未分類生死の決定を機械に委ねることは、道徳的に正当化できない(「ストップ・キラーロボット」エグゼクティブ・ディレクター、ニコール・ファン・ローヤン氏インタビュー)

生死の決定を機械に委ねることは、道徳的に正当化できない(「ストップ・キラーロボット」エグゼクティブ・ディレクター、ニコール・ファン・ローヤン氏インタビュー)

【CIVICUS/IPS】

自律型兵器システムに関する国際条約の制定を求める270以上の団体によるグローバル市民社会連合「ストップ・キラーロボット(Stop Killer Robots)」のエグゼクティブ・ディレクター、ニコール・ファン・ローヤン(Nicole van Rooijen)氏が、CIVICUSのインタビューに応じた。

2025年5月、国連加盟国はニューヨークで初めて、自律型兵器システムの規制という課題に正面から取り組む会合を開催した。この兵器は、人間の介入なしに標的を選定・攻撃することが可能であり、「キラー・ロボット」とも呼ばれている。これらは倫理的・人道的・法的に前例のないリスクをもたらし、市民社会は、これらが国際法を根本から損ない、世界的な軍拡競争を引き起こす恐れがあると警告している。ガザやウクライナなどの紛争地では、すでにある程度の自律性を備えた兵器が配備されており、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、2026年までに法的拘束力のある条約を採択するよう呼びかけている。

Q: 自律型兵器システムとは何か?なぜそれが前例のない課題をもたらすのか?

自律型兵器システム、または「キラーロボット」とは、人間が起動した後、追加の人間の介入なしに標的を選定し、攻撃することができる兵器です。これらのシステムは、センサーからのデータを処理し、あらかじめ設定された「標的プロファイル」に従って、いつ、どのように、どこで、誰に対して武力を行使するかを自律的に判断します。

私たちのキャンペーンでは、「致死的自律型兵器システム(lethal autonomous weapons systems)」という用語よりも、「自律型兵器システム」という表現を用いています。それは、致死的であるかどうかにかかわらず、こうしたシステムが深刻な危害を及ぼす可能性があるからです。

これらの兵器は、空、陸、海、宇宙といったあらゆる領域において、武力紛争のみならず、法執行や国境警備などの文脈でも使用され得ます。そのため、倫理的・人道的・法的・安全保障上の多くの懸念が浮上しています。

特に深刻なのは、周囲に人がいるか、あるいはプログラムされた標的プロファイルに合致する人物や集団を認識して作動する対人型システムです。これらの兵器は、人間をアルゴリズムによって数値化し、データポイントとして扱うもので、人間性を剥奪する行為です。

どのような機械、コンピュータ、アルゴリズムであっても、人間を人間として認識することも、尊厳ある権利の主体として尊重することもできません。自律型兵器は「戦争状態にある」という意味すら理解できず、ましてや「人間の命を奪うとはどういうことか」など理解できるはずがありません。機械に生死の判断を委ねることは、道徳的に正当化できません。

赤十字国際委員会(ICRC)は、自律型兵器が民間人や非戦闘員の存在が避けられない戦闘状況において、国際人道法を著しく侵害するリスクがあるとし、「そのような状況を想定すること自体が困難である」と述べています。

現在のところ、こうした兵器の開発や使用を規制する国際法は存在していません。技術が急速に進化する一方で、法的な空白が残されていることは極めて危険です。自律型兵器が、既存の国際法に反する形で配備され、紛争を激化させ、責任の所在が不明な暴力を可能にし、市民を危険にさらす事態が現実となり得るのです。

このような懸念から、国連事務総長と赤十字国際委員会の総裁は、2026年までに自律型兵器システムに関する法的拘束力のある国際文書を交渉・採択するよう緊急に呼びかけています。

最近の協議は規制の進展につながったか?

