地域アジア・太平洋G7を前に強まる北東アジアの対立関係

G7を前に強まる北東アジアの対立関係

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ヒュー・アイマル】

2023年5月に広島で開催されるG7サミットの準備が進むなか、世界秩序の当面の見通しは今まで以上に暗澹たるものとなっている。北東アジアは特に緊張が高まっている地域である。中国、日本、韓国、北朝鮮の間には、地域秩序、世界秩序、領土問題をめぐる意見の不一致がある。軍事費は急速に増大しており、北朝鮮は核保有国としての地位を固めつつある。米中対立の激化は、地域に色濃く影響を及ぼしている。(

来るG7サミットは、9月にニューデリーで開催されるG20サミットとともに、流れを変える機会となるはずだ。主要国は、分断から協力へと方向転換し、グローバルガバナンスの新しい枠組みについて合意し、軍縮、紛争予防、気候変動緩和、持続可能な開発のためにともに取り組む必要がある。

4月18日に日本で発表した声明において、G7の外相たちは、グローバル課題に対処するために中国に働きかけることを支持した。彼らは、核兵器のない世界に向けた道筋に世界を導くことを目的とする岸田首相の「ヒロシマ・アクション・プラン」に支持を表明した。また、2050年までに温室効果ガスの排出を正味ゼロにし、2030年までに生物多様性喪失を反転させることを呼びかけた。

しかし、現実的には、世界全体、とりわけ北東アジアは反対の方向に進んでいる。

東アジアの領土問題は、引き続き深刻な政治的緊張を生み出し、軍事衝突のリスクをもたらしている。4月28日にスプラトリー諸島付近で中国海警局とフィリピン沿岸警備隊の船が衝突寸前となった事案を受け、米国務省のマシュー・ミラー報道官は中国に対し、「挑発的かつ危険な行為をやめる」よう求めたうえで、中国がフィリピン軍を攻撃すれば米国が対応すると述べた。

台湾沖では、中国は4月10日までの3日間にわたり軍事演習を行い、戦闘機が精密攻撃のシミュレーションや台湾封鎖演習を実施した。

2022年11月のG20サミットで習近平主席とバイデン大統領は会談を行い、通信経路を常にオープンにし、グローバルな課題に関する協力を強化し、人的交流を拡大することで合意した。この後にアンソニー・ブリンケン国務長官が北京を訪問することになっていたが、米国領空を飛行する中国の気球を米国が撃墜した後、訪中は取りやめとなった。

米中関係がこれほど急速に対立関係へと発展したのは、驚くべきことだ。トランプ大統領が就任する前、米国の大統領たちは中国の台頭を歓迎し、ジョージ・W・ブッシュの言葉を借りれば「平和的で繁栄した中国が国際制度を支える」ことを期待した。オバマ大統領は、「中国の平和的台頭が世界にとって良いことであり、米国にとって良いことであると断固信じる」と述べた。それ以降、習近平主席は権力を握り、よりナショナリスト的なアジェンダを掲げるようになり、トランプ大統領は中国を「戦略的競争相手」と呼んで制裁を導入し、バイデン大統領はそれを解除していない。

中国は今や世界第2位の軍事大国であり、2022年の軍事費は前年比4.2%増の2,920億ドルとなった。日本も自衛隊の防衛費を大幅に増やし、前年比5.9%増の460億ドルとしたが、それでもこれはGDP比1.1%に過ぎない。韓国の軍事費は、2022年に前年比4.6%増の483億ドルに増加した。北朝鮮は国家歳出の約16%を軍事費に充て、精力的な核開発計画とミサイル発射実験の維持を可能にしており、近隣諸国に不安を与えている。

世界全体の軍事費は、2022年に実質ベースで3.7%増加し、史上最高額の2兆2,400億ドルに達した。最大の軍事費増加をもたらしたのはウクライナ紛争であり、米国の軍事費は実質ベースで0.7%増加したが、それは主にウクライナ支援のためである。ロシアも、軍事費を推定9.2%増の864億ドルに増やした。米国の軍事費は圧倒的世界1位の8,770億ドルで、世界全体の39%を占める。これは中国の3倍である。

宇宙開発競争の激化も、地上での地政学的紛争を助長している。

中国は、相対的なパワーの優位性を米国と争うなかで、宇宙、AI、量子コンピューター技術を極めて重要な三つの基盤的技術と位置付け、急速な進展を計画している。2023年3月に開催された全国人民代表大会(NPC)と中国人民政治協商会議(CPPCC)の両会議の後、中国は、世界の主要国となるためにこれらの技術を優先事項と位置付けた。

韓国の尹大統領と日本の岸田首相が4月16日に会談し、日韓関係の改善で一致したことにより、民主主義国同盟の構築を目指すバイデン大統領の努力は大きく進展した。その一方で、韓国国民の75%が核保有に賛成していると報告されているにもかかわらず、尹大統領がホワイトハウスを訪問した際、韓国は核兵器保有を目指さないという宣言が発表された。その見返りとして、米国は韓国への拡大抑止を強化するとともに、合同軍事演習を強化することを約束した。

同時に、岸田首相は「二つの海の交わり」という安倍晋三元首相の夢を追求し、3月20日にニューデリーを訪問して、インド太平洋地域における日本とインドの戦略的協力の強化を図った。インドがG20の議長国、日本がG7の議長国を務めていることから、岸田はこれを、両国が力を合わせて世界秩序を形成する機会としても捉えている。インドは、近頃浮上している世界秩序のあり方に関する論争や、グローバルサウスにおける影響力をめぐる中国、ロシア、米国の競争で、重要な役割を果たしている。

中国の視点から見ると、こういった封じ込めの努力は中国国民の「意志を強固にするのみ」である。中国は、引き続き平和的に台頭し、屈辱の世紀に失った歴史的領土と見なす土地を回復し、貿易戦争、技術戦争、デカップリングを回避しようとしている。

しかし、デカップリングは起こりつつある。なぜなら、主要各国がパンデミックや地政学による供給ショックから国内経済を保護しようとしているからだ。中国は、「双循環」モデルを追求している。インドは、「メイク・イン・インディア」プログラムを実施している。米国は、国内産業を保護し、中国へのアウトソーシングを禁止しようとしている。これが、これまで東アジアの平和を促進する最大の要因だった東アジアにおける貿易パターンにどのような影響を及ぼすかは明確ではない。

中国がソフトパワーの重要性を認識していることを示すものとして、習近平主席は、ウクライナに提案した12項目の和平案やイエメンにおける停戦の提案など、和平仲介の分野に参入することによって、一帯一路の外交政策を推進している。

これは、米国とその同盟国が中国と協力してウクライナにおける平和的解決を模索し、台湾に関する和解に向けて動くことに同意するとしたら、より広範な協力の前触れとなり得る(政策提言No.153および No.126を参照) 。中国と平和的に折り合うことができ、なおかつ、世界の公平性を促進し、気候変動と生物多様性喪失を緩和し、国連憲章と国際法の原則を堅持する世界秩序の新たなルールやグローバルガバナンスの新たな体制について合意をまとめるため、G7とG20は力を合わせて努力する必要がある。

 サミットがこれらの期待に応えられるかどうかは、結果を待たねばならない。

ヒュー・マイアルは、英国・ケント大学国際関係学部の名誉教授であり、同国最大の平和・紛争研究者の学会である紛争研究学会の議長を務めている。ケント大学紛争分析研究センター所長、同大学政治国際関係学部長、王立国際問題研究所の研究員(欧州プログラム)を歴任した。マイアル教授は戸田記念国際平和研究所の上級研究員である。

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