ニュース国連平和維持活動の犠牲者が続出

国連平和維持活動の犠牲者が続出

【国連IDN=タリフ・ディーン

国連の平和維持要員は、国連で最も危険な仕事の1つとされ、進行中の軍事紛争や紛争後の地域で日常的に命を危険に晒してしている。

国連職員組合が20日に発表した数字によると、2022年には少なくとも32人の国連平和維持要員(女性警察官1人を含む軍人28人、警察官4人)が「意図的な攻撃」で死亡している。

その内訳は9年連続で「国連マリ多次元統合安定化ミッション(MINUSMA)」が14人と最も多く、次いで「国連コンゴ民主共和国安定化ミッション(MONUSCO)」で13人、「国連中央アフリカ共和国多次元統合安定化ミッション(MINUSCA)」で4人、「国連レバノン暫定軍(UNIFIL)」で1人が殉職している。

2022年に死亡した平和維持要員の国籍別内訳は、バングラデシュ(3人)、チャド(4人)、エジプト(7人)、ギニア(1人)、インド(2人)、アイルランド(1人)、ヨルダン(1人)、モロッコ(1人)、ネパール(1人)、ナイジェリア(2人)、パキスタン(7人)、ロシア連邦(1人)とセルビア(1人)である。

Image credit: United Nations
Image credit: United Nations

職員組合によれば、過去12年間に手製爆弾、ロケット推進擲弾筒、砲撃、迫撃砲弾、地雷、武装・連続待ち伏せ、車列攻撃、自爆攻撃、標的暗殺などの意図的攻撃で死亡した国連および関連職員は少なくとも494人となる。

UN Soldiers in Eritrea” by Dawit Rezene Licensed under CC BY-SA 1.0 via Wikimedia Commons
UN Soldiers in Eritrea” by Dawit Rezene Licensed under CC BY-SA 1.0 via Wikimedia Commons

その以前の殉職者数は以下の通り:2021年(25人)、2020年(15人)、2019年(28人)、2018年(34人)、2017年(71人)、2016年(32人)、2015年(51人)、2014年(61人)、2013年(58人)、2012年(37人)、2011年(35人)、2010年(15人)

「平和維持要員と、彼らと肩を並べて活動する文民要員は、世界で最も厳しい環境において、国連の活動の最前線にいます。2022年に命を奪われた32人の同僚を偲び、その死を悼みます。」と、国連職員組合会長のアイター・アラウズ氏は語った。

アラウズ氏はまた、「国連職員に対する悪意ある攻撃の一つ一つが、多国間協力体制の柱の一つである平和維持活動に打撃を与えています。国際法の下で戦争犯罪を構成しかねないこうした凶悪行為に対する説明責任を確保するための適切なメカニズムを整備することは、国際社会の連帯責任です。従って、2022年に平和維持要員に対する犯罪の責任を追及する有志国グループが発足したことに勇気づけられました。この問題に対する加盟国の強いコミットメントが、現場での具体的な成果につながることを期待しています。」と語った。

2021年7月1日から2022年6月30日の会計年度に承認された国連平和維持活動予算は63億8000万ドルだった。

この金額は、国連・アフリカ連合ダルフールハイブリッド作戦(UNAMID)の清算予算を含む12の国連平和維持ミッションのうち10のミッションに資金を提供し、アフリカ連合ソマリアミッション(AMISOM)の後方支援を行い、ブリンディジ(イタリア)のグローバルサービスセンターとエンテベ(ウガンダ)の地域サービスセンターを通じてすべての平和活動への支援、技術、後方支援を提供するものである。

残りの2 つの平和維持ミッション、国連休戦監視機構(UNTSO )と国連インド・パキスタン軍事監視団(UNMOGIP)は、国連通常予算で賄われている。

国連によると、平和維持要員は、世界で最も脆弱な政治・安全保障状況の中で、何十万人もの弱い立場の人々を守るために働いている。

平和維持ミッションの文民・制服組は、停戦の支援、暴力の防止と対応、人権侵害と虐待の調査、多くの紛争被害国における平和、復興、開発の構築に貢献している。

「彼らの存在によって人々の命が救われ、人生が変わったことは間違いありません。」

5月29日の「国際連合平和維持隊員の日」は、「1948年以来、国連旗の下で活動してきた100万人以上の隊員の奉仕と犠牲を悼む機会である。また、平和のために命を落とした4000人以上の平和維持要員の貢献を讃える機会でもある。」と国連は述べている。

最初の2つの国連平和維持活動の創設は、1948年に遡る。国連休戦監視機構(UNTSO)と国連インド・パキスタン軍事監視団(UNMOGIP)である。

1970年代に中東の平和維持活動に従事した元国連職員は、IDNの取材に対して、いくつかの手当とともに「地域調整給」を受け取ることができたと語った。

基本給に加え、任地での生活費と米ドルの為替レートに応じて変動する「地域調整給」が支給された。

さらに、平和維持要員は以下のすべて、あるい は一部を受け取っている。

  • 新任地で家賃が報酬全体に占める割合が高い場合の家賃補助
  • 扶養義務のある配偶者や子供が任地にいる場合、扶養手当が支給される。
  • 一定の条件の下で、学校に通う子供がいる場合、教育補助金が支給される。
  • ある任務地から別の任務地へ移動する際の旅費と船賃。
  • 新しい任務地に到着または移転する際の初期臨時経費を援助するための赴任手当。

一部の勤務地では、生活・労働条件に関連したハードシップ手当が支給される。家族の帯同が制限されている場合、単身赴任ハードシップ手当も支給される。

「危険手当」、休養、療養休暇は、特に危険でストレスが多く、困難な状況下にある場所で勤務する場合に支給される。

国連によると、危険手当は、戦争や活発な敵対行為など非常に危険な状況が支配的で、家族や職員の避難が行われた勤務地に留まり出勤するよう要請された職員に与えられる報酬の一形態である。

国際公務員委員会(ICSC)委員長は、安全保障局事務次長の勧告に基づき、勤務地への危険手当の適用を認可する責任を負う。

この認可は通常、一度に3ヶ月までの期間であり、継続的な見直しが行われる。危険手当の適用は、危険な状況が緩和されたと判断された場合に解除される。

一方、1月22日正午の記者会見で、国連のステファンドゥジャリク報道官は、1月23日が国連平和維持の75周年にあたると指摘した。

「平和維持部門の同僚達は、この機会に『平和は私から始まる』をテーマにしたキャンペーンを立ち上げています。」

U.N. spokesperson Stephane Dujarric/ UN Photo
U.N. spokesperson Stephane Dujarric/ UN Photo

「このキャンペーンは、紛争下のコミュニティが直面する課題への理解を促進し、平和維持活動の価値と影響を実証し、平和のための世界的な運動の結集を呼びかけるものです。」

「1948年以来、125カ国の平和維持要員が世界71カ所の作戦に従事し、過去75年間で4100人以上の平和維持要員が国連の旗の下に命を捧げました。」

「このキャンペーンは、私たちが彼らの犠牲を思い起こし、彼らの犠牲を追悼する機会を提供するものです。」とデュジャリック報道官は語った。

国連職員組合国際公務員の安全と独立に関する常任委員会が作成した2022年の意図的な攻撃に関する詳細なリストは、担当のヴィクラム・スラ氏より入手可能である。(原文へ

INPS Japan

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