国連総会決議79/62に基づき、2025年5月にニューヨークで非公式協議が開催されました。この協議では、2024年の国連事務総長報告書で提起された課題を中心に、外交界における理解の拡大が図られました。特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)における技術的な議論を補完する形で、人道法を超えた広範なリスクが強調されました。

国連総会のプロセスには重要な利点があります。それは、すべての国が参加できる「普遍的な参加」の原則です。これは、特に多くのグローバル・サウス諸国がCCWの締約国でないことを考えると、極めて重要です。

協議の2日間で、各国代表と市民社会は、人権上の影響、人道的結果、倫理的ジレンマ、技術的リスク、安全保障上の脅威について幅広く意見を交わしました。地域ごとの事情や、警察活動・国境管理・非国家主体や犯罪集団による使用の可能性といった実際のシナリオも議論されました。時間の制約はあったものの、参加の幅と議論の深さはかつてないものでした。

私たち「ストップ・キラーロボット」キャンペーンにとって、これらの協議は非常に力強く、有意義なものでした。ジュネーブとニューヨークという2つの国連プロセスは、相互補完的に機能することができます。前者は条約文案などの技術的基盤を築き、後者は政治的なリーダーシップと推進力を醸成する場です。この2つを連携させることで、国際的な法的拘束力を持つ文書の採択に向けた努力は最大化されるのです。

なぜ世界では規制をめぐって意見が分かれるのか?

大多数の国は、自律型兵器システムに関して法的拘束力のある条約を支持しています。そして、多くの国が、「禁止」と「積極的義務」を組み合わせた2層構造のアプローチを提唱しています。

しかし、約10数カ国がいかなる規制にも反対しています。これらの国々は、世界で最も軍事力を有する国々であり、自律型兵器の主要な開発国・生産国・使用国でもあります。

彼らの反対の背景には、軍事的優位性の維持や経済的利益の確保、そしてビッグテック企業や軍需産業によって喧伝される兵器の「利点」への過信があると考えられます。あるいは単に、外交よりも力による解決を重視しているとも言えるでしょう。

いずれにしても、このような姿勢は、いま私たちが最も必要としている多国間協調、対話、ルールに基づく国際秩序の再強化を阻害するものであり、国際社会全体でこれに対抗する必要があります。

地政学的緊張と企業の影響力は規制をどう困難にしているのか?

地政学的な緊張の高まりと企業の影響力の増大は、新興技術の規制策定を困難にしています。

ごく一部の強国が、狭い軍事的・経済的利益を優先し、長年にわたって武器管理を支えてきた多国間協調を損なっています。同時に、テック企業を中心とする民間部門が、説明責任の枠組みの外で政治的意思決定に強い影響を及ぼしています。

こうした二重の圧力のもとでは、規制枠組みが確立されないまま、自律型兵器の開発が加速し、世界の安全保障と人権に甚大な影響を及ぼす恐れがあります。

市民社会はこの議論にどう関わり、規制を求めているのか?

私たちは、2012年にこの脅威にいち早く対応するため、「ストップ・キラーロボット」キャンペーンを開始しました。人権団体や人道的軍縮の専門家が連携し、現在では70カ国以上・270以上の団体が参加する国際的な連合体となっています。

私たちは、武器技術の進化や各国の政策動向についての研究を通じて、自律型兵器のもたらすリスクを明らかにし、国際的な議論を先導してきました。

私たちの戦略は、国、地域、国際のあらゆるレベルの意思決定者に働きかけ、条約の必要性を訴えるものです。政治リーダーが、自律型兵器が戦場や市民生活の中でどのように使われ得るかを理解することが、効果的な働きかけにつながります。

また、世論の圧力も極めて重要です。近年、ガザやウクライナでの紛争における兵器の自律化の進行、そして顔認証技術など民間技術の軍事利用が拡大する中で、こうした技術の非人間性と規制の欠如に対する懸念が高まっています。

私たちは、「自動化された害」の全体像の中で自律型兵器をその極致として位置づけ、この技術と規制との間に存在する危険なギャップを明らかにしています。

さらに、軍事、兵器、テクノロジーの専門家と連携し、現場からの知見をキャンペーンに取り入れています。こうした兵器を実際に開発・運用している人々の声を伝えることで、現状の深刻さと規制の必要性をより強く訴えることができます。

私たちは、人々に対し、署名、議会誓約への参加要請、SNSでの情報拡散など、具体的な行動を呼びかけています。こうした草の根の圧力が、外交官や政策決定者に対して、必要不可欠な法的セーフガードの前進を促す力になるのです。(原文へ

INPS Japan/IPS/CIVICUS

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