2025年8月に迎えた被爆80年の節目にあたり、国連軍縮担当上級代表の中満泉氏は、アントニオ・グテーレス国連事務総長のメッセージを代読し、次のように述べた。
「私たちは、命を落とした人々を追悼する。そして、その記憶を受け継いできた家族と共に立つ。」中満氏はまた、広島と長崎の原爆投下を生き延びた人々を指す「被爆者(hibakusha)」に敬意を表し、「その声は、平和のための道義的な力となってきた。年々その数は少なくなっているが、彼らの証言、そして平和を訴える永遠のメッセージが、私たちから失われることは決してない」と語った。
【国連IPS=タリフ・ディーン】

いま続く2つの紛争は、核保有国と非核保有国の間で起きている。ロシア対ウクライナ、イスラエル対パレスチナである。両紛争では、それぞれ多数の死者が出ており、犠牲者数は万単位に達している。さらに、核保有国と非核保有国が衝突しかねない潜在的な火種として、中国対台湾、北朝鮮対韓国、米国対イランなどがある(ほかにベネズエラ、メキシコ、コロンビア、キューバ、デンマークをめぐる対立も指摘されている)。|英語版|中国語||ドイツ語|
この増え続けるリストに、新たな潜在的対立が加わりつつある。核保有国・中国と非核保有国・日本の対立である。日本は、1945年8月に広島と長崎で米国の原爆投下を受け、主に民間人15万~24万6000人が死亡したとされる、世界で唯一の被爆国だ。

日本の高市早苗首相は昨年11月の国会答弁で、中国が台湾に武力攻撃を行った場合、日本にとって「存立危機事態」に当たり得るとの認識を示し、日本が軍事的に関与する可能性に言及した。発言は、アジアで新たな緊張を招きかねない。
ニューヨーク・タイムズ紙によれば、中国は「激しく反発」し、事実上自治を行う台湾は中国領土の不可分の一部だと主張した。中国はまた、数百万人規模の観光客に対し日本渡航を控えるよう促し、水産物の輸入を制限し、軍の哨戒を強化したという。
こうした軍事的緊張が高まるなか、日本政府は新政権への国民の信任を改めて問うとして、衆院を解散し、2月8日に総選挙を実施すると表明した。
タイムズ紙は1月22日付の記事「不安に揺れる国家が国内最大級の原発を再稼働」(An Anxious Nation Restarts One of its Biggest Nuclear Plants)で、東京電力(TEPCO)—福島第一原発を運転していたのと同じ電力会社—が、世界最大級の原子力施設の一つである柏崎刈羽原発で、6号機の再稼働を開始したと報じた。
同紙は、2011年以前、日本の電力の約30%を原子力が供給していたとも指摘している。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、日本の2024年の軍事予算は世界10位まで拡大した。中国の軍事予算も増加を続け、2024年には米国に次いで世界2位となっている。

米カリフォルニア州オークランドのウエスタン・ステーツ法律財団(Western States Legal Foundation)事務局長で、「平和首長会議(Mayors for Peace)」北米コーディネーターのジャッキー・カバッソ氏はIPSの取材に対して、高市首相が中国による台湾への武力攻撃が日本にとって「存立危機事態」になり得ると述べたことは、きわめて憂慮すべきだと語った。
カバッソ氏によれば、1967年、日本の佐藤栄作首相(当時)は「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」という非核三原則を打ち出し、1971年には衆議院がこれを正式決議として採択した。
しかし、この三原則への日本のコミットメントは長年にわたり疑問視されてきた。政治決定があれば、日本は核兵器を短期間で製造し得る能力を有している、という見方が広く存在するとカバッソ氏は語った。
中国は言葉の応酬をさらに激化させている。真偽は別として、中国軍備管理・軍縮協会(China Arms Control and Disarmament Association)と、中国核工業集団(China National Nuclear Corporation)系のシンクタンクである核戦略計画研究所(Nuclear Strategic Planning Research Institute)による最近の報告は、日本が秘密裏に核兵器計画に関与していると主張し、世界平和に深刻な脅威を与えているとしている。一方で中国自身も、核戦力の近代化と増強を急速に進めているとカバッソ氏は指摘した。

「日本は、戦争で核兵器が使用されたことを経験した世界で唯一の国として、対話と外交、平和、核軍縮を擁護するうえで独自の道義的立場を持つ」と同氏は語る。
日本と中国の指導者—そしてすべての世界の指導者—は、広島・長崎両市長の訴えに耳を傾けるべきだ。両市長は1月20日、166の国・地域の8560都市が加盟する平和首長会議を代表し、共同アピールを発出した。そこでは政策決定者に対し、対話を通じた紛争の平和的解決のため、あらゆる外交努力を尽くし、核兵器のない平和な世界の実現に向けて具体的な措置を講じるよう求めた。

ブリティッシュコロンビア大学(カナダ・バンクーバー)公共政策・グローバル公共政策大学院のM・V・ラマナ博士(軍縮・グローバル/人間の安全保障分野サイモンズ講座教授)はIPSの取材に対して、核兵器が使用されなくても、台湾で軍事力が行使されれば世界の安全保障にとって壊滅的であり、とりわけ台湾の人々にとって深刻な惨禍になると語った。
同博士は、台湾をめぐる紛争の解決は二つの基本原則に従うべきだと述べた。第一に、対話と協議によって解決されるべきであること。第二に、台湾の住民の意思を最優先することである。さらに、すべての当事者は挑発的な発言を避けるべきだと強調した。
こうした一連の動きは、国連の定例記者会見でも取り上げられた。


記者:日本には「非核三原則」という長年の政策がある。すなわち、核兵器を保有せず、製造せず、日本領土への持ち込みを認めないというものだ。しかし現在、日本政府は、この政策を含む安全保障文書の一部見直しを議論しており、広島・長崎の人々や一部のノーベル平和賞受賞者から反発の声も出ている。国連の立場は。
ステファン・デュジャリック国連報道官:事務総長の核軍縮に関する立場は明確であり、これまでも繰り返し述べてきた。もちろん、加盟国は自ら望む政策を定めるだろう。重要なのは、中華人民共和国と日本の間の現在の緊張を、対話を通じて和らげることだ。事務総長の核軍縮と不拡散に関する立場は広く知られており、変わっていない。

昨年11月の党首討論で、公明党代表の斉藤鉄夫氏は国会で高市首相に対し、非核三原則と日本の安全保障政策をめぐる政府の立場を質した。公明党は、創価学会の指導者であった故・池田大作博士(名誉会長)が1964年に創設した政党である。
斉藤氏は、日本が核兵器を保有すべきだと示唆した政府高官の発言を批判し、戦後日本の方針に反し、外交・安全保障上の努力を損なうと述べた。
また斉藤氏は、「持たず、作らず、持ち込ませず」という三原則と、核不拡散条約(NPT)上の日本の義務は根本であり、揺るがせにしてはならないと強調した。
さらに斉藤氏は、高市政権の立場には曖昧さが残っているとし、とりわけ首相答弁が三原則維持への明確な関与を欠くように受け取られた点を問題視した。この曖昧さが将来の見直しにつながりかねないとして、公明党は今後の国会審議でも、条件を付さない形で三原則の堅持を政府に求め続けるとしている。斉藤氏は2025年12月にも、非核三原則と核兵器を否定する日本の政策は維持されるべきだと改めて表明し、政府に対して国内外に向けた明確な再確認と、被爆者や核廃絶を求める市民社会の声に耳を傾けることを促した。
カバッソ氏はさらに、日本の第二次世界大戦期の中国侵略の記憶と、中国が台湾の「回収」をめぐって強硬姿勢を強めていることを背景に、両国の危険な緊張が再び表面化していると語った。不安定で予測不能な地政学環境のなかで、日本と中国の言葉の戦争は、いずれ大惨事に至りかねない正面衝突寸前の列車のようだという。

Source: Komei Shimbun

日本国憲法(1947年施行)の第9条は、米国が「勝者の正義」に基づき日本に課したものだとカバッソ氏は語った。同条は次のように定めている。「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」。さらに、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と規定している。
しかし、こうした規定は21世紀に入り徐々に骨抜きにされてきた。2004年、日本は自衛隊を初めて「地域外」、すなわちイラクへ派遣した(第二次世界大戦後初)。さらに2014年、当時の安倍晋三首相は第9条を再解釈し、同盟国が攻撃された場合に日本が軍事行動に参加し得る余地を開いた。
カバッソ氏によれば、翌2015年には、日本の国会が一連の法整備を行い、日本にとって「存立危機事態」に当たる場合、交戦状態にある同盟国に対して自衛隊が物資面の支援を行えるようにした。その正当化の論理は、同盟国を防衛・支援しなければ同盟関係が弱体化し、日本の安全が損なわれる、というものだった。(原文へ)
This article is produced to you by IPS NORAM, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.
INPS Japan
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