【エルサレムINPS Japan=ロマン・ヤヌシェフスキー】
イランとイスラエルの「影の戦争」は数十年にわたり続いており、徐々に勢いを増している。イスラム共和国の高官たちは、イスラエルを破壊する意図を何度も表明してきている。この目的のために、イランはレバノン、シリア、イラク、イエメンなどの地域で軍事組織を設立し、資金提供を続けている。
イランは、イスラエルに対する包括的な攻撃計画を綿密に策定し、それがユダヤ国家にとって致命的となる可能性がある。しかし、この計画は10月7日にハマスによって阻止されたかもしれない。ハマスは事前に同盟国に知らせずに計画の一部を加速させて実行した。本来、この計画はすべての組織が協調して行動することを想定しており、単独での行動は想定されていなかった。
地域で最も強力な親イラン派組織であるレバノンのヒズボラは、ハマスを言葉で支持しつつも、戦争に加わったのは翌日の10月8日であり、その行動は比較的抑制されていた。その結果、イスラエルは約10か月間、ハマスの拠点であるガザ地区に対する軍事作戦を展開し、ヒズボラはイスラエル北部に対してロケット弾やドローンを使った攻撃を徐々に増やしている。そのため、レバノン南部だけでなく、国境地帯からも住民が避難している。
昨年秋以降の親イラン派との対立の中で、イスラエルはダマスカスのイラン領事館を攻撃し、イスラム革命防衛隊(IRGC)クッズ部隊の上級司令官であるモハマド・レザ・ザヘディ准将らIRGC幹部7人を殺害した。
これに対して4月13日、イランは1979年以来初めて、数百発の無人機とロケット弾を使ってイスラエルを直接攻撃した。そのほとんどは迎撃されたが、イスラエルはその報復としてイスファハン近郊のイランの核施設を守るレーダーを標的とした反撃を加えた。
その後、双方は核兵器をめぐる脅迫を交わした。4月18日、核安全保障を担当するIRGCのアフマド・ハグタラブ上級司令官は、「イランの核施設に対するシオニスト政権の威嚇は、われわれの核ドクトリンの再考とこれまでの考慮事項の放棄につながる可能性がある。」と述べ、イスラエルの核施設に強力なミサイル攻撃を仕掛け、破壊すると脅した。
5月9日には、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師の顧問であるカマル・ハラジ氏も同様の発言をしている。イスラエルがイランの存在を脅かせば、イランは核兵器の開発を余儀なくされるかもしれない、と。
「われわれは核爆弾を作ると決めたわけではないが、イランの存在を脅かすようなことがあれば、われわれの軍事ドクトリンを再考せざるを得なくなるだろう。」
こうした脅迫に対する政権の鋭い批判を受け、イランの外務省は態度を軟化させ、イランが大量破壊兵器の拡散を禁止する国際的な協定を遵守し続け、核ドクトリンを変更する意図はないと発表した。
イラン外務省のナセル・カナニ報道官は、大量破壊兵器に関するイランの原則的な立場は、イランの最高指導者であるアリ・ハメネイ師によるファトワ(宗教上の命令)に基づいており、そのような兵器の製造を禁止していると述べた。報道官によれば、イランはそのような兵器が国際社会への脅威をもたらすと考えている。
イスラエルはイランの脅しに対し、対抗措置をとる構えを見せた。6月末、イスラエル航空宇宙産業(IAI)のヤイル・カッツ作業委員長は、イスラエルに対する大規模な攻撃があった場合、イスラエルは核兵器を使用する用意があることを示唆した。
「四方八方から同時に大規模な攻撃があった場合、私たちには終末兵器がある。私たちは、彼らが私たちに押し付けようとしている状況を覆す兵器を持っている。」と述べた。「イラン、イエメン、シリア、イラク、そして中東のすべての国々が、私たちと決着をつける時が来たと判断した場合、私たちは世界の終末兵器を使用する能力を持っている。」
数日後の7月8日、イスラエルのアヴィグドール・リーベルマン元外相も、ラジオインタビューでイランの核計画とテヘランの勢力拡大について言及した。彼によれば、イスラエルはあらゆる手段を用いるべきだと言う。
「彼らの核計画を終わらせなければならない」と彼は述べ、第二次世界大戦で日本に対して核兵器が使用されたことで戦争が終結したことを想起させた。
これらの発言は、イスラエルが核兵器を使用する可能性を示唆していると多くの人々が受け止めた。
イスラエルは核不拡散条約(NPT)に署名していない。イスラエルは何十年もの間、この問題に関してあいまいな政策を維持してきた。専門家は、イスラエルが少なくとも200発の核弾頭を保有していると確信している。1960年代後半、イスラエルはフランスの協力を得て秘密裏に核兵器を開発したが、公式には宣言していない。イスラエルの指導者たちは公式には否定している。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の年次報告書によれば、核保有国は過去5年間で核兵器への支出を3分の1増やした。地政学的緊張の高まりを背景に、核兵器の近代化が進んでいるのだ。報告書によれば、過去1年間で、核保有国9カ国すべてがこうした取り組みに関与している。
イスラエルについては、核兵器とディモナのプルトニウム生産炉の近代化を進めていると専門家は見ている。イスラエルにおける核兵器への支出は、2018年以降33%以上増加している。
イランについては、7月中旬、アントニー・ブリンケン米国務長官がコロラド州アスペンでの安全保障会議で、イランが核保有能力に近づくスピードについて非常に気になる発言をした。「イランが原爆を製造するのに十分な核分裂性物質を濃縮するのは、せいぜい2週間先だ。」とブリンケン国務長官は語った。
米国家安全保障研究所のイラン核開発計画の専門家によると、2024年5月の国際原子力機関(IAEA)報告書の主要なポイントは、イランがウラン濃縮計画を進め続け、60%まで濃縮した物質の蓄積に注力していることを示している。
しかしこのことが、イランが核兵器製造の瀬戸際にいることを意味しない。なぜなら、ウランの濃縮と核爆弾製造との間には依然として技術的なギャップがあるからだ。
専門家は、イランは早ければ明日にも兵器級レベル(90%)のウラン濃縮を開始できると見積もっているが、欧米の反応を恐れて現在は控えている。しかし、イランは660%までウラン濃縮を続け、備蓄を増やしている。
このように、イランとイスラエルの対立と核兵器使用の脅威は、直接的な軍事衝突が起きた場合、当事者の一方が冷静さを保てず、禁止兵器の使用に踏み切る可能性がある危険な状況を生み出しています。(原文へ)
INPS Japan
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