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祖国にいながら屈辱を味わうパレスチナ市民

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【ナブルスIPS=ウシャミ・アガルワッタ】

2000年9月、キャンプ・デイビッド和平会談失敗の反動として、パレスチナに第2次インティファーダが勃発。暴動拡大の中で、イスラエル軍は、ヨルダン川西岸地域のナブラス市を標的として容赦ない攻撃を行った。同市の歴史的建物は瓦礫と化し、人々の心にも深い傷が残った。 

それ以来、ヨルダン川西岸地域は、イスラエル占領軍の厳しい監視下に置かれている。ナブラス市の2つの検問所、フワラとバイト・エバは、特にチェックの厳しさで知られており、夏の熱さ、冬の寒さの中で、毎日数百人の市民がM16銃を突きつけられながら、検問所の回転ドアから出入りするための検査を待っている。

イスラエル軍の監視体制そして夜間の侵攻は、同地域のインフラだけでなく、住民の精神にも大きな影響を与えている。パレスチナ中央統計局による2005年1-3月経済調査によると、イスラエルのこれら措置により、パレスチナの貧困は拡大しているという(第2次インティファーダの間に収入が減少した世帯は全体の65・2%。その内、収入が50%以上減少した世帯は53・9%に達する)。 

パレスチナの若者の悩みは仕事、そして常に付きまとう不安感である。今年初めにナジャ.ナショナル大学を卒業したアイシは、「仕事を見つけることは、人生の重要ステップであるが、ここで仕事を見つけるのは本当に難しい。」と語った。また、19歳のアッカドは、「子供の時からイスラエル兵を見、銃撃音を聞き、夫や子供の死を知り泣き叫ぶ母親の声を聞いてきた。最も不安になるのは夜だ。今日は安全だったとしても、夜に何かが起こり、朝起きたら全く違う状況になっているかもしれないのだから。」と語た。イスラエル占領軍の監視下で暮らすパレスチナ市民の屈折した心情を報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan 

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|イスラエル|人権|「イスラエル兵士が殺人を犯しても裁かれない」:HRW報告書

スワジランドのNGO、十代の青少年を対象にエイズ予防キャンペーンを開始

【ムババネIPS=ジェームズ・ホール】

スワジランドのNGO、National Emergency Response Committee on HIV/AIDS(NERCHA)は、十代の青少年を対象に、「自らの命とスワジランドの将来のために性行為を控え自分の人生に責任を持て」と訴える新たなキャンペーンを開始した。NERCHAは、同国のNGOのコーディネーター的な役割を果たしており、エイズ・結核・マラリア撲滅グローバル基金(Global Fund to Fight AIDS、Tuberculosis and Malaria)、政府、民間からの資金を背景に国内NGOに対する資金支援を実施している。

全国紙2紙による「明日は私のものだから」というスローガンを掲げた全面広告の他、ラジオ・キャンペーンも展開。また、今月から、大型ポスターによる屋外キャンペーンも開始された。屋外掲示用ポスターには、「私は、学校を卒業したい。だから、セックスは我慢できる」というコピーと共に教科書を抱えた女の子や、「僕は将来を考えている。だから、セックスは我慢できる」と意を決した表情の男の子の写真が使われている。

スワジランドは、世界でエイズ感染率が最も高く、異性関係が活発な成人の感染率は42.6%に達する。一方、18歳以下の感染率は15%で安定、あるいは減少傾向にあるかもしれないという。

米国国際開発庁(United States Agency for International Development:USAID)のD.ハルパリン氏は、これまでのエイズ・キャンペーンはエイズに対する意識の向上を目指すものであったが、生活行動の改善には至っていないと語っている。スワジランドが打ち出した新たなエイズ撲滅キャンペーンについて報告する。<原文へ>

