SDGsGoal10(人や国の不平等をなくそう)未来の世代のために再び戦地の実情を写真に記録する(エドゥアルド・カプロフ氏)

未来の世代のために再び戦地の実情を写真に記録する(エドゥアルド・カプロフ氏)

【東京IDN=浅霧勝浩

The artist’s van. Marcus Sparling, full-length portrait, seated on Roger Fenton’s photographic van./ By Roger Fenton(1819-1869), Public Domain

写真家のレンズに入った最初の戦争 – クリミア戦争(1853~1856年)。おそらく史上初の公式軍事写真家であるロジャー・フェントン氏は、1855年に馬で牽引した移動式写真室(右の写真)を現場に運び、戦争と破壊に苦しむ人々を撮影した。

彼は撮影に際して、「美観」を理由に遺体を撤去したりしなかった。167年前のことである。フェントン氏は写真への貢献(特にクリミア戦争の写真)が認められ、「世界を変えた写真家100人」に選ばれた。彼の作品は米国議会図書館に所蔵されている。

最近、ウクライナのブチャハルキウなどを訪れ帰国したイスラエルのドキュメンタリー写真家エドゥアルド・カプロフ氏は、かつてのフェントン氏のように、巨大なカメラ、テント、薬品の入ったフラスコを装備し暗室に改造したワゴン車を運転して、戦場と化したウクライナ各地をまわっている。

Photo source: Wall Street International
Photo source: Wall Street International

ロシアのウラジミール・プーチン大統領が「特別軍事作戦」と称し、民間人は標的にしていないとされるウクライナで実際に何が起きているのか。カプロフ氏は、現地からのYouTubeレポートと共に、あえてフェントン氏の時代の歴史的な手法(湿式コロジオン技法)で撮影している。

湿式コロジオン技法は、1851年に発明された技法で、ガラス板などにコロジオンという薬剤を塗り、さらに硝酸塩を化合させて感光材を作る。それをフォルダーに入れて撮影するというもので、乾燥させずに濡れた状態で撮るから「湿板」と呼ばれている。日本では幕末に輸入され、有名な坂本龍馬の写真なども、この方法で撮られている。

カプロフ氏は「湿式写真」で過去と現在を並置することで、ウクライナで起こっていることを別の角度から見ることができると確信している。「じっくりと見てもらい、一見『古い』写真が実は現代に撮られたものであることに気づいてもらいたいと考えています。私たちの『今』が、何世代か先の未来にどう映るかを想像してもらいたいのです。」とカプロフ氏は語った。

映像を見るには、上記画面の「YouTubeで見る」をクリックしてください。

YouTubeレポートにおけるカプロフ氏のメッセージ:

Edward_Kaprov
エドゥアルド・カプロフ(Edward Kaprov)氏は、ソビエト連邦で生まれ育った。祖国がユートピアとともに世界地図から消滅した後、イスラエルに移住。以来、現在の祖国(=イスラエル)と「祖先の土地(ロシアやウクライナなどの旧ソ連邦構成諸国)」を行来しながら、現実の状況を否定しソ連時代の高邁な理想を懐かしむ「ノスタルジア」に焦点をあてた撮影活動をしている。

「ウクライナの戦争は、多くの人にとって、個人的な戦争になっています。私も例外ではありません。離れて見て見ぬふりをしているわけにはわけにはいかないのです。今後も、現地に戻って、ドキュメンタリー・プロジェクトを続けるつもりです。今回は、リポート、ドキュメンテーションと並行して、何か違うことを試みることにしました…。未来の世代に残すために、過去と並行して歴史を描きたいと思ったのです……。今から約170年前、初めて戦場の撮影が行われました。英国の写真家ロジャー・フェントンがクリミア戦争で撮影した証拠写真です。皮肉なことに、同じ土地(ウクライナ)の一角でこれらの写真は撮影されました。このことを考えると、『かつてあったことはこれからもあるであろう。かつてなされたことはこれからもなされるであろう。太陽の下、新しきものは何もない。』という、ソロモンの偉大な知恵を認識せざるをえません。フェントンのように、暗室に改造したバンを運転して、私は現場に行くことにしました。何が起きているのか、何が見えているのかを記録する。レポートとともに、壊れやすいガラスに、歴史的な手法で撮影された記録写真が、ウクライナで起こっていることを別の角度から見ることができると信じています。」(FBポスト

INPS Japan

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