvenient Truth)』のような「一人舞台」ではなく、他の気候変動ドキュメンタリーにしばしば見られる、強い活動家色を打ち出した作品とも異なる。

むしろ、その冷徹なアプローチこそが、この作品をより強烈で、同時により悲痛なものにしている。

世界では、市民から政府関係者に至るまで、何百万人もの人々が日々、気候危機を食い止めようと努力している。それにもかかわらず、なぜ危機はますます深刻になっているように見えるのだろうか。

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『ザ・グラブ』は、この問いに一つの重い答えを提示する。

世界のエリート層や経済・軍事大国の一部は、そもそも気候変動を解決することに関心を持ってこなかった。それどころか、生態系が崩壊した後の世界を生き残るための準備を、すでに進めているというのである。

映画が明確に示しているのは、私たちが次世代により良い世界を残そうとするなら、大気中のCO2(二酸化炭素)排出や海洋を汚染するプラスチックと同様に、こうした主体の存在そのものもまた、問題を構成する重要な一因であると認識しなければならない、ということである。

Original URL: The Grab

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記録的熱波が欧州を襲う―気候変動への適応策は待ったなし

【シドニー IPS=キャサリン・ウィルソン】

西ヨーロッパが観測史上最悪となる6月の熱波に見舞われる中、世界で最も急速に気温上昇が進む地域となった欧州では、気候変動への適応策を急ぐ必要性がこれまでになく高まっている。今年5月には、例年であれば真夏の7月中旬まで見られなかったような高温が早くも観測され始めた。その影響は、人々の健康や社会的不平等の拡大という形で既に現れている。専門家は、気候変動による極端気象が今後さらに深刻化することへの警鐘は極めて明確だと指摘している。|英語版|

欧州コペルニクス気候変動サービス(C3S)の上級研究員ジュリアン・ニコラ氏はIPSの取材に対し、「5月から6月にかけて西ヨーロッパを襲った熱波は、その強さと発生時期の早さという点で極めて異例だった。」と語った。

一方で、「今回の熱波を引き起こした気象パターン―地域を覆う持続的な高気圧と、北アフリカから西ヨーロッパへ流れ込む高温の空気―は、これまで欧州で発生した多くの熱波でも確認されてきたものです。また研究では、欧州では他の大陸地域と比べて夏季の熱波の発生回数が特に急増していることも示されています。」と説明した。

欧州コペルニクス気候変動サービスによると、2026年6月18日から30日にかけての熱波では、1991~2020年の平均と比較して欧州各地で気温が大きく上昇した。

世界気象機関(WMO)によれば、6月下旬にはドイツ東部で41.7度、オーストリア・ウィーンで40度、フランス西部では43.8度という記録的な高温が観測された。

これまで最も深刻な影響を受けてきたのは西ヨーロッパだが、現在では熱波は中欧から東欧にも広がっている。

ウクライナの南、西側でハンガリーと接するルーマニアでは、7月初旬に35~40度を超える猛暑が続いたと、ルーマニア赤十字社・災害対応責任者のダニエル・モドアカ氏(ブカレスト)はIPSに語った。

フランスとスペインでは、相次ぐ熱波によって山火事が激化し、30万人以上が避難を余儀なくされている。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、この火災危機を「第二次世界大戦後で最悪の森林火災危機」と表現している。

この記録的な夏は、1980年代以降、欧州の気温上昇が世界平均の約2倍というペースで進んでいることと一致している。

欧州環境機関(EEA)は、「欧州では2020年以降、史上最悪級の熱波が相次いで発生しており、その結果、広範囲に及び数年間続く『メガ干ばつ』のリスクが高まっている」と警告している。

ルーマニアでは極端な高温に対する「赤色警報」が発令され、ブカレスト第4区では赤十字ボランティアが飲料水を配布し、市民の健康と安全を支援した。

しかし、欧州が直面しているのは熱波だけではない。

近年は異常降雨も頻発しており、2024年後半にはスペイン・バレンシアで大規模な豪雨災害が発生した。

この洪水では200人以上が死亡し、土砂崩れや住宅、電力、交通、道路インフラに甚大な被害が生じた。同年にはオーストリア、ポーランド、チェコ、ルーマニアでも深刻な洪水が発生している。

夏本番を迎えた現在、人々は健康と生活への直接的な脅威に直面している。

モドアカ氏は、「ブカレストでは、極端な暑さ、高密度な都市構造、夜間でも気温が下がらない状況が重なり、高齢者や慢性疾患を抱える人々、経済的に困難な家庭への影響が一層深刻化しています」と語る。

ルーマニアでは、電気料金の支払いが困難な世帯が17.7%に上り、自宅を十分に冷房できないことが大きな課題となっている。

こうした中、ルーマニア赤十字社は飲料水の配布や血圧測定などの健康チェックに加え、高温によって症状が悪化する持病を持つ人々への支援を実施している。

さらに、「長期間の熱波に最もさらされるホームレスへの支援や、冷房設備や医療サービスへのアクセスが限られる農村部の世帯への支援も行っています」とモドアカ氏は説明した。

高温が長期間続き、夜間も気温が十分に下がらない状態では、人間の身体は持続的なストレスにさらされる。

その結果、熱疲労や熱中症、心血管疾患など既存の病気の悪化を招き、最悪の場合は命を落とす危険性も高まる。

Europe’s Copernicus Climate Change Service reports the average anomalies in air temperatures in Europe during this year’s heatwave from 18-30 June 2026 relative to the average temperature for the 1991-2020 reference period. Cedit: C3S/ECMWF

保健当局によると、今年の熱波では欧州で1億5,000万人以上が影響を受け、6月下旬だけでも約1万人の超過死亡が発生した。

世界保健機関(WHO)は、この20年間で欧州の熱関連死亡率は30%増加し、現在では年間約17万5,000人が暑さに関連して命を落としていると推計している。

65歳以上では、2000~2004年と2017~2021年を比較すると熱関連死亡率は85%も増加した。

Following a red alert issued for extreme temperatures, Romanian Red Cross volunteers in Bucharest’s Sector 4 distributed drinking water and supported the health and safety of local communities. Bucharest, Romania. Credit: Romanian Red Cross-Bucharest Sector 4

都市部では、コンクリートやアスファルトが熱を蓄積する「都市ヒートアイランド現象」によって状況はさらに深刻化し、医療・人道支援体制が限界に近づいている。

パリでは病院や救急搬送体制に大きな負荷がかかり、フランス赤十字社は24時間利用できる緊急クーリングシェルターを設置し、食事や飲料水、宿泊場所、社会的支援を提供している。

気候変動の長期的影響については、学術誌『Global Environmental Change』に掲載された最新研究でも明らかになった。

ドイツの研究チームは、欧州の深刻な熱波が所得格差を拡大させ、とりわけ低所得世帯に大きな打撃を与えた結果、2004年から2022年までの間に平均560万人が新たに貧困リスクに陥ったと報告している。

先月、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)の気候政策上級担当官メアリー・フリール氏は、「極端な暑さは今や現代を代表する人道危機の一つであり、人々、組織、そして政府が一致して対応すべき重大な公衆衛生上の脅威である」と訴えた。

このメッセージは、7月にWHO欧州地域事務局長ハンス・クルーゲ氏も改めて強調した。

同氏は、多くの欧州諸国が将来の熱波による健康被害に十分備えられておらず、医療施設の耐暑化も不十分だと指摘している。

WHOは、「熱波は病院の許容量を超える患者を生み出すだけでなく、高温に対応できる設計になっていない病院では、建物自体が過熱し、電力供給や冷却設備、さらにはコンピューターなどの情報システムが停止する危険がある」と警告している。

気候変動に適応するための課題として、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、資源不足、専用財源の不足、民間企業や市民の参加不足を挙げている。

一方で、欧州連合(EU)は2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロ(ネットゼロ)の達成を掲げ、積極的な気候政策を推進している。

2019年に開始された「欧州グリーンディール」は、エネルギー、交通、産業、インフラをクリーンエネルギーへ転換するための包括的な戦略である。

また、コペルニクス気候変動サービスによると、2025年には欧州で発電された電力の46.4%が再生可能エネルギーによるものとなった。

しかし、今回の欧州の危機は欧州だけの問題ではない。

世界の平均気温は現在、産業革命以前と比べて約1.4度上昇しており、このままの傾向が続けば、気候変動対策の重要な目標である1.5度の上昇限界は2030年代を待たず、今世紀末ではなくこの10年の終わりまでに突破される可能性がある。

ニコラ氏はIPSに対し、「1.5度をわずかでも超えるたびに、生態系、水資源、食料安全保障、インフラ、経済へのリスクはさらに高まり、気候システムの一部が取り返しのつかない『ティッピング・ポイント(臨界点)』に達する可能性も増していく」と警鐘を鳴らした。

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INPS Japan/ IPS UN Bureau Report

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|視点|気候変動:人間中心の取り組み(池田大作創価学会インタナショナル会長)

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日本の「踊る阿呆」に宿る精神

日本で暮らすネパール人にも響くかもしれない、この古き踊りと「美しき混沌」

【カトマンズINPS Japan/Nepali Times=ミキ・ウプレティ】

日本は、先端技術や富士山、侍の歴史、そして今や約30万人に迫るネパール人コミュニティーを通じて、多くのネパール人にとって身近な国となっている。しかし、日本文化の奥深い精神性には、ネパールではまだあまり知られていないものもある。その一つが「盆踊り」だろう。先祖の霊を供養する8月中旬の「お盆」の時期に各地で行われる夏の踊りである。|英語版|

盆踊りには、日本古来の祖先崇拝と、6世紀に伝来した仏教の伝統が溶け合っている。人々は祈りを捧げ、家族で墓参りをし、地域の輪の中で踊りながら先祖の霊を迎える。約500年前には活気あふれる街頭文化として広まり、今日では日本各地で、それぞれ独自の振り付けや音楽を伴ったさまざまな形の盆踊りが受け継がれている。

All photos: MIKI UPRETY
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その中でも、四国・徳島の「阿波おどり」は別格の存在だ。普段は穏やかな地方都市が、この時期だけは一変する。

阿波おどりの特徴の一つに、右手と右足、左手と左足を同時に前へ出す「ナンバ」と呼ばれる独特の身体の使い方がある。これは、刀を左腰に差していた武士の時代の歩き方に由来するともいわれている。

この基本動作を身につけると、踊り手は「ヤットサー、ヤットサー」という躍動感あふれる二拍子のリズムに乗って前へ進む。一見すると、その場ですぐ参加できそうな単純な踊りに見えるが、本当にものにするには何年もの稽古が必要である。

「阿波」とは徳島の旧国名であり、「阿波おどり」とは文字通り「徳島の踊り」を意味する。約400年の歴史を持つこの祭りは、8月11日から15日までの5日間にわたって開催される。10万人を超える踊り手がそろいの衣装をまとい、真夏の蒸し暑さにもかかわらず、夕暮れから夜遅くまで踊り続ける。5日間の観光客は約110万人に達し、徳島市の人口をはるかに上回る人々が街を訪れる。

その数日間、徳島はまるで別世界に迷い込んだかのようになる。人波、熱気、太鼓、鉦、三味線――街全体が「美しき混沌」に包まれる。それでも、その混沌の中で際立つのが、安全対策や整然とした群衆誘導に表れる日本らしさである。

All photos: MIKI UPRETY
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阿波おどりの精神を象徴するのが、あまりにも有名なこの囃子言葉だ。

「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々」

どうせ同じ「阿呆」なら、見ているだけでは損だ。ならば自ら踊ってしまおう――そんな意味である。

この精神は、約400年前、藍の交易で栄えた徳島の商人文化の中で育まれた。普段は倹約を重んじ、現実的な生活を送っていた人々も、年に一度のこの祭りだけは惜しみなく金を使ったという。

そこには、日本人の精神が持つ興味深い二面性が表れている。普段は控えめで感情を表に出さない人々が、ひとたび踊り手となれば、内に秘めていた情熱を一気に解き放つのである。

とはいえ、阿波おどりは決して無秩序な騒ぎではない。

踊り手たちは「連」と呼ばれる約1000もの統率されたグループに分かれ、連ごとに仕立てられたそろいの衣装を身につけて踊る。年齢も職業もさまざまなメンバーが、一年を通して練習を重ね、各連独自の振り付けを磨くとともに、夜通し踊り続けるための体力を養っている。

企業が組織する連もあり、社員たちは会社の看板を背負って踊る。一方、観光客も「にわか連」に加われば、その場で「踊る阿呆」の仲間入りをすることができる。

連の名前にも、阿波おどりならではのユーモアがあふれている。「のんき連」「阿呆連」「娯茶平」「風来坊」などがその例である。

中でも洒落が利いているのが、地元の医療系教育機関の学生たちがつくる「たけのこ連」だ。

日本語では、タケノコが育てば竹林、つまり「藪(やぶ)」になる。そして「藪医者」といえば、腕の悪い医者を意味する。将来立派な医師になると胸を張るのではなく、「この先、藪医者になります」と自らを笑いの種にしているのである。そこには、むしろ静かな自信が感じられる。

私が阿波おどりに強い思いを抱くのは、私の家族のルーツが徳島にあるからだ。徳島では幼いころから阿波おどりを身につけ、祭りそのものが地域のアイデンティティーと誇りの一部になっている。

数年前、カトマンズで、日本人教師たちが、日本への留学や就労を目指して日本語を学んでいるネパール人学生に阿波おどりを教えている場面に出会った。

しかし、教えている人たちは徳島出身ではなく、その指導には阿波おどりの本来の身体の使い方や理屈が十分に伝わっていないように感じられた。

私は思わず口を挟んだ。

「私に教えさせてください。阿波おどりをやるなら、きちんとやりましょう」

それ以来、私は毎年夏になるとカトマンズで、若いネパール人たちに「踊る阿呆」になる方法を教える日本人としての役割を喜んで引き受けている。

彼らの多くは、やがて日本で数年間、あるいはそれ以上にわたり勉強したり働いたりすることになるだろう。日本で困難に直面したとき、かつて「踊る阿呆」の精神に身を委ねたあの瞬間を思い出してくれたら、と私は願っている。

日本へ向かうネパール人に必要な準備とは、日本語を学ぶことだけではない。踊りを通じて、日本人が持つしなやかな強さや、困難を乗り越える精神に触れることもまた、大切なのではないだろうか。

徳島のDNAは今も生き続けている。そして私は、その文化的な遺産を、ネパールというもう一つの「美しき混沌」のただ中で伝えられることを誇りに思っている。

ミキ・ウプレティは、ライター、サイクリスト。かつては登山家、トレイルランナーとして活動し、1985年以来ネパールとの関わりを持ち続けている。

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|インタビュー|ブラジルの先住民族コミュニティ(気候活動家・人権弁護士カイメ・シルベストレ氏)

【ミラノINPS Japan/CitiPlat(気候変動と持続可能な世界のための市民プラットフォーム)=アレッサンドラ・ボナノーミ】

先住民族は、環境に与える負荷がごく小さいにもかかわらず、自然環境と密接に結びつき、それに依存して暮らしているため、気候変動の直接的な影響を真っ先に受けることが多い。先住民族は歴史的に土地を守り、自然と調和して生きる知恵を培ってきた。|英語版|

ブラジルのアマゾン地域出身の気候活動家で人権弁護士のカイメ・シルベストレ氏へのインタビューを通じて、ブラジルの先住民族が直面する最大の問題は、土地を利用し、そこで暮らす権利を失いつつあることだと分かった。ブラジル政府や農場経営者は、威嚇をはじめとするさまざまな手段を用いて、先住民族を土地から追い出している。

An AI-generated editorial image depicts members of an Indigenous community overlooking deforested land in the Brazilian Amazon, where cattle ranching threatens ancestral territories, livelihoods and the global climate. Image: INPS Japan
An AI-generated editorial image depicts members of an Indigenous community overlooking deforested land in the Brazilian Amazon, where cattle ranching threatens ancestral territories, livelihoods and the global climate. Image: INPS Japan

シルベストレ氏によると、先住民族のコミュニティは政府から十分な支援を受けておらず、特に脆弱な立場に置かれている。先住民族に関する政策の策定と実施を担う政府機関として、国立先住民財団(FUNAI)がある。しかし前政権は、FUNAIがその役割を十分に果たすために必要な支援を提供しなかった。

その実態が如実に表れたのが、新型コロナウイルス感染症への対応である。先住民族のコミュニティには必要な医療支援が届かず、政府の怠慢によって多くの人が命を落とした。シルベストレ氏は「ブラジルだけでなく、世界中で先住民族とその土地を守らなければならない」と訴える。

同氏によれば、アマゾン熱帯雨林の開発を進めようとする動きの背景には、それがブラジル経済の成長につながるとの考えがある。しかし、シルベストレ氏はこの見方に異を唱え、そうした経済成長は一時的なものにすぎないと指摘する。一部の人々に短期的な利益をもたらすだけで、長期的な解決策にはならないという。また、アマゾンの森林破壊を引き起こしている主な要因として、畜産業を挙げている。

シルベストレ氏によると、昨年のブラジル・アマゾン地域における森林破壊は、過去10年間で最悪の水準に達した。一方で同氏は、環境や地球規模の気候バランス、さらには地球全体を守るうえで、アマゾンの生態系全体が極めて重要だと強調する。そのため、森林破壊について広く認識を高めることが不可欠だと考えている。問題を解決する一つの方法は、地球環境を真剣に考える政治家に投票し、当選させることだという。

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2022年にスイスのダボスで開かれた世界経済フォーラム年次総会に参加したシルベストレ氏は、世界の指導者に対し、直ちに行動を起こすよう訴えている。「残された時間は少なくなっている」からだ。また、民間部門も政府を正しい方向へ導くうえで、重要な役割を果たせると考えている。

最後にシルベストレ氏は、気候変動対策に対する姿勢について、母国ブラジルと現在暮らすスイスを比較した。

同氏の観察によれば、スイスの人々は気候変動への対応に強い意欲を示しており、社会のあらゆる層が気候変動をめぐる議論に参加している。ただし、国土が比較的小さいことが、こうした取り組みを進めやすくしている面もあると指摘する。

一方、ブラジルは国土がはるかに広く、外部からアクセスすることが難しいコミュニティもある。さらにシルベストレ氏は、ブラジルでは多くの人々が日々の食料を確保することで精いっぱいであり、気候変動について考える余裕さえないという厳しい現実を指摘した。

ORIGINAL URL:Indigenous communities in Brazil

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水 > エネルギー > 食料

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ネパールは食料安全保障を「国家安全保障」の問題として早急に位置付ける必要がある

【カトマンズNepali Times=シュリスティ・カルキ】

気候危機による異常気象、世界的なサプライチェーンの混乱、そして国内の政策運営の不備が重なり、ネパールの食料安全保障を脅かす「パーフェクト・ストーム(最悪の複合危機)」が生じている。|英語版|

水、エネルギー、食料の相互連関が、今年ほど鮮明に浮かび上がったことはない。ネパールでは農地の60%以上が天水農業に依存している。毎年繰り返される肥料不足に西アジアでの戦争が追い打ちをかける一方、農村からの人口流出によって耕作放棄地も増えている。

先週6月29日の「田植えの日(Paddy Day)」は、例年になく盛り上がりを欠いた。恒例の泥遊びもほとんど見られず、田植えもあまり進まなかった。例年より降雨量の多いプレモンスーン期を受け、多くの農家が早めに田植えを始めたものの、本格的なモンスーンの到来は2週間遅れた。

こうした不安定なモンスーンは、ネパール各地で繰り返されるようになっている。雨を待つことに見切りをつけ、仕事を求めて出稼ぎに出る農家も少なくない。

降雨不足の影響で、2024/25年度のコメ収穫量は、前年度の600万トンから570万トンに減少した。スーパー・エルニーニョの動向を追う気象モデルは深刻な干ばつを予測しており、肥料不足も重なって、穀物収穫量はさらに落ち込む見通しだ。

ネパール開発研究所(NDRI)で生計・食料安全保障を担当する専門家、クリシュナ・パハリ氏は、「ネパールでは、コメなどの主食作物の生産が気候ショックに翻弄されている。今年はエルニーニョ現象の影響で、降雨量が平年を下回る見通しだ」と説明する。

国際栄養会議に出席中のローマから『ネパリ・タイムズ』の取材に応じたパハリ氏は、さらにこう語った。

「気候危機に、西アジアの紛争が引き起こした燃料や肥料の不足が追い打ちをかけている。こうした問題が続けば、ネパールの食料安全保障は一段と悪化するだろう」

かつてネパールは食料の純輸出国だったが、それも今は昔である。農業が抱える構造的問題の多くは気候危機以前から存在していたが、不安定なモンスーンと灌漑の未整備によって、状況はさらに深刻化している。昨年、ネパールは総額600億ルピーに上る100万トン超の穀物を輸入した。

カトマンズの統合開発研究所(IIDS)で食料安全保障とガバナンスを専門とするヤムナ・ガレ氏は、「ネパールは気候危機から深刻な影響を受けているが、気候変動に起因する災害が頻発し、農業資源や森林資源が失われた際の十分な復旧計画がない。」と指摘する。

さらに、「気候変動に対応し、栄養価にも優れた種子や品種の開発に十分な資源が投入されていない。その結果、輸入や援助に依存せざるを得なくなっている。」と語った。

ネパールでは人口の60%が農業に従事し、農業は国内総生産(GDP)の約4分の1を占めている。しかし、農村部では若者の流出が続き、地域に残る農家も換金作物を適正な価格で販売できない状況にある。

6月中旬、韓国政府は韓国国際協力団(KOICA)を通じ、タライ地方で気候変動に強いコメ生産と食料安全保障の強化を図る6年間の事業に、1200万ドルの無償資金協力を供与すると表明した。

専門家によれば、灌漑の整備によって、ネパールの農業生産性は最大30%向上する可能性がある。しかし、大規模な灌漑事業は、汚職やずさんな事業運営のため、数十年にわたって停滞している。

生産性の向上が重要である一方、生産された農産物をいかに損失なく消費につなげるかも大きな課題だ。収穫後の損失率は、穀物で15%、野菜や果物では40~50%にも達する。野生動物による農作物被害も深刻で、農村からのさらなる人口流出を招いている。

パハリ氏は、「収穫後の損失を減らすことは、人々に行き渡る食料を増やすことにつながる。そのためには、コールドチェーンや貯蔵施設、穀物サイロの整備・改善が必要だ」と指摘する。

このほか、加工によって食品の保存性を高める取り組みも必要だ。果物を乾燥させたり、ジャムに加工したりする方法が考えられる。また、学校給食では、子どもたちの好みに合わせてレシピや献立を工夫することもできる。

飢餓ゼロ

SDGs Goal No. 2
SDGs Goal No. 2

ネパールはこれまで、子どもの発育阻害(stunting)や消耗症(wasting)の削減で成果を上げてきた。しかし近年、開発援助の縮小・撤退によってその成果にも陰りが見え始め、持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる2030年までの「飢餓ゼロ」の達成が危ぶまれている。

先月、ヘレン・ケラー・インターナショナルの支援を受け、ネパール全土の5歳未満児100万人を対象に実施された全国調査の結果が公表された。それによると、米国国際開発庁(USAID)が資金を拠出していた食料・栄養プログラムの終了に伴い、子どもの栄養不良が悪化している。急性栄養不良の割合は2025年の6.6%から今年は7.8%に上昇し、マデシ州では12.3%と国内で最も高かった。

パハリ氏は、「2030年までの『飢餓ゼロ』の達成に向け、ネパールは目標達成の軌道に乗っているとは言えない」としたうえで、「世帯の平均的な食料消費が改善しているのは、海外からの送金と社会保障制度によるところが大きい」と指摘した。

こうした状況を踏まえれば、問われるのは、RSP政権が食料増産と子どもの飢餓の削減に向け、どのような対策を講じてきたのかという点である。

スワルニム・ワグレ財務相は5月の予算演説で、農業部門の再生を「最優先課題」と位置付けた。しかし、農業に割り当てられた470億ルピーは予算総額の3%にも満たず、過去9年間で最低の水準となった。

しかも、その半分以上が化学肥料の輸入に充てられる。それでも、コメの田植え時期には毎年のように尿素肥料が不足している。

一部の専門家は、ワグレ財務相が商業的農業の振興と中間所得層の所得向上を重視していることについて、農村部で雇用を創出し、バリューチェーン全体の生産性向上につながると評価している。一方で、貧しい農家が取り残されるとの批判もある。

パハリ氏は、「この予算はネパールの中間所得層の活力を引き出すことに重点を置いており、その点では一定の合理性がある。しかし、ネパールの農家の大半は小規模農家だ。この層の問題に取り組まない限り、農業生産全体の拡大にはつながらない」と語る。

ヤムナ・ガレ氏は、他の多くの課題と同様、解決の鍵は政治的な優先順位と政策の実行にあるとみている。

「政策は政治的な選択の産物である。新たな政策の内容と予算規模を見れば、この政権が農業を優先課題とみなしていないことが分かる。その影響を最も強く受けるのは、社会的に周縁化され、排除されてきた人々だ」とガレ氏は指摘する。

一方、州政府による農業への予算配分は比較的手厚い。世帯レベルの食料不安が最も深刻なカルナリ州は、予算の21%以上を農業に充てている。また、急性栄養不良率が高いルンビニ州とマデシ州では、それぞれ予算の4%以上を農業に配分している。

ガレ氏は今月初め、アーメダバードで開催された世界銀行の地域政策対話で、南アジアの食料の未来を共に形作るための地域協力と政策対応をテーマとしたパネル討論の司会を務めた。

会合には南アジア各国から専門家、イノベーター、民間部門の関係者らが参加した。しかし、他国とは対照的に、ネパール政府の代表者の姿はなかった。「国内問題の解決」を優先する新指導部の下では、こうした招待を辞退することが常態化している。

参加者からは、ネパールの新指導部が会合を欠席したことで、インセンティブ、生産、市場をバリューチェーン全体で結び付け、農業のパラダイム転換を促す貴重な機会を逸したとの指摘も出た。

そして、クリシュナ・パハリ氏とヤムナ・ガレ氏は、奇しくも同じ言葉で問題の核心を言い表した。

「食料安全保障は国家安全保障である」

This article is brought to you by Nepali Times, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

INPS Japan

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2025年は観測史上3番目の暑さ、最も暑い3年間が連続

新たなデータにより、2025年が観測史上3番目に暑い年だったことが確認された。科学者らは、排出量の増加に伴う大気中の温室効果ガス濃度の上昇を、気候温暖化の主因として挙げている。

【ミラノINPS Japan/CitiPlat(気候変動と持続可能な世界のための市民プラットフォーム)編集部】

このほど公表された新たなデータによると、2025年は、1850年以降の観測記録で2024年、2023年に次いで3番目に暑い年となった。|英語版|

英気象庁、イースト・アングリア大学(UEA)、国立大気科学センターが共同で取りまとめた気温データセット「HadCRUT5」によると、2023~2025年は観測史上最も暑い3年間となり、2025年の世界の年平均気温は1850~1900年の平均を1.41±0.09℃上回った。

2025年は観測史上3番目に暑い年であると同時に、世界平均気温の産業革命前からの上昇幅が1.4℃を超えた暦年としても、3年目となった。

An AI-generated editorial illustration depicts a warming Earth, with industrial emissions and drought-scarred land symbolizing the human-driven rise in greenhouse gases behind the three warmest years on record, from 2023 to 2025. Image: INPS Japan.
An AI-generated editorial illustration depicts a warming Earth, with industrial emissions and drought-scarred land symbolizing the human-driven rise in greenhouse gases behind the three warmest years on record, from 2023 to 2025. Image: INPS Japan.

予測に沿った推移

観測史上最も暑い3年間が続いたことについて、英気象庁の首席科学者スティーブン・ベルチャー教授(CBE)は、次のように述べた。

「2023年以降、世界の年間平均気温は急上昇している。2023~2025年の3年間の世界平均気温は、1850~1900年の平均を1.47℃上回った」

UEA気候研究ユニットのティム・オズボーン所長は、「世界の気温観測データは、世界各地の気候科学者による予測に沿って、地球温暖化が進み続けていることを示している」と語った。

「エルニーニョ・南方振動(ENSO)として知られる太平洋の自然な気候変動が、2023年と2024年の世界平均気温を一時的に約0.1℃押し上げ、近年の急激な気温上昇の一因となった。

この自然変動の影響は2025年までに弱まった。そのため、2025年に観測された世界平均気温は、基調的な温暖化の実態をより明確に示している。

温室効果ガスの排出量を大幅かつ継続的に削減すれば、人間活動による世界の気候変動を減速させ、最終的には食い止めることができる」

人間活動による温室効果ガス濃度の上昇

英気象庁の気候科学者コリン・モリス氏は、次のように述べた。

「世界の年間平均気温が長期的に上昇しているのは、人間活動によって大気中の温室効果ガス濃度が高まっているためである。一方、年ごとの気温変動は、主として気候システムの自然変動によるものだ」

世界気象機関(WMO)は昨年公表した「地球気候の現状」報告書で、過去10年間の観測結果と今後10年間の予測を組み合わせ、2015~2034年のデータを分析した。

CitiPlat
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その結果、現在の長期的な地球温暖化の水準は、1850~1900年の平均を1.37℃上回り、その推定範囲は1.34~1.41℃とされた。パリ協定に照らして温暖化の進行を評価する際には、単年または数年間の平均よりも、こうした長期的な温暖化水準の方が重要な指標となる。

英気象庁をはじめとする各機関の気候科学者は、世界の年平均地表気温の上昇について調査を進めている。これには、2023年と2024年に見られた顕著な気温上昇も含まれる。

専門家らはまた、近年の急激な気温上昇の要因として、2023年にエルニーニョ状態へ急速に移行したこと、地球のエネルギー収支の不均衡が大きく、海洋への熱の蓄積が進んだこと、さらに人為起源エアロゾルの排出量が減少したことなどを挙げている。

INPS Japan

ORIGINAL URL: 2025 continues series of world’s three warmest years

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