翻訳=IPS Japan

|アフリカ|権力の座にしがみつくアフリカ諸国の大統領

【コトヌーIPS=アリ・イドリス・トゥーレ】

西アフリカのベナン共和国の人々は、ケレク大統領が2006年の大統領選での再選を断念したことを喜んでいる。だが同氏は自ら進んでこの決断を下したわけではなかった。 

ケレク大統領は1972年から89年まで軍指導者として国を率いた。(この間マルクス・レーニン主義に基づく社会主義を国是としたが、経済状況が悪化し、1989年の東欧における社会主義崩壊を受けて1990年3月に国民革命議会を解散した:IPSJ)1991年の大統領選でM.ソグロ氏(元世銀理事:IPSJ)に敗れたが、1996年3月の大統領選で返り咲き、2001年3月に再選し2期目を務めている。

 ベナン共和国では1990年2月に憲法で大統領の任期を2期10年までと定めているが、2001年にケレク大統領と同時期に再選を果たしたウガンダのムセベニ大統領とチャドのデビー大統領はそれぞれ大統領の任期を2期までと定めた憲法を改正し、来年の大統領選で3期目を目指している。 

この2年間、ベナンのマスコミでは同じように憲法を改正すべきか否かという議論が白熱し、国を2分してきた。しかし7月11日に教員団体との会合において、ケレク大統領は初めて任期を2期で終わらせるという意向を示した。 

民間新聞数紙はケレク大統領の決定を支持しつつ、「憲法改正に対して民衆が一斉に異を唱えたこと」がこの決定をもたらしたとする記事を掲載した。憲法改正に必要な議会の5分の4の賛成、あるいは国民投票の承認を得ることが難しいと同氏が自ら判断しなければこの決定はなかった。 

市民社会団体連盟のスポークスマンのR.グベグノンビは「市民団体が一致団結して声を上げていなければ、憲法はずっと前に改正されていただろう」と述べ、NGOのELAN代表R.マドゥマドゥ氏も「国益が危機に晒されたときには市民が一斉に異を唱えなければならない。今回成果を上げたことを誇りに思う」と述べた。市民グループは、統治中の独断からマスコミによって「カメレオン」と呼ばれるケレク大統領の監視を怠ってはならないと警告している。 

アフリカではトーゴのエヤデマ大統領、チュニジアのベンアリ大統領、ガボンのボンゴ大統領、ギニアのコンテ大統領と憲法を改正して再選を果たす大統領が大勢いる。このような動きを抑制するベナンの状況について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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|アフリカ|国連人道支援担当の高官、国際社会が無視してきた危機に対する支援を訴える

|タイ‐米国|エイズ薬の取り扱いが、次回自由貿易交渉の焦点になる

【バンコクIPS=マルワーン・マカン・マルカール】

「タイ国民が適正な価格で医薬品やヘルスケアにアクセスできる権利は守られなければならない」と、スチャイ・チャロエンラタナクル保健相は、先週、記者団に対して語った。

タイ―米国間の第4次自由貿易交渉(FTA)が、7月10日から15日の間、米国モンタナ州で開催予定であるが、タイ政府は、次回交渉の結果(新たに協議項目に「知的財産保護」項目が追加された)、抗レトロ薬(エイズ薬)が従来のように安価で製造できなくなるのではないかと懸念を深めている(タイ政府がFTAに関してこのような懸念を一般に発表したのは初めて)。

 タイ政府は現在、国立製薬局を通じて正規のエイズ薬(250ドル~750ドル)よりはるかに安価なジェネリック薬(30ドル)を生産しており、国内のHIV/AIDS感染者はもとより近隣の貧困国(カンボジア、ラオス、ミャンマー)にもジェネリック薬の提供を行っている。

米政府は、5月になって、ジェネリック薬を使用しているタイ国民(HIV/AIDS感染者)が自由貿易交渉によって影響を受けることはないとの見解を示したが、一方で、チュラロンコン大学の研究者は、米国が締結済みのシンガポール、チリとの自由貿易合意文書の中に、「薬の知的所有権が従来の20年から25年への延長」を目指す(=そうなればタイはジェネリック薬の製造ができなくなる)箇所を指摘し、米側の意図はジェネリック薬の規制あるとの見解を示した。

