地域アフリカ|ソマリア|糾弾、暗殺、辞任

|ソマリア|糾弾、暗殺、辞任

【ナイロビIPS=ジョイス・ムラマ】


 今週末に行なわれた不信任投票で、ソマリアのアリ・モハメド・ゲディ首相は解任を免れた。ゲディ首相率いる政府は、東アフリカの国ソマリアに秩序と調和をもたらさないと、国会議員から糾弾されていた。投票は、閣僚が暗殺され、議員が銃撃され、さらに政府報道官によると11人の大臣が辞任するという騒然とした週を締めくくるものとなった。

不信任決議では、ソマリア暫定政権の88人の国会議員がゲディ首相を支持した。126票は不支持だったが、決議成立に必要な3分の2以上の多数となる139票にはわずかに及ばなかった。

 現暫定政権は、地域的組織である「政府間干ばつ開発機構」が陣頭指揮を取った2年を超える話し合いを経て、2004年に隣国ケニアで成立した。暫定政府は昨年ソマリア中南部のバイドアに移ったが、政権の影響力をソマリア全土に及ぼすことができないでいる。ソマリアの国土は、1991年に独裁者モハメド・シアド・バレが失脚して以来、抗争を続ける部族により、それぞれの領地に切り刻まれている。

先月、イスラム過激派が米国に支援されていると見られていた派閥の領袖から首都モガディシュの支配権を奪い、南部の大半における権力も掌握した。米国政府はこのイスラム過激派がアルカイダの活動家を匿っていると主張しているが、母体であるイスラム法廷連合(UIC)は否定している。
 
7月29日の不信任決議は、275議席の国会でゲディ首相の退陣を求めて行なわれた2度目のものだった。2004年に退陣を求めた決議は、ゲディ首相の任命が暫定国家憲章(暫定憲法)に違反していると考えた国会議員により可決された。しかしながらアブドゥラヒ・ユスフ・アフメド大統領はその後ゲディを再び首相に任命した。

今回の不信任案が可決されていれば、すでに多くの大臣が辞任して弱体化している政府は崩壊していただろう。

報道によると、イスラム過激派が数十キロまで迫っているバイドアに、議会の承認を得ないまま暫定政府支援のためのエチオピア部隊が7月初めに到着したことに大臣たちは反発した。大臣たちはなぜ軍隊の配備に国会の承認を得ようとしないのか質問したが、エチオピアは依然答えようとしない。

さらに大臣たちは政府とUICとの対決を防ぐための交渉におけるゲディの無能と、交渉進展の障害となっていることを非難した。この交渉はエチオピアの部隊が姿を見せたことによって中止となっている。エチオピア部隊の出現は過激派を刺激して、エチオピアに対する「聖戦(ジハード)」を宣言させることにもなった。ソマリア人の多くはエチオピアに根強い反感を抱いている。ここ数十年、両国が何度も衝突を繰り返しているせいである。

イスラム法廷連合(UIC)と暫定政府の交渉はスーダンの首都ハルツームで8月1日に再開される予定だが、イスラム側はエチオピアの部隊がソマリアから撤退すれば参加すると言っている。6月に始まった交渉はアラブ連盟が主導している。

ソマリアのもうひとつの隣国エリトリアも、ソマリアは1992年に武器を禁輸しているにもかかわらず、UICに武器を供給し続けて事態をいっそう複雑にしている。

「先週、エリトリアからイスラム過激派への武器を搭載していると見られる貨物輸送機2機がモガディシュに到着した」とモガディシュの現地ジャーナリストはIPSの取材に応じて語った。この事実は、エリトリアとエチオピアとの長年の緊張関係がソマリアにおける紛争として表面化するのではないかという不安を掻き立てる。

 両国は1998年から2000年まで激しい国境紛争を起こしており、その前の戦いで1993年にエリトリアはエチオピアから分離している。

「ソマリアは最悪の状況に進んでいる。人々は事態の展開を敏感に観察していて、もうまもなくエチオピアとエリトリアの代理戦争がソマリアの地で行なわれるのを目撃するのではないかと考えている」と現地ジャーナリストはいう。

週末の報道によると、ゲディ政府はイラン、リビア、エジプトもイスラム過激派を支援していると非難した。

近隣地域が煽る戦争がソマリアで起こる可能性の迫っている中で、29日には数百人の人々が田舎町バイドアのモスクの外で前日に暗殺されたアブダラ・イサク・ディロウ憲法連邦問題大臣の葬儀に参列するためにバイドアに集まった。

「殺害の原因はまだ分かっていないが、警察は犯人を逮捕して投獄した」と、暫定政府のアブディラーマン・ディナリ報道官は、バイドアからIPSの取材に応じて語った。バイドアでは28日の暗殺をきっかけに暴動が起きた。

その前々日にも国会の憲法問題委員会のモハメド・イブラヒム・モハメド委員長が銃撃を受けた。同委員長は一命を取り留めている。

匿名を条件に、ある政治評論家は、「ソマリアの情勢を改善するためにはアフリカ連合(AU)の介入が鍵だ」と語った。「アフリカ連合を通じたアフリカの存在がソマリアに介入し平和をもたらす手伝いをする必要がある」とモガディシュを訪れた評論家はいう。

しかしながら、平和維持部隊をソマリアに送るという、AU53カ国によって先月行なわれた提案は、UICに拒否された。UICはそのような部隊はソマリアの混乱をより刺激し、より深めるだけだとしている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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