SDGsGoal16(平和と公正を全ての人に)|アフリカ|情勢不安定化で持続可能な開発に暗雲

|アフリカ|情勢不安定化で持続可能な開発に暗雲

【ハラレ(ジンバブエ)IDN=ジェフリー・モヨ】

ジンバブエの野党政治家であるジョブ・シクハラ氏は、2021年に暴力を扇動した容疑で逮捕されて以来、約2年間、有罪判決を受けることなく収監されたままである。

別の野党指導者であるジェイコブ・ンガリブフメ氏は今年4月、政府の指導力の低さに抗議して抗議行動を呼びかけた際、2020年と同様の罪で禁固4年の刑に処された。

シクハラ氏もンガリブフメ氏も、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の第16目標がすべての人々に司法へのアクセスの提供し、あらゆるレベルで効果的な説明責任を果たし、包摂的な制度を構築するよう呼びかけているにも関わらず、政権側からの弾圧に直面している。

UN Secretariate Building. Photo: Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building. Photo: Katsuhiro Asagiri

2015年9月、ジンバブエを含む193カ国がニューヨークの国連本部に集まり、グローバルで持続可能な開発を達成するための長期的な戦略を約束した。

その結果、2030年まですべての人のための持続可能な未来を実現するための17の目標が発表された。

しかし、シクハラ氏もンガリブフメ氏のようなジンバブエ国民が当局の手によって弾圧される一方、SDGsのほとんどが、期限6年前にして、達成不可能なのではないかとみられており、人権活動家からの批判を招いている。

ジンバブエの人権活動家は、体制は誤った目標を追っているとして批判している。

ジンバブエの人権活動家エルビス・ムガリは「ジンバブエは、政治の腐敗や人権侵害、統治の機能不全のために、貧困を軽減するのに苦労している。政治情勢の不安定化により、飢餓と貧困の根絶に関連したSDGsの達成に向けた進展が妨げられている。これらSDGsの達成は、安定した統治と風通しの良い政治環境に依存しています。」と語った。

政情の不安定化がアフリカに広がる中、一部のアフリカ諸国にとってSDGsの達成は難しくなりつつある。

ケニア

Map of Kenya
Map of Kenya

2023年に激しい反政府デモが発生したケニアでは、すべての人に司法へのアクセスを提供するというSDGsの達成に向けた進展が滞っている。

ケニアのデモ参加者6人が警察に射殺され、10人以上が負傷した。野党指導者レーラ・オディンガ氏が、増税と生活費引き上げを行ったケニアのウィリアム・ルト大統領政に対し、市民的不服従と全国的な抗議行動を連日呼びかけた後だった。

「この国にあるのは人権侵害の特定と処罰を無視し、怠っている府処罰の文化です。」とケニアの人権弁護士カカイ・キッシンジャー氏は語った。

ケニア・ロータリークラブの平和研究員ケネディ・モナリ氏は、状況はより悪化したと感じている。東アフリカのこの国が政治的不安定と闘う中で、SDGsの達成が徐々に妨げられている。

「社会が内部対立している状況を反映して、懸念すべき動きがケニアの政治状況の中で生まれています。現在の政権は経済成長の達成を公約しています。かつての統治パターンを変え、とりわけ若者や女性といった周縁化された集団にとっての雇用創出を通じて貧困を緩和することを目していいます。」とモナリ氏は語った。

コンゴ民主共和国

Map of Congo
Map of Congo

コンゴ民主共和国(DRC)では、政情不安の中、2030年までに国連持続可能な開発目標(UNSDGs)を達成するという夢は、さらに早く潰えつつある。

開発の専門家ヌダタバエ・アキリマリ氏は、絶え間ない政治的緊張を受けて、SDGs達成のペースが遅いのはコンゴ民主共和国の政治的混乱に原因があると非難した。

「政情不安がSDGsのすべての項目の達成に悪影響を与えていることは明らかですが、この期に及んで、どの項目が最も脅威にさらされているかを言うことは困難です。」と、アキリマリ氏は語った。