ジェネリック薬の今後を左右する来月のFTA交渉を控えて、タイで浮上している諸議論を報告する。(原文へ

翻訳=IPS Japan

|スリランカ|「政治的な津波」が津波被害からの復興作業を脅かす

【コロンボIPS=アマンタ・ペレラ】

昨年12月の津波(海岸線の4分の3を襲い同国の船舶の半数〈16,479隻〉を破壊、約31,229人の死者と4,100人の行方不明者、80万人の被災者を出した:IPSJ)からほぼ半年が経過した6月24日、チャンドリカ・クマラトゥンガ政権は、人民解放戦線(PLF)等の国内の強い反対を押し切って、津波被災者救援のためのLTTE〈タミル・イーラム解放の虎:通称タミールの虎〉とのジョイントメカニズムに署名した。 

これにより、国際社会からの津波被災者支援受け入れ作業は進展するものと思われるが、同時にクマラトゥンガ政権は、LTTEとの連携に強く反発する国内政治勢力との厳しい対決――「政治的な津波」を覚悟しなければならない状況に追い込まれている。 

スリランカでは、津波被災地に反乱軍が実効支配する北東部が含まれており、国際社会の祖国復興支援(援助表明額は30億ドルにおよぶ)を受けるには反乱軍とも提携した援助物資が被災者に行き渡るメカニズムの構築が必要とされている。一方、スリランカからの分離独立を主張している反乱軍勢力(20年の内戦で65,000人が死亡)との提携には、政権内外からの反発が大きく(PLFはLTTEとの交渉に抗議して6月16日連立政権を脱退、これにより連立与党は議会の多数議席を失っている)、同大統領は難しい政局運営を迫られていた。 

しかし、包括的な援助受入計画の欠如から、折角の莫大な援助資金も活用できず、6ヶ月を経ても遅々としてすすまない復興状況(6月8日現在、9480世帯が依然としてテント生活を強いられている)に加えて、国際社会からのジョイントメカニズムを支持する声(米国津波特使クリントン前大統領も5月に被災地を訪問してメカニズムを支持)等にも後押しされて今回の合意に踏み切ったとみられている。ジョイントメカニズムの合意により津波被災者救援への道筋が開かれる一方で、連立政権の足元を揺るがす「政治的な津波」を抱え込んだクマラトゥンガ政権が直面している諸課題を報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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|スリランカ|公式HIV/AIDS感染者数は少ないが、リスクは高い

UAE政府、地元求職者支援に動く

【アブダビIPS=特派員】


アラブ首長国連邦(人口約430万人)では、20世紀の産油ブームで、それまでの伝統的な社会・経済構造の変革が迫られて以来、圧倒的な人口、人材不足を背景に、伝統的に外国人(賃金の高い順に〈1〉白人〈2〉アラブ人〈3〉アジア人の3層で構成)がUAE民間セクターの仕事を独占する状況が続いてきた(地元労働者が占める割合は平均0.5~1.0で推移している)。

しかしその後、国内人口も増加し、UAE国籍の失業者数が40,000人に達したほか、地元出身者が就職において(外国人労働者と比較して)差別されているとの不満が国民からあがるに及び、UAE政府も、民間企業に対してある一定の職員割合をUAE出身者に確保する方策(Emiratisation)や、職業訓練校の設立、「Careers UAE fair」を通じた民間企業とのマッチング活動など、積極的な対策を講じている。しかし一方で、UAE出身の就職希望者の44%が高卒程度、22%が大学卒業程度という中で、労働市場の構造変革を変えていく作業は今後も多くの困難が予想される。

アラブ首長国連邦における地元出身労働者の就職問題について報告する。

翻訳=IPS Japan

|イスラエル|「イスラエル兵士が殺人を犯しても裁かれない」:HRW報告書

【ニューヨークIPS=キャサリン・スタップ】

「現在のインティファーダが2000年に始まって以来、イスラエル兵士が殺害した戦闘に参加していないパレスチナ人民間人の数は1日平均1名を越える(1600人以上の犠牲者の内、少なくとも500人は子供)。 

しかし捜査が行なわれた事例はほんの一部にすぎない。」人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は6月22日、「免責の文化を醸成する(=Promoting Impunity):犯罪行為を調査できないイスラエル軍」と題した報告書を発表し、多くのパレスチナ民間人がイスラエル軍兵士によって殺害され、真相が闇に葬られる中、一部兵士の間にも民間人を殺しても裁かれないというモラルハザードが広がりつつある現状を警告した。 

一方、イスラエル軍当局は、「軍律に違反した行為は全て徹底的な捜査の対象となっている」として報告書の内容を否定している(しかし、2004年5月現在、軍当局が武器の非合法な使用に関連して審議した事件は74件で民間人殺害件数の5%に満たない)。2004年10月5日に、13歳の民間人少女を指揮官の命令でイスラエル兵士達が射殺した事件では、軍当局の当初の捜査では「指揮官に、倫理に反した行動はなかった」と無罪裁定が下ったが、この事件に疑問をもったイスラエル軍の同僚兵士が事件当時の通信記録を提出し、指揮官が明確に「民間人の少女」であることを部下から報告を受けながら「この区域内で動く者は、たとえ3歳の子供であろうと殺さなければならない」と発言して至近距離で少女を射殺させたことが明らかとなり、現在再審理が行なわれている。HRWの概要とイスラエル軍の捜査体制の問題点を報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan

|スリランカ|公式HIV/AIDS感染者数は少ないが、リスクは高い

【コロンボIPS=アマンタ・ペレラ

人口1950万人の内、公式に確認されたエイズ発症者数614人、HIV/AIDS罹患率0.1%と、公式統計を見る限り、スリランカはエイズ感染の影響を殆ど受けていないように見える。しかし、専門家の間では、同国のエイズ感染率が相対的に低いことは認めているものの、初期段階にある現在の内に思い切った対策をとらなければ、深刻な事態へと感染が広がっていくと見られている。

 専門家は、感染拡大のリスクとして、(1)東北部(長らくタミールの虎との内戦が続いている)から流失した国内難民(厳しい生活環境の中で感染リスクが高い性行動をとる傾向にある)、(2)軍隊駐屯地周辺を中心とした売春婦の増加、(3)感染後も診察にいかない傾向(性感染症患者の診療所への出頭率15%)とモニタリング体制の弱さ、(4)性教育の遅れ、(5)コンドーム使用率の低さ(特に田舎で低い)、(6)10万人に及ぶスリランカ女性の海外出稼ぎ者の存在、(7)国内人口の多数を占める性的にアクティブな青少年層の存在、(8)長い場合は10年に及ぶ感染潜伏期間をもつHIV/AIDS感染の特徴、を挙げ、このままではハイリスク集団を中心としたHIV/AIDS感染から幅広い社会層へと感染が広がる事態を警告している。スリランカ社会の水面下で広がるHIV/AIDS感染の脅威を警告する専門家達による諸議論を報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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スリランカ|津波の影響|被災者の声:援助の表明は相次ぐものの、家はいったいどこに建つのか?

毛沢東派共産ゲリラ、ネパール政治の主流入りを提案か?

【ニューデリーIPS=ランジット・デブラジ】
 
インド政府が、同国の諜報機関のエスコートでネパール毛沢東派共産ゲリラ指導者バブラム・バタライとプラカシュ・カラットインド共産党 (CPI-M)総書記が秘密裏に会談していたとするインドの主要紙「The Times of India」の報道内容を否定する中、専門家たちは今回の会談を隣国(ネパール)の手に負えない政治危機を収束させるための鍵として歓迎している。

著名なネパール専門家S.D.ムニ教授は「インドが毛沢東派共産ゲリラ勢力との接触をとることは『良い考え』である」と語った。

「インドの指導者層は当初、ネパールに共和国建設を訴えて軍事闘争を展開している共産ゲリラ勢力に関して、ネパールのギャレンドラ国王及び側近との連携のもとに活動している『右派ロビイスト』からの圧力もあり、距離を置く姿勢を見せていた。」とムニ教授は指摘する。

 ムニ教授(名門ジャワハルラル・ネルー大学で国際関係論を教授している)はIPSの取材に応えて、その『右派ロビイスト』の内訳をインド国軍、米国政府(インド政府とネパール危機に関して密接な連携関係にある)、インド上層階級(ネパール王室との姻戚関係をもつ者もいる)と語った。

さらに毛沢東派共産ゲリラに反対しネパール王室擁護の立場をとっているロビー勢力にヒンズー原理主義者があり、彼らはインド国会の主要野党勢力を形成しているインド人民党(BJP)に関連した諸団体に属している。

著名なBJP指導者でラジャスタン州首相のヴァスンダラ・ラジャ・シンディアはかつての王族であるがネパール王室と親戚関係にある。

国内の(親ネパール王室傾向にある)政治事情は別にしても、インドには毛沢東派共産ゲリラの武装闘争が(1996年以来隣国ネパール全土で政府軍と戦闘を繰広げ11,000人の命が失われている)、インド国境(両国の国境はオープンボーダーとして開放されてきた:IPSJ)を越えて、貧困層が多く左翼過激派の活動が既に活発なインド北部一帯に拡大することを恐れる十分な理由がある。
 
 今年2月1日、ギャレンドラ国王は、毛沢東派共産ゲリラ勢力に対する適切な対応ができていないとして政党内閣を解散、非常事態宣言を発令して政治、民間、プレス活動を厳しく制限するとともに、民主主義に逆行する国王親政体制を敷いている。

 しかし、ネパール国王のこのクーデターに対してインドを始めとする国際社会は強く反発し、厳しい経済制裁を発動した。そこで国王は態度を少し軟化させ、4月29日に非常事態宣言を解除した(政治、プレスに対する規制はそのまま継続されているが)。

このような事態の中、毛沢東派共産ゲリラは、インド共産党に対して共感の意思を示している。しかも、インド共産党は昨年5月の前回選挙(BJPと国民会議が与野党逆転:BJP)で大きく躍進し、現在の与党であるインド国民会議派が率いる統一進歩連盟(United Progressive Alliance:UPA) に対してキャスティングボード的な外部協力の手を差し伸べられる立場にある。

先週、インドの主要紙「The Times of India」が毛沢東派共産ゲリラ指導者のバブラム・バタライとインド共産党書記長プラカシュ・カラットの秘密会談を報じた際、それを歓迎するコメントから激しく非難するコメントまで非常に幅広い物議をインド国内に巻き起こした。

インド外務省のナブテジ・サルナ報道官は、5月27日に開かれた記者会見の中で、「ネパール共産党(毛沢東派共産ゲリラ)に対するインド政府の姿勢は変更ない。我々は毛沢東派共産ゲリラによるテロ活動がネパールの人々に多大なる苦痛をもたらしてきたことを明白に非難する。」と語った。そして、「ネパールに恒久平和と安定を取り戻すには、政治解決を図るより方法はなく、中でも、毛沢東派共産ゲリラが戦闘終結を宣言し武器を置くことが必要条件となる」とサルナ報道官は付け加えた。

サルナ報道官の政府見解に対して、評論家のC.ラジャ・モハンは政府を批判する論説をし掲載し、その中で、「インド政府の一貫性のない外交姿勢は(国際社会に対して)混乱したシグナルを発してしまっている。」と語った。モハンは、「インド政府は一方で世界におけるテロとの戦いを支持するとの立場を表明しながら、対ネパール外交政策に関しては民主主義を瓦解させたばかりの絶対君主を支援しているのが現状である」指摘した。

インド諜報機関が、カラット書記長との秘密会談にバタライ(国際刑事警察機構:ICPOの指名手配犯)をエスコートしたとする報道に関しては、サルナ報道官は特に言及することを避け、カラット書記長が先にその事実を否定したことを引用することに終始した。一方、カラット書記長はこの点に関して、インド諜報当局の役割に関しては慎重に報道内容を否定した。しかしバタライとの会合の事実関係そのものを明白に否定することは避けた形となった。

ムニ教授によると、バタライとカラットは1970年代ジャワハルラル・ネルー大学で同窓であり、両者が互いに会おうと思えば特にインド諜報当局の助けは必要なかったと指摘している。「しかし収拾がつかないネパール情勢を解決していくには毛沢東派共産ゲリラ勢力を交渉の表舞台に載せる以外、選択肢が見当たらないのが現状です。しかし残念なことに、インド政府、特にインド外務省が毛沢東派共産ゲリラとの接触を極度に嫌っているのも現状です」とムニ教授は語った。

ムニ教授は、「今回の秘密会合疑惑のエピソードは、毛沢東派共産ゲリラとネパールの主流諸政党との関係改善を図ることでギャレンドラ国王を孤立させることを目論んでいるバタライに対して、ネパールの政権を掌握している王党派がバタライの信憑性を崩そうと動いている政治状況の中で理解しなければならない」と解説した。

5月19日、ネパール軍当局はプレスブリーフィングの中で日付入ビデオテープを公開した。そこには毛沢東派共産ゲリラ最高指導者のプラチャンダの映像が映し出されており、その中でプラチャンダは、ゲリラメンバーに対して、「バタライはインドに接近しすぎており、彼を全ての職務から更迭する」と発表している。ネパール軍当局は、この際、バタライが「インドの手先」として信頼が失墜している点を演出するとともに、バタライとプラチャンダの違いを改めて強調し、毛沢東派共産ゲリラ内の内部亀裂が深刻であることを印象付けることに余念がなかった。

しかしムニ教授は、「もしインドがネパールの和平に仲裁者としての役割を得ようとするならば、最終的には毛沢東派共産ゲリラの信頼を獲得しなければならいのが現実である」と語った。

ジャワハルラル・ネルー大学博士課程に留学中のハリ・ロカを含む他の専門家も、ムニ教授の状況評価を支持している。

「ネパールの主流諸政党と毛沢東派共産ゲリラが同盟関係を結ぶという(バタライの目指すシナリオ)事態は、インド-米国-英国枢軸のタカ派にとってなんとしても避けたいシナリオです」と、ネパールの安定は2つの柱(立憲君主制、複数政党制民主主義)によって維持されるとするインドの公式外交スタンスに批判的なロカは語った。

「現実的にネパールに平和と安定を取り戻す2つの柱は、複数政党制民主主義と毛沢東派共産ゲリラの主流政党への編入です」とロカは語った。(原文へ
 
翻訳=IPS Japan

ラテンアメリカにおける犯罪と下されるかもしれない罰

【ローマIPS=ミレン・グティエレス】

ラテンアメリカでは、20世紀後半に地域全体を席捲した軍事独裁政治の影響で、体制側によって行われた政治犯罪は責任の所在を追及されることなく、未来志向と和解のみが強調される傾向にあった。 

しかし今年になって互いに関連のない数十年前の政治犯罪の責任を問う動きが表面化しており(チリ:先月、元独裁者アウグスト・ピノチェトが1970年代に競合相手2名暗殺容疑で告発される。ペルー:ウラディミーロ・モンテシーノ元諜報局長官に15年前の虐殺事件の責任を問い35年懲役求刑。 

コロンビア:アルベルト・サントフィミオ元法相が1989年の大統領候補暗殺容疑で逮捕。)、これを契機に、過去に暗殺や虐殺事件に関与した当時の指導者たちが法の裁きを受けるようになるかもしれない。3つの政治事件に焦点を当てながら、従来の沈黙の文化を捨て、過去と向き合おうとするラテンアメリカ諸国の現在を報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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