【メルボルンLondon Post=マジド・カーン】
2023年10月に始まったガザ戦争は、2024年10月から2025年9月まで続き、壊滅的な人道的結果、地域の不安定化、そして国際外交の大きな変化をもたらした。2025年8月末までに、国連の状況報告はガザ保健省の発表を引用し、パレスチナ人死者数は6万2千人を超え、負傷者は約15万9千人に達したと伝えた。9月に入ってもガザ市での激しい市街戦が再開され、死者はさらに増加した。
9月前半だけで数百人が死亡し、数千人が負傷した。世界保健機関(WHO)はガザ県で飢饉状態を公式に確認し、9月5日までに記録された栄養失調関連の死者は361人、そのうち子どもが130人を占めた。
人道危機の深刻化
人道危機は前例のない水準に達した。主要な支援ルートが封鎖・制限され、9月12日にはズィキム検問所が閉鎖され、ガザ北部への食料搬入が完全に停止した。7月以降、必要最低限とされる1日2千トンの食料の35%未満しか搬入されていない。
ケレム・シャロームや西エレズの検問所は断続的に稼働したが、支援は限定的で、ラファ検問所は支配権争いや治安問題からほとんど閉鎖されたままだった。その結果、食料・水・医薬品が極端に不足し、ガザ住民の困窮は深まった。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、9月中旬にガザ市で1万1千人以上の避難民を収容する複数のシェルターが被害を受け、安全な避難場所を失ったと報告した。
インフラの破壊と大規模な避難は状況を一層悪化させた。軍事攻撃が激化する中、支援物資輸送隊は配布地点付近での攻撃や、食料を求める市民の死傷といった重大なリスクに直面した。5月末以降、支援物資配給所周辺での衝突が救援活動をさらに複雑化させ、燃料不足は病院や上下水道の機能を麻痺させ、感染症拡大の危険性を高めている。
西岸情勢
ガザ以外でも、西岸地区では暴力が激化した。国連人道問題調整事務所(OCHA)は、死者の増加、入植者関連の暴力、移動制限の強化(東エルサレムを含む)を報告し、地域全体が一触即発の状況にあると警告した。
外交と承認の変化(2024年10月以降)
政治的側面では、過去1年でパレスチナ国家承認をめぐる国際情勢が大きく変化した。2024年5~6月、スペイン、アイルランド、ノルウェーが承認を発表し、続いてスロベニア、アルメニア、メキシコが加わった。2025年前半から中盤にかけては、ジャマイカ、バルバドス、トリニダード・トバゴ、バハマなどカリブ諸国が承認に踏み切った。4月までに140を超える国連加盟国がパレスチナを承認し、外交的な流れは加速した。
決定的な転換点は2025年9月に訪れた。英国、カナダ、オーストラリア、ポルトガルが国連総会を前に一斉にパレスチナ承認を発表したのだ。米国の同盟国が長年の方針を転換したことは、国際的アプローチに深い変化を示した。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は即座に反発し、「ヨルダン川以西にパレスチナ国家は存在しない」と述べ、これらの承認を「テロリズムへの褒美」と非難した。
国際社会の反応

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、9月16日に開幕した第80回国連総会で、即時停戦、人道支援の無制限なアクセス、国際法の厳格な順守を求めた。
英国のキア・スターマー首相は承認発表に際し、「二国家解決の可能性をつなぎとめるために必要」と強調し、ハマスへの報償ではないと釘を刺した。カナダのマーク・カーニー首相も「和平と安定維持の一歩」と位置づけた。オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は、人道的惨状、とりわけ支援活動従事者の殺害を指摘し、ハマスを排除した統治枠組みの必要性を訴えた。これに対し、ネタニヤフ首相は断固として拒否し、承認はイスラエルの安全と主権を損なうと主張した。
こうして外交の力学は大きく変わり、パレスチナ承認はグローバル・サウスや欧州周縁から西側主要国の中枢へと拡大した。
戦場と人道の現実
2025年9月時点で、ガザは爆撃、避難、飢饉の三重苦に直面していた。人道状況は、国際援助の量だけでなく、国境検問所の開放状況に左右された。北部のアクセス回復と持続的・安全な人道回廊が確立されない限り、飢饉による死者は急増すると予測されている。
主要国による承認は国際外交に新たな活力を与えたが、民間人保護の強制力ある仕組み、捕虜や人質交換の有効な枠組み、明確な政治的スケジュールと結びつかなければ、戦闘と人道的惨禍は続く恐れが強い。

2025年8月末時点で、パレスチナ人の死者は約6万2900人、負傷者は15万9千人に達した。9月5日までに記録された栄養失調死は361人(うち子ども130人)。7月以降、必要量の35%未満の食料しか搬入されず、9月12日以降はガザ北部に食料は届いていない。
パレスチナを承認する国連加盟国は140を超え、直近では英国、カナダ、オーストラリア、ポルトガルが加わり、歴史的転換を示した。しかし現地では、支援制限、支援隊列への攻撃、インフラ破壊により、人道支援団体は圧倒的な困難に直面している。
2024年10月から2025年9月までの1年間は、イスラエル・パレスチナ紛争の歴史の中で最も壊滅的な章の一つである。国際舞台ではパレスチナ承認が大きく前進したが、現場の状況は悪化の一途をたどり、市民が政治的行き詰まりと絶え間ない軍事作戦の犠牲となり続けている。包括的停戦と信頼できる和平枠組みがなければ、ガザと地域全体は今後も不安定さ、人道的破局、そして深まる不信に直面し続けるであろう。(原文へ)
INPS Japan
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