SDGsGoal4(質の高い教育をみんなに)ESDが変える学び―サブサハラ・アフリカのSDG4への挑戦

ESDが変える学び―サブサハラ・アフリカのSDG4への挑戦

【ナイロビLondon Post=ウィニー・カマウ】

サブサハラ・アフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ)は、世界でも特に人口が若く、増加ペースも最速級の地域である。その一方で、急速な人口構成の変化(子どもや若者の急増)や経済的な圧力、深刻化する気候変動の影響(干ばつや洪水など)を背景に、教育が大きな課題となっている。持続可能な開発目標(SDGs)の目標4(SDG4)は、2030年までに「すべての人に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」ことを掲げる。だが2025年末時点でも、達成に向けた進み具合には地域や国によって大きな差がある。就学率は長年にわたり拡大してきたものの、教育の質や「学んだことが力になる」実効性、そして公平性が追いつかず、貧困や脆弱性の連鎖を断ち切れていない。|ヒンディー語版英語

SDG4のターゲット4・7に位置づけられる「持続可能な開発のための教育(ESD)」は、学習者が持続可能性に関わる課題――環境を守ること、経済のしくみ、社会の公正さ――に向き合うための知識や技能だけでなく、価値観や態度も身につけることを目指す枠組みである。サブサハラ・アフリカでは、気候変動や食料不安、格差といった問題が日々の暮らしに直結し、教育現場にも影響する。ESDは、暗記中心になりがちな学びを、困難を乗り越える力や、自ら考えて選び行動する力を育てる学びへと転換する手がかりとなり得る。

もっとも、同地域の教育には大きな格差がある。近年のユネスコや国連の報告によれば、アフリカ全体で学校に通えていない子どもや思春期世代、若者は約1億1800万人に上り、その過半がサブサハラ・アフリカに集中しているとされる。就学前教育(幼児教育)への参加率は約48・6%にとどまり、世界平均を大きく下回る。学びの土台となる幼児期の基礎が十分に築けないまま、初等教育に入っている現状がうかがえる。初等教育の適齢期での修了率はおおむね62~65%で、中等教育ではさらに低下する。

学力面の遅れも深刻である。多くの国で、初等教育を終えるまでに、読み書きや算数・数学で最低限の水準(基礎的な到達度)に達する子どもは、10~58%にとどまる。教員不足も極めて深刻で、サブサハラ・アフリカでは2030年までに推計で約1500万人の新規教員が必要とされる。さらに初等教育教員の約40%は国内の資格基準を満たしておらず、訓練を受けた教員の割合も世界で最も低い水準(約65%)にある。

ジェンダー格差は初等段階では縮小する一方で、中等・高等段階、とりわけ理工系分野で再び拡大する傾向がある。背景には、貧困、児童労働、早婚、紛争に加え、文化的規範が女子に過大な負担を課している現実がある。

学校インフラも十分とは言いがたい。飲料水や衛生設備などは、地域によっては2016年以降に改善が進んだが、多くの学校で基礎的なサービスはなお不足している。

Image credit: LinkedIn.com
Image Credit: africanrelief.org

こうした課題に対し、ESDは教育を「社会や暮らしを変える力につながる学び」へと方向づけ、批判的思考(うのみにせず考える力)、問題解決、協働、そして持続可能性に向けた行動を促す。ユネスコの「ESD for 2030」(2030年に向けた国際枠組み)によれば、ESDはより公正な社会に向け、情報に基づいて判断し、意思決定する力を育むことを目指す。

サブサハラ・アフリカでは、気候変動の影響が就学そのものを直撃している。2024年には異常気象の影響で、数百万人規模で登校できない日が生じたとも報告されている。ESDは、干ばつに強い農業や生物多様性の保全、地域の防災力といった課題を授業に取り込み、教室の学びを現実の問題とつなぐ役割を果たし得る。

ESDを教育の中に広げる(主流化する)動きも進んでいる。2025年には、西・中部アフリカを対象にセネガルで実施された地域ワークショップなど、教育部門に限らず関係機関が連携してESDを拡大する取り組みが進展した。ボツワナ、南アフリカ、サヘル地域のプログラムでは、持続可能性を授業に取り込むための教員研修が進められ、教室の学びを、環境に配慮した農業や持続可能な産業づくりといった実社会の課題につなげる試みも広がっている。ESDは、気候変動対策(目標13)、ジェンダー平等(目標5)、不平等の是正(目標10)など、相互に結びつくSDGsの前進を後押しする。

Image Credit: unesco.org

しかし、前進を阻む構造的な壁は大きい。最大の要因は資金不足で、サブサハラ・アフリカはSDG4達成に必要とされる世界全体の年間資金不足(約970億~1000億ドル)の相当部分を占めるとされる。債務負担が重い国々では、教育よりも債務返済に支出を回さざるを得ない。教育予算も、多くの国で「GDP比4~6%」という目安に届いていない。

制度面の制約も大きい。過密なカリキュラムや試験偏重の仕組み、教員養成の不足は、ESDを後回しにしがちである。紛争や避難、洪水や干ばつなどの気候災害は学習を中断させ、結果として数百万人規模で通学を断念せざるを得ない状況を生む。デジタル環境の格差や教材・設備の不足も、誰一人取り残さない学びや新しい教育手法の導入を妨げている。さらに文化的な障壁に対応するには、地域に受け継がれてきた知恵や実践を生かし、ESDを現実に合う形に組み直すことが欠かせない。

アフリカの教育関係者は、現地の文脈に即した解決策の重要性を強調する。ジュリアス・アトゥフーラ博士は、就学の「量」を増やす段階から、「量に加えて質」を重視する段階へ軸足を移すべきだと指摘する。そのうえで、同じ制約の中でも例外的に成果を上げている教員の実践を分析し、他地域にも広げられる工夫を見いだす必要があるという。

ジュード・チカディビア・オンウニリマドゥ教授は、大学を教員養成の中核に据え、教育学研究と地域の識字向上を牽引すべきだと訴える。アミナ・K・ムテシ博士は、ESDを持続可能な農業や水資源管理など地域の暮らしの仕組みに根ざしたものにし、学びの「関連性」(学ぶ意味)を高める必要があると強調する。タボ・ンドロヴ教授は、知識の暗記ではなく、考え方や行動の変化につながる教え方を重視し、教員が革新と適応を促せるよう支えるべきだと述べる。

前進には大胆な行動が求められる。例えば、債務負担を軽くする代わりに教育など特定分野への投資を確保する仕組み(債務スワップ)といった新しい資金手法や、途上国の教育を支える国際的な資金・協力の枠組みを通じて、重点分野に資金が回る仕組みを強化すべきだ。カリキュラムも、知識量だけでなく「考える力」や協働、問題解決を重視し、教科横断でESDを組み込む方向へ改める必要がある。

教員については、大規模採用に加え、継続的な研修と待遇改善を通じて、現場が能力を発揮できる環境を整えることが欠かせない。奨学金や学校給食、安全な校舎、衛生設備の整備などにより、女子や農村部の子ども、紛争や災害などの危機の影響を受ける子どもたちを支える政策を強化し、格差に対応する必要がある。

地域協力も重要だ。アフリカ連合の長期ビジョン「アジェンダ2063」やサヘル地域の教員育成の取り組み、教育資源を共有するプラットフォームなどを通じて、教材やノウハウを共有し、各国が互いの経験を学び合えるようにする。あわせて、学習状況のデータを的確に把握し、成果を継続的に検証する仕組みも強化したい。デジタルツールは格差を広げないよう配慮しつつ活用することが求められる。さらに、洪水や猛暑といった気候災害に強い学校づくりや、地域に根ざした学びの場を整えることも欠かせない。

Image Credit:awf.org
Image Credit: africa.iclei.org
Image Credit: unesco.org

技術は新たな機会ももたらす。携帯端末を使った学習やラジオ教育は、遠隔地を含め学びの機会を広げる可能性がある。ただし、端末や通信、電力、費用といった利用環境の差がそのまま教育格差にならないよう、公平な導入が鍵となる。ESDは、技術が「人を中心にした持続可能な学び」を支える方向へ向かうよう、指針を与える。

2025年末時点で、サブサハラ・アフリカは2030年まで残り5年という岐路に立っている。ESDは、単なる就学者数の拡大にとどまらず、実社会の課題に対応できる学びへと教育を結び付ける。若者が気候危機を乗り越え、グリーン経済を担い、公正な社会を築く力を身につけるうえでも重要である。地域の現実に根ざし、教員が主導し、制度として支えられるなら、ESDはSDG4の達成を現実に近づけ、アフリカの次世代と地球の双方にとって、しなやかで持続可能な未来を育むだろう。(原文へ

This article is brought to you by London Post in collaboration with INPS Japan nad Soka Gakkai International, in consultative status with the UN’s Economic and Social Council (ECOSOC).

INPS Japan

関連記事:

干ばつが引き金となる過激化と暴力、最も脆弱なのは少女たち

ジェンダー平等、女性のエンパワーメントに取り組むアフリカ

世界人口の半数が教育より利払いを優先──取り残される34億人

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
The Nepali Times
London Post News
ATN

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken