【カトマンズNepali Times=ヴィシャド・ラジ・オンタ】
今月のボテ・コシ川の洪水は、気候変動によってネパールの水力発電所が直面するリスクの高さを示す深刻な警告となった。この災害をきっかけに、太陽光発電の可能性に関心が高まっている。ネパールはこれまでほぼ完全に水力に依存したエネルギー戦略を進めてきたが、近年は大規模太陽光発電のコストが低下し、有力な代替手段となりつつある。
ネパールの総発電設備容量は約3,800MWに上るが、太陽光の割合はわずか0.1%に過ぎない。世界が太陽光を利用できるようになった背景には、中国の生産力がある。過去10年でソーラーパネルの価格は最大90%も下がった。
「太陽光の利点のひとつは、プロジェクトの立ち上げの速さです。100MWの水力発電所には10年かかることもありますが、同規模の太陽光発電所なら半年で稼働可能です」と、WindPower社のクシャル・グルンは説明する。
ネパールでは地すべりや洪水、地震が頻繁に水力発電所を損傷してきた。先週のラスワの洪水では、トリスリ川沿いの4つの発電所が計230MW分の発電能力に打撃を受けた。昨年9月の洪水では、456MWのアッパー・タマ・コシ水力発電所が深刻な被害を受けた。これによりネパール電力公社(NEA)や民間事業者は収益を失い、余剰電力をインドに輸出できなくなった。一方、太陽光発電所が被害を受けても、数週間の修復で再稼働が可能である。
ただし「最大の制約は土地です」とグルンは指摘する。「5~10MWを容易に生み出せる小規模な水力に比べ、1MWの太陽光発電所には500㎡の土地が必要です。」
設置場所も重要だ。最適な地域はムスタンで、単位面積当たりの日射量が最も多い。タライ平原も日照はあるが、雲や霧、大気汚染の影響で放射量は低下する。気温が高いと太陽電池の効率も下がる。
「1kWのパネルなら、ムスタンでは1日に6~7ユニット発電できますが、タライではその半分です」とグルンは説明する。

太陽光のもう一つの利点は分散型であることだ。送電網が不安定で地形が険しいネパールでは、大規模ダムや送電線の建設が難しい。だが家庭用ソーラーは簡単に設置でき、バッテリーと組み合わせれば朝晩も安定した電力を供給できる。
水力ダムは肥沃な谷を水没させ、生態系に影響を与え、住民を移住させる。しかしNEAや電力事業者は水力に固執し、太陽光への転換に消極的である。
一方、GhamPower社は積極的に太陽光に参入し、貧困層にもパネルを導入できる資金調達を提供し、ソーラーマイクログリッドを展開している。同社は2,500件の応募の中から10社の一つとして、インパクトの大きなクリーンエネルギー事業に贈られる5万ドルの「キ―リング・カーブ賞」を受賞した。
また、農家に井戸水を通年で利用できるソーラーポンプを導入し、僻地の診療所には保育器や滅菌器、保温器など出産時や新生児ケアに必要な機器を動かすソーラーシステムを設置してきた。
「産業界にはソーラーに最適な未利用の屋根が多くあります。これを利用すれば電気料金削減につながります」と、Gham Powerのプラディプ・フマガインは語る。ただし国の政策には欠陥がある。産業用ソーラーの発電容量は1MWに制限されており、「この制限は意味をなさず、撤廃すればむしろNEAにとって産業への電力供給が容易になります」と指摘する。
ネパールのエネルギーミックスは、将来の氷河湖決壊による水力発電壊滅リスクを減らすため、太陽光や風力、地熱といった再生可能エネルギーに拡大すべきである。リバースメータリングが導入されれば、太陽光発電者が余剰電力を売電でき、時間別料金制度で負荷の平準化も可能になる。

「エネルギー政策は水力90%、その他10%に偏っています。少なくとも30%は太陽光を目指すべきです」とグルンは訴える。
ネットメータリングとは、家庭用ソーラーを送電網に接続し、昼間に発電した余剰電力を“輸出”して、他の時間帯に使用した電気代と相殺する仕組みである。実質的に送電網がバッテリーの役割を果たすことになる。
しかしNEAは水力に固執し、ネットメータリングを長年拒んできた。2018年に政府が制度を承認したものの、NEAは本格的に採用しなかった。さらに、導入例がほとんどないままNEAは「ネット課金」方式に切り替え、売電価格を購入価格より安く設定して1対1の相殺をやめた。
そのうえ、NEAは2022年7月にネットメータリング自体を廃止した。これは導入した利用者や事業者を不意打ちし、投資家の信頼を失わせ、今後の投資意欲を冷やした。技術的にはすでに実現可能だが、ネパールに必要なのは政治的意思である。水力と太陽光を競わせるのではなく、可能な限り再生可能エネルギーを生み出す政策こそが求められる。
さらに太陽光以上に効率的なのが風力発電である。必要な土地面積の面でもよりコスト効率が高く、水力より設置も容易だ。
インドと中国はすでに風力タービンブレードの最大の生産国である。ネパールは海岸線を持たず風力に不利だが、ヒマラヤ北側の地域では導入の可能性がある。ただし道路整備が課題だとグルンは言う。(原文へ)
This article is brought to you by Nepali Times, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

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