地域|視点|平和のためにも、化石燃料に関する新条約を(相島智彦SGI平和運動局長、シャヒン・アシュラフ イスラミック・リリーフグローバル・アドボカシー部門責任者)

|視点|平和のためにも、化石燃料に関する新条約を(相島智彦SGI平和運動局長、シャヒン・アシュラフ イスラミック・リリーフグローバル・アドボカシー部門責任者)

【東京IDN=相島智彦、シャヒン・アシュラフ】

主要国の首脳が一堂に会するに際しては、平和を維持する方法を見つけることが、最も重要な責務の1つである。しかし、広島で開催された主要国首脳会議(G7サミット)が閉幕した今、世界の主要国指導者たちは、平和を広げていくための2つの機会を逃した。1つ目は、核兵器禁止条約を支持する機運を高めるための実質的な措置が講じられなかったことであり、2つ目は気候変動の分野においてである。

Wreath-Laying at the Cenotaph for the Atomic Bomb Victims by G7 leaders—Italy’s PM Meloni, PM Trudeau of Canada, President Macron of France, Summit host Fumio Kishida, US President Biden, and Chancellor Scholz—flanked by European Commission president von der Leyen (right) and European Council president Michel (left). Credit: Govt. of Japan.
Wreath-Laying at the Cenotaph for the Atomic Bomb Victims by G7 leaders—Italy’s PM Meloni, PM Trudeau of Canada, President Macron of France, Summit host Fumio Kishida, US President Biden, and Chancellor Scholz—flanked by European Commission president von der Leyen (right) and European Council president Michel (left). Credit: Govt. of Japan.

多くの人は、気候変動を単なる環境問題と捉えており、それは一面では事実である。海の酸性化によりサンゴ礁が死滅し、季節サイクルの変化は、地球上のほぼすべての生物種の生息環境を変化させた。2020年にオーストラリアで発生した山火事では、10億匹の動物が犠牲になり、生態系の犠牲は深刻である。

しかし、気候変動が平和および安全保障に与える影響や、地域、国内、国際的なレベルで紛争の可能性を高めていることを認識する人が増えてきている。

気候変動は様々な形態で紛争を起こりやすくする。気候変動による干ばつ、洪水、その他の異常気象は、作物に被害を与え、水の入手を困難にし、食糧不安や貧困を増大させる。気候変動により人々は家を追われ、生存可能な生活環境を求めて他の場所へ移住せざるを得ない。これは、土地、水、食糧などの資源をめぐる紛争へとつながり、特に資源がすでに不足している場合はなおさらである。

例を挙げると、2021年、カメルーンの北部では、気候の変化に起因する水不足が原因で、漁業、農業、牧畜業などのコミュニティの間で激しい争いが発生した。これにより数百人が死亡し、5万人以上の難民が隣国チャドに避難したが、同国も干ばつによる極度の困難に直面していた。また、ニジェールやマリなどでも、水や牧草地の減少をめぐる激しい地域紛争が起きている。

UNHCR/S.Modola
UNHCR/S.Modola

女性は、温暖化により引き起こされる暴力に対して特に脆弱である。国連環境計画の推計によると、避難民の80%は女性と少女であり、難民として性的暴力や搾取のリスクが劇的に高い。

若者も同様である。国連児童基金(ユニセフ)の報告によると、5000万人以上の子どもが気候変動によって故郷を追われた。彼らが直面するトラウマや身体的な危険を考えると震え上がるものがある。

気候危機に対する答えは、何十年も前から明らかである。できる限り速やかに再生可能エネルギーの開発を加速させ、化石燃料の使用を段階的に廃止することだ。

労働者、地域社会、家族など、この危機の影響を受ける人々が公平にエネルギー転換できるようにしなければならない。

そして、私たちは富裕国の政府に対して、気候変動に関連した損失や損害に対する資金を提供するよう求める。なぜなら多くの貧しく脆弱な国々は既に苦しんでおり、将来も苦しむことになるからだ。こうした国々は、気候危機を引き起こすようなことはほとんどしていないにもかかわらず、影響を最も受けている。

世界で最も脆弱な国や地域社会が、気候変動によるコストの負担を負うべきというようなことが道徳にかなう世界は存在しない。

だからこそ、私たちは世界中の何百もの宗教団体とともに、「化石燃料不拡散条約」を求める呼びかけに参加した。このような条約は、都市や科学者、そして現在では多くの国家によって承認されており、相互に関連する3つの重要な約束、つまり持続可能な未来の柱となるものを確立する。

Photo Credit: climate.nasa.gov
Photo Credit: climate.nasa.gov

第一に、気候危機を解決するための前提条件である新規の化石燃料プロジェクトの開発を直ちに中止する必要がある。

第二に、既存の石炭、石油、ガス生産の公正な段階的廃止の道筋を明らかにし、より脆弱な国々がエネルギー転換を行うための時間を確保する。

第三に、気候変動に関連する損失や損害への対応および公正な転換のための資金を必要とする。それによって、影響を受けた労働者やコミュニティがエネルギー転換に必要な職業訓練、コミュニティの再開発、その他関連する再開発が可能となる。

これらの条件はどれも簡単ではないが、取るべき正しいステップであることは明確である。

UN Photo
UN Photo

G7サミットの閉会に伴い、私たちは世界中のさまざまな宗教や善意の人々に、この問題についてもっと学び、公の場で発言し、地域社会の中で変化を支援するよう呼びかける。私たちが何が問題になっているのかを理解していること、私たちが気にかけていること、そして行動しなければならないことを各国政府は知っていく必要がある。行動を起こさなければ、人類の文明が依存している生態系、および世界で最も気候変動に脆弱な何億もの家族に、取り返しのつかない損害を与えることになる。信念に基づく壮大で迅速な行動は、すべての人にとってより良い未来を創り出すことができる。

その選択は疑いようがない。(原文へ

相島智彦 創価学会インタナショナル(SGI)平和運動局長。創価学会は地域社会に根差したグローバルな仏教団体。生命尊厳を基調として平和・文化・教育を推進する。1200万人を越える会員がいる。SGIはその平和運動団体。

シャヒン・アシュラフMBE 国際NGOイスラミック・リリーフのグローバル・アドボカシー部門責任者。同団体は、紛争、自然災害、気候変動による影響を軽減し、貧困や脆弱性から抜け出す力を地域社会に与えるため、34カ国、1300万人の人々に支援を行う。

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