SDGsGoal13(気候変動に具体的な対策を)文化と歴史が日本とカザフスタンの距離を縮めると日本大使が語る

文化と歴史が日本とカザフスタンの距離を縮めると日本大使が語る

【アスタナINPS Japan/アスタナタイムズ=アイバルシン・アクメトカリ】

「日本とカザフスタンのパートナーシップには多くの柱があるが、共通の歴史的背景と文化交流は、両国の関係を次のチャプター(段階)へと進化させつつあります。」と、山田淳駐カザフスタン日本国大使はアスタナタイムズ紙の独占インタビューに応じて語った。

Ambassador Jun Yamada. Photo credit: Japanese embassy.
Ambassador Jun Yamada. Photo credit: Japanese embassy.

豊かな経済・文化交流の歴史から1992年の国交樹立まで、カザフスタンと日本は30年以上にわたってパートナーシップを構築してきた。

極東の島嶼国である日本国とユーラシア大陸の中心に位置する陸封国カザフスタン共和国は、一見隔世の感があるが、実は両国の間には多くのつながりがある。

「1991年の独立回復直後から、日本はカザフスタンと緊密な協力関係を築き、国家建設の最も重要な分野で貢献してきました。実際、その最初の時期を通じて、日本はカザフスタンに対する最大の援助国(トップドナー)であり続けました。」と山田大使は語った。

カザフスタンは、日本を含む主要パートナーとの二国間関係を改善・拡大することで、自国の経済とより広域な経済圏を強化するための大胆な措置を講じている。

「カザフスタンは、海外からの援助を受ける立場から見事に卒業し、独自の援助機関であるカザフスタン国際開発庁(KazAID)を設立することによって、中央アジア地域だけでなく、世界に開かれた援助国としての新たな責任ある役割を担っています。」と山田大使は語った。

山田大使はカザフスタンとの二国間関係を「化学反応」と表現し、「言葉で説明するのはあまり簡単ではないが、両国民の驚くほどよく似た外見や、出会った最初の瞬間から感じるほとんど自然な共感から始まり、その特別な化学反応は常に目に見えるものです。」と語った。     

歴史によって結ばれた日本とカザフスタン

カザフスタンと日本は、歴史的な出来事を共有しており、中には悲劇的なものもあるが、常に両国の友好の礎石となっている。実際、二国間関係の始まりは外交関係よりも古く、日本では第二次大戦末期の(米国による)広島と長崎への原爆投下、カザフスタンでは北東部のセミパラチンスク核実験場で(ソ連によって)繰り返された核実験という、核兵器によって夥しい数の人々が壊滅的な影響を被った被爆の歴史がある。

“Stronger than death” monument to the memory of nuclear test victims in Semei. Photo credit: Japanese embassy.
“Stronger than death” monument to the memory of nuclear test victims in Semei. Photo credit: Japanese embassy.

「このような災厄をもたらした(ソビエト)政権が崩壊した直後に、日本の医師たちがカザフスタンの被災地を訪れて、必要な治療や、住民の状況を改善するための長期的な治療法を提供しようと最善を尽くしたことは、誠に象徴的であり理解できることだった。日本人にとって、放射能による悲劇は決して遠い国や民族の問題ではなく、まさに自分たち自身の、今日に続く深刻な課題だったのです。」と山田大使は語った。

一方、核兵器による被害は、日本とカザフスタン両国民が共有する深い歴史的ルーツの一部でしかない。

人為的な大飢饉を引き起こし、何百万人ものカザフスタン人を死に至らしめたヨシフ・スターリンのソビエト政権は、日本人にも影響を与えた。6万人以上の日本人がカザフスタンの強制収容所に抑留され、やがてカザフの地を故郷とすることになった。

「スターリン独裁政治の犠牲となっていたカザフの人々は、日本人捕虜に驚くべき同情と憐れみの情を示し、最大限の援助と励ましを与えました。このおかげで、カザフスタンにおける日本人抑留者の死亡率は、シベリアの多くの地域など、他のどの強制収容所と比べても非常に低かったのです。私たち日本国民は、カザフスタンの兄弟姉妹が、人類の歴史上最も暗黒の時代に、真の人間性を表現してくれたことに、永遠に感謝し続けるでしょう。」と山田大使は語った。

二国間の文化交流

文化交流は、日本とカザフスタンの二国間関係を深めるためのソフト面のツールであり、市民間の人と人とのつながりを促進するものである。

Flag of Kazakhstan and Japan Photo: The Astana Times

先日首都アスタナの国立学術図書館で開催されたカザフスタン日本センター主催の日本文化デーは、日本の豊かな文化遺産を垣間見ることができ、地元の来場者で賑わった。

「たった1日のイベントでしたが、首都圏から驚くほど多くの市民が参加しました。私はそれをこの目で見ることができました。これは、国民がこのような機会を切望していたことの証であり、同時に、将来への非常に心強い示唆だと思いました。」

「生け花や茶道といった日本の伝統芸能や、アニメや漫画といった最近のポップカルチャーは、カザフ人の興味をかき立てています。日本のポップカルチャーは世界中で支持されていますが、その意味でカザフスタンは 他のどの国よりも日本文化への関心が高い国だと思います。古典的なものから最新のものまで、日本のアニメーションの最良の例を紹介する必要性と無限の可能性を感じています。」と山田大使は語った。

音楽はまた、両国に共通するものを人々に発見させ、二国間の絆を深める上で極めて重要である。

山田大使は、「私は、カザフスタンの人々が皆、心の奥底では優れた音楽家や歌手であることを知っています。ここでもまた、私たち両国民は音楽を通じてひとつになれるし、切っても切れない友人になれるのです。」と指摘したうえで、「日本の三味線をプロ並みに弾きこなすカザフの天才や、ドンブラ(カザフの2弦楽器)の演奏に打ち込む日本人愛好家を見てきました。彼らの中には、通常はカザフ出身者しか出場できないコンクールに出場する者もいます。」と付け加えた。

A Kazakh master playing the shamisen, a traditional Japanese three-stringed instrument. Photo credit: Japanese embassy.
A Kazakh master playing the shamisen, a traditional Japanese three-stringed instrument. Photo credit: Japanese embassy.

「カザフスタンの人気歌手ディマシュ(クダイベルゲン)が日本で享受している人気と名声については、多くを語る必要はないだろう。彼はすでに日本国民の心を掴んでいます。」と山田大使は語った。

スポーツ

パートナーシップはスポーツの分野でも発展している。

カザフスタンで最も有名なボクサー、ゲンナジー・ゴロフキンは、日本のチャンピオンである村田諒太と戦い、打ち負かした。

Gennadiy Golovkin gifted his robe to Ryota Murata after their fight. Photo credit: Golovkin’s Twitter
Gennadiy Golovkin gifted his robe to Ryota Murata after their fight. Photo credit: Golovkin’s Twitter

「試合後、ゴロフキン選手が村田選手に自前のシャパン(カザフスタンの民族衣装)をプレゼントしたときは、まさに真のスポーツマンシップを最高の形で表現したとして、日本中が感動しました。」

「相撲も日本の伝統競技ですが、驚くべきことに、今ではここにもカザフスタンのヒーローがいるのです。金鳳山晴樹はカザフ名をイェルシン・バルタグルといい、3月の春場所で11勝を挙げた相撲界の新星です。」と山田大使は語った。

「新入幕初参戦にして、敢闘賞という特別な賞を受賞することができました。彼の今後のさらなる活躍と、いつか横綱になることを祈っています。」と山田大使は語った。

観光

両国の関係は文化やスポーツにとどまらない。観光交流はカザフ・日本間の重要な柱であり続けており、新型コロナのパンデミックが終息に向かい、世界が再び観光客に門戸を開いていくことから、今後の発展が期待されている。

世界的な観光業の再開に伴い、カザフ国民は日本が提供するものを楽しみたいと考えており、また、カザフスタンへの日本人観光客の再来を熱望している。

「カザフスタンに赴任して最初の2年間で、さまざまな地域を訪れましたが、そのたびに、この偉大な国の驚くべき美しさと多様性に深い感銘を受けました。」と山田大使。

「同じように、日本にも北から南まで数え切れないほどの美しい観光地があり、その中から好きな組み合わせを選ぶのは訪問者次第です。我が国はカザフスタンに比べて非常にコンパクトですが、気候や地理的な多様性のおかげで、多くの島々を通して非常に豊かな多様性を提供することができます。」と語った。

山田大使は、二国間の観光が今後も成長し続けることを楽観視している。

「両国にとって最も望ましいのは、近い将来に日本とカザフスタンをつなぐ直行便が就航することでしょう。」

「一般的な認識とは裏腹に、日本とカザフスタンはそれほど離れていません。もし直行便が飛ぶようになれば、7時間ほどで到着するはずです。パンデミックという頭痛の種が収束しつつある今、私たちは皆、(直行便就航という)夢がすぐにでも実現することを祈っています。」と山田大使は語った。

グリーンテクノロジーにおける協力の新たな地平

カザフスタンと日本の間には、グリーン技術における協力の新たな地平が生まれつつある。日本は、再生可能なグリーン・エネルギー源の立ち上げにおいて進んでいる。日本の脱炭素技術は、生産と消費の両面でエネルギー効率を改善するために利用されている。

日本は2022年までに、温室効果ガス排出削減への投資を強化する一方で、低炭素の未来に向けたエネルギー転換を加速させるという共同の野望を実現することを目指す国々と、25の共同クレジットメカニズム(JCM)に署名している。カザフスタンもまた、2060年までにカーボンニュートラルを達成することを公約している。

「カザフスタンとのJCMの早期締結は、日本企業によるカザフスタン市場へのさらなる投資のための、新たな理想的な触媒となることは間違いありません。」と山田大使は語った。

山田大使はまた、日本の投資は物理的なインフラだけでなく、最終的には「成長の質」を高める「人々への投資」を目指していることにも言及した。

この点について山田大使は、「最新の脱炭素技術の応用は、わが国の理念を最もよく体現するものになるだろう。」と付け加えた。(原文へ

INPS Japan

この記事は、The Astana Timesに初出掲載されたものです。

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