【メルボルンLondon Post=マジット・カーン】
最も狭い地点でも、ホルムズ海峡の幅は英仏海峡をわずかに上回るにすぎない。北にはイランの岩がちな海岸線、南にはオマーンの乾いた海岸が延びる。有史以来の大半の時代、この海峡は単なる通過点にすぎなかった。船舶が別の目的地へ向かう途中で通り過ぎる場所だったのである。だが今日、ここは地球上で最も重要な水路となり、その封鎖は、アナリストらがすでに「1970年代の石油危機以来最大の世界的エネルギー供給混乱」と呼ぶ事態を引き起こしている。
ホルムズ海峡の封鎖は、1970年代以来で最大の原油供給ショックを招き、WTI原油価格は1バレル=100ドルを突破、ブレント原油も112ドルに達した。2026年2月下旬に米国がイランに対する軍事作戦を開始して以降、その影響は驚くべき速さで広がり、湾岸からマニラのガソリンスタンドへ、カタールのLNGターミナルからブリュッセルの企業経営陣にまで及んでいる。
海峡には一方通行の2つの航路が設けられており、1日あたり約2000万バレルの石油が通過する。これは、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、イラク、カタールなどから輸送される、世界の海上石油取引量のおよそ20%に当たる。世界の1日の石油供給の5分の1が、超大型タンカー2列がようやく通れるほどの狭い水路を流れている。この事実は、長年にわたり戦略家たちを不安にさせてきた。かつては理論上の脆弱性にとどまっていたものが、いまや現実の危機となっている。
今回の危機は、何の前触れもなく訪れたわけではない。ワシントン、テルアビブ、テヘランの緊張は長年にわたって高まり続け、2025年6月には12日間に及ぶ空爆の応酬も起きた。ジュネーブでの新たな核交渉が決裂すると、全面戦争への流れを食い止めることは難しくなった。
2026年2月28日、米国はイランを攻撃した。テヘランの対応は即座に示された。3月2日、イスラム革命防衛隊(IRGC)の司令官は国営メディアを通じてホルムズ海峡の封鎖を表明し、通航を試みるあらゆる船舶を攻撃すると警告した。
この宣言は、海運各社の一斉撤退を招いた。マースク、CMA CGM、ハパックロイドなどの大手コンテナ海運会社は、ホルムズ海峡および関連航路の通航停止を決めた。同時に、フーシ派が支配するイエメンは、イスラエルおよび紅海を航行する商船への攻撃再開を表明し、スエズ運河を通る船舶はアフリカ南端の喜望峰経由への迂回を余儀なくされた。その結果、輸送日数は数週間延び、海運コストも上昇している。
3月中旬以降、イランは商船に対して少なくとも21件の攻撃を行ったことが確認されており、タンカーの通航量は当初約70%減少し、最終的にはほぼゼロに近づいた。150隻を超える船舶が湾内の沖合で停泊したまま、乗組員は待機を続け、積み荷は行き場を失っている。3月27日には、IRGCがさらに事態をエスカレートさせ、米国、イスラエル、およびその同盟国の港に「向かう、またはそこから出る」すべての船舶に対し、海峡を閉鎖すると発表した。
その後の価格上昇の速さは驚異的だった。ブレント原油価格は2026年3月8日、4年ぶりに1バレル=100ドルを突破し、ピーク時には126ドルまで上昇した。その上昇ペースは、近年のどの紛争時をも上回った。米政府当局者やウォール街のアナリストたちは、原油価格が前例のない1バレル=200ドルに達する可能性まで検討し始めている。ゴールドマン・サックスは4月のWTI価格を105ドルと予測しており、オプション市場でも、数カ月前なら現実味がないと見られていたシナリオが織り込まれつつある。
しかし、この危機は単なる石油危機ではない。現代世界がこれまで経験したことのない規模の、より広範な商品市場の混乱である。ホルムズ海峡は事実上閉鎖されたままであり、石油やガスだけでなく、アルミニウム、肥料、硫黄、ナフサなどの世界供給にも影響を及ぼしている。
湾岸地域は世界の尿素のほぼ半分、アンモニアの30%を生産しており、世界の肥料輸送の約3分の1がホルムズ海峡を通過している。尿素価格は戦争開始以降50%上昇した。LNG供給の混乱は肥料生産にも打撃を与え、北半球の春の作付け期を脅かすとともに、2026年後半にかけて世界の食料価格を押し上げる可能性がある。
経済モデルが示す影響も深刻だ。2026年第2四半期にホルムズ海峡の閉鎖によって世界の石油供給の約20%が市場から失われた場合、WTI原油の平均価格は1バレル=98ドルまで上昇し、世界の実質GDP成長率は、その四半期だけで年率換算2.9ポイント押し下げられると見込まれている。封鎖が第3四半期まで続けば、影響はさらに深刻化する。
この危機の影響が最も深刻に表れているのはアジアである。2024年には、ホルムズ海峡を通過した原油・コンデンセート輸送量の推計84%がアジア市場向けだった。中国も、自国の石油の3分の1をこの海峡経由で受け取っていた。その依存の代償が、いまアジア全域で現実のものとなっている。
影響は世界中に及んでいるが、とりわけ中東産石油への依存度が極めて高いアジアでは、この戦争が深刻なエネルギー不安を招いている。各国政府は対応に追われているものの、短期的な打開策をほとんど持ち合わせていない。バングラデシュでは、新たに発足した政権が大学を閉鎖し、石油備蓄施設の管理を軍に委ねた。インドでは、燃料価格をめぐる全国的な抗議行動が再燃し始めている。
フィリピンでは、ディーゼル価格がほぼ倍増した。紛争前は1リットルあたり52~53フィリピン・ペソ程度だったが、一部地域ではほぼ100ペソにまで跳ね上がり、物流網と公共交通部門に深刻な打撃を与えている。
台湾は、とりわけ深刻な脆弱性に直面している。世界的な半導体生産拠点である台湾は、ガス供給があと11日分しかないと報告した。世界のテクノロジー供給網を支える半導体工場を抱えるこの島にとって、これは単なるエネルギー危機ではない。現代世界のデジタル基盤そのものを揺るがす脅威である。
LNGへの影響はとりわけ深刻だ。石油には限られてはいるがパイプラインによる代替ルートがある一方、カタールのLNG輸出の約93%、UAEのLNG輸出の96%はホルムズ海峡を通過しており、これは世界のLNG取引量の19%を占める。世界のLNG供給は1日あたり3億立方メートル以上減少する見通しで、これは2021年にノルド・ストリームを通じて輸送された平均ガス量の2倍に相当する。
サウジアラビアとUAEはいずれもホルムズ海峡を迂回するパイプライン網を保有しているが、両国を合わせた迂回能力は日量350万~550万バレルにとどまる。一定の代替にはなるものの、ホルムズ海峡全体の輸送量を埋め合わせるには到底足りない。サウジ当局は原油輸出の一部を紅海沿岸のヤンブー港経由に切り替え、OPECプラスも追加増産を約束したが、規模からみて十分な解決策とは言えない。
イランは独自の代替航路も設けた。ララク島南側の主航路ではなく、同島北側に新たな輸送ルートを設定したのである。ある船舶はこのイラン航路の通航に200万ドルを支払ったと報じられ、その料金は中国元で革命防衛隊に支払われたという。これは異例の展開である。かつて世界が国際公共財の一部とみなしていた水路に、事実上、通行料を強制徴収する新ルートが出現したことになる。
各国は戦略石油備蓄の放出に踏み切り、サウジアラビアとUAEは海峡を迂回するパイプライン経由での原油輸送拡大を急いでいる。米国を含む各国政府も、価格抑制のため、過去最大規模の備蓄原油放出を打ち出した。だが、備蓄は本質的に有限である。石油業界幹部やアナリストたちは、4月中旬までにホルムズ海峡が再開されなければ、供給混乱はさらに深刻化すると警告している。

湾内に足止めされている一隻一隻のタンカーの背後には、極めて複雑な地政学的計算がある。イランは衝動的にホルムズ海峡を封鎖したのではない。イラン指導部が長年、自らの「切り札」と位置づけてきた手段――すなわち、ワシントンやテルアビブに1発のミサイルも撃ち込むことなく、世界のエネルギー市場を麻痺させる能力――を行使しているのである。
ホルムズ海峡の封鎖が過去の石油供給混乱と異なるのは、その影響範囲の広さにある。湾岸地域からの石油輸出が完全に止まれば、世界の石油供給のおよそ20%が市場から消えることになり、その約80%はアジア向けである。
一方、ロシアは思いがけず有利な立場に立っている。この紛争は、原油市場におけるロシアの競争力を実質的に高めている。中東産原油が物流面で混乱に直面するなか、インドと中国はいずれも、ロシア産原油への依存を深める強い誘因を持つことになった。
3月29日には、パキスタンがエジプト、サウジアラビア、トルコとの外交会合を開き、海峡の再開について協議した。これは、この戦争を始めた当事国ではない国々までもが、その経済的打撃の拡大を抑えようと動いていることを示すものだ。米軍は3月19日に海峡再開に向けた作戦を開始したが、3月30日時点でも通航の混乱はなお深刻なままである。
30人を超える石油・ガストレーダー、企業幹部、ブローカー、海運関係者、顧問らとの対話で、繰り返し聞かれたのは、ひとつの認識だった。すなわち、世界はいまだこの事態の深刻さを十分に理解していない、ということである。多くが1970年代の石油危機との類似を指摘し、ホルムズ海峡の封鎖が長引けば、さらに大きな危機を招くと警告した。
ホルムズ海峡は、単なる航路以上の意味を持つ存在であり続けてきた。それは、集中と依存、そして途切れることのない輸送を前提に築かれてきた世界のエネルギー体制を象徴する場所である。その体制はいま、自然災害ではなく、人間の意図的な選択によって壊れつつある。いま世界に問われているのは、単にこの水路をどう再開するかではない。わずか21マイルの係争水域に世界経済の命運を委ねるような仕組みから、何かを学んできたのかどうかである。
イランが海峡で海運を脅かす意思と能力を保ち続ける日々は、世界をより深刻な経済的損害へと近づけていく。時間は刻々と過ぎている。マニラのガソリンスタンドの行列、カシミールの空になったガスボンベ、シカゴの商品先物市場の画面――世界はいま、依存の代償が現実のものとなっていく光景を見つめている。(原文へ)
INPS Japan
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