【コロンボIPS=IPS特派員チーム】
2月4日に独立61周年を祝ったスリランカだが、反政府勢力が支配する北部に暮らす少数民族タミル人の思いは別だ。「そっとしておいてほしい。なんとか暮らしていきたいだけ」。政府が掌握する北部の町ジャフナから匿名を条件に電話でIPSの取材に応えた元教師の言葉は、この紛争地に暮らすタミル人共通の願いである。
独立記念の挨拶に立ったラジャパクサ大統領は、タミル人のホームランド建設を目指して1972年から戦ってきたタミル・イーラム解放の虎(LTTE)の掃討も数日で完了すると強調した。
LTTEは、北部に住むタミル系住民25万人を連れて支配下のジャングルに撤退。政府は、LTTEが住民を人間の盾に使っていると非難している。2月2日には、政府支配の安全圏にいる市民の安全と保護は保証するが、LTTE支配の地域に残る市民の安全については責任は負えないとの国防省の声明を発表した。
こうした政府の姿勢に、人権団体の間からは非難の声が上がっている。ワシントンに本拠を置くヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は2月4日「これは一般市民の安寧に対する無関心を意味するものであり、国際法に反する」との声明を出した。
HRWはまた、LTTE側も一般市民が紛争地から逃れるのを阻んで、市民を重大な危険にさらしているとの懸念を繰り返し述べている。
ジャフナに暮らすジャーナリストのひとりは、「市民を巡る膠着状態が解消されても、平和への道は危険だらけだ。好むと好まざるに関わらず、政府側はLTTEや野党タミル国民連合を交渉のテーブルにつかせなければならないだろう」と述べている。さらに、1987年に地方分権化を目指して導入されたが、政府が権限委譲を拒否している州議会制度について、「現行の制度下における有効な解決はない」と指摘する。
国内の大半のタミル人は戦争に飽き飽きしており、以前にはなかったことだが、LTTE支持も衰えている。2月2日には、ジャングルに閉じ込められている友人や親類を解放するようLTTE指導者に求めて、数百人がジャフナの通りをデモ行進した。
LTTEの制圧が進む中、タミル人住民の思いについて報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