SDGsGoal6(安全な水とトイレを世界中に)ヒマラヤ山脈の氷河、融解速まる

ヒマラヤ山脈の氷河、融解速まる

【カトマンズNepali Times】

科学者らが、ヒマラヤ山脈の氷河の喪失を憂慮する報告書を発表した4年前より、この問題ははるかに深刻であると警告する新たな報告書を発表した。

この新しい研究は、ヒマラヤ山脈の雪、氷、永久凍土について、これまでで最も正確な評価を行ったものである。これによると、 ヒマラヤ山脈の氷河は、今世紀末までにその氷塊の80%を失う可能性があるとしている。また、ヒマラヤ山脈だけでなく、世界最高峰の山々から流れる水に依存する下流の国々(アフガニスタン、バングラデシュ、ブータン、中国、インド、ミャンマー、ネパール、パキスタン)に住む20億人近い人々にも深刻な影響を及ぼす可能性があるとしている。

Water, ice, society, and ecosystems in the Hindu Kush Himalaya /Credit: ICIMOD
Water, ice, society, and ecosystems in the Hindu Kush Himalaya /Credit: ICIMOD

インドや中国などヒマラヤ山脈周辺国8か国が参加する政府間組織「国際山岳総合開発センター(ICIMOD)(事務局:カトマンズ)」は、2019年に報告書「ヒンドゥークシュ・ヒマラヤ・アセスメント」を発表していた。しかし今回発表された新報告書によると、「2011~20年の10年で、その前の10年よりも65%速く氷河が融解しており、このままでは、今後数十年で融解が加速するだろう。」と予測している。

新報告書『ヒンドゥークシュ山脈とヒマラヤ山脈の水、氷、社会、生態系(HI-WISE)』は、山々の雪、氷、永久凍土の融解が、ヒマラヤ流域の水、生態系、社会にどのような影響を及ぼすかについて、最近の科学的進歩をもとに描き出したものである。

報告書では、今世紀半ばまでに「水のピーク」が訪れ、その後は灌漑、家庭用水、工業用水、水力発電に利用できるヒマラヤ山脈を源流とする河川(揚子江、メコン川、インダス川、ガンジス川)の水がますます少なくなると予測している。同時に、気候変動による異常気象は、この地質学的にも生態学的にも脆弱な山岳地帯において、地滑りや洪水のリスクを増大させるとしている。

The south face of Saipal Himal in western Nepal, showing shrinking ice over the past 15 years. Image via Nepali Times. Used with permission.
The south face of Saipal Himal in western Nepal, showing shrinking ice over the past 15 years. Image via Nepali Times. Used with permission. (ネパール西部にあるサイパル・ヒマールの南面。過去15年間で氷河が縮小しているのがわかる。)

気候変動と開発のための国際センター(バングラデシュ)のサリーム・ウル・フック氏は、「この報告書は、ヒンドゥークシュ・ヒマラヤ地域が気候変動の影響に対して特に脆弱であることを示している。この地域と人々を守るために、私たちは今すぐ行動を起こさなければなりません。」と語った。

報告書によると、氷河の融解が脆弱な山岳地帯の生息地に与える影響は特に深刻で、生態系や生物多様性に連鎖的な影響を及ぼすという。

ヒンドゥークシュ・ヒマラヤ地域の生態域(エコリージョン)の67%と、この地域の4つの世界的生物多様性ホットスポットの39%が保護地域外であるため、この地域の非常に豊かな生物多様性は気候の影響に対して特に脆弱である。」と報告書は警告している。

ヒマラヤ山脈の氷河は、山岳地域の住民約2億4000万人に加え、河川流域16カ国の約16億5000万人にとって重要な水源となっており、氷河の融解により水不足の影響を受けるだろう。ヒマラヤ地域の農民はすでに、異常気象による作物の損失、飼料不足、家畜の死に直面している。

Nepali Times

12カ国の35人の科学者によって作成されたこの報告書は、「災害はより複雑で壊滅的なものになっている。」と指摘している。

報告書は、この流域の人々(=世界人口の約4分の1)に影響を及ぼしている気候変動がもたらす連鎖的な影響に備えるよう、政策立案者に求めている。また、避けられない近い将来の損失と被害に対して緊急の国際的な支援と地域間の協力を求め、地域社会が適応するのを支援するよう呼びかけている。(原文へ

INPS Japan/Nepali Times

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