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地域人類が核時代を生き延びるには、核兵器がもたらす厳しい現実と人類の選択肢を報じるジャーナリズムの存在が不可欠(ダリル・G・キンボール軍備管理協会会長)

人類が核時代を生き延びるには、核兵器がもたらす厳しい現実と人類の選択肢を報じるジャーナリズムの存在が不可欠(ダリル・G・キンボール軍備管理協会会長)

【ニューヨークIDN=ダリル・G・キンボール】

人類が核時代を生き延びるためには、情報を熟知し、連帯して行動を起こす市民の存在が不可欠だ。そして、核兵器が人類に突き付けている厳しい現実と、その使用がもたらす帰結、そして人類に残されている選択肢を明らかにする効果的で独立したジャーナリズムの存在が不可欠である。

米国による最初の原爆が広島と長崎に投下されて以来、ジャーナリスト達は、世界で最も危険なこの兵器に関する事実を伝え、虚構を暴く重要な役割を果たしてきた。

米政府に安全保障政策を助言した物理学者で、核軍縮の主唱者でもあった故シドニー・ドレル博士は1983年に、核兵器と核政策に関する問題は「あまりに重要過ぎて専門家にのみ任せてはおけない…あらゆる人々がこの大量無差別兵器の標的となっているのだ。従って、私たちには、確かな情報に基づいて、軍備管理が絶対に必要だと政策責任者らに要求する市民になる以外に弁解の余地はない。」と記している。

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核兵器の壊滅的なリスクに関する情報と、核兵器を削減し廃絶する常識的な戦略を身に着けた一般市民たちは、この問題に関心を寄せる科学者や医師、外交官らとともに組織化を進め、核軍拡競争をペースダウンし反転させるよう政治指導者に圧力をかけることに成功してきた。

核兵器に反対する大衆運動が展開された結果、核実験を禁止し、核兵器と核製造のノウハウの拡散を防ぎ、核戦力を制限し検証可能な形で廃棄するための多数の二国間・多国間協定が締結されてきた。そして今年初め、核兵器禁止条約が発効し、核兵器に対する禁止規範をさらに強化する軍縮の法的枠組みにおける新たなツールが生まれたのである。

しかしこうした成果も、何十年にもわたって、核兵器の危険性に光を当て、核兵器廃絶の是非やその方法など、核兵器を巡る激しい公論を取材・配信してきたジャーナリストや編集者たちの働きなしには、現実することはなかっただろう。

例えば、ジョン・ハーシー氏が1946年8月31日発行の『ザ・ニューヨーカー』誌に発表したパイオニア的な現地からのレポートがある。これによって、米占領当局が世界から隠そうとした爆風・熱線・放射線障害といった、核兵器が太陽のように明るい「無音の閃光」を放った後も、長いこと死をもたらし続けるという事実が世界に知られることとなった。

Hiroshima Book by John Hersey, 1st edition/ Wikimedia Commons

残念なことに、冷戦が始まって間もない当時、米国や欧州の多くの主要メディアが核兵器の危険性を軽視していた。そのため、核兵器を巡る秘密のベールをはがすことはできず、政府の公式見解に対する疑問が呈されることはほとんどなかった。

ましてや、メディアが本質的に政府の一部門を構成していたソ連では、核兵器の生産や実験が人間や環境に及ぼす壊滅的な影響について知ることや、危険な核政策に異議申し立てをすることは、普通の市民にとってはなおさら困難であった。

しかし、懸念をもつ核科学者や公衆衛生専門家らの働きによって、一部の専門誌や雑誌が公的議論の狭間を埋めた。例えば、1962年、『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』誌は、ソ連の核攻撃が米国の都市にもたらす影響と、医療体制や緊急対応の仕組みがいかに壊滅的な被害を被るかについて論じた医師らによる画期的な一連の論文を掲載した。キューバミサイル危機に先立つこと数カ月、これらの記事は、核戦争において当事者の一方が「勝利を収める」という神話を打ち砕いた。

また別の事例を挙げると、穏健ながら重要な新聞報道が、軍縮を求める大規模な行動を刺激する出来事を生み出した。1979年2月、米フロリダ州の『セントピーターズバーグ・タイムズ』紙が、「軍備管理協会」のウィリアム・キンケード代表とフリージャーナリストのナン・ランダール氏の監修を得て、ソ連の核爆弾が都市上空で爆発したらという仮定の下で4日間にわたる記事を掲載した。

ランダール氏の解説が、米連邦政府の科学関連諮問機関である「技術評価室」(OTA)の関心を引き、彼女は結果としてOTAのために『核兵器の効果』という連載記事と類似した内容の報告書を同年執筆することになる。この報告書は次にABCテレビの制作陣に刺激を与えて、核紛争の帰結に関するドキュメンタリー風ドラマ「ザ・デイ・アフター」を生み出すことになる。

1983年11月20日に放送された「ザ・デイ・アフター」は実に約1億人の視聴者を獲得した。テレビ映画としては史上最大の視聴者数であった。この映画は米国で「核凍結」運動を生み出し、(ロナルド・レーガン大統領を含む)政府の政策決定者の注目を引き、核の危険を低減する行動を引き起こした。

そして現在も、依然としてマスメディアが、核兵器の危険と、核の脅威を取り除く試みに関する主要な公的情報源である。事実を虚構と切り分けることが難しく、政府によるゆがんだ情報提供が新たな形を取りつつある今日の超情報社会においては、世界で最も危険なこの兵器に関連した最新状況と理念に特に焦点を当てた独立の報道ネットワークの重要性が増しつつある。

1983年以来、インデプスニュースと、その寄稿者・特派員のネットワークは、核兵器の脅威に関心を持つ世界中の人々に対して、計り知れないほど重要な情報を提供してきた。今日、核兵器の脅威を廃絶するための長きにわたる闘いは、核軍拡競争が激しさを増し核戦争の危険が大きくなる中で、新たな緊急性を帯びるようになってきている。

核時代のこの新たな危険な局面において、核の大惨事に対する防護壁を強化し「核兵器なき世界」に向けた前進をもたらす効果的な解決策や理念、行動に関してインデプスニュースが提供する報道は、これまで以上にその重要性を増している。(原文へ

※著者は、軍備管理協会会長の代表。この記事は、国連SDGメディアコンパクトの正式加盟通信社IDN-InDepthNewsを主幹メディアに持つInternational Press SyndicateがSoka Gakkai Internationalと推進しているメディアプロジェクト「Toward a Nuclear Free World」の最新レポートの序文として寄稿されたものである。

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