【ハラレ(ジンバブエ)IDN=ジェフリー・モヨ】
南アフリカ共和国(南ア)で8月22日から24日にかけて3日間の日程で開催されたBRICSサミットは、対アフリカ開発支援の新たな取決めがより公正かつ平等なものになるとの希望をアフリカ大陸で高めた。アフリカは数十年にわたって、開発融資のためにかえって西側により多くの支払いをしてきたとの批判もある。
ブラジル・ロシア・インド・中国・南アから構成されるBRICSは、2009年の結成当初にはその意義に疑念も持たれていたが、世界的な機構を支配する西側諸国に対する対抗勢力だと今やみなされている。ロシアのウクライナ侵攻と西側諸国の対ロ金融制裁が、BRICSが代表すると見られる「グローバル・サウス」と呼ばれる地域に悪影響を及ぼしたことから、BRICSの重要性はさらに増している。
サミットに出席しなかったロシアのウラジミール・プーチン大統領はビデオメッセージで、「われわれの経済関係の中で、脱ドル化の客観的で不可逆的なプロセスは勢いを増している。」と述べた。
しかし、BRICS共通通貨に関する議論はサミットの議題とはならなかった。セルゲイ・ラブロフ・ロシア外相は、ブラジルのルーラ・ダ・シルヴァ大統領の後押しを受け、BRICS諸国間の共通通貨を支持する発言をしていた。
南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領は、「アフリカの課題を前進させることは、わが国がBRICSの議長国を務める間の戦略的な優先事項であった。」と8月23日の開会の挨拶で語った。
BRICSが立ち上げた「新開発銀行(NBD)」の総裁を務めるブラジル出身のジルマ・ルセフ氏によると、BRICS諸国はアフリカにとって「良きパートナー」だという。ルセフ総裁はBRICSサミットのスピーチでこのように述べ、NDBはアフリカの物理的面・デジタル面でのインフラ建設を金融支援し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を後押しすると語った。
今回のBRICSサミットでは、エジプトとエチオピアのアフリカ2カ国が、アルゼンチン・イラン・サウジアラビア・アラブ首長国連邦とともに来年1月からこの枠組みに参加することが認められた。
人権問題への批判から欧米諸国と敵対してきたジンバブエは、BRICSへの加盟も目指している。コンスタンティーノ・チウェンガ副大統領が同国を代表して今回のサミットに参加した。
「ジンバブエは、BRICSが多極的で包括的な世界秩序を促進する強力な同盟であると認識している。この同盟に参加することで、ジンバブエは志を同じくする国々と協力し、集団の力を活用するまたとない機会を得ることができる。」とチウェンガ副大統領はサミットで語った。
同氏はさらに、「BRICSの新開発銀行(NDB)設立と、BRICS加盟国と他の南側諸国との間で地域通貨を使用するという提案を称賛する。」と述べるとともに、「ジンバブエは、南の他の国々と同様に、開発プロジェクトのための代替資金源としてNBDの恩恵を受けることを望んでいる。」と語った。
ザンビアのハカインデ・ヒチレマ大統領は、BRICSがアフリカ諸国、特に自国にとってゲームチェンジャーとなることに期待を表明した。
「ザンビアとしては、多くの機会にたびたび発言してきた問題に対応するための真の機会をBRICSが提供してくれるものと期待している。資本のような開発にとって不可欠の要素に伴った不平等の問題に対処するために、グローバルな世界秩序を改革する必要がある。」と、ヒチレマ大統領は語った。
サミットの参加者らは、アフリカに有利な状況をもたらすために、BRICSの新開発銀行による融資の利率は比較的低く抑えるべきだと議論した。
2000年までのアフリカの債務を帳消しにするキャンペーンを展開していた「ジュビリー2000」の前身である「債務の正義」は、昨年のG7サミットの前にG7メンバーに対し、アフリカの借金の35%を占める中国などからの二国間融資よりも、欧米の民間銀行の方がはるかに高い金利を課していることを指摘していた。
アフリカ諸国は、新開発銀行から有利な利率で融資を受けたいとの意向を表明している。ボツワナのスランバー・ツォグワネ副大統領は、BRICSサミット出席後、同国の『デイリー・ニュース』紙の取材に応えて、「従来の国際機関の構成から我々は教訓を学んでおり、より民主的なあり方を望んでいる。」と述べた。同氏はモクウィツィ・マシシ大統領の代理でサミットに出席していた。
ただし、ナミビアのように、サミットに参加しつつも、BRICS入りそのものには慎重なアフリカ諸国もある。
隣国の南アでBRICSサミットが開かれるのを前に、ナミビアのネトゥンボ・ナンディ=ヌダイトワ国際関係相は、「BRICSは新たなメンバー国に門戸を開いたと聞いているが、加入宣言の前にその手続きについてまずは知る必要がある。我々の経済に利益をもたらすかどうか考えてみる余地はある。」と記者団に語った。
しかし、ジンバブエの隣国モザンビークのように、BRICS入りに熱意を示している国もある。同国のフィリッペ・ニュシ大統領は今回のサミットに出席した。
「この対話に参加することによって、BRICSが具体的な行動を通じて利益及び取り組みを共有するもう一つの明確な道筋を示し、我々の国々の構造的な利益を巡る様々な問題においてグローバル・サウスを特徴づける相補性と連帯という環境の下で相互利益をもたらすものだとの確信をモザンビークは得た。」とニュシ大統領はBRICSサミットで発言した。
国連食糧農業機構(FAO)中国オフィスの代表を務めるカルロス・ワトソン氏は新華社通信の取材に答えて、「BRICS諸国と他の国々との協力は2030年までのSDGsの達成において『よい成果』をもたらすうえでカギを握る。」との見方を示すとともに、「農業部門では、グローバル・サウスの国々の間での協力が、農業開発、食料、栄養安全保障、農村開発、貧困削減の触媒として重要な結節点となることができる。」と語った。
中国もまた、開発途上国が国連の持続可能な開発目標に沿った開発目標を達成できるよう支援している。
南アフリカ・ツワネ大学の著名な講師であるリッキー・ムニャラジ・ムコンザ博士は、アフリカ諸国を取り込もうとするBRICSの取り組みを高く評価した。
「BRICSはアフリカにとって良いニュースだ。南と南の関係に貢献する組織として、アフリカ大陸の経済的利益に目を向けると、これは特にそうです」とムコンザ博士はIDNの取材に対して語った。
マラウィ大学政治行政学部の研究者ギフト・サンボ氏は、BRICSに加わることでアフリカ諸国の希望は高まっていると述べた。
「アフリカ諸国がBRICSに寄せる期待の大きさは理解できる。この地域には、ワシントン・コンセンサスよりもBRICSの方が公正な貿易取引を行える可能性が高いという強い認識がある。アフリカにおける経済大国である南アがBRICSの主要メンバーであることも、この認識を強めている。BRICSへの強い親近感は、グローバルな政治経済におけるアフリカの交渉力を高めることだろう。」とサンボ氏はIDNの取材に対して語った。
ジンバブエの政治学者ギブソン・ニカジーノ氏もまたこの議論に加わった。
ニカジーノ氏は、「世界政治システムは、西側の支配的な政治的、社会的、経済的秩序に対抗し、従来疎外されてきた国々が経済的正義と平等を目標に合併できるよう、形を変え、再編成されつつあります。」と指摘したうえで、「BRICSは、世界的な問題に対処する支配力を持つG7や西側の一方的なアプローチに対抗するため、南南協力や経済的可能性に存在するポテンシャリティーについて、アフリカに代替案を提示しています。BRICSは公正なウィンウィンの協力を提唱していることから、経済活動、生産高、協力に関する実績はアフリカにとって好ましいものです。」と語った。(原文へ)
INPS Japan
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