SDGsGoal5(ジェンダー平等を実現しよう)英国で毎時11件のレイプ報告という危機 (シャブナム・デルファニ世界女性平和大使)

英国で毎時11件のレイプ報告という危機 (シャブナム・デルファニ世界女性平和大使)

【ロンドンLondon Post=シャブナム・デルファニ】

英国では、毎時11人の女性や少女がレイプを報告しており、1日あたり264件に上る――これは英国国家統計局(ONS)のデータである。しかし、イングランドおよびウェールズ犯罪調査(CSEW)によれば、報告されるのは6件に1件にすぎず、実際の被害はさらに深刻であることが示唆されている。

私は紛争地での経験をもつ世界女性平和大使として、英国のような先進的民主国家が女性を体系的に見捨て、守るべき制度が怠慢と裏切りを繰り返している現状に強い憤りを覚える。これは単なるジェンダー問題ではない。国家的な緊急事態であり、ただちに行動が求められているにもかかわらず、政府の対応は依然として不十分である。

英国内務省によると、報告されたレイプ事件のうち起訴に至るのはわずか2.1%、有罪判決となるケースはさらに少ない。被害者は裁判の開始まで何カ月、時には何年も待たされており、2025年1月時点でイングランドとウェールズでは3,355件のレイプ事件が審理待ちとなっている。保釈中の被告人が裁判を受けるまでの平均待機期間は358日にも及ぶ。

さらに被害者は、自身の携帯電話のデータを「デジタル・ストリップ・サーチ」と呼ばれる形で調査されるなど、侵害的な取り扱いを受ける。2021年のHMICFRSおよびHMCPSIの報告では、こうした調査の60%が「非合理的かつ過剰」とされ、被害者がこれを拒否した場合には事件が打ち切られるケースも多い。

2023年に開始された「オペレーション・ソテリア」は、加害者の行動に焦点を当てて捜査を改善する試みとして一定の成果を挙げている。2019年比で警察から検察庁への送致は95%増加、クラウン裁判所に持ち込まれた件数も91%増加した。しかし、2023年3月までの1年間に起訴に至ったのは2,655件であり、政府が掲げた目標5,190件には遠く及ばない。

警察機関には制度的な女性蔑視の指摘もある。2023年のバロネス・ケイシー報告では、ロンドン警視庁における性差別や被害者非難、証拠の不適切な扱いなどが明らかにされた。Rape Crisis England & Walesによると、裁判を待たずして被害者の69%が訴えを取り下げている。その多くは警察の冷淡な対応に起因する。バーミンガムのある被害者はBBCに対し、警察から「加害者の人生を台無しにするな」と言われたと証言しており、こうした文化が報告をためらわせている。

性的暴力が社会にもたらす影響は甚大である。内務省によると、その社会的・経済的コストは年間81億ポンドにのぼる。これは生産性の低下、医療費、司法費用などを含む。また、CSEWの調査によれば、16歳以上の女性の7.7%(約190万人)がレイプ被害を経験しており、これは女性たちの自由を著しく制限している。制度への信頼も損なわれ、女性の半数近くが無力感や恐怖を感じている。

London Post
London Post

Rape Crisis England & Walesは、資金不足により53%の支援センターがサービス削減の危機にあると警告しており、2025年7月時点で14,000人の被害者が支援待ちとなっている。2025年の報告書では、センターの3分の2が複数年予算なしにはカウンセリングを縮小せざるを得ないとされている。政府は被害者支援に年間1億4,700万ポンドを拠出しているが、現場の危機は深刻である。

被害者の証言からは、制度による裏切りが浮き彫りになる。ロンドン在住の被害者エイミーさん(匿名を解除)はBBCに、警察が携帯電話のデータを抽出できなかったことで事件が打ち切られ、自身が自殺監視下に置かれたと語った。「被害者はただでさえ自分のせいだと感じているのに、警察はそれを確信に変えてくる」と彼女は訴える。

今こそ緊急の改革が必要だ。政府はこの問題を国家的緊急事態として宣言し、緊急予算と立法権限を持つタスクフォースを設立すべきである。トラウマに配慮した専門裁判所を全国に設け、裁判の遅延と被害者の再トラウマ化を防がねばならない。性教育と平等教育は小学校から導入すべきである。レイプ被害者支援サービスには、NHSのメンタルヘルス部門と同様の持続的な資金供給が不可欠である。また、警察、大学、雇用主が報告を不適切に扱った場合の責任を明確化し、処罰を規定する法律が求められる。

2021年のレイプレビューやオペレーション・ソテリアは一歩前進ではあるが、Rape CrisisのCEO、ジェイン・バトラー氏が述べたように、「被害者の声は年々増しており、政府も行動を約束している。だが、約束だけでは足りない」。

これは英国の司法制度が、安全、平等、人権への真の責任を果たすのかどうかを問う転機である。女性たちは同情ではなく、正義を求めている。現行制度はあまりにも頻繁に加害者を免責している。政府には対応するための資源も枠組みもある。ただし、問題は、制度に根づいた家父長制と向き合う「意志」があるかどうかだ。女性たちを守る覚悟があるのか、それとも再び見捨てるのか――その選択が迫られている。(原文へ

INPS Japan/London Post

関連記事:

|アフリカ|あまり報道されない恐るべき実態‐男性のレイプ被害者の声

|エチオピア|「紛争に絡んだ性暴力に国際司法裁判所の裁きを」と訴え

女性と戦争:暴力の犠牲者、そして平和の声

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
The Nepali Times
London Post News
ATN

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken