【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】
ニュース番組やラジオ放送で盛んに報道されているにもかかわらず、今世界中で起きている戦争は、ここニューヨークにいると、遠くかけ離れた出来事のように感じられる。音もなく戦争が続き、そうした紛争地では平和はほど遠いところにあるように思える。
このような状況の中で、戦争が私たちの身近に何かもたらす可能性はあるだろうか。
その答えは、意外にも “YES “である。
アフリカ北東部スーダンでの戦闘勃発を受け、国際的な消費財メーカーは、炭酸飲料からチューインガムや化粧品に至るまで、実にさまざまな商品の重要な原料であるアラビアガム(アカシア樹脂)の入手が先細りとなり緊急の対応に追われている。
アラビアガムの代替品はほとんどなく、世界的な供給の約70%は、アフリカ大陸で3番目に大きいスーダンに広がるサヘル地域のアカシアの木から産出する。だが、スーダンは現在分裂状態に陥り、4月中旬以降、国軍と準軍事組織の間で戦闘が発生している。
スーダンの政情不安を懸念して、アラビアガムに依存しているコカコーラやペプシコなどの飲料メーカーは、以前から供給難を避けるため、3~6カ月分相当の在庫を確保しているという。
スーダン内戦が今後どれほど続くかによるが、店頭に並ぶ完成品が不足する可能性は十分にある。現在の備蓄が5~6カ月で底をつく可能性さえある。
アラビアガムのグローバルな生産量は年間約12万トンで、11億ドル(約1510億円)に相当する。そしてその大半は、東アフリカから西アフリカへと500マイル(804キロメートル)に亘って広がる「ガムベルト」と呼ばれる地域のアカシアの木から産出し、スーダン産が最も良質なものとして取引されている。
ガム・アラビックUSAを経営するモハマド・アルノア氏は、現時点では、スーダンの農村地域からアラビアガムを追加調達することは、国内の混乱や道路封鎖のため「不可能」だと語った。同社はアラビアガムを健康サプリメント製品として消費者向けに販売している。
アラビアガムの輸出業者であるモハマド・ザラガ氏は、「アラビアガムと同じことができる原料は他に見当たりません。これまでにいろいろな人が代替原料を探しては試したが、成功していないのです。」と語った。(原文へ)
解説:アラビアガムは、豆科アカシア属のアラビアゴムノキから採取した樹液を固形化したもので、優れた乳化特性や皮膜性をもつことから,増粘安定剤として古くから食品、霞薬品、工業製品等に利用されてきた。清涼飲料水メーカーにとって、アラビアガムが必須の原材料で、これがなければ、砂糖や香料、着色料などが分離・沈殿して透明な液体となり製品として成り立たなくなる。
INPS Japan
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