しかし、コンゴ民主共和国東部では、武装集団が絶えず市民を殺害し、田畑、道路、市場、収入、教育、食糧へのアクセスを妨げてきたため、人々は戦争と避難生活を何年も続けてきたと、今年3月に世界食糧計画(WFP)が報告している。

2022年、同国東部イトゥリ州、北キブ州、南キブ州での武力紛争が激しさを増して国がより危険な状態に陥り、国内での移住を余儀なくされる人が増え、命が継続的に失われているという。

国連によると、結果として、コンゴ民主共和国の2600万人以上が人道支援を必要としているという。

タンザニア

タンザニアでは、SDGsに向けた作業が行政府の権力拡大によって制約を受けつつある。民間の創意が押さえつけられ、人権侵害が起こり、人権活動家はいらだちを強めている。

Map of Tanzania
Map of Tanzania

タンザニア人権活動家連合の全国コーディネーターであるオネスモ・オレ・ヌグルムワ氏は、「貧困との闘いのペースは非常に緩やかです。貧困と闘うという目標を立てていますが、国内の人々の生活や、人的資源、人的資本を改善するための、実質的で真剣な介入は見られません。」と語った。

ヌグルムワ氏は、「貧困がこの国ではまだ猛威を振るっています。特に農村地帯ではそうだ。都市住民は1日1ドル以下で暮らしています。」「貧困の連鎖が強く、今日貧困下にある世代が次の世代を貧困にしてしまっています。」と指摘した。

モザンビーク

モザンビークでは、政情不安がSDGsを危機に晒す明確な兆候がある。人権擁護団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」によると、選挙を見据えた非暴力の抗議活動に対して治安部隊が過剰な暴力をふるった事件が10月にあったという。

SDGsはすべての人々に司法へのアクセスの提供し、あらゆるレベルで効果的な説明責任を果たし、包摂的な制度を構築することを謳っているが、弾圧の結果としてその達成が危ぶまれている。

ザンビア

Map of Zambia
Map of Zambia

ザンビアでは、ハカインデ・ヒチレマ大統領が自身の前任者であるエドガー・ルング氏と争っているために政情不安が起こっている。支持者らとジョギングを行っていた際、それが政治活動の一環だとみなされて、ルング氏が警察から阻止される事件もあった。

ザンビアにとっては、こうして主要な政治家が相争う中で、一般の人々にとってのSDGsの達成が危ぶまれる状況になっている。

しかしザンビアの政府諸機関の見方はちがう。

ザンビアのフランクソン・ムスクワ障害者局長は「ザンビア政府当局は官民両部門における雇用創出を優先しています。現在の政権が権力の座についてから、障害者を含めた5万人以上の雇用が生まれ、貧困撲滅に向けたひとつの成果となっています。」とIDNの取材に応えて語った。

マラウィ

マラウィの人権活動家ジュリアン・ムワセ氏は、政治的腐敗のために同国の政治は徐々に混乱状態に陥りつつあり、SDGsの2030年までの達成という政府目標が危なくなってきていると語った。

「政府は、市民がより安く農産物を入手できるように『価格低減事業』を導入したが、残念なことに政治家や旧来からの指導者がこの制度を悪用しています。」とムワセ氏は指摘した。

誤った目標の追求

Image source: UNESCO
Image source: UNESCO

ジンバブエのエコノミスト、マシンバ・マニャニャ氏は、経済面では誤った目標を追求しているとして政府を非難した。

「最近財務大臣が提案した予算からまずは見てみましょう。保健や教育といった分野よりも治安に多くの予算が割り当てられていいます。政府は人々の健康や福祉よりも権力にしがみつくことを優先していることを浮き彫りにしています。」とマニャニャ氏は語った。

ジンバブエ労働経済開発研究所のチーフ・エコノミストであるプロスパー・チタンバラ氏は、同国が2030年までにSDGsを達成するにはもっと多くのことがなされる必要があると語った。

チタンバラ氏は、「国としてやるべきことはたくさんあります。極度の貧困に喘ぐジンバブエ人の数に目を向ける必要があると思います。非正規雇用が増加しており、私たちは貧困削減のための経済成長を確実にする必要があります。農村部のインフラを強化し、農業部門の生産性を向上させる必要があります。」と語った。(原文へ

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