竹とノパル(ウチワサボテン)の繊維が、工業デザインやファッションなどの分野で、研究者や起業家にとっての持続可能な代替素材になりつつある。
【メキシコシティーINPS Japan=ギエルモ・アヤラ・アラニス】
「千の用途を持つ植物」とも呼ばれる竹は、食から建築まで幅広い用途を持つ。その多用途性は、世界各地の大学で研究者の関心を集めている。|英語版|スペイン語|

「無人島に取り残され、手元に竹しかなくても、私は幸せだろう」──こう語るのは、メトロポリタン自治大学(UAM)ソチミルコ校舎(UAM-X)で15年以上にわたり竹を研究してきた、デザイン分野の博士(科学・芸術)ホセ・ルイス・グティエレス・センティエス氏である。
「竹はきわめて多用途な植物だ。限界を決めるのは、私たちの想像力だけである」
センティエス氏は竹の活用を、持続可能な開発目標(SDGs)の目標4(質の高い教育)や目標12(つくる責任 つかう責任)などに結び付けて位置付けている。UAM-Xで行われる学際的研究やワークショップを通じ、学生がこの古くからある植物を日用品へと作り変える力を養うことを促している。

「学生は竹を知り、身近な素材として認識し、活用に適した特徴や性質があることを学ぶ必要があります。環境負荷が低いという点も含めてです」と同氏は強調する。「環境の問題は、すでに私たち全員が避けて通れない横断的テーマになっているのです」
講座に参加するのは工業デザインの学生だけではない。他分野の学生も加わり、学際的なつながりを生む場となっている。これまでに、自転車やテーブル、台所用品など実に多様な製品が生み出されてきた。こうした体験は技術力を高めるだけでなく、素材に対する視野を広げ、革新的な可能性を実践の中で具体化していく。

竹はしばしば東アジア文化の象徴として語られるが、植物分類学上はオーツ麦やトウモロコシ、小麦、芝草などと同じイネ科に属する。数センチ程度のものから、約40メートル―12階建ての建物に相当する高さに達する種まで存在し、足場や住宅の建材としても利用されている。
木材の代替となり得る竹の活用は、無秩序な森林伐採の抑制にもつながり、目標15(陸の豊かさも守ろう)の達成にも資する可能性を持つ。
「製品を作るために、これほど多くの樹木を切り倒す必要がなくなる。土壌侵食や森林破壊といった問題を避けられる」とグティエレス氏は語る。「樹木は生態系の一部であり、木を失えば、多様な植物や動物が暮らす生息環境全体を壊してしまいかねない」。

竹の種は世界に約1200ある。アメリカ大陸では米国からチリまで分布し、メキシコには木質の竹が36種、草本の竹が4種存在する。主にコリマ、オアハカ、チアパス、プエブラ、ベラクルスなどの熱帯気候の州に分布し、建設産業向けに竹製品を提供する企業が拠点を置く地域もある。
メキシコでは伝統的に、竹は自生する農村地域で広く利用されてきた。住居の建設をはじめ、工芸品やかご編み、家具、生活用具などに活用されてきたのである。
メキシコ政府によれば、竹―「グリーン・スチール」とも呼ばれる―を用いた低コスト住宅の建設費は、従来の建材を用いた住宅に比べ、最大40%削減できる可能性があるという。

また、自然との調和を重視するホテル開発においても、竹の活用が広がっている。
代替素材への関心は竹にとどまらない。ノパル(ウチワサボテン)など他の植物も、研究者とメキシコ産業界の双方から注目を集めている。
たとえばグアダラハラでは、ある企業がノパル繊維に再生PETと綿を組み合わせ、Tシャツやスウェットシャツを製造している。こうした試みは、目標9(産業と技術革新の基盤をつくろう)にも合致する。

Source: MAYORK.
Mayokの営業・マーケティング責任者アルバロ・ルイス・スニガ氏によれば、この計画は環境負荷の低減に貢献したいという思いから4年前に始まり、2年前に製品化した。現在、Tシャツとスウェットシャツは順調に販売されているという。
「私たちは地球に暮らしている。地球に優しくあるべきだ」と同氏は語る。「メーカーにも消費者にも追加コストはかかる。だが最終的には双方に利益をもたらす。こうした特性を持つ製品は、今後少しずつ増えていくだろう。」
メキシコでは、再生素材を用いた衣料品は従来品より25~30%高いことが多い。だが同社は、その価格差は地球環境に資する投資として正当化されると考えている。Mayokは現在、グアダラハラやシナロア、プエルトバジャルタ、メリダに店舗を構え、国内の広い範囲に供給できる配送センターも備えている。

Source: MAYORK.
ルイス・スニガ氏は、さまざまなデザインや色での仕上がりや耐久性を検証するため、品質試験を重ねたと説明する。着心地を高めるため、生地の質感も調整した。
その取り組みが評価され、メキシコが2026年6月に開催する国際スポーツイベント向けに、スウェットシャツの大口注文を受けることにつながったという。
「私たちは自社製品に自信があります。たとえば大量のスウェットシャツ注文があったが、ワールドカップ向けだと聞いています。デザインを気に入る顧客は出てくるはずです。」と同氏は語った。
国連は、繊維産業が世界の排水の約20%を占め、温室効果ガス排出量の約10%を生み出していると警告している。こうした文脈で、天然繊維や再生PETの活用は、水質汚染の抑制と環境負荷の低減に資する。

メキシコでは、繊維産業が年間に巨額の経済活動を生み出す一方で、大量の廃棄物も排出している。ノパルのような天然繊維や再生PET由来の繊維の利用拡大は、目標12(つくる責任 つかう責任)の理念を社会に根付かせることにもつながる。
大学のワークショップであれ、再生素材に取り組む企業であれ、より持続可能な暮らしへの転換は、個々人の気づきから始まる。
竹とノパルが示しているのは、限界を決めるのは素材ではなく、私たちの想像力だということである。(原文へ)
This artice is brought to you by INPS Japan in collaboration with Soka Gakkai International, in consultative status with the UN’s Economic and Social Council (ECOSOC).

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