SDGsGoal9(産業と技術革新の基盤を作ろう)デジタル時代におけるZ世代の抗議行動の再定義

デジタル時代におけるZ世代の抗議行動の再定義

【国連ATN=アハメド・ファティ】

私はこれまで、タハリール広場からタイムズスクエアに至るまで、数々の抗議運動を至近距離から見てきた。そこにはある種の“振付け”が存在する。労働者がストに入り、学生が集結し、政党が流入する。指導者が台頭し、逮捕され、あるいは妥協する。その後に訪れるのは疲弊と沈黙、そして次なる周回である。

Ahmed Fathi, ATN
Ahmed Fathi, ATN

しかし、何かが変わった。リズムが狂っている。
新世代―Z世代は抗議の教本そのものを書き換えた。
彼らの運動は、より速く噴出し、より広く拡散し、国家が息を整える前に霧散する。

彼らが構築しているのは革命ではない。
彼らは社会のバグを修正しようとしているのだ。

無視できないパターン

各地の単発事象に見えた動きは、いまや地球規模の反響装置となった。

  • ネパールでは、若者が政府のソーシャルメディア禁止令に抗い、首相を退陣へ追い込んだ。
  • モロッコでは、《GenZ 212》が医療崩壊と格差是正を掲げオンライン運動を展開。
  • マダガスカルの若者は停電抗議のメッセージをアニメ表現に包み込んだ。
  • ケニアではTikTok発の反課税デモが政府を撤退へ追い込んだ。

国は違えど、怒りは共通し、テンポも一致する。
私はこれらを長く追跡し、ひとつの反復法則に気づく。
それは、あまりにも正確すぎる「定型」だ。

デジタル着火 → 怒りの爆発 → 分散型動員 → 世論圧力 → 政府の動揺

自発的にも見える。だが同時に、設計されているようにも見える。

シグナルに潜む疑念

長年取材してきて学んだのは、「あまりに滑らかに拡散する現象を疑う」ことだ。
ここで気がかりなのは、真の声と並走するもうひとつの存在である。

匿名アカウント、瞬時に統一されるハッシュタグ、プロ仕様の動画編集――
草の根もあれば、出自不明の波もある。

政府は「操作」と呼び、
活動家は「デジタル戦略」と呼ぶ。
真実は、例によってその緊張の中間にある。

これは怒りの正統性を否定するものではない。むしろ示しているのは、情報戦と市民動員が融合した現代性だ。
Z世代の抗議は政治であると同時にアルゴリズムでもある。

本物の怒りと演出されたノイズの境界は曖昧になり、
その不確実性を権力側はいま確かに感じ取っている。

抵抗のOS(オペレーティングシステム)

Z世代の運動を特徴づけるのは次の3点である。

  1. 分散性:指導者も階層構造も持たず、逮捕・拘束による鎮圧モデルが成立しないネットワーク型の動員。統合拠点が存在しないため、国家権力は「交渉相手」や「責任主体」を特定できない。
  2. ミーム化:かつて抗議運動が掲げたのは政策綱領だったが、Z世代の言語は皮肉・ユーモア・視覚引用である。短尺動画やTikTokリミックスは、演説よりも共感生成と拡散速度で優位に立つ。
  3. 速度:深夜のDiscord上のチャットが、翌朝には全国規模の集会へと転化する。承認階層と手続に依存する官僚制国家は、瞬発的な動員サイクルに対応できず、結果として速度競争を強いられる。

その背後には、失望がある。
経済停滞、腐敗、そして「生まれた場所が違うだけで未来が変わる」という冷徹な比較認識だ。

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弱点:持続性

彼らの強みは俊敏性であり、弱点は持続性である。
組織なき動員は、瞬間的な可視化と世論圧力を生み出すが、その熱量は持続的交渉や制度転換に転化しにくい。制度的器(代表組織・政策要求・交渉窓口)を欠く限り、勝利は法制度や政策に定着せず、勢いは時間とともに拡散・希薄化する。

同時に、AI監視とデジタル浸透技術は急速な高度化を遂げ、国家の対応能力も進化しつつある。
それでも抗議は反復し、大陸規模で同一の動員プロトコル(デジタル着火→ミーム拡散→非中央集権動員→圧力形成)が再生される。各国政府はその都度「突発」と認識するが、実際にはすでに定型化されたサイクルが稼働している。

より大きな視座

Z世代を「未熟」と片付けるのは誤りだ。
彼らは理想主義の担い手というより、機能しない統治システムを前に苛立つ実務者である。
既存制度を継承する意思はなく、リアルタイムで社会OSをデバッグしようとしている。

しかし同時に警戒も必要だ。
拡散する抗議がすべて真正とは限らず、匿名アカウント、急増する運動系サイト、影響力を帯びた“インフルエンサー的指令塔”の背後に、情報工作・PR演算・外部利害が潜む可能性がある。

インターネットは誰にでも拡声器を与えた。
しかしその音声は、ノイズ化し、増幅され、意図的に操作される。

それでも――
火種の一部が設計されたとしても、燃焼している社会的不満は本物であり、延焼は止まらない。

権力への警告

国家は依然として、アプリ禁止やプラットフォーム遮断、個人拘束といった強制措置を行使し得る。
しかし接続性を基盤に育った世代から、結びつきの回路そのものを剥奪することは不可能だ。

Z世代は許可を待たない。
彼らはすでに、いわゆる「安定」の外装を揺さぶることで主導権を握っている。

彼らは未来の担い手ではなく、現在の危機の出資者=株主である。
緊急会議はすでに街頭で開かれている。

これは混沌ではない。
未来がリアルタイムでβテストを実行している過程である。

もしこれらの抗議を単なる騒音と見なすなら――
次の「更新通知」を待つことだ。(原文へ

アハメド・ファティは国連記者、国際情勢アナリスト、American Television News(ATN)編集長。

INPS Japan/ATN

Original URL:https://www.amerinews.tv/posts/gen-z-and-the-new-operating-system-of-protest